ディストピアと化した世界で戦うアイドルたち

  • 1SF好きP25/10/14(火) 23:33:52

    学マス x ディストピア世界の二次創作です!
    SF的な世界観強めで、ことねを主人公として書きます。

  • 2SF好きP25/10/14(火) 23:34:55

    >>1

    ことね妹「お姉……喉……乾いた」


    ことね「……がんばれ、もう少し耐えるんだ……お姉ちゃんが、ついてるからな」


    荒野に吹き抜ける風に、消え入りそうな妹の声。


    なんとか力を振り絞って、返答する。

    もう何日この土地を彷徨っているんだろう。考えるのさえ辛くなった。


    私たちはいつものように楽しい日々を過ごしていたはずだった。


    突如地球に降り注いだ隕石群によって、世界中のあらゆる都市が壊滅。


    日本も例外ではなく、あんなに緑豊かで、たくさんの人で活気にあふれていた景色が、今では見るも無惨な荒野へと変わった。


    両親とはついぞ会うこともできず、生死すら不明。


    たまたま実家に来ていた私は、妹たちを連れて、あの日から2年ほど。

    この荒野を彷徨っている。

  • 3SF好きP25/10/14(火) 23:37:03

    >>2

    最初は自衛隊の支援やなんやらがあったり、難民キャンプを転々として何とか生き抜いてきた。でもだんだんそれも立ち行かなくなり、さらには、得体のしれない怪物に襲われる、なんて嫌な噂まで耳にするようになった。ついには暴動が起きて難民キャンプは崩壊。いまや私たちは行くアテもない放浪者となってしまった。


    3人の妹の中で、一番末っ子は特に衰弱している。生きてはいるけど、私が背負ってなんとか同行できる状態。


    他の二人も、自力で歩いてこそいるが、フラフラで今にも倒れそう。


    そんな3人をなんとか支えつつ、私は歩いていた。


    (本当はしんどいし、苦しいけど……私が弱音を吐いたらダメだ……チビどものためにも……)


    そうやって自分を鼓舞するけれど、内心不安でいっぱいだった。

    昨日奇跡的に見つかった野生の木苺で、かろうじて飢えを防いだものの、時間が経って、もう空腹も限界に来ている。


    大事に大事に、保存していた水も、ついに底を尽きた。


    三女「お……ねぇ……」


    ついに三女がその場に崩れ落ちる。


    ことね「……っ!おい!……倒れるな……大丈夫、きっと大丈夫だからさ……!」


    声をかけながら妹の肩を支える。

    そう言いながらも、私もほとんど力が入らない。

  • 4SF好きP25/10/14(火) 23:38:06

    >>3

    ことね(流石に、もう……)


    その時だった。


    次女「お姉……お姉!水だ……水だよ!」


    次女が消え入りそうな声をなんとか振り絞るように、何かを指差して私たちに叫ぶ。


    ことね(え……水……?)


    霞かけた視界が、徐々に色と形を取り戻す。

    妹が指差すその先。少し遠くの開けた大地に。


    小さな小川が流れていた。


    ことね「……水だ……水だぁ!」


    私がそう口に出すより先に、妹は川まで走ってたどり着いていた。

  • 5SF好きP25/10/14(火) 23:40:29

    >>1

    ちなみに初めてスレ立てました。

    至らない点は勉強させていただきます・・・!

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 03:18:52

    がんばえー!
    とりあえず、10までレスしておくとスレを10時間持たせられるのでひとまずなんか埋めておくと一安心だぞ。深夜~朝は特に保守制限時間がズレやすいから注意だ

  • 7二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 03:28:52

    ディストピアとかポストアポカリプスもの好きだから楽しみ

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 04:10:20

    保守支援

  • 9SF好きP25/10/15(水) 06:54:52

    >>4


    次女「ごくっごくっ」


    妹は小川に着くなり、犬のように川に顔をつけて、水を飲み始めた。

    よかった、見たところとても綺麗な水。変なゴミや異物が混じっている様子はない。


    ことね「ほら、チビども、水だぞ」


    わたしは空のボトルに水を汲み、まずは末っ子に、それから三女に、水を飲ませてやった。心なしか二人とも、少し元気が出たようだ。


    それから私も、ボトルの水を飲み干す。


    ああ……生き返る……!


    ただの水がこんなに有り難いと思うなんて。


    こんなことなら、あの頃。ただ夢中でアイドルとしてレッスンをしていた頃、学園で配られてた初星水を、安易な気持ちで捨てるべきじゃなかったな。


    もはや遠い記憶のようになった、平和だった時のことを思い出す。


    ことね(けど今は……)


    もはやどうしようもない。過去には戻れないのだから。

    そんな思いで、今はただ、目の前にもたらされた至福を、のどを鳴らして飲み込んだ。

  • 10SF好きP25/10/15(水) 06:56:24

    >>9

    午後のじりじりと照り付ける日差し。


    昨日までは地獄だったが、大量の水を手にした今、そんなものはなんとも感じない。


    ことね「はあ……ものすごい久々……幸せ……」


    ひとしきり水を飲み、ボトルにも補充してから、私たちは順番に水浴びして体を洗っていた。妹たちを先に洗ってあげてから、最後に自分が全身で水に浸かる。


    水は冷たすぎず、ぬるくもない、そこそこな温度。体中に水が行き渡る感覚を楽しみながら、全身を洗って心までさっぱりした。


    次女「お姉、これからどうする?」


    ことね「そうだな、この川をたどってみようか。うちらみたく、水場を確保した他の人に、会えるかもだし」


    すっかり元気になった次女と三女を歩かせ、まだ弱ってはいる末っ子を背負って、四人で川上に向かってみることにした。


    源流を目指せば、誰かがいる。そんな気がした。

  • 11SF好きP25/10/15(水) 07:03:32

    >>10

    2時間ほど、歩いただろうか。


    相変わらず景色はほとんど変わらない。


    川の流れが少し早くなったから、多分上流には来ているはず。でもそれ以外に何も手掛かりはなかった。


    ことね(大丈夫か、これ……誰かいてくれよ、頼む)


    徐々に不安な表情を見せる妹たちの手をキュッとつかみ、祈るしかなかった。


    末っ子「おねえ、あれなに?」


    不意に、背負った末っ子が言葉を発した。


    ことね「どしたん?チビ。何か見えた……」


    妹が指さす方向に目をやって、私は絶句する。


    はるか地平線。荒涼とした茶色の大地で、何か黒いものがうごめいている。

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 07:16:30

    楽しみ、期待

  • 13SF好きP25/10/15(水) 07:28:26

    >>11


    ことね「な……っ!?」


    急いで懐に入れていたメガネをかけて、遠くに目を凝らす。


    ことね(何だよ、アレ……)


    得体のしれない、小さな影。人形のような、ロボットのような何かが、数十か、100体を超える大群でこちらに向かっていた。

  • 14SF好きP25/10/15(水) 07:29:50

    >>13


    三女「お、お姉……!」


    妹が不安そうに私の袖を握る。


    ことね「に、逃げろ!」


    そう叫ぶと、私は妹たちを連れて逆方向へ走り出す。あれが何なのか分からないけど、私のセンサーが告げている。「危険だ」と。


    しばらく走ると、コンクリの小さな建物を発見した。

    幸いにも、梯子がある。


    ことね「あれ、あれに上れ!」


    梯子に着くと、妹たちを順に上らせる。末っ子は手助けしながら一緒に上り、最後に梯子をつかんで引き上げた。

    高さ3mくらいはある建物の、屋根の上。そうやすやすと来れないはず。そう、思いたい。

  • 15SF好きP25/10/15(水) 10:17:36

    >>14


    ものの10分ほどで、あの群れの足音が、かなり近づいた。


    ガチャガチャと、大量のカトラリーをたらいでかき回すかのような、不気味に響く金属音。


    ことね(このまま、どうかこのまま、通り過ぎて……!)


    おびえて震える妹たちに覆いかぶさるように、三人を抱きかかえて体を縮こませる。

    やがて耳元に大音量で響くかのように、その音はすぐ近くに迫った。


    しばらく後。

    徐々に音が遠のいて、再び静かになった。


    ことね(……た、助かった?)


    良ーく耳を澄ましても、あの音は聞こえない。


    どうやら、通り過ぎて行ったらしい。


    次女「た、助かったの…….?」


    ことね「多分……」

  • 16SF好きP25/10/15(水) 13:05:35

    >>15


    そっと妹達から離れ、周りを見渡す。


    まだ僅かに立ち込める砂埃が、ついさっきまで危機が迫っていたことを伝えている。

    しかし他に異常は見当たらない。


    ことね(良かった……私たち無事に……)


    その矢先。


    次女「きゃあ!!」


    妹の悲鳴が、耳に響く。


    ことね「な、何!?」


    次女「お姉、あれ……!」


    妹が小屋の下を指さし震えている。嫌な予感が心を蝕む中、恐る恐るその方向を見下ろす。


    (……っ!)


