ここだけ黒服がシャーレの先生になった世界線 4

  • 1二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:12:01

    気付いたら時間を遡っていた上にシャーレの先生になっていた黒服のスレ その4です。
    私は元々のスレ立て主ではなく、面白そうなのでSSを書いている者です。

  • 2二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:15:37

    たておつ!

  • 3二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:17:42
  • 4二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:19:29

    建て乙です

  • 5二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:21:14

    お待ちしておりました。

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:21:46

    あらすじ

    ミレニアムでの仕事をユウカと一緒に行うことにした黒服。
    その影響でゲーム開発部と早めに仲直りしたり、コユキがゲーム開発部に入ったりと様々な影響が出てしまったが、そんなことは黒服は知る由もないのであった。

    C&Cに襲撃されることもなく、平和にミレニアムプライスの受賞者発表を見守る中、ゲーム開発部は特別賞を受賞したのだった。

  • 7エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:23:19

    ミレニアムの視察とゲーム開発部の支援が終わりを迎えた。

    ゲーム開発部の「ミレニアムプライス『特別賞』」の受賞は正式に成果として認められ。
    部員数4名の部活動として正式に活動可能となった。

    天童アリスについては、ゲーム開発部にゲストとして参加し、ミレニアムプライスでの受賞という成果を上げたこと、
    現在どこの学校にも所属していないことを根拠に、ミレニアムへの編入に向け、手続きを進めると早瀬ユウカは語っていた。
    最も、結局のところ生徒会長の調月リオの承認が必要とのことで、私との面会も含め、どうにか引きずり出すとのことである。

  • 8エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:24:22

    「では、私はシャーレへと戻ります。これからも何かあれば気軽にご相談ください。」

    先に忙しそうなセミナーへの挨拶を済ませ、最後に立ち寄ったゲーム開発部の部室でも別れの挨拶を告げる。
    なお、入室した際には天童アリス以外寝落ちしている状態といういつかの光景とほぼ同じであり、
    しかし今回は急いでいるわけではないので、天童アリスのゲームプレイを眺めながら起きるのを待っていた。

    「先生、本当に、ありがとうございました。おかげで、私はまたここでみんなといられることができます」
    初めに花岡ユズに挨拶を返される。

    「いえ、私がやったことは本当に些細なことで、今回の受賞は皆さんの努力の成果ですよ。」
    それに対し、正直な本音を返す。私は今回特に何かやった覚えがない。そもそもゲーム開発部の存続という問題は当初私にとって
    それほど価値のある問題ではなかったのだ。
    しかしゲーム開発とはいえ、何かの研究に情熱を傾ける生徒たちの姿に共感を覚えたのもまた事実であり、特別賞を受賞したと分かった時には嬉しく思ってしまったのもまた事実だ。

  • 9エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:25:26

    「ううん、ユウカと仲直りするきっかけを作ってくれたのも先生だし、私たちのやることを止めずに助けてくれたのも先生だもん。とっても感謝してるよ! ありがと、先生。今度はそっちに遊びに行くね!」

    才羽モモイが朗らかな笑みで続く。

    「それこそ、皆さんとユウカさんの願いの結果だと思いますが……感謝については受け取っておきます。シャーレにはいつでもいらっしゃてください。」
    早瀬ユウカがゲーム開発部の事を気にかけていたからこそ、その想いを早瀬ユウカを味方につけるために利用したのがその原因だ。
    本来、ありがたがられるようなことではない。

    「先生、私からもお礼を言いますね。ありがとうございます、私たちの味方になってくれて、それに、アリスちゃんのいたところで、助けてくれて。
    正直、最初はちょっと怖い人だなと思ってましたけど、今は、信頼できる先生だと思ってます。先生のお仕事にも興味が出ました。」
    才羽ミドリが照れ笑いをしながら私に話しかける。

    「そういっていただけると嬉しいです。味方になる価値をみなさんに示していただいたからこそ、そうしたにすぎません。そして、何事も鵜呑みにせず、警戒することは悪いことではありません。これからも頑張ってください。」
    そういえば当初、才羽ミドリは私に対し、詐欺師だのと言っていた。否定できない面もある以上、彼女の観察力は優れているという事だろう。
    デザイン、イラスト制作を担当する彼女にとって持っていて困ることは無いスキルだ。

  • 10エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:27:34

    「ちょっと、寂しくなりますね。先生と会えなくなるのは。私、まだ外出のお許しは出ていませんから。でも、折角ゲーム開発部に入れたんですから、これからも頑張りますよ!」
    黒崎コユキは表情をころころと変えながら私に宣言する。

    「ミレニアムにも定期的に訪問するつもりですよ。それに、外出許可がとりづらいならユウカさんに相談してみるのも良いでしょう。目的がシャーレで、彼女と一緒であれば許可も得られるかもしれません。」
    その手があったか、と黒崎コユキが笑う。脱走と拘束を繰り返していた彼女は、新たな居場所を見つけ、今のところ再犯の予定は無いようだった。
    詳しい内容は不明だが、早瀬ユウカやセミナーの生徒たちと本音で語り合ったことも彼女の心情の変化に繋がっていることだろう。
    この調子であれば、兼部という形であれセミナーに復帰することも直に現実的になるだろう。

    そして室内のゲーム開発部たちは残る一人の少女へと顔を向ける。

    「先生、感謝です。先生のおかげで、私はまたみんなと会うことが出来ました。先生とした冒険もとても楽しかったです。」
    天童アリスが礼儀正しく頭を下げて挨拶をする。すっかり人間的な所作が見についたようだ。

    「それは何よりです。アリスさんも早くこの学校の生徒になれるといいですね」
    天童アリスについては気になることが多くあった。一貫してゲーム開発部の生徒たちを旧知の仲として扱う事はその最たるものだ。
    しかし、そのために無理やり彼女を研究対象にするなどできるわけもなかった。

  • 11エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:28:36

    改めて別れを告げ、部室を出る。
    部室棟を出て、駅のある区画へと向かう途中。

    「先生!」
    背後から声がした。今しがた別れたばかりの天童アリスの声だ。

    「アリスさん? どうかされましたか?」
    「えっと、その、アリス、まだお話したいことがあって」
    天童アリスには珍しく弱弱しい語り始める。

    「……あの部室では言いにくい話でしたか?」
    「……はい。アリスにも原因は不明ですが、先生にだけ話した方が良いと思って。」
    どういうことだろうか。彼女の言葉を待つ。

    「アリスが目覚めたとき、私はみんなの顔を見て、名前を思い出しました。自分の名前と、ゲーム開発部の仲間やユウカの名前をです。」
    「……そうでしたね」
    「でも……先生だけは違いました。先生だけはアリスには名前が分からなかったんです。『先生』という名前もです。」
    「……成程。そういうこともあるかもしれませんね」

    もし天童アリスに起こったことが私に起こったことと同様の過去への時間遡行であれば、それ自体はおかしいことではない。
    何故なら以前の時間軸で先生だったものは、私とは似ても似つかない者だったのだから。

  • 12エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:31:09

    「はい。アリスもそれ自体は問題ではないと思います。ですが、不思議です。何故、私は皆のことを覚えていて、皆は私のことを覚えていないのか」
    「……」
    「廃工場にいた機械……ケイが問いかけたことも気になります。アリスに覚えてますか、と聞きました。」
    天童アリスが不安そうな顔で私を見上げている。そしてこう続けた。

    「先生。先生は知っていますか? 私は一体何者でしょう。」
    「……それを、何故私に?」
    「……ごめんなさい。それも分からないんです。先生なら、何かを知っているような、気がしただけで」
    何を言えばいいのだろうか。私の知っている情報をそのまま話すわけにはいかなかったし、時間遡行のことなど以ての外だ。
    しかし、感情的には何も言わないでいるということは出来なかった。

    「アリスさん。」
    「……はい」
    「アリスさんが何者か、それに答えられる内容を私は持っていません。」
    「……そうですよね、ごめんなさい、先生。」
    天童アリスが悲しみを隠すように微笑む。そのような表情ができるようになるまで情緒が成長していることにも改めて驚かされるが、私は話を続ける。
    「ですが、それはアリスさんが何者であったか、という部分だけです。」

  • 13エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:32:18

    「え?」
    天童アリスがきょとんとする。そのはずだ、私も今、思い付きで話しているに過ぎない。

    「これからの話はそうではありません。過去何者であったとしても。それは過去の話です。アリスさんにはこの先何者にもなれる可能性があります。今はそれで良いのではないでしょうか。」
    「……アリスは、何者にもなれる……」
    私の苦し紛れでもある言葉を天童アリスは噛み締めるようにつぶやく。

    「はい。もちろん、過去についても何かお話できることが見つかれば、共有しますよ。」
    「……はい! アリスは先生の言葉を胸に刻みました!」

    天童アリスはそう言っていつも通りの活力ある微笑みに戻った。

  • 14エピローグ ミレニアム①25/10/15(水) 00:33:21

    「では、電車の時間もありますので、私はこれで。アリスさん、お見送りありがとうございます。」
    「……はい、先生も、お元気で」
    今度こそ別れを告げ、駅へと向かう。

    アビドスでの小鳥遊ホシノ、そしてミレニアムでの天童アリス。
    形は違うが、時間遡行に影響されたと思われる生徒と私は関わることとなった。
    この先も増えるのだろうか。そう考えながら、私はミレニアムを後にした。

    続く

  • 15二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:34:22

    本日はここまで。

    明日は対話記録と、人物備忘録の予定です。

  • 16二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 06:10:09

    朝ほー

  • 17二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 07:36:54

    ミレニアム編お疲れさまでした!

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 12:12:22

    ここのコユキは横領カジノしなさそう

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 20:06:35

    ほしゅー

  • 20人物備忘録 ミレニアム編①25/10/15(水) 23:14:02

    生塩ノア
    早瀬ユウカの案内で訪れたセミナーで出会った生徒です。
    極めて記憶力に優れた生徒ですが、私のことを『以前に会ったことがある気がする』
    と言っていたのが気になるところです。

    黒崎コユキ
    初めて会った際は反省部屋という名の監禁部屋から脱走を図ろうとしていた生徒です。
    電子的な暗号解除に関して明らかに異常レベルで精通しており、あらゆる電子的セキュリティは彼女の前では無意味でしょう。
    そして、個人的には共感を覚えるところですが、独特な倫理観や遵法精神を持っており、反省部屋に入れらていたのも、
    彼女の『先輩の気を惹きたい』程度の些細ないたずら心から生まれた重大事案が複数引き起こされたことが理由としてあるようです。
    そういった倫理観の更生には至っていませんが、ゲーム開発部に入ったことで、そういった試し行動を取る必要が無くなり、
    重大な事件を引き起こさなくなることが期待されています。

  • 21人物備忘録 ミレニアム編①25/10/15(水) 23:15:04

    才羽モモイ
    ゲーム開発部の部員で、廃部の危機にあたりシャーレに連絡を寄越した生徒です。
    所謂トラブルメーカー気質で、思いつくまま行動しようとし、周囲までそれに巻き込む傾向があります。
    その行動力の結果、天童アリスの発見に至った点から、天運に恵まれた人物といえるでしょう。
    当初、セミナーもとい早瀬ユウカと対立状態にありましたが、関係改善してからは反転するように早瀬ユウカに対する
    好意、信頼感を隠さないようになっています。
    いずれにせよ、彼女がいなければゲーム開発部の存続は無かったと言えるでしょう。

    才羽ミドリ
    才羽モモイの双子の妹であり、姉と比べて冷静に物事を観察できるタイプです。
    もっとも、トラブルメーカーの姉に対してストッパーになることは少なく、むしろ消極的な賛成に回るケースが多いようです。
    私に対しても、天童アリスに対しても初対面時には警戒しており、得体の知れない天童アリスをゲーム開発部に入れることにやや抵抗があったようですが、
    一方で気遣いの出来る人間でもあり、天童アリスと黒崎コユキ、二人の新入部員に対するフォローをする場面が良く見られました

    花岡ユズ
    ゲーム開発部の部長です。
    過去の出来事からコミュニケーションの苦手な引きこもりに近い状態になっており、初対面時にはロッカーの中に隠れるという奇行をしていた生徒です。
    早瀬ユウカと才羽姉妹との関係改善や、天童アリス、黒崎コユキの入部などの出来事を通し、自らが立ち上げた部活動と、それによって多くの人間が動いた
    ことに責任感が生まれたのか、私がゲーム開発部と関わっている間に、組織の最高責任者とし急速に成長していく姿を目の当たりにしました。
    もっとも、彼女自体は自分の変化に自覚が無いようです。
    また、ゲームプレイヤーとしてはまさしく天才と言ってよく、私が「まるでゲームのようだ」と思っていたシッテムの箱の支援システムを、
    どういうものであるか想像し、戦術のアドバイスを私に伝えてくるという離れ業を無自覚にやってのけたのは驚きました。

  • 22人物備忘録 ミレニアム編①25/10/15(水) 23:16:20

    天童アリス
    以前の時間軸において何者かに名付けられたであろう名前を、自ら名乗った存在であり、
    本来はAL-1Sという型名であったはずの少女です。
    彼女は最初からゲーム開発部の生徒たちおよび早瀬ユウカの名を認知しており、
    自分をゲーム開発部に所属する天童アリスであると認識していました。
    これが私が経験した時間遡行現象と思われる事態によるものなのかは不明ですが、何らかの方法で未来からの情報を受け取った
    と考えるのが自然に思えます。
    彼女の今後の動向には注意が必要でしょう。

    早瀬ユウカ(更新)
    責任感が強く真面目な生徒という印象がこれまで強かったですが、
    それに加えてミレニアムの生徒たちのことを親目線のようなもので見ている節があります。
    生徒会の会計という立場上、これまで他の部活動に勤しんでいる生徒たちからは敵視されることもあったようですが、
    その最たるものであったはずのゲーム開発部との関係が極めて良好へと転じたことが、良い意味で評価の変化に繋がっているようです。
    ミレニアムとの関係において彼女と協力体制を作ることが必須と考え、行動を共にしてもらっていましたが、今のところそれは正解であったと考えています。

  • 23明星ヒマリとの対話記録25/10/15(水) 23:17:56

    ゲーム開発部への支援とミレニアムの視察を終えた翌日、ヴェリタスの副部長である各務チヒロより連絡があり、
    私は再びミレニアムへと足を運ぶことになりました。案内されたのはヴェリタスの部室ではなく、『特異現象捜査部』という別の部活動の部室でした。
    その際の対話記録です。

