【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第4R】

  • 1二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 11:00:09

    生まれも育ちもロクなもんじゃない

    幸い小賢しい程度には頭は悪くなかった

    だから勉強してトレーナーになった

    金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲った

    それでも経験も実力も実績もあるわけじゃない

    だから口八丁でだまくらかすように担当契約を結んだ

    特に優しく 時に寄り添うように 時に一生添い遂げるかの如く

    実績つんで金になればそれでいい

    そのために他人を騙すことに心が痛む? 良心?

    そんなものは親の腹のなかに置いてきた

    いや……俺が腹の中にできる前からそんなものありゃしない


    こいつらを利用して俺はのしあがる


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    【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第3R】

    【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第3R】|あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 11:02:13
  • 3二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 11:03:43

    スレ立て乙

  • 4二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 11:04:12

    【注意点】
    四人の担当チームなのでオムニバス要素あり、投稿順序会話によるSS内時間の前後があります
    史実・ウマ娘アプリと出走レースおよびシナリオの齟齬間違いがあります
    色々キャラ崩壊などありますがご理解頂ける方のみ閲覧ください
    素人なので誤字脱字文脈の乱れなどありますがそうだねプロテインでご容赦下さい

  • 51◆qxc6n.SpgKwJ25/10/18(土) 11:06:36

    トリップ忘れ

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 12:11:15

    更新お待ちしてます
    なので保守

  • 71◆qxc6n.SpgKwJ25/10/18(土) 12:36:50

    家事と買い物などを済ませてから書きます

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 12:39:23

    応援保守、ずっと楽しませてもらってます
    既に担当に完堕ちしかけているトレーナーの明日はどっちだ

  • 9二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 13:32:15

    応援してます。

  • 10二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 15:10:31

    保守

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 15:10:41

    待機シャトル

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 15:40:51

    このスレまで読み終わったぞ…
    闇のトレーナーよお主は幸せになられよ

  • 13ジェンティルドンナ25/10/18(土) 15:45:55

    家族会議でわたくしのトレーナーさんの話が出る
    そんな話が出た時姉はわたくしを家族会議の前に呼び出した
    姉はわたくしを総帥候補のライバルとして敵視しているのだから徹底して反対されるのでしょう
    聡明で強い姉さま――でもわたくしには敵わない姉さま
    姉さまは単刀直入にわたくしがトレーナーを代えるか、今のトレーナーを選ぶか聞いてきた

    ――その方はとても不幸だと同情はする。 でもその生い立ちと行ったことはジェンティル家に災いになる

    わたくしもそう思う、そこに異論は一切ない
    トレーナーとして優秀だから・今あの方は前を見て必死に生きているから
    そんな事は関係ない。 不条理で不公平で理不尽なぐらい――その過去は消せやしない
    名家のスキャンダルというものは他のライバルの名門にとって最高のご馳走だ
    メディアを使い様々な手段を使って――どんな卑怯な手段を使ってもそれを白日にさらす
    ほんのすこし偏った――まるで不幸ゆえの事故ではなくゴシップとして喜ばれる殺人鬼のように
    その情報はジェンティル家の信用を確実に奪い様々な分野での進路を阻む
    それは家の問題ではなく家が抱えるすべての家族、人々の生活を苦しめる
    だから――彼という「経歴」はジェンティル家にとっては災いなのだ

  • 14ジェンティルドンナ25/10/18(土) 15:51:13

    よく分かっている
    だからわたくしも婚約者候補には擁立してない
    本当は婚約者候補ではなく婚約者として認めていても
    ――私が今そうしたいと想っていても、それはジェンティル家の一人として許されない
    だけど
    あの人以外のトレーナーは、わたくしにはありえない
    あれだけひたむきにウマ娘の事ばかり考えているすこしそそっかしくて幼稚な男が
    トレーナーとしてどれだけ素晴らしいか
    人としてどれだけ尊敬できるか
    それはここでいくら語っても伝わらないのだろう
    だけどわたくしは

    ――あの方以外のレース人生など考えてませんわ、代えたいならあの方以上の実力を示せるトレーナーをつれてきなさいな

    姉はわたくしをじっと、じっと見つめる
    わたくしの言葉と真意と覚悟を試すように――そして
    姉は私に微笑んだ

    ――なら私は今回貴方のトレーナーを擁護するわ、貴方のトレーナーでいられるように

  • 15ジェンティルドンナ25/10/18(土) 15:59:17

    あら
    予想していなかった言葉。 わたくしにライバル心を燃やしている姉なら徹底してこの話でわたくしと争うと想っていたのに
    認めるどころか応援されている? 姉がわたくしを?
    流石に理由ぐらいは聞きたくなる。 少なくとも姉はトレーナーさんと面識はないはずだ

    ――理由はいくつかあるのだけれど
    ――貴方がその方とくっついていた方が……後継者候補としては都合がいいもの
    ――分かっているはずよ? その方と本当に結ばれたいならジェンティルの総帥どころか家から出る覚悟がいることを

    ああ、そういう事
    確かにそのとおりで合理的だ。彼の過去は災い――だからこそ彼と共に歩むなら後継者候補は大きく後退する
    わたくしも理屈ではわかっている。 後継者としてジェンティルのトップに座るなら今彼と離れるべきだ

    ――もう一つはね……ドンナが幸せそうだからかしら

    今までで一番信じられない事を言われた
    わたくしが幸せそう? この姉がそんな事を言った?
    ……ねえ、姉さん。 週末は阪神JFですの。 槍と衛星を降らすのはやめてくださる?
    姉は私の頭にクッションを投げつけた。 わたくしはそれすら避けられずやわらかなクッションを顔面でうけとめていた。 そのぐらい驚いていた

  • 16ジェンティルドンナ25/10/18(土) 16:05:32

    ――あなた、強くなったでしょう……ドンナ

    当然の事を
    わたくしは強者、わたくしこそ最強
    だから毎日の研鑽は決して怠らない。強者こそ努力をすべきその義務がある。
    しかし姉は呆れたように肩を竦める

    ――そうじゃないの。 別に鉄球を握り潰せだとかゴジラを素手で倒せなんて言ってないの
    ドンナはいつもいつもそうね
    力と筋肉でなんでも語れると思ってる。 強者こそ最強と思ってる
    でもね、そうじゃなくて……今の貴女は力を抜くこともちゃんと覚えたの
    しなやかで柔らかい……他人をいたわり他人に寄り添える
    そんな優しく柔らかい、力をぬいた強さを感じるの
    あなた、最近そんなリラックスした幸せそうな顔をしてるわ

    ……強者とは力
    だが、姉のいう言葉を理解できないほど愚かでもない
    わたくしは最近そんな顔をしていたのね
    力ばかりでなく、きっと毎日が楽しいと思えるのは――そうね
    あの人と過ごしてるからかしら

  • 17ジェンティルドンナ25/10/18(土) 16:13:50

    ――貴女は強いわ、ドンナ。 きっと私や兄さん、弟たち……だれよりも強い
    ――だから私は貴女を認めなかった。 最強ゆえ強者ゆえ……弱い他者に寄り添えなかったから
    ――あなたの物差しはつよさだけ。 だから自分に厳しい貴女はいつもいつも心にも肩にも力をいれっぱなし
    ――誰がそんな総帥を尊敬しついていくのかしら

    ……姉の言葉が少し耳に痛い
    きっと昔のわたくしなら一笑に伏して聞き入れはしなかったでしょう
    だけど今はその言葉の意味も――さっきの言葉の意味もよく分かる
    ――情けない――わたくしはそんな余裕のない生き方をしていたのか

    ――幸せがなんたるかを知らない者が他者を幸せにはできないわ
    ――だから後継者候補としてじゃなくドンナの姉として応援してあげる
    ――ねえドンナ、私は貴女が羨ましいわ。 その方そんなにも素敵なのかしら

    姉は、後継者候補として私を敵視していると思った
    でも違った。 ジェンティル家の一人として――未熟なわたくしを認めてなかったのだ
    だから、今姉は心からわたくしを応援してくださっている

    ――ねえ、教えなさいな。 面白いトレーナーさんなのでしょう?
    ――お父様がこんなことを言ったのよ?「俺を選べ」と俺にタンカを切ったと
    ――絶対おもしろいし素敵な男じゃない。 教えなさい、ドンナ

  • 18ジェンティルドンナ25/10/18(土) 16:22:38

    私は彼の事を姉に話した
    嘘つきで、感情的で――イルカショーに大はしゃぎするような幼稚な男
    でも誠実で一生懸命に毎日を生きていて、誰にでも全力でぶつかれる男
    きっとジェンティル家の中枢には全く似つかわしくない、でも一緒にいると幸せになれる男
    子供っぽくて、誠実で、そのくせ他人の事を心から喜び、悲しみ、怒り、考えられる男

    ――ほんと、財閥の中枢には絶対相応しくないわ
    ――でも……貴女がそんな顔をして喋るのだもの……きっと世界一素敵よ? その人

    姉は私にウインクをしてくれた
    ……ありがとう、姉さん。 わたくしは確かに、幸せですわ

    家族会議では多少のいざこざがあったが姉と父がうまいこと収めてくれた
    姉はトレーナーはジェンティル家には相応しくないがそれこそわたくしをそれで縛るのなら後継者候補として皆が有利になるだけ。 愚かな選択をした妹は放っておきなさい
    と堂々とわたくしを応援してくれた、ほんとこういう事はお上手

    その夜
    わたくしはトレーナーさんになんとなく電話をかけた
    阪神JFの約束のペンダントトップはもう貰った
    だけど――勝ったらもう一つ作ってくださらない? と
    理由なんて無かった――ただ、トレーナーのそれがほしかったのだ
    きっと私はこの時間、なにより力のぬけた顔をしていたのだろう

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 16:32:08

    阪神JF 1600m
    桜花賞と同じ距離同じコースで行われる関西最強ジュニアを決めるレース
    ジェンティルドンナの初GⅠにしてティアラへの試金石
    控室に入ったジェンティルの耳飾りに少し違和感を感じる
    耳に通すティアラの台座のように赤いハートの飾りが増えていた
    周囲は白のフリル、黒のステッチが上品である
    ティアラの耳飾りはその上で――俺の二つのペンダントトップはそのハートの布地につけられていた

    ――これがないと貴方のが乗らないでしょう? 今後増えていくのだから

    耳飾りを指で弾いてみせるドンナに苦笑する。 一体いくつGⅠを獲ってしまうのやら
    とはいえ今日も油断はできない
    高速のマイル戦。 距離の短さはまぎれも起こす
    ジェンティルの堂々としたレースはそうそう間違いは起きないが周囲も必死に勝利をもぎとりにくるだろう
    ジェンティルはメイクデビューのみの戦歴なのに3番人気
    その実力は学園ではもう有名だ。 あきらかに今日の最有力候補として厳しいマークの対象になる
    ジェンティルは強い。心も身体も強いウマ娘だ
    純粋なスピード、速さ以上に強さが際立つ彼女がそうそうタフなレースに負けることは無いとは思う
    しかし――それでもレースに絶対はないのだ

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 16:39:24

    ――心配かしら、レースが

    表情に出ていたか。 俺はすぐに仮面をつけるように表情を隠し
    そんなこと無いよ俺はジェンティルを信じていひゃいいひゃいいひゃい
    ジェンティルに両頬をひっぱられた
    知らんのか?ヒトミミはジェンティルに頬をひっぱられるとちぎれるんだぞ
    ――ごめんなさい痛いですこめかみいたいからグリグリしないでくださいごめんなさいごめんなさい
    情け容赦なく俺のこめかみをグリグリするジェンティルにごめんなさいと敗北宣言をし

    ――本当に、お上手ですこと

    ジェンティルが笑った。その笑顔に俺の不安は真っ白に霧散する
    力み過ぎず程よくリラックスできてる表情だ
    これなら実力はジェンティルが一枚も二枚もうわて
    だからきっと大丈夫だろう

    ――気合は上々仕上げは完璧
    ――だから答えなさいトレーナーさん?
    ――今日勝つのは?

    ――ジェンティルだ! 俺のジェンティル!!

    ――あら? ふふふ、そこまで言わなくていいのだけれど
    とジェンティルはレースに向かうべき背を向けた

    ――でも、ちょっと気合が乗りましたわ

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 16:46:32

    阪神1600mは向正面からスタート
    長い向正面の直線を走り大回りの3角4角をぬけ直線を走り切るシンプルなレースだ

    スタートはまあまあ
    しかしほぼすべてのウマ娘が内枠のジェンティルに寄る
    マークというか完全に団子の中心に収まる形のジェンティルドンナ
    あいつら……結託したみたいなマークの仕方しやがって
    ジェンティルの先行力を削ぐように前にもいかせずしかし後ろにも下がらせない
    しかもレースはマイル戦。こんなところでバ群にのまれれば不利は否めない
    ジェンティルなら多少強引にバ群を割るのだろうがこれでは強引に割れば審議がかかってしまう

    ――第三コーナーにはいってジェンティルドンナはまだ後方、前の壁から抜け出れない
    ――第四コーナーに入って先頭がスパートをかけます

    ……くそ、最悪の展開だ

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 16:53:30

    いつもならバ群を強引に割るジェンティルだがそれもできない
    そんな完全なブロックに包まれたまま第四コーナーを抜け直線に入った瞬間

    ――ジェンティルドンナ内からするりと抜け出た!

    うまい!
    マークしていた後続がようやくスパートした時の隙間を縫った
    厳しいマークの弊害でコーナーでスパートしだした先団も外に膨れている
    強引に割り込めなくても周囲がしびれを切らすのをまってしっかりとインを狙っていたのだ

    ――そうですわよね、みなさんも勝ちたいのでしょう?
    ―― ならばスパートしないと間に合いませんわよ?

    直線にはいって先頭との差は6バ身以上
    しかしジェンティルはぐっと身体を深く沈めて跳ねるように加速する
    有象無象相手は直線で十分というように順位をあげていく

    ――ジェンティルドンナがすごい足でインからせまる
    ――3番手――2番手――のこり200!
    ――ジェンティルドンナここで交わした、並ばないいっきにかわす!

    ――ジェンティルドンナゴールイン!!
    ――今年の阪神JFの勝者はジェンティルドンナ! ジュニア女王の座に輝きました
    ――強烈な末脚での勝利です! ジェンティルドンナ!

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 16:59:15

    本当にレベルの高いレースだった
    速い、強いとは別次元の高いレースセンスとタクティクスに満ちたレース
    完全なマークを受けたジェンティルドンナの勝機はほぼなかった
    しかしジェンティルは焦る事なく周囲を見定め――自分たちをマークしていたウマ娘のスパートを待った
    一瞬の判断のおくれすら致命傷になるマイルのレースでおくれてスパートをしたのであれば本来間に合わない
    だからこそジェンティルドンナはそれを信じた
    ――仲良くマークをしているウマ娘が勝利を焦って壁を空けてしまう瞬間を
    そりゃそうだ。 阪神JF、G1 勝ちたいよな。 そうだろう
    だから隙間をひらくのをじっとじっとジェンティルは待った――そしてその瞬間すべての加速を注ぎ込んだのだ
    理屈は簡単――しかしそれをじっと待つ勇気はなかなかに難しい
    ライブでのジェンティルは雄々しく、美しく――しかし女性としての魅力に溢れてた

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 17:08:16

    ――信じてましたもの

    ライブが終わって
    控室でジェンティルは事も無げに言った
    あのレースはジェンティルの力技――バ群を弾くような強さを示すレースではない
    むしろもっともっと高次元な駆け引きの勝利だ。力でねじふせるジュニアではなくシニアの長距離で行うよな頭脳戦、理屈ではなく他のウマ娘の心理を読み利用するレースだ
    強さ、速さという進化ではない――もっともっと大レースに重要なタクティクスが大きく進化したといえる
    自分の強さを? と問う俺に

    ――あの子達が勝ちたいという気持ちを、ですわね
    ――あの子達は阪神JFに出る強者で――勝ちたいという気持ちはわたくしと一緒ですわ

    ……すげえ……すげえよジェンティル!
    相手の心理気持ちをちゃんと理解し利用するなんてジュニアで出来るウマ娘まじでいないぞ
    ジェンティルは強さと力でねじ伏せるレースだとおもってたけどこんなハイレベルのレースができると想像できなかった。
    いやこんな心理戦で勝つような高次元なレースがジュニアでできるわけがない
    やはりジェンティルドンナはすごいウマ娘だ。 これでジュニアならクラシックはどうなってしまうのだろう
    ジェンティルはどうやってこんなタクティクスを身に着けたのだというのか

    ――落ち着きなさいな
    ――正直今日のレースは危なかったですわ
    ――あれだけ厳しいマークに囲まれると無理やりにでも抜け出せない
    ――そうね……勝てたのは周囲がちゃんと見れて、あの子達の気持ちや必死さに気づけたから

    そんな事を言いながら、ジェンティルは俺をぎゅっと抱きしめる
    いつもよりとてもとても情熱的に直接的に抱きしめる

    ――感謝していますわよ
    ――あなたのお蔭で今日は勝てたわ、トレーナー

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 17:18:37

    ――今までなら強引に割ろうとして、あがいて、もがいて――負けてましたわ
    ――でもわたくしは強くなった
    ――自分だけの世界じゃなくあの子達がちゃんと見れた
    ――貴方がわたくしを強くしてくれましたわ、トレーナーさん

    お、おう?
    しかしあんなことをは俺は教えていない
    ああいうタクティクスや駆け引きはもっと出走数の多いレースから学ばせるつもりだった
    特にジュニアの三人の競争能力は同期としても抜きん出ている
    力押しで勝てる状況にそのような頭脳戦を教えてもなかなかに難しい
    最初はレースに慣れがむしゃらに走ることが大事なのだ――あとは個々の気づきからレベルアップする
    しかし今日のジェンティルは明らかにレース内での判断がハイレベルだった
    あんな事は教えようがない

    ――そうね……でもあのレースは、貴方が教えてくれたわ
    ――わたくしも気づけてなかったけれど、貴方はわたくしが思っていた以上みたい

    ぎゅっと抱きしめ、俺の肩に顎を乗せるジェンティル
    ブーケとは違う上品な薔薇のような華の匂いに胸がドキドキする
    ジェンティルは俺に顔をよせ、鼻がくっつくような距離で

    ――ありがとうトレーナーさん
    ――お蔭で勝てたわ……阪神JF

    俺の額にジェンティルはキスを落とす。
    頬にも、首筋にも
    ……っは、あ♡と興奮したような熱っぽい吐息を漏らして、ジェンティルは上気した顔で俺をみつめていた

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 17:28:56

    やばい
    レースの興奮のせいもあるのか胸がこれ以上ないぐらいドキドキしてる
    興奮とドキドキが止まらない
    ジェンティルは妖艶に目を細めもう一度俺を抱きしめる。
    今度は俺の頭を胸に抱くように――あのジェンティルの胸が思いっきり俺の顔に押し当てられている
    まって――待って待って待ってまずいって
    ジェンティルのやわらかさなんかずっと顔に感じてたら脳みそ壊れる

    ――壊れてしまいなさいな
    ――今日はね、わたくしもちょっと高揚を抑えられないの
    ――大丈夫よ、優しくするから……♡

    あの胸元が大きく空いた勝負服に抱きしめられ
    ジェンティルが俺の足の間にその太腿を差し入れてくる
    ぎゅっと上半身も下半身も密着して――俺はあまりの柔らかさと気持ちよさに声にならない悲鳴が上がった
    ジェンティルはヘビにも似た爬虫類の――捕食者の瞳で俺を見据えて

    ――声もあげてしまいなさい
    ――何も考えずに溺れてしまいなさい
    ――それとも……わたくしとはおいや?

