(閲覧、未来捏造注意)ここだけバナージとオードリーの子(6)が 再

  • 1二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:12:07

    生まれつき霊が見える体質で、それがマリーダさんだったら

    落ちたので再走

  • 2二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:13:56
  • 3二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:22:38

    保育園のお散歩で、森の中の小道を歩いているときだった。
    みんなが先に進んでいく中、セラフィムだけが足を止めた。
    「……おねえちゃん、そこにいるの?」
    木々の間に、淡い光が立ちのぼる。
    霧のような気配の中から、ひとりの美しく光った裸の女性が現れた。
    赤い髪が風に揺れ、背筋の伸びたその姿はどこか懐かしく、悲しげだった。
    「わたしは……マリーダ・クルス」
    「マリーダ……さん?」
    女は微笑んだ。けれどその瞳は遠く、まるで誰かを探しているようだった。
    「あなた……バナージの子ね」
    セラフィムは驚いて、目を丸くした。
    「パパ、しってるの?」
    「ええ。……大切に思っていた人よ」
    風が揺れ、木漏れ日が二人の間に降り注ぐ。
    マリーダは膝をつき、セラフィムと目線を合わせる。
    「あなたには、見えるのね。わたしたちのような“声”が」
    「うん……でも、みんなこわいっていう」
    「怖くないわ。あなたが優しいから、寄ってくるの。――あなたが、まだ泣いてる人を放っておけないから」
    セラフィムはその言葉に、少しだけ笑った。
    「じゃあ、マリーダさんも……ないてるの?」
    赤い髪の女は、ふっと笑い、そして少しだけ涙を流した。
    「もう……泣けるようになったの。だから、ありがとう」
    次の瞬間、風が吹き抜けて、木の葉がざわめいた。
    気づけば、そこにはもう誰もいなかった。
    遠くで先生たちの呼ぶ声が聞こえる。
    セラフィムは振り向いて、小さく手を振った。
    「またね、マリーダさん」

  • 4125/10/19(日) 16:39:02

    すいません、セラフィム、やっぱり女の子に変更します(前スレのキャラ設定は消します)

  • 5125/10/19(日) 16:40:24

    🌟キャラクター紹介:セラフィム・リンクス(Seraphim Links)
    年齢:6歳
    性別:女
    家族:バナージ・リンクス(父)/オードリー・リンクス(母)
    出身地:ルオ財団領内・自然豊かなコロニー
    🕊性格
    穏やかで優しく、繊細な感受性を持つ
    霊や心の声に敏感で、人や存在の悲しみを察する
    恐怖や不安を感じながらも、他人を助けたいという思いが強い
    好奇心旺盛で、未知のものにも臆せず向き合う

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 16:54:06

    セラフィムは悠木碧ボイスのイメージ強い

  • 7二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:38:23

    あの森へ行く道を、セラフィムはひとりで知っていた。保育園の帰り、夕方の陽が傾くころ、そっと道を外れて小道に入る。胸の奥で、どきどきが鳴っている。
    「マリーダさん……いるかな」
    森の中は静かで、木漏れ日が金色に揺れていた。しばらく歩くと、ひと筋の風が吹いて、光が舞い上がる。
    「また来たのね」
    あの声だ。赤い髪が夕陽を受けて燃えるように光る。マリーダは、前と同じ場所に立っていた。
    微笑んでいるけれど、その顔はどこか儚げだ。
    「……あいたかった」
    「どうして?」
    「マリーダさん、ないてたから」
    セラフィムは真っ直ぐに言った。マリーダは少し驚いて、そしてふっと目を細める。
    「優しい子ね。……あなたのパパに似てる」
    「パパ、マリーダさんのこと、しってる?」
    「ええ。……昔ね、わたしはパパに、生きる理由を教えたり、教えてもらったりしたの」
    風が吹いて、葉の音がざわざわと響く。マリーダの輪郭が少しずつ透けていく。
    「ねぇ、マリーダさん。もうないてない?」
    「ええ。あなたに会えて、もう大丈夫」
    「そっか。じゃあ……もういっちゃうの?」
    「……行くわ。でも、あなたがいる限り、わたしたちは消えない。
     “心の中にいる”って、そういうことなの」
    セラフィムはその言葉を、難しいながらも感じ取って、うなずいた。
    「また、あえる?」
    「きっとね。――その時は、あなたが誰かを守る番よ」
    光がふっと広がり、マリーダの姿が溶けていった。木々の間に、赤い花びらのような光だけが残る。
    セラフィムはそれを両手ですくって、胸の前でぎゅっと握った。
    「またね、マリーダさん」
    森の外では、オードリーの呼ぶ声がした。
    「もう夕方よ、早く帰りましょう」
    振り返るセラフィムの瞳の奥には、あたたかな光が一つ、静かに灯っていた。

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:21:17

    玄関の扉を開けると、オードリーが心配そうに駆け寄ってきた。
    「どこ行ってたの? 森に行ったの?」
    セラフィムはうつむいて、小さな声で言う。
    「……うん。でも、マリーダさんにあったの」
    バナージがその名を聞いた瞬間、手にしていたカップが少し震えた。ゆっくりと置いて、セラフィムの方を見る。
    「…セラ…今、なんて言った?」
    「マリーダさん。あかいかみでね、きれいなひと。ないてたけど、もうなかなくていいっていってた」
    オードリーは目を丸くして、バナージを見る。
    けれど、彼は何も言わずに静かに立ち上がった。リビングの灯りが、彼の表情を優しく照らす。
    「その人は……何か、言ってたかい?」
    「うん。“あなたのパパに、いきるりゆーをおしえてもらった”って」
    沈黙。
    オードリーの瞳が揺れ、バナージはゆっくりと目を閉じた。
    長い時間の向こうから、あの声がよみがえる。
    “ お前は光だ。悲しみすら糧として道を照らせ、姫様と二人で。“
    小さな手が、バナージの袖をつかむ。
    「パパ、マリーダさんしってるの?」
    バナージは膝をついて、セラフィムの目線に合わせた。
    「……ああ。大切な人だった。でもね、もういないんだ」
    「ううん、いたよ。もりに。あったかかった」
    セラフィムはまっすぐな瞳でそう言った。
    その純粋さに、バナージの胸が締めつけられる。
    「……ありがとう。きっと、セラに会えて嬉しかったんだ」
    オードリーはそっと二人を抱きしめる。
    「ねぇ、マリーダは、もう泣いてなかったんでしょ?」
    「うん。わらってた」
    オードリーの肩が小さく震えた。
    「よかった……きっと、それが救いなのね」
    窓の外で風が吹き、カーテンがゆらめいた。その瞬間、赤い光の粒がひとつ、ふわりと漂って消える。
    三人ともそれに気づかないまま、家の中には、どこか懐かしい温もりだけが残っていた。

