【パロ・閲覧注意】ゆうえいぐらし!

  • 1スレ主25/10/25(土) 13:09:35

    学園生活部…それは雄英高校の設備を使って学校内で寝泊まりしよう、という部活。寮とはまた違った生活が楽しめる。

    これは、そんな学園生活部の部員が活動を楽しみながらヒーローを目指す物語だ。


    パロディ元

    『がっこうぐらし!』

    がっこうぐらし!│漫画の殿堂・芳文社芳文社発行のがっこうぐらし!紹介ページ。houbunsha.co.jp

    部員一人目(部員はA組からダイスで選定)

    主な役割は活動の企画発案!覚めることのない楽しい夢を見ている青春真っ盛りな高校生だ!

    dice1d20=1 (1)


    部員二人目

    学園生活部の切り込み隊長!未知の世界に真っ先に飛び込んでいくタイプの高校生だ!

    dice1d20=5 (5)


    部員三人目

    学園生活部の部長!部の備品の管理などが主な役割。頼りになるタイプの高校生だ!

    dice1d20=20 (20)


    顧問

    >>2>>4

    安価のちダイスで決めます。雄英教師陣の中から選んでください。


    ※時系列は曖昧。少なくとも寮制後

    ※原作のストーリーからは乖離した展開になるかもしれませんが、ネタバレ等は無しでお願いします。

    ※見切り発車スレです。今後の展開も何も決めていません。最悪ダイスで全部決めます。

  • 2二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:11:16

    ワクワク

  • 3二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:17:06

    プレゼントマイク
    あんなやかましいやつが唐突に消えて静寂が訪れるの最高にゾッとすると思うの

  • 4二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:18:22

    オールマイト

  • 5スレ主25/10/25(土) 13:20:26

    安価ズレたのでもう一人先着で…

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:22:18

    相澤先生

  • 7スレ主25/10/25(土) 13:22:56

    顧問

    1.プレゼント・マイク

    2.オールマイト

    3.相澤先生

    dice1d3=1 (1)

  • 8スレ主25/10/25(土) 13:27:55

    最近学校が好きだ
    特に雄英はすごい!
    USJ(ウソの災害や事故ルーム)は本当のUSJのような賑やかさ!
    食堂はランチラッシュが安くて美味しい食事を出してくれる。僕はまだ食べたことないけどね☆
    他にも充実したトレーニング場に施設…
    何でもあってまるで一つの国みたいだと思わない?
    こんな変な建物 ほかにないだろう?
    中でも僕が好きなのは…☆

  • 9二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:31:10

    期待

  • 10スレ主25/10/25(土) 13:33:10

    -学園生活部-
    麗日「あ!青山くん!やっほー!」
    青山「ボンジュール麗日さん☆…ところでなぜシャベルを…」
    麗日「ふふふ…さては知らないなー?シャベルってとっても強いんだよ!叩いてよし切ってよし!土を掘り返してもよし!」
    青山「ううん…おかしな使い方が二つもあったような…」
    麗日「あ、そうそう!今八百万さんが屋上にいるんよね。園芸部の手伝いだとかで…青山くんも一緒に行かん?」
    青山「ウィ☆そういうことなら一緒に行こうじゃないか!」
    麗日「決定だね!じゃ行こっか!」

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 13:40:49

    初っ端から人選ダイス面白くていいな

  • 12スレ主25/10/25(土) 13:41:34

    -屋上-
    青山「いつ来てもここは賑わってるね☆」
    園芸部「あ、学園生活部の!いつもどうもー!あとは任せていいかな?」
    青山「もちろん☆この僕にお任せあれ、さ!」
    麗日「お世話になりますー!」
    園芸部「じゃ、よろしくねー!」

    八百万「あら、お二人ともいらしてたんですの?」
    麗日「八百万さん!手伝いにきたよー!」
    八百万「助かりますわ!それでは園芸部のお手伝いをみんなで進めて参りましょう!」
    青山「ふ…今日も空が僕のように美しい…☆」
    麗日「ほらほらやるよ青山くん!」
    青山「あぁっ!引っ張らないでくれよ麗日さん!」

    -しばらくして…-
    青山「ジーザス!土いじりのせいで服が汚れてしまった…☆これでは僕の輝きが損なわれてしまう!!」
    麗日「おー…そりゃあかんわー…」
    八百万「でしたら着替えて参りませんとね。」
    青山「そうだね!いち早く輝きを取り戻してくるよ!じゃ、アデュー!!」
    (足早に屋上を去る青山)
    八百万「…」
    麗日「…一人で大丈夫かなぁ。」
    八百万「心配しすぎですわ。マイク先生もいらっしゃいますもの。」
    麗日「うぅん、でも青山くんってどこか危なっかしいから…」

  • 13スレ主25/10/25(土) 13:52:05

    最近学校が好きだ
    何でもあって
    まるで一つの国みたい

    -1-A教室-
    「お、青山どうした?」

    青山「忘れ物さ☆僕としたことが課題を置きっぱなしにしてしまってね…!」

    青山「これかい?さっき屋上で野菜に愛を注いでいたところさ☆」

    青山「おや…窓を開けたままにしたのは誰だいまったく…仕方ない、僕が閉めよう☆」


    青山は窓枠に手をかけるとそれをカラカラと閉めていった。
    開いた窓から吹きすさぶ隙間風は少しも勢いを弱めることなく教室を冷まし続ける。激動の夏はとうに過ぎた。
    冷えてきた空気は青山のキラキラとした髪を撫でつけるが、彼は少しもそれに気が付いた様子を見せず満足げにその場を去った。

    一枚雄英の頑丈な壁を挟んだ先で、瓦礫の中。無数の人影が揺らめいては割れた窓ガラスを見上げていた。

  • 14スレ主25/10/25(土) 13:56:00

    人救けは嫌いじゃない。
    でも、雄英に入った動機はわりと不純だ。
    ヒーローになって、お金が稼ぎたかったんだ。
    そして、両親に楽をさせてあげたかった。
    初めはそんな動機だったけど…
    雄英に入ってから、追いかけたい人ができた。

  • 15スレ主25/10/25(土) 14:07:27

    -学園生活部-
    マイク「グッモーニン!キラキラボーイ!」
    青山「ボンジュール☆ムシュープレゼント・マイク!」
    麗日「おはよー!」
    八百万「お二人ともおはようございますわ。」
    青山「今日はムシューマイクも食事を?」
    マイク「美味しそうな匂いに腹の虫がシャウトしちまったからな!!」
    麗日「今日はカレーだよ青山くん!!早く食べよ食べよっ!」
    八百万「ふふ、そうですわね。さ、皆さん席についてくださいまし。」

    麗日「それじゃあ…いっただきまーす!!」
    「「「いただきまーす!」」」

    麗日「おいしかったー!おかわりない?」
    青山「全く…早いな君は☆コスチュームが入らなくなるんじゃないかい?」
    麗日「大丈夫大丈夫!なんたっていっつも雑用で力仕事してるしっ!」
    マイク「んー?雑用ー?今そんなおたよりをくれたのはどこの…」
    八百万「麗日さん、学園生活部心得第二条!」
    麗日「えーと…学園生活部は施設を借りるにあたり必ずその恩に報いるべし!」
    八百万「その通りですわ。雑用、などと言ってはいけませんのよ。」
    麗日「はーい…」
    マイク「んー?????俺一応顧問なんだけど?扱いがキビー!!」

