- 1二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:21:50
- 2二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:26:27
役者として規則正しい生活を心掛けているけど、今日はお昼前に目を覚ました。暖房の効いたホテルの一室はそのまま寝ちゃった私を冷やさずに、備え付けの加湿器で乾燥の対策までしていて、それもこれも隣で寝ていたはずの彼がしてくれたことだった。
「起きたか」
コーヒーの香りと共に部屋に戻ってくる。
「う……おはよう、アクアくん」
大きな窓から差し込む明かりが気になって、布団を深く被り直した。
「身体の調子は?」
「……だいじょうぶ」
気怠い身体と違和感が残る下腹部も含めて答える。
「無理はしなくていいからな。あっちには夜合流する」
「うん、ありがと」 - 3二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:28:54
ルビーちゃんたちはMV撮影の外ロケで朝早くから出発することになっていて、昨日の今日で心配だけど社長さんもついてるから平気だとアクアくんは言っていた。日程に限りがあるから仕方ないけど、アイドルって大変だなぁ。
窓際の椅子に腰を下ろしてコーヒーを飲み始める彼と、布団を被ったまま動けないでいる私。
「二度寝?」
「いや! そうじゃないんだけど……その……」
「ん、ああ。明るいと恥ずかしいってやつか」
「うぅ……はい……」
もうぜんぶ見られているし、そういうこともしちゃったんだけど、部屋はずっと暗かったから……というかなんで君はそんな冷静なの。 - 4二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:31:06
「席外すか」
「いや、いいよ。アクアくんも疲れてるのに……服、着るから少しの間こっち見ないでくれたら」
「衣擦れの音だけってのもそれはそれで想像力をかき立てられてエロいけどな」
「なんで具体的に言うの!」
まったくもう。とは思いつつ、窓の外を眺めてくれている間にベッド横に脱ぎ捨てられた下着を拾い上げる。私にも男の子のすぐ側で下着を着ける日が来るなんて……。
ちらちらと彼の横顔を覗いてみる。
整った目鼻立ちに柔らかい自然光が差すと、とにかく絵になる顔だなぁと改めて思った。これが私のカレシ。本当の彼氏になったんだよね。うれしいな。私ってこんなにもアクアくんのこと好きだったんだな……それはそれとして、そこまで平然とそっぽ向かれてるとなんだか複雑で。 - 5二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:33:15
「アクアくんってさ……あ、もうこっち向いていいよ」
「なんだ」
昨日と同じ服を着て、ベッドの上で膝を抱える。
「初めて……じゃないよね?」
「……なにが」
「えっちするの」
てん、てん、てん。
「いや。初めて……だけど?」
どこかで見たような顔ですっとぼけた。 - 6二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:36:19
「ぜったい嘘! 部屋に着いてからの流れとか、服の脱がし方とか、触り方も……とにかく色々慣れてたよね!?」
「いいかあかね。男子高校生ってのは常にエロいこと考えてるもんだ」
「うん」
「俺も例に漏れず、イメージトレーニングに励んでたわけで……」
「だとしてもだよ! 普通ならもっと緊張して失敗することだってあるはずでしょ! なのにアクアくんはずっとスマートで……初めては痛いって聞いてたのに全然痛くなかったし、むしろ……もうばか!」
「気持ちよかったならよかった」
「そういうところがだよ!」 - 7二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:40:56
「……まぁ、あかねも初めてが上手くいかなかったり、痛いだけの苦い思い出になるよりかはいいだろ」
「私は……二人が初めてならそんなこともあったねって笑い合える日が来ると思うけどな」
「……それもそうだな。よし、そろそろ昼飯でも食いに行くか、あかねも腹減っただろ」
「まだ質問の答え聞いてないよ?」
話題を逸らしてから自然と流してくる。
私の彼氏、口が上手いなぁ。 - 8二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:43:57
「別に気にしないよ。ただ、もし私と付き合ってる間にあったのなら……それは嫌だなって」
たとえビジネスの彼氏彼女だったとしても浮気はよくないよ。
「それはない。約束する」
「じゃあ誰?」
「めちゃくちゃ気にしてるじゃねぇか」
「気にするよ! 初めての彼氏なんだよ! 気にしない女の子いないって!」
やっぱりあったとなれば語気が荒くなって、問い詰めたら渋々と頷いた。
「……分かった。まぁ、あれだ。俺には金が必要で、それが手っ取り早い手段だったってことだ」
簡潔だけど事情を知っている私には十分な説明だった。
「それじゃあ大人の女性と……?」
「若くて顔が良いってのはそれだけで需要があるからな」
役者の世界でもそれは変わらなくて、そういう大人がいることも知ってる。 - 9二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:50:24
「そっか……そうだったんだ……ごめんね、嫌なこと聞いちゃって」
「いや、いい。あかねの気持ちも分かる。だから一応言っておくが」
彼は席を立って、ベッドに座る私に身を寄せると軽いキスをしてから続きを言った。
「彼女としたのはあかねが初めてだ」
「うん……信じるよ」
もう何回目のキスかは分からない。
それくらい昨日は愛してもらったから。
なんだけど。
アクアくん、本当に女の子の扱い慣れてるなぁ……。
はぁ、私の彼氏、女の子の敵かも。
でも私だけは。
「それじゃ飯行くか。さすがに腹減った」
「あ、うん。……アクアくん、好きだよ」
「どうした急に」
「ううん、なんか言いたくなっただけ。私もお腹空いたー、なに食べよっかな」
君の味方だからね。 - 10二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 11:52:32
終わりです。
本編はメンゴ先生が描いてくれると信じて……!
ありがとうございました。