  • 9二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:37:55

    面白い設定やな

  • 10二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:50:47

    白い廊下の先、診察室の扉が静かに閉まる。オードリーはセラフィムの肩に手を置き、バナージは少し離れたところで深呼吸をしていた。
    「ただの、夢とか……想像ならいいんだけどね」
    オードリーの声は震えていた。バナージは頷くが、心の奥では何かがざわついていた。
    “マリーダ”という名前を聞いた瞬間の、あの感覚。
    忘れようとしても消えない記憶が、静かに疼いている。医師は柔らかい笑顔を向けながら、
    「セラフィムちゃん、少しお話ししてもいいかな?」と声をかけた。
    セラフィムは小さくうなずき、白い部屋の中に静かに入っていく。
    「どんな時に“見える”のかな?」
    「……しずかなとき。もりとか、おひさまがおちるころ」
    「それは怖い?」
    「ううん。みんな、やさしいよ。でも……ないてるひともいる」
    医師は少しだけ眉をひそめた。
    「泣いてる人、っていうのは……誰かが見えるの?」
    「うん。あかいかみのおねえさん。マリーダさん」
    オードリーの指が、ぎゅっとバナージの袖を掴む。医師は優しく笑いながらメモを取った。
    「なるほどね。お友達みたいなものかな?」
    セラフィムは首を横に振った。
    「ちがうよ。マリーダさんは、“ありがとう”っていってたの。
     わたしにじゃなくて……パパに」
    その瞬間、バナージの胸の奥で何かがはじけた。頭の中に、あの日の戦場がよみがえる。マリーダの最期の声、そして涙。
    診察が終わり、帰り道。オードリーはずっとセラフィムの手を握っていた。
    「セラ……見えないものが見えるって、怖くない?」
    「うん、ちょっと。でもね、マリーダさんいってたよ。
     “怖がらないで。あなたは優しい子だから、見えるんだ”って」
    バナージは言葉を失い、ただ歩き続ける。夕暮れの光が、三人の影を長く伸ばしていた。
    その夜。セラフィムは眠る前に、窓の外へそっと手を伸ばした。
    「マリーダさん、もうないてない?」
    風がカーテンを揺らす。
    どこからか、優しい声が聞こえた気がした。
    「泣いてないわ。……ありがとう、セラ」

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:50:50

    お父さんともセラフィムを通して話したりするんだろうか

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 22:06:19

    潮の匂いが強く漂う夕暮れ。古びた格納庫の横で、ジンネマンは工具を拭いていた。白髪が増えたが、その背中は今もまっすぐだ。
    「キャップ!」という、小さな声に振り向く。セラフィムが駆けてくる。後ろでオードリーが微笑んでいた。
    「おお、セラじゃねえか。大きくなったな」
    ジンネマンはしゃがみ込み、がっしりとその頭を撫でた。
    「今日はどうした? バナージは元気か?」
    「うん、げんき! あのね……マリーダさんに、あったの」
    ジンネマンの手が止まった。潮騒の音だけが残る。
    「……なんだって?」
    セラフィムは真っすぐな目で頷いた。
    「もりでね。マリーダさんがきて、ないてたの。でも、わらってくれた。“ありがとう”っていってた」
    ジンネマンはしばらく黙っていた。大きな手が、ゆっくりとセラフィムの肩に置かれる。
    「……そうか。あいつ、笑ってたか」
    「うん。もうさびしくないって」
    その言葉に、ジンネマンの喉が詰まった。長年、誰にも見せなかった涙が、目尻を静かに濡らす。
    「……あの子は、戦うために生きちまった。俺は……“親”でいながら、それしかさせてやれなかった」
    セラフィムは小さく首を振った。
    「ちがうよ。マリーダさんね、“キャプテンに会えて幸せだった”っていってた」
    ジンネマンの肩が震える。拳を握りしめ、空を見上げた。
    「そうか……そうか……」
    彼はしばらく風の中に立ち尽くし、やがて深く息を吐いた。
    「ありがとな、セラ。おまえが伝えてくれたおかげで……俺は、ようやく“あの子を見送れた”気がする」
    セラフィムはにっこり笑った。
    「マリーダさん、きっとちかくでみてるよ」
    ジンネマンはその言葉に微笑み、ポケットから古びたガランシェール隊のエンブレムバッジを取り出した。
    「これを持っていけ。あの子の分まで、優しい奴でいてくれ」
    「うん……! ありがとう、キャップ!」
    潮風が二人の間を抜けていく。港の向こうの海面が赤く染まり、その光の中にふと赤い髪が揺れたように見えた。
    ――“ありがとう、お父さん”
    ジンネマンは小さく笑い、帽子のつばを押さえた。
    「……まったく、手のかかる娘だ」

  • 13二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 00:43:01

    >>12

    尊すぎるだろ!!

  • 14二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 03:34:42

    守護霊かな?