  • 16スレ主25/10/25(土) 14:17:44

    青山「それじゃあ僕はお先に☆」
    マイク「お、んじゃあ俺も行こっかね!」
    麗日&八百万「いってらっしゃーい!」

    麗日「…よし!じゃあ麗日お茶子、朝の見回り行ってきます!」
    八百万「ええ、いってらっしゃい。お気をつけてくださいね。」

    (扉が閉まる音)

    麗日「…よし、行くか。」

    麗日の進んだ先には机と有刺鉄線で出来上がったバリケードがあった。
    異状が無い事を確認すると麗日は自身を浮かしバリケードの向こうを覗き込んだ。

    麗日「うわっ」

    長い髪の、女子高生だったものだろうか。全身が黒く変色し眼孔は開いたまま、手足を弛緩させ力なく麗日に向かって歩いている。

    麗日「(…いけるかな。よし…)」

    麗日「解除!」

    無重力を解除した麗日はその勢いのままにそれの背後を取った。
    それは緩慢な動きで後ろを振りかえろうとするが、それよりも麗日が動く速さの方が上回った。

    麗日「ガンヘッドマーシャルアーツ…シャベルバージョン!!」

    シャベルでそれに一撃を食らわせ転倒させた麗日はそれにマウントを取ると、シャベルを一思いに振りかざした。

    麗日「…おやすみなさい。」

  • 17スレ主25/10/25(土) 14:20:47

    部員四人目合流まではとりあえず進めたいなぁ。


    1.A組 dice1d17=14 (14)

    2.B組 dice1d20=18 (18)

    3.ねじれ先輩

    dice1d3=2 (2)

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 14:26:07

    お…物間かな…?違ったらごめん
    すごい人選ここまで全部ぴったりすぎる

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 14:33:08

    青山懐かしの白書の雰囲気がするな
    エミュ難しいだろうけど頑張れ

  • 20スレ主25/10/25(土) 14:35:09

    ガタガタ…ドンドン!!ドンドンドンドン!!ガリッ…ガリガリガリッ!!!!

    勢いよく叩かれる扉を、青山、八百万、プレゼント・マイクの三名が必死で抑えている。
    それを見ていた麗日の瞳にゆらりと立ち上がる人の影が差す。

    麗日「あれ…ものま、くん?」

    八百万「っ、違いますわ!よく見てくださいっ、麗日さん!」
    麗日「八百万さん何言っとんの。この人は…」

    そう反論を返す麗日に対し、人影は急にその動きのスピードを上げて襲い掛かる。

    麗日「うわっ!?」

    間一髪で避けた麗日だったがその拍子に尻もちをついてしまい、その隙を逃さんとばかりに影は歩みを進める。
    遠距離攻撃が可能な青山も、マイクも扉を抑えるのに精一杯で麗日の方を向く余裕がない。
    絶体絶命。追い詰められた麗日の手の先に、固い何かが触れる。

    麗日「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

    咄嗟に振り回したそれがなにかだなんて、彼女は考えもしていなかった。
    ただ、柔らかい肉を貫く感触と、頬に飛び散ったまだ生温い液体の感触だけが後を追うようにやってきた。


    麗日「ッ!?」
    学園生活部の寝室に敷かれた八百万謹製のベッドの上で麗日は目を覚ます。
    彼女が荒く息を吐く音だけが室内に染みわたる。
    なんとか息を落ち着かせた彼女は慣れ親しんだシャベルの取っ手の感触を確かめるように手に握り、目を閉じた。

    あの時からずっと、彼女がシャベルを手放したことはない。

  • 21スレ主25/10/25(土) 14:36:59

    >>18

    もしや部員四人目と誤認させてしまいましたでしょうか?

    申し訳ない、部員は全員A組で進めるつもりです。B組も何かの折でちょくちょく出したいですね。



    >>19

    青山くんのエミュ難易度高いですよね。…がんばります!!

  • 22スレ主25/10/25(土) 14:41:52

    -肝試し編は省略とします。八百万さんが居るし…-

    これはたぶん遺書だ
    俺は罪を犯した
    いつかこれを読む人に
    そのことを知ってほしい
    あの生徒のことだ
    青山優雅の時間が止まったのは
    俺のせいだ

    マイク「…ふー…」

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 14:43:46

    これ他のA組生徒はもしかして…

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 14:46:55

    >>21

    青山は美しいよりも輝き、煌めき、眩(まばゆ)いと言った

    キラキラしたものに変換したらよりらしくなるかもしれない(コソ)

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 14:50:55

    >>21

    4人目ダイスかと思った、全員A組か!アニメも原作も好きだから楽しみ ヤオモモいるのが強い

    1だったら葉隠ちゃんだったのかな…?これアレ化した人の個性因子はどうなってるんだろう 透明なままだと厄介だな

  • 26スレ主25/10/25(土) 14:56:01

    -学園生活部-
    青山「…雨が降っているね☆」
    麗日「え、ほんと!?」
    青山「間違いないよ。外にいた皆が雨宿りしてるからね☆」
    麗日「うー…また雨かぁ…あ!!」
    麗日「洗濯物!!」
    -屋上-
    (畑の一角。土に刺さった十字架の形をしたそれに八百万が祈りを捧げている)
    八百万「…あら、また雨ですわ。そろそろ節電しないと…
    麗日「八百万さん!洗濯物大丈夫?」
    八百万「ナイスタイミングですわ!手伝ってくださいませんか?」
    麗日「もっちろん!」
    青山「僕はいつも通り自分の分だけ入れるから君たちは気にせずやってくれよ☆」
    麗日「いつも気を遣わせちゃってごめんねー。」
    八百万「濡れてしまう前に手早く済ませてしまいましょうか。」
    -学園生活部-
    放送「お昼になりました。午後の授業のためにもしっかり栄養をとりましょう」
    (皿に盛られた山盛りのカンパン)
    麗日「ぱさぱさするー…これはこれで美味しいけど…」
    マイク「今日は全校停電だからなっ!」
    青山「いっそのことキャンプでもどうだい?」
    麗日&八百万「キャンプ?」
    八百万「…いえ、いいかもしれませんわ。それなら電気を使いませんもの。」
    マイク「That's right!いいじゃねぇかキャンプ!」
    麗日「キャンプかーテントあったかなぁ。」
    八百万「3人分程度ならわたくしがお作りしますわ!」
    マイク「ちょっ俺!俺!」
    青山「ムシューマイク、よろしければ僕のテントにご招待しましょうか☆」
    八百万「まぁ…!すみません、わたくしそんなつもりじゃ…」
    マイク「HAHA!ジョークだゼ、ジョーク!見回りもあるしな!」

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 14:56:22

    がっこうぐらしよく知らんけど内通云々も丸ごと忘れてんならそりゃ前より楽しいよな…
    スレ主のエミュ好きだ、応援してるぜ

  • 28スレ主25/10/25(土) 14:58:20

    >>24

    ありがたい!!!!青山くんエミュアドバイスいつでも募集中です!ついでにマイク先生もよくわかってません!!!