    私の嫌な予感が、的中した。

    私たちが逃げてきた、あの大群。小型の、メカメカしい見た目をしたやつらが、小屋を取り囲んでじっと屋根を見つめていた。


    その顔はまるで一眼レフのようで、大きなレンズ越しに、間違いなく私たちをとらえている。


    ことね「あ……あ……」

  • 17SF好きP25/10/15(水) 20:21:11

    狼狽える私たちに追い討ちをかけるように。

    奴らは一斉に小屋に向かって走り出した。

    刃物のようになった手先を使って、コンクリの壁を削ってくる。

    そのうち何体かは、一箇所に集まって山のようになり、徐々に屋根の高さに迫ってくる。

    一同「きゃーーー!!!」

    あのガチャガチャした金属音、そして大地震のような振動が、私たちを襲う。

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 21:50:56

    保守

  • 19SF好きP25/10/15(水) 23:12:03

    >>17


    次女「おねぇー……」


    妹たちは皆顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。私もいよいよか、と最期を確信した。


    ことね「大丈夫。私が、ついてるからな」


    静かにそう言うと、妹たちの頭を撫でてぎゅっと抱きしめる。


    こんな時なのに、いや、こんな時だからこそかな。

    妙に落ち着いている。


    けれど、涙だけは、どうしたって止めようがなかった。


    ことね(私、死ぬのかな……痛いのかな……ああ、こんなことなら、もっとお金ケチらず美味しいもの食べればよかった。妹たちとも、もっと遊んでやればよかった。……それに)


    信じられないほど美しく、青々とした空を仰いで呟く。


    ことね「プロデューサーに、ちゃんと、もっともーっと真剣に、愛を伝えればよかったナー……」

  • 20SF好きP25/10/15(水) 23:57:04

    >>19

    そうこうしているうちに、一体、また一体と、奴らは屋根に登ってきた。


    大きさはチワワくらいなのに、恐怖でしかない。カメラのような頭、サバイバルナイフのように刃渡りが長い刃物の手。体中に巻き付いたコードのようなものから、変なドス黒い汁がポタポタ落ちている。金属製の足は、歩くたびにあの嫌な金属音を響かせる。


    まさに、SF映画に出てくる敵のロボットそのもの。


    ことね(……)


    もはや逃れられないと悟り、わたしは妹たちを抱く力を強め、静かに、目を閉じた……



    ギューーーーン



    次の瞬間。

    空間を貫くような、聞いたこともない音が響く。


    ことね「……?」


    恐る恐る、目を開けてみる。


    ことね「……えっ」


    目の前の状況に固まった。


    私たちに迫っていたロボット。

    それが、すぐ目の前で立ち止まっている。


    あのカメラのような頭には、まるで銃か何かで撃たれたような、大穴が空いていた。

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 00:00:04

    これディストピアっていうかポストアポカリプスだな

  • 22SF好きP25/10/16(木) 00:14:04

    >>21

    おっしゃるとおりでした…!

    誤解を与えてしまったらすみません。


    ポストアポカリプスのほうが近いので、そう解釈して読んでいただけたらありがたいです。

  • 23SF好きP25/10/16(木) 07:05:05

    >>20

    ことね(一体何が……?)


    慌てる私の視界に、もう一つ、影が飛び込んできた。


    ひらりと屋根の上に登り、私たちに背を向けてロボットに向き合うその姿。


    紺色のピチッとしたライダースーツ。


    女性らしい、美しいボディラインの腰には、銃のホルスターが二つ。


    右手には内一丁を構えている。SF映画にありがちな、角ばったメカメカしい銃。


    頭に被ったフルフェイスのヘルメットからは、うっすら青みがかった長髪がはみ出している。


    久々に、本当に久々に他の人を見た。けれど、この感覚の理由は、きっとそれだけじゃない。

  • 24SF好きP25/10/16(木) 10:28:30

    >>23

    ほんの一時、沈黙していたロボットたちが、再び動き出した。


    今度は一斉に、目の前の女性に襲いかかる。


    ??「……っ!」


    瞬時に身構えた女性。


    もう一丁、銃を取り出し両手で構える。


    間髪入れず、向かってくるロボットたちに次々銃撃を浴びせた。


    先ほどの空間を貫く発射音が幾重にも重なって聞こえる。


    その銃撃は見事で、一発も外さず全て的確に相手の頭部を撃ち抜いていく。



    ものの数分で。


    あれほど群がっていたロボットたちは、全て沈黙した。


    ことね「た、助かった……?」


    次女「お姉、あの人……」


    ことね「……私、多分、知ってる」

  • 25SF好きP25/10/16(木) 14:11:25

    >>24

    女性は周りを見渡し、ロボットが動かなくなったことを確認してから、私たちの方に振り返る。


    ツカツカとブーツの音を響かせながら近づきつつ、ヘルメットを外した。


    ことね(ああ……やっぱり……!)


    「ことね、無事だったんだね」


    何度も何度も聞いた、その声。


    こんなだったっけ?