  • 15二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 11:46:24

    バナオドの子供を守る守護霊ですか…

  • 16二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 15:55:11

    セラフィムは、庭のテーブルの上で絵を描いていた。リディは紅茶を口にしながら、その小さな背中を静かに見つめる。
    「絵、上手だな。……これは誰だい?」
    「うん……マリーダさん」
    リディの指が止まる。紅茶の香りの中で、空気が一瞬、重くなった。
    「……マリーダ?」
    セラフィムは首をかしげ、無邪気に続ける。
    「この前、森で会ったの。泣いてたけど、笑ってくれたよ。
     “ありがとうって伝えて”って言ってた」
    リディの瞳が揺れた。
    遠い記憶が脳裏に蘇る。銃声、絶叫、あの瞬間。手の中で崩れた重み。
    「……マリーダさんが、俺に……?」
    声が震えた。
    セラフィムは静かに頷く。
    「うん。マリーダさんね、“もう大丈夫”って言ってた。
     “リディも、泣かなくていい”って」
    リディは顔を伏せた。紅茶のカップを握る手が小さく震える。
    「……そうか。あの人らしいな」
    その言葉のあと、沈黙が落ちた。風が木々を揺らし、セラフィムの髪がふわりと舞う。
    「お兄ちゃん、泣いてるの?」
    「……泣いてるさ。けど、今は少し……軽くなったよ」
    リディは微笑みながら、そっとセラフィムの頭を撫でた。
    「おまえはすごいな。優しいっていうのは、時々、怖いことなんだ。
     でも、その優しさが……きっと、誰かを救う」
    セラフィムはその言葉をまっすぐ受け取って、笑った。
    「じゃあ、マリーダさん、ちゃんと伝えられたね」
    「ああ。……ありがとう、セラフィム」
    リディは空を見上げた。高く澄んだ青の向こうに、ふと赤い光が瞬いた気がした。
    ――“もう、泣かないで”
    彼は目を閉じて、深く息を吐いた。
    風が優しく頬を撫で、遠い昔の痛みが、ようやく少しずつ溶けていくのを感じていた。

  • 17二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 18:49:21

    その夜。
    家は静まり返り、月の光だけが部屋を照らしていた。
    セラフィムは目を覚ましていた。
    窓の外から、柔らかな風がカーテンを揺らしている。
    その向こうに、淡い赤の光が見えた。
    「……マリーダさん?」
    光が形をとり、静かに微笑む影が現れる。
    赤い髪が夜の中で揺れ、
    その瞳には、もう悲しみはなかった。
    「セラ。リディに伝えてくれて、ありがとう」
    「うん……マリーダさん、もう泣いてない?」
    「ええ。あなたのおかげで、ようやく“ここ”にいられるようになった」
    セラフィムは小さく首をかしげた。
    「“ここ”って?」
    「心の中。……バナージの、リディの、そしてあなたの。
     それぞれの中に、わたしたちは残っている」
    風が通り抜け、赤い光がふわりと舞う。
    マリーダの輪郭が淡く薄れていく。
    「マリーダさん……もう行っちゃうの?」
    「いいえ。行くんじゃないの。還るのよ。
     ——あなたたちの未来の中へ」
    セラフィムは胸の前で手を組み、そっと微笑んだ。
    「じゃあ、またね」
    「またね、セラ。あなたは優しい。
     その優しさを、どうか誇りに思って」
    その声が消えたあと、
    部屋には静かな月の光だけが残った。
    セラフィムは目を閉じ、微かな涙を流しながら、
    どこか心の奥で温かさを感じていた。

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 18:51:32

    数日後。
    バナージの家の前に、一台の小型輸送機が静かに降り立った。
    リディが降り立ち、苦笑まじりに手を振る。
    「久しぶりだな、バナージ」
    「本当に……もう何年ぶりになるんでしょうね」
    二人は庭のベンチに腰掛け、
    しばらく無言のまま、風の音を聞いていた。
    やがてリディが口を開いた。
    「この前……セラフィムくんに会った。
     あの子、すごいな。まるで全部見透かしてるみたいだった」
    「……何か言ってたんですか?」
    リディはゆっくりとうなずく。
    「“マリーダさんが、ありがとうって言ってた”って」
    バナージの息が止まる。
    リディは続けた。
    「俺な、あの言葉でようやく……少しだけ、あの時の自分を許せた気がした。
     ずっと胸の奥で凍ってた何かが、あの子の一言で溶けたんだ」
    バナージは空を見上げる。
    淡い光が木々の間から差し込み、風が赤い葉を揺らした。
    「マリーダさんは、俺たちに生きろって言ってくれた。
     あの人は、その言葉を……ちゃんと“未来”にしてくれたんですね」
    リディは小さく笑い、肩の力を抜いた。
    「そうだな。あの子らしいよ、最後まで」
    二人はしばらくの間、言葉を交わさずに空を見ていた。
    どこかで子どもの笑い声が響く。
    セラフィムがオードリーと庭を走っている。
    その笑い声が、二人の胸の奥にやわらかく染みていく。
    ――「あなたたちは、もう泣かないで」
    風が赤く光り、
    ひとひらの葉が空へ舞い上がっていった。