  • 29スレ主25/10/25(土) 15:05:35

    時間の流れは止まらない
    いつかもしあの三人が
    この学校から笑顔で出られるのなら
    そのためなら俺はどうなってもいい
    あいつらを元気に送り出すこと
    俺はそのために生きている

    …そうだろ、なぁ……

    -夜 学園生活部-
    青山「く…なんという事態…猛烈に、トイレに行きたい…!!」
    麗日「わー!!それは大変!緊急事態だよ八百万さん!!」
    八百万「それはいけませんわ!では三人で向かいましょう。学園生活部心得第三条!」
    麗日「第三条、夜間の行動は単独を慎み常に複数で連帯すべし!」
    八百万「その通りですわ!夜中一人でうろついていると顧問の責任問題になるそうですの。」
    麗日「マイク先生も大変やねぇ。」

  • 30スレ主25/10/25(土) 15:11:53

    青山「すぐ済ませてくるから☆」
    麗日「いってらっしゃーい!気を付けてね!」
    青山「過保護☆僕なら大丈夫さ☆幽霊が襲ってこようとも僕の煌めきの前には勝てっこないからね!」
    麗日「うんそうやねー。いってらっしゃーい。」

    -しばらくして-
    麗日「…雨宿りってこれのことか…!」

    男子トイレの前で待っていた麗日の周りをかつて生徒であったそれらが取り囲む。
    シャベルを強く握り直した麗日が必死に対処していくも、その数の多さに彼女は次第に疲弊していく。
    そして、一つの判断を麗日は下した。

    麗日「八百万さん、無理だ!」

    八百万「~~~ッ!」

    その言葉を聞いた八百万は麗日から少し離れた場所の部屋の扉をそっと閉めた。

    麗日「はは…いいんだよね、これで…」

  • 31スレ主25/10/25(土) 15:18:05

    廊下の壁にもたれかかるようにして麗日は力なく項垂れる。
    その周りを取り囲むようにそれらがゆっくり、またゆっくりと距離を縮めていく。

    そんな時だ。

    「下校の時刻になりました」

    麗日「……!」

    「まだ残っている生徒は速やかに下校してください」
    「下校の時刻になりました…」

    放送を聞いたそれらは一斉に方向を変え、のそりのそりと麗日のいる方向とは全くの検討違いの方向へ進みだした。
    シャベルを掴んだ麗日の目の前が、勢いよく噴射された水によって遮られる。

    麗日「八百万さん!?」
    八百万「麗日さん!ご無事でしたか!?」

    消火器を手に現れた八百万は生徒の形をしたそれに容赦なく水を浴びせかける。一人残らずそれは麗日と八百万を残して下の階へと消えていった。

    八百万「二階に放送を流しましたの。誘導できたみたいですわね。」
    麗日「そっか…」
    八百万「青山さんは…」
    麗日「トイレにいるはず…」
    八百万「ふぅ…そうでしたか…」

  • 32スレ主25/10/25(土) 15:25:51

    麗日「青山くーん?はよでてこんと置いてくよー?」

    麗日と八百万が格闘していたそのころ、青山は外から聞こえてくる不穏な音に怯え個室の中でただ震えていた。

    いつの間にか現れたプレゼント・マイクが様子を見てくると言い残し出ていったのを待っていたところに麗日の声がしたのだった。

    青山「…ごめん、待たせたね。…マイク先生は…」
    麗日「え、マイク先生?」
    青山「変な音がすると言ったら様子を見に行ってくれたんだ。会ってないのかい?」
    麗日「そっか…すれ違っちゃったのかな。」
    青山「早くしないと先生……あれ?早くしないと…なんだっけ…」

    ズキン、と青山の頭に激痛が走る。

    まだ
    まだ、先生が外に
    早くしないと…

    青山「あ、れ…」

    なんだろう

    すごく大切なことを…

    なんだっけ…

  • 33スレ主25/10/25(土) 15:32:19

    -学園生活部-
    その後、目を覚ました青山と三人で食事を摂っていると、物資を外に調達しに行かねばならないという話が持ち上がった。
    すぐには外に出られないということで今日の活動は外に手紙を出してみるというのはどうか、という話になったのであった…

    各々書いた手紙を八百万が作り出した風船に括り付けて空へ飛ばす。

    「ぼくたちは元気です」

    …という意味のフランス語が書かれた手紙が空高く舞い上がっていった…
    そのメッセージはいずれ誰かに届くだろう。それは見知らぬ人物かもしれないし、あるいは…

    第一章 終わり

  • 34スレ主25/10/25(土) 15:34:59

    都合上展開をいくらか端折ることがあります。ご留意ください。

    第二章 始まり


    部員四人目

    学園生活部の切り込み隊員その2!訳あって学校の外でサバイバルをしていた。

    dice1d17=3 (3) (部員三人の分は詰める)

  • 35スレ主25/10/25(土) 15:36:19

    飯田くんか。A組以外に行動を共にしているイメージ無いからA組から同行者決め


    同行者

    dice1d16=16 (16)

  • 36スレ主25/10/25(土) 15:40:38

    飯田くん建物に籠ったりしないよなぁ…


    今どこに?

    1.ショッピングモールで救助者捜索中(概ね原作通り)

    2.ショッピングモールを拠点に、周辺の探索を行っている

    3.雄英に向かっている

    dice1d3=1 (1)


    ???

    dice1d2=1 (1) (1なら…)

  • 37スレ主25/10/25(土) 15:47:43

    ×救助者 〇要救助者

    学園生活部は「遠足」に出かけることを決めた。
    物資供給も兼ねての遠足だ。八百万の個性に頼り切るのは危険だし、生存者もいるかもしれない。
    ヒーロー科である彼女らには安全圏で自分たちだけ籠っているというのは我慢ならなかったということだろう。

    -教室-
    麗日「玄関からじゃ無理そうやね。」
    八百万「三階からまっすぐ降りても駐車場まではかなりの距離がありますわ。」
    麗日「私なら浮いていけるから大丈夫やって。推進力はこの間八百万さんが作ってくれた消火器を使えばいいし。」
    八百万「そうですわね…でも、くれぐれも気を付けてくださいね。」
    麗日「うん。任せてよ!」

  • 38スレ主25/10/25(土) 15:52:02

    雄英校舎の柱の陰。じっと息をひそめて隠れる八百万の耳に豪快なエンジン音とブレーキ音が聞こえたかと思えば颯爽と車に乗って現れた麗日が窓から顔を出した。

    麗日「はよ乗って!」

    こうして学園生活部三人を乗せた車は勢いよく発進した。

    見覚えがあるような、ないような、そんな人の形をしたものを引きずり飛ばしながら。

    「それじゃ遠足に…しゅっぱぁつ!!」

  • 39スレ主25/10/25(土) 16:02:11

    -夜 路上-
    一日中車を飛ばしたものの、街はあちらこちらが荒れ果て道が塞がってしまっていた。
    結局夜になっても目的地に着くことは叶わず三人は見張りを交代しながら車中泊をすることに決めたのであった…

    八百万「おつかれさまですわ。」
    麗日「!あ、交代?」
    八百万「いいえ、まだ。様子を見に来ただけですの。」
    (しばらく二人で静かに紅茶をすする)
    麗日「…もしかして、って思ったんよね。」
    麗日「あんなことになっとるのは学校の中だけで外じゃもう救助が始まっとるんやないか、みたいな…」
    八百万「そうですわね…わたくしもちょっと思ってましたわ。」
    麗日「ヘリがさ…ばばー!って飛んできて、よくがんばったなーみたいな…」
    八百万「ふふ、いいですわね。そういうの…」
    麗日「まぁでもそんなに甘くないよね…」
    八百万「まだわかりませんわよ。」
    麗日「?」
    八百万「ヒーローの方々もきっと頑張ってらっしゃいますのよ。今は東京で救出作戦をやっているとか。」
    麗日「そっかぁ。だったら救出した人を集めてバリケードを作って遠征隊も編成して…って、色々やらないかんよねぇ。そりゃあヒーローもここまでこれないか。」
    八百万「ええ。それに雄英ですもの。まさかヒーローの手が不足しているとは誰も思いませんわ。」
    麗日「早く誰か来ないかなぁ…」