    ただのその一言だけで、圧倒的な歌唱力と存在感を匂わせるほどすごいんだな、こいつの声。



    ことね「て、手毬ぃ……!!」



    それは間違いなく、月村手毬。

    手毬、その人だった。

  • 26SF好きP25/10/16(木) 22:26:11

    >>25

    ことね「手毬、てまりぃ……!」


    手毬「ことね……!」


    私は手毬に駆け寄る。

    手毬もまた早足で近づいて、手をぎゅっと握ってくれた。


    ことね「よりにもよって、お前に、お前なんかにぃ……助けられるなんて……」


    いつものように軽口を叩きたいのに、涙が溢れて声も上擦って、うまく喋れない。


    手毬「バカじゃないの?……もっと素直に喜びなよ」


    ことね「うるせー!お前だって……泣いてんじゃんかよ」


    手毬もまた、頬を赤らめ、目に涙を浮かべて、私の手を強く握って放さない。


    余裕ぶってるつもりでも、全く感情を隠せてないのは、変わらないなぁ。

    でもそれが、死ぬほど嬉しかった。

  • 27SF好きP25/10/16(木) 23:07:17

    >>26

    手毬「妹ちゃんたちも、無事みたいでよかった」


    妹一同「て、手毬お姉ちゃん……!」


    妹たちも、感動と共に、手毬のカッコ良さに惚れたのだろうか。

    言葉がうまく出てこない様子だ。


    私たちの様子を見た手毬は、程なくして、切り替えるかのように涙を拭い、キリッと険しい表情になる。


    手毬「とにかく、感動の再会はここまで。すぐにこの場を離れよう。追手が迫ってくる」

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 00:53:01

    こういうときの手毬は強い

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 02:02:55

    かつてのサラダスレしかり、手毬って極限状態で覚醒するイメージあるよね。

  • 30SF好きP25/10/17(金) 08:58:12

    >>27

    ことね「え、追手?まだ奴らみたいなのが?」


    手毬「あるいはもっとヤバい奴が……」


    言いかけた彼女の、その背後。


    さっきのロボットが一体、突然飛びかかってきた。


    ことね「……っ!手毬!」


    手毬「はっ!?しまっ……」


    完全に不意を突かれた。

  • 31SF好きP25/10/17(金) 14:45:41

    >>30

    けれどその刃は、手毬にも私にも届かなかった。


    間一髪のところで、ロボットが落下する。


    その体は、真っ二つに切られていた。


    「月村ぁ!油断するな、残党がまだいたぞ!」


    またしても聞き覚えのある声。


    思わず屋根の縁に駆け寄る。



    スチャ


    腰に日本刀のような武器を納め、一人の女性がこちらを見上げた。


    美しい大和撫子を思わせる黒髪ポニーテール。

    アクアマリンのような瞳は強く光り、黒のロングコートがよく映える。

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 18:28:28

    さすが副会長

  • 33SF好きP25/10/17(金) 21:03:25

    >>31

    ことね「ふ、副会長!?」


    それは生徒会副会長の、雨夜先輩だった。


    燕「月村、小屋の中にも何体か潜んでいたぞ。油断は禁物だ。私が全て斬り捨てておいた」


    そう言うと雨夜先輩は、掴んでいたロボットの切れ端を地面に打ち捨てた。


    手毬「ありがとうございます!助かりました」


    ほっと胸を撫で下ろし、手毬は私たちに向き直った。


    手毬「よし、みんな行くよ!」


    ことね「行くって、どこに?」


    手毬「私たちの、基地」

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 22:26:42

    わくわくすっぞ

  • 35SF好きP25/10/17(金) 23:18:51

    >>33

    燕「地上クリア!藤田とその家族も無事だ。搬送を頼む、紫雲!」


    雨夜先輩が、耳につけたワイヤレスイヤホンのような装置を使って無線で指示を出す。


    「了解しました!降下しまーす!」


    今度は空から声が降り注ぐ。


    ことね「す、清夏の声が!?」


    驚いて見上げると……


    雲を割るように上空から、四角い形状の輸送機が、プロペラの音を響かせ降下してきた。


    着陸した機体のコックピットを見ると……

    清夏が私たちに逆ピースを送っていた。


    ことね「……清夏ぁ……!」

  • 36SF好きP25/10/18(土) 01:30:29

    >>35

    燕「輸送機現着、異常なし!基地の方は受け入れの準備を頼むぞ!」


    雨夜先輩は無線指示を出すと、私たちを輸送機格納庫のタラップに誘導する。

    すると開いた格納庫から、駆け寄ってきた人がいた。


    莉波「……っ!ことねちゃん!みんな、大丈夫?けがはない!?」


    莉波先輩だった。


    ことね「莉波先輩......!はい、体はみんな弱ってるけど、大怪我とかはしてないです!」


    莉波「よかった......!」


    そういいながら、先輩は私を抱きしめた。莉波先輩のハグはすごい。こんな状況下でも、一瞬で癒されてしまう。

  • 37SF好きP25/10/18(土) 06:04:57

    >>36

    莉波「中に救急キットはあるから、念のため様子を見させてね!」


    案内され、私たちは輸送機に乗り込んだ。


    ことね「?手毬と副会長は?」


    手毬「私たちはビークルで地上から向かう。その輸送機には物資も積んでるから、私たちが乗るには重力オーバーだし」


    そこまで言って、ハッとした顔で頬を赤らめ、手毬は続ける。


    手毬「べっ、別に!太ったとかじゃないけど!?……そ、それに残党がいたら倒さなきゃだから。また基地で、落ち合おう」


    かと思えばすぐに、凛々しく強い笑顔に戻る。手毬はどこにいても、手毬だ。

    私も微笑み返し、彼女の手を取ってにっこりうなずいた。

  • 38SF好きP25/10/18(土) 09:43:08

    >>37

    清夏「ことねっち、みんな、シートベルトOK?」


    一同「OK!!」


    清夏「よーし、いくよ!」


    コックピットからの清夏の音声案内に応えると、続いてエンジンからくる振動が座席から身体に伝わる。


    輸送機が離陸した。

    窓から見下ろすと、手毬と雨夜先輩が走っている姿が目に入る。

    向かった先には、一台のサイドカー付きの大型バイク。あれが話していたビークルらしい。

    確かに頑丈そうだが、あれで二人は無事なのか……


    不安な私の気持ちを察してか、隣に座った莉波先輩が私の手を握ってくれた。


    莉波「二人なら大丈夫だよ。今まで何度も、ああやって私たちを守ってくれたんだ。だから今度もきっと」

  • 39SF好きP25/10/18(土) 16:08:18

    >>38

    莉波先輩を見つめ返してから、もう一度外に目をやる。


    徐々に高度を上げ、飛び去ろうとする輸送機から見た二人の姿はもう、ちびぬいかと思うほどの大きさになっていた。



    次の瞬間。



    ガコンッ!!!



    一同「きゃあっ!」


    突如機体が大きく揺れる。


    輸送機の動きが、止まってしまったように感じた。


    ことね「一体、何が……?」


    清夏「みんな、大変!アイツに捕まった……」


    莉波「まさか、そんな……!」


    口に手を当て顔を引きつらせる先輩。私は恐る恐る外を見た。ほぼ同時に、得体のしれない黒い触手……いや、チューブ、が窓の外で激しく蠢き始めた。

  • 40SF好きP25/10/18(土) 22:07:48

    >>39

    フロントガラス越しに、見えた影。


    先ほどの相手とは比にならない、20mはありそうな巨大なロボット。まるでステージ証明のライトのような二つの目がギラギラ光り、真っ黒なチューブでできた巨大な腕で、輸送機をがっちりつかんでいた。


    清夏「まさか地中に潜んでたなんて……!緊急事態!ジャイアントに捕まった!手毬っち、副隊長、応援を!」


    清夏が無線機で呼びかける中、返ってきたのは苦し紛れな返事。


    手毬「ごめん……清夏……っ!」


    燕「こちらも敵に囲まれている!近づけない……!」


    わずかに隙間から見える地上の様子。


    二人はビークルに乗ったものの、あの小型ロボットに囲まれていた。さっきよりも断然多く、数倍の数がうじゃうじゃいる。


    ことね「そんな……!」


    つぶやく私の声も、引きつっていた。

  • 41SF好きP25/10/19(日) 00:16:46

    >>40

    清夏「くそ!動け!動けー!」


    必死にエンジンを全開にする清夏。何とか脱出を試みるも、びくともしない。救いを求める私たちの思い虚しく、機体はミシミシと嫌な音を立て始めた。


    巨大ロボットは機体の両翼をしっかり掴み、真っ二つに引き裂こうとしているらしい。


    絶体絶命。せっかく助かったはずなのに、また……

    私と莉波先輩はただ、泣き叫ぶ妹たちを抱きしめることしかできなかった。



    「清夏ちゃーん!!!!」



    その時。


    突如無線に入った叫び声。透き通るような、可憐な声。


    清夏「!?」


    清夏がはっとして空を見上げる。

    つられて私たちもその方向に目を向けた。

  • 42SF好きP25/10/19(日) 08:21:36

    >>41

    はるか上空、真っ青な空のど真ん中に、一筋の白い飛行機雲を描いて。


    何かが、飛んできた。


    清夏「……!」



    「清夏ちゃんは、私が守る!」



    再び聞こえた、決意の叫び。


    次の瞬間、巨大ロボットの片腕が、何かに射抜かれた。


    関節部をちぎられ腕を失い、態勢を崩すロボット。伴って輸送機も大きく揺れた。


    清夏「っ!今だーーー!!!!」


    好機を逃すまいと、清夏が全速力で脱出を図る。


    片腕しか使えないロボットの力は弱く、見事に脱出。上空へ飛び立つことに成功した。

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:18:45

    白線

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:31:48

    かっこいい…

  • 45二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:31:21

    保守

  • 46SF好きP25/10/20(月) 07:43:42

    >>42

    慌てて私は窓の外を見る。

    そこには。


    巨大ロボットと対峙する、もう一つのロボット。


    やや小柄ながら、華奢でかっこいいフォルムを持った、純白のロボットがいた。


    ことね「あれって……!」



    清夏「バカ、なんで来たの……リーリヤ!」



    間違いない。

    あれは、あれはリーリヤちゃんが好きだと話していた、ロボットアニメに登場する機体。

    清夏の言葉からしても、確信した。あれを操縦しているのは……


    ことね「リーリヤちゃん!?」

  • 47SF好きP25/10/20(月) 09:20:00

    >>46

    リーリヤ「清夏ちゃん、みんな!助けに来たよ!」


    清夏「何やってんの!機体の整備、まだ終わってないんでしょ!?」


    鬼気迫る清夏の声。


    確かに、リーリヤちゃんの声の後ろで、アラート音のようなものがしきりに鳴っている。


    リーリヤ「うん……でも、みんなが危ない気がして。いてもたっても、いられなかったの!」


    清夏「リーリヤ……もう、バカ……どうしていつもそう無茶するの」


    そうつぶやく清夏の表情は、涙にぬれた、笑顔だった。

  • 48SF好きP25/10/20(月) 11:52:28

    >>47

    リーリヤ「ここは私が引き受ける!清夏ちゃん、みんなをお願い!」


    清夏「わかった……!気を付けて、リーリヤ!」


    一言叫び、清夏は輸送機を動かした。

    徐々に戦地を離れる中、私たちは窓の外に釘付けになる。


    戦況は、リーリヤちゃんに託された。



    リーリヤ「あなたはここで倒す!……うおぉぉぉぉー!」


    叫び声と共にリーリヤちゃんの操る機体は、敵に向かっていった。

  • 49SF好きP25/10/20(月) 15:14:50

    >>48

    残った片腕で押しつぶそうとしてくる敵の攻撃をひらりとかわし、装備したレーザー銃を放射するリーリヤちゃん。


    あっという間に、巨大ロボットからもう片方の腕も奪ってしまった。



    しかし、敵もやられっぱなしではない。

    まるで口のように大きく開いた頭部の穴から、次々砲弾を吐き出して応戦してくる。


    その攻撃も巧みにかわすと、リーリヤちゃんは敵を誘導するかのように動く。


    彼女につられて向きを変えた巨大ロボットは、再び砲弾を吐き出した。

    リーリヤちゃんは当たる直前で急上昇。見事に攻撃をまたかわす。


    それだけじゃない。

    当たらなかった砲弾の雨は、まっすぐに、その背後にいた小型ロボットの群れに降り注いだ。



    ドカーン!!