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 22:47:26

    尊い…

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 08:16:30

    素晴らしいssをありがとう

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 08:37:33

    夕暮れの港。海風がそっと帆や旗を揺らし、空には淡いオレンジと紫のグラデーションが広がっていた。
    ネェル・アーガマのクルーたちは、自然に輪になって座っている。バナージ、リディ、ジンネマン、アルベルト・ビスト。そして、その中心に、セラフィム・リンクスが小さく座っていた。
    「今日は……マリーダさんの話をしようと思う」
    バナージの声は、普段より少しだけ重く、静かだった。
    リディが微笑む。
    「そうだな。あの子のこと、ずっと心に抱えてたからな」
    アルベルト・ビストが小さくうなずく。
    「…マリーダ・クルス。戦いの中で失った命。だけど、彼女が残したものは、まだ私たちの中にある」
    ジンネマンも口を開いた。
    「セラのおかげで、ようやく心の整理がついた。あの子も、あの笑顔で見守ってくれてるはずだ」
    セラフィムはその場に立ち、そっと手を組む。
    「マリーダさんはね、もう泣いてないって。それに、“ありがとう”って、みんなに言ってた」
    その言葉に、クルーたちの表情が柔らかくなる。港の風がそっと吹き抜け、赤い光のような夕陽が海面に映る。
    バナージは目を閉じ、手のひらで胸を押さえた。
    「ありがとう、マリーダさん……」
    リディはそっと肩を抱き、ジンネマンは微笑む。アルベルトは深呼吸し、静かに瞑目する。
    「戦いの中で、みんなで泣けなかった時間があった」
    アルベルトの声は低く、けれど確かに響く。
    「今こうして、笑って、泣ける。それが、あの子の願いなんだろうな」
    セラフィムは小さな声でつぶやく。
    「マリーダさん、よかったね……みんな、ちゃんとわかってくれた」
    風に揺れる髪の間に、赤い光がふわりと舞う。それはまるで、マリーダが微笑んでいるかのようだった。
    夜が深まるにつれて、港は静まり返る。
    だが、心の奥には、あたたかい光が残ったままだった。
    ――「ありがとう。もう、泣かなくていい」
    バナージ、リディ、ジンネマン、ビスト、そしてセラフィム。それぞれの胸の中に、彼女の存在が柔らかく刻まれた。
    そして、ネェル・アーガマのクルーたちも、誰もがその光を感じ、静かに見守った。

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 12:42:44

    あったけぇ…

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 22:05:15

    港の灯りが消え、ネェル・アーガマのクルーたちが眠りについた夜。
    セラフィムはひとり、部屋の窓辺に座っていた。
    月明かりが髪を優しく照らし、海面に光の道ができている。
    「……マリーダさん?」
    小さな声に、夜の静けさが答える。
    ふわりと赤い光が窓の外に現れ、やわらかく揺れる。
    マリーダの輪郭が淡く浮かび、微笑む姿は、森で見たあの日のまま。
    「セラ……ありがとう」
    「うん……会えてよかった」
    セラフィムの小さな手が胸の前で握られる。
    「あなたが伝えてくれた言葉で、みんなが救われたの。もう、わたしは安心して還れる」
    「……でも、寂しくない?」
    「もう大丈夫。だってあなたがいるもの。バナージも、リディも、キャプテンも、アルベルトおじさんも……みんなの中に、わたしはいる」
    風がカーテンを揺らし、海面の光が赤く瞬く。マリーダの輪郭はゆっくりと薄れ、光の粒となって宙に舞った。
    「セラ……忘れないで。優しさは、強さになる」
    その声が消えたあと、セラフィムは静かに目を閉じる。胸の奥が、ぽっと温かくなる。
    涙はもう、悲しみのものではなく、優しさに包まれた光だった。
    窓の外、月光の海面に赤い光の名残が揺れる。
    セラフィムは小さく微笑んだ。
    「うん……忘れない。マリーダさん」
    そして、夜は静かに、優しいまま流れていった。

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 00:02:49
  • 25二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 08:24:17

    涙腺に悪いスレだ…

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 13:39:27

    今更だけどセラフィムって名前かっこいいな

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 22:11:01

    午後の森。木々の間から光が差し込み、風に葉がさざめいていた。
    セラフィムはひとり、あの日マリーダと出会った場所を歩いていた。
    「マリーダさん、また会えるかな……」つぶやいた声に、木の影がふと動く。
    そこに――ひとりの女の子が立っていた。
    年はセラフィムより少し上、8歳くらい。白いワンピースに、軍服のようなジャケットを羽織っている。
    だが、その表情は冷たく、瞳には怯えの色があった。
    「……だれ?」
    セラフィムが声をかけると、少女は一歩、後ずさる。
    「近づかないで。……私は、人を傷つける」
    セラフィムは首をかしげて、ゆっくり微笑んだ。
    「そんなふうに見えないよ。さみしそう、って思っただけ」
    少女は視線を逸らした。風が吹き抜け、髪が揺れる。
    「私は……戦う運命も失ったのよ」
    その声はかすかに震えていた。
    「戦うために作られたのに、今は何のために生きてるのかもわからない」
    セラフィムはそっと歩み寄り、自分の胸に手を当てた。
    「マリーダさんも、同じこと言ってたよ」
    少女の瞳が動く。
    「でもね、マリーダさんは最後に笑ってた。“戦うためじゃなくて、誰かを想うために生きたい”って」
    静かな沈黙。鳥の声が遠くで響く。
    少女は、少しだけ目を伏せて呟いた。
    「……そんな生き方、私にもできるのかな」
    「できるよ」セラフィムは微笑んだ。
    「だって、わたし、もうあなたとお話してるもん」
    少女の唇が、かすかに震えた。やがて、その表情がほんの少しだけ、柔らかくなる。
    「……あなた、変わってるね」
    「よく言われる!」
    森の中に、やわらかな笑い声が響いた。風が通り抜け、木漏れ日の中で、
    マリーダの声がどこか遠くで囁いた気がした。
    ――「セラ……優しさを、次の誰かへ」

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 07:26:00

    >>27

    ?!誰だ?