    いや
    いやすっごくシたい、ジェンティルみたいな美人にされるとか絶対気持ちよくて幸せで
    シたい……シたい、サれたい……

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 17:34:27

    ジェンティルは俺の顔を上げさせ、自分に向かせる
    れう、と少しだけ俺に舌を見せつけるように出して笑い

    ――じゃあ、ちゃんとキスしましょうか
    ――ついばむようなのではなく、この舌をくっつけこすり合わせるような情熱的なキス
    ――わたくしはしたいわ? 貴方と――気持ちのいいキスを

    ジェンティルは優しく答えを待つように俺をもう一度胸に押し当てた
    だめ、だめ……でも、シたい
    俺はどろどろにとろけた精神でコクコクと頷いてしまう
    ジェンティルは嬉しそうに目を細め、俺の顎をつかみ俺を唇にキスをしようとして


    ――ジェンティルさん阪神JFおめでとうございます!!

    バタン!
    とサクラローレル、カレンブーケドール、スーパークリークが祝福に駆けつけた
    抱き合う俺達、俺の顎をつかむジェンティル
    俺の足の間に差し込まれ密着しているジェンティルの脚、ふともも
    あっ
    というような三人の表情

    ……
    あ、あ、あっあっあっあっ
    あぶねええええええええ!!!ほんとあぶねええええええええ!!!
    俺は心から三人と神様に感謝する
    俺は闇のトレーナー
    負けるわけにはいかない――いかないのだ

  • 28ちーむ♡ぶろっさむ25/10/18(土) 17:46:28

    「――流石に今回のは協定違反じゃなくって?」

    おかんむりなジェンティルドンナの前
    サクラローレル・カレンブーケドール・スーパークリークは正座でお説教をうけている
    ジェンティルは勝った。 阪神JFにもトレーナーにも勝った
    あの時間違いなくトレーナーは堕ちたのだ
    その勝者の証――自分のものなのだという敗北の証を刻むその瞬間すべてが台無しになった
    ここまでくると何者かの陰謀すら感じられる。 もちろん三人は故意でそんな邪魔をするわけがないとはわかっている。
    それでもジェンティルは仁王立ちで腕を組み三人を正座させるほどには怒っているのだ

    「うう……ごめんなさいジェンティルさん」
    「あらあ……私たちもそんなつもりは無かったんですが」
    「ごめんなさい……トレーナーさんが一度堕ちればあとは転げるように私にも堕ちてくださったのに」

    はああ、と深い深いため息をつくジェンティル
    とりあえずお説教は終了。 三人に悪気はないのは間違いない
    しかしそれはそれ、これはこれである

    「そうね、今後あなた達が手に入れた情報で手打ちにしましょう?」
    「情報……ですか?」
    「ええ、トレーナーさんの性癖だとか好きなプレイだとか性感帯だとかオカズのグラビアだとか
    ――トレーナーさんの好みとがっちしてたらさらにトレーナーさんの理性を削れるわ」
    「なるほど――でもトレーナーさんってオカズとかそろぴょいちゃんとしてるんでしょうか?」
    「ううん、でもトレーナーさんも健全な男の子ですし」
    「わたしはこう……誘惑した夜にそれを思い出して我慢できずそろぴょい、シて欲しいなっておもいます!」

  • 29ちーむ♡ぶろっさむ25/10/18(土) 17:53:21

    「大丈夫よ。 あの人めちゃくちゃ性豪らしいし」
    「そ、それはどういう!?」

    食いつくローレルに以前の話をしてみる

    「え、えっえっえっえっ」
    「あらあら、まあまあまあまあまあ! 10Rもできちゃうんですか」
    「でも男の人って1回2回で満足しちゃうんじゃないんですか!?」

    三者それぞれの反応だが概ね高評価
    共同財産という認識があるからそれはそうなのだろうがさっそくガールズトークのネタに大盛りあがりである

    「勿論男ゆえの見栄という可能性もあるのだけれど」
    「うーん……でもトレーナーさんそんな見栄貼るとおもえないですけど」
    「しかもあの時いっぱい求めちゃう事に申し訳なさそうだったの
    さらに言うと1回か2回で我慢するとか言っていたわ」
    「……もしかして自分がちょっとお盛んなのに気づいてませんか?」
    「どうなのかしら、そもそもわたくし達がよんでいる本が正しいかどうかもわからないし」
    「でも2回で我慢ってすごいですね」
    「あ、あのじゃあわたしいっぱいいっぱい搾り取ってもそのあと本番ぴょいできるってことですか!?」
    「きゃーブーケちゃん!本番ぴょいとかエッチ!」

    きゃーきゃーと盛り上がるチームブロッサム
    なおトレーナーに人権などはないのだ

  • 301◆qxc6n.SpgKwJ25/10/18(土) 17:55:19

    QKします
    このSSはウマ娘ガイドラインを遵守しあにまんの規約をまもり健全な物語を投稿いたします

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 17:59:51

    投下ありがとうございます
    健全な若い女性の会話だな!ヨシ!!

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 18:01:17


    4人であにまん民みたいな会話してるんですがそれは

  • 33二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 18:09:49

    ブーケちゃん箍が外れそう

    ジェンティル家のところお父上も擁護する側になってるから前回ので落ちてるな

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 18:31:38

    >>33

    外れたならトレーナーがハメればいいだろ!何度でもそれが出来る男だよ闇トレは!

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 20:41:38

    >共同財産という認識があるから

    とうとう言っちゃったよ!

  • 36二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 20:44:39

    ちーむ♡ぶろっさむ怖い

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 20:47:38

    女子は獣なのだ…
    トレーナーの態度が悪いって?
    それもそうか

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 23:19:06

    色んな方向で成長しててジェンティルが柔らかさを得てるんだってウマ娘として深くいい話だと思ったらすぐえっちな話になってる
    これ闇トレ受けだから無いと思うけどしようと思ったら4人ともカエルチャンにできるってこと?

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 23:20:37

    好感度高い闇だな

  • 40ちーむ♡ぶろっさむ25/10/18(土) 23:51:46

    今日のおまけ


    「ジェンティルドンナさん、ちょっとお話があります」

    ――トレーナー室――
    ニコニコと笑顔のトレーナーがジェンティルを呼びつける
    あら? という顔のジェンティル
    お、お? なんだろうというようにサクラローレルも反応して

    「どうしたんですか? あ、阪神JFのご褒美の話ですかトレーナーさん」
    「あらあら、まあまあ♪ 阪神JFではドンナちゃんすっごく頑張ったですものね♪」

    スーパークリークは両手を合わせニコニコしている。
    カレンブーケドールも植木鉢のお手入れを終え、ハーブティの準備をしだす

    「あのレース、正直厳しいなって思ってましたけどやっぱりジェンティルさんはすごいです……」
    「ありがとう。 ところで何かしら? デートの約束ならまた私がエスコートするのだけれど」


    「阪神JFのご褒美は抹消ですよジェンティルドンナさん――お前全部話しやがったな?」

  • 41ちーむ♡ぶろっさむ25/10/18(土) 23:58:55

    あら?
    いつもとあまりに空気が違う
    その空気のちがいにジェンティルも他の三人も初めて気づいた

    ――もしかしてトレーナーが担当に初めて怒りを覚えている?

    あのひたむきで優しくてしかしよわよわなトレーナーが怒ってる?
    あっはっは、そんな事あるわけがない。 なにせジェンティルは阪神JFをかったばかり
    褒められこそすれ怒られる事なんか何一つないのだ
    三人はそう思っていた
    一方ジェンティルの方は――しれっとした顔をしていたがトレーナーから視線をそらしていた

    「お前絶対に誰にも言わないっていったじゃん!だから嘘偽りなくって言ったじゃん!」
    「なのにお前こいつらに喋ったよな!? 俺がなんかするかとかしたいかとか喋ったよね!?」
    「あーあーあーあー! ジェンティルはそんなに口のかるいウマ娘だったんですか? あーあー!」

    ――ぴょいの回数の話だ

    三人は即座に理解した。 そもそもそんな話をジェンティルがトレーナーから聞き出していたのもすごいが内緒の話だったのか。トレーナーは初めて担当を説教するように詰め寄っている
    ジェンティルはちょっと申し訳ないように耳をぺたっとしつつ目をそらし
    しかし――思わずローレルたちはその拗ねたようなトレーナーが可愛くて吹き出してしまう

    「ああああっ!?ほら見ろ!ほらみろ俺をそうやってわらいやがってええ!!」

  • 42ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 00:09:26

    「ぷ…いや待って下さい、馬鹿にしてないんです!馬鹿にしてないんですよトレーナーさん!」
    「あらあらあらあら……トレーナーさんも怒っちゃいますよねえ、いい子いい子♪ でも大丈夫ですよ? トレーナーさんもちゃあんと男の子なんだなあって♪」
    「と、トレーナーさん大丈夫です! わたしなら何回でもシてあげます! むしろ嬉しいです!」

    「ほらあああ!俺のことなんか性欲強いサルみたいに思ってるじゃん皆!
    お前絶対言わないって言ったじゃんかさあああ!!」
    「ふ――ふふふっ、ごめんなさい。 本当に悪いとはおもっているのよトレーナーさん」

    しかし怒り方まで子供のそれだ。一度こう庇護欲をそそられてる相手がこのように怒っても正直怖くはないどころか可愛らしさを感じてしまうのだろう
    申し訳ないとは思いつつも愛おしくて可笑しくて四人は思わず笑ってしまう

    「猿だなんて思ってないわよトレーナーさん。 むしろ男性としては立派だもの」
    「いーや絶対に馬鹿にしてるね! だってそんな何度も何度もしたいエロ男なんて女は絶対引くじゃんさあ!」

    トレーナーは色々と自己評価が低いのと世間ズレしてるところはある
    これもいじけてると言うより女性はそんな性欲強い男は嫌いなのだと思ってるのだろう
    実際はウマ娘である彼女たちからしたら1回2回で終わるとか毎日できないとかはそれはそれでアレなのだが。
    特にチームは四人だ、 むしろ普通の男性では愛情だとか性欲以前に持たない

  • 43ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 00:18:12

    ぷっくーと膨れっつらのトレーナー
    初めて見る子供のようにむくれた顔に、ウズウズしてたクリークが我慢できなくなったような顔をしてトレーナーに抱きつき頭をヨシヨシと無でだす
    誤魔化されてると思ってるのかクリークのなでなでにも顔を背けるトレーナー
    むしろそれがクリークには庇護欲をそそってたまらないらしい。 っきゃートレーナーさん怒らないで下さい♪とニコニコ顔で抱っこしてナデナデしてる。

    「そもそも本当に馬鹿にしてないし引かないわよ。 むしろちょっと確認をとりたいのだけど
    本当に――その、一晩で4回とか5回とか――場合によっては10回とか?」
    「だからそりゃシたいときはシたいだろうけどさ、俺だって我慢はするって!
    そうならないように今までだって味を知らないように我慢してんでしょうが」

    顔を見合わせるチームブロッサム そろそろチームアタマガピンクに変更すべきなのかもしれない

    「本物ね」「よわよわなのにつよつよですね…」「あは、 やっぱり運命……♡」

    「お前らなにこそこそ話してんだよおそういうの良くないぞ」

  • 44ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 00:27:31

    クリークの抱っこと撫で撫ででだいぶん落ち着いたようだ
    やはり母は強しである

    「トレーナーさん、そういう男女の悩みに求める回数のちがいがあるって知ってますか?」
    「だから我慢するって……そもそも一回も致しませんよ俺は」
    「まあまあまあ、それは無理ですから♪」
    「こわっ!? 俺は間違いを起こさないようにしてるんだが」

    狩りは獲物が逃げるから面白いのだ。 トレーナーはそこを理解していない

    「むしろ逆で、男性はその機能の問題でそんなに何回も出せないから1回2回で終わるの
    だから女性が満足する前に終わってしまって欲求不満が溜まるって話はあるのよ?」
    「まあこればっかりはしょうがないですよね」
    「君たち高等部なのにそんな話に精通してないでください」
    「うふふ♪でも高等部だからこそそういうのに興味があるお年頃でして~♪」
    「やめなよ男性にこんな話するの本当にやめなよお」

    泣きそうな顔のトレーナー
    どうしてこんなにウマミミを喜ばせてしまうのか、とジェンティルはゾクゾクしながらも

    「だから安心なさい? 貴方はちゃんと女性を満足させられるってお話」
    「そうですよ♪トレーナーさんは立派なんですよ♪」
    「でも実際、4Rとか5Rとかシたら次の日とかその次とかもうできないんじゃないんですか?」
    「え、なんで?」
    『……』

    ――つよい
    担当たちは初めてそっち側の世界でトレーナーをそう思った

  • 45ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 00:38:39

    「ねえねえもうやめようよ、男囲んでする話じゃないだろこれ」

    むしろ一人恥ずかしさに泣きそうなトレーナーの表情にローレルもブーケもジェンティルもゾクゾクしている
    最初はちょっと話を広めて申し訳ないなと思っていたジェンティルも、とっくにそんな事は忘れているのだ
    ここはトレセン学園。 ヒトミミは決してウマ娘には勝てない

    「でも……トレーナーさんそんなに性欲が強いと欲求不満の解消とか大変なんじゃないですか?」
    「わ、わたしが――わたしなら毎日でも……おてつだい、しますよ?♡」
    「今でも!耐えてるって!言ってんだろ!!! 我慢してるの!!!」
    「実際どうなんですか? あとオカズはなんですか!?」
    「言うわけないだろ!? もうごめんて俺が悪かったってやめようよお」
    「負ければいいじゃない、そもそも据え膳もいいところよ? しかも四人相手も互いに許可済みとかハーレムでしょう?」
    「そのハーレムに溺れてのめり込んで他をおろそかにしたくないんだよわかってよお……」

    まあわからなくもない
    一度味わってタガが外れるとか中毒のように他に手がつかないとか
    特にトレーナーの場合それに強い恐怖があるのもわかる

    「うーん、でもトレーナーさんってそういうの絶対無さそうですよね」
    「ほどほどの息ヌきって大事だと思うんですよ」
    「くそ、好き勝手言いやがって」

    「まあ――トレーナーの意思はどうあれ……負けるのはトレーナーなのだけど」
    「だからやめろって言ってるんですよジェンティルドンナさん!」

    今日もチームブロッサムは平和です
    そしてヒトミミのトレーナーはウマミミには勝てず
    この場を逃れるのに阪神JFのごほうびが繰り上げ当選しました

  • 461◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 00:40:14

    寝ます
    ちーむ♡ぶろっさむとあったらそれは本編とは関係ないなにかです

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 00:47:07

    カモがネギと鍋背負って毎日目の前で過ごしてる

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 00:50:57

    もう闇トレのビジュアルがショタにしか想像できない

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 00:51:37

    このレスは削除されています

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:02:55

    ショタというか高校の同級生とか後輩って感じ
    ニシトレとは違うかわいさあるな

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:11:51

    ぷっくー

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:35:03

    トレーナーのぴょい事情が面白おかしく描かれているようで、トレーナーの過去の話思い出すとちょいと苦味感じるのは仕様なんかな……

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:50:49

    そういや母親に身体売らされてたんだっけな……
    でもそういうトラウマがあったとしてもこの四人ならいい意味で上書きしてくれそう

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 04:45:55

    >>52

    色々と苦いものを味わわされてきたろうしな…

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 05:26:53

    次は苦いものを味わわせる側になる…と

  • 56二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:18:57

    中山2000m
    ナカヤマナカヤマナカヤマ
    直線短いナカヤマ 急坂厳しいナカヤマ
    外枠有利なナカヤマさん――っと

    ――変わった歌ですね。 中山レース場ですか
    俺が即興で作ったナカヤマレース場の歌を口ずさんでいるとサクラローレルがコーヒーを淹れてくれた
    ブーケのハーブティだったりジェンティルが置いてくれてるコーヒーと紅茶だったりでトレーナー室の喫茶事情は下手な喫茶店より質・量ともにとても充実している
    ありがとうローレルとコーヒーを受け取り、すすりつつ俺は中山レース場のコース情報やレース場の映像とにらめっこ。
    真上から見ればとてもシンプルな形のコースだがなかなか難しいレース場だ
    スタート直後2Fで最終直線の急坂が待ち構え坂を上りつつの第一コーナー、坂を下りつつの第二コーナー
    第一コーナーまではとても長く外枠有利とは言われるがこの坂の妙のせいで実は2枠1枠のほうが勝率は高い
    しかし勝率順ではその次は8枠と内枠と大外枠が有利なレース場
    急坂をスタート直後と最終直線両方で登り切る心臓・心肺のタフさ。 スタート直後の坂で跳ね上がる心肺をコントロールするペースメイク能力が問われる
    更に9月以降強い野芝で覆われ洋芝をオーバーシード12月にはその洋芝が最大で13センチを超える
    とはいえ地面は野芝が地下茎を張り巡らせ時計はかなり早くなる