    私:(ノックをする)
    明星ヒマリ(以下、ヒマリ):どうぞ。
    私:失礼します。
    ヒマリ:お待ちしていました。あなたがシャーレの先生、ですね?
    私:ええ、そのようになっています。
    ヒマリ:突然お呼び出しして申し訳ありません。私はミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美少女ハッカーであり、「全知」の学位を持つ眉目秀麗な乙女であり、そしてミレニアムに咲く一輪の高嶺の花である「特異現象捜査部」部長、明星ヒマリと申します。よろしくお願いしますね。
    私:……何とお呼びすれば?
    ヒマリ:ふふっ、ヒマリ、で結構ですよ
    私;分かりました、ヒマリさんとお呼びしますね

  • 24明星ヒマリとの対話記録25/10/15(水) 23:19:07

    ヒマリ:それで、早速ですが、本題に移りましょう。今回、先生をお呼びした理由ですが。
    私:はい。
    ヒマリ:改めて謝罪と、感謝をお伝えするためです。
    私:謝罪と感謝、ですか?
    ヒマリ:はい。ちなみにどのような理由かおわかりになりますか?
    私:そうですね……今敢えてその話題をされるとなると、やはりG.Bibleに関する誘導やコユキさんの誘拐事件の糸を引いていたのは貴女だった、という事でしょうか。
    ヒマリ:……気づかれていましたか。
    私:はっきりとではありませんが。G.Bibleの情報源がヴェリタス、コユキさんの誘拐事件の主犯もヴェリタス。そして関係あるかは不明ですが、セミナーがヴェリタスから押収した物品がヴェリタスに戻されたという話もユウカさんから聞いています。
    私;何者かがゲーム開発部の生徒たちの動きを誘導していたとすれば、それはヴェリタス以外あり得ない、そう考えていました。勿論偶然の可能性も考えていましたが。

  • 25明星ヒマリとの対話記録25/10/15(水) 23:20:11

    ヒマリ:……お見事です、先生。まさかそこまで分かっていらっしゃるとは。
    私:単なる憶測でしたが。それで、それについて謝罪と感謝とは、具体的にどういう話ですか?
    ヒマリ:はい。まずは謝罪についてです。それは、コユキの誘拐事件についてです。
    私:謝罪ならマキさんにいただいていますが、それ以外のことでですか?
    ヒマリ:そのことも含めてです。あの子を唆して実行させたのは私ですから。……元々は別の方法でゲーム開発部の子たちを誘導するつもりだったのですが、予想外のことが起こり、急遽計画が変更になったのです。
    私:予想外の事?
    ヒマリ;ええ、私たちにとって、コユキやユウカがゲーム開発部に協力的になることは想定外だったのです。そのため準備不足の状態でゲーム開発部の……いえ、アリスのことを調査しなければならなかった。その結果、先生方を危険な目に合わせてしまった。
    私:……なるほど、そういうことですか。つまり、貴女とその協力者……状況から察するに生徒会長の調月リオさんでしょうか。は、天童アリスと名乗るあの少女のことを知っていて、それがどういった存在なのか確認しようとした、と言ったところでしょうか。

  • 26明星ヒマリとの対話記録25/10/15(水) 23:21:24

    ヒマリ:(驚いた様子で)……今の説明でそこまで理解されたのですね。
    私:リオさんについては当てずっぽうですたが、あっていましたか?
    ヒマリ:はい。ですが、一つだけ補足があります。私たちが調べたかった事、それはアリスさんともう一人、先生のこともあります。
    私:私ですか?
    ヒマリ:はい。失礼を承知ですが、アビドスでの騒動でのきな臭い動きから、私は先生の事をどういった人物なのかを知りたいと思っていました。
    私:成程、確かにミレニアムにとっては突然武器の手配を依頼してきた怪しい人物、と言ったところだったでしょうか。
    ヒマリ;……ええ
    私:それで、どうでしたか? 私の評価は
    ヒマリ:そうですね……この学校に来られて以降先生のことを見させていただいていましたが、先生はよき先生として、ゲーム開発部の子たちやユウカのことを導いていらっしゃったと思います。疑ったことを恥ずかしいと思うほどに、先生は先生でした。
    私:……
    ヒマリ:……ですから、先生に対して謝罪と感謝を述べたくて、お呼びしたのです。試すような真似をしたことへの謝罪と、あの子たちを導いてくれたことの感謝を。

  • 27明星ヒマリとの対話記録25/10/15(水) 23:22:53

    私:……成程、理解しました。
    ヒマリ:お許し、いただけますか?
    私:許すも何も、別に怒るような内容ではありませんよ。学校を守る立場として考えると、当然の事でしょう。
    ヒマリ:……ですが……
    私:気にされるのであれば、一つお願いを聞いてもらえませんか?
    ヒマリ:はい? 私にできることでよければ
    私:ええ、これはユウカさんにもお願いしているのですが……

    私は明星ヒマリに、調月リオ生徒会長と会談する場を設けたいという要望を伝えました。
    その後は、特異現象捜査部の活動内容などについて雑談をし、対話は終了となりました。
    記録は以上です。

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:25:01

    本日は以上です。

    今度こそミレニアム編は一旦終わりです。

    アビドス編と異なりはじめと終わり以外は結構めちゃくちゃやっちゃいましたが、いかがだったでしょうか。
    感想いただけると嬉しいです。

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 07:23:02

    乙です

  • 30二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 12:31:04

    乙でした。
    選択が違えば、道筋も変わるのは当然ですし、良かったと思います。

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 21:00:52

    よるほ

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 21:58:32


    頭の良い者同士の会話を書けるのやっぱり凄いなぁ
    あとこの時空、アリス、ケイ、ノア、変則だけどホシノの反応見るに本当に時間遡行した世界なのか?戻ったんじゃなくてなにか“上書きされている”ような…上手く言えないがそんな感じに思える

  • 33手記 ベアトリーチェへの対策25/10/17(金) 00:10:39

    小鳥遊ホシノとの友好関係を結ぶことに成功した現状、最も気を払うべき相手は目下、
    私のいないゲマトリア、もといベアトリーチェ、ということになるでしょう。

    私の手札では現状アリウスを支配しているベアトリーチェを直接攻撃することは不可能ですが、
    彼女の取った行動の経緯については報告を受けていた以上、おおよそ分かっています。

    かつての私は彼女と同輩であったため、好む好まざるに関わらず、彼女が明確にこちらを裏切るまでは手を出せなかったのですが、
    今は異なります。
    こちらの持てる情報を最大限に活用して、対処するべきであると考えています。

    それにあたり、今後の目標を最終目標と個別の目標に分け、整理しておきます。

  • 34手記 ベアトリーチェへの対策25/10/17(金) 00:11:58

    最終目標

    ベアトリーチェを『色彩を呼び寄せさせずに』打破すること

    色彩についてはこちらでも完全に理解している訳ではありませんが、自暴自棄となったベアトリーチェが色彩を呼び寄せた結果、
    この世界に色彩が到達した。あるいは到達するのが早まった、というのは状況から見て間違いありません。
    呼び寄せた方法も彼女自身しか知り得ない情報でもありますが、あの『先生』がとった解決方法でうまくいくとは限らないため
    色彩をここに到達させない、あるいは最低限それを遅らせる必要があると考えています。
    よって、彼女にはこちらの目的を直前まで気づかせず、逃がすことなく打倒してしまうというのが最終目標となります。

  • 35手記 ベアトリーチェへの対策25/10/17(金) 00:13:11

    個別目標①
    百合園セイアとの連携

    ベアトリーチェが成功したと考えていた百合園セイアの暗殺は、偽装工作にすぎませんでした。
    しかし、その偽装が余りにも完璧であったがゆえに、トリニティ内部でも犯人捜しが躍起になって行われており、
    『先生』はそれに巻き込まれた形となります。
    偽装に成功すること自体は自明であるので、それをうまく活用できないでしょうか。
    襲撃が実行される日まで時間が無いので、そのためには早急に手を打たなければなりません。


    個別目標②
    エデン条約の乗っ取り及び巡航ミサイルによる攻撃阻止

    エデン条約の締結が成功するかどうかに関しては正直なところどちらでも構わないのですが、
    エデン条約を利用されること、および、ミサイルによる多大な被害は避けるべきです。
    これに関しては、最悪の想定としてミサイルを着弾前に撃墜することを考える必要がありますが、
    それよりも発射地点候補の確認や、トリニティ、ゲヘナ双方への事前の擦り合わせが必要となるでしょう。
    アリウスの兵たちは精鋭とはいえ数は多くありません。切れる手札を十分に使い有利に立ち回れるよう入念な準備を行う予定です。

    個別目標③
    スクワッドへの離反工作
    成功する確率は低いと思われますが、ベアトリーチェが特別扱いしていたスクワッド、特にロイヤルブラッドとよび寵愛していた
    秤アツコを離反させることができれば、最終目標を達成できる可能性が高まります。
    少なくともエデン条約締結日まで、直接関わることは不可能でしょうが、ベアトリーチェの目的とアリウスの生徒たちの目的はそもそも共通のものではないため、
    つけ入る隙はあるかもしれません。

  • 36手記 ベアトリーチェへの対策25/10/17(金) 00:15:02

    当面はこれらの目標に向けて準備をする必要があるでしょう。
    まずはトリニティで会うべき人物が一人います。
    それについては別途記録を残す予定です。

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 00:20:05

    本日はこれだけです。

    書きながらエデン条約編を見返してたら自分が大きな誤解をしていたことに気付き書き直しました。
    よってとても短いです。
    アビドスが黒服に知識があるから概ね本筋通りで、ミレニアムでは黒服に知識が無いために色々変わってしまいました。
    今回はそのどちらとも違う話にできればいいなと思います。

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 00:21:37

    更新お疲れ様です。
    まさか、色彩の到来が正解ルートなんて黒服でも考え付かんだろうしなぁ・・・・・・

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 06:55:07

    そうはならんやろ、な選択肢が連続してるもんな側から見ると

  • 40二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 15:29:31

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 22:13:09

    ほしゅ

  • 42二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 22:15:22

    更新乙です。
    最新のストーリーでアリウス自体にも問題と言うか爆弾が眠ってる事になりましたからね···
    ベアトリーチェが情報独占してたら間違いなく黒服も知らない情報になる。

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 23:27:34

    つうか本編って悪手しか選べない中の最善手選び続けるタイトロープな環境よな…

  • 44桐藤ナギサとの対話記録25/10/18(土) 00:24:23

    アビドスの仕事を終えた私は、トリニティへの訪問を最優先タスクとしていました。
    名目は砲兵の派遣に対する礼ですが、目的は生徒会長たちに会うことです。
    そしてアポイントを取るコネクションが阿慈谷ヒフミしか存在しないため、ブラックマーケットで覆面をしている彼女の写真とともに
    念入りにお願いをしたところ、思いがけず翌日すぐスケジュールの調整が出来たとの返事がありました。
    戦力支援のお願いをした時もそうですが、彼女は桐藤ナギサからとても重要視されているようです。最も、本人がそれに気づいているかは怪しいものですが。
    これはトリニティへ初めて訪問した際の対話記録です。

  • 45桐藤ナギサとの対話記録25/10/18(土) 00:26:15

    桐藤ナギサ(以下、ナギサ):それでは、改めまして先生。ようこそいらっしゃいました。
    私:ご丁寧に、ありがとうございます。本日は急なお願いにお応えいただいたばかりか、このようにお茶までご用意いただき、恐縮の至りです。
    ナギサ:まあ、先生ともあろう方がそこまでご丁寧にされることはありませんよ。それに私たちも一度、『シャーレの先生』にお会いしたいとは常々思っておりましたから。
    私:それは光栄です。……私たち?
    ナギサ:ええ。ご存じかもしれませんが、ここトリニティには私含め3人の生徒会長がおります。トリニティの名の通り、フィリウス・パテル・サンクトゥスの3つの分派それぞれに代表を選出しているという訳です。
    私:つまり、残りのお二人の生徒会長も、ということですか。
    ナギサ:ええ、ですが、ミカさん……パテル派代表の聖園ミカは最近何かに勤しんでおり、姿を見せないことがあるのです。そして、サンクトゥス派の代表である百合園セイアは本来この場に同席する予定だったのですが、先ほど体調が優れないと、急遽不参加となってしまいました。今日は調子がよさそうだと思っていたのですが……
    私:体調不良? 大丈夫なのですか?
    ナギサ:……よくあることですので、そこまで心配は不要と言われているのですが、そういわれてもやはり、心配するものはするものです。……あ、申し訳ありません、身内の話ばかりで
    私:いえ、構いませんよ。ナギサさんがその方たちのことを大切に思っていることが伝わってきました。
    ナギサ:そ、そうですか。うふふ、少し照れてしまいますね……

  • 46桐藤ナギサとの対話記録25/10/18(土) 00:28:33

    私:それにしても、急な訪問した身で言うのもどうかとは思いますが、随分お忙しい様子だとお聞きしましたよ。
    ナギサ:……そうですね、近々この学園にとっても大きなイベントがありまして、その準備がありますので
    私:エデン条約、ですか?
    ナギサ:ご存じでしたか。
    私:ええ、一応
    ナギサ:そうなのです。準備にやることが多くありまして
    私:そうでしょうね。それに、今まで対立していた学園同士が不可侵条約を結ぶとなると、反発も大きいのでは?
    ナギサ:……それは、どういう意味ですか?
    私:失礼いたしました。決して揶揄したりする意図はないのです。ただ、少々きな臭い話を耳にしまして……
    ナギサ:きな臭い話、ですか?
    私:はい。実は今回急ぎ訪問したのは、もちろんこの前のお礼をお伝えするためもありますが、この話をするためでもあるのです。
    ナギサ:……どういったお話でしょう。
    私:エデン条約を利用して良からぬことを企んでいる者がいるようです。そしてその者は、エデン条約締結の責任者となる人物たちの身を狙っている、と。

  • 47桐藤ナギサとの対話記録25/10/18(土) 00:30:06

    ナギサ:……急にそのようなことを言われても……いえ、そのお話が嘘ではないとしてですが、どうしてこちらに来たばかりであるはずの先生がそのような話を知ったのですか?
    私:……それに関しては、外部から来た大人として、特殊なコネクションを持っている、としか言えませんね。
    ナギサ:そうですか……
    私:急にこのような話をして申し訳ありません。ですが、私としてはこの話を鵜呑みにしてほしという訳ではないのです。
    ナギサ:え?
    私:与太話としてでも聞いていただき、少しでも警備を強化するなどしていただければ、と思っただけです。私としても確信や根拠のある話ではないのです。
    ナギサ:そうでしたか……貴重な情報、ありがとうございます。そちらについては、こちらでもお調べするとともに、警備についても考えてみます。
    私:はい、ぜひお願いします。また、こちらで何か分かれば、お知らせします。
    ナギサ:はい、こちらも何か掴めれば、共有させていただくことがあるかもしれません。
    私;ええ、何でもご相談ください。

    この話はこれで終了となり、その後はアビドスでの話やシャーレの仕事内容など、そして阿慈谷ヒフミとどのように知り合ったのかなど(これに関しては、アビドスに観光に来ていたと無理のある誤魔化しをしました)世間話をして、桐藤ナギサの次のスケジュールの時間がっ迫っているという事で会談は終わりとなりました。
    記録は以上となります。

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 00:34:52

    本日はここまで

    何故かなかなか終わらないこの導入部分に関しては時系列的にはアビドス後、ミレニアム前のことになります
    また、この黒服は生徒に対しては悪いことを一切企んでおりません

    導入は明日くらいまで続きますが、手記形式の話はとりあえず今回までの予定です。

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 07:07:34

    朝保守

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 07:13:28

    更新乙です。
    む、セイアは急な体調不良か。
    もしかして、何かが見えて黒服先生から逃げた?