    豪快な爆発音とともに、手毬たちを囲んでいた群れが次々爆発四散していく。


    手毬「リーリヤ!ありがとう」


    燕「助かった、恩に着るぞ、葛城!」


    リーリヤ「二人とも今です!離脱を!」


    手毬「う……さっさと行けよ雑魚がって……?分かってる!」

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 22:37:33

    手毬、ここでも手毬してて良い。

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 06:23:50

    保守

  • 52SF好きP25/10/21(火) 09:29:42

    >>49

    雨夜先輩、手毬の二人は、無事にビークルに乗り込む。

    手毬がバイク部分に座り、アクセル全開。砂埃を上げて走り出した。


    飛びかかってくる小型ロボットの残党も、サイドカーの雨夜先輩が斬り捨てる。



    見届けると同時に、リーリヤちゃんはもう一つ携えたシールドを展開。

    三度吐き出された巨大ロボットの砲弾を防いだ。



    リーリヤ「これで、終わりよ!」



    機体が再びレーザー銃を構えると、その発射口に、徐々に光が集まってゆく。

    追撃しようと巨大ロボットが口を開けた瞬間。


    リーリヤ「発射!」


    掛け声とともに、これまでよりも太く、強く輝く、ビームが放たれた。

  • 53SF好きP25/10/21(火) 10:35:09

    >>52

    ビームは巨大ロボットの頭部に命中。


    大爆発を起こし、ついに巨大ロボットは沈黙した。



    一同「やったー!!!!!」



    リーリヤちゃんの活躍で、戦いに勝利した。


    彼女の白い機体が、いつの間にか訪れた夕暮れに映え、輝いていた。



    私たちを追ってゆっくりと前進するリーリヤちゃん。手毬と雨夜先輩もついてきていた。


    勝利の歓喜に、心が包まれていく。


    ことね「よかっ……たぁ……」


    安心しきったのか、私は突然の眠気に襲われ、そのまま気を失ってしまった。

  • 54SF好きP25/10/21(火) 12:45:16

    第一章「終末世界」

    お読みいただいたり、コメントいただいた方、ありがとうございました!
    ここまでで一区切りです!

    殴り書きしたネタを整理して小出ししてますが、多分全部で6章くらいは書けそうです。
    このまま続けるか、章ごとに区切って新しくスレ立てるか悩み中…!

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 13:29:37

    面白い。
    とりあえずまだレス数残ってるしこのまま行ってみたら?

  • 56SF好きP25/10/21(火) 21:59:51

    >>55

    ありがとうございます!

    何よりうれしい言葉です!