    ――だからブーケちゃんもプールや坂路のトレーニングが多いんですね

  • 57二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:28:37

    ローレルもブーケも最終追い切りは坂路でありプールと坂路で脚の負担を避けつつ強度の高いトレーニングをギリギリまで行っているのはこの2度の急坂超えと急坂超えのまま2000m 2500mを走るタフな心臓を鍛えるためだ。 特にローレルはクラシック初期に散々厳しく行った坂路とプールのお蔭で強い心肺が育っている、ペースは上がらないが時計ははやい――後半勝負になりがちな中山2500のロングスパートに全力を注げるだけの心肺を作り上げられるかが鍵だ
    ナリタブライアンのあの進化した走りは確かに凄まじい。 しかしあの走りはがむしゃらな短距離走のようなものがある。 総合力、心肺でローレルにはあの走りに力押しで勝ってもらうことになる
    京都のような神がかった魔法など無い。 今回はローレルの本来の脚――そのロングスパートで三コーナー前から勝ってもらう
    ブーケも同様。 優しすぎるがメンタルに不安があったが今のブーケは勝利に貪欲な競技者の一面もある
    その強いメンタルはトレーニングの必死さ、集中にも大いに貢献している
    恐らくホープフルはURAジュニアで最もタフなレースだ、距離以上にその心肺にも身体にも負担が伸し掛かる
    それに負けないだけの強さが必要だ

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:36:48

    坂路はスピードは出ないがとにかくキツい
    ヒトミミでも階段をひたすら全力で登り降りすればよく分かる
    脚も心臓もすぐに悲鳴を上げるし息が上がる
    その一番辛い時をどれだけ自分で作って続けるか――自分への厳しさがこのトレーニングの効果を決めると言ってもいい。量より質、 理論より意志力――シンプルなのだが難しいトレーニングだ
    しかしブーケもローレルも真面目な性格なのでその成果はメキメキとでている

    彼女たちの練習は上々、仕上げは最高――となればトレーナーとしてレースの要点を抑え重要な部分だけを彼女たちに伝えそこを抑える練習で仕上げるべきだ。
    京都のような魔法も抜け道もない……だからこそ中山の重要点、まだ誰も見つけてない落とし穴をトレーナーが見つけてやらないといけない
    と――ローレルがおかしそうに笑っていた

    ――ふふ、トレーナーさんそんなに真剣にレース場とにらめっこしてるんですね

    当たり前だろう、レース前だぞレース前。 こちとら必死なんだ
    ローレルは可笑しそうに、しかしとても嬉しそうに目を細めてる

    ――そんな真剣にレース場とにらめっこしてるトレーナーってきっとトレーナーさんだけですよ?
    ――私の前のトレーナーさんもレース前にレース場そんなに必死にチェックしてませんでしたし

  • 59二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:43:49

    そりゃそうだろう
    殆どのトレーナーは経験の長い中堅・ベテランだ
    何故か知らんが新人トレーナーの多くはすぐに引退していく
    別にトレーナーとして実力がたりなかったわけでもない。 むしろ華々しい成績を収めたはずのトレーナーほどトレーナー業をやめその担当の次の人生と共に歩んでいるのだ
    確か生徒会長のトレーナーも今はトレーナー業はやってないはずだしミス・パーフェクトの名をもったかのダイワスカーレットのトレーナーもあれだけ鮮烈な成績を残したのに即引退してしまった
    そんなのだらけだから学園側もAPR……専属トレーナー業の選択をかなり嫌がっていて新人研修で釘を刺される
    それだけの成績を収めたのだからトレーナー業を続ければ立場も報酬も約束されたものだろうに
    卑しくも金目的にトレーナーになった俺には理解ができない
    俺は闇のトレーナー
    金目的にトレーナーになった男――結果が出れば報酬も地位も得られる
    得られた地位は新たな報酬に繋がる――俺はウマ娘を金づるとしか見ていないトレーナーなのだ

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:49:37

    そんなこんなで残るトレーナーはそれなりに経験の長いトレーナーが多い
    そうなればレース場の知識や情報など頭に叩き込まれてるだろう
    俺のような新人がこうして必死こいてレース場の情報とにらめっこするのとは事情が違う
    そんな俺の言い分にローレルはクスクスと笑う
    女子高生らしい花が咲くような、綺麗な鈴を転がすような笑顔だ

    ――でも、そんなに一生懸命な顔は見たこと無いです。 もうちょっと惰性で生きてました
    ――私もトレセン学園にもう2年近くいて色んなトレーナーを見てますよ?
    ――その中でトレーナーさんは一番必死で……素敵です

    俺の手をぎゅっとローレルの手が握る
    暖かくて優しい手の温もりが冬のトレーナー室でとても心地良い
    ローレルの手は、暖かいなと素直に口に出てしまう

    ――じゃあ今度、外で私の手を手袋代わりにして歩きませんか?
    ――冷たくなったら私のコートのポケットに入れて
    ――トレーナーさんの手をあっためながらおさんぽ、したいです♪

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:53:12

    嗚呼
    それはきっと幸せだろう、暖かくて心が満たされて
    それはきっととっても幸せだろう
    だがそんな事はできない

    ――どうしてですか?

    出来るわきゃねえだろそんなお手々繋いで歩いてるのとか大スキャンダルだわ!
    アイ・アム担当トレーナー! ユー・アー担当ウマ娘!
    しかもサクラローレルは今や菊花賞2着有馬記念事前投票3番人気の注目ウマ娘
    そんなのが記者に見つかってみろ? いっぱつで週刊誌行きだぞ!

    ――???

    とてもとても不思議そうなサクラローレルの表情
    何を言ってるんだこのトレーナーさんはという顔だ
    なんだよ事実を申し上げたまでだぞなんだよその俺が馬鹿な事を言ってるかのような不思議そうな顔は

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:59:53

    ――トレーナーさん
    ――今までウマ娘と担当トレーナーの炎上とかスキャンダルって見たことあります?
    無いよ?そりゃあ色んなトレウマがそういうお付き合いしてるのは俺も知ってるよ
    でもそういうのが記者に見つからないよう皆こっそりお付き合いしてるんだろ

    ――その方たちがお付き合いしてるってなんでトレーナーさんは知ってるんですか?
    そりゃ見りゃわかるだろそれなりにはイチャイチャしてるんだしさ
    学園でもそんな話題は日常茶飯事お茶漬けサラサラだろ

    ――なんでそれは記者の皆さん達が記事にしないんですか?
    ……え? ――そ、そりゃあ――なんでだ?

    ――トレーナーさん
    ――別にトレウマのお付き合いは――スキャンダルでもなんでも無いんですよ?

    ――――ッ!!!?
    闇のトレーナーに落雷落ちる
    俺の常識という20年間積み上げたバベルの塔は一瞬でその雷鎚に瓦解し崩れ落ちた
    なんでだよおかしいだろトレーナーと学園の生徒の恋愛なんて大スキャンダルだろ!?

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:07:24

    ――う、うーん自由恋愛なので……堂々と不純異性交遊を公言してるわけでもなく
    ――そもそもトレーナーって結構普通に担当と「おでかけ」しますよね?
    ――あれもデートと言えばデートな訳で
    ――大前提として恋愛関係、お付き合いをしてるってなっても元々それは問題ではないので

    え、えええ!?
    だって学園だってそんなの普通認めないでしょ? だってトレウマで恋愛だよ!?
    俺の中の常識がガラガラガラと崩れていく。そんな崩れるそれを俺はなんとなく認めたくない
    人というのは自分の中の常識が間違ってると知った時、それを認めたくないものなのだ
    ああ、なるほどなるほど。とサクラローレルは理解しましたというように両手を叩いて

    ――そうですか♪ トレーナーさんは今までそんな事はだめ!と思ってたんですね♪
    ――大丈夫ですよトレーナーさん! 流石に堂々とえっちな事を公言は倫理的に問題ですけど
    ――トレーナーさんが私たちと付き合っても学園も社会も何も問題ありません!

    ローレルはようやく俺が何か大きな勘違いをしていてソレが正せて良かったね♪いった顔をしている
    どこをどう見てもからかってる様子も嘘をついてちょっと意地悪しようともしてない
    この言い分ではまるでえっちな事すら公言しなきゃ黙認みたいな雰囲気ではないか

    ――え? そうなんですけど

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:16:08

    え? あ?えっ?
    まって? 俺の人生と常識が通用してない世界に俺はずっといた?
    俺は混乱で目の前がちょっとくにゃっとしている、精神的に混乱すると視界が歪むって本当なんだ
    え、だって学園のウマ娘は未成年で未成年の淫行は犯罪で
    え?
    混乱しきってきっと面白い顔になっていたであろう俺を見てサクラローレルは物凄く納得した顔をしている
    スッキリ!というような顔でニコニコしてて

    ――前々から不思議に思っていたんですよ、なんでそんなに一線超えたり貞操観念強いのかなって
    ――ずっとそういう事に溺れて他のことが手につかないという不安だけでこんなになるのかなって
    ――そうだったんですね! 恋愛や不純な交友が社会的にアウトだと思っていたと
    ――へー、そうなんですね! ふーんはーん、ほー、どうしてそう思っていたのでしょうか♪
    ――だってこんなにもトレセンではそういうのが溢れてるんですよ?

    ……いや、いやそうだけどさ、確かに誰と誰が付き合ってるだとかどこのトレウマがメジロシティいったとかさ
    結構当たり前に話されてるし見てるしそれを記者が記事にできるけどしてないなって思うけどさ
    よくよく考えたらそんなガチアウト案件が当たり前に蔓延してて法的にやばいなら学園お取り潰しだろうしさ
    わかるよ、本当にアウトならもうちょい隠してるよね皆ってなるの分かるよ?

    ――だってニシノフラワーさんとニシトレさんだってそういう関係なの知ってますよね?
    ――ニシノフラワーさんって飛び級で実際は◯歳でs………

    うわあああああやめろ!生々しい話やめてえええええええ!!?

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:24:13

    サクラローレルは今までのモヤモヤがスッキリしたような晴れ晴れとした表情だ
    一方俺は自分が当たり前だと思っていた常識が脆くも崩れ去る音を脳内で聞いていた

    ありえない――そんな事はどう考えても許されるわけないではないか

    しかし現実に学園でも街でもトレウマはイチャイチャする人らはしており
    俺はその姿に「チッ、レースにもうちょっと集中しろ集中。 なんのための担当契約だよ」と
    多少嫉妬の心が混じった気持ちで舌打ちをすることも結構あった
    メジロシティメジロアパートメジロマンションメジロ宿泊場がどういうところか俺も知っている
    ならば世の中の記者も社会も知っていて当然で
    それがスキャンダルにもならないのだから記事にもならないし炎上もしないのだ

    え、えー……サクラローレルの言葉は分かるし納得はした
    しかし俺の心と魂はそれを納得することを拒否している


    ――大丈夫です♪ トレーナーさんが私たちと「そう」なってもなんにも問題ありませんよ♪

  • 66二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:33:34

    まだ錯乱している俺の両手をローレルがぎゅっと両手で包んで握る
    ローレルは俺にさっきより近づいて――身体をぐいっと近づけて
    ふー♡
    俺の耳に甘くあったかい吐息を吹き入れた。 びくんっと震える俺を楽しそうに観察して

    ――こういう事しても、毎日こういう事を求めてもいいんです♪
    ――お外をお手々つないで歩いて、デートしても
    ――ちょっとメジロシティにこっそり寄り道しても――ね?
    ――もう、我慢しなくて良いんですよトレーナーさん……♡

    俺の肩、腕にローレルがぴったりとくっつく
    わざと腰をかがめ上目遣いにじー♡と俺を見上げてる
    その視線がなぜかとても艶めかしくてゾクゾクとした
    ローレルの手が伸びて俺の頬を撫でて

    ――トレーナーさん……我慢するのやめちゃいましょ?♡
    ――こうしてじー♡って見られるの大好きですよね?
    ――私もっともっとトレーナーさんがシて欲しい事知りたいです♪
    ――だから我慢なんかしないで全部私に任せちゃいましょう……🌸

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:40:13

    メジロ家はもうマスコミを完全支配してらっしゃる?
    トレセンは婚活会場どころか狩場やんけ……

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:40:21

    頬を撫でられ、首筋をくすぐられ胸板をシャツ越しにいじられる
    それにビクビクとする俺の顔をじいっ♡と見つめるローレル
    その表情は楽しげでこの上なく妖艶だ――俺を虐めるのが楽しくて仕方ないような
    同時に俺のそんな反応に興奮してるようにはあ、っ♡と少し荒い吐息をしてる
    ローレルが俺を見て興奮してるという事実とそんな瞳に――俺の鼓動も心もどんどん跳ね上がっていく

    ――トレーナーさん、私に見られるのってそんな興奮しちゃいますか?
    ――私もトレーナーさんが気持ちいいって顔してるの見るの大好きです♡興奮しちゃいます♡
    ――もっともっとゾクゾクってする顔みせてくださいね♪
    ――ぜーんぶ、見ててあげますから🌸

    指はもっと大胆に胸板を撫で回し、時に敏感な部分をつま先でひっかく。
    もっと、もっとしてほしい――と思う反面自分の理性がなんとかそれを押し留めようとする

    ――なんでですか? だってシていいんですよ?
    ――いいんです🌸 悪いことじゃなくて――これはイイコトなんですから🌸

    そうだ――これは駄目なことじゃない
    もっとローレルにじっと見られながら愛されたい、愛でられたい
    もっともっと気持ちいいことをしてほしい
    そう、ローレルに懇願しようとして

    だめ、だ。 ローレル
    俺はそう口からこぼれた。 まだ――
    まだ、ナリタブライアンに勝ってない、凱旋門賞にも勝ってない、と

  • 69二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:42:04

    >>67

    生物学的強者たるウマ娘に食べ頃のヒトオス・ヒトメス(しかも能力的に優秀)を提供してる場だぞ

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:46:43

    ――ぶっすー

    サクラローレルはものすごく不機嫌なふくれっ面でプイっとしていた
    俺はローレルに頭を下げなんとか機嫌を戻して貰おうと謝罪する
    おかしい
    俺は何一つ悪くないのになぜ謝罪をしているのだろう
    むすっとシた顔のままローレルは俺を横目で睨みつつ

    ――なんであそこまで来てブライアンちゃんや凱旋門賞なんですか

    と俺を糾弾する
    い、いやそもそもナリタブライアンと凱旋門賞は俺じゃなくお前の夢だぞローレル
    とツッコミを入れたらほっぺたを思い切りつねられた――めちゃ痛い

    ――私はそんなに魅力ないですか?
    ――シたくならないんですか? 他の子がいいですか?

    そんなワケねえだろ
    さっきのだって口をついて出たのがそれなだけで本当はもっとしたいって言おうとしてたわ!
    負けてたけど何故かブライアンと凱旋門賞が出たんだ
    本当は負けてたんですー残念だったなお前の夢を恨め
    ローレルはぶすーとした表情のまま俺に顔を向け

    ――私が魅力的じゃないとか……ああいうのが嫌いじゃないんですね?

  • 71二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:54:55

    だからローレルはめちゃ可愛いし正直シたいんだって
    他の子だってそうだけどお前ら全員シたいよ俺だって男だし毎日悶々としてるの!
    ローレルに見つめられるとゾクゾクするしローレルに見られながらえっちなコトしたいされたいって思わないわけねえだろめっちゃ気持ちいいって思ってるわ!
    俺だってローレルとエッチなコトしたいですー! 俺はそんなスケベな男ですー!

    くそ――なんで俺がローレルに全部こんな事を言わなければいけないのか
    そしてこんな事を全部全部吐露しつつ我慢をしなければならないのか
    恥ずかしさに顔を真っ赤にしてしまう
    ローレルはそんな俺の表情を見ながら深い深い深いため息をつく

    ――はああ、本当にトレーナーさんって私たちのレースが最優先で他はどうでもいいんですね

    どうでもいいんじゃなくて我慢してるって言ってんだろうが!
    しかしまあローレルの機嫌は直ったようで、今日は許してあげますと服を整えて立ち上がる
    俺の大きな勘違いを知れたし正せたから大きな一歩ですね🌸と踵を返して

    待ちなさいローレルさんや。 俺が勘違いをしていた事は絶対他の三人には内緒にお願いしますよ?
    三人はクラシックでティアラや皐月賞ダービーや菊花賞や今後もあるし君だって凱旋門賞もあるんですからね
    と、俺は厳しくローレルに釘を差し

    ――イヤです🌸

    と最高の笑顔で拒否されてしまった

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:02:47

    余談だが
    俺はどうしても納得がいかないので六法や民法、ネットでの判例や事件などをその日漁りまくった
    だってそうだろう? 未成年淫行は重罪だ、それは未成年であるウマ娘たちを汚い大人から守る法律だ
    そんな事があってはならないのだ

    ――なかった

    もっともっと厳密に言うと俺は間違ってない
    ヒトミミの未成年との淫行は厳しく罰せられる。 特に金銭を伴う売春買春についてとても厳しい
    しかし――ヒトミミとあり、ウマミミの未成年――12歳以上についての法そのものがない
    無いのだ――ヒトミミとウマミミとが行う淫行についての法が
    もちろんこのような事件は存在しない、民事での大きなトラブルもない
    精々が未成年のウマミミがヒトミミに力付くで強要し暴行や脅迫、強制わいせつなど別件での事件ぐらいだ
    ――そこで俺は気づいてしまう
    これらの事件はすべて加害者がウマミミであり被害者がヒトミミだ
    ヒトミミはウマミミに勝てない。敵わない……つまりそういう事なのだ
    護られるのはヒトミミでありこのような法にウマミミが護られていない
    だから法的に記述はないし学園でも風紀・倫理面で公言しないこと以外の抑止がない
    成年済みでもそのような事を公言しないように――それを公言しない程度の抑止力はない
    ……恐ろしい
    ヒトミミはウマミミにはかなわない――それは法からしてそうなのだと
    俺はこの日自らをもって知ってしまったのだ

  • 731◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 10:04:54

    今緊急でコメント打ってるんですがこのSSとこのスレは同人オリジナル設定であり本作の史実と同国の法・社会とは異なる可能性がありこれはフィクションです
    また当作品はウマ娘プリティーダービーの同人でありCygamesのガイドラインを遵守しあにまん掲示板のガイドラインを守り投稿されています

    QKします

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:08:54

    そりゃどう考えても男>女であるようにウマミミ>ヒトミミだもんな強弱関係

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:11:53

    アプリからして「推せる~」の世界だしな 常識からして違う

  • 76二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:12:40

    わざわざ変な言い訳せんでも

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:21:14

    >だってニシノフラワーさんとニシトレさんだってそういう関係なの知ってますよね

    ニシトレさん!?