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 14:41:31

    昼保守

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 21:50:43

    お願いという名の脅迫をしてるんじゃないよ元ヴィラン系教師!

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 22:02:59

    まあ一応ブラックマーケットで会ったことは隠してあげてるから……
    バレるけど

  • 54百合園セイアとの出会い25/10/18(土) 22:55:12

    「待ってくれ」
    初めてのトリニティ訪問、桐藤ナギサとの会談を終え、外に出て歩いていると、背後から声をかけられた。

    その声に振り向くと、一人の女生徒がそこにいた。
    小柄、金髪の長髪で、特徴的な狐耳。
    体調不良であると聞いていた百合園セイアだ。

    「……貴女は?」
    こうやって直接会ったのは私の記憶では初めてだ。
    桐藤ナギサと会談した部屋と声をかけられたこの場所の位置関係を考えると、彼女は会談の様子を隠れて確認していたとも考えられる。
    そこに、どういった意味があるのか。

    「君は……何者だ?」
    百合園セイアが青ざめた顔で私に問いかける。私からの言葉に答えるつもりも無さそうだ。

  • 55百合園セイアとの出会い25/10/18(土) 22:59:36

    今まで、初対面で異形である私を警戒したり、恐怖したりすることはあったが、そういうものとも異なる反応。
    彼女の『能力』で何かを見たのだろうか。

    「私が何者か、ですか。一応、『シャーレの先生』をやっている者です。」
    彼女の聞きたい内容がそれであっているのかは不明だが、現在の立場を伝える。

    「……シャーレの……先生……本当に?」
    「ええ、まあ、怪しい容姿をしているのは自覚していますが、そこまで怪しまれるモノでしょうか……大丈夫ですか?」
    百合園セイアは私の返事も聞こえていないのか、虚ろな目でこちらをみていたが、電源が落ちるかのようにその場にへたり込んでしまった。
    倒れはしなかったが貧血の症状のような様子だ。恐らく体調不良というのも事実だったのだろう。
    すぐに近づいて状態を確認する。幸いにして意識はあるようで、こちらのことを黙ってみていた。
    近くのベンチへと座らせる。こう言った場合、横になってもらった方が良かったのだったか。

    「誰か呼んできましょうか?」
    トリニティは医療救護を専門にしている集団、救護騎士団があるはずだ。
    しかし、百合園セイアが小さく首を振った。
    無理を押しても私に話しかけてきたのだ。何らかの事情があるのだろう。

  • 56百合園セイアとの出会い25/10/18(土) 23:03:42

    「……すまないね。急に変なことを言ってきたかと思えば、その場に倒れるなんて。」
    暫く待っていると、体調が少し戻ったのか、百合園セイアが小さな声で話し始めた。

    「いえ、こちらは大丈夫ですが……本当に大丈夫ですか? 無理はなさらない方が良いかといますが」
    「大丈夫……ただ、少し寝不足でね。自分の身体のことは自分が一番よく知っている。」

    全く安心できない様子で、彼女はそう話す。

    「そういえば、自己紹介もまだしていなかったね。私は百合園セイア、ナギサから聞いているかもしれないがサンクトゥス派の代表だよ」
    「ああ、やはり貴女がそうだったのですね。」
    今まで一方的に話しかけられているだけだった彼女からようやく自己紹介を受ける。

    「それでやはり、君がシャーレの先生であるというのは事実なのだろうか。」
    「ええ、その通りです。というより、何故そこまで気にするのです?」
    「それは……すまない。変なことは承知で言うんだが、私の知っている姿とあまりにかけ離れていたんだ」
    明言こそしなかったが、やはり百合園セイアが未来視で見た何かが私を怪しんだ原因であるようだ。

  • 57百合園セイアとの出会い25/10/18(土) 23:05:23

    「私の姿……ですか。」
    「ああ、君に……先生に行っても仕方のないことではあるだろう。ただ、夢で見た先生の姿が、今の先生の姿とあまりにかけ離れていたから、驚いてしまった。よく考えれば、それだけのことだ」
    「夢で……ですか。それにしては、切羽詰まっているように思いましたが……」
    夢ではなく、未来予知で見た光景なのだろう。しかしだとしても興味深い。もし彼女が、例えば以前の時間軸での未来を視ていると仮定すると、それは未来予知ではない別の何かなのではないだろうか。

    「……そうだね。その通りかもしれない。信じられないかもしれないが、私はよく正夢を見るのだよ。そしてそれは決まって明晰夢として現れる。その明晰夢で起こった事象は、未来で必ず起こっている、未来を変えることは、できたことがない」
    「明晰夢……つまり、それを見ていると自覚していると?」
    彼女の未来予知の力は興味があったが、本人から実際にそのメカニズムを聞けるとは思っていなかった。

    「そうだね。だから先生のこともそう思ったのかもしれない。しかし、現実にそうではなかったのだから、それはただの夢だったのだろうね。」
    そう呟いて、彼女は一度口を閉じる。自分の発言に納得しているようにはあまり見えない。

    「しかし、正夢を見る、ですか……もしかして、寝不足なのもそれが関係しているのですか?」
    「……そうかもしれない。見たくないものを見てしまうのが、怖いんだ。健常な状態であればある程度見るか見ないかの制御は出来ていたんだが…」
    寝不足や精神的な疲労によって制御が利かなくなっている。ということだろうか。そしてその原因が恐らく彼女の言う見たくないものを見てしまったことが原因。
    悪循環に陥っているとしか思えなかった。

  • 58百合園セイアとの出会い25/10/18(土) 23:07:15

    「……すまない。こんな奇異荒唐なことを初対面でいきなり聞かせて、困らせてしまっただろう。私のよくない癖なんだ。」
    自嘲するように続ける彼女は、本当に精神的に参っているようだ。この状態で襲撃に対処した結果、以前の時間軸では死に瀕してしまったのだろう。
    未来予知など、そもそも身に余る能力ではあると思うが、気休めでも彼女の救いになることは無いだろうか。私の中の何者かが私に働きかける。

    「それについては、一向にかまいませんよ。私も似たようなことを言われることはあります。それより、正夢についてですが、……きっとセイアさんのおっしゃっていることは事実なんでしょう。」
    「え?」
    「そして、私ではない別の者が先生をやっていたとすれば……つまりそれは私こそがイレギュラーなのかもしれません。」
    百合園セイアが目を見開く。私が何かを知っている可能性に思い当たったのかもしれない。

    「セイアさんの未来予知のような正夢は、これから起こる避けられない未来を映しているかもしれません。しかし、絶対ではない。イレギュラーの私が存在する。」
    「……」

    狐耳の少女は、黙って私の言葉を待っている。どこまで言っていいのか、言葉を選びながら続ける。
    「ナギサさんにも話しましたが、近いうちに何かきな臭い事件が起きるかもしれない、そのとき私はここにはいないかもしれません。ですがもし、その先に見たくない未来があるとしたら」

    一度言葉を切って手を差し出す。
    「イレギュラーである、私を頼っていただいて構いません。何せ……私には実績がある。違いますか?」
    「……何故か怪しい勧誘を受けているような気になってきたが、そうだね。少し、考えてみようじゃないか。」

    百合園セイアは私の手を取り、小さく微笑んだように見えた。

  • 59百合園セイアとの出会い25/10/18(土) 23:08:16

    「それと、ナギサさんが大変心配されてましたよ。」
    「ああ、実は会談の様子はこっそりうかがっていたからね。それは知っている。心配をかけてしまっているのはいつものことだ。本当に心苦しいことだよ。」
    百合園セイアの体調がある程度回復するまで、その後もそこにいることにした私は、彼女と雑談を交わすことにした。

    「この後のことを考えると、余計に苦しい気分になるんだ。」
    この後の事、恐らくアリウスの襲撃のことだろう。それについて、自らの死を偽装していた。この時点で思いついているかは不明だが、その未来も既に見ていたのかもしれない。

    「未来のことについて、直接伝えるのが難しいのであれば、別の方法を考えてみるのはどうでしょうか」
    「別の方法?」
    勿論、その内容について私が知っていると明かすことは出来ない。だが、助言が全くできないわけではない。

    「例えば、何かが起こる前に、ナギサさんにだけ伝わるメッセージを残しておく、とか。」
    「……成程、それについても何か考えておこう」

    その後、歩けるほどには回復した彼女を、私室だという部屋まで送り届け、シャーレ事務所へと戻った。
    その日の夜、ゲーム開発部の才羽モモイからメールが届き、私はトリニティより前にミレニアムで仕事を行うことになった。

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 23:11:40

    本日はここまで

    明日からようやくゲームにおけるエデン条約編本編部分に入っていきます
    ミレニアムでは書きながら自分が想定していた展開とだいぶ変わってしまったので今から不安です

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 06:34:26

    セイアが絶望から一歩でも前に踏み出せるといいな

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 11:10:58

    やっぱりセイアは“先生”を見てたのか、しかし…この様子だとこの先一番の鬼門はクロコじゃないか?ほぼ間違いなく“ゲマトリアの黒服”を知ってるだろうし

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:49:02

    まぁセイアは覚えてる側よね

  • 64補習授業部の名簿25/10/19(日) 23:15:05

    ミレニアムにおけるゲーム開発部との仕事が終わり、その間たまっていた仕事をようやく片付け終わるまで、数日かかった。
    その間、直前に別れの挨拶を告げたはずの早瀬ユウカは毎日手伝いに来てくれていた。
    完全に返しきれない恩を抱えつつあるような気がするが、それは後日考えることにするとして。

    丁度そのころの事、以前会談し、連絡先を交わした桐藤ナギサから連絡を受けた。
    端的に言うと「やってもらいたい仕事がある」というシンプルな内容だ。

    彼女と会談を行った日から、本日まで連絡があったことは無く、突然の連絡である。
    しかし、何かがあったことは容易に想像でき、自分が以前行ったことに果たして意味があったのか、それを確かめる事ができるかもしれない。
    私はすぐにトリニティへ行く準備を進めた。
    トリニティの生徒会長との連携はそれだけ私にとって優先事項である。

  • 65補習授業部の名簿25/10/19(日) 23:18:52

    「へー、あなたが先生? 何だか……ちょっと変わってるね?」
    案内された室内に入るとすぐに、不躾な言葉が飛び込んできた。
    前回は不在であり直接会っていなかったトリニティの生徒会長の最後の一人、聖園ミカ。
    最も、不審者扱いされたことも多々あれば、死体どころか不法投棄物扱いされたこともあるので、それに比べれば遥かに思いやりのある発言ではあるが、

    「ミカさん、いきなり失礼ですよ。」
    「えー、いいじゃん。ナギちゃん初対面じゃないんでしょ?」
    「私が初対面じゃなくてもミカさんは初対面でしょう」
    桐藤ナギサが彼女の振る舞いを嗜めるが、気にした様子もない。
    そして最後の一人の生徒会長、百合園セイアはやはり不在のようだ。

  • 66補習授業部の名簿25/10/19(日) 23:20:43

    「すみません、先生。こうしてお会いするのは2度目ですね。」
    「そう、ナギちゃんだけずるいよねー。私も会ってみたいって言ってたのに」
    「…ミカさん?」
    「はーい、ごめんなさーい。」
    桐藤ナギサの声が少し低くなり、聖園ミカは肩をすくめて一応の謝罪をする。

    「本当にすみません。慣れない人が来て興奮しているみたいですが、こう見えてこちらも私と同じ生徒会長、聖園ミカです。」
    「ペットみたいな扱いだぁ」
    「……どうも、よろしくお願いいたします。」
    聖園ミカは明るくふるまっている。
    初対面で部外者である私にどういう人物であるか印象付けたいのだろうか。
    しかし、以前の時間軸と同じことが今回も起きていたとすれば、彼女は百合園セイアをその手にかけた、と思い込んでいるはずである。
    それを考えると、この振る舞いが本心からの行いであるとは到底思えなかった。

    以前の会談では少ししか触れなかったトリニティの織体制のことを桐藤ナギサが説明している間も、
    聖園ミカは落ち着くことなく隣で延々と話し続けており、大声で怒られるまでそれを続けたいた。
    その光景は、アビドスの対策委員会による対策会議を思い起こさせた。
    それはつまり、これが彼女たちの日常なのだろう。
    そして、そこには本来、もう一人いたのだろう。

  • 67補習授業部の名簿25/10/19(日) 23:21:49

    「……そろそろ本題に入りましょうか。」
    「ええ、何でも、私に頼みたい仕事があるとか。」
    「はい、実は先生には『補習授業部』の顧問になっていただきたいのです。」

    補習授業部。
    桐藤ナギサが百合園セイア襲撃の犯人イコール『トリニティの裏切り者』を見つける箱として用意した組織があることは知っていた。
    しかし、それがそのような名前であったことは初めて知ったが、表向きは大切な時期に試験の成績が著しく悪い、あるいはそもそもテストを放棄するような
    進級が危ぶまれる生徒たちが4人もおり、その生徒らを一つにまとめて、落第への救済措置をとることとして生まれた組織、とのことだ。

    「成程……そういうことでしたら、お受けしましょう。」
    内容はどうあれ、元より断るつもりのなかった私は悩むことなく返事をする。

    「先生なら、そう言っていただけると信じておりました。では、こちらを」
    そうして渡された名簿には、【5人】の生徒の名前が載っていた。

    それは桐藤ナギサからの、聖園ミカにすら明かさないメッセージに違いなかった。

  • 68補習授業部の名簿25/10/19(日) 23:23:18

    それから幾日かが過ぎ、補習授業部の生徒たちとの顔合わせの日。

    「お……お久しぶりです。先生」
    「こちらこそ先日は大変お世話になりました。ヒフミさん。まさか、貴女が落第の危機に直面するような生徒だとは思っていませんでしたが」
    「ち、違うんです先生!!」