  • 40スレ主25/10/25(土) 16:07:20

    青山「蜜月っ!!!」
    麗日「うわぁっ、青山くん!?」
    八百万「青山さん!?」
    青山「二人で内緒話かい?ヒーローがどうとか聞こえたけれど…」
    麗日「え、うん、ちょっとね…」
    青山「ヒーローが来るとか来ないとか言っていたけれど…君たち僕らが誰か忘れてしまったのかい?」
    麗日「えっ、忘れてなんかないって!私は雄英高校ヒーロー…科…の……」
    八百万「…そう、でしたわね。私たちはとうにヒーローを待つ立場ではありませんでしたわ。…なりましょう。私達で、ヒーローに!!」
    青山「学園生活部改め学園ヒーロー部ってところかな☆!」
    麗日「かっこいい!いいなぁ学園ヒーロー部!」
    八百万「ふふ、そうですわね。……誰か、居るといいのですけど…」

  • 41スレ主25/10/25(土) 16:14:10

    -ショッピングモール前-
    あれからさらに車を使い三人はショッピングモールへとたどり着いた。
    八百万が拾い上げたパンフレットにはここでイベントが行われるという内容の記述がされていた。

    -ショッピングモール内-
    (ケミカルライトを振り放り投げる八百万)
    八百万「これは便利そうですわね。作れるようにしておきませんと…」

    ケミカルライトの光に寄せ付けられるように客であったものたちがよたよたと集まっていく。

    麗日「学校でも使えそうやね。」

    周囲の探索に出ていた麗日がその光景を見て同意する。かれらの注意をいかに逸らせるかは彼女らにとっては至上命題であった。

    八百万「それで…どうでしたか?」
    麗日「下はだめやね。臭いがひどいし、あれで一杯だった。」
    八百万「生鮮食品ですものね…」
    麗日「そのへんで缶詰とか詰めてきたけどね!」
    八百万「あとは上の階ですわね…どなたかいらっしゃるかもしれませんし。」
    麗日「…いるといいよね。」

  • 42スレ主25/10/25(土) 16:23:15

    道中防犯ブザーを入手した三人はさらにお店を見て回っていく。
    一店舗一店舗丁寧に、逃げ遅れた人が居ないか、生存者は居ないか。

    そうして、三人は5階まで上がった。

    麗日「あと居るとするならここやけど…」

    5階入り口は他の階同様に誰でも入れるようになっていた。バリケードなどは一切設置されていない。
    人が籠城しているのならバリケードの一つや二つ設置されていてもおかしくはないがしかし、それが無い。
    だからと言ってここで踵を返すような二人ではなかった。
    それに…

    八百万「この辺り…不自然なほどに綺麗ですわね。」
    麗日「うん。ゴミも、瓦礫も散乱しとらん。誰かが来て掃除してったんやろうね。」
    八百万「…探索する価値は十分にありますわ。要救助者でなくとも、もしかしたらこちら側の人間の可能性もありますもの。」
    青山「5階の従業員は他の階に比べて優秀みたいだね☆?」

  • 43スレ主25/10/25(土) 16:34:32

    授業がいつもより早く終わる土曜日の事だった。
    この日は真っすぐ寮に帰るのではなく外に買い物に出かける約束を取り付けていた。
    前日に寮の共有スペースで恥じらいもなく猥褻な話題を展開していた峰田くんに注意をしたところ、
    「わかったぜオイラ…飯田がそんなに目くじら立てんのはお前がエロ知識皆無のカマトト坊やだからじゃねぇか!?明日オイラについてこいよ飯田…オトナの世界ってのを見せてやんぜ…」
    と言われやや強引であったが約束を取り交わしたのだ。
    はじめは丁重に断ろうと思ったのだが、実態を知らずに注意だけするのはいかがなものだろうかと思い直し、とりあえず行くだけ行くことにしようと放課後、二人で出かけることを決めた。

    峰田くんの手により大型ショッピングモールの近くにあるレンタルビデオ店に引きずり込まれそうになっていたところに、それは起こった。

  • 44スレ主25/10/25(土) 16:39:26

    最初は交通事故が起きたのだと、そう思った。
    しかし煙を上げる車の合間から虚ろな目をし全身の筋肉を弛緩させた人間の姿が見えて、どうやら何か他の事件も起こっているらしいと俺の頭は判断をした。ヴィランが関わっているのかもしれない。
    だとしたら大変だ、一刻も早く一般市民を落ち着かせ避難誘導を行わねば。
    そんな俺を止めたのは、他でもない。峰田くんだった。
    真っ青な顔をして、「飯田、これはヤバイ。逃げるぞ。」
    と言い、有無を言わせぬ力強さで俺の手を引きショッピングモールに逃げ込もうとしていた。
    峰田くんはやや怖がりなところがある。今回もそのせいかと思えば、峰田くんは勢いよくかぶりを振った。
    「ちがう、根拠はないけど、なんか違うって思うんだよオイラ…これは、ヴィランの仕業じゃねぇ、って。」
    彼とてヒーロー科。容易く人を見捨てるような性格ではない。
    それに、クラスメイトを信じずしてなにか委員長か。俺は峰田くんの言う通りにまずは自分たちの安全を確保することにした。

    そして、結果的にこの判断は大正解であったと後から思い知ることになる。

  • 45スレ主25/10/25(土) 16:53:20

    ショッピングモールの中では皆が皆パニックになり上へ、上へと移動していた。
    大丈夫、だなんて言う暇もなく人の流れに押されるようにして俺たちはエレベーターホールにたどり着いた。

    そして、ようやく来た上階行きのエレベーターを前に、俺はようやく峰田くんの言っていたことの意味を知ったのだ。

    その中は人、人、人。肌が変色した人間のご遺体が積み重なるようにして、そこに溜まっていた。
    そうして…信じがたいことに、そのうちの一つが動き出して、俺たちの方へと手を伸ばしていたのだ。

    それからはもう、無我夢中だったと思う。
    動く死体のような人々を避けながら俺たちは安全圏を探し求めショッピングモール内をさまよった。
    ようやく息を落ち着けられる場所を見つけられたのはそれから1、2時間後のことで…
    その場所を拠点に、俺たちは避難所を作り、人を集めた。

    外の様子は、分からない。
    ヒーロー科として、人間として。ここに居る人たちだけでも守ろうと俺は動いた。
    役割を分担し、避難所を少しでも住みやすくしようとみんなで動いて支え合った。
    あれは噛まれることで伝染するのだと知ったのもその時だ。

  • 46スレ主25/10/25(土) 16:58:50

    つかの間の安定した生活。
    そろそろモールの外の探索に踏み切ってもいいかもしれないとそう思った矢先に、避難所内で火災が発生した。
    誰かが飲酒をしていて、それに灯りにしていた蝋燭の火が引火したようだ。
    事件は、これだけに留まらなかった。内部でパンデミックも発生していた。避難民の中に感染者が居たらしい。
    揺れる炎の隙間から完全にかれらと化してしまった避難民の様子を見て俺は途方に暮れた。
    救えなかった。救えたはずの命を、救うことができなかった。

    どうやってその場を凌いだのかは覚えていない。気が付けば俺と同じく無事であったはずの峰田くんとははぐれてしまっていた。
    俺はその日からここを拠点に『掃除』を進めている。最初に手をつけた避難所…5階はもうすっかりあの時の痕跡は残っていない。
    峰田くんは、クラスメイトの皆は無事なのだろうか。きっと、そうであってほしい。



    階段から、人の話し声が聞こえた。聞きなれた、クラスメイトの声によく似ていた。

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 17:00:12

    これ…パロディ元的に顧問であるプレゼントマイク先生は…もしかして…?