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:22:40

    >>73

    何 を 今 更

  • 79二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:41:46

    実際アプリの世界もトレウマ全肯定だよな

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:55:23

    1週間あにまん放置してたらバケモン作者がでてきた

    全然違ったらごめんなさいなんですが
    某所でロードバイクだのマジカルだのやってました?
    なんか雰囲気を感じる

  • 81二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 11:00:42

    ニシトレくんは食われちまったんだ…
    きっと今頃美味しいお弁当食べさせ合いっこしてるよ…

  • 821◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 11:03:57

    >>80

    視聴ありがとうございます

    申し訳ありませんが私は素人でこのようにしっかりとしたSSをあにまんに置くのははじめてです

    ロードバイクの知識はなくマジカル的なSSを書いたことはありません、ご了承ください

    しかしそのように高い評価を頂けること心より嬉しく存じます

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 11:25:48

    ホープフルS
    中山2000m
    カレンブーケドールは8枠12番
    ライバルになるであろうサートゥルナーリアは4枠5番
    枠番抽選は完璧――前めの先行作戦のブーケにとっては最高の枠番
    チームブロッサムの応援も完璧
    メガホンを両手に持ってローレルとブーケ、更にはジェンティルが応援してる

    ――実際の所どうなの? サートゥルナーリアさんもかなりの実力者だけれども
    ジェンティルは俺に訪ねてくる。 ローレルとブーケの視線がこちらに向いて
    サートゥルナーリアは強い。 文句無しに最強のライバルだろう
    名門チームが過去最高のウマ娘だと言うだけあってトレーニングではクラシック・シニアのGⅠ勝利ウマ娘と並走をする事すらあり、勝つことはなくても並びゴールインする様が見れたとか
    好位抜け出しを得意としブーケと戦法はかなり近い。 好位を取り鋭くスパートするブーケに対し4角までに勝負を決める抜け出しと違いはあれどそのスパートはクラシック・シニア級といっていい
    位置取りが近いこともありポジショニング・位置取りに不安のあったブーケであればサートゥルナーリアはの方が有利とも思える。

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 11:30:32

    だが今のブーケは違う
    京都ジュニアで見せたあの『強さ』はサートゥルナーリアにも負けない
    その才能はジェンティルやクリークにも負けないものがある、中距離2000mの中山
    もっともタフなレースになるホープフルSでブーケは間違いなく強い
    サートゥルナーリアより、カレンブーケドールは強い

    ――だが

    ……
    ――なんだ……あいつ
    俺が目を留めたのはサートゥルナーリアではない
    メイクデビュー後東京スポーツジュニアの予定が脚の不調で回避
    1勝でホープフルに滑り込み出走
    しかし――ゲートに向かうそれは、その気配は
    まるで

    ――まるでジェンティルドンナを思わせるような圧倒的強者の威圧感をスタンドの俺すら感じていた

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 11:46:56

    ――ゲートが開きスタート
    ――おっと一人素早く飛び出した! 素晴らしいスタートですサートゥルナーリア!
    ――名門最強の名を証明するためにサートゥルナーリア、スタート直後先頭を走ります

    先頭を切ったのはサートゥルナーリア。 会心のスタート
    中山2000mの不利を背負う5枠という位置をひっくり返すロケットスタートだ
    しかしブーケも素早くその左後ろにつけている
    中山のスタートは200mまでが勝負――坂にぶつかる前に位置取りを決める
    コーナーまで長い直線だがそこにはとてつもない高低差の中山の壁がある
    無駄なスタミナを使わないためにもコーナーまでではなくこの坂までに先団上位に立てるように
    そしてその位置は外からアウト・イン・インのできるサートゥルナーリアの外
    8枠からしっかりと切り込めている。 これなら第1コーナーの有利はブーケ側だ

    坂を登り第1コーナー、下りながら高速にコーナーを回って先頭は直線を思い切りつっぱしり先頭を奪ったパンサラッサ。それを追従するようにカレンブーケドールとサートゥルナーリアが並走している
    前を塞げはしなかったが綺麗な並走……さらにぶつかり合いになりそうなほどブーケがサートゥルナーリアに寄せている。 外に膨らめず内ラチギリギリ……サートゥルナーリアの方がインなのに窮屈で辛い位置取りだ
    自分からあれだけ厳しいマークも行える――本当にブーケは強くなった

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 11:51:36

    向正面を過ぎ順位はそのまま――まだ大逃げ気味に引き離すパンサラッサを見つつもサートゥルナーリアもブーケも我慢を続ける。 大逃げ対策はこの我慢が重要だ
    あくまで自分のペースを守れるかどうか――届かない、ではなく早すぎるスパートで潰される事が最も大逃げにあり得る敗北
    しかし二人は自分のペースを守り第三コーナー前で、カレンブーケドールが身体を少し低く取りスパートの体勢
    それにあわせてサートゥルナーリアが身体を沈めた
    プライドの高い性格らしい――真っ向からブーケを迎え撃つつもりなのだろう
    双眼鏡から覗く二人の表情は互いに負けない!という闘争心に満ちていた
    そして同時にスパートした瞬間

    ――あっさりと――本当にあっさりと
    ――スパートした二人を外から追い抜き、ちぎるウマ娘が現れた

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:00:18

    ――パンサラッサは第三コーナーをもう回っている、第四コーナーに入って苦しそうだ!
    ――後続は間に合うか!まだ第三コーナー、中山の直線は短いぞ間に合うのか
    ――おっと外を回って2枠2番が猛追!? すごい脚だ! 超高速のコーナーリングでパンサラッサを猛追!

    中山は外回りといっても綺麗なスタンダードコース
    そのカーブは決して緩いものではない。小回りとも言えないが大回りにしては窮屈なカーブだ
    東京や京都のように三角四角が膨らんでいるわけではない
    その中山のコーナーを超高速で走るウマ娘
    スパートをかけたはずのサートゥルナーリアもブーケも引き離される
    異次元なスピード、コーナーリング
    ぐんぐんと中山のカーブでパンサラッサに猛追し四角を抜け直線に入る頃にはパンサラッサの真後ろに立っていた

    ――コントレイル! 直線に入って先頭はもうコントレイルだ!
    ――パンサラッサはもういっぱい! サートゥルナーリアもカレンブーケドールも追いつけない!
    ――強い!つよいつよいつよい! 後続との差は開く一方!
    ――今大差をつけてゴールイン!!! 1着はコントレイル!圧勝です!!!

    あれは……なんだ?
    異次元のスピード、強さ
    歓声の中俺達は言葉を失っていた
    カレンブーケドールもサートゥルナーリアも……絶望的な表情でウイニングランをするコントレイルを見つめている

    ――あれが――コントレイル

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:07:27

    カレンブーケドールはサートゥルナーリアをかわしハナ差で2着
    しかしコントレイルはその二人に7バ身差をつけての圧勝
    あまりに次元が違う――ふたりのレースは完璧だったし最後のスパートだってジュニア最強を決めるものだった
    しかしコントレイルはそれすら凌駕……大人と子供のような差だった

    ――あれが、コントレイル。

    メイクデビューのみでの故障、本来は東京スポーツ杯の予定だったらしいが
    あのコーナーリング、あのスパート。スピード
    すべてが別次元の強さだ
    ブーケの強さ速さ、スパートを知っているからそこチームブロッサムのメンバーもそれを凌駕するコントレイルの圧倒的な強さに言葉を失っていた

    あれが来年のクラシックで――王道路線を走るのか
    ブーケに、クリークに立ちふさがる最強――コントレイルという絶対強者
    俺は調子に乗っていた
    今日だってブーケが勝つのは当たり前だとどこかで思っていた
    だが実際はあんな化物が今年も潜んでいて――来年のクラシックに挑戦するのだ

  • 89二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:14:23

    ――今のわたくしより、強いわね。 コントレイル

    ジェンティルはまっすぐにコントレイルを見つめる
    強者、好敵手として相手を認めることはあっても『自分より強い』と認めるほどの相手はコントレイルが初めてだ。 一人別次元のあの走り――そしてカレンブーケドールすら大差でねじ伏せる程の実力
    ジェンティルは俺がみてもゾクリとするほどの笑みを浮かべていた
    コントレイルという圧倒的な強者に挑み打ち倒す事に喜びを見出したように

    ――トレーナーさん、期待してますわ。 あの化物を倒せるプランを

    ……その必要はないよ
    ――あいつを倒すのはクラシックのブーケとクリークだ

    俺の言葉にクリークは目を丸くして……しかし嬉しそうに頷いた。
    いつも通り「はい、頑張っちゃいます!」とおっとりとした口調のクリーク
    ジェンティルはふうん、と目を細めて――分かったわ。 と踵を返す
    追加の自主トレに先に向かうと、レース場を先にあとにしてしまった

  • 90二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:20:43

    ライブが終わり――控え室

    ――負けちゃいました、トレーナーさん

    ……
    俺はブーケの言葉を思い出す

    ――沢山の勝利を束ねたブーケを
    ――トレーナーさんに、最優秀ジュニアを

    ごめんなさい
    そうブーケが呟いた。 圧倒的な強者に、もう少し頑張ればとか位置取りがとかそういうレベルではなく
    完膚無きまでに叩きのめされた。 あれはどうあがいても今のブーケでは敵わない相手だ
    だから
    ごめんなさい――なんて言う必要はないのに
    きっとそのごめんなさいはレースに負けたことにじゃなくて
    ――俺に勝利の花を贈れない事になんだろう

  • 91二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:24:37

    ブーケ……今日の1角覚えてるか?

    俺の言葉に不思議そうに顔を上げるブーケ
    俺はブーケの頭を優しく撫でつつしゃがんで目を合わせる

    第一コーナーでブーケはサートゥルナーリアの前を塞げなかった
    だからすぐにコーナーで並走してサートゥルナーリアの左にぴったりくっついて窮屈にさせる位置取りをした
    そんな相手を追い詰めるようなレースは昔のブーケにはできない事だ
    やらない――ではない。 できない、だ。 あのチェックは自分がぶつかり合いに打ち勝つ勇気と自信がないとできない。 遠心力で内からタックルを受ければ京都ジュニアの外枠のようにブーケが弾き飛ばされる
    サートゥルナーリアに勝つために必死に行う勇気ある勝負だ

  • 92二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:29:59

    第二コーナーから向正面でもそうだ
    サートゥルナーリアが窮屈になるように封じ込めて、右腕を使ってサートゥルナーリアをマークした
    サートゥルナーリアも必死に左腕でブーケを弾き嫌がるように動いていたがブーケは一歩も引かなかった
    結果――サートゥルナーリアは本来の先行好位抜け出しではなく真っ向からブーケとスパート勝負を受けて立つ形になったのだ

    ――なあ、ブーケお前凄いよ。 ホープフルっていうGⅠでサートゥルナーリアに真っ向から立ち向かって
    ――負けたよ、コントレイルには負けた。 完敗だった
    ――でもさ、ブーケは一つ勘違いをしてるんだ

    俺は闇のトレーナー
    担当たちをだまくらかしてレースを走らせ、その名誉で金を稼ごうとする男
    だけど――今の俺は

    ――このレースでも京都ジュニアでも
    ――ブーケはどんどん強くなる、成長していく
    ――そりゃ勝って欲しい。それは嬉しいけどさ
    ――俺が一番嬉しいのは弱かったブーケが強く成長していく事なんだ
    ――俺は今日だってブーケよくやったなって喜んでる
    ――だから――ありがとう、ブーケ。 強かったよ

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:33:31

    ブーケは涙をいっぱいに溜めて――その涙がこぼれて
    俺にすがりついて大声で泣いた。感情だけで大泣きをするブーケをみるのは初めてで
    俺はぎゅうっとブーケを抱きしめ、背中を撫でた

    ――悔しい……悔しいです!
    ――私頑張ったんです! サートゥルナーリアさんにも勝てるって思ったんです!
    ――負けないって、絶対勝つんだって!勝てるんだって!
    ――でも、でもコントレイルさんは、あんなに私たちを圧倒して――悔しいんです

    ああ――俺も悔しい。 滅茶苦茶悔しいよ
    あんな異次元の走りを見せつけられてさ、今はもう相手にもなってないけど
    俺も悔しいんだ――コントレイルに勝ちたいと思ってる
    だから
    だからブーケに初めてこういうお願いをするよ

    ――あの化物に――コントレイルに、勝ってくれるか?

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:36:31

    俺達は負けた
    ホープフルSは完敗で――クラシック路線はコントレイル一色なのかもしれない
    でも俺達は勝ちたいと思ってる
    あいつに――コントレイルに、来年のクラシックで

    ――勝ちます、トレーナーさん勝たせてください!
    ――私――あの人に、コントレイルに勝ちたいです!

    再戦を誓う。 もうブーケも逃げるよな弱いウマ娘じゃない。
    次はクラシックで――コントレイルに勝とう

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 12:41:41


    クリークさん?

    帰りの電車でおまんじゅうになってるクリークさんがいた

    悲しそうに佇んでいた


    ――私はメイクデビュー1勝だけ

    ――皆さんはこんなにすごいレースをして来年頑張るぞってなってるのに

    ――私はメイクデビューだけでしか、トレーナーさんを喜ばせてないんです


    ああ……まあ骨折なのだから仕方ない

    それにたとえ完治しても今のクリークでもブーケでもコントレイルには勝てない

    カレンブーケドールはダービー2400m

    そしてスーパークリークは――その真価――3000m菊花賞

    それまでにこの二人をコントレイル以上に鍛え上げる必要がある


    ――長いですね……あのあのそれまでトレーナーさんを喜ばせてあげられないんでしょうか

    ――うう、お母さん悲しいです……


    本当に珍しくクリークのお世話をしながら俺たちは帰路についた

  • 961◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 12:44:02

    休憩します
    パンサラッサとコントレイルは本来ブーケの一年後のスターホース
    サートゥルナーリアがブーケちゃんの同期です

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 13:05:59

    この先本当たのしみ

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 13:06:47

    コントはここでも負けるんか

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 13:08:39

    ここでも、って?

  • 100二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 13:23:45

    乙です
    この史実世代を超えたぶつかり合いはダビスタを思い出すなぁ

  • 101二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 13:26:29

    菊花賞ローレルの勝ちだと思ってた
    簡単に勝たせてくれないのほんと続きが楽しみになる

  • 102二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:19:14

    年末――クリスマス
    同時に年末有馬記念
    そのイブに俺とサクラローレルは街を歩いている
    雪が降りそうだな――俺は鉛色の空を見上げた
    薄い薄い雲が空を覆う鉛色――クリスマスには少し不釣り合いな色だ
    街はそれに抗うみたいにイルミネーションを光らせきらびやかに飾り付けをしている

    ――あ、おっきなツリー飾られてますよ! てっぺんには金色のベルです
    ローレルは大はしゃぎでツリーを眺める。 ぴかぴかと光るツリーのライト
    それを目を細めて俺は眺めていた
    ローレルは優しくツリーの葉を撫でながら俺を見て

    ――トレーナーさんはサンタさんに何をお願いしましたか?
    ……うちは仏教だったからな
    俺はそれだけ答える。どう答えていいかわからず深くにもすこしぎこちのない笑顔になった
    そっか、とローレルはツリーのてっぺんのベルを弾く。 残念ながら飾りのためのベルは音がならないようだ
    ローレルはふわりと笑いながら

    ――じゃあ明日、私がトレーナーさんにグランプリウマ娘をプレゼントしちゃいますね♪

    明日は有馬記念
    年末グランプリ――そしてナリタブライアンとの勝負の日だ
    ローレルは有馬に目標を定めてギリギリまで鍛え上げた。 今まで以上に心肺を鍛え上げて2度の中山の急坂にも動じない心肺を得られるように
    きっと、明日は勝てる。たとえ怪物があの進化した走りをしたとしても、勝てる
    最強は怪物じゃない――サクラローレルだ

  • 103二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:20:11

    信じられるか?
    こんなアツい戦いしてるのにターフから離れたら頭ちーむ♡ぶろっさむになるんだぜ?

  • 104二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:21:10

    だが
    ――明日はもうサンタは返ってる。サンタには結局なにも貰えないんだ
    俺はそんな事を言ってしまう。 たまにはローレルをからかうように
    これが今年の1月に引退をしようとしていたウマ娘か?
    サンタなんか要らないよ――俺はもう十分すぎる幸せを皆から、ローレルから貰ってる
    十分すぎてお腹いっぱいだ

    ――ぶー、私からもクリスマスになんか貰ってくださいよ!
    ――ちゃんとクリスマスプレゼント用意――あ、あれ?

    ローレルは小さなバッグを一生懸命漁り、あっちゃーといった顔をした
    どうやら俺へのプレゼントを入れ忘れてしまったようだ
    じゃあ明日、楽しみにしてるよ――そういう俺にぶるぶるとローレルは首を振った

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:24:57

    ――クリスマスっていうのは凄くすごくすごーーく大切な日なんです!
    ――だから持ってきます! トレーナーさんは待っていて下さい!