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 15:57:55

    保守
    まだまだ気になる

  • 30二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 16:59:23

    🌑キャラクター設定:
    少女の名:リュミエール(Lumiere)
    年齢:8歳前後
    出身:解体された軍系コロニー「マーベラス・ステーション」
    所属:旧地球連邦軍残党のニュータイプ実験計画
    特徴:
    銀灰色の髪と、淡い琥珀色の瞳
    感情を抑えるように訓練されており、表情が乏しい
    “戦う”ことだけを叩き込まれたが、今はその意味を失っている
    周囲に対して警戒心が強く、優しさに慣れていない
    たまに「命令」を幻聴のように聞く癖が残っている

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 21:35:19

    沈みかけた夕陽が、森を金色に染めていた。
    セラフィムとリュミエールは、並んで歩いていた。
    最初は距離をとっていたリュミエールも、今はほんの少しだけ近くにいる。
    「ずっとここにいるの?」
    「うん。……怖くて、外に出られないの。“命令”が、まだ聞こえるから」
    セラフィムは振り返り、そっとリュミエールの手を取った。
    「もう命令なんてないよ。今は、わたしとお話してるだけ」
    リュミエールの瞳がわずかに揺れる。
    「……わたし、戦えなくなったの。力も、感覚も、全部……壊れたの」
    「それでいいんだよ」
    セラフィムは静かに言う。
    「戦えなくなっても、生きてる。それってすごいことだよ」
    リュミエールは黙ったまま、風に吹かれる。その横顔に、初めてほんの少し光が宿った。
    「ねえ、マリーダさんがね、言ってたの」
    セラフィムは空を見上げる。
    「“優しさは、痛みを知る人が持つ力”だって。だから、あなたもきっと、優しい人になれる」
    リュミエールはその言葉を胸の奥で反芻する。
    「優しい……人に?」
    「うん」セラフィムは笑う。
    「もう、“兵士”じゃなくていいんだよ」
    沈黙。そして、リュミエールの頬に初めて小さな涙が流れた。
    「……あったかいのね、涙って」
    「うん。しょっぱいだけじゃないの。悲しいときも、うれしいときも出るよ」
    セラフィムはその手を握り、夕暮れの光の中、二人の影がゆっくりと重なった。
    遠くで、マリーダの声が風に乗って響く。
    ――「そう。あなたは、生きていい子だよ」
    リュミエールの唇が震え、かすかに笑った。

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 22:40:04

    連邦の強化人間か…
    セラフィ厶と会えて良かったね…

  • 33二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 08:08:42

    期待

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 13:10:07

    どういう経緯でここに?

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 21:12:46

    霧のかかる坂道を、セラフィムは小さな手を引いて歩いていた。その隣で、リュミエールは黙ったまま俯いている。手は冷たく、震えていた。ビスト邸の門をくぐると、待っていたように玄関の灯りが点いた。
    「セラ?」
    扉を開けたのはオードリーだった。白いローブを羽織り、髪をほどいたままの姿。その瞳が、リュミエールを見た瞬間――静かに揺れた。
    「……この子は?」
    セラフィムは息を整えながら言った。
    「森で、ひとりでいたの。”命令”が聞こえるって言ってた。放っておけなくて……」
    オードリーは言葉を失い、すぐにその子のそばへしゃがみ込んだ。
    「怖かったでしょう?」
    リュミエールは答えない。ただ、怯えた動物のように肩を震わせていた。そのとき、奥の階段から足音がした。バナージだった。眠たげな顔のまま、二人の前に立ち止まる。
    「セラ……どうした?」
    「この子を、置いていけなかった…。」
    セラフィムはリュミエールの手を強く握る。
    「きっと、マリーダさんが導いてくれたんだと思う」
    バナージは静かに目を細めた。彼はゆっくり膝をつき、リュミエールと目線を合わせた。
    「……君の名前は?」
    しばらく沈黙が続いたあと、小さな声が返る。
    「リュミエール」
    「いい名前だね」
    バナージは穏やかに微笑む。
    「寒かっただろ。中へおいで」
    リュミエールは一瞬、ためらい――それでもセラフィムの手を頼りに、一歩、屋敷の中へ足を踏み入れた。
    暖炉の火が灯る居間には、柔らかな毛布と、温かいミルクの香りがあった。
    オードリーが優しく包み込むように微笑む。
    「もう大丈夫。ここはあなたの敵はいない場所よ」
    リュミエールの肩から力が抜ける。静かに、涙がこぼれた。セラフィムはそっと寄り添い、「ねえ、また笑っていいんだよ」と囁いた。
    バナージは二人の背中を見つめながら、ゆっくりと手を組む。
    その瞳の奥で――マリーダの姿が、微笑んでいる気がした。
    ――「あの子が、私の代わりに未来を救うんだね」
    暖炉の炎がやさしく揺れ、新しい朝が、静かにビスト邸を照らしていった。

  • 36二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 22:51:54

    バナオド夫婦に会えて良かった…

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 08:08:14

    ビスト邸に住んでるんだ
    お幸せに…

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:14:53

    救われろ……救われろ…

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 17:35:04

    暖かい居間で眠りについたセラフィムとリュミエール。火の灯る部屋は穏やかな空気に包まれ、二人は毛布の中で寄り添っていた。
    やがて夢の中で、森の匂いが漂い始める。木々の間に差し込む光は赤く、風に揺れる葉が囁く。
    「セラ……?」リュミエールの声が夢に溶け込む。
    振り向くと、そこには赤い髪の女性、マリーダが立っていた。微笑みは柔らかく、瞳には温かい光が宿っている。
    「二人とも、よくここまで来たわね」
    セラフィムは目を輝かせる。
    「マリーダさん……」
    リュミエールも震える声で応える。マリーダは両手を広げ、森の空気を包み込むように言った。
    「リュミエール、怖がらなくていい。あなたはもう、戦うためだけに生きる子じゃない」
    リュミエールは目を見開き、涙を浮かべた。
    「でも……どうして生きていいのか、わからなかったの」
    マリーダはセラフィムに微笑みかけ、指をリュミエールの肩に置く。
    「優しさを知ること。それが、生きる意味になるのよ」
    「私、優しくなれる?」リュミエールが震える声で訊ねる。
    「ええ。あなたはもう、優しい心を持っている」
    風が森を吹き抜け、赤い光が二人を包み込む。セラフィムは夢の中でも小さく笑った。
    「マリーダさん、ありがとう」
    「ええ、二人の未来のために」
    光が消えると、二人はふと居間で目を覚ます。窓の外には朝日が昇り、外は静かに輝いていた。
    リュミエールはそっとセラフィムの手を握り、小さく呟いた。
    「……ありがとう、セラ。これから、頑張ってみる」
    セラフィムも頷き、二人の間に暖かい静けさが流れた。