    ひとまず、行けるところまで

    続きを書こうとおもいます

  • 57SF好きP25/10/21(火) 22:03:58

    >>53

    「ちゃん……ねちゃん……!ことねちゃん!!」


    頭の上から、降り注ぐ声。誰かが、私を呼んでいる。


    ことね「ん……あれ……ここは?」


    呼び声に応じて目を開ける。じんわりと明るくなっていく視界に入ってきたのは、莉波先輩の顔だった。


    ことね「り……なみ、先輩?」


    莉波「ことねちゃん!あぁ、よかった……!」


    先輩は涙を浮かべながらも、笑顔で私の手をぎゅっと握ってくれた。

    安堵してそのまま椅子に腰掛ける先輩から視線を外し、周りを見渡す。

    ここは……どこだろう。

    一見するとどこかの病院のよう。だけど、見覚えがある天井だった。


    ことね「ここは……?」


    莉波「ここはね、私たちの基地。ことねちゃんにとっても、懐かしい場所だよ」


    そう告げた莉波先輩は、徐に立ち上がると、カーテンを引いて窓の外を見せてくれた。


    ことね「あ……」


    その景色は、忘れもしない。

    中庭の大きな木。赤茶色の建物。

    アイドルとして青春の一ページを綴った、思い出の場所。

    初星学園だった。

  • 58SF好きP25/10/22(水) 06:13:14

    >>57

    ことね「ここは……学園?」


    莉波「そうだよ。奇跡的に建物がほとんど壊れなくて、こうして基地として使っているの。学園が、あの頃も、今も、私たちを守ってくれてるんだね」


    先輩は、優しく微笑んだ。


    そうか、この見覚えある天井。


    あの日。

    まだユニットを組む前のこと。

    咲季とダンス勝負をするために、プロデューサーに言われて寝た、保健室のベッドの風景だった。


    ことね「そっか……またここに、戻ってこれたんだ……」


    安心し切ったせいか、思いがけず、涙がまた一筋こぼれ落ちた。

  • 59SF好きP25/10/22(水) 08:32:09

    >>58

    ーーことね「なるほど……ここに避難してきた人たちで役割分担して、支え合ってるんですね」


    莉波「そうだよ。あの日……隕石被害で世界中が酷い目にあってから、最初は学園にいたみんな、次第に集まってきた人たちが結託して、生き延びるために頑張ってるの」


    病室で保存食と水をもらい回復した私は、莉波先輩に連れられて基地内を案内してもらっていた。

    そういえば夕暮の中運ばれたはずが、いつの間にか時間帯は昼下がり。

    どうも、丸一日ほど眠っていたようだ。


    チビどもも、どこかで食料を受け取り面倒を見てもらっているらしいし、まずはここのことを知っておかないと。


    保健室を後にし廊下を二人で歩く。

    昔は教室やレッスン室だった部屋は、資材置き場や食料庫、武器庫などに使われていた。


    懐かしい教室が、こんな姿になるなんて。


    そして行き交う人々。

    資材を整理したり、どこかに運んだり、忙しそうだ。

  • 60SF好きP25/10/22(水) 10:42:06

    >>59

    今ここにいるのは、老若男女合わせて300人ほどだそう。


    ……たった300人。


    無理もないか。

    あの日、ちょうど学園も長期休みで、遠くから来ている生徒たちは大体帰省していた。


    これが普通の日だったなら。

    もっと多くの人が助かったはずなのに。

    そんな、もうどうしようもない思いが込み上げてきて、心を圧迫する。

    俯く私の気持ちを察してか、莉波先輩が声を掛けてくれた。


    莉波「……ここに集まった人たちはね、初めはみんな怯えてた。けど、ある人が言ったの。こんな時だからこそ、みんなで力を合わせて乗り越えよう、てね」


    ことね「ある人……?」


    莉波「ふふ、ことねちゃんも、よく知ってる人」


    意味ありげに、微笑む先輩。

    このときの私はきっと、不思議そうな表情をしていたはずだ。


    莉波「あ、噂をすれば」


    そう言って、廊下の先を指さす莉波先輩。

    つられてその方向を見る。


    ことね「あ……」


    そこには、懐かしい面々がいた。

  • 61SF好きP25/10/22(水) 17:37:56

    >>60

    「うん、当面の配給も問題ない。今日新しく資材が入ってきたし、大丈夫だね」


    「おかげさまで、医療品も整っています。お怪我をされた方も、すぐに回復するでしょう」


    「ありがとう、ここが成り立つのもみんなのおかげよ。引き続きよろしくお願いね」


    廊下で資料を手に協議する三人。


    その懐かしさに、心が震えた。


    莉波「みんな!」


    莉波先輩の言葉に、三人が振り返る。


    麻央「莉波、どうしたんだ……い……」


    美鈴「……藤田、さん……!」


    星南「……ああ、ああ……!」


    資料を手にしたまま、目を見開いて固まった麻央先輩。

    口に両手を当て、驚きを隠せない美鈴ちゃん。

    そして、手に持ったペンを思わず落としてしまう、星南先輩。


    莉波先輩が微笑んで見守る中、しばしの静寂の後に、二人が駆け寄ってきた。

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 23:44:54

    保守

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 01:26:52

    保守

  • 64SF好きP25/10/23(木) 07:27:51

    >>61

    麻央「ことね……ことねじゃないか!」


    美鈴「藤田さん、ご無事で何よりです……!」


    麻央先輩と、美鈴ちゃんは、私の手を取り涙を浮かべて笑いかけた。


    ことね「ふたりこそ……無事で何よr……!」


    言葉を返そうとした矢先、やや遅れて、星南先輩が私に駆け寄り、ぎゅっと抱きしめてくれた。


    星南「ことね……!ああ、私のことね!よかった、よかった、よかった……!」


    一番星とはとても思えないような、涙でぐしゃぐしゃにした顔で私に抱き着く先輩。


    ことね「会長……」


    静かに応え、星南先輩を抱き返す。


    ああ、なんて心地いいんだろう。


    あれほど嫌がっていた会長からのアプローチ。

    それがこんなに、心安らぐものだったなんて。

  • 65SF好きP25/10/23(木) 08:37:27

    >>64

    ーーことね「そうだったんですね、会長が。さすが、一番星」


    星南「ふふ、ことねにそんな風に言ってもらえるなんて……!ええ、そうよ。こんな時だからこそ、誰かが立ち上がらなきゃ、てね。覚悟決めたの」


    莉波先輩が言っていた、みんなの士気を高めた人物。それは、星南先輩だった。


    美鈴「おかげで私も、お昼寝の癖が、すっかり抜けてしまいました」


    麻央「ほんと、すごいよね。大人も子供も、みんな一つにまとめ上げちゃってさ。あ、ちなみに星南はここじゃ”隊長”だよ!」


    話によると、当時この基地、学園内は、命からがら逃れてきた人ばかりで、とても重苦しい雰囲気だったそうだ。

    たまたまあの日、レッスンのため学園に来ていた三年生の先輩方四人、リーリヤちゃん、清夏、手毬、昼寝に来ていた美鈴ちゃんも、偶然居合わせたことで巻き込まれたらしい。


    誰もが不安を募らせる中、星南先輩の鶴の一声で、まずはアイドル科のみんなが結託。徐々に、助けを求めて集まった弱気な人々は、勇気を奮い立たせ、生き抜くための同志へと変わっていったそうだ。


    ことね「星南先輩は全体指揮と武器の管理。麻央先輩は食料と備品の管理調達、莉波先輩と美鈴ちゃんはセラピスト兼医療補助として医療チームに所属、か」


    星南「いまではアイドル科の生徒だけじゃなく、皆と協力体制が築けているわ。手探りから始まったなりに、各々が持ち味を生かして、最高のパフォーマンスを発揮してくれているの」