    一番嫌いな日だった
    俺にとっては、クリスマスなんてのは眺めるだけ。 他人事
    毎年毎年――人を羨み妬み、翌日には友達が何を貰ったか自慢しあい
    俺はいつもいつも惨めだった
    だからクリスマスにサンタさんに手紙を書いても――プレゼントはなくて
    ただ次の日に俺をなじる声と大きな手のひらがまっていて
    俺はただ、神様に謝ってた


    ――サンタさんにプレゼントをお願いしてごめんなさい
    ――だから、だからもうゆるしてください

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:27:34

    それでも、今日というクリスマスは楽しくて
    心が浮かれて――キラキラしてた
    ずるい、こんなのずるいだろ
    皆こうしてキラキラして浮かれた幸せな日をすごしてたのか
    それは凄くずるいと思う――そう思うぐらいには
    俺は今凄く幸せだ

    俺は、プレゼントを取りに帰ろうとするローレルの手をぎゅっと握る
    ローレルは不思議そうに俺を振り返り
    俺はローレルにクリスマスプレゼントをおねだりすることにした

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:32:25

    街のスーパー
    俺はローレルを引っ張ってお菓子売り場に来ていた
    まだきっとあったと思う。ローレルを連れて俺はお菓子売り場を回って

    ――あった
    プラスチックの筒に詰め込まれた色とりどりの球体の飴
    その先端にはよくわからないキャラクターの小さな人形。その顔部分
    数百円の食玩――それを手に取ろうとして……手を止める

    これが欲しかったんだ。 小さい頃
    玩具なんか絶対かってもらえないって分かってたから
    これが欲しいって言おうとしたんだ。 だってクリスマスだもの
    だけど言えなくてさ
    その日母さんがギャンブルで負けてるのも知っててさ
    言えばどうなるのかなんとなく分かって言えなかった

    ――なあ、ローレル……これ、欲しいな

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:36:46

    ローレルは優しく微笑んで、その食玩を手に取り俺に預けてくれる。
    レジに向かって一緒に歩き――その食玩をローレルにわたし
    そして会計をすませ
    ぺたりとシールがはられた食玩を、ローレルは俺に渡してくれた

    ――はい、トレーナーさん

    大人の俺には小さな食玩――これ、こんなに小さかっただろうか
    そんな風にシールのはられたそれを見て――俺は涙をいっぱいに溜めていた
    嬉しさと過去の悲しさと、それをもう一度望んで果たされた気持ちとで
    色んな思いが混じっていたけど

    大人の俺には――もう子供の時のすっぽり空いた穴は埋められないんだってわかった
    それは大人の俺にはちょっと小さすぎて――子供の俺の穴は埋められなかった

  • 109二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:40:20

    嗚呼、そっか――
    俺はどことなく納得しながらも、溜まった涙を袖でぬぐってローレルに礼を言う
    ――ありがとう、子供の時のクリスマスの夢がかなった気がする
    そう言って微笑むと、ローレルも嬉しそうで
    そっちの方が今の俺にはとてもとても幸せだった

    俺達は再び街を歩く
    ローレルはもう一度手をつなぎたいと
    俺が手を伸ばすと――俺のてぶくろを引っこ抜いてしまった
    冬の冷たい空気は思った以上で手がすぐ凍えそう
    ローレルは自分の手袋も脱いでしまって――俺の手を素手でぎゅっと握った

    ――温めてあげるって、前に言いましたものね

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:44:19

    そう言って俺の手を握り――ローレルのコートのポケットに入れられる
    コートの中はローレルの体温で暖かくて
    その中でぎゅうっとその手を握られて
    ――ああ、馬鹿だな俺――子供の頃の穴が埋まらなくても
    ――俺を幸せで満たしてくれる子が目の前にいる
    そんな風に思いながら強く強く、ローレルの手を握った
    クリスマスに、ローレルと街を歩いて
    こうして手を繋いで歩いて
    きっと当たり前のようにクリスマス以外もこれからこんな日があって

    俺はすごく幸せだ――ごめんな子供の時の俺

  • 111二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 14:56:53

    日も完全に暮れて夜になって
    イルミネーションライトアップで飾り付けられた公園
    噴水も吹き上がるたびに色とりどりの光が吹き出てる
    クリスマスの魔法は今日だけだろうか? それとも明日ぐらいまでは残ってるのだろうか
    俺はサクラローレルにクリスマスプレゼントを渡した

    親指大ぐらいの楕円のアゲートを中心にあしらったブローチだ
    アゲートも安いものだし手作りなので少々不格好だが
    俺は青いビロードの宝石箱に入れられたそれを渡す
    ピンクに合う色……という相談を宝石商を親に持つウマ娘に相談して教えられたグリーンの宝石
    素人には以外だったがローレルがピンクのセーターにつけると予想以上に似合っている

    ――緑はピンクの補色ですごい相性がいいんですうううう!!

    ごめんな正直信じてなかったよ

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 15:02:03

    ローレルは胸元――そのブローチをぎゅっと両手で抱くように包んでくれた
    喜んで貰えたようだ。 穏やかに満足そうに目を細めるローレルはとても綺麗だった

    ――これ、明日もつけて走りますね。 首のリボンのところ

    それは光栄だ
    今年のグランプリウマ娘の首元に俺のお手製のブローチがあるなんて
    うん、うん、とローレルは頷いて、俺の手をぎゅっと握る
    手袋をつけ忘れた俺の手はかじかんで指先だけ真っ赤
    そんな俺の手を温めるようにローレルは自分の頬を指先にくっつけてくれる
    暖かくて、心地よくて、そして満たされる
    本当に自分がこんな幸せを享受していいのかと不安になるぐらいに

    ――トレーナーさん
    ――私……トレーナーさんと出会えて良かったです
    ――俺にGⅠくれよって言ってた約束、果たしますね

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 15:09:40

    ローレルは俺に抱きついて、ぎゅっと背中に手を回した
    じっと見つめられる。 いつものような少し妖艶な瞳ではなく、少女らしい優しい瞳
    瞳の中の桜色の煌めきが宝石のように、クリスマスのイルミネーションのように煌めいてる

    ――知ってますか?シンデレラってクリスマスイブに舞踏会にいって
    ――日が変わったから魔法がとけちゃったんです
    ――だからこの魔法も12時には消えちゃうんですよ

    ローレルは優しい口調で俺に言う
    それは――なんか嫌だなあ
    こんなに幸せで、満たされて、暖かいなら
    この魔法は解けてほしくない

    ――ふふっ、そうですね
    ――だから――思い出に……ガラスの靴
    ――ちょっとだけ置いていきませんか?

    ローレルは俺にちょっと背伸びをして
    俺は少し頭を深く下に下げて

    ――クリスマスの魔法が、ほんの少し残るように
    ――二人で小さな、お祈りをした

  • 1141◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 15:10:42

    休憩します

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 15:11:47

    >>98

    コントに負けてるのはここのシリアスとエッチや

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 15:24:35

    そういえばこいつ闇のトレーナーだった… 頭ぶろっさむのせいで忘れてた

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 15:28:20

    どんだけいい話をお出しされるのだ

  • 118ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 15:47:05

    「それで――シたのかしら」
    25日 有馬記念当日
    トレーナー室
    有馬記念に向けチームで出発のため待ち合わせ
    そのトレーナー室でサクラローレルのクリスマスデートの話を真剣に聞くチームブロッサム一同
    頭ブロッサムな年頃の少女たちはトレーナーとサクラローレルのクリスマスデートの結末に興味深々だった

    「……私は――トレーナーさんと――」
    『トレーナーさんと……?』

    「――しました! クリスマスの夜ロマンティックなキスを致しました!」

    ぱあん、ぱあん
    割られるくす玉・鳴るクラッカー・惜しみない拍手
    サクラローレルは3人の『おおおお!』という歓声と拍手の中胸を張っていた

    「ど、どうだったんですか? あの――お味とか!」
    「あらあらまあまあ♪ ローレルちゃんもオトナの仲間入り♪ですねえ♪」
    「感想はぜひ聞きたいわね」

    ジェンティルドンナも含めやはりファーストキスには興味津々なようで
    ローレルの感想を待つちーむぶろっさむ。
    ふっふーん🌸 と鼻をならし尻尾をブンブンと振るサクラローレルは超!絶好調!と言った感じだ

  • 119ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 15:53:35

    「いやあもう……キスってあんなに甘くて――気持ちいいんですね🌸
    あんなのクセになっちゃいます🌸」

    『おお!?』とジェンティルすらも口をあけその感想に感嘆の表情
    ローレルはぺろりと唇を舐めて

    「実際にお砂糖やはちみつやお菓子みたいな甘い味じゃないんですが……なんというか甘いしレモン味っていうのもわからなくもなかったです!
    もうなにより頭ぽーっとしちゃうぐらい気持ちよくて!
    最初はトレーナーさんも唇くっつけてるだけだったんだけど」
    「だ、だけだったけど!?」
    「――私がぎゅっとしたまま舌を入れたらすっごいびっくりしたように目を見開いて――でもすぐにとろーんって顔になっちゃって……私も舌すれあうのが気持ちよくて……」

    サクラローレルがうっとりしたような顔で思い出してるのを、三人のウマ娘は羨望の眼差しでみている
    元々余裕のある佇まいのジェンティルですらこの話に食いついているのだ

    「いやあ……幸せでしたトレーナーさん! またキスしましょうね🌸」


    「ねえ!ねええ!頼むからそういう話本人が居ない時にしてよおおお!!!」

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 15:58:23

    本人いる前でやるのか…

  • 121ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 15:58:55

    今日は25日 有馬記念当日
    当然チームで移動なのでトレーナー室にトレーナーもいて当然
    トレーナーは羞恥のあまりトレーナーデスクのチェアでブランケットを頭に被ってそんな女子トークを聞いていたのだ。
    魔法は解けた
    いや魔法なんてなかったのだ
    あの時ロマンティックな雰囲気でサクラローレルとキスをして
    そして翌日そのガラスの靴はこうしてトレーナーを玩具にしている
    ――ヒトミミはウマミミには勝てないのである

    「それで――トレーナーさんの方の感想をききたいのだけれど?」
    「ねえよ! 言ってたまるか! 今日有馬記念だぞ??ねえほんと気合入れなさいよ!!!」
    「大丈夫です♪ 昨日のキスで私は超絶好調!です♪」
    「この話をするなって言ってんだよ気づけよ!!」

    「まあでも――ローレルさんとはシたのでしょう?」
    「……まあ――はい」

    ジェンティルはこれ以上なく広角を釣り上げ笑う

    ――じゃあ他の子の誘いを断るなんて野暮――致しませんわよね?

  • 122ちーむ♡ぶろっさむ25/10/19(日) 16:05:33

    ブーケもはいはい!と手を上げて、えへ、と小首をかしげて可愛らしく微笑んで

    「あの、トレーナーさん! こんなキスの話より何回ぴょいできるかのほうが倫理的にも羞恥的にもまずいので……その、キスの話はセーフだと思いますよ♪」
    「どっちもしないでって言ってるんだよ! そもそも俺がいるところでしないで!? せめてガールズトークらしく女の子だけで盛り上がってください!」

    クリークはいつもと全く変わらぬ笑顔でおっとりと微笑んでトレーナーの頭を撫でながら

    「あらあらトレーナーさんも♪ オトナの階段、偉いですよいい子いい子♪」
    「やめてよお、俺真面目に成人済みの大人なんですよクリークさん」
    「でも、私とキスする時はトレーナーちゃんは赤ちゃんなんですよ? いっぱいいい子いい子しないと♪」
    「ひっ、こわい!?」

    「トレーナーさん、そろそろ遊びはそこまでにして向かいましょう?
    有馬記念も、今度のデートも本当に楽しみだわ――ふふ」
    「俺が遊んでるかのように言うんじゃねえよ!」

    トレーナーの叫び虚しく
    中山レース場までトレーナーは玩具にされ
    本日25日は有馬記念――今年最後のグランプリレースである

  • 123二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:19:37

    シニアの壁
    クラシック4冠
    最強は三冠か――シニアか

    そんなポスターがびっしり張られる
    年末中山レース場
    ファンの夢をのせ走る有馬記念
    ライスシャワー、ヒシアマゾン、同年天皇賞ウマ娘ネーハイシーザー ステイヤー王者アイルトンシンボリ
    そしてそれらを押しのけ今年の圧倒的一番人気はナリタブライアン
    菊花賞最終直線の走りはすべてのファンを魅了し今一度この有馬記念でその強さを期待される
    菊花賞の激走から『レースの魔術師』サクラローレルは同日3番人気で出走
    2番人気は今年の天皇賞を完勝したネーハイシーザーだ
    菊花賞組はやはり菊花賞で好走したヤシマの絶対君主ヤシマソブリンも出走している

    しかし殆どのウマ娘の要注意人物、注目はナリタブライアンだろう
    本命徹底マークを得意とするライスシャワー陣営もナリタブライアンをマークと明言している
    もちろんサクラローレルもナリタブライアンをマーク、今回は菊花賞より速いスパートでナリタブライアンと真っ向から総力戦に行く予定だ

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:26:11

    ――えへへ、似合いますか?
    菊花賞の時と同じ勝負服
    しかしサクラローレルの勝負服の首元の布地にグリーンのブローチが着いている
    大きく揺れないように根本で光る親指大のグリーンアゲート

    ――えへん、これが先日トレーナーに頂いた手作りブローチです
    ――ええ? これハンドメイドなんですか?
    ――あらあらあらまあまあまあ♪ いいですねローレルちゃん

    ――ねえトレーナーさん? 私のより大きいのだけれど
    当たり前だペンダントトップとブローチなんだから。 あいつ元々私服の時ネックレスつけてるんだよ
    なにやら不満げにジェンティルが俺をジト目で睨まれる
    こういうのは大きさとかじゃないだろうと言い出しそうなのがジェンティルなのだがなぜかご不満らしい
    次に作る阪神JF記念のペンダントトップは少し大きく作ることにしよう

  • 125二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:32:00

    ローレルはメンバーと談笑したりいい具合にリラックスできている
    ――頑張ってください!
    ――勝ってくださいね♪ 応援してますから♪
    ――勝利を期待してますわ
    各々ローレルを激励し控室を出ていく
    後はローレルの集中する時間だ――出ていくかどうか迷っていると

    ――トレーナーさん。 菊花賞、悔しかったです……

    そう、ローレルがぽつりと呟いた
    最高のレースだった――4コーナーで全員を抜き去ってあそこからローレルが引き離して勝利のはずだった
    しかし覚醒か――進化なのか
    ナリタブライアンは更に凄まじい走りでローレルと競り合い――ハナ差
    たったハナ差でナリタブライアンは菊花賞に勝った
    俺達はハナ差数センチで敗れた
    悔しい――本当に悔しかった。 負けたのが信じられなくて悔しくてたまらなかった

  • 126二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:35:15

    俺でさえそうだったのだ
    ずっとずっとナリタブライアンを追いかけて追いかけて
    やっと肩を並べて――そして夢を掴みかけた時敗れたローレルはどれだけ悔しかったのだろう
    だがそれは――こうして有馬記念で再度挑戦できる
    栄誉なんか要らない
    グランプリの座より、G1勝利より、欲しいものがある
    ナリタブライアンに――勝ちたい

    ――もう一度
    ――今度こそ――ブライアンちゃんに勝ちます
    ――トレーナーさん

    サクラローレルはまっすぐ立って俺を見据える

    ――このグランプリで私、満開のサクラを咲かせてみせます

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:45:49

    有馬記念はやや変則的な中山でのレースだ
    小回りコースを利用するせいでカーブはきつい
    そしてスタートは外回りの第三コーナーからスタート
    外回りスタートなので第三コーナーはほぼ直線だがゆるやかに曲がり第四コーナーに差し当たる
    小回り、6回のコーナーなのでイン着きが可能な内枠が2000m以上に有利
    しかし小回り故にペースが滞り外差しも決まりやすい

    ――それで、今回のキーは?
    決まってる――ツインターボとネーハイシーザー、あとライスシャワーだ
    揃って逃げ気質だがツインターボは明らかな序盤からのぶっ飛ばしの大逃げ
    ネーハイシーザーが先団の先頭を行きブライアンをどうマークするか
    2500で道中のカーブは実質6回
    インの奪い合いとコーナーリング、駆け引きが重要なレースなのは間違いない
    ツインターボが気持ちよく逃げてネーハイシーザーがブライアンの蓋になれば万歳といったところ
    ライスシャワーがブライアンを徹底マークするならその後ろがサクラローレルと言った所だろうか
    ライスシャワーの仕掛けどころでむしろサクラローレルがその先団に並ぶか追い抜くか
    そのロングスパートの目印になってもらう

  • 128二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:53:54

    沈黙が流れる
    全員が淀みなくゲートに入り――そして開かれた

    ――さあ年末グランプリ有馬記念ゲートが開かれました
    ――おっと一人好スタートを切ったのはナリタブライアン! ナリタブライアンが良いダッシュで先頭です

    っち、なんて良いスタートしやがる
    すぐに背中のネーハイシーザーとツインターボの位置を意識しやがって…滅茶苦茶集中してやがるな
    すぐにナリタブライアンは抑えツインターボを行かせる。 どのみち大逃げウマ娘、ここで邪魔をしても意味はない
    ツインターボは単騎逃げ――そして続く先団の先頭をナリタブライアンが奪い
    しかし内のウマ娘が激しくブロックした


    ――っち、行けよ……コイツを先に行かせるよりはマシだ
    ――僥倖――感謝はしておこうかヤシマソブリン


    ――おっとナリタブライアン進路がヤシマソブリンに塞がれています
    ――その間にネ―ハイシーザーが2番手 ネーハイシーザー、ヤシマソブリン――ナリタブライアンは4番手と言ったところでしょうか

    よくやったヤシマの御嬢!
    ヤシマソブリンが緩やかな第三コーナーのインから強引にブロックしてナリタブライアンのインと2番手を妨害。さらにそのタイミングでネーハイシーザーが2番手を奪いナリタブライアンを完全にシャットアウトした
    これでナリタブライアンはイン付きはできないだろう

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:02:33

    ――かなり強引なアタックでしたねヤシマソブリンさん

    少し不安げにスーパークリークが眉を寄せる
    確かに強引だがあのままインも2番手もナリタブライアンに奪われてたらレースが終わる可能性すらあった
    だからこそヤシマソブリンはネーハイシーザーにわざと2番手をとらせるかのようにブロックに入った
    そして意図を読んだネーハイシーザーは素早く2番手を獲ったうえでインを奪取
    ヤシマソブリンからしてもナリタブライアンのインも2番手も妨害出来たので互いの利害は一致

    ナリタブライアンはこのレースで最強のウマ娘
    故に徹底してマークもブロックもされる。 単に速いだけではレースには勝てない
    大きなロスを支払ってでもヤシマソブリンがブロックをしたのはナリタブライアンに勝つためだ
    自身が勝つためにロスを支払い他者をフォローする――それもレース巧者の戦略
    しかしヤシマソブリンはまだクラシックのウマ娘。 あんな自己犠牲を支払う度胸と周囲を見れてる戦略眼はやはり若くしてヤシマの当主となっただけの事はある。 絶対君主とはよくいったものだ
    ライスシャワーはナリタブライアンの後ろにつけている
    そのななめ後ろ……そこにサクラローレルはいた
    その体制のまま第四コーナーを周り一周目のスタンド前をかけてゆくウマ娘たち

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:11:08

    7バ身、8バ身 、9バ身――
    みるみるツインターボが2番手以降を引き離す
    あっけにとられるスーパークリークとカレンブーケドール。 ジェンティルドンナも物珍しそうにツインターボを指さし

    ――アレ……ありなのかしら?
    ……いや多分三角前にはいっぱいですよ、あのペースで最後まで持ったらやばいってワールドレコードもびっくりだよ。
    ツインターボの大逃げは見ていて気持ちがいいが流石に戦略的には博打もいいところ
    どちらかと言えば大逃げは自身の力より出走ウマ娘全体が失敗するのを待つレースだ
    早すぎるスパートなら逆に潰れてしまう
    遅すぎれば届かない
    だが実際はきちんと我慢していつも通りのスパートさえ出来れば見た目のバ身よりは簡単に捉えられるのだ
    しかし彼女もGⅢを三勝してる一流どころなのは間違いない
    やめられない止まらない――そんな気質が強すぎて他が出来ないというのも困ったものである

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:18:16

    スタンド前一周目の直線にネーハイシーザー他先団が差し掛かり
    レースが動いた
    スタンド前の直線の坂を力強く登りアイルトンシンボリがサクラローレル、ライスシャワーを抜いていく
    さらにそれにチョウカイキャロルも続く形
    抜き去る時にアイルトンシンボリとチョウカイキャロルは――ライスシャワーとサクラローレルに目配せをした

    ――あいつらまさか……マークすんのか?