  • 48スレ主25/10/25(土) 19:02:06

    ショッピングモール5階。
    STAFFROOMと書かれた扉には『避難所』と几帳面な字で書かれた紙が貼ってあった。
    彼女らは記憶の中にあるクラスメイトの字とその字を比べずにはいられなかった。あまりにも、彼の字に似ていたからだ。しかし筆跡を判別できるほど彼の字を見た経験のない二人はすぐに肩を落とした。紙を貼り付けるテープがただのセロハンテープであることにも落胆した。

    避難所の扉の先、EXITという文字と共に見慣れたピクトグラムが描かれた非常口の誘導灯を見上げて、麗日は他の二人にもわからないくらい小さく、こっそりと嘆息する。

    意を決して開けた非常口の扉の先にはこじんまりとした個室が広がっていた。
    小さなソファ、小さな机代わりの段ボール。そして簡素なベッド。
    確かに人が生活している痕跡がそこにはあった。

    青山「今更だけれどもこんなところに入っていいのかい?誰か来ているようだけれど…」

    青山がそう言いながら入り口の方を振りかえるのと同時に八百万はソファの端に寄せられた高校生向けの数学の教科書に気が付いた。それは入口側に名前の記入欄が向けられており避難所の文字と同じ人物が書いたのであろう、几帳面な字でこう書かれていた。

    『1年A組 飯田天哉』

  • 49スレ主25/10/25(土) 19:48:31

    「誰だ!!」

    麗日と八百万はその鋭い声を聞いても、すぐには振りかえることができなかった。
    だって、あまりにも都合が良すぎる。
    今さっき想起していた人物が、生きて目の前に現れることになるなど、コミックでもないのだから。

    飯田「…な…きみ、たちは…」

    それはたった今部屋に入って来た人物…飯田もまた同じであった。
    ずっと、無事で居てくれと願っていた。できることなら一目その姿を確認したいと。
    そう思っていたクラスメイトが一度に3人も現れたのだ。自身の都合のいい幻ではないかと、そう思ってしまったのだ。

    青山「君いつからここで働いていたんだい!?」

    一人状況を理解していない青山の声だけが場違いに明るかった。

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 22:45:14

    展開によるかもしれないけどA組みんな出て来てくれたら嬉しいなぁ

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 06:46:34

    ☆ゅ

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 14:53:27

    保守

  • 53スレ主25/10/26(日) 19:53:21

    飯田「すまない…君たちの声は聞こえていたんだが、都合のいい幻聴かと思っていたんだ。下の階の様子はまだ酷かっただろう、だから要救助者が来るとも思えず…てっきり感染者か物取りの類だとばかり…」

    三人をソファに座らせ、自身はベッドに腰かけた飯田は出合頭に大声を上げた理由を説明し弁解した。
    無論そんなことを気にするような彼女らではない。素直にクラスメイトの無事を諸手を挙げて喜んでいた。

    麗日「わかるわぁ、わかるよ飯田くん。その気持ち…」
    八百万「よくご無事で。ここには、飯田さんだけが?」

    何気ない八百万の質問に、飯田は表情を曇らせる。

    飯田「実は峰田くんも一緒に来ていたんだ。しかしはぐれてしまって…居るとするなら下の階なのだが…その口ぶりからすると…」
    青山「迷子かい?」
    飯田「ま、迷子?」
    青山「…?峰田くんが迷子になったってことじゃないのかい?だからこんなところまで来たんだろう?どうだい☆!」

    青山の頭の中では飯田は従業員として働いているのではなく従業員に迷子のお知らせを流してもらうためにスタッフルームまで来た、ということになっているようだ。
    それをいち早く察した麗日は身振り手振りで「今は合わせて!」と合図を送る。

    飯田「そ、そうだ。それでこれから残りの階の捜索をしようとしていたところに君たちが現れたということだな。」
    八百万「それなら私たちに手伝わせてください。一人で探すよりも四人で、ですわ!」
    麗日「他にもいるかもしれないし!」
    飯田「…ありがとう。なんと言えばいいのか…とにかく、本当にありがとう…」

    話を纏めた4人は早速峰田を捜索することに決めた。
    長いこと拠点として使っていた室内を振りかえった飯田はもうここに戻ることは無さそうだと思い食料品以外に持っていくものは無いかと部屋を見渡す。

    しかしここに大切にすべき思い出などなかった。
    荷物は辛い記憶と出来事と共に置いて行った方がいいだろう。
    今度こそ彼は後ろを振り返ることなく三人の後に続いた。

  • 54スレ主25/10/26(日) 21:22:29

    四人は下階へ向かうべく階段を下っていた。その間も絶えず辺りに注意を向けるが、やはり三人が階段を上って行った時同様に人の気配はない。

    飯田「そうだ、言うまでもないとは思うが…あまり大きな声や音を出さないように。」
    青山「…?峰田くんを探すのなら声を出した方がいいんじゃ…」
    麗日「あぁっ!それはほら、今イベントやっとるって八百万さんが言ってたでしょ?峰田くんを呼ぶ声で邪魔しちゃうかもしれないって飯田くんは言いたいんよ。」
    青山「なるほどね。だから人が少なかったのか…☆」
    飯田「……」
    八百万「…飯田さん、色々と聞きたいことはあるかと思いますが…それは後程。それと、かれらの対処法は心得ておりますので、ご心配なく。」
    飯田「ここまで来られたという時点であまり心配はしていないさ。…しかし…いや、そうだな、八百万くんの言う通り後にした方がいいか。」

    後方で二人が小声で会話を交わしているとふと青山がその場に立ち止まる。

    麗日「…青山くん?どうしたん?」
    青山「…何か、聞こえないかい?」

    その言葉に他の三人も足を止めて耳を澄ませる。現在位置は2階階段の踊り場。もうすぐ1階にたどり着こうというところで声が聞こえてきたのだ。

    八百万「かれら…あぁいえ、イベントを楽しまれている方の声では…」
    青山「…そんな風には聞こえないけれど…」

    不思議そうに青山が首を傾げたその時。
    それは声は確かに彼ら4人の元に届いた。

    「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!誰か救けてぇぇぇぇぇ!!!」

    ヒーローを呼ぶ、見知った声が。

  • 55スレ主25/10/26(日) 21:36:36

    青山「ほら、やっぱり…!!」

    他の三人が止める間も無く青山は駆け出した。
    向かう先は1階エントランス。大広間の中央には巨大なピアノが鎮座している。

    飯田「っ、青山くん!一人では危険だ!」
    八百万「…かれらはこちらで動きを止めます!お二人は援護に!」

    そう言った八百万は事前に確保していた防犯ブザーを取り出した。その手は既にスイッチに触れている。

    飯田「すまない、任せた!」
    麗日「飯田くんっ、試したいことがあるんやけど…!!」

    すかさず後を追いかける二人。麗日は矢庭に提案を切り出した。

    飯田「手短に頼む!」
    麗日「さっき非常口を見て思い出したんよ、飯田くんがあいつらに邪魔されずに一直線に救けに行ける方法を…!!」

    非常口。
    その単語を聞いて飯田は目を見開く。

    飯田「そうか…その手があったか!麗日くん…手を!!」

    迷わず飯田は片手を麗日に差し出す。
    麗日もまたその五本の指でしっかりとその手に触れた。

  • 56スレ主25/10/26(日) 21:38:09

    無重力状態となった飯田の体はふわりとその場で浮かび上がる。
    その視線の先には青山の背とグランドピアノ、そして…

    麗日「飯田くん、大丈夫!?」
    飯田「…だいじょーぶ!!」

    空中でエンジンをブーストさせた飯田の体は、回転することなく真っすぐに進んでいく。人であったものたちも、青山の頭上をも超えて、ただただ真っすぐに。
    …入学して間もなかったあの時とは違う。大丈夫、大丈夫だ。