    麻央「そして忘れちゃいけないのが……」


    そういいながら廊下の角を曲がり、校庭へとつながる扉をくぐる先輩。


    麻央「前線で戦ってくれている、みんなだね」

  • 66SF好きP25/10/23(木) 12:59:58

    >>65

    扉の先に待っていたのは、校庭。

    もっとも、私の知る、あの運動会をやった校庭とは大きくかけ離れていて、砲台や弾薬の箱が詰まれ、自衛隊にあるような深緑色のジープが何台も停まっていた。


    開けた場所では、屈強な男性たちが、銃の訓練をしたり、武器の扱いを学んだりしている最中。


    清夏「ことねっち!!良かった、目覚めたんだね」


    不意に声がかかる。


    振り向くと、そこには清夏とリーリヤちゃんがいた。

    私たちの集まりに気付いたのか、後方でビークルの手入れをしていた雨夜先輩もこちらに歩み寄ってくる。

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 22:01:35

    ほしゅ

  • 68SF好きP25/10/24(金) 00:00:07

    >>66

    ことね「清夏、みんな……うん、おかげさまで。改めて、助けてくれてありがとう!私のせいで、命の危険にもさらされたりしたのに、本当に、その……」


    歯切れの悪い礼を伝える私に対し、清夏が肩を叩いて笑顔で応える。


    清夏「何言ってるの!こんな時なんだもん、お互い様、でしょ」


    リーリヤ「そうだよ、ことねちゃん。私たちは、やるべきことをしただけだから」


    ことね「リーリヤちゃん……!」


    リーリヤちゃんがいつもの、物静かで落ち着いた声で話しかけてくれる。

    あのロボットに乗っていた人物が、同じ人かと疑いそうなほどだ。

  • 69SF好きP25/10/24(金) 00:01:55

    >>68

    燕「みんな来たんだな。藤田も、無事でよかったよ、本当に」


    雨夜先輩が優しく微笑む。


    輸送機で物資補給をしてくれる清夏、その護衛兼戦闘員として前線に繰り出すリーリヤちゃん、雨夜先輩、そして手毬。

    みんながいてくれたから、私たちは無事でいられるんだ。

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 07:20:49

    保守

  • 71SF好きP25/10/24(金) 12:46:28

    >>69

    次女「手毬お姉ちゃん!」


    妹たち「わーい!!」


    不意に聞こえた声の方を振り向く。

    手毬が妹たち三人の相手をしてくれているのが見えた。


    手毬「ちょっ、わ、わかったから……そんなに引っ付かないで〜……あ、だめ、その無線機触るのはほんとにダメだから!!」


    あんな風に助けられたら、妹たちにとって手毬はまさしくヒーローだ。

    すっかり懐いてしまったらしい。


    てんやわんやする手毬を見て、みんな思わず笑ってしまった。



    ことね「あははは……わっ!」


    突然、何かが背中に抱きついてくる。

    びっくりして後ろを向くと……これもまた、懐かしい人がそこにはいた。

  • 72SF好きP25/10/24(金) 16:24:31

    >>71

    くるんとした毛先の、ホワイトブロンドの長髪。

    小さく細い身体で、ドクターのような少し丈の大きい白衣を着ている。

    その子は私の服に目一杯顔を埋めてから、やがてゆっくり、顔を上げた。


    広「ことね……!よかった。元気そうだ、ね」


    ことね「篠澤さん……」


    いつもはどこか掴みどころのない、ミステリアスな秀才、篠澤広。

    その彼女が、今は一人の子供のように、静かに泣きながら私に抱きついている。

    初めて見る光景だった。


    男性「お疲れ様です!篠澤部長!」


    通りかかった兵士風の男性が、篠澤さんに敬礼する。

    それに気付くと、私から離れ涙を拭い、応えるように篠澤さんも敬礼をし返した。

    男性のピシッとしたものとは似ても似つかない、弱々しい手の運び。

    でもその表情は、自信と笑顔に満ちていた。

  • 73SF好きP25/10/24(金) 23:02:04

    >>72

    星南「広は、ここでは最も要になる、武器設計開発を担当してくれてるの。手毬の銃やリーリヤのロボットも、彼女の設計よ」


    リーリヤ「篠澤さん、昨日は急にごめんね。あんなに突発で出撃をお願いするなんて、ずいぶん無茶させちゃって……」


    広「ふふ、本当に。シルヴェスタの負荷、酷かった。これから直すのだって一苦労。リーリヤも、私に無茶をさせる。鬼。悪魔。でも、好きだ、よ」


    リーリヤ「や、やめて、私そんなつもりじゃなかったのー!」


    篠澤さんの相変わらずな反応に、顔を赤らめて戸惑うリーリヤちゃん。


    みんなまたしても、笑った。


    こんなに笑ったのは本当に久々だった。

    心なしか、気持ちが晴れてくる。

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 23:09:56

    こういう平和パート、良い。

  • 75SF好きP25/10/25(土) 06:40:02

    >>73

    しかし、まだ私にはどうしても引っかかることがあった。

    雰囲気をぶち壊したくはなかったけど、やっぱり聞いておきたい。


    星南先輩に、恐る恐る尋ねてみた。


    ことね「あ、あの……私の勘違いだったら申し訳ないんですケド……みんながみんなこの基地にいる、て、わけじゃないんですよね……?」


    私の質問にハッとして、星南先輩の表情に少し影が落ちる。


    ことね「千奈ちゃんに、佑芽。それと……咲季が、いない気がして……」


    他のみんなも、どこか気まずそうな表情で目線を外した。

    私のセンサーが、嫌な予感を告げる。


    ややあって、手毬が近づいて来て言った。


    手毬「ことね、三人に会わせるよ」

  • 76SF好きP25/10/25(土) 12:33:32

    >>75

    手毬に案内され、私、そして莉波先輩と星南先輩も同行して、再び校舎の中へ。

    向かった先は、さっきの保健室の隣。


    ことね「あ……」


    手書きの看板には「集中治療室」と書かれていた。



    ちょうどその時、中から一人の白衣を着た女性が出てきた。黒髪を頭の後ろでお団子にまとめ、穏やかな目つき。

    私たちの姿を見ると軽く会釈したので、お辞儀して返す。


    「お見舞いですか?どうぞ、お話してあげてくださいね」


    笑顔で告げて、彼女はその場を後にした。


    手毬「あの人は、千奈お抱えのお医者さん。あの日千奈の付き添いで偶然学園に来てたんだ」

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 17:45:26

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 23:32:58

    保守

  • 79SF好きP25/10/26(日) 00:03:52

    >>76

    そう言うと、そっと戸を引いて入っていく手毬。

    胸のざわめきを必死で押し殺しながら、後に続く。

    そこにいたのは。


    部屋の真ん中で、ちょこんと椅子に座った、千奈ちゃんだった。


    ことね「千奈ちゃん!よかった、無事だったんだ……!」


    あのころと変わらない、普段着の千奈ちゃん。

    さらさらとした黒髪、つるつるもちもちの美しい肌。

    目立って外傷もなく、一見すると異常はないように見える。


    でも。


    千奈「……」


    ことね「……っ!」


    すぐにわかった。

    瞳に、光が宿っていない。

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 08:20:17

    保守

  • 81SF好きP25/10/26(日) 14:03:40

    >>79

    どこか、ぼーっと虚空を見つめるような目で、私がかけた声にも全く反応しない千奈ちゃん。


    ことね「千奈ちゃん……?」


    星南「千奈は、精神をやられてしまったの。もう半年は、ずっとこの状態よ……」


    ことね「そんな……」


    まるで魂の抜けた、人形のようになった千奈ちゃんを前に、呆然と立ち尽くすしかできなかった。


    莉波「……千奈ちゃん、そろそろ、お着替えしようね」


    莉波先輩がそっと近づき、千奈ちゃんをベッドに座らせる。

    濡らしたタオルを準備して、棚から服を取り出すと、千奈ちゃんの服を一つずつ、丁寧に脱がしながら、体を拭いてあげていた。

  • 82二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 18:57:10

    千奈…あんなに明るくていい子だったのに…
    さきは…生きてるよね…?

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 19:13:20

    地球に隕石が降ってきたのが2年ほど前で、
    千奈が今の状態になってしまったのが半年ぐらい前……
    隕石による大災害が直接の原因ではないなら、半年前あたりに一体何が……??

  • 84SF好きP25/10/26(日) 22:55:18

    >>81

    ことね「……どうして、どうしてこんなことに」


    手毬「千奈も、最初は普通だった。一所懸命、みんなを手伝って、支えようとしてくれた。ご家族も、仲良くしていたメイドの香名江さんすら、生死不明な状況で。けど……」


    星南「佑芽が見つかってから、こうなってしまったの」


    ことね「佑芽……そうだ、あの子は?」


    手毬「……ここ」


    そう言って手毬は、もう一つのベッドの、締め切られたカーテンを引く。


    ことね「……っ!」

  • 85SF好きP25/10/27(月) 00:21:01

    >>84

    そこには、一人の少女が横たわっていた。

    点滴と心電図をつけられ、昏睡状態にあった。


    ことね(これが……佑芽……?)


    確かに、佑芽だ。間違いない。

    けれどその体はひどくやせ細って弱々しい。

    頬もこけて、肌の色もくすんでいた。

    髪は洗われてこそいるが、乱れてぼさぼさだった。


    あんなに元気いっぱいで、丈夫な体の子が、今では見る影もない。

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 08:44:41

    保守

  • 87SF好きP25/10/27(月) 13:08:46

    >>85

    星南「数カ月前。見つかった時は、もうこの状態。一時は生死の境をさまよったけど、さっきの、倉本家専属のお医者さんのお陰で、一命を取り留めた。でも、ずっと意識は戻らないままなの」


    ことね「佑芽……」


    莉波「後で先生から聞いた話なんだけどね。佑芽ちゃん、おなかの中に石ころやドングリが入ってたんだって。ひどい空腹を紛らわそうと、必死だったんだね。何日もまともに食べてなかったみたい」


    莉波先輩が、千奈ちゃんの世話をしながら、涙を滲ませて言った。


    星南「佑芽がここに運ばれたとき、真っ先に美鈴、広、千奈が様子を見に来たの。三人とも、ひどいショックを受けたわ。なかでも千奈は一番傷が深くて」


    手毬「千奈は、毎日佑芽を看病に来てた。でも……佑芽は、全然目覚めなくて。……それで、だんだん様子がおかしくなってきたの」


    手毬は、上擦った声で当時の回想を語った。

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 20:59:44

    保守

  • 89二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 22:40:24

    佑芽……

  • 90二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 06:28:22

    保守

  • 91SF好きP25/10/28(火) 08:57:31

    >>87

    ーーある日。

    通りかかった人気のない廊下で、千奈が壁に体当たりしていた。


    手毬「は?え、千奈。何してるの?」


    千奈「月村さん!ふふ、花海さんが目覚めるまでに、ハグを受け止める特訓をしておこうと思いまして!きっと起きたら、元気いっぱいですから」


    腰に手を当て、自信満々な笑顔で答える千奈。今思えば、もうこの時、千奈の目には光がなかった。


    手毬(そんなことして大丈夫かな……?万一骨折でもしたら……けど、佑芽のことを思っての行動だし、咎めるのも申し訳ない……)


    手毬「あ、そ。……身体は大事にしなきゃだから、ほどほどにしなよ」


    そう言って別れた、1時間後。


    ドンッ、ドンッ


    鈍い音がまだ、廊下に響いていた。


    手毬(……うそでしょ……あり得ないんだけど)


    急いであの場所に向かうと……千奈が、まだそこにいた。もはや体当たりというより、壁に勢いをつけて寄りかかるような動き。ずっとぶつかっていたのか、体中に擦り傷ができている。

    私は走り寄って、勢いよく彼女を壁から引き離した。


    手毬「千奈!!バカじゃないの……!?死ぬよ!!」


    千奈「えへへ……花海さん、わたくし、強くなりましたわぁ」


    しかし千奈は、笑顔を見せて、そのまま気絶したーー

  • 92SF好きP25/10/28(火) 12:35:40

    >>91

    星南「ハグを受け止める特訓、なんて言いながら一人で廊下の壁にタックルしたり、そのうち私たちとの会話も噛み合わなくなってきて。今じゃ、こんな状態よ……」


    星南先輩は苦しそうに目を伏せる。

    莉波先輩も千奈ちゃんの手を取り、肩を震わせて泣いていた。


    私も心苦しくなり、目線を落とした。

    その時ふと佑芽の手に、何かが握られているのに気づく。


    ことね「あ……」


    顔を近づけて見てみると、それは、布の切れ端だった。

    忘れようがない、ビビッドなマゼンタと黒の、ツヤのかかった生地。

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 14:29:17

    佑芽は無敵だと思ってたのに…過酷な世界だ

  • 94SF好きP25/10/28(火) 22:20:05

    >>92

    ことね「咲季の……Fighting My Wayのステージ衣装……?」


    手毬がそっと、私の横で告げる。


    手毬「これが、咲季だよ」


    ことね「……え……?」


    星南「咲季だけは、行方が分からないの。私たちの元には、この布しか、ないのよ」

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 06:57:03

    保守

  • 96SF好きP25/10/29(水) 07:42:50

    >>94

    星南先輩の言葉で、私は目の前が真っ暗になる感覚を覚えた。

    その場に崩れ落ちそうなところを、手毬に支えられて何とか保った。


    2年も、行方が分からないなんて。


    最悪な想像が頭を過る。


    ことね「咲季、咲季……そんな……」


    手毬に手を借りながら椅子に腰かけた私は、あふれる涙を抑えられなかった。


    あの咲季が、まさか……

    もしも、もしも、もうこの世にいなかったら……

  • 97SF好きP25/10/29(水) 13:26:30

    >>96

    手毬「……でもね、ことね。諦めるのは早いと思う」


    ことね「……え……?」


    星南「そうよ。布切れとはいえ、十分な手がかり。佑芽が発見された時、この子は、林の中で倒れていたの。そばには簡易テントがあって、二人でなんとか生き延びようとしてた様子が、見つかった」


    ことね「……」


    手毬「手がかりを集めれば、咲季が見つかるかもしれない。咲季のことだから、きっと生きてる。そう考えて、その場所を中心に、今も捜索を続けているの」


    ことね「……!」

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 21:38:40

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 22:02:10

    そもそもことね自身2年間行方知れずだったけどこうして合流できているわけだから
    彼女の存在自体が一つの希望だろうよ

  • 100SF好きP25/10/29(水) 23:06:27

    >>97

    そうだ。


    なんでか諦めそうになってたけど、あの咲季のことだ。

    きっとどこかでたくましく、図太く生きている。

    私たちが、そう信じないでどうすんだ。


    かく言う私だって、ずっとみんなに会えなかった。

    けど今は、再会できてる。

    なら、咲季もきっと……!