    ヤシマソブリンの外を回ったナリタブライアンの外にチョウカイキャロルがぴったりとつける
    チョウカイキャロルの前はアイルトンシンボリ、その後ろにはサクラローレルとライスシャワーだ

    ――ナリタブライアンは先団の真ん中
    ――するりと前に出たアイルトンシンボリとチョウカイキャロルが僅かに3番手4番手
    ――その後ろ内に5番手ナリタブライアン、その隣をぴったりくっつくようにライスシャワーが6番手
    ――ナリタブライアンの後方すぐにサクラローレルです。 サクラローレルは6番手
    ――さらに後方にサクラチトセオー、ヒシアマゾンと続きます

    アイルトンシンボリとチョウカイキャロルの仕掛けと目配せに反応したライスシャワーとサクラローレルが横と後方を囲む。
    完全にナリタブライアンを全員で徹底マークして囲われた状態だ

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:22:28

    クラシックでは見られないシニアの妙――他者を巻き込むマーク戦術
    アイルトンシンボリもチョウカイキャロルも自身のペースアップのロスを支払う代わりにナリタブライアンの蓋を担う。サクラローレルとライスシャワーは呼応はするが支払うものは少ない
    しかし確実にナリタブライアンを抑え込む形になっっている
    同時に前に出たアイルトンシンボリとチョウカイキャロルはスパートの時ナリタブライアンやライスシャワー、サクラローレルよりも前でスパートが出来るのだ
    支払うものが多くともレースとしては優位を穫る絶妙な仕掛けでもある

    これではナリタブライアンは下手に向正面でも速いスパートはきれない
    互いのよーいどんに無理やりつきあわされるしスパートは周囲待ち……一歩出遅れることになるのだ
    むしろ後方がスパートをしても自分はできないというジレンマすら抱え込む事になる

  • 133二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:28:01

    これがシニアのレースだ
    レースがなぜ陸上競技のようにレーン別のトラックではないのか
    そうでない時に勝つにはどうすれば良いのか
    圧倒的な強者であってもすべてのレースに勝てないのは何故か
    ジェンティルもクリークもブーケも、このレースにはレースの大事な事が詰まっていると思って欲しい
    これでナリタブライアンは絶対的な強者故に、最も厳しいレースになった

    ――それでも、隙間は空きますわ。 皆勝ちたいもの
    ――スパート勝負だとしてもナリタブライアンさんは強いです……きっと、来ます

    俺もそう思う
    だが――この状況でもっとも有利なのはサクラローレルだ!
    いけサクラローレル!

    俺が叫ぶと同時
    向正面の中間前からサクラローレルは踏み込みスパートをかける
    芝を踏み込み、強く叩き――蹴り上げる
    1000m近いロングスパート

  • 134サクラローレル25/10/19(日) 17:34:27

    ――ナリタブライアンが囲まれたら向正面でスパートをしろ

    トレーナーさんが出した指示は菊花賞より更に長いロングスパートだった
    向正面中間から仕掛けるロングスパート。 1000m近い距離をスパートするハードな要求
    しかしナリタブライアンに勝つには――あの走りに勝つには
    ――サクラローレルの心肺を限界まで使う必要がある
    ――心肺も、脚もすべてを掛けて走る必要がある
    ガラスの脚にかかる負担はとてつもない
    心肺だってそうだ、普通なら潰れてしまうスパート距離だ
    だけど
    あのブライアンちゃんの脚は、あの走りは――今まで通りじゃ勝てない
    脚が壊れてもいい
    心臓が敗れたって良い
    私をブライアンちゃんに挑めるぐらい、勝たせてくれるぐらい
    私を鍛えてくれたトレーナーさんの期待を、望みを
    私の夢を――叶えられるならば


    全部くれてやる!この脚も心臓も全部!
    勝負だよ――ブライアンちゃん!

  • 135二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:42:12

    ――サクラローレルが向正面上がっていきます!外から回してチョウカイキャロル、アイルトンシンボリを交わしていく
    ――さらにさらにネーハイシーザーを交わし一気にツインターボに迫っていきます!
    ――その後ろを追うのはヒシアマゾン! 重賞6連勝エリザベス女王杯の覇者がサクラローレルとツインターボを追う!

    サクラローレルに呼応してレースが動けばナリタブライアン包囲網は崩れるかも知れない
    しかしサクラローレルはナリタブライアンより更に前を走れる、もっとも内側に入り込める
    先団が団子状に激しくなるナリタブライアン包囲網でよーいどんをするよりナリタブライアンに心肺勝負を押し付けられるロングスパートの方があの進化した走法には勝算がある
    ネーハイシーザーとアイルトンシンボリはまだ控える
    しかしチョウカイキャロルがヒシアマゾンを追おうとして包囲がほんの少し崩れ

    ――怪物がその隙間に眼を光らせた

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:49:43

    スタンドの大歓声
    俺はまだ第三コーナーにもツインターボ以外入っていない中サクラローレルの名を叫び続けた
    ツインターボの大逃げは後方を10バ身差以上引き離している
    しかしローレルの速いロングスパートの仕掛けで全体が動いた
    第三コーナーに一斉に流れ込むサクラローレル以降、その後方外に見える黒い影

    ――ナリタブライアン

    チョウカイキャロルの産んだ隙間から一気に外に飛び出したナリタブライアンは外捲りの体勢で第三コーナーに突っ込んでくる。 第三コーナーからアウトインアウトで大外をまくるブライアンの外差しの体勢だ
    だが今すでにローレルとは2バ身差以上
    サクラローレルはスパートで最高速でコーナーを曲がっていく
    その後ろからナリタブライアンが大きく身体を屈め沈み――
    ナリタブライアンもスパートをかける

  • 137二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:53:47

    ――すごいケンカしてるじゃないか――そのタイマンあたしも混ぜな!

    サクラローレルとナリタブライアンの間に割り込むように迫るヒシアマゾン
    いち早くサクラローレルのスパートに猛追した彼女もすでにトップスピードだ
    その全開の速度のままヘトヘトのツインターボを交わし

    ――第四コーナーで先頭はサクラローレル! そこにヒシアマゾンが並びかける!
    ――ナリタブライアンその外を一気に回ってきた
    ――さらにその間から来るのはライスシャワーだ!

    最終直線、中山の直線は短い
    ――短いがウマ娘たちの心臓を破る2回目の急坂が待ち構えている

  • 138二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:58:34

    中山2回目の急坂
    最後の直線に立ちふさがる壁のような坂
    中山の中距離以上のレースはこの坂を二回味わう事になる
    だからこそ――ナリタブライアンをこれの前にスパートさせる
    心臓がいっぱいいっぱいになって――この坂を登るように
    勿論条件は一緒、もっともっと早くスパートをしているサクラローレルにはもっと厳しい洗礼が待ち構えている
    心臓への負担はナリタブライアンの比ではないほどに大きいだろう

    でも――あいつは走れなかったんだ
    走りたくても走れなくて――芝どころかダートでも練習できなくて
    プールと坂路ばかりで脚を鍛えて筋肉と骨を鍛えて
    更にずっとずっと坂路ばかり走ってさ
    あいつはそんなトレーニングを文句も言わずに続けて――
    ああ、確かに走れなかったよ、トレーニングは多くできなかった
    だけど――あいつは学園で絶対に、一番心肺を鍛えてきたんだ

    サクラローレル、潰せ!ナリタブライアンの心臓!

  • 139サクラローレル25/10/19(日) 18:02:01

    苦しい
    長い長いスパートで胸が張り裂けそう
    肺が酸素を求めて心臓が悲鳴をあげてる
    身体がもうやめろって叫んでる
    限界だ、限界だと心肺が叫び続けてる
    でも
    それでも――私の脚は、そう叫んでないんだ
    ――ありがとうトレーナー
    私はまだ走れる、ずっと坂路とプールで鍛えた脚はガラスの脚じゃなくて
    ブライアンちゃんに勝つための脚になってる
    走れる――走れる
    心臓も、肺も
    もう限界だと言っているのに
    こんなに苦しいのに――私、走れるよ

    ――ブライアンちゃん、私――ブライアンちゃんに勝つんだ!

  • 140二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:06:21

    大歓声なのか、俺の叫ぶ声なのかわからない
    サクラローレルはその急坂でもペースを落とすことはなく
    そしてヒシアマゾンがサクラローレルを猛追する
    ナリタブライアンが直線で更に身をかがめ、加速しようとして

    ――ゴーーール!!
    ――1着はサクラローレル! サクラローレルです!
    ――2着にヒシアマゾン!3着猛追したが届かずナリタブライアン!!

    ――グランプリ覇者はサクラローレルです! サクラローレルが有馬記念を制しました!

    その時になれば
    その結末は一瞬で――あまりにもあっけなく
    サクラローレルはロングスパートを一切脚を止めることなく走りきって
    有馬記念を勝利した

    ――記憶にはないが俺は空に向かって叫んでいたらしい
    ――なにを、ではなく勝利の咆哮のようなものだったと、あとからジェンティルたちに聞いた

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:13:22

    NEXT FRONTIER

    グランプリのウイニングライブ
    そのまばゆいレーザービームが勝者を照らす
    その中央には有馬記念の覇者サクラローレル
    クリスマスのイルミネーションより強く鮮烈な光でライトアップされるサクラローレルを見つめながら
    しかし――視界に入る芦毛のシルエットに我に帰る

    ――ビワハヤヒデ

    彼女は多少バツの悪そうな顔をしたが俺に向き直り
    「有馬記念おめでとう、サクラローレルのトレーナー」と手を伸ばした
    俺はその手を握るのではなく掴んだ
    睨むぐらいの勢いでまっすぐビワハヤヒデを見つめる
    コクリと息を呑むビワハヤヒデの表情から俺は嫌な予感が的中したことを察しながら、尋ねる

    ――ナリタブライアンは絶不調どころじゃない、あの走りじゃなく普段の走りすらできないんだな?

  • 142二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:18:35

    ナリタブライアンは三着
    ヒシアマゾンが弱かったのではない、確かにヒシアマゾンは女傑と呼ばれるにふさわしい末脚だった
    だが――ナリタブライアンは最高の位置取りだ、囲まれてたとは言え素早くそれを外した
    外差しまくりのナリタブライアンの必勝パターンのコース取りだ、直線に入るまで完璧だった
    集中力も完璧だ。あのスタートといいその直後の周囲への視界と判断といい、それを上回るヤシマソブリンという存在がなければ完璧なレースを出来たはずだ

    なのに――なぜ最後のスパートだけ全く来ないんだ
    あのナリタブライアンが、怪物が前の二人に迫るどころか猛追が届かない?
    そんな筈はない。 二人ともロングスパートで心肺は限界だった
    最後の最後でのナリタブライアンの爆発ならば菊花賞の走りじゃなくても二人に迫るような末脚を持っていたはずだ
    それがないのなら答えは一つだ

    ――ナリタブライアンは今進化した走りどころか今までの走りもまともにできないんだな?

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:27:01

    以前ビワハヤヒデと話していた事がずっと気になっていた
    ナリタブライアンのトレーナーが菊花賞の走りに魅せられ、なんとかあの走りを再現できないか思案していたと
    ナリタブライアンを更に高みへ、その走りも強さもそれを望んでいたと
    あの走りは大きく加速し前に前に前に出る走りだが――スパート中に更に短距離走のクラウチングスタートから状態を起こすような――そんな走りだ。 普通のスパートでするものじゃないしあの体勢を維持すること自体身体には負担が大きい
    そもそも強い前傾姿勢で加速するナリタブライアンの今までの走りも他のウマ娘が真似できることじゃない
    柔らかい膝と腰廻りがなせるナリタブライアンだけの走法だ
    そんな走りを更に極端にした菊花賞の走りはほんの一瞬、本当に一瞬だけ起こすようなそんな走法だと俺は思っていた

    ――答えろビワハヤヒデ。 あいつは不調だったか? それとも今での走りはちゃんとできるのか?

  • 144二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:33:23

    ビワハヤヒデは頭痛を抑えるように俯いて頭を振る
    なにかためらうように、思案するように
    それでも俺に顔を向け

    ――不調かどうかはわからないがいつもの走法を取り戻せてないのは事実だ

    ああ、クソ。 それで有馬記念に出走してきたのか
    不調ではない、むしろレースの至るところで怪物の煌めき……恐ろしさを感じた
    第三コーナーから四コーナーにさしかかるサクラローレルの背後に迫る影――あの瞬間俺は恐怖すら覚えた
    あれで不調なわけがない、明らかに自分の走法を見失っている
    一番恐ろしいのは本来の走法じゃない走りで2500mを、あのレースを三着まで走り抜いた事だ
    自分の走りでない走りであんなにスピードを出し続けたのであれば身体に無理が来ても不思議ではない

    ――ナリタブライアンのトレーナーは休養やリハビリは考えているのか
    俺の質問にビワハヤヒデは最悪の回答を返した

    ――ブライアンのトレーナーは、あの走りこそブライアン復活のための鍵だといっていたよ

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:38:33

    ああ――嗚呼
    くそ――クソクソクソクソ
    なんて最悪な気分だ
    ローレルは有馬記念を一着で
    あんな長いロングスパートを完全に走りきって
    やっとやっとナリタブライアンに勝って、GⅠもとって
    夢も、クリスマスの約束も果たされて
    最高の1日のはずなのにどうして――どうしてこんな最悪な気分なんだ

    洗面所で水をザブザブとかぶりながら気分を落ち着かせようとする
    まるで八百長で勝たせてもらった気分だ
    ナリタブライアンは全然万全じゃなくて
    それでも他のウマ娘が全力で走る中――有馬記念の一着はローレルが勝ち取った
    嬉しいはずだ、ナリタブライアンがいなくても有馬記念は最高のレースで
    ヒシアマゾンもネーハイシーザーもライスシャワーもヤシマソブリンも全員が全員最強のライバルだ
    なのに
    なのになんで勝った気がしないんだ
    それがなにより俺を最悪な気分にさせる

    ――ローレル……ローレル
    ――ごめん、俺喜べないんだ。 ローレルが勝ったのに
    ――ちっとも嬉しくないんだ……

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:46:30

    控室に先にもどり、髪を乾かしセットし直す
    平静を装って、鏡の前で笑顔をつくる
    施設のときからずっとずっと練習してる――人に好感をもたれるための笑顔の練習
    そして深呼吸をしてローレルを待った

    ローレルがとびらを開けて入ってきて
    俺は嬉しそうにローレルを祝福する
    有馬記念おめでとう、と
    ローレルはびっくりした顔をして

    ――トレーナーさん!? その声どうしたんですか?