    アビドスで知り合い、桐藤ナギサとの面通しにも協力してくれた阿慈谷ヒフミもまた、補習授業部のメンバーとして名簿に載っていた。
    大方、ブラックマーケットへの出入りがバレでもしたのだろう。
    そして、補習が必要なのも成績不良という訳ではなく、そもそも私用で試験を受けなかったということらしい。そちらの方が余程悪質だと思うが。

    「まあ、一応事情は分かりました。つまり学校から温情をもらったわけですから、補習は確り受けて、合格するようにお願いします」
    「……はい、すみません。」

    まるで普通の教職員のようなことを諭す。
    彼女であればたとえトリニティを退学になっても何とでもなりそうな性格をしているが、本人にその自覚は無さそうで、少なくとも表面上は反省しているようだった。

  • 69補習授業部の名簿25/10/19(日) 23:25:02

    「では、残りの3名にも会いに行きましょうか。ご案内お願いできますか?」
    「は、はい! あれ、でも名簿は5人分ありませんでしたっけ。」
    「ああ、一人はちょっと事情があって、すぐには参加できないようです。事情が事情なので、補習授業部への参加も『可能なら』ということのようです。」
    「そうなんですか?」
    やはり、桐藤ナギサにとって、阿慈谷ヒフミは特別のようだ。私と同じ資料が彼女にも渡されているらしい。

    「それと……その生徒については、残りの部員には言わないようお願いします。どうなるか分からないのもあります。よって、あくまで4人がメンバー、ということで」
    「え……? は、はい。分かりました。では、最初は正義実現委員会に行きましょう。こっちですね」

    先導する阿慈谷ヒフミについて歩いていく。
    まさかそこで残りの3名全員と顔を合わせることになるとは思っていなかった。

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:35:11

    本日はここまで
    そして明日は更新できない可能性が高いです

    ミレニアムでは巻き込まれ側でしたが、
    裏工作と暗躍が活かせる場面での黒服の方が書きやすいですね。

  • 71二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 06:59:51

    5人目か…

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 12:27:46

    補習授業部幻の5人目

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 17:56:07

    暗躍系ヴィランだった経験が役立つ時か…

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 18:06:44

    追いついたぞ
    安価もダイスも無しで即興で2ヶ月も書き続けてるのもはや畏怖

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 23:37:57

    そろそろ夜、ラリ保ー

  • 76二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 07:31:03

    あさほ

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 14:39:09

    捕手

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 17:08:57

    >>77

    キャッチャーやないかい!

    それはそれとして一応保守

  • 79二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 22:33:17

    砲手、うちーかた始め!

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:14:44

    自分の趣味のために堂々と試験をサボった阿慈谷ヒフミ。補習授業部の部長。

    アリウスのスパイであり、十分な学校教育を受けておらず、武力によって物事の解決を図ろうとする戦闘狂、白洲アズサ

    昨年度は稀に見る才女として頭角を現していたが、今年になって露出に目覚め、何度も正義実現委員会の世話になっている浦和ハナコ。
    衣服と共に学力をも脱ぎ捨ててしまい、直近までの数回のテストで赤点Wを連発している。

    正義実現委員会の一員であるというエリート意識だけは備わっているが、純粋に成績の悪い下江コハル。最も恐ろしいのは彼女にその自覚が無いように見えることだ。

    これが補習授業部の本来の部員である4名だ。
    このうち、白洲アズサと浦和ハナコは正義実現委員会に拘留されていた。

    ミレニアムでも、そういえば黒崎コユキ拘留状態にあったが、逮捕されていないだけの阿慈谷ヒフミも反体制側であることを考えると、
    ミレニアムのゲーム開発部が可愛く見えてくるレベルの問題児集団といっても過言ではないだろう。

  • 81補習授業部の生徒たち25/10/21(火) 23:15:57

    奇しくも正義実現委員会の部室で残る一人以外の部員が全員揃ったため、補習授業部の部室として宛がわれた空き教室へと場所を移した。

    「それで、一体どんな補習をしてくださるのですか? 黒くて大きくて硬そうな先生?」
    失礼な発言ランキングがあるとすれば、いきなりトップに躍り出たと言える浦和ハナコの発言。

    「んな!? いきなりエッチなことを言うなアンタ!」
    一瞬で何を想像したのか下江コハルが吠える。

    「どういう意味だ?」
    白洲アズサがぽかんとして喧嘩を始めた二人を眺める。

    「み、皆さん落ちついて……」
    常識人ぶって、おろおろとしている阿慈谷ヒフミ。
    こんな部に呼ばれてしまった時点で同じ穴の貉だろう。

  • 82補習授業部の生徒たち25/10/21(火) 23:18:11

    「どんな、と言われるとこの学校の試験に出る内容でよければ何でもお教えしますよ。出題範囲については把握していますので。ですが、これは補習ですので、とりあえず皆さんが分からない部分を都度解説していくことになるでしょうか。」
    下江コハルとやりあっていて聞いているか分からないが、一応質問には返事しておく。そもそも、私は今回に限っては、積極的に合格しに行こうとは思っていない。

    桐藤ナギサから、第一回目の追試験に不合格者が出た場合、合宿をするようにという指示が来ているのだ。
    これは暗に、最初の追試験には不合格者を出す必要があると言われているようであり、全員が合格しそうな様子であれば逆の手段も考える必要があるとさえ思っていたのだ。

    しかし実際に会ってみると、補習授業部に選ばれただけあり、部痛の復習程度では試験に合格できそうにないレベルの者や、そもそも真面目に試験を受けるつもりがあるか怪しいものまで、
    わざわざこちらが工作するまでもなく、最初の追試は失敗するだろうと思われた。
    となると、最低限残りの追試験で突破できるよう、実力の足りない者を少しでもフォローしていく方針を取ることにした。

  • 83補習授業部の生徒たち25/10/21(火) 23:23:11

    幸いにして、少なくとも浦和ハナコは自分の試験はともかく、周りの生徒を助けようとする意志はあるらしく、自主的に白洲アズサの質問に積極的に答えるなど、協力してくれていた。
    阿慈谷ヒフミは学力に関しては平凡で、特に言うべき点は無かった。趣味に走らなければ問題ないだろう。
    白洲アズサは今回の試験では間に合わないかもしれないが、勉強に対する姿勢は比較的真面目であるので、いずれは何とかなるだろう。
    問題となるのは、わざと点数を落としていると思われるその浦和ハナコ本人と、自分の頭の悪さに自覚が無い下江コハルの2人に絞られるだろうと思われた。
    そして、第一回の追試験が行われた。

    阿慈谷ヒフミ 72点
    白洲アズサ 32点
    下江コハル 14点
    浦和ハナコ 2点

    合格者は、阿慈谷ヒフミのみ。補習授業部の合宿が行われることが確定した。
    白洲アズサの点数が予想を少し下回ったが、大方私の予想通りであった。

    合格者は、阿慈谷ヒフミのみ。
    補習授業部の合宿が行われることが確定した。

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:26:11

    短いですが本日はここまで。

    補習授業部との出会い~第一回追試まで
    はどうあがいても本編との違いをさほど生めなかったのでざっくりと進めました。

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 06:47:04

    特にそんなつもりもないのに反体制側認定されるヒフミに悲しき現在…

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 12:33:39

    ハナコはバリバリ警戒してる感じだなー

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 19:50:55

    夕方保守

  • 88桐藤ナギサとの対話記録②25/10/23(木) 00:18:10

    1回目の追試験の後、短時間ですが桐藤ナギサと再び会う機会を確保できました。
    目的は合宿が始まってしまう前に、補習授業部の意味、5人目の生徒について、そして私の助言に意味があったのかの確認するためです。
    その際の対話記録です。

    ナギサ:あら、先生。補習授業部はいかがですか。
    私:まあ、そうですね。順調ですよ。
    ナギサ:そうなんですか? 聞いた話ではほとんどの生徒が落第だったそうですが……
    私:『予定通りに進んでいる』という意味です。
    ナギサ:そういうことですか。それで、ご用件をうかがっても?
    私:聞きたいことがありまして。「3回の追試のいずれかで、全員合格する」。ことが目的、ということはそれができなければ「全員退学」という理屈は分かりますが……
    ナギサ:はい
    私:5人目は「可能であれば参加」ということになっています。この五人目は全員合格の条件内なのかどうかの記載が無かったもので
    ナギサ:ああ、成程。その点ですね。それは……本人に聞いてください、私は知りません。まったく……
    私:……
    ナギサ:な。何でしょう?
    私:いえ、何となく、ナギサさんにも年相応なところがあるのだななどと思いまして。
    ナギサ:な、なんですかそれは!……す、すみません、ついはしたない声を
    私:こちらこそ、揶揄ってしまい申し訳ありません。
    ナギサ:やっぱり、からかっていたんですね? もう……

  • 89桐藤ナギサとの対話記録②25/10/23(木) 00:20:52

    私:すみません。さて、私としては聞きたいことは聞けましたね。
    ナギサ:え? ……それだけで良いのですか?
    私:そうですね。後はその5人目に聞けば分かるのでしょう?
    ナギサ:……それだと私の立場が……いえ、そうではありませんね。先生には正直にお話しないといけません。
    私;……
    ナギサ:「補習授業部」は元々、トリニティの裏切り者を探すために作ったものだったのです。
    私;トリニティの、裏切り者。
    ナギサ:はい。エデン条約の締結の妨害を狙う生徒がトリニティの中にいる。それを探す……というより候補者たちを監視して、処分してしまうことも想定したものです。
    私:……先ほど、元々と仰いましたが。今は違うのですか?
    ナギサ:……いえ、今も可能性自体は残っています……ですが、私の考えが根本的にまちがっていた、という可能性に思い至りまして
    私:ふむ。それで計画を少し変更したと?
    ナギサ:……先生は、何でもお見通しなんですね。
    私:いえ、私もこうして分からないことを確認するために来ていますから、それは買いかぶりというものです。しかし、ナギサさんにいただいたヒントをもってすれば、十分に推測は可能でしたよ。
    ナギサ:……ありがとうございます。今回のことも、そして、前回いただいた助言も大変助かりました。
    私:そうですね、それに関してはお役に立てて何よりです。

    記録は以上です。

    誰かに聞かれている可能性も考え、直接的な言及をお互いにしませんでしたが、
    5人目の生徒について、そして補習授業部の意味についてはおよそ推測通りであるという確信が持てました。
    後は、実際に会って話を聞いてみる外ないでしょう。

  • 90合宿の始まり25/10/23(木) 00:27:54

    トリニティ内で通常使われている校舎ではなく、自治区内の少しは慣れた場所にある別館、

    そこが補習授業部の合宿所として宛がわれた施設だった。


    「暫く使われていない施設おきいていましたから、もっと薄汚れた設備を想定していたのですが、綺麗に整っていますね。これなら裸で寝ても清潔に過ごせそうです!」

    「裸になったら追い出すわよ!?」

    「全裸で追い出すなんて、コハルちゃん、良い趣味してますね」

    「何でそうなるのよっ!?」


    立った数日で定番になった光景を見ながら、室内の様子を確認する。

    確かに整っている、整っているどころか……


    「せ、折角みんなで合宿に来たんですから仲良く……って先生、窓に何かついてますか>」

    「ああ、いえ整理されているどころか、つい最近、丁寧に清掃でもされたのかな、と思いまして。このように、窓枠にも埃一つない。」

    今も現役で使われているような、そういった清潔さがこの建物にはあった。

  • 91合宿の始まり25/10/23(木) 00:29:14

    「あら? 確かに、そうですね。まずはお掃除でも、と思っていたのですが、どなたかが事前に片づけてくれていたのでしょうか?」
    「わざわざ、補習授業部の合宿何かのために?」
    浦和ハナコの考えに、下江コハルが勉強ではあまり発揮されない鋭さで返す。確かに、部外者が掃除をしたというのは補習授業部の成り立ちを考えると考えにくい。
    ただ、それは部外者であった場合の話だ。

    「あれ、そういえばアズサちゃんはどこ?」
    「あら、建物に入るまでは一緒だったのですが……」

    浦和ハナコがそう言って後ろを振り向く。
    タイミングよく、部屋の扉が開いた。

    「みんな。聞いてくれ。この建物を偵察していたんだが……」
    「て、偵察?」

    室内に入ってきた白洲アズサが真面目な表情で語る。
    「うん。出入り口数とか部屋の構造とかを調べるために偵察は不可欠だ。」
    「そ、そうなのかな……? それで、何か見つけたの?」
    「ああ、この建物には、既に侵入者がいる。」
    大真面目な顔で、白洲アズサはそう言った。

  • 92二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 00:30:33

    すみません。
    眠気が限界なので中途半端ですが、本日はここまでとさせてください…

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 07:14:44

    いつも夜遅くにほぼ即興で毎日投稿しててすごいなぁ…

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 07:23:56

    お疲れ様です。
    いつもありがとうございます。

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 12:31:16

    昼保守

  • 96二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 20:42:38

    保守授業部

  • 97曲直瀬リリ25/10/23(木) 23:41:39

    「なるほど。では、その侵入者さんが掃除してくださったんですね!」
    白洲アズサの発言に浦和ハナコが得心のいった様子でそう返す。

    「侵入者って、アズサ、誰かと会ったの?」
    「いや、まだ顔は見ていない。だが、確実に私たち以外の誰かがいる。向こうの、奥まった場所にある部屋だ。」

    白洲アズサの言っている部屋というのは食堂のことだ。
    そこに人の気配がしたので戻ってきた、と彼女は言う。その人物に関しては……n

    「先生、それってもしかして……」
    阿慈谷ヒフミが小声で話しかけてくる。さすがに気付いたようだ。

    「まあ、何にせよ行ってみましょうか。アズサさん、案内をお願いできますか?」
    「ああ、任せてくれ。」

    白洲アズサが先導し、続き私と阿慈谷ヒフミ。
    未だ言い争い、というには争いが成立していない浦和ハナコがその後ろについた。

  • 98曲直瀬リリ25/10/23(木) 23:43:05

    「先生、ここにいらっしゃるのでしょうか。何か聞いてますか?」
    阿慈谷ヒフミから、また小声で質問される。秘密にしておくようにと言ったことを忠実に守っているようだ。

    「いえ、私も特に何も聞いていませんが、可能性はあるかと」

    「先生、ヒフミちゃん。内緒のお話ですか?」
    「ひゃぁっ、は、ハナコちゃん!?」

    気付くと、浦和ハナコがすぐ後ろで話を聞いていた。
    阿慈谷ヒフミからどうしようと言う視線を感じたので頷いて説明する。

    「秘密という訳ではないのですが、この補習授業部には一応5人目の生徒がいるので、その生徒かもしれないという話をしていただけです。」
    「5人目?」

    当然、初耳であったらしい、浦和ハナコ。
    「部長のヒフミさんと私は元々名簿を持っていたので、知っていたのですが、参加できるか分からないとのことで黙っていてもらったんです。なので、その生徒かもしれない、という話です。ですが、こればかりは直接会ってみた方が早いでしょうね。」