    飯田「だって、インゲニウム…この俺の脚は…」

    「迷子を導くためにあるのだから!!」

    伸ばされたその手は、救けを求める手を固く、固く握りしめた。

  • 57スレ主25/10/26(日) 21:47:45

    訳も分からず、ただ胸の中を巣くうこの感情の赴くままにいつの間にか青山は駆け出していた。
    救けなければ。
    偽りの日常の中で、彼は何故だか強くそう思っていた。
    しかし彼の脚にはエンジンなどない。特別足が速い訳でもない。
    救けを求める声までは依然、遠かった。

    「…だいじょーぶ!!」

    聞き覚えのある声がして、一閃。
    彼の頭上を弾丸のようなスピードで駆けていく一つの影があった。
    実際は弾丸よりもずっと遅かったが…しかし、彼の目にはそう映っていた。

    青山「…飯田くん!」

    気が付けばピアノの上の人影は居なくなっていた。
    ただ、要救助者を受け止めた勢いで飯田はバランスを崩し、まさにかれらが溜まっている地点に落下しようとしている。

    八百万「っ、皆さん耳を塞いで!」

    その時、八百万の声と同時にけたたましいほどの防犯ブザーの音が辺りに響き渡る。
    咄嗟に耳を塞いだ青山の耳にも十分届くほどの音量。かれらの耳にはたまったものではなかった。
    かれらの動きが怯んだその隙に、青山は一直線に二人の落下予想地点へ走り出した。
    何をすればいいかだなんて、わかってはいなかった。
    ただ、後悔はしたくなかった。それだけだった。
    手を、伸ばす。
    青山は声を上げた。
    「飯田くん…!!」
    そして。

    「峰田くん!!!」

  • 58スレ主25/10/26(日) 21:59:49

    防犯ブザーの音を聞いて動きを止めたかれらをシャベルで次々と麗日はなぎ倒していった。
    その目にかれらは映っていない。ただ、もつれるようにして転がっている三人だけを見ていた。

    麗日「っ、みんな!」

    やっとの思いで三人に群がるかれらを一掃した麗日。
    倒れる三人に目立った傷が無いことを確認し、安堵のため息をついた。

    峰田「う。…一体何が…」

    飯田と青山に挟まれるようにして倒れていた峰田がゆっくりと上体を起こして辺りを見渡す。

    飯田「峰田くん!無事か、怪我は!」
    峰田「…飯田?……飯田!?本当に…本当に飯田なのか!?」
    飯田「あぁ、正真正銘、本物の俺だ…!よかった、生きていたんだな…!」
    峰田「お、オイラずっと1階のバックルームに隠れてたんだ…時々上の方からすごい音がするとは思ってたんだけどよ、出ていく気にはなれなくって…でも…麗日や、八百万…青山の声が聞こえた気がして、出てきたら…」
    飯田「そうか…そうだったか…!」
    峰田「…ところでお前さっきオイラのこと迷子扱いして……いや、まぁでも…お前ちょっとかっこいいじゃねぇかよ。あんな颯爽と助けられちゃ…オイラが女だったら惚れてたぜ。」
    飯田「……当たり前だろう、峰田くん。…君は、この世で一番かっこいい人間はどんな人間だと思う?それは…」


    「…迷子を見かけたら、迷子センターへ手を引いてやれる。…そんな人間さ。」

  • 59スレ主25/10/26(日) 22:02:30

    >>36

    ここで1を引いたので峰田くんは見事生存となります。2だったら原作通りになってましたね。

    今後も場合によってはこんな感じで救済措置ダイスを振ることがあります。無いこともあります。



    >>50

    スレ主も出来れば全員出したいと思って進行してますね。もちろん生死は問いません。

  • 60スレ主25/10/26(日) 22:26:32

    雄英に向かう車の車内。
    凄まじい勢いで落下する二人分の体重を受け止めた青山は見事気絶し車の後部座席で今も眠っている。

    飯田「目が覚めたら礼を言わなくてはな。お陰で救けられた。」
    峰田「そーだな……」

    揺れる車内から外の様子を窺った峰田はそのあまりの変貌ぶりに声のトーンを落とす。

    峰田「な、なぁ……その……聞いてもいいのか分かんねぇんだけど…その…」

    彼にしては珍しい、歯切れの悪い態度。
    八百万は助手席で峰田の方を振りかえると、優しく頷いた。

    八百万「分かっていますわ。…いずれ、お二人も知ることになることです。青山さんが眠ってらっしゃる今のうちに話してしまいましょう。」

    静かに、八百万は語った。
    現在この場に居る5人以外に消息が確認できているA組の生徒は居ないということ。
    自分たちは雄英の設備を使い学園生活部を結成し生活をしているということ。
    …そして、青山のこと。

    八百万「部活、という体にしているのは青山さんの件がありまして…現在、彼の中では以前のような学校生活が以前滞りなく続いていることになっています。あんなことがあってから…とても落ち込んでらっしゃったものですから、心配していたんです。それがある日急に元気になって…いえ、なりすぎてしまった。」
    麗日「…あのことがあってから、だよね。」

    麗日の言葉に、八百万は首肯を返す。

    八百万「…我々の部活には顧問が居ました。…彼の死によって、青山さんは…」

    言葉に詰まった八百万の代わりに、麗日がその名前を出した。

    麗日「私たちの顧問…プレゼント・マイク先生は、もういないんよ。」

  • 61スレ主25/10/26(日) 22:29:41

    第二章 終わり


    青山の話を聞いた二人は…


    1.なんとかした方がいいんじゃ…?