    椅子から立ち上がり、決意をもって、言った。



    ことね「私も、咲季の捜索に、連れてってください!」


    ことね「正直自信ないし、上手くいくかわからないけど……咲季を見つけ出すまで、私辞めない。希望をもって生きることを、諦めない!」

  • 101SF好きP25/10/29(水) 23:14:08

    第二章「仲間との再会」

    ジャスト100レス目で、二章まで終了しました。
    ここまでお読みいただきありがとうございます!

    ここからの章は、激しいバトルシーンも入ります。
    グロ系や露骨な〇亡シーンは一切ありません。怪我などの表現は少し出てきます。
    ここまでの作調から大きくは外れませんが、念のため注意喚起です。

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • 102二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 06:03:42

    おつ
    楽しみにしとく

  • 103二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 11:26:09

    葛城さんだけロボットに乗っててちょっとたのしそう

  • 104SF好きP25/10/30(木) 17:46:41

    >>100

    私たちが基地に来てから、2カ月が過ぎた。


    ことね「さ、チビちゃんども〜!そろそろご飯の時間だから行くゾー!」


    ちびっ子たち「はーい!」


    私はあれ以来、基地の子供達を世話する係として働いていた。

    大人の手が空き、その分いくらか基地の運営が捗っているようだ。


    何より、得意を生かしてみんなの役に立てるなら、これほどありがたいことはない。

    保育士さんのように子供達の世話係をしている人は数名いるけど、大人にも負けず劣らず、私も結構頑張っている方だと思う。

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 22:30:45

    保守

  • 106SF好きP25/10/30(木) 23:39:49

    >>104

    ちびっ子「お姉ちゃん、またねー」


    ことね「はーい、残さず食べるんだぞ」


    ちびっ子「……おねーちゃんおねーちゃん」


    ことね「?ゆうたくん!どしたん〜?」


    ゆうた「これあげるー」


    一人私の元に残っていたゆうたくんが、私を呼ぶ。

    差し出された手には、四葉のクローバーがあった。


    ことね「あ、四葉〜!よかったじゃんゆうたくん、今日ラッキーデーだナー!ほんとにもらっちゃっていいの?」


    ゆうた「うん」


    ことね「……へへ、ありがとう。じゃあ受け取るね」


    ささやかなプレゼントを受け取ってから、子供達を食堂で待つ親の元へ送る。


    ことね「……さてと」


    子供たちを見送り一息つくと、私は旧理科室、篠澤さんのラボへと向かった。

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 07:43:51

    …咲季ってマザーaiとか呼ばれてたの思い出したんだけど………なんでもない!そんなわけないよね

  • 108SF好きP25/10/31(金) 12:40:26

    >>106

    ことね「篠澤さん!来たよ」


    広「ことね、いらっしゃい」


    篠澤さんは薄暗いラボの中で、はんだごてをつかって何かを作っていた。

    近くの机の上では、怪しげな液体が調合されている。

    壁にはいくつも、あのロボットの残骸らしきものがひっかけられていた。


    ことね「うわあ、マッドサイエンティストのラボって感じ……」


    広「ふふふ、私の夢が、一つ叶ったんだ、よ。ここ、とっても快適。おかげで思考がよくメグルメグル」

  • 109SF好きP25/10/31(金) 20:04:17

    >>108

    ニコニコしながら実験用ゴーグルを外し、手術台のような物が置かれた部屋の片隅に、私を案内する篠澤さん。


    広「これ」


    指さしたものは、巨大ロボットの残骸の一部。新たに入ってきたものらしい。


    ことね「何か新しい情報は?」


    広「ない。残念ながら。解析をかけて、成分を調べたけど、新しい発見は何もなかった」


    ことね「そっか……」


    広「でも、諦めるつもりは、ない。きっと次がある」


    落ち込む私を、篠澤さんは穏やかな笑顔で励ましてくれた。

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 22:07:10

    こういうときにものびのびやってる広は良い。

  • 111SF好きP25/10/31(金) 22:59:52

    >>109

    今の私は、子供たちの相手をする傍ら、咲季の手がかりを追っていた。

    捜索隊が戻るとすぐ話を聞きに行ったし、新しい敵の残骸が運ばれて来ては、篠澤さんと共に調べたりした。ちょっとずつ、武器の扱いも覚えたり。

    捜索に同行するため。私に足りていない訓練をして、力をつけている。


    まだまだ未熟だけど、一刻も早く咲季に会いたい。

    その思いは誰にも負けないつもりだった。



    敵についても、少しずつ分かってきた。


    私たちが追いかけられた、小型の群れは「ソルジャー」、巨大な奴は「ジャイアント」と呼ばれている。

    篠澤さんによれば、宇宙空間に散っている、小惑星の一部らしい成分が多数検出された。


    つまり、奴らはあの隕石と共に地球に降ってきたというわけだ。

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 23:45:04

    面白い。めちゃくちゃ読み入ってしまった。スレ主には続きがんばってほしい

  • 113二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:59:54

    保守

  • 114SF好きP25/11/01(土) 09:10:43

    >>111

    敵の特徴は、機械のような金属体であること。

    動きは比較的素早いこと。

    銃火器やナイフなど、武器を身に着けていること。

    そして、なぜか若い女性がターゲットとして攻撃されやすいということ。


    ならば、咲季ほどの少女を見逃すはずがない。

    敵を調べれば、情報が掴めるかも。

    そう考えて、調査を進めていた。

  • 115SF好きP25/11/01(土) 15:02:08

    >>114

    広「敵については、まだ分からないことも多い。慎重に、でも着実に。調べを進めないとだ、ね」


    ことね「ありがとう、篠澤さん。少しでも、咲季に近づくといいな……」


    そんな風に会話していた時。

    突然、すごい勢いでラボの戸が開かれた。


    莉波「広ちゃん!すぐに来て!」


    広「莉波……?どうしたの、急に」


    莉波「……佑芽ちゃんが……佑芽ちゃんが!!」

  • 116二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:28:42

    保守

  • 117SF好きP25/11/02(日) 00:15:59

    >>115

    篠澤さんと一緒に、集中治療室に急ぐ。

    途中で同じく呼ばれた星南先輩とも合流した。


    先日と打って変わって、私は強い勢いで集中治療室の戸を開ける。


    広「佑芽!」


    私が戸を開け切らないうちに、篠澤さんは滑り込むように隙間から部屋に駆け入る。


    ことね「……あ!」


    目に入ってきたもの、それは。


    目を覚ました、佑芽だった。

  • 118二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 08:47:33

    保守

  • 119SF好きP25/11/02(日) 12:15:06

    >>117

    佑芽はまだぼんやりとした虚ろな目で、天井を見つめて動かない。

    けれど、確かに目は開いていた。


    佑芽「……」


    美鈴「佑芽さん、分かりますか……?私ですよ」


    一足先に着いていた美鈴ちゃんが、佑芽の手を強く握って、呼びかけていた。


    広「佑芽、佑芽……!私、広だよ」


    篠澤さんも、その手を重ねる。


    佑芽「……ん」


    かすかに、佑芽が言葉を発した。

  • 120SF好きP25/11/02(日) 14:16:13

    >>119

    ことね「……いま!」


    莉波「うん、うん!」


    星南「佑芽、頑張って……!」


    みんなが一心に、佑芽に思いを送る。



    ついに、佑芽の目に、光が灯った。



    佑芽「……ひ、ろ……ちゃん?……み、すず、ちゃ……ん……?」


    広・美鈴「……!」


    手を握っていた二人の表情が、パッと明るくなる。


    美鈴「はい……はい!私です。私たち、ですよ……!」


    ついに佑芽と、意思疎通ができた。

  • 121SF好きP25/11/02(日) 18:56:45

    >>120

    佑芽はゆっくりと周りを見渡し、言葉を続けた。


    佑芽「ここ……どこ……?」


    星南「ここは、初星学園よ。あなたは、半年以上も眠ったままだったの」


    佑芽「眠って、た……?」


    広「そう、だよ。でも、今目覚めた。佑芽、よかった。……よかった……!」


    語尾は涙交じりの上擦った声になり、篠澤さんと美鈴ちゃんは佑芽に優しくハグしながら、泣き始めた。


    周りにいる私たちも、もらい泣きしてしまった。

  • 122二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 23:36:07

    保守

  • 123SF好きP25/11/02(日) 23:52:56

    >>121

    医師「脈拍も異常ないようね。よかった……!私は有村さんのところへ、薬の補充をしに行ってきます。皆さんは、佑芽さんに話しかけてあげてください」


    先生は静かに微笑むと、部屋を後にした。


    星南先輩が涙を拭いながら、佑芽に優しく話しかける。


    星南「グスッ……ほんとに、よかった……!……。佑芽。目が覚めて早々で本当に、本当に申し訳ないのだけれど。起きてた時のこと、何か覚えてないかしら?記憶が薄れてしまう前に、聞いておきたいの」