    隠していたことを追及するつもりは無いらしく、浦和ハナコはそれもそうですね、と引っ込む。

  • 99曲直瀬リリ25/10/23(木) 23:44:15

    「先生。トラップなどは仕掛けられなていないようだ」
    食堂の扉の前につき、念入りにチェックしていた白洲アズサがこちらを話しながら頷く。
    その言葉にしたがって扉を開く。

    「やあ、待っていたよ、先生。それに補習授業部の皆も」
    室内には、一人の少女が待ち構えていた。

    体形は小柄、金髪のショートヘアで大きめの帽子を被っている。
    「僕は、曲直瀬(まなせ)リリ。今年入学した1年生だけど体調の関係で試験を受けることが出来なくて、補習授業部に入れてもらうことになった次第でね。今日から一緒に参加させてもらうことになった。よろしく頼むよ」

    入室した私たちを見て、彼女はそう名乗った。

  • 100二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 23:45:38

    このレスは削除されています

  • 101曲直瀬リリ25/10/23(木) 23:47:12

    曲直瀬リリと名乗った少女への反応はまちまちだった。

    「アズサが変なこと言うから緊張しちゃったじゃない! おんなじ1年生の下江コハル。同じ一年生だけど初めましてよね?」
    あからさまに安堵の表情を浮かべる下江コハル。同じ1年生が現れたこともうれしく思っているようだ。

    「初めまして、一応部長の阿慈谷ヒフミです。体調不良と聞いて心配していたんですけど、参加できそうでよかったです! 一緒に頑張りましょう」
    真面目に挨拶をする阿慈谷ヒフミ。予測できていたこともあり、落ち着いている。

    「……」
    浦和ハナコは、目を見開いて口を押さえている。何かが口から飛び出そうで、それを飲み込んだような表情だ。
    彼女が何者か分かったのなら、無理もない。

    そして、白洲アズサは無言で、曲直瀬リリと名乗った少女に近づき、不安そうな表情で彼女を見つめ、体に触れる。
    「ちょっ、何してるのよアズサ!? えっtむぐ」
    空気の読めないことを言いそうになった下江コハルの口を浦和ハナコが塞ぐ。いつもとは真逆の光景だ。
    白洲アズサはしばらくその状態だったが、その内黙ったまま一歩引き、元の場所へと戻った。
    その様子を、触れられていた少女は微笑んでみていた。

    「さて、挨拶も済んだことだし、早速勉強……の前に、トリニティらしく、お茶でもどうだい? 丁度用意してもらっていたところなんだ。」

    気品を感じさせる様子で、少女は部員たちを席に案内する。部員たちはおずおずと言った様子で逆らうことなく席に着く。
    流石、と言ったところだろうか。

    つまるところ、曲直瀬リリとは、変装した百合園セイアに他ならなかった。

  • 102曲直瀬リリ25/10/23(木) 23:49:22

    「ところで、……リリさん。用意してもらって、と仰っていましたが、他にどなたかいらっしゃるんですか?」
    こちらについてもある程度の予想はついていたが、確認のため質問する。

    「ああ、何分体調が悪くなることがあるので、面倒を見てくれている人がいるのだよ。」
    と、百合園セイアが言った時、タイミングよく「失礼します」と別の人物が入ってきた。

    青髪に眼鏡をかけたメイド服の少女だ。
    浦和ハナコがのけぞった。

    「リリ、あんた何者なの? さすがのトリニティといえどメイドを持ち込んでる生徒はそうそう聞いたことないわよ」
    「こ、コハルちゃん?」
    妙に慣れた手つきで給仕をする青髪の少女の様子に、下江コハルが歯に衣着せぬ言い方で話しかける。
    浦和ハナコが冷や汗をかいている。
    いつも彼女がしていることを思えば下江コハルの行動は大したことが無いように思えるが、後輩が自覚なく地雷原を練り歩いているのは流石に怖いのだろうか。

    阿慈谷ヒフミは新しく入ってきた人物をまじまじと見つめ、首を傾げている。どこかで見たが思い出せない、という様子だ。
    白洲アズサはこちらの生徒のことはよく知らないようで、黙って自分のカップに紅茶が注がれるのを見つめている。

    私もこの人物のことは知らないが、状況から言って百合園セイアの護衛に抜擢された人物。救護騎士団の、それも幹部以上の人物だろう。

    「百合園セイアが体調不良で入院している」と偽装された襲撃事件は、いくつかの工作を経て「身分を偽装して百合園セイアが補習授業部に加わる」
    という状況を生み出した。

    バタフライエフェクト。
    私が行った小さな助言は、私の予想をもはるかに状況に大きな変化を与えてしまったようだ。

  • 103二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 23:51:50

    本日はここまで

    という訳で本章ではセイア(とミネ)が本格参戦します

    目的? そりゃ、救護でしょ

  • 104二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 23:58:55

    更新乙
    面白い
    ハナコ苦労人ポジも新鮮

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 00:22:51

    再任アズサが耳の形でも個人特定できるのがわかったけど、早速その技能でセイアと見抜いた感じかは

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 08:29:51

    描写が少ないだけでハナコとセイアは友人だしそりゃ見抜けるわな
    まぁこんな状況にもなれば問題児のフリもしにくいよなぁ

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 16:01:54

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 00:03:55

    補習

  • 109答え合わせ25/10/25(土) 00:57:07

    何人かの心中はさておき、曲直瀬リリ(=百合園セイア)主催の茶会は和やかに進んでいた。
    ホストは現在桐藤ナギサが代行しているとはいえ、流石は生徒会長を務めるティーパーティーの一員というところだろうか。

    最も、外部要因もそれなりに大きそうだ。

    下江コハルの虚栄心は病弱で自分よりも小柄に見える同級生には余り発揮されないらしく、
    彼女にしては珍しく積極的に話しかけていた。恐らく彼女なりの気遣いでもあるのだろう。

    そして、問題行動、問題発言のプロフェッショナルである浦和ハナコは、明らかに曲直瀬リリの正体に気付いていた。
    それ故に動き方を考えあぐねているのか、この場では極めて大人しくしていた。最初こそ、下江コハルの言動にうろたえている様子はあったが、
    その内それもなくなった。彼女の心境については後程、確認しておいた方が良いだろうか。

    同じく百合園セイアのことを知っているだろう白洲アズサは、複雑な感情を抱いていることは確実だろうが、
    それでも席を立つようなことは無く、阿慈谷ヒフミと話をしたり、主催による紅茶の講釈に耳を傾けたりしていた。

    阿慈谷ヒフミは素直にその場を楽しんでいる様子で、一息つける場を最も享受しているのは彼女かもしれなかった。

    そして、給仕役を行っていたメイド姿の生徒は、警戒しているという様子を見せることもなく、しかし視界を広くとれるようにしており、やはり護衛を兼ねているだろうことがうかがえた。

  • 110答え合わせ25/10/25(土) 00:58:33

    そして茶会が終わり、勉強が始まるのかと思いきや、施設の見学がしたいという話になり、メイド生徒の案内に従って、曲直瀬リリを除く補習授業部の生徒たちは出て行ってしまった。
    つまり図られたように、私は彼女と二人きりで話す機会が与えられた。

    「先生は、行かなくてよかったのかな?」
    「いえ、貴女にお聞きしたいことがありましたから、セイアさん」
    わざとらしく聞いてくる質問に、あえて名前を付けて返事をする。

    「リリ、と呼んでくれてもいいのだよ。折角考えて作った名前なのだから」
    「その名前の由来も聞きたいところではありますが、まずはそうですね……聞きたいことが色々あります」

    勿論名前と来歴を確認した時点で、5人目の生徒が彼女であることは予想していたが、
    それでも彼女の行動自体は、不思議に思うところではあった。
    桐藤ナギサや聖園ミカの言動から、彼女が襲撃を受けたのは確実であり、容態について偽装している状況のはずだ。
    正体や、その偽装自体がバレるリスクを負ってまで私たちに近づいた理由は何なのだろうか。

    「皆が戻ってくるまでの時間までであれば、何でも」
    「では、ありがたく……まず、そもそも貴女は、どうして補習授業部に参加しようと?」

  • 111答え合わせ25/10/25(土) 01:00:12

    「本気で言っているのかい?」
    私の最初の質問に、百合園セイアはすこし顔を顰めてそう言った。

    「だとすると、少し、寂しいね。きっかけは先生の言葉からだよ。初めて会った時に、言っていただろう?」
    初めて会った時、私がトリニティへ初めて訪問した時のことだ。
    確か、『正夢』の話を聞いた、それに対し、私は……

    「もしかして、私を頼ってくれた、という事でしょうか。悲劇の未来を避けるために。すみません、確かに私はそう言いましたね。」
    「……思い出してくれて、何よりだ。 少なくとも私はそれを、生きる活力にしてきたのだからね」
    苦い顔をしていた百合園セイアはそういうと微笑んで、言葉を切った。

    「……生きる活力、ですか」
    「少し大げさに聞こえるかい? 私にとっては、人生の価値観が変わるほどの言葉だったのだよ。……眠るのが怖かった、それなのに、目覚めるのが苦痛だったんだ、この前までの私は」
    私が聞き返すと、百合園セイアは静かに、当時の状況、心境について語り始めた。

  • 112答え合わせ25/10/25(土) 01:01:41

    「あの子が、アズサが襲撃してくることも知っていた。そして、彼女を説得して死を回避したとしても、先の結末が大きく変わることは無いと思っていた。先生というイレギュラーが存在したことが、頼っていいって言ってくれたことが……未来を実際にこの目で確認したいという希望になった」
    「私の発言が……」
    「偽装により昏倒した後、意識がすぐ回復したのはそれが関係していると私は思っている。もっとも、何故か警備を強化されていた結果、直後にミネが救護に来てくれたことも大きかっただろうけどね、それにしたって君のおかげじゃないかな」

    桐藤ナギサに警備を強化するように忠言したこと、そして百合園セイアに与えた気休めが、この結果を招いた、ということだろうか。
    少なくとも百合園セイアはそう確信しているようだ。

    「そしてこれが一番大変だったんだが、目を覚ました直後、ミネを説得して、どうにかナギサにだけ連絡をとって、この機を利用して、君たちに合流した、という訳だ。最も、彼女が直接監視するという条件付きでだがね」

    彼女がそこまで言った時、再び食堂に近づいてくる足音が聞こえた。
    百合園セイアとしての彼女と話す機会はひとまずこれで終わりとなった。

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 01:03:29

    本日はここまで

    保守、ありがとうございます

    のろのろ進行していますが、書き溜めて更新は滞る気しかしないので
    今後もこんな感じで続けていきます

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 07:15:25

    ご無理はせずに…
    いつも楽しませていただいております

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 15:25:47

    ほしゅ

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 21:31:26

    たのしみ
    ほしゅ

  • 117阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:44:10

    補習授業部での合宿初日の夜。
    百合園セイアと彼女が「ミネ」と呼んでいた生徒の部屋、その他の補習授業部の生徒の部屋と分けられて宛がわれた私の部屋で仕事をしていると、ノックの音が聞こえた。
    扉を開くと、不安げな様子の阿慈谷ヒフミがそこにいた。

    「おや、ヒフミさん。何かあったのですか?」
    「い、いえ……その、そういう訳ではないのですが……ごめんなさい」
    「ふむ……とりあえず、お入りください。」
    下江コハルや浦和ハナコに見られでもしたら面倒なことになりそうだが、訪ねてきた者をそのままにすることもできないので、室内に招き入れる。
    阿慈谷ヒフミは室内をしばらく見まわしていたが、その後は口を開いては閉じて、を繰り返していた。

    「……すみません、先生。お仕事中にお邪魔してしまって」
    「大した内容ではないので構いませんよ。今は補習授業部のことが最優先です。ですから、気になることがあれば言っていただけた方が助かります。」
    「は、はい……あの……特別な何かがあるわけではないんです。ただ、寝ようとしたら何となく不安になって」

    存外、普通のことを言われた。

  • 118阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:45:34

    「どうしてナギサ様はこんなことをしたんだろうとか……退学になっちゃったらどうしよう。みたいな……あはは、私には部長何て無理です。何でナギサ様は私に部長を任せたんでしょう」

    退学の危機が身近に迫っているという事以外、非常に学生らしい、普通の質問だ。
    そして私は、そういう普通の学生らしい質問への対処が最も不得手である。
    彼女の悩みは、実際に渦巻いている陰謀やきな臭い事件とは異なり、私には縁遠い物だ。

    「……ナギサさんは、ヒフミさんは部長にすると言った時、何か話されていなかったのですか?」
    「いえ……ただ、全員を合格させるように、と。私が部長になって、皆をまとめてほしいって……」

    成程、これは桐藤ナギサの落ち度だろう。
    そもそも、補習授業部結成を決めた時点では「トリニティの裏切り者を探すため」という目的があったはずであり、
    大方、その探し役に『先生』や阿慈谷ヒフミを利用するつもりだったはずだ。しかし当の被害者の無事が分かった結果、
    その目的の意味が消えてしまったのだろう。そして、そのことを隠す必要があると考えた、あるいはそれは下手人を知っている百合園セイアからの要求なのかもしれないが、
    ともかく、補習授業部自体は計画通りに誕生させてしまった。
    結果として本来の目的という核が抜けてしまった組織の、その長として任命されてしまった阿慈谷ヒフミは自分に求められている役割に悩んでしまっている、という話だ。

  • 119阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:46:43

    とはいえ、そんなことを阿慈谷ヒフミに言えるはずもない。何か言う事を考えなければ。

    「そうですか……それだけ、ナギサさんはヒフミさんのことを信頼しているということだと思いますが」
    「あはは……その信頼を裏切って、試験を受けなかったのが私なんですよね」
    何とか捻りだした言葉も、余計に落ち込ませることになってしまった。
    正解ではなかったらしい。

    その時、タイミングよく再びノックの音がした。

    「夜分にすまないね。ちょっと話が……お邪魔だったかな?」
    「いえ、リリさん、丁度良かったですよ。」

    扉を開くといたのは、百合園セイアだった。
    先ほど話が途中で終わってしまったので、続きを話しに来たのだろう。
    実際には学校の先輩である彼女であれば私よりマシな慰めができるかもしれない。

  • 120阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:48:50

    「リリちゃん? な、何かあったの?」
    「いいや。そういう訳じゃないよ。どうも眠れなくてね。寝すぎたり眠れなかったり、不便な体だよ全く。」
    「眠れない……リリちゃんもそうなんですね」