  • 40二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 17:38:31

    セラフィムとリュミエールが朝食を摂っている間、バナージとオードリーは書斎で二人きりになった。
    「昨夜のこと、見てたの?」
    オードリーは静かに問いかける。
    バナージは机の上で手を組み、視線を遠くに向けた。
    「セラとリュミエール。あの子たち、夢の中で……マリーダさんの残したものを受け取ってるんだと思う」
    オードリーはゆっくり頷く。
    「マリーダの魂が、二人を導いてくれたのね」
    バナージは溜息をつき、指を組み直した。
    「リュミエール……あの子は戦うためだけに生かされてきた。でも今は、守られる側になれる。セラのおかげで」
    オードリーは手を握り、微笑む。
    「私たちが親としてできることは、ただ安全な場所を用意してあげること。そして、優しさを教えることだけ」
    バナージは静かに頷き、窓の外の朝日を見つめる。
    「……ああ。俺たちはもう、あの子たちの未来を恐れなくていいんだな」
    「ええ。守り、見守ればいい」
    窓の外、光が港と庭を照らす。
    新しい朝。
    そして、セラフィムとリュミエールの未来も、ゆっくりと動き始めた。

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 00:10:21

    いい話だ…

  • 42二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 08:22:09

    保守
    セラとリュミエールの話をまだまだ読みたい

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 13:34:24

    こういうss好き

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 17:37:28

    朝の陽射しが街を照らし、港の波は金色に輝いていた。セラフィムとリュミエールは手をつなぎ、ゆっくりと歩く。
    「外は、広いね……」
    リュミエールが目を丸くして言った。
    「うん。森とは全然ちがう」
    セラフィムも小さく笑う。街の人々が通りを行き交い、子どもたちの声が響く。リュミエールは最初、緊張して周囲を警戒していたが、セラフィムの笑顔に安心して少しずつ歩幅を合わせる。
    港では、古い輸送艇が静かに停泊している。潮の匂いが鼻をくすぐり、カモメが鳴く。
    リュミエールは初めて、港の開放感に胸を打たれた。
    「……空気が、あったかい」
    セラフィムは頷き、目を閉じる。
    「ねえ、リュミエール、手を離してもいい?」
    「……うん」
    二人は少し離れて歩きながらも、互いの存在を感じる。リュミエールは初めて、戦うだけの世界じゃなくても生きていけることを実感した。
    港の波打ち際で、リュミエールがふと立ち止まる。
    「あれ……?」
    視線の先には、セラフィムと自分の心の中が映るような、不思議な光景。波の反射に混ざり、赤い光が微かに揺れている。二人の心に触れるように、マリーダの残した感覚が流れ込んだ。
    セラフィムは小さな手を胸に当てる。
    「……感じる……?」
    リュミエールも頷く。
    「うん……風の音が、なんだか……言葉みたいに聞こえる」
    その瞬間、二人の意識がふわりと広がり、港の小舟や海鳥、街の遠くの人々の気配が、鮮明に伝わる。
    「これは……?」リュミエールが息を飲む。
    「マリーダさんが、少しだけ残してくれた力かも」セラフィムが微笑む。
    「優しさや思いやりも、力になるって、マリーダさんが教えてくれた」
    波の音と風が、二人を優しく包む。小さな覚醒の瞬間。戦うためではなく、人を思いやるために、心の力が芽吹いた。
    リュミエールはゆっくりと微笑む。
    「……怖くない、私。これから、少しずつ歩いてみる」
    セラフィムも手を握り返す。
    「うん、一緒に行こう」
    港の波間に、赤い光がひとつ揺れた。それは、マリーダの魂の残響のようでもあり、二人の未来の希望のようでもあった。

  • 45二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 23:19:22

    仲良くなれて良かったね!

  • 46二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 08:13:54

    百合…!

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 14:05:13

    リュミエールはなぜメガラニカにいたんだろ…

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 15:47:07

    港の賑わいを離れ、ふたりは細い坂道を上っていた。舗装は剥がれ、壁はひび割れ、空気はどこか乾いていた。
    「ここ……なんか雰囲気が違うね…。」
    セラフィムが不安そうに言う。リュミエールは小さく頷き、周囲を見回した。
    「音が、少ない。人の“気配”が重い……」
    路地の奥では、汚れた壁の影に数人の人影があった。セラフィムは無意識に歩を止める。
    そこには、若い女性が地面にうずくまり、男たちが乱暴に言葉を浴びせていた。
    内容は理解できない。けれど――その恐怖と絶望の波は、ニュータイプの感覚を通してまるで痛みのように二人の胸に響いた。
    「……っ!」セラフィムが顔を歪める。
    「やめて……やめてよ……!」
    リュミエールもその場に立ち尽くし、手を胸に当てた。
    「感じる……あの人の心が、壊れそう……」
    彼女の瞳が一瞬、光を帯びる。波紋のように“心の声”が広がった。
    ――「もう、消えたい……」
    その声を感じ取った瞬間、リュミエールの中でかつての自分の記憶が疼いた。
    実験室、命令、そして無力な過去。
    「……同じだ」リュミエールの唇が震える。
    「この人、あの時の私と同じ……“使い捨てられてる”」
    セラフィムが彼女の手を掴んだ。
    「リュミエール!」
    リュミエールは苦しげに目を閉じる。
    その瞬間、周囲の空気が静止したように揺らいだ。見えない力がふっと走り、路地の灯が一瞬、消えて再び点いた。男たちは何かに怯えたように顔を見合わせ、「……なんだ、今の……!」と叫んで走り去っていく。
    残された女性が震える手で顔を上げた。
    セラフィムは駆け寄り、手を伸ばす。
    「大丈夫……? 怖かったね」
    リュミエールも膝をつき、自分でも信じられないような優しい声を出した。
    「もう誰も、あなたを傷つけない」
    女性はかすかに頷き、涙を流した。リュミエールの胸の奥に、マリーダの声が響く。
    ――「痛みを知る者だけが、本当の優しさを持てる」
    リュミエールの目から、静かに涙が落ちた。