    2.そっとした方がよさそう…

    飯田dice1d2=1 (1)

    峰田dice1d2=1 (1)


    第三章 始まり

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 22:35:16

    飯田くんも峰田も無事に合流できて良かった
    パロならではの実は…ってのがあるのも醍醐味だと思ってるので諸々に期待
    第三章も楽しみ

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 22:45:49

    まぁそうだよなぁ…とは思ってたけど文字で出されるとちょっときついな…<マイク先生
    元ネタの方ほとんど知らないので楽しみ 完結したら元ネタ読もうかな

  • 64スレ主25/10/26(日) 22:46:42

    -学園生活部-
    飯田「それは…家計簿か、八百万くん。」
    八百万「飯田さん…ええ。二人も増えたものですから見直しをと。贅沢な悩みですけれど。」
    飯田「…電源は太陽電池から供給しているのか。」
    八百万「雨が続くと大変ですのよ。食料は屋上の畑や購買、食堂から拝借しておりますの。後でそちらも案内した方がよさそうですわね。」
    飯田「そうだな、よろしく頼む。…しかし…本当に静かになってしまったな。」

    ため息をついて飯田は辺りを見渡した。かつて大勢の生徒たちで活気に満ちていた雄英の姿は、今はどこにもない。
    かれらで溢れ返った校舎前の光景を思い出し、彼は俯く。

    峰田「おいおい…折角の感動の再会だってのに憂鬱な気分にさせんなよなー!」

    そんな二人に対し近くの机で青山と二人カードゲームで遊んでいた峰田が野次を飛ばす。
    青山が目覚めてからというもの彼はずっと気丈に振る舞っていた。

    彼の中で今回の一件がどう解釈されたのかは誰にも分からない。
    が、既に二人も学園生活部の部員という認識になっていることは確かだったので、二人は流れるように入部を決めた。
    元より、断る気も無かったのだが。

    峰田「…あっ、おい!それはずりぃだろ青山!」

    楽し気に笑う二人を見て、つられるように飯田と八百万も口元に笑みを浮かべた。

    八百万「そういえば…これで委員長と副委員長が揃いましたわね。」
    飯田「そうだな。…委員長と言えば、この部活の部長は君だったか。」
    八百万「ええ。慣れ行きで。…やはり今からでも飯田さんを部長にするべきでしょうか…?」
    飯田「いいや…部長は君がやるべきだ。ここでの生活を俺よりもはるかによく知り、そして皆を牽引する確かな力を持っている。八百万くん以上の適任は居ないだろう。」
    八百万「…飯田さんにそう言っていただけるとは、光栄ですわ…!…そうだっ!それでは飯田さんは副部長ですわね!」
    飯田「副部長か…!部長の任命とあらば全力でその任を果たさせてもらおう!…して、副部長とは一体何をすればいいんだ…?」
    八百万「それは………まだ決まってませんわ。」

  • 65スレ主25/10/26(日) 23:08:34

    体育祭をやる話は丸々カットです。既に終わってるし青山くん以外の子らの気が乗らないと思うので。

    -教室-
    学園生活部が使用している部屋の隣。
    すっかり寂れた様子の教室の机に、どっこいしょと古臭い掛け声を上げて峰田は腰をかけた。
    いつもであれば机に腰をかけるなどと、と説教を始める飯田であったが、今回ばかりは何も言う事は無かった。

    峰田「…なぁ飯田。オイラたちこれからどうしたらいいんだろうな。」
    飯田「…そうだな。」

    新入部員である二人の頭を占めるのはそのことばかりであった。
    先への不安。
    見知った顔に出会えたことへの喜びは確かにあったが、それを上回るほどの現状への不安感が二人の間に横たわっていた。

    飯田「…ショッピングモールの外は、もっとまともな状態なのだろうと、そう思っていた。…携帯の電波が通じなくなった時点で、電気の供給が途絶えた時点で、気が付くべきではあったのだが。」
    峰田「…それはオイラもだよ。今外ではたくさんのヒーローが頑張ってて…オイラたちの居るところは、雄英も近いしちょっと後回しになってるだけなんだって、必死にそう自分に言い聞かせてた。」
    飯田「………先生が、亡くなった。それだけ、この状況は過酷なものだ。」
    峰田「わかってる。プロヒーロ―が、今は頼れる存在じゃなくなっちまった。」

    そして。
    二人の頭の中には同時に一人の人物の顔が浮かび上がった。

    飯田「…峰田くんはどう思った。…青山くんのことだ。このままでいいと、そう思ったか。」
    峰田「…正直なこと言うとよ。…ちっとも思ってねぇ。ありゃ放っといちゃいけない奴だろ。別に足手まといになるとか、そんなことを言いたいんじゃねぇ。…本人のためになんないだろ、あんなん…」
    飯田「…そうだな、俺も概ね同意見だ。しかし、荒療治はもっと彼にとって酷なものとなるだろう。」

    そう言うと彼は一冊の本を峰田の前に差し出した。
    心理学の本。多重人格について書かれた、その本を。

  • 66スレ主25/10/26(日) 23:24:51

    飯田「この問題には長期的な視点で取り組む必要がある。焦ってしまえば…それはさらに彼を苛むことになるだろうな。」
    峰田「…お前、この本…いつの間に取りに行って…」
    飯田「あの場所で長いこと一人で感染者相手に立ちまわっていた。経験はある。それに、俺にはこの脚があるからな。」
    峰田「…そういうことを言ってんじゃねぇよ。…今度行くときは…オイラにも声かけてくれ。」
    飯田「…分かった。俺もこそこそしたい訳ではないからな。それより、話を元に戻そう。」

    再び飯田が口を開きかけた、その時だ。ガラリと彼らのいる教室の扉が開かれた。

    青山「…二人とも?こんなところで何してるんだい☆?」

    渦中の人物が、現れた。

    飯田「…青山くん…」
    峰田「あ、青山!…えーっと、なんでもねぇって!そういう青山こそこんなとこに何しに来たんだよ。」
    青山「話し声が聞こえたものだから気になってね…☆……ずいぶんと難しい顔をしていたようだけれど。」

    教室に立ち入った青山は二人の元に歩み寄り、そして丁度二人の間に位置する机に腰かけた。

    峰田「……難しい顔、か。…お前自分のことだけ見てるようで意外と周りも見てんだよなぁ…どうするよ、飯田。」
    飯田「…今は伏せておくべきだろう。」
    青山「……二人が何を悩んでいるのかは分からないけれど…あの二人も時折さっきの君たちのような表情を浮かべていることがあるよ。」

    あの二人。
    飯田と峰田は互いを見合った。…麗日と八百万の事を指しているということは、すぐに気がついた。

    青山「夜中に喧嘩しているような声を聞くこともあった。…何か聞いてもだいじょうぶだ、って。……どういう訳か、二人が疲れている様子なのは、僕にも分かった。」
    青山「…二人が学園生活部にやってきて彼女ら、とっても喜んでたんだ…本当に、久しぶりに見るような笑顔で。…僕も、力になりたいんだ。…僕は、この学校が…このクラスが大好きだから。」

    それだけ言うと、青山は机から腰を下ろし「邪魔したね☆」と、いつもの調子で教室を去っていった。
    二人は教室の出入り口に視線を向けたまま体の動きを止めていた。ただ、青山の発した言葉だけがぐるぐると彼らの中で渦巻き続けていた。

  • 67スレ主25/10/26(日) 23:37:31

    嵐のように現れてはまた嵐のように去っていった青山。
    しかし不思議なことにそれに巻き込まれたはずの二人の胸中は彼の急襲前と比べて非常に穏やかだった。

    峰田「…この学校が、クラスが大好き…か。あいつ、よくそんなこと平気で言えるな。アモーレとかなんとかってやつ?」
    飯田「…君が日ごろ口にしている語彙も中々の物だと思うが…しかし、そうだな。俺たちもまたこの学校が好きで、クラスの皆が大切な友人だ。…きっと、ここにまた戻ってきてくれるだろう。」
    峰田「ああ。先のことなんてわかんねーけどさ、今までのことだったらオイラ達がちゃんと知ってるよな。あいつらはちゃんと帰って来てくれる奴らだ、って。」
    飯田「うむ。皆を信じて、今は俺たちにできることを一つ一つ着実にこなしていこう!」
    峰田「これを機にオイラ遂に女子にモテモテになっちまったりしてなぁ!」
    飯田「む、峰田くんそれは……まぁ、大きな目標があるというのは良いことか…しかしその不純な動機はどうにかした方がいいのでは…」
    峰田「うるせぇやい!…そうだ、今の今まで忘れちまってたけど…いつかお前をオトナの世界に引きずり込んでやるぜオイラは!リベンジだ!」

    やいやいと騒がしく響く声を、たまたまその時廊下を通りがかった麗日と八百万が聞いていた。
    そうしてどちらともなく二人は顔を見合わせて、そして綻ぶように笑ったのだった。

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 08:45:36

    ほしゅ

  • 69スレ主25/10/27(月) 16:09:40

    >>58

    バックヤードじゃねぇかクソが!!!!