    視線で私に入室許可を取り、百合園セイアが室内に入る。状況を察したらしい・

    「何か心配なことでもあるのかい? おっと、そういえば退学の危機だったな。不安になるのも当然な状況ではあるか。」
    「あはは、リリちゃんは、落ち着いてますよね。」
    「そういう訳でもないよ。起きたら目覚めないかもしれない不安に比べれば、進級や退学のことは二の次になるだけで」
    阿慈谷ヒフミが絶句する。
    冗談のつもりなのかもしれないが、病弱な人物がそれを言うと普通に笑えないだろう。

    「まあ、冗談はそこまでにして。そういえばヒフミはこの部活の部長だったね。ナギサに何か、言われたのかい?」
    「い、いえ……え? というかナギサって……結構親しい関係なんですか?」
    「あ。……まあ、それなりの付き合いではあるね。こんな体でなければ今頃僕がティーパーティーのホストだったろうしね」

    阿慈谷ヒフミが再びコメントに困っている。百合園セイアには意外とスリルを楽しむ趣味でもあるのだろうか。
    頼りになるかと思って入れたが、逆効果だったかもしれない。

  • 121阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:50:35

    「あ、あはは……ナギサ様に何か言われたわけではないんです。ただちょっと、不安になってしまっただけで……」
    「ふむ……」

    一応正体を隠している少女は、私の方を一瞥して、そして再び悩める少女の方に向き直った・
    「実は、不安を解消するいい方法を知っていてね。」
    「え?」
    「知りたいかい?」

    すました顔で突然言い始めた百合園セイアに一抹の不安を感じる。
    一方、阿慈谷ヒフミは一も二もなく頷く。

    「実は、私も最近激しい不安を抱えることがあってね。それを解消したとってもいい方法なんだよ。それは……」
    「それは……?」
    「……先生に、頼ってしまうことだよ」
    「え?」

    案の定、百合園セイアはろくでもないことを言い出した。
    「ほら、先生。ヒフミにはいってあげないのかい? あれほど情熱的に言ってくれたじゃないか」
    「そんな記憶は無いのですが……」

  • 122阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:53:12

    そう言いはしたが、阿慈谷ヒフミは私の言葉を待っている様子だ。
    初対面時の印象とは異なり、百合園セイアはなかなか強かな生徒のようだ。
    仕方なく、口を開く。

    「上手くいく保証はないですが、私も全力で事に当たります。ですからヒフミさんも、あまり気負わず、共に頑張りましょう。最終的な責任は私が負いますし……」
    「負いますし?」
    「最悪皆さんが退学になってもシャーレ直属になってもらうという手もありますよ。」
    「……あはは、リリちゃんも先生も、あまり冗談は得意じゃないんですね」

    特に冗談のつもりは無かったが、阿慈谷ヒフミは少し表情を緩めてそう言った。

    「ありがとうございます、先生、リリちゃん。少し、気持ちが楽になりました。……ふぁ」
    阿慈谷ヒフミが小さく欠伸をする。緊張が緩和したのは本当のようだ。

    「眠れそうですか?」
    「はい、おかげ様で」
    「で、あれば寝た方が良いでしょう。明日から勉強詰めになるでしょうから、睡眠時間は大事です」
    「はい、そうですね。私は、部屋に戻ります。おやすみなさい、先生、リリちゃん」

    阿慈谷ヒフミはそう言って部屋を後にした。

  • 123阿慈谷ヒフミの不安25/10/26(日) 01:54:15

    室内には百合園セイアと私が残った。

    「私も、今日はお暇するよ。」
    「そもそも、ここに来た用はなんだったんですか?」
    「……そうだったね。一応、今後の予定を伝えようと思ってね。」
    本当に忘れていたのかは分からないが部屋から出ようとしていた彼女が振り返る。

    「と言うと?」
    「何人か話さないといけない人がいるだろう? アズサもそうだし、それに、あの子も……どうにか、協力してくれるかい?」
    「成程、そういう事ですか。」

    彼女の目的を悟った私がそれを了承すると、今度こそ百合園セイアも退出していった。
    こうして、合宿1日目は終わっていった。

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 01:55:17

    本日はここまで

    不穏なこと言われるのも困るけど、何も言われないのも困りますよね

  • 125二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 06:45:56

    お疲れ様でございます。

  • 126二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 13:06:40

    なんでこんなノリノリなんだこのフォックスは……

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 15:09:56

    多分割と元々こんな気質だったとは思うのよこの子
    おそらく一番夏イベの時がニュートラルなメンタルに近いと思うしイニDじみた運転するし

  • 128書いてる人25/10/26(日) 19:07:09
  • 129二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 19:36:45

    お疲れ様です!
    お気に入り登録してきました!

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 22:11:21

    ほー

  • 131模擬試験25/10/27(月) 00:06:38

    補習授業部の合宿2日目の早朝。補習授業を行う教室に資料を持っていくと、そこには既に阿慈谷ヒフミがいた。
    起床時間までにはかなりの時間があるが、熱心に何かを読んでいる。
    また、何故持ってきたのか分からない謎のグッズ類が傍らに置かれている。

    「おはようございます。ヒフミさん。早いですね」
    「あ、おはようございます! 先生! 昨日あの後、寝る前にちょっと考えたことがあって……」
    そう言って、彼女は自らの考えを私に伝える。

    「成程、そういう事であれば、私の作っていた教材も活かせそうですね。丁度、1年生から3年生向けの過去問がありますから」
    「本当ですか? あれ? 3年生……の先輩はいないですよね?」
    「それもそうですね。……まあ、念のため」

    実のところ、作っている最中に百合園セイアが1年生として参加してきていることを思い出したのであるが、一応完成はさせておいたのだ。

    「そうですね……? あ、それと、ハナコちゃんのことなんですけど……ナギサ様からもらっていた資料を見ていたら、去年の成績上位者リストに名前が載っていて」
    「ほう……気になりますね。より詳細なデータを調べてみましょう。」

    阿慈谷ヒフミが自分でそれに気づいたのなら、もう隠す必要はないだろう。
    事前に権限を与えられていたトリニティのデータベースへアクセスし、詳細な成績情報を彼女と確認する。
    成績上位者などというレベルではない、圧倒的な結果が直に確認できた。
    なお、阿慈谷ヒフミは中の下といったところであった。

    そして、実際の授業の進め方について、部長としてのやる気に目覚めた阿慈谷ヒフミと共に詰めていく。

  • 132模擬試験25/10/27(月) 00:07:40

    準備が整った頃、残りの補習授業部の部員たちも集まり始めた。

    「おはよう、ヒフミはもう起きてたんだな。先生も、」
    白洲アズサが溌溂とした様子で挨拶をする。

    「むむむむ……」
    下江コハルは何故かその白洲アズサを睨んでいる。顔が赤くなっている気がするが、いつもの事なので放っておいて大丈夫だろう。

    「せ……リリちゃんはまだ来ていないみたいですね?」
    浦和ハナコはやはり百合園セイアのことが気になっているようだ。

    「やあ、お待たせしてしまったね」
    他の部員たちから遅れること数分最後に、曲直瀬リリ、こと百合園セイアが教室に現れる。
    当然の事、傍らにメイド姿の生徒を連れている。
    昨晩一人でデータベースで確認し、百合園セイアから聞いた情報を元に名前と詳細を確認した生徒、救護騎士団長の蒼森ミネ。
    幹部ではあろうと思っていたが、団長そのものだったのは少し驚いた。SNSなどを調べていると、現在行方が分からなくなっているという情報が分からなくなっているという噂が見つかったので、本人で間違いないだろう。

  • 133模擬試験25/10/27(月) 00:09:08

    「皆さん、おはようございます。今日から本格的な勉強合宿になるということで、まずは、模擬試験を行います」
    阿慈谷ヒフミが、打ち合わせ通りに本日の予定を口にする。

    学年ごとに、試験が配られる。
    白洲アズサと下江コハルは1年生用
    阿慈谷ヒフミと浦和ハナコは2年生用
    曲直瀬リリは阿慈谷ヒフミから渡された1年生用を見てにやりと笑う。
    そして、使用されていない3年生用の問題は

    「どうぞ」
    「え? 私もやるのですか……?」
    蒼森ミネに渡した。折角作った試験なのだから、誰かにやってもらった方が良いだろう。

    「こうしている間、貴女も勉強する時間がなかなかとれないでしょう。もちろん、何かあればご自分のお仕事を優先して問題ありませんよ」
    「……お気遣い、ありがとうございます」

    少し私を睨んだような気がしたが、彼女も受け取って席に着く。

  • 134模擬試験25/10/27(月) 00:10:59

    そして6人で臨んだ結果は以下の通りとなった。

    下江コハル―15点 (不合格)
    白洲アズサ―33点 (不合格)
    曲直瀬リリ―96点 (合格)
    浦和ハナコ―4点 (不合格)
    阿慈谷ヒフミ― 72点(合格)
    曲直瀬リリのメイド(記名欄にそう書かれていた)―91点 (合格)

    「リリ、あんた何でこんなところにいるのよ!? 後メイドさんは何なの!?」
    結果発表を受け、まずは下江コハルが大仰なリアクションを取る。

    「まあ、こんなものだろうね。そもそも僕は元々試験を受けていないからここに来たわけだし」
    しれっと語る百合園セイアに、3年生の問題を受けさせられた蒼森ミネが冷たい視線を送っている。

    「私も、救護、いえ、文武両道を心がけておりますので、当然です。そもそも補習授業部ではありませんが」
    その蒼森ミネは胸を張ってそういうが、結果を聞いたときはあからさまに安堵していた。
    ここ最近はまともに勉強をする時間が持てなかったため、不安があったのだろう。

    百合園セイアの失点の4点分は明らかにわざと間違えた内容だった。その上、浦和ハナコの得点した点数と同じ点数だ。
    元々知り合いであるということだが、百合園セイアから浦和ハナコへのメッセージ、あるいは挑発なのかもしれない。

  • 135模擬試験25/10/27(月) 00:12:43

    「皆さん、聞いてください!」
    少し雑談が始まっていた教室内で、阿慈谷ヒフミが再び教壇に立ち、予定していた今後の方針を語る。
    曲直瀬リリと、メイド(蒼森ミネ)に関しては、もともと結果を見て判断するという話だったが、
    教師役として十分な能力があることが分かったため、阿慈谷ヒフミがそれをお願いする。

    百合園セイアは当然だが、蒼森ミネもその真剣な眼差しに感化されたのか、部外者ながら、教師役を請け負うことを了承した。
    そして、浦和ハナコについては、後程面談を行うことになった。

    「それと……ご褒美も用意しました。」
    方針決定後、阿慈谷ヒフミが私との打ち合わせでは特に決めていなかったことを言い出した。
    そして机の上に広げたのは、朝教室に持ってきていた謎のキャラクターグッズ類だ。
    その中には、確かブラックマーケットで求めていたという鳥(?)のキャラクターもいる。

    これらが、彼女が学校の試験よりも重要視するキャラクター達であるということは、私にはまだ理解できなかった。

  • 136模擬試験25/10/27(月) 00:13:45

    「良い成績を出せた方には、この『モモフレンズ』のグッズをプレゼントしちゃいます!」
    自信満々に言った阿慈谷ヒフミに対し、部員たちの反応は比較的微妙なものだった。
    ただし、2人の生徒を除いて。

    「か、可愛すぎる……!!」
    一人目の白洲アズサが興味津々でグッズが並べられた机に駆け寄る。
    初めて見るものらしく、目を輝かせながら阿慈谷ヒフミの説明を聞いている。

    「こ……この子ももらえるんですか!?」
    そして胴体が異常に長い猫を指さし、蒼森ミネがおずおずと聞き出す。
    「いや、君はそもそも補習授業部じゃないからもらえないんじゃないか?」
    そして、百合園セイアの冷静な指摘に、相当なショックを受けた表情を浮かべている。意外な一面もあるものだ。

    「い、いえ! もちろんメイドさんにも協力してもらうので、差し上げます! ウェーブキャットさんも可愛いですよね!!」
    阿慈谷ヒフミは同好の士を見つけたことに喜んでいる様子だ。

    何にせよ、モチベーションが生まれたことは良いことだろう。
    温度感がくっきり分かれた教室で、私はそう思った。

  • 137二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 00:14:51

    本日はここまで

    ミネさん、ようやくちゃんと喋りましたね。
    モモフレの話をする上でミネを出したかったので試験もついでに受けてもらいました。

  • 138二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 07:33:01

    お疲れ様です。
    朝保守!

  • 139二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 13:56:43

    ほしゅ

  • 140二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 19:11:52

    アリウスベアおば側から見るとほぼ本編通りに進んでるはずなのに大分有利に進んでるね

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 20:01:52

    偶然にもモモフレンズ好きが集まっていたとはこれもバタフライエフェクト?