    佑芽「起きてた、ときのこと……」


    空中に目を泳がせ、何かを探るような表情で、佑芽は話始める。

  • 124二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 07:17:38

    うめ起きたー!!!
    良かった…本当に…

  • 125SF好きP25/11/03(月) 10:26:06

    >>123

    佑芽「私は、林の中にいて。ひどく……お腹が減って……どんぐりを、食べました。足が疲れて……動けなくて……」


    佑芽の回想を静かに聞く私たち。

    状況証拠からも、話の内容に間違いはなさそうだ。


    その時、ふと手に握った布切れに、彼女は気付いた。


    佑芽「これ……は……?」


    ことね「それは……咲季の、衣装の布だよ。佑芽はこれだけ、寝ている時も、ずっと大事に握ってたんだ」

  • 126SF好きP25/11/03(月) 10:29:31

    >>125

    佑芽「咲季……?……お姉、ちゃん……?」


    ゆっくりと呟く佑芽。



    しかし、次の瞬間。


    佑芽「う、あぁ……うぅ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!」


    佑芽は急に、表情を歪め、苦しみ出した。

    頭に手を当て、激しくもがき始める。

  • 127SF好きP25/11/03(月) 17:25:14

    >>126

    美鈴「!?佑芽さん……?佑芽さん!しっかり……しっかり、してください!」


    広「う、佑芽……!」


    星南「大変……!莉波、すぐに先生を呼んできて!」


    莉波「はい!」


    一目散に部屋の外へ駆けていく莉波先輩。


    佑芽「ないで……かないで……!」


    苦しみながら何かをずっと繰り返している。

    私は顔を近づけて、その言葉を汲み取ろうとする。

  • 128二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 23:19:27

    お姉ちゃんの謎に近づきそうだけど、佑芽が心配。

  • 129SF好きP25/11/03(月) 23:26:53

    >>127

    苦し紛れな小さな声で、こう言っていた。


    佑芽「行かないで……お姉ちゃん……お姉ちゃんを……連れて行かないで……返して!!」



    ヴィーーーーン



    突如、けたたましくサイレンが鳴り響く。


    基地中に耳が割れるような音が響き、部屋という部屋はランプで赤く染まる。

  • 130二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 02:45:51

    ほしゅ

  • 131SF好きP25/11/04(火) 08:06:50

    >>129

    ことね「な、何……!?」


    動揺する私たちに畳み掛けるように、基地のスピーカーから雨夜先輩の鬼気迫る声が響き渡る。


    燕「総員、戦闘配置につけ!敵の襲撃だ!……第一防衛ラインが、突破された!」

  • 132二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 08:23:33

    これもしかしてお姉ちゃん敵堕ち√か…?

  • 133SF好きP25/11/04(火) 12:45:22

    >>131


    ドォーン



    直後、やや離れた位置で何かが爆発する音が聞こえた。


    一同「きゃーーー!!!」


    音に続いて、建物が振動する。みんな思わず叫んだ。


    ことね「……ど、どうしましょう、隊長……!」


    星南「……敵が防衛ラインを超えてきた。もしかすると、ここも危ないかもしれないわ」

  • 134二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 22:26:05

    >>132

    マザーAI説が…

  • 135SF好きP25/11/04(火) 22:29:58

    >>133

    動揺しながらも、一呼吸おくと、星南先輩はキリッと表情を変え、皆に指示を出す。


    星南「あなたたちはすぐに、地下シェルターに向かって!千奈と、佑芽をお願い。私は燕と合流して、指揮を取る!」


    一同「はいっ!」

  • 136SF好きP25/11/05(水) 07:28:28

    >>135

    ことね「千奈ちゃん、いくぞー」


    私は千奈ちゃんに肩を貸しながら、ゆっくりと立ち上がらせる。


    千奈ちゃんは相変わらず、力無く、しかし私の誘導には応じてゆっくり立ち上がった。


    美鈴「佑芽さんは、このまま運びます」


    美鈴ちゃんと篠澤さんは、ベッドのキャスターのロックを外し、治療室から佑芽を運び出す。


    またどこか遠くで、爆発音が響いた。

  • 137SF好きP25/11/05(水) 13:03:03

    >>136

    地下シェルター。

    初星学園のあるこの場所は、戦時中、軍の研究施設として使われていたらしい。


    その時の名残で、いわゆる防空壕が残っていた。


    避難してきた人の中に大工さんや技術者がいたので、協力していまの地下シェルターに改良されたそうだ。


    麻央「急いで!怪我人や病人、女性と小さい子を優先して!訓練を思い出して、各自最低限の備蓄品と武器を持って入るんだ!」


    的確に指示を出す麻央先輩に従い、皆が順にシェルターに入る。

    避難するのは非戦闘員と怪我人や病人。


    戦闘員と指揮系統は、校庭に集まってから、次々と前線に繰り出していった。

  • 138二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 22:08:41

    保守

  • 139SF好きP25/11/05(水) 22:42:29

    >>137

    ことね「さ、千奈ちゃん。階段降りるよ、気をつけて」


    千奈ちゃんに肩を貸しながら、私たちはなんとか下りることができた。佑芽たちも、周りの大人が手伝って、無事シェルターに入る。

    チビども三人も、ひと足先に他の人が連れてきてくれていた。


    地下施設らしく、途切れ途切れに配置された蛍光灯に照らされた部屋の中。

    避難した人の不安で動揺する声、泣き声が、ザワザワと無機質なコンクリートの壁に反射する。


    初めは私たちと同じ女性と子供が、徐々に男性も入ってくる。

    部屋は広めに設計されていて、物資、気温や換気も何も問題なさそうだ。

  • 140SF好きP25/11/06(木) 06:17:30

    >>139

    ややあってから、麻央先輩、莉波先輩、清夏が下りてきて、扉を閉めた。


    麻央「全員、入ったかい?」


    麻央先輩の声かけに、静かに頷く人々。

    その様子を確認してから、先輩は無線機を通じて外と連絡を取る。


    麻央「星南、こちらは避難完了した!そちらの状況は……」


    女性「きゃあ!!」

  • 141SF好きP25/11/06(木) 06:18:54

    >>140

    麻央先輩の連絡途中、突然一人の女性が叫び声を上げる。


    麻央「……!どうしました!?」


    女性「ゆうたが……ゆうたがいないの!」


    泣きそうな声で叫ぶ女性。

    ゆうたくんの、母親だった。


    私は息を呑む。

  • 142SF好きP25/11/06(木) 13:13:52

    >>141

    ゆうたくんは4人兄妹の末っ子で、まだ5歳。

    うちのチビに似てることもあり、いつも気にかけていた。


    お母さんの元に、他の3人はいるみたいだ。

    避難の混乱で、逸れてしまったのかもしれない。


    ゆうたくん……どこに!?



    麻央「とにかく、落ち着いて!この中に本当にいないか、よく確認してください!……こちら麻央!星南、応答願います」


    星南「聞こえていたわ。子供が一人、いないのね」


    燕「……!?おい、あれは?」


    無線越しに、雨夜先輩の声が響く。

    続いて、星南先輩の息を呑む声。


    星南「……!大変よ!校舎4階の窓辺に、子供がいるわ!もしかしてゆうたくんじゃないかしら!?」


    通信を聞き、私は震えた。

  • 143SF好きP25/11/06(木) 19:38:49

    >>142

    それは、今日の昼のことーー


    ことね「おー!いい空。今日は綺麗な夕暮れが見えそうだな」


    ゆうた「ほんとう?おねーちゃん」


    ことね「うん、多分!ちょうどそうだな、あの4階の窓から見たら、綺麗なんじゃないかな?」


    ゆうた「いいね、みにいきたいな」


    ことね「おお、いいじゃん!一緒に行こうナー!」


    ーーそんな会話をしたばかりだった。



    きっと、きっと私のせいだ。

  • 144SF好きP25/11/06(木) 23:32:28

    >>143

    ゆうた母「……いません、やっぱり、いません……」


    麻央「……わかりました、僕が保護しに、」


    ことね「私が!!私が、行きます!」


    麻央先輩の言葉を遮り、立ち上がって私は名乗り出た。


    麻央「ことね!?ダメだ!ここは責任者として、僕が」


    ことね「麻央先輩は、みんなをまとめるのに必要です!それに、あたしは子供たちと触れ合って、あの子達をよく知ってます。ゆうたくんを、無事に連れ帰ります!」

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