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 16:06:02

    夜風が吹く中、二人はゆっくりと歩いていた。
    セラフィムがぽつりと言う。
    「リュミエール、あれ……今の、力なの?」
    「わからない。でも……あの時、“守りたい”って思った」
    リュミエールは手を見つめる。
    震えが止まらない。
    「こんなに強く、誰かを助けたいと思ったのは初めて」
    セラフィムは微笑み、彼女の肩に寄り添った。
    「マリーダさんも、そうだったんだと思う。
     戦う力じゃなくて、守る力を信じてた」
    夜空には、雲の切れ間から星がひとつ瞬いていた。
    それは、二人の中に芽生えた**新しい“絆の力”**を映しているようだった。

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 17:32:22

    夜。
    リュミエールは眠りながら、夢の中に引きずり込まれた。周囲は冷たい光に包まれ、白い壁の部屋が無数に並ぶ。
    そこは——メガラニカの地下実験区画。かつてユニコーン計画のデータを転用し、極秘に再開されていた“第二世代ニュータイプ育成実験”。
    リュミエールはその中の“試験体ナンバー09”。自分の名前さえ、誰にも呼ばれたことがなかった。
    ――「感情の干渉、また拒絶反応」
    ――「対象09、共鳴値が異常。データ隔離を」
    冷たい声と光。腕には電極がつながれ、脳波が記録される。
    隣の部屋では、別の子供たちの泣き声が遠く響く。記憶の中のリュミエールは、感情を持つことを禁じられていた。笑えば罰せられ、泣けば鎮静剤を打たれた。
    ――けれど、ある夜。
    停電。
    照明が落ち、警報が鳴る。
    施設を襲ったのは、地球連邦の内部粛清部隊だった。
    研究主任の「撤収命令」により、”未完成個体”は処分対象にされた。
    リュミエールはその混乱の中で逃げ出す。炎と煙、崩れる研究棟。
    唯一、耳に残った声。
    ――「……生きなさい」
    それは、施設の女性研究員の声だった。リュミエールを密かに保護していた、たった一人の大人。
    彼女は崩落に巻き込まれ、そのまま消息を絶つ。リュミエールはひとり、地下の通路を抜け、地表に出た。
    そこは、メガラニカの外縁、荒廃したコロニー跡地。
    彼女はその後、連邦軍の掃討から逃げ続け、小型ポッドに乗せられて宇宙を漂流。
    漂流ポッドは、偶然地球近傍で大気圏に突入し、森の近くに墜ちた。
    ……そして、その森が、セラフィムがマリーダと出会った場所だった。

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 17:35:12

    夢から目を覚ましたリュミエールは、汗に濡れた額を押さえていた。
    セラフィムが心配そうに覗き込む。
    「大丈夫? 怖い夢見た?」
    リュミエールはかすかに首を振り、ぼんやりと天井を見つめた。
    「……あの時、声がしたの」
    「声?」
    「“生きなさい”って。たぶん、あれが私を助けてくれた」
    セラフィムは静かに頷く。
    「それで、森まで来たんだね」
    リュミエールは小さく微笑む。
    「ううん。本当は……“あなた”に呼ばれた気がしたの。夢の中で、光の中にいたあなたが手を伸ばしてた」
    セラフィムは驚いて目を瞬かせる。
    「わたしが……?」
    リュミエールは頷く。
    「マリーダさんの導きが、あなたを通して私を呼んだんだと思う」
    セラフィムはそっとリュミエールの手を取った。
    「じゃあ、マリーダさんは……まだ、見ててくれてるんだね」
    「うん。私たちが、もう“兵器”じゃなくなるまで」
    窓の外、夜明けの星が瞬く。
    その光の一つが、メガラニカの方角に消えていくように見えた。
    セラフィムは静かに目を閉じる。
    「……マリーダさん、ありがとう」
    リュミエールの胸の奥で、微かにニュータイプの共鳴音が響いた。
    それは、マリーダの“魂の残響”が、今も彼女たちの中に生きている証だった。

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 17:37:28

    厚い防音扉の奥、重苦しい空気が漂っていた。
    楕円形の会議卓の中央に、メガラニカでの“施設爆破事件”の映像が流れている。黒煙、炎、断片的な無線記録。
    議長が冷たい声で言う。
    「“マフティー”の名を再び使った武装組織の存在が確認された。彼らは、ユニコーン計画のデータ継承実験を襲撃したと見られる」
    別の老練な議員が唸るように言葉を継ぐ。
    「つまり、“ニュータイプ研究”がまだ続いていたということか?そしてその情報が、テロリストの手に渡った可能性があると?」
    沈黙。
    データ局長がタブレットを叩き、映像を切り替える。そこには、施設崩壊後の衛星写真。
    瓦礫の中に、一人の少女の姿を映す不鮮明な影があった。
    「こちら、回収不能とされていた試験体。コードネーム“L-09”――現在行方不明です」
    会議室の空気が張り詰める。
    「……生き残りがいるのか」
    「まさか、“共鳴個体”が地上に?」老議員が苦々しい声で呟く。
    「ニュータイプは、もう神話ではない。放っておけば、また“奇跡”が起こる。それを恐れた我々は、何をした? ……殺しただけだ」
    沈黙。誰もその言葉を否定できない。
    やがて、若い官僚が立ち上がる。
    「――目撃情報があります」
    スクリーンに地球地図が映し出される。指で示されたのは、メガラニカ。
    「この付近で“未知の精神波反応”が観測されました。
    ……同時に、“ユニコーンタイプ波形”が微弱ながら再出現しています」
    議長が顔を上げる。
    「まさか……“ユニコーン”の系譜が、まだ残っているのか?」
    報告書の表紙には、
    【バナージ・リンクス — 元ラプラス事変関係者】
    という名が記されていた。