  • 142二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 23:35:18

    まぁ割と素直に可愛いキャラの方が多いとは思うのよモモフレ

  • 143白洲アズサと百合園セイア25/10/28(火) 00:38:23

    合宿2日目の夜。
    途中成年向け書籍を中心とした軽い騒ぎがあり、下江コハルと共にトリニティ本館に戻るといったタイムロスはあるにはあったが、
    概ね予定通りのスケジュールを終え、就寝時間となった後、
    私は百合園セイアに連れ出され、別館の外へと来ていた。蒼森ミネは恐らく遠くで監視をしてはいるが、百合園セイアの行動に関しては身体的に無茶をしない限り黙認するという
    契約を交わしているらしく、実に自由にふるまっている。サンクトゥス派生徒会長は実に自由にふるまっている。

    「それで、こんな場所へ来て何があるというのですか?」
    用件も聞かされていない私は、百合園セイアに苦言する。

    「まあ、もう少し待っていようじゃないか。何せここに来てこの方……噂をすれば、というやつだな」
    「はあ、噂というか何も話していませんが……」
    百合園セイアが手で指示した方向に顔を向ける。

    「先生……リリも」
    現れた白洲アズサはこちらに気付き、呆然としている。

    「やあ、アズサ。こんな夜更けに散歩とは、風情があるね。」
    曲直瀬リリに扮していた少女は、そう言いながら帽子を取る。

    「ご一緒させてもらっても構わないかい?」
    彼女はそう言って、白洲アズサに微笑んだ。

  • 144白洲アズサと百合園セイア25/10/28(火) 00:41:00

    「……やっぱり、リリは百合園セイアだったんだ。」
    暫く押し黙っていた白洲アズサが静かに話し始める。
    無表情に近いが感情の感じられる、複雑な表情だ。

    「やはり、気づいていたんだね。まあ、初対面の反応から想像は出来ていたよ。黙っていてくれたのは?」
    「……ほぼ間違いないとはおもってたけど、確定じゃなかったから。それに、隠しているなあ明かさない方が良いのかと思って。」
    「良い子だね、君は」
    百合園セイアと白洲アズサが静かにやり取りする。襲撃の犯人と被害者とは思えない光景だ。

    「それで、どうして2人はここに? いや、未来予知ができる人に聞く意味が無かったな。」
    「そんなことは無いさ。丁度先生にも言おうと思っていたのだが、私がここに来てからというもの、私が見たことのある光景になったことは一度もないのだから。」
    「そんなことを言おうとしていたのですね」
    そもそもこの時期の百合園セイアは以前の時間軸では意識不明、消息不明の状態であったはずなのでそれは当たり前だ。

    「え? じゃあどうやって」
    「ただの張り込みだよ。昨日君が外に出て行ったという目撃情報があったから今日も出てくるかな、と思ってね。」
    「……はは、そんなことで。すごいなぁ」
    白洲アズサは感心したように笑うが、私としては聞き捨てならない内容だった。

  • 145白洲アズサと百合園セイア25/10/28(火) 00:42:11

    「それにもかかわらず私に何も言わず連れ出したわけですか。無駄骨になったらどうするつもりだったんですか?」
    「まあ、そんなことは良いじゃないか。結局アズサは来てくれたのだし」
    「というか、そもそも私がこの場に呼ばれた意味はあるのでしょうか。まさか護衛という訳でもないでしょうし」
    護衛なら優秀な人物が既にいるし、そもそも私では盾にもならない。
    かといって無意味に連れてくるような真似をする人物ではないだろう。

    「もちろん、大いに意味があるとも。こうして、アズサと話す機会に先生を連れてきたのは……」
    大きく勿体をつけて、百合園セイアが言葉を切る。白洲アズサは固唾を飲んで見守っている。

    「先生は私たちの味方であるとともに『君たち』の味方でもある、という話をしたいと思っていたからだよ」
    またそういう話か。体よくつかわれているような気がするが、こういったことに拒否反応を示すことが無いのも『先生』の仕業だろうか。相手が生徒であれば利用されるのもやむなし、という事だろうか。

    「私たち……? 補習授業部のこと?」
    その上、言い方が間接的過ぎて本人には伝わっていない。
    「セイアさんの言っているのは、アリウスのことでしょう。もっとも、どの学校の生徒であるかは問題ないというだけで、アリウスやトリニティが特別ではないというのは理解してほしいと頃ではありますが。」
    「……え?」

    白洲アズサが再び呆然とした表情をする。

    「……やはり、先生はそのことまで知っていたのだね。」
    「試すようなことをするのはやめてください、セイアさん。頼っていただけること自体に文句はありませんが。」
    「……そうだね、悪かった。どうも少し調子に乗りすぎていたようだ。」

    本当に反省しているようなので、とりあえず良しとする。交渉は好きだが説教は好きではないのだ。
    好きではないというより、善人でない自覚があり、説教などすべき人間ではないというべきか。

  • 146白洲アズサと百合園セイア25/10/28(火) 00:43:48

    「ど、どうしてそこまで知っていて、私を放置しているの? セイアを襲撃して、意識を失わせたのは私なのに」
    動揺の残ったままの表情で、白洲アズサが問いかける。その辺りはトリニティ側の人間の範疇だろう。

    「それはアズサ。君が足掻こうとしていたからだよ。丁度、私もその決意を決めたところだったんだ、何というか奇妙な巡りあわせだね」
    「……難しい。そうだとしても、私にそれを言う意味が分からない。私がこれを話したらどうするつもりなんだ?」
    白洲アズサはもはや怒りに近い表情を浮かべている。

    「話してもいいですよ?」
    「え?」
    「ああ、すみません。私はアズサさんの行動を縛るつもりはありません。というか諸事情でそういったことは出来ないので、基本的に自由意志でやってもらっています。ただ、事前に言っておいてもらった方が助かりはしますね。」

    私の発言に白洲アズサは口を開けて目を瞬かせている。
    「私が言うのも何だが、先生の発言は傍で聞いていると善意で言っているとは到底思えないね。それに分かりやすくもない」
    「そういうクレームはいささか言われ慣れてきましたね。最早何の感情もわきませんよ」

    百合園セイアは人の発言に茶々を入れるのが癖になっているのだろうか?

  • 147白洲アズサと百合園セイア25/10/28(火) 00:44:54

    「は、はは、あはははっ。」
    不意に、白洲アズサが笑い出した。

    「どうかしましたか?」
    「あはははっ、何というか、かなわないなって思ったんだ。うん、私もどうすればいいか、自分で考えてみる。2人が、味方になってくれるってことは分かったから」

    どのあたりで納得したかは分からないが、どうやら彼女自身で折り合いをつけることが出来たようだ。
    であれば、私も引っ張り出された甲斐もあるというものだ。

    「そろそろ、私たちは戻ろうか、先生。アズサも、夜の散歩はほどほどにしておくんだよ。結局勉強はしなければならないのだから」
    百合園セイアが満足したと言いたげな様子で言う。

    「うん、わかった、ありがとう、先生、セイア」
    「あ、先生はアズサの行動を縛らないと言っていたが、私のことは皆の前ではリリと呼んでおくんだよ。サプライズは計画的にやるべきだからね。」
    「ああ、気を付ける。こう見えて隠し事は得意だ」

    その言葉を最後に、白洲アズサと別れる。
    百合園セイアを部屋まで送り届け、補習授業部2日目の夜が終わった。

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 00:47:13

    本日はここまでです。
    コハルのエ駄死本の下り、真犯人が分かっている状態だと何のとっかかりにもならないので全カットです。
    代わりにアズサコミュを入れました。

    ハーメルンの方も、結構たくさんの方に見ていただけているようでうれしいですね。

  • 149二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 01:46:59

    寝る前に更新入っててうれしい
    ここから対アリウスの立ち回りがどうなっていくか…
    乙ですー

  • 150二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 07:37:00

    黒服✖️セイアいい…

  • 151二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 14:54:51

    ほー

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 21:17:34

    しゅー

  • 153聖園ミカとの対話記録25/10/28(火) 23:54:59

    聖園ミカとの対話記録

    合宿3日目の早朝、聖園ミカから突然の連絡があり別館内中庭にて話をすることになりました。
    百合園セイアに連絡したものの返信は無かったため、彼女の現在の状況を知らせずに、聖園ミカの目的を探るための会話に努めることとしました。

    その際の対話記録です。

    聖園ミカ(以降、ミカ):別館って初めてきたけど、意外と綺麗なんだねっ
    私:定期的に整備されているようですが、その感想は清掃の賜物でしょうね
    ミカ:へー、掃除したんだ? 何か合宿みたいで楽しそうだね
    私:合宿みたい、ではなく補習授業部の合宿そのものですよ。
    ミカ:あはっ、そうだったね。
    私:それで、本日はどうされたのです? ミカさんもお忙しい身でしょうし、まさか世間話をしにいらっしゃった訳ではないでしょう?
    ミカ:む、先生も本題の前の前置きを楽しめないタイプかぁ。まあでも、世間話というのも間違ってはいないかな?
    私:どういうことですか?
    ミカ:うん。先生の調子はどうかなーって思って。つまり……先生がナギちゃんに何か言われたんじゃないかなって
    私:それは……補習授業部の顧問になってほしい、という話以外にということですか。
    ミカ:うん。例えば「トリニティの裏切り者を探してほしい」って言われた。とか
    私:……成程、その件ですか

    実際には当然そのような指示は受けていませんが、そうであるという体で会話を続けています。

  • 154聖園ミカとの対話記録25/10/28(火) 23:59:29

    ミカ:やっぱり、そうなんだ? で、どう? 何か分かった?
    私:そうですね。今のところ、全員証拠不十分といったところでしょうか。
    ミカ:何それ、適当じゃない?
    私:ご明察ですね。あまり捜査には本気ではないもので
    ミカ:え? どうして?
    私:まずいただいている情報が少なすぎますね。試験をサボったり、成績不良、あるいはわざと成績を落とす。それだけでテロまあいのことをした犯人だと言うのは横暴ではありませんか。この4人の中にいるという根拠も示されていない
    ミカ:あー、先生視点からだとそうなっちゃうのかぁ
    私:それと、思ったより真面目に落第の危機が間近な生徒がいて、そちらを優先してしまうというのもありますね。いずれにしても、当面は試験に集中することになりますね。

    ミカ:じゃあさ、私がトリニティの裏切り者について、教えてあげるって言ったらどうかな?
    私:……何故ですか?
    ミカ:何故って、進展していないみたいだから答えを教えてあげようかなって思って。
    私:いえ……何故というのは、何故ミカさんがそれを知っているのか、ということです。
    ミカ:そうだね、それも含めての説明にはなるけど、どうかな?
    私:ふむ、そうですね。参考までにお聞かせいただけますか? ……っと、ちょっと待ってください

    ここで百合園セイアからの着信通知があったため、話の切り上げ時であることを確信し、会話を打ち切るように舵を切りました。

  • 155聖園ミカとの対話記録25/10/29(水) 00:02:19

    私:すみません。どうも、皆さん私がいないことに気付いたようです。アズサさんが探しに来られるようで
    ミカ:え? そうなの? 凄いね。こんな朝早くに
    私:時間はできるだけ有効活用したいですからね。早寝早起きが基本です・
    ミカ:おー、教師っぽいこと言ってる。って、アズサちゃんが探しに来るなら私もう行かなきゃ。ごめんね、この話はまた今度ってことで
    私:……分かりました。であれば、明日、また同じ時間でお願いできませんか?
    ミカ:え?
    私:折角のミカさんのご厚意ですし、私も今日一日、考えてみることにしますよ。
    ミカ:うーん……そうだね、分かった。じゃあまた明日、先生。

    記録は以上です

  • 156二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 00:03:54

    繋ぎのパートなので短いですが、本日はここまでです。

    セイアとミカが直接対面する前に色々済ませておくための苦肉の策です…

  • 157二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 07:35:27

    今になって思うとミカがティーパーティーの面子振り回してるのはそうだし本人も自覚してると思うけどティーパーティーの面子に一番振り回されてる苦労人はミカなんじゃないかと感じてきた

  • 158二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 07:37:34

    このレスは削除されています

  • 159二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 10:13:18

    黒服が取る行動によっては、オラトリオ編が丸々なくなる可能性もありそうだよね。
    続きが楽しみだ

  • 160二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 17:25:47

    保守

  • 161二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 21:59:01

    ほー

  • 162浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:45:51

    朝の聖園ミカの訪問以降、補習授業部3日目の日中は、比較的穏やかに過ぎていた。
    特筆すべき点としては、白洲アズサと下江コハルの成績に向上の兆しが見えた点だろうか。
    特に白洲アズサに関しては、合格ラインまで後1点というところまで迫っていた。

    一方、浦和ハナコの得点は7点であり、曲直瀬リリ(=百合園セイア)は93点であった。
    この二人はテストを利用して読み合い勝負をしているというのが傍観している立場からの感想であり、
    もしそれが正しければ百合園セイアが一歩リードしているという状況だろう。

    阿慈谷ヒフミは低空飛行ながら合格点をキープしていた。目下の関心ごとは浦和ハナコの成績についてだろう。
    「急に授業についていけなくなった」などという話ではないことは彼女にもわかっているだろう。

    また、シスターフッドの新入生、伊落マリーの訪問もあったが、これはティーパーティーの誰かの意志とは完全に無関係であり。
    白洲アズサへ感謝の言葉を伝えるための訪問だった。
    白洲アズサのモチベーション強化につながる内容であり、ポジティブなイベントだったと言えるだろう。

    少なくとも希望の見える1日であったと言えるだろう。

    そしてその夜は、私の部屋への訪問者が多い日であった。

  • 163浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:47:00

    消灯時間後、室内で明日の準備をしていると、ノックの音が聞こえた。
    阿慈谷ヒフミとは今後の計画と浦和ハナコの話をするために、その後には百合園セイア及び蒼森ミネと共に明日の聖園ミカとの直接対面に向けた打ち合わせをすることになっていた。
    つまり、阿慈谷ヒフミの訪問だろうと 扉を開く。

    「こんばんは、先生♡」
    予想は外れ、そこにいたのは浦和ハナコであった。

    「おや、どうされました、ハナコさん。」
    「すみません、急にお邪魔してしまって……実は、アズサちゃんのことで……」
    「アズサさんですか? まあ、立ち話も何ですから、お入りください。」
    浦和ハナコと1対1で話す機会も今まであまりなかったが、丁度いい機会だろう。
    阿慈谷ヒフミと鉢合わせになる可能性はあるが、結局彼女の話をするのだから、本人もいてもらった方が良いだろう。

    「コーヒー……はやめておきましょうか。ルイボスティーでも淹れましょう」
    「……あら、先生もそういうものを嗜まれるんですね?」
    「頂き物ですがね。私は比較的気の利かない方であるという自覚はありますが、こういうものがあった方が話が進むということは知っています」
    普段下江コハルや白洲アズサ、阿慈谷ヒフミと話しているときは比較的リラックスしているように見えたが、私の正体が見えないこともあり、浦和ハナコはいささか緊張しているようだった。
    外部から来た教師が【入院しているはずの】大物を1年生として引っ張ってきた事実は彼女のように聡い人物を警戒させるには十分だろう。最も、それに関しては濡れ衣なのだが。いずれにせよ、アイスブレイクは私が時間遡行後に学んだ重要な交渉技術の一つだ。

  • 164浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:48:05

    「それでは、折角なのでいただきますね」
    彼女の同意も得られたので、ルイボスティーの準備をする。

    「こうして1対1でお話しするのは初めてかもしれませんね」
    「そうですね……大人の男性の方とお話するのはあまり経験がないので、すこしドキドキしちゃいますね」
    やはり緊張していたらしい。ルイボスティーにはリラックス作用もあるらしいので、丁度良かっただろう。

    「そうですか? まあ、そういう意味でも良い機会かもしれませんね。」
    「はい。そうさせてもらいます。……それで、本題のアズサちゃんのことなのですが……」

    浦和ハナコが改めて切り出したとき、再びノックの音が鳴る。中断が長すぎたようだ。

    「ヒフミさんでしょうね。一緒に話を聞いてもらっても? 彼女は補習授業部の部長でもありますし」
    「ヒフミちゃん? 何かお約束されていたのですか? 私の話はヒフミちゃんにも一緒に聞いてもらった方が良いかもしれませんが。」

    同意を得たので、入室を促す。

  • 165浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:49:16

    「お、お邪魔しまーす。すみません、先生。ちょっと遅くなってしま……ハナコちゃん? ハナコちゃんも何かおはな……」
    扉を開け、中にいる浦和ハナコの姿を見た阿慈谷ヒフミが固まる。

    「こんばんは、ヒフミちゃん。先生とお話の予定があったのですよね、ごめんなさい、お邪魔していて」
    浦和ハナコが横入りの詫びをしながら、立ちあがる。そして阿慈谷ヒフミは