    そういえば――レース中ずっとずっとローレルの事を呼んでいた、叫んでいた
    喉がガラガラにかれてしまっている
    あまりに色々なことがあって忘れていた

    ――そうなんですね……勝ちました、有馬記念

    そうだな
    そうだ、有馬記念の一着――それはナリタブライアンの有無に関係なく、本当に、本当にすごいことなんだ
    だから俺も嬉しいし――でも
    ローレルの顔は曇っていて、なにか物憂げだった

    ――でも、不思議です。なんか――どうしても勝った気がしないんです
    ――あんなに夢見てたのに、勝ちたい、勝ちたいってレースでも思っていたのに
    ――でもその時になったら――勝った気がまだしなくて

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:50:53

    そんなことはない
    有馬記念は凄いレースなんだ
    だからきっとまだ感情が追いついてないだけなんだ
    俺はそう言おうとして
    なんども――なんどもそう言おうとして
    でも――言葉にできなくて
    ――俺が口を開くと同時に、ローレルは俺を見た

    ――ブライアンちゃん、怪我してないですか?
    ――ブライアンちゃんは第四コーナーまで私の後ろに居ました
    ――インに入った私の外を追い上げてくる影がありました
    ――ああ、ここからブライアンちゃんとの勝負だって覚悟をして
    ――だけどブライアンちゃんは来なくて
    ――そのまま私が一着でゴールして――ブライアンちゃんは

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:54:42

    そりゃ分かるよな
    夢だもの――ローレルにとってナリタブライアンは憧れじゃなくて
    凱旋門賞ぐらいでっかい夢で
    あいつがいなきゃ、走れなかったかも知れないぐらいで
    だから俺なんかよりずっとずっとあいつへの思いは強くて
    そんなローレルが気づかないわけ無いよな

    ――ナリタブライアンは普段の走りすら取り戻せてない状況だった
    ――恐らくまともなスパートはできない、今までの60%以下の実力だ

    真実を話した
    ナリタブライアン陣営が菊花賞以来あの進化した走りを追い求めていること
    そしてそのせいでナリタブライアンが本来の走りすら見失いかけてること
    その結果が――まさにこの有馬記念であったこと

  • 149二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:59:13

    恐ろしいのはそれでもナリタブライアンは三着だったのだ
    序盤はヤシマソブリンにブロックされネーハイシーザーに前をふさがれ
    向正面からはアイルトンシンボリとチョウカイキャロルに抑えられ
    そしてライスシャワー、途中までとは言えサクラローレルもそのマークに加わった
    更にその後ろにはサクラチトセオーもいた
    完全なナリタブライアンブロッキングの布陣が固まって
    それでもチョウカイキャロルが産んだわずかな隙間を縫って外に出し
    いつも通り完璧な外捲りの形には持ち込んだ
    それでもスパートで本来の力がだせず――三着

    どうして自分の走りができないはずのウマ娘が三着に入れるのか
    これは有馬記念だ。メンバーは一人残らず超一流のはずなのに
    ゾクリとする
    これでもしあの進化した走りでなくとも――普段通りのナリタブライアンであったなら
    本当にあの進化した走法がなくても……ローレルは勝てていたか――

  • 150二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:04:08

    ――ブライアンちゃんは、やっぱ凄いなあ……凄いや

    ローレルは、ため息をついてそう言った
    前から見ることのある――ほんとにナリタブライアンに憧れる少女の顔だ
    俺もそう思う。 ナリタブライアンはやっぱり怪物だ
    凄いウマ娘だ
    だから――

    ――『怪物』を倒さなくては意味がない

    俺達が菊花賞からの再戦で有馬記念を闘ったように
    きっと
    きっとナリタブライアンも春のG1戦線に参加する
    だからそこで――俺はサクラローレルに『怪物』を倒して欲しい

    ローレルは強く頷いた
    晴れ晴れとした表情で笑う

    ――じゃあ――今日は有馬記念を勝ったことを喜んじゃいましょうか
    ――トレーナーさん、私勝ちましたよ――有馬記念♪

  • 1511◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 19:06:16

    QKします
    もしかしたら寝るかも知れませんが予定ではもう少し書きます

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:18:17

    俺馬鹿だからわからねえんだけどよお

    この>>1がブライアンより怪物なんじゃねえかな?

  • 153二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:19:52

    乙でした


    >>152

    それは

    本当に

    そう

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:22:12

    >>152

    とんでもない闇あり

    絶倫

    とんでもなく強いウマ娘チームのトレーナー(新人)

    これは怪物

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:24:20

    闇トレと筆者の>>1どっちだと思ったけどどっちも怪物だからどっちでもいっかあ

  • 156二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:28:31

    ・クソみたいな生まれから頑張ってトレーナーになった実力
    ・↑と被るが一時的にメンサに所属していた経験すらある知能の高さ
    ・各ウマ娘に必要なものを的確に見抜いて育てる手腕
    ・絶倫
    うーんバケモノ

  • 157二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:37:14

    このスレここまで土日だけで進んでるんでこの作者は怪物で良いと思います

  • 158二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:38:59

    闇トレ泣いちゃうから絶倫はそっとしてあげようよ

  • 159二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:41:54

    有馬記念終わってローレルもブライアンも闇トレも救われてない気がするんですが本当に大丈夫ですか?

  • 160二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:56:30

    有馬記念――勝者はサクラローレル
    俺たちはチームで祝勝会
    最初はやれ焼肉屋だとかカラオケルームだとか
    色々意見は出てたのだが結局はトレーナー室でホームパーティーになった
    並ぶケーキ、フライドポテト、エビフライにローストビーフ
    ピザスイートポテト人参ハンバーグコーラはちみーオードブル
    なんと外にはBBQも準備されている
    喜べ担当俺の財布はもうすっからかんだが喜べ――しくしく

    ――そういえばトレーナーさん喉直ったのね
    ――すっごい叫んでましたもんねトレーナーさん

    そう言えば喉が完全に枯れ果てていたがサクラローレルが一着でゴールした時
    俺は天に何かを叫んでいたらしい
    ローレルも不思議そうに見つめてて「なんて叫んだんですか?」
    すっごい嫌な顔で笑うジェンティル

    ――かったぞ!うおおお!あれがローレルだ! 俺のサクラローレルなんだ!
    ――あれすごかったです……わたしもああやって叫ばれたいなって……♡
    ――その後はもう言葉じゃなかったですよね、ウオオオ!ウヒョオオ!がおー!って

    …………聞くんじゃなかった
    なんで恥ずかしい事言ってんだ俺は、俺は、オレはっ
    消えてなくなりたい……聞いてるだけで顔から火が出そうだ

  • 161二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:03:27

    実際のところ
    ナリタブライアンが十全でなかったとはいえサクラローレルの走りは凄かった
    1000m近い距離のロングスパートで中山の急坂を登りきり、女傑ヒシアマゾンを下したのだ
    グランプリウマ娘として胸を張って良いレースだっただろう
    脚も特に問題はないようで

    ――あの時は心臓が張り裂けそうでほんと辛かったです
    ――でも、私が引退しようとしてた時って、心臓や肺は全然まだ余裕があるのに脚が悲鳴をあげちゃって
    ――走りたくても走れなくて
    ――ですから、あの時私すごく嬉しかったなあ――まだ、私走れるって
    ――心臓も肺も限界で脚を止めたくて止めたくてしょうがないのに、脚が言うんです
    ――まだ、走れるって

    サクラローレルの脚はガラスの脚とはもう言われない
    勿論今後も注意に注意を重ねる必要があるが――それでもローレルの脚は強くなった
    今後はトレーニングもしっかり行える――ジュニアでの遅れをもう一年取り返せれば更にローレルは強くなるのだ

  • 162二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:08:35

    クリークの脚ももうすぐ完治だ
    綺麗に剥離したので治りもはやかったようで
    すぐにトレーニング再開はできなくともリハビリは行える
    そんなクリークの隣に座って、俺はポテトをあーんしてもらいつつ
    ――うん、美味しい。 クリークもう一本頂戴
    あー、ん
    尻尾をぶんぶん振ってるクリークにポテトをあーんしてもらいつつ
    ジェンティル達は思い思いに料理に手を伸ばし
    ローレルは一度退室――なにやら準備があるとか
    クリークは俺の口元を優しく拭いてくれていて
    外では香ばしく肉が焼ける匂い
    パーティってのは良いものだな

    ――肉が焼ける匂い?

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:18:09

    ――ローレルちゃんが外でお肉やいてるんでしょうか?
    ――でも彼女着替えに行くって言ってたわよ?

    なんとなく気になった俺はトレーナー室から出てみる。
    香ばしく焼けたお肉のいい匂いと
    それにかぶりつくナリタブライアンとマヤノトップガンのニ名が居た

    ――いやホント、ほんとにお前らなにしてんだ?
    当たり前のように二人は俺の用意したBBQを勝手に焼いて勝手に喰っている
    しかも肉だけバンバン焼いて肉だけ喰っている

    ――あ、ローレルさんのトレーナーさん!
    ――ああ、お前らか

    いや、なんでキミらはそんな奇遇ですねこんにちわみたいな顔でうちのバーベキューを喰ってるんでしょうか?

    ――肉がそこにあったからだ
    肉……肉、好きなのか
    ――ブライアンさんはね、お肉がとっても好きなんだよ。 ほらブライアンさんお野菜もたべなきゃ駄目だって
    いや肉も野菜も勝手に食うんじゃないよ、お前ら腹すいてるのか
    ――ああ、肉はいつでも歓迎だ

    ……ナリタブライアンってこんな奴だったのか? もうちょっと近寄りにくいとか孤高の存在だと思ってたんだが

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:25:51

    ――ブライアンちゃん!?

    後ろからかかる声
    サクラローレルは驚きと喜びの混じった顔で飛び出してくる
    なにやら凄い格好だ――大きなリボンを腰につけ背中の大きく開いたサンタコス
    コンビニや商店街でバイトの女の子が着るのよりさらに露出が多そうな――なんだこれサンタのコスプレでいいのか?

    ――ブライアンちゃんが来てくれるなんて嬉しい! お肉もっと焼こうかブライアンちゃん!
    ……ローレル、それでいいのか
    結局みんなそれぞれ集まってきて
    ナリタブライアンやマヤノトップガンも囲んで肉を焼くことにする、もちろん肉を焼くのは俺だ

    ――サクラローレル……なんだその格好は
    ――ああ、これ? 可愛いでしょう! これはトレーナーさんのためにサンタさんになってあげたの♪

    マヤノトップガンとナリタブライアンがすごい目で俺を見てる
    うんうんそうだよねこれが男性に対する正しい視線だよねうんうん
    俺とマヤノトップガンの眼が合うと――「マヤ分かっちゃった」と距離を置かれた。
    ナリタブライアンは心底軽蔑したような眼で俺を見ている
    俺は! 俺は!あんな衣装を!強要した事は!いちども!ないんだ!

  • 165二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:28:13

    風 評 被 害

  • 166二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:32:22

    ――えへへ、ブライアンちゃんとBBQなんてちょっとうれしいかも
    ――有馬記念は私がかったけど、次も負けないからね

    ローレルはナリタブライアンに焼けたお肉を渡しながらニコニコしてる
    マヤノトップガンに渡してくれ、と俺は焼きもろこしとお肉を渡しつつ……俺はなんで初対面の女の子に勘違いで変態扱いをされているのか泣きたくなっていた

    しかし、そんな事より真面目に本気のブライアンと再戦はしたいわけで――次走は決まってるのか?と聞いてみる
    まあ大決戦である有馬記念が終わってるのだから手の内さらし合うのも問題はないだろう
    どのみち大阪杯、天皇賞・春、宝塚どこかではぶつかるであろうし
    菊花賞と同じ3000mなら阪神大賞典も視野だろう。 ナリタブライアンのトレーナーは例の進化した走法に固執しているのだから十分にありえる

    だが、ナリタブライアンは迷うような表情をしたあと、呟いた

    ――シルクロードステークスだ

  • 167二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:40:25

    ……シルクロードS?
    えっと――GⅢの……1200mの?
    マヤノトップガンが物凄く渋い表情をしている――どうやら聞き間違いではないらしい

    ――シルクロードSから阪神大賞典だよブライアンさんは
    ――マヤノ、勝手にバラすな。
    ――おかしいよね、1200mのレース出したりその直後3000mに出したり
    ――マヤ分かんないよ。 全然分かんない

    マヤノトップガンは納得のいかない不貞腐れた表情をしている
    俺はマヤノに声をかけ――そしてマヤノはブライアンの後ろに隠れてから返事をした
    ……あのさ、本当に初対面で俺を変態認定はしないでほしいんだ
    そんなことより重要なことは
    ――マヤノトップガンは1200mと3000m――どっちがナリタブライアンにふさわしいと思う?

    マヤノトップガンは顔を上げて「3000m。 1200mをブライアンちゃんに走らせるとか意味わかんないよ」と怒っていた
    ――俺もそう思う
    ――嗚呼本当にそう思う
    俺はBBQの道具をジェンティル達に預けてコートを羽織る
    あとは二人も入れて中でも外でも好きなだけ飲み食いしておけと
    ナリタブライアンは肉がすきなようだし肉の追加を買ってくる、と

    そう言って俺は――ナリタブライアンのトレーナールームへ足を運んだ

  • 168二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:41:36

    もしやこれブライアン恋のレース参戦くるか?

  • 169二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:47:05

    レース選択はとても重要な事だ
    例えばスプリンターが突然3600mを走ることなんかできやしない
    1200m 1200m 1200mと走らせていたウマ娘が合計3600mですじゃあステイヤーズステークス走らせます
    そんなトレーナーがいたら俺は迷わずに怒鳴りつけているだろう。 この嘘つきがもうちょっとうまく嘘をつけと
    距離適性だけでなく本命のレースの距離を踏まえて将来のため将来のためと先を見据えてレースを選ぶ必要がある
    1200mの超短期決戦を走った直後に3000mの長距離戦などしたらレースの体感も体内時計もぶっ壊れる
    それが致命的なら競争能力的に本当にまともに走れなくなる
    ――無策の選択ならなにがあっても止めなくてはいけない
    特に今のブライアンは本来の走りすらできない状態だ
    そんな状態でレースなどもっての外なのにシルクロードSでトドメを刺されるわけにはいかない

    ――トドメを差すのは『最強』のブライアンをサクラローレルが刺すべきだ
    ――邪魔なんかさせてたまるか、たとえそれがブライアンのトレーナーであっても

  • 170二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 20:56:02

    ナリタブライアンのチームルーム前に大きな白い芦毛がいた
    あの大きな芦毛は

    ――誰の頭が大きいと言った!?

    ……いってねえよ大きい芦毛って言ったんだ
    ――ビワハヤヒデ、ナリタブライアンの姉
    15戦10勝 GⅠ 3勝 連対率100% URAをして最強の名をつけられたウマ娘
    厳密には16戦であり連対率は100ではないが最後のレース――彼女が引退のきっかけになった天皇賞秋の故障レースは個人的にノーカンにしておく

    "何をしている"

    口を開いたのは同時だった。 俺もビワハヤヒデも同時に全く同じ言葉を紡いでいた
    ……
    コホン、と咳払いをして――先に言葉を発したのはビワハヤヒデだった

    ――次のローテーションを聞いた。 1200m――シルクロードSから阪神大賞典だと
    なんだ……考えてることは一緒じゃないか
    俺も聞いた――聞いてしまった
    だから来ちゃったよ俺――だって勿体ないじゃないか

    ――URA最強の『怪物』を潰すなんてそんな勿体ないこと俺がさせない

  • 171二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:02:07

    ナリタブライアンのトレーナーはビワハヤヒデの眼から見ても優秀で好人物だったそうだ
    姉を凌ぐ圧倒的な才能を持ちながらも性格には少々難のある性格
    自由奔放というか群れるのを嫌いやや自己中心的でその才覚故に他人の気持ちを理解出来ない妹
    孤立しがちな性格のナリタブライアンにもとても優しかったそうだ
    そのレースをひたむきに走り自身が強く強くその上を目指すナリタブライアンの自主性と自由を優先してくれた
    ほんの少しの水向けと気付きを促しつつ、トレーニングへ興味を示すように凄く努力してくれた
    ナリタブライアンもその人柄に少しずつ気を許して恋慕にも似た慕い方をするようになって
    クラシックでの二人は本当に寄り添う間柄で最高のパートナーだったはずだ

    ――だがナリタブライアンはあまりに速く、強く、その走りはトレーナーを魅了しすぎた

  • 172二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:07:02

    ナリタブライアンの前傾姿勢の走りを矯正させようとせずあのまま自由に走らせていたトレーナー
    その走りが凄まじくなるたびに喜び、嬉しそうにブライアンを褒めていたようで
    しかし――もっと、もっととブライアンの走りに魅入られ、引き込まれ
    ブライアンのレースを走りをずっとずっと見ていたいと
    菊花賞前にはかなり無茶なトレーニングもしていたようだ
    限界を超えるようなトレーニング
    それでも走るブライアンに――トレーナーは狂っていった

    そして――菊花賞で見せた限界を超える走り――それが決定的に彼を狂わせた
    あの走りを――もう一度、もう一度見たいのだと
    ブライアンにあの走りを完全にマスターさせようと様々なトレーニングをブライアンにさせた
    ブライアン自身、自分を三冠ウマ娘にした恩義もあった
    なにより――契約関係をこえて一人の人間として好きになってしまっていた
    だからトレーナーの命令を拒否できずに

    ――ブライアンは、どんどんと大きく壊れていった

  • 173二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:10:12

    ……嫌な話だ
    ――トレーナーはきっとブライアンを愛していたのだろう
    ――そんなブライアンもトレーナーを信じて、愛していたのだろう
    ――いや、過去形でなくお互いにまだ現在形で愛しているのかも知れない
    だが、その一個欠けた歯車は一生噛み合わない
    ぶっ壊れるまで軋んだ音を立て続け、なんとかそれも動こうと
    アブラをドバドバかけて、叩いて、歪めて
    ――最後には、ボンと壊れるまで……気づかないのかも知れない

    ――人間は一度壊れて転げてしまえば――あとはどんどんと転げてしまうのだから

    俺はトレーナー室をノックする
    小さな声でどうぞと言われるのを待って、ビワハヤヒデと入室した

  • 174二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:17:37

    ……憔悴しきった顔をしている
    焦りと不安と恐怖と、追い詰められた人間の顔だ
    俺はできるだけ平静を装いつつ、先にビワハヤヒデに切り出させた
    俺とブラトレは初対面――ならば先にビワハヤヒデに事情を聞き出させたほうがはやい

    ――ブライアンの次のローテ―ションが1200mのシルクロードSだと聞いた
    ――さらにその先が3000mの阪神大賞典だとも
    ――さすがにこのローテーションは滅茶苦茶だ、トレーナー!

    ブラトレはビワハヤヒデの鋭く怒気のこもった声にビクっと身体をすくませる
    痩せたというよりやつれたような頬をして、唇を震わせ――拒絶するように首をふった

    ――ブライアンの、ブライアンの闘争心に火をつけるためだ
    ――そうすればブライアンの身体は勝手に動いてくれる
    ――きっと、きっと……そうすれば、ブライアンはまた……また……

    嗚呼、そうか。
    本当に――本当に嫌な事だ――
    俺はわざと大きな音を立てるために、ソファに座ったまま靴のかかとでテーブルを踏み抜いた

  • 175二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:22:58

    ダアン!と大きな音が響く
    俺は立ち上がってトレーナーに近づき、訪ねた

    ――あんた、もうブライアンにあの走りができないって理解してんだろ?