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 22:37:10

    不穏な会話…

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 07:44:08

    バナージの名前…

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 14:21:36

    リュミエールを助けてくれた職員さん…安らかに…

  • 56二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 18:25:31

    🏛️1.新キャラ紹介:連邦情報局調査官
    名前:レオナ・マリス(Leona Maris)
    年齢:28歳
    所属:地球連邦情報局・特別監察課(通称「灰色監察官」)
    特徴:銀灰色の髪をまとめ、無表情で冷静。
    信念:「ニュータイプは制御されるべき現象」
    彼女は1年前にマフティー動乱に巻き込まれた家族を失っており、
    「ニュータイプの奇跡」を信じない現実主義者。
    だが同時に、バナージ・リンクスの存在を“矛盾そのもの”として興味を抱く人物。

  • 57二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 18:26:58

    郊外の小さな住宅地。休日の午後、セラフィムは庭で花を摘んでいる。
    そこに、黒塗りの車が静かに止まった。スーツ姿の男女が降り立ち、その中の一人――レオナ・マリスが近づく。
    「バナージ・リンクス氏ですね?」
    玄関から出てきたバナージが、一瞬で警戒を見せる。
    「……何のご用です?」
    レオナは微笑まないまま、IDを提示する。
    「地球連邦情報局・特別監察課。先月発生した“メガラニカ実験施設事件”に関する聞き取りです」
    オードリーがセラを抱き寄せながら出てくる。
    「聞き取り……? 私たちが、何の関係が?」
    レオナは静かに彼女を見つめる。
    「あなた方の近辺で、通常では説明できない精神波反応が観測されています。そして――ユニコーン・ガンダムと同系の波形です」
    空気が一瞬止まった。オードリーの指が震える。バナージは、あえて平静を装いながら答える。
    「……今は、ただの父親です」
    レオナは視線をセラフィムに向ける。
    「そうでしょうか。……お嬢さん、何か見たことはありませんか? 夜に、光や声を」
    セラフィムは何も言えず、リュミエールがわずかに前へ出ようとする。その瞬間、バナージが手を伸ばして制止した。
    「――帰ってください」
    扉が閉まる。車が去ったあと、沈黙が落ちた。

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 18:28:51

    その夜。バナージ、オードリー、そしてリディがテーブルを囲んでいた。
    リディが低い声で言う。
    「連邦の動きが早すぎる。情報局が動いたってことは、裏で“ニュータイプ管理法”だとか、マンハンターが復活する可能性がある」
    オードリーは唇を噛む。
    「また、同じ過ちを……」
    バナージがゆっくり頷く。
    「セラと……リュミエールを守るために、しばらく隠れよう。ネェル・アーガマの旧クルーに連絡する。安全な場所を見つけられるはず」
    リディが立ち上がる。
    「俺も動く。今の連邦は“恐れ”で政策を決める。あの子たちを、データや兵器の対象にさせるわけにはいかない」
    窓の外、夜風が吹く。セラフィムとリュミエールは部屋の隅で眠っていた。二人の手が自然と重なり、淡い光が小さく瞬く。
    ――その共鳴が、遠く離れたジュネーブの観測装置に、再び“ユニコーン波形”として記録される。

  • 59二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 23:32:59

    盛り上がってまいりました!!

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 08:19:04

    期待

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 13:40:52

    生き残れ生き残れ…

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 16:24:16
  • 63二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 23:04:47

    ええのお

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 23:13:44

    >>62

    うおおおおお!!!

    面白いです!

    2人のNT力が強すぎぃ

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 08:16:23

    朝保守

  • 66二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 15:52:00

    リディかっこいい!!

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 22:45:11

    ハイドラ…Wにハイドラガンダムがいたな…

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:34:02

    ハイドラシリーズに関しては、エクシアダークマターを想像してもらえたらいい

  • 69二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 14:11:55

    >>68

    これの編隊って想像したらかっこいいな

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 21:46:47

    「セラ、私決めた。」
    「ん?何を?」

    「私、私みたいな、強化人間の子たちを助けて、その子たち全員と仲良くなれるパイロットになりたい!」
    「!……うん…!かっこいいよリュミエール!」
    「セラは?」
    「私は……そんなリュミエールを支えられる人になりたい!」
    「じゃあ、どっちが先に夢を叶えられるか勝負しよ!」
    「ええ〜!?
    も〜、分かったよ!支える準備して待ってるからね〜?」
    「何を〜!」
    「わあ!くすぐったいよ〜!」

    「「あははは!」」


    「未来は、こうやって紡がれるのね…。バナージ。」
    「ああ、それを、俺たちが少しでも支えてあげなきゃね。」
    「ええ。」

  • 71二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 00:00:49

    なんですかこの希望に溢れたssは…

  • 72二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 08:35:11

    朝保守

  • 73二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:08:57

    期待

  • 74二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 22:39:52

    2人はどこへいく…?

  • 75二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 01:22:31

    区切りよさそうだしここでおしまい?

  • 76二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 08:32:11

    朝保守

  • 77125/11/02(日) 08:34:35

    >>75

    はい。いったんここで終わりです。また機会があったり、新しい話を作りたいときにはスレを立てます!

    皆さんありがとうございました!

  • 78二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 08:50:54


    面白かったよ!ー

  • 79二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 13:28:13

    セラフィムとリュミエールの百合が良かったです!!

  • 80二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 21:35:44

    尊いssをありがとう!

オススメ

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