    「な、なっ、なんでハナコちゃん水着なの!!?」
    「あら。」

    阿慈谷ヒフミは浦和ハナコが来ていたこと自体ではなく、その恰好をみて驚いていたらしい。
    浦和ハナコだからそういうこともあるかと思って特に指摘をしていなかったのだが、どうもそういう訳ではないらしい。

    「確かにそうですね。何故水着なのですか?」
    「実はこれ、パジャマなんです。」
    「なるほど」
    寝巻であれば、露出徘徊することに比べれば大した問題でもないだろう。

    「そんなわけないですよね!!? っていうかハナコちゃん昨日までは普通の格好してましたよ!!?」
    「あらあら? ヒフミちゃん少し声が大きいですよ。消灯時間は過ぎていますから声を少し落としましょうね」

    「す、すみません……じゃなくてき、が、え、て来てください!! 後先生もちゃんと止めてください!」
    「あらあら、怒られちゃいました。ごめんなさい先生、ちょっと着替えてきますね?」
    何故か嬉しそうにしながら、浦和ハナコは私に謝罪する。今の状況では落ち着いた話は出来そうもないので、阿慈谷ヒフミのいう通り着替えて来てもらった方が良いのだろう。

    「いえ、お気になさらず。」
    「先生は気にしてください!!」
    私が説教される謂れは無いと思うが、阿慈谷ヒフミは私にも怒りの矛先を向けた。怒りというより混乱だろうか。
    浦和ハナコが着替えて戻ってくるまでの間、リラックス効果のあるルイボスティーを彼女にも勧める。
    阿慈谷ヒフミも浦和ハナコと同様に、私がそのようなことをすることに驚いていた。

  • 166浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:51:02

    「アズサちゃんのことなんですが……毎晩夜に外出して、早朝まで帰ってきていないようなんです…」
    戻ってきた浦和ハナコが真面目な顔で切り出した話の内容は、予想通りのものだった。

    「アズサちゃんが……!?」
    阿慈谷ヒフミは驚いている様子だ。外出していたことにも気づいていなかったらしい・

    「……そのことでしたか。朝まで帰っていなかったのですね。」
    「先生は、ご存じだったのですね?」
    浦和ハナコが少し驚いた様子でこちらの顔を見る。

    「ええ、昨日彼女が外にいるところを少し話しましたので。」
    「成程、そうだったんですね。うふふ、今日のアズサちゃん、元気いっぱいだったのはそれが理由だったのかもしれませんね」
    確かに今日の白洲アズサの調子が良かったのは模擬試験の成績でも確かだ。影響があったかは未検証だが。

    「それは、分かりませんが。もし夜通し起きているというなら、そうですね。明日からは昼寝の時間を設けましょうか。」
    「昼寝、ですか?」
    浦和ハナコが復唱する。

    「ええ、アズサさんに限らず、朝から夜まで勉強のスケジュールですから、頭を休めるのも良いことでしょう。夜に無理に寝かせようするより効果的かもしれませんよ?」

  • 167浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:52:02

    「なるほど、確かに。いいかもしれません。」
    「私も良いと思います!」

    生徒二人が同意するのを聞き、さらに続ける。

    「コハルさんもアズサさんも順調に成績が伸びています。体調不良になってしまっては元も子もありませんからね。これで『全員退学』の憂き目を逃れる目もできそうです。」
    阿慈谷ヒフミの用件であり、浦和ハナコに真剣になってもらうための必要な話をするために。

    「ぜ、全員退学? 何の話ですか?」
    浦和ハナコが動揺している。いきなりの話なので、無理もない。

    「ハナコちゃん。今先生のお話していたことは本当なんです。……3回目の追試験で『私たち全員合格』が達成されなければ、その時は『全員退学』というのが補習授業部に与えられたルールなんです。今まで隠していてごめんなさい」
    浦和ハナコの顔色が変わり、阿慈谷ヒフミは頭を下げる。


    「そんな簡単に……という訳ではないですね。この部活動に『シャーレの先生』がいらっしゃることに疑問を持っていたのですが、これが答えですか……。……ですがどうしてそこまで……、いえ、そうですね」
    暫く考え込んでいた浦和ハナコは、やがて諦念のような、うしろめたさを持っているような表情になり、私たちに話し始める。

    「それを私に話した、ということは私の隠していることも既にご存じ、というわけではすよね?」
    「成績のことなら、ごめんなさい、勝手に見てしまいました。」
    彼女の問いかけに、阿慈谷ヒフミは再び謝罪する。

    「いえ、謝る必要はありません。私が悪いですから……。分かりました、そういうことであれば、私も本気で追試験に臨みたいと思います。」
    そして浦和ハナコは、申し訳なさそうな感情を残した微笑みを浮かべ、私たちにそう宣言した・

    「ハナコちゃん! 本当に!?」
    「はい。私のわがままに皆さんを巻き込むわけにはいきませんから。」

  • 168浦和ハナコと阿慈谷ヒフミ25/10/29(水) 23:54:05

    「それじゃあ、先生。今日は私は失礼しますね!」
    事態が好転しそうな空気を感じてか、心なしか朗らかな様子の阿慈谷ヒフミがそういう。浦和ハナコもそれに追随しそうになったが、

    「ああ、ハナコさんは少し残っていただけますか?」
    「はい? 私ですか? 分かりました。」
    「そ、そういえばハナコちゃんと先生、何かお話されている途中でしたよね!? ご、ごめんなさいお邪魔してしまって。……わ、私戻りますね!」

    そう言って、阿慈谷ヒフミは足早に退出していってしまった。
    「あらあら、何か誤解されているかもしれませんね。」
    「後で解いていただければ助かります。」

    浦和ハナコを止めたのは他でもない、折角なのでこの後のゲストとも同席してもらおうと考えたためであった。

  • 169二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 23:55:28

    本日はここまでです。

    黒服がふざけているシーン書いてる時が一番楽しいかもしれません。

  • 170二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 07:11:01

    ドシリアスキャラが茶目っ気出すところは見てて面白いものね

  • 171二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 15:13:11

    北終

  • 172二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 15:46:37

    保守

  • 173二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 21:50:33

    ほー

  • 174浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:10:11

    「それで、先生。私を残した理由は何でしょう……?」
    阿慈谷ヒフミが去った室内で、浦和ハナコが私に尋ねる。

    「すぐにわかると思いますが……あえて言うならハナコさんがこの合宿で一番気にされているであろうことの答え合わせをしておこうと思いまして。」
    先ほど、浦和ハナコが室内にいることは百合園セイアには連絡済だ。


    「それってもしかしなくても……リリちゃんの事、ですよね」
    流石に思い当たる節があったのか、すぐに答えにたどり着く。そして私が答える間もなく、三度部屋がノックされる。

    「先生、お邪魔するよ。」
    「失礼いたします。」
    入室を許可すると百合園セイアと蒼森ミネの2人が入室する。

    「やっぱり……」
    2人が部屋に入ってきたのを見て、浦和ハナコがつぶやく。

  • 175浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:11:22

    「何が『やっぱり』なんだい? ハナコ」
    曲直瀬リリに扮している百合園セイアが面白そうに尋ねる。
    訪ねられた方は私の顔や周囲を見て、本当に言っていいのか疑うように逡巡しながら口を開く

    「……セイアちゃんと、ミネさんですよね? 救護騎士団長の……」
    「うむ、よく気付いたね。流石はハナコだ。」
    指摘された百合園セイアは帽子を取り、スカートの中に丁寧に隠していた尻尾も見せる。

    「これ、上手く隠れていただろう? 毎朝頑張って隠していたんだよ。何せ、一人じゃできないからミネに手伝ってもらっていた位だ」
    百合園セイアが何故か自慢げに尻尾の隠し方を披露する。

    「セイア様?」
    同じく正体を明かされた蒼森ミネが赤面して百合園セイアを睨む。

    「あら、それは……すごく気になりますね! 私も手伝わせてもらってもいいですか?」
    浦和ハナコは先ほどまでの緊張した表情を崩して、通常運行の状態に戻る。アレはまるっきり演技という訳ではないらしい。

  • 176浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:12:46

    「まあ、機会があればね。それより、私たちに聞きたいことがあるんじゃないかい? 折角正体を明かしたんだ、何でも答えようじゃないか。」
    百合園セイアのその言葉に、浦和ハナコは表情を真剣な顔に戻す。そして少し考えて口を開く。

    「では……ミネさんとセイアちゃんの夜の生活を……」
    「ハナコさん?」
    「あら?」

    蒼森ミネが皆まで言わすまいと静止に入る。
    「ハナコ……何でもと言ったがそういうプライベートなことを質問するのは野暮というものだよ」
    「まあ!」
    百合園セイアが止められた質問に意味深な回答をし、浦和ハナコが目を輝かせる。

    「セイア様!? ち、違いますよ先生! ハナコさん! 何もありません!! 私は救護活動と警備を行っていただけです!」
    「あら、そうなんですか? 残念です」
    「私は何も言っていませんが」
    浦和ハナコのからかいの対象が蒼森ミネに定められた、ということは理解しているが、それは私には関係のない話だ。

  • 177浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:13:49

    「さて、そろそろミネが暴れ始めかねないので、良い塩梅の質問をお願いできるかな?」
    「そうですね……では」
    浦和ハナコは改めて姿勢を正す。蒼森ミネは至極不服そうな表情をしていたが、黙って聞くことにしたようだ。

    「そもそも、入院していると言われていたセイアちゃんと、不在にしているという噂があったミネ団長が2人して一緒にいるのはどういうことなんですか?」
    今度こそ、今回の話し合いの核となる部分についての質問だ。蒼森ミネは胸をなでおろしている。

    「それはだね……まず、入院しているというのは嘘だ。まあ、こうしてここにいることから言わなくても分かるだろうけどね。」
    「ええ、なのでその理由を聞いているのですが……」
    浦和ハナコの催促に頷き、百合園セイアが続きを話す。

    「それで、その入院しているという嘘をついている理由だがね、実際のところは先日私は何者かに襲撃されて死亡した。それを隠蔽するためにそのようなカバーストーリーを敷いているというわけだね。」
    「はい?」
    浦和ハナコの表情が固まる。

    「まあ、今こうして私が生きている以上、それも嘘だ。これはトリニティの上層部のみで使われているカバーストーリーということになる。もっと言うと、私の死体を持ち去って行方を眩ませているという設定なのがそこのミネだ。勿論私は死んでなどおらず、何なら意識不明ですらなく、自分の意志で隠れているというのが今の状況だね。これを知っているのは現状ナギサしかいない。所謂トップシークレットというやつだ」
    「ちょっ、ちょっとまってくださいセイアちゃん。一体何が何だか」

    話し続ける百合園セイアを浦和ハナコが制止する。

  • 178浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:15:20

    「すみません、少し整理させてください。……セイアちゃんが誰かに襲撃されたというのも嘘ですか?」
    「いや、それは本当だよ。」
    「……」
    浦和ハナコが口を開き、そして口を閉じた。二の句が継げないとはまさにこのことだろう。改めて今の状況が余りにも奇妙なことに気付かされる。

    「……誰に、というのは分かっているのですか?」
    「勿論だとも。実際にその実行犯とも会話している。私が首尾よく死を偽装できたのもその人物の協力あってこそだ。」
    「……その人は、今どうされているんですか?」
    その質問を聞いた百合園セイアの表情が険しくなり、浦和ハナコが息を飲む。

    「ふむ……。今どうしているかと言われれば、補習授業部で合宿しているね。」
    「……」
    「ここまで言えば分かると思うが、私のところにきた実行犯はアズサだよ。因みに、昨日正式に和解済みだからこれについてはあまり気にしなくても良い」
    蒼森ミネが少し険しい顔をするが、特に発言することは無かった。
    浦和ハナコは頭を抱えている。

  • 179浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:16:24

    「この際だから全て言ってしまうが、私たちがここに来たのはもう一人トリニティ内における犯人ともいえるミカと明日話をするつもりだから、その打ち合わせの為だね。」
    百合園セイアが殆ど勢い任せで洗いざらい話してしまう。
    聞きたかったこと以上の話を聞かされた浦和ハナコは脳内で整理するためと思われる時間をたっぷりと用意した後、不意に笑顔になり

    「全部聞かなかったことにして、お部屋に戻っても良いでしょうか、リリちゃん」
    現実逃避を試みた。百合園セイアが首を振り、私も後に続く。浦和ハナコは笑顔のまま机に突っ伏す。

    「因みに、私が補習授業部の合宿に強引に入り込んだのは、先生の傍にいたかったから、という理由であって実のところ襲撃とはそこまで関係ないのだよ。」
    「……その話だけ詳しくお願いします」
    突っ伏した状態の浦和ハナコの本音が室内に虚しく響いた。

  • 180浦和ハナコと百合園セイア25/10/31(金) 00:18:04

    本日はここまで。
    ついセイアが無双しちゃう

    いよいよ、ミカとの対面が近づいていますが、明日は月末のため更新できるかは非常に怪しいです

  • 181二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 00:55:41

    ハナコが翻弄されてるのは珍しいな・・・
    実に新感覚

  • 182二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 02:24:43

    本編で友人とされているのに絡みが描写されていないセイアとハナコだけどまあ回復後のノリの良いわんぱくフォックスぶりと言葉遊びが好きな点を見てたらこんな感じでハナコが振り回される側だろうなぁと思う

    というかハナコの悪ノリ部分ってセイアを参考にしてそう、根っこは真面目でナギサに近い感じするけど

  • 183二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 09:45:03

    なんならハナコ、トリニティが嫌になってふざけてるだけの根は真面目な繊細さんだもんねぇ
    程度が違うだけでSCPのブライト博士とかマーベルのデッドプールと近いというか
    まぁどハマりしたのか若干破滅願望があるのかエデン後も脱いでるみたいだが

  • 184二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 17:23:31

    保守

  • 185二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 21:36:17

    補習授業部の5人目がミカだった作品は他で読んだことがあるが、セイアだった作品はこのSSが初めてかもしれない
    保守

  • 186書いてる人25/10/31(金) 22:08:25

    案の定これから帰宅となったので本日は更新できません

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 22:12:10

    お疲れ様です。
    お気をつけておかえりください。

  • 188二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:31:20

    あさほしゅ

  • 189二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 13:43:21

    ひるほー

  • 190二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 18:45:35

    保守。がんばってください

  • 191二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 21:41:26

    ほし

  • 192二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:14:09

    このレスは削除されています

  • 193二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:18:13

    あ、まずい。レス数たりないかも。

    先に次スレ立てます!!

  • 194二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:26:33
  • 195二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:27:38

    このレスは削除されています

  • 196二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:51:52

    建て乙です

  • 197二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 00:05:51

    乙梅

  • 198二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 00:47:18

    埋め埋め

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