    闘争心、限界を超える
    そうは言ってるがその言葉に確たる自信の光がない
    この人物はナリタブライアンという三冠ウマ娘を産み出したトレーナーだ
    ビワハヤヒデも認めるほどの人物だ
    超一流のトレーナーなのだ――だからこそ
    だからこそ――今のこの男には理論も性根も心意気もない
    ただただナリタブライアンの走りを夢想しあがきもがいてるだけだ
    それでも――それでもそれを認められないのは

    ――いやだ

    ――嫌だよ! 俺はナリタブライアンと一緒にいたいんだ!!
    ――あの走りができないのは俺のせいだ!でも嫌なんだ
    ――ブライアンを壊しちゃった、もうあの走りを取り戻せないかも知れない
    ――でも嫌なんだよ!!ブライアンと離れたくない!彼女を最強にしなきゃだめなんだ!


    ――嗚呼、本当に嫌になる

  • 176二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:28:27

    走りに魅入られて――1歩だけ道を踏み外したのだ
    きっとそこで立ち止まろうとして、踏み外した道を戻ろうとして
    そこですでに気づいたのだろう――ブライアンの走りがおかしいと
    本来の走りにヒビがあると――もしかしたらそこで修正をいれようと思ったのかも知れない
    でも本来の走りにも影響があって
    それでもう戻れなくなった――進化した走りなら――きっと今までのように、今まで以上に勝てると
    ブライアンが最強で、上を見て走れるんだとすがったのかも知れない
    この男はただただ狂気に取り憑かれ自我を失った男ではない
    まだ――ブライアンを愛して
    ブライアンが本来の走りができないからこそ
    自分とブライアンが引き離されるのではないかと恐れて
    なんとか――なんとか
    なんとか二人の間を繋ぎ止めようともがいてた
    怯える男のテーブルは彫り込まれたように文字がびっしりだった
    狂気さえ感じるほどの文字がびっしりと
    ブライアンの走法、その角度、その理論
    全部全部全部全部
    それが全部その上から――ごめん、ごめんと
    狂ったように謝罪で埋め尽くされていた

  • 177二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:33:45

    ――コイツはまだ狂ってないよ、ビワハヤヒデ

    しかし!と声を上げたビワハヤヒデに俺はもう一度叫ぶ

    狂ってない! こいつはまだ真っ当で――ブライアンを愛してる
    今はあまりに憔悴してまともな判断ができないだけだ
    科学的な根拠なんてない
    ただ俺は知ってるんだ

    ――愛してるよ
    ――貴方がいてくれるから私は幸せ
    ――お前なんて要らない!
    ――お前さえ産まなければ!産まなければ!!!

    知ってるんだよ――どんどん壊れていって本当に狂った人間の瞳を、顔を
    本当に嫌でどうしようもないことだが知ってるんだ
    大丈夫――彼はまだ真っ当だ

    俺は怯えた表情のトレーナーの胸ぐらを掴む
    脅すように、凄むように――そう、演技して

    ――おい――ブライアンを
    ――『怪物』の走りを取り戻してやる。 お前が壊したブライアンを直してやる
    ――だからさ
    ――くれよ、俺に――ナリタブライアンを

  • 178二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:38:53

    ブライアンのトレーナーは今まともな精神状態じゃない
    ならばある程度長い療養が必要だろう
    休養が必要なのはブライアンとは限らないということだ
    だからその間に――ブライアンに元に戻ってもらわなければならない
    こんな事になるとは本当に思っていなかったが――それでも
    ブライアンのトレーナー以外にブライアンを復活させれるとしたら
    ほんの微かにでも可能性があるとしたら――俺の知る限り俺自身がやるしかないのだ

    すまないがこっちも時間がないんだ
    凱旋門賞に行きたいんだよ――サクラローレル
    だからそれまでにナリタブライアンを倒したいんだ
    有馬記念のような腑抜けたナリタブライアンじゃない
    『怪物』――ナリタブライアンを倒さなきゃいけないんだよ
    だからお前が無理なら俺が直してやるよナリタブライアンを
    俺のローレルのために
    俺のローレルのために寄越せよ、ナリタブライアン!
    俺がお前の愛した『怪物』を呼び戻してやるよ!!

  • 179二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:45:12

    Narita brian Training Reconstruction するんか?!

  • 180二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:45:38

    ――と、言うわけで
    我がチーム:ブロッサムに加入する超大型雇われ助っ人が居ます
    ナリタブライアンちゃんでーす!

    ――っきゃー!ブライアンちゃん!
    ――どういう事ですの?
    ――あらあらあら、まあまあまあ♪
    ――え、あ、えっ、えっ?

    四者四様の反応、ナリタブライアンの方は「…ち」とそっぽを向いている
    面倒そうにそっぽを向くナリタブライアンをサクラローレルに押し付ける
    挨拶をしたくなきゃしなくて良い
    元々そういう性格なのだしこっちも3月までの預かり予定
    こっちのルールに従って貰う必要は一切ない
    だけど覚悟はしてもらう――死ぬ気で『怪物』を呼び戻してもらうぞナリタブライアン

  • 181二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:51:35

    ブライアンのトレーナーは半ば強制入院のように病院に入院が決まった
    数日後ブライアンが見舞いに行くと――子供のように泣きわめきながらブライアンにずっと謝っていたらしい
    ブライアンのシルクロードSの登録は解除したが阪神大賞典の登録は残したままだ
    その間にトレーナーには返ってこいと伝えてある

    ――アンタがブライアンのトレーナーなんだから仕上げぐらいはアンタがやれ

    俺は3月までにブライアンの『怪物』――クラシック期までの走法が戻るように努力をする約束をした
    ビワハヤヒデにはトレーナーの様子と俺とトレーナーの橋渡しを任せ
    俺は今後の三人のクラシック戦線――しかも王道路線はあのコントレイルが待ち構える対策を考え
    シニアのサクラローレルの凱旋門賞までの国内ローテションとトレーニングを考え
    さらになにもかもわからんブライアンの復活の手段まで考えることになった

  • 182二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:57:29

    ――おい

    俺はブライアンにトレーナー室で呼ばれる。
    もうBBQの肉はのこってない。 あれから何日たったと思っているんだこの肉食児は

    ――違う。 アンタはなんでこんな事をしてるんだ

    しょうがないだろ。と俺はため息を付く
    クラシックはコントレイルと戦わなきゃいけなくて
    ジェンティルドンナだって簡単にはいかない道のりで、クラシックの最後にはそのコントレイルとジャパンカップ有馬でぶつかる
    サクラローレルなんざ凱旋門賞だ。 有馬記念で勝って実績十分とはいえ今後はレースでもトレーニングでもどんどん鍛えなきゃいけない
    ブライアンだって阪神大賞典を通るなら天皇賞春にいくのが妥当だから走法の復活と心肺能力の強化は絶対だ
    トレーニングメニューもレーススケジュールも、その書類作成も――さらにレースの研究もあるんだよ
    なんでってやらなきゃ行けないことが山積みなんだよ

    ――違う、どうして私達に情をかける

  • 183二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:02:18

    ――情けじゃない、必要なんだよ
    ここで少々恩を売るように良い人ぶるのも考えたが――やめた
    だってそうだろう――ナリタブライアンは
    サクラローレルに倒されるべき『怪物』なのだから

    ――サクラローレルも俺もお前にさっさと復活してほしいんだよ
    復活して、菊花賞より強いほどのナリタブライアンになって
    ――俺等に食われろ――『怪物』
    俺はまっすぐナリタブライアンを見据える
    これは情けじゃない――ナリタブライアン――怪物への挑戦状だ
    逃げたければ逃げれば良い
    お前の怪物を内に秘めたまま弱いままで隠れてれば良い
    そんな弱いナリタブライアンに用はない、不本意だが凱旋門賞にそのままいくだけだ

    ――お前は狂ってるな

  • 184二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:07:31

    ナリタブライアンはまっすぐに俺を見てそう言った
    俺はそれをあっさり肯定する
    ――俺はクズでクソだよ、必要とあらばなんでもする
    ――それこそ――人を殺したって構わない。 本当にどうしようもなく必要だったらな
    ナリタブライアンも――自分のトレーナーがどんどんと狂っていく事にどうしようもない気持ちだっただろう
    だから安心して欲しいナリタブライアン
    彼はお前を愛してる――それに狂ってなんかいない。 きっとゆっくり休めばきっと以前に戻れる

    ――狂ってるっていうのは俺みたいにどうしようもなく不可逆なんだ

    だから安心しろ、お前のトレーナーは十分真っ当だ
    お前も『怪物』を取り戻したいなら俺等をいくらでも利用すべきだ
    仲良くしようとは言わない
    馴れ合えとも言わない
    だからせめて利用して見せるだけの事はしてみせろ
    あのトレーナーを本当に笑顔にできるのは――怪物だけだ

  • 185二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:12:50

    ――そうか……そうだな
    ――これからよろしく頼むトレーナー
    ――ここにいる間はアンタの指示にすべて従う

    ……あっれー?
    なんで滅茶苦茶物わかりがいいんですか?
    もうちょっとナリタブライアンさん復活のために色々指示や方向性きめるの大変だろうな
    少しづつでも言う事聞いてもらおうかなとか思ってたんだけどな
    俺はそんな感じで首をなんどもかしげてる
    ナリタブライアンはふう、とため息を付いて

    ――トレーナーから言われた
    ――彼――アンタに従ってくれと
    ――私が戻るまでアンタに従えと
    ――アンタは、私の走りを取り戻してくれると


    ――どうか――どうか、私が壊してしまったけれど
    ――君の走りを、走りを……君自身を取り戻してくれ
    ――すまなかった、ごめん――ごめんブライアン

    ――アイツはアンタに縋ってた
    ――アンタなら私の走りを取り戻せるかも知れないと
    ――だからアンタに従う

  • 186二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:19:53

    そうか、従ってくれるか
    ――じゃあ一個早速命令だ
    手をだしてナリタブライアン

    無言で右手の手のひらを見せたナリタブライアンの手をとって無理やり握手する
    よろしくなナリタブライアン――俺はまだ新人のぺーぺーだ
    チームブロッサムの連中にちょっと走りとか力の差だとか叩き込んでくれ
    俺はぎゅっとナリタブライアンの手を握る
    ナリタブライアンの能力は極めて高い――彼女との練習は今でも他のメンバーの力になるだろう
    利用できるものは利用すればいいし俺等も利用はさせてもらう
    それがちょっと楽しければ――それはそれで結果オーライなのではないだろうか

    ノックなしにドアが開き、マヤノトップガンが入ってくる
    マヤノトップガンはちょっと俺の顔を見て

    ――聞いたよブライアンさん! こんな変態に無理やり言う事聞かせられてるって
    ……だれから聞いたんだよどうせうちのメンバーの誰かだろちょっと名前言ってみろ
    俺がマヤノトップガンを睨んでいると、ナリタブライアンが一言だけ言った

    ――そういえばあの如何わしい服を着ろとかそういう命令をしたら殴るからな?

    ああああああっ!こいつら!!こいつらほんとに!ほんとに!!!

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:22:37

    勝手に担当がアレな服を着てきただけなのに変態扱いされてる闇トレ(絶倫)に悲しき現在

  • 188二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:24:26

    まぁ何も知らん人から見たらそうなるやろなぁと
    おいたわしや闇トレ(絶倫)

  • 189二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:29:03

    その後すぐ
    ナリタブライアンのトレーナーの一件やナリタブライアン本人とのやり取りのあと

    ――俺はフラッシュバックを起こした

    視界が狭まって呼吸がまともにできなくて
    ただただ思考だけが過去に戻る

    ――俺の髪の毛を掴む大きな手
    ――顔面を風呂に突っ込まれる
    ――必死にもがいて、頭を上げようとしても上がらない
    ――死ぬ……死ぬ、ごめんなさい
    ――ごめんなさい――ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

    無我夢中で俺はスマホを指で押す
    指が折れそうなぐらい押し込んで、呼吸ができなくて
    苦しくて苦しくて――まるで風呂に顔をつっこまれたみたいに呼吸ができない
    苦しい――苦しい――息が、息が……息をしなきゃ……息を吸い込まなきゃ……死んじゃう、苦しい、苦しい苦しい苦しい

    ――息を吐き出して! 息を吸っちゃ駄目です!吐いて、吐いてトレーナーさん!!

    思い切り――背中を叩かれる。 何度も何度も叩かれる
    勢いと苦痛――ガハッと息を吐くとようやく息が吸える
    ほんの少し戻った意識と理性を全力でひきとめ、息を吸うのではなく吐き出す
    全部――全部全部全部――肺の中を全部吐き出す
    あとは何もしなくても自然に呼吸が始まって――意識なんかしなくても勝手に息を吸い込んでくれる


    ――すまない、助かったクリーク

  • 190二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:34:52

    ――情けない
    ブライアンのトレーナーにもタンカを切って
    ブライアンにも多少の脅しをして見せて
    そんなクズはこうして担当に面倒を見てもらわないと死にそうになっている
    みっともない、情けない
    今日は色々な事がありすぎて、思い出してしまった
    いつになったら忘れられるのだろうか

    ――狂ってるよナリタブライアン。 俺に比べたらお前のトレーナーはよほど真っ当だ

    クリークは何も聞かずに俺を抱きしめてくれる
    俺は手を伸ばして、なんとなしにクリークの髪の毛を触って、撫でて
    もう一度謝罪しようとしたらクリークに強く抱きしめられた
    多少苦しいぐらいに抱きしめられる

    ――謝らないでください
    ――謝らないで――私を頼ったことを謝らないでください

  • 191二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:46:23

    スマホには緊急連絡先にクリークの番号を記していて
    万が一がアレばクリークかそこから救急車を呼ぶように頼んでいた
    意識も滅茶苦茶だったがちゃんと押せていたようだ

    ……ありがとうクリーク

    またクリークに「ごめん」と言いかけて言葉を止める――その代わりに、ありがとうと
    クリークに膝枕をされずっとずっと横になって
    もう夜も遅いと言うのにクリークに頼って負担をかけている
    ――本当になさけない
    まだ呼吸は完全には落ち着かない
    時折しゃっくりのように、ヒ、ヒッと悲鳴のような音を立て呼吸をする
    そのたびにクリークが俺の手をぎゅっと握った

  • 192二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:50:58

    迷惑かけっぱなしだ
    俺は握ってくれたクリークの手を握り返す
    暖かい手が心地良い――俺は少しだけクリークに甘えるようにお願いする
    ちょっとその手で――頭を撫でて欲しい、と

    俺は撫でられながら今日あったことを話した
    ブライアンのトレーナーが憔悴仕切っていたこと
    最初はブライアンの走りに魅了されて狂ってしまったのかと思っていたこと
    実際はそうじゃなくて――自分のせいで多少調子がわるくなった程度のそれに狼狽し、憔悴し、それでどんどんと引き返せなくなって
    悪い方、悪い方へ転げ落ちるような――誰も悪くない、でも明らかに起こった不幸だと言う事
    ――きっと彼は十分全うで、ずっとずっとブライアンを愛していて
    ――それは最後まで変わってなくて

    ――それを見た時……
    ――どうして自分の母親は、あんなにも変わってしまったのだろうって思ってしまった事

    すべてを、クリークに話した

  • 193二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:57:09

    クリークはそれを肯定するでも否定するでもなく静かに聞いている
    ずっとずっと同じリズムで頭を撫でられる。温かい手が優しく頬を撫でる
    俺がもっともっといい子だったら――お母さんはもっと真っ当だったのだろうか
    お母さんは色々と狂うことなく――優しいお母さんでいたんだろうか
    でも――おかあさんは確かに言ってたんだよ、クリーク
    ――愛してる、貴方が居てくれるから幸せだ……って
    どうしてああなっちゃったんだろう

    クリークは何も言わない
    俺のことを優しく撫で――ゆっくりと身体を寄せる

    ――全部わすれちゃいましょう
    ――今はなんにも考えずに眠って下さい、トレーナーさん
    ――ずっとずっと、こうしてあげますから

    俺はいつしかクリークの心地よさに目を閉じて
    次に目を開けると明け方で
    ずっとずっとクリークに膝枕をされ、頭を撫でられながら眠っていた
    ここはトレーナー寮
    深夜から明け方までずっとクリークに抱かれ眠っていた俺をクリークは見下ろし
    優しく微笑んでくれた

  • 194二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:03:48

    勿論俺は土下座をした
    本来クリークに謝るのはご法度かもしれない
    しかし男の部屋にクリークを呼んで如何わしいことなく俺を救護するためとはいえ
    ――クリークを一晩俺の部屋に入れ夜を明かしたのは事実だ
    更に言えばクリークにずっとずっと膝枕をさせて眠っていたのだ
    大人として、トレーナーとして高等部の少女にさせていいことではない

    ――うーん……でも私とトレーナーさんって3つしか違わないですし
    ――トレーナーさんって可愛いので兄というか弟さん、ですよね?

    そうじゃない、そうじゃないんだ
    人としていけないことなんだ
    どうか俺の謝罪を受け入れて欲しいスーパークリーク

    ――うーん……謝罪をされる事が何一つ無いのですが
    ――ところでもう冬休みで今日はオフですが……トレーナーさんもオフですか?

    クリークの問いにこくこくと頷く
    本当は書類やレース研究をしたいがブライアンのトレーナーをみたり深夜のフラッシュバックからではさすがに
    休養も必要なのだと心から感じた
    クリークはこれ以上なく嬉しそうに両手を合わせ目の前で笑っている

    ――じゃあ今までのご褒美に今日はトレーナーさんのお部屋でおうちデート♡しましょう
    ――いっぱい甘やかしてでちゅねでちゅねしちゃいますね
    ――はーい、トレーナーさん。 オギャッてバブってじゃんけんぽん♪ですよ

    ……え、マジ?

  • 195二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:07:07

    >オギャッてバブってじゃんけんぽん♪

    シリアスを吹き飛ばしてくるじゃんこの字面

  • 1961◆qxc6n.SpgKwJ25/10/19(日) 23:10:55
  • 197二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:17:31

    スレ立て乙
    衣装はまあ、着させてたら引かれるやーつ

  • 198二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:23:48

    埋め
    闇トレ(絶倫)はトレーナーちゃんになれ

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