- 1二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:07:28
今日のトレーニングメニューは映像研究の予定で、授業が終わってトレーナー室のドアを叩く。普段ならすぐに返事があるのに、今日は待てども声は聞こえない。磨りガラスの向こうは電気が点いていて、さては居眠りでもしているのかと思って、静かに戸を開けた。
「トレーナーさーん、クロノジェネシスですよー……」
部屋に入っても、彼の姿は見当たらない。けれど、パソコンの電源は切れているし、カップの中身は空になっている。
不思議に思ってスマートフォンを開くと、数十分前にメッセージが届いていた。打ち合わせが入ったから待っていてほしい、トレーナー室の鍵も開けておくから、しばらくは自由時間でいいとのこと。
静かな部屋に、ひとりきり。急に手持ち無沙汰になって、何をして時間を潰そうか。ひとまずペンとノートを出しておき、それから参考資料も準備しておく。でも、映像データベースにアクセスできるのはトレーナーさんだけだし……
自由時間だと連絡もあったことだし、少し寄り道してもいいよね。自分で納得して、棚からノートパソコンを取り出した。
電源を入れて開いたのは、私が撮った写真を保存しているクラウドの画面。今のうちに、先週トレーナーさんと見に行ったレース写真を整理しよう。
日付と場所が名付けられた無数のフォルダが、画面いっぱいに整然と並んでいる。ひとつを選べば、その下にはレースごとに階層が分けてあり、いつでもお目当ての写真を探せるようにしている。
既に取り込んでいたデータは、まだ整理する前のもの。第一レース、第二レースと、新たなフォルダを作って分類していく。
てきぱきと作業を進めれば、ほとんどの写真を移し終えていた。ミスショットを削除して、最後に残された画像を前に、手を止める。
「……これも、大切な写真よね」
彼と撮ったツーショット。いつからか、一緒にお出かけをする度に、記念撮影と称して二人の写真を撮るようになっていた。 - 2二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:08:38
耳を立て、近くに第三者が居ないことを確認してから、操作を再開した。
ひと目では何の変哲もない、とあるフォルダを選んで、さらに奥深くへ進んでいく。いくつものカモフラージュを潜り抜けた先に、私の内緒の写真集がある。
現れたのは、トレーナーさんが写った画像。
最初は、気づかないうちに撮ってしまった一枚だった。削除するのも忍びなくて、別のフォルダに分けていたら、どんどん量が増えてしまって。
私と並んだ笑顔。二人でポーズを決めた姿。レースを観ている横顔。
他には、学園を歩いているところや、待ち合わせに駆け寄ってくれる姿も。時々、ぼーっと眺めていたくなる、私の極秘コレクション。
大抵は、行く先々で撮った記念写真。内緒で撮ったものは少しだけ。少し……だけだよね。うん。
画面をスクロールする度に、なんだか身体が温かくなって、胸の辺りが心地よくて、頬が緩んでしまう。トレーナーさん、早く来ないかな――
「――クロノ! 遅くなってごめん」
「――ひゃ、はい!!」
夢中になっていたら、会議を終えた彼が帰ってきていた。慌てて画面を閉じたけど、バレてないよね。こんなもの、見られるわけにはいかない。
「……クロノ?」
「じ、準備はしておきましたので!」
「ああ、ありがとう。映像繋ぐからちょっと待ってね」
彼が作業をしているうちに、パソコンを開き直して、急いで最後の一枚を移動させた。ふと、画面の中と目の前の彼を見比べる。やっぱり、写真よりも本物のほうがかっこいい――
「そろそろ始めるよ」
声かけを受けて、改めてパソコンを閉じる。手元をノートに変えて、頭のスイッチを切り替えた。まだまだ、一緒に写真を撮る機会は巡ってくる。コレクションも、どんどん膨らんでいくのだろう。
「はい! 本日も、よろしくお願いしますね」 - 3二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:09:38
前作
あなたの五感に、カレンブーケドール|あにまん掲示板https://writening.net/page?y88hyubbs.animanch.comクロノちゃんがかわいいので書きました
最近クロノとブーケの波が来てるのでもっと流行ってほしい
みんなも書いてほら
- 4二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:10:49
ブラボー、良いね
- 5二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:24:34
うーん、甘い
もっとちょうだい - 6二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:26:54
俺のクロノちゃんの神SSコレクションが潤ったからWin-Winだな