    バック……なんだっけ?ルーム?みたいなノリで書いたらとんでもないミスをしました。

    今後もミスをしまくると思いますがまたやってんなこいつという生暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。


    今後の展開の為のダイス

    1.犬

    2.猫

    3.結ちゃん

    dice1d3=3 (3)

  • 70スレ主25/10/27(月) 18:15:46

    -学園生活部-
    青山「…おっと!もうすぐ昼休みが終わってしまうじゃないか…☆」
    麗日「あ、ほんとだ!青山くん先行ってて!すぐ行くから!」
    青山「ウィ☆」

    爽やかにウインクを飛ばした青山はそのまま軽やかに学園生活部の部室を後にした。
    その後ろ姿を見送った峰田があ、と声を上げる。

    峰田「…そういや実技の方はどう誤魔化してるんだよ、座学だけって訳にはいかねーだろヒーロー科は。」
    八百万「演習場がしばらく工事で使えないと、そう伝えていますわ。」
    麗日「無理のある嘘だとは思うけど…青山くんはそれを今でも信じてくれとるよ。」
    飯田「そうか……彼の中で破綻が生じなければいいが。」
    峰田「なんつーか…色々考えはしたけどよ、今の青山の状況ってオイラたちにとっても悪いことばかりじゃねぇと思うんだよな。」
    飯田「そうだな…。非日常を吹き飛ばして明るく照らしてくれるような…そんな感じがすると俺も思うよ。」
    峰田「でも相手が青山ってのがなぁー!これがエッチなバニーガールとかだったらオイラもやる気MAXなのにさぁ…」
    飯田「峰田くん!また君はそういうことを…」

    腕を真っすぐ伸ばしぶんぶんといつものようにそれを上下に振って峰田への説教を行う飯田だったが、ふと対面に座る麗日と八百万の表情が優れないことに気が付き、その動きを止めた。

    飯田「二人とも…どうかしたのか?」
    峰田「もしかしてオイラのせいか!?なにもお前らにバニーやれとは言ってねぇからな!?さすがのオイラもそこまではしねぇよ!」
    八百万「…いえ…その…少し、思い出してしまいまして。」
    飯田「…何かあったのか。」

    飯田の問いかけに、八百万は一度深くため息をついてから顔を上げる。
    覚悟を決めた、そんな目をしていた。

    八百万「……兎も感染してしまいますの。…鳥は大丈夫なようなのですが、哺乳類というのがいけないようで。」

    飯田と峰田の二人はすぐに思い当たった。彼らのクラスメイトが大事に飼っていた、その兎の存在に。

  • 71スレ主25/10/27(月) 18:43:14

    今よりもずっとずっと前。ある日の学園生活部。
    その部室の扉を開いた青山の腕の中には雪のように白い体を土で汚した姿の兎が抱かれていた。
    突然現れた異分子に、マイクが立ち上がり青山に歩み寄る。

    マイク「HEYHEY青山!そのキューティーラビットは一体どうしたんだ?」
    青山「『口田くんに預かってくれと言われた』んです☆」

    青山が『口田から聞いた』話によれば口田はうっかり自室で兎に有毒なルームフレグランスを撒いてしまい、それが完全に消えるまで学園生活部でペットを預かって欲しいと、そう言われたそうであった。

    麗日「口田くんの兎…結ちゃんがここまで…」
    マイク「Oh…あのアニマルボーイの…」

    結ちゃんは口田のペットとして彼の自室で飼われているオスの兎だ。
    青山の腕の中でスンスンと鼻を鳴らす結ちゃんをマイクはそ、と撫でる。

    マイク「……ちょっと見せてくれよ。」

    そのまま結ちゃんを腕の中に収めたマイクはその白い毛を掻き分けて目立った傷が無いか確認をしていく。
    黙り込んだマイクに不安げに瞳を揺らした青山を見て、彼は努めて明るい声を出した。

    マイク「…ところでリスナー達!兎を英語で『rabbit』or『bunny』と言うのはお前たちも知っているとは思うが…そうだな、Ms.麗日!この両者の違いをプリーズアンサァ!!」
    麗日「えぇっ、私!?!?えー……大人の兎か、子供の兎か…とかですか?」
    マイク「ナイストライ麗日!けど惜しい!惜しいぜ!それじゃあネクスト…Mr.青山!」
    青山「野良かペットか…どうだい!ムシューマイク!」
    マイク「ナイストライ!が、またしても違うんだなこれが!さぁ、最後だMs.八百万!他のリスナー二人に答えを聞かせてやってくれ!」
    八百万「前者はフォーマルな呼び方で、後者は主に子供が使う呼称ですわ。」
    マイク「That's right!!」

    叫び声と共に勢いよく上体を逸らしたプレゼント・マイク。
    …その右手の下には、やわらかな結ちゃんの体につけられた小さな、小さな傷痕が隠されていた。

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/27(月) 18:50:51

    キッツイな…これ…
    いいぞ、もっとやれ

  • 73スレ主25/10/27(月) 18:54:10

    -現在 学園生活部-
    飯田「…それで、結ちゃんくんは…」
    麗日「しばらくはマイク先生の元で飼ってたんやけど…やっぱり、無理だったみたいで…」
    八百万「マイク先生が、外に埋めて来たと。…青山さんには口田さんが引き取りに来たと、そうお伝えしましたわ。」
    峰田「……口田………でも、仕方ねぇよな…」
    八百万「…それで終わりならよかったのですが。」
    峰田「…え?」
    麗日「…それからしばらくして…そこの扉を引っ搔くような音がしたんよ。なんだろうって思って開けたら…」

    麗日は当時の事を思い返す。
    すっかり変わり果ててしまった…かつてはつぶらな瞳と目が合った、その瞬間を。

    飯田「帰って来てしまったのか…」
    麗日「帰巣本能…ともちょっと違うと思うけど。…とにかく、戻ってきた。」
    峰田「心があったのか…?」
    八百万「いいえ…ただの記憶ですわ。思い出だけが残っていて、気になるところに戻って来た。…そんなところでしょう。」
    飯田「…わかるのか。」
    八百万「なんとなく、ですけれど。この学校に未だにあれだけの生徒がいるのも、そういうことなのではないでしょうか。」

    四人の視線は自然と下を向く。
    …気になる場所。

    そうして少しの時間が経った後。そういえば、と飯田が顔を上げた。

  • 74スレ主25/10/27(月) 19:08:27

    飯田「俺たちを連れて来た時…怖くは無かったのか。…どこか、見えないところに怪我をしていたかもしれないだろう。」
    麗日「警戒していなかった、といえばウソになるけど…でも、二人ともそんな大事なことを隠すような人やないもん。」
    八百万「もしもがあれば言ってくださる…そう考えてのことですわ。」
    峰田「…じゃあよ…もし…もしだぜ、オイラたちが…」

    顔を伏せた峰田の表情は誰にも見えない。
    暗く沈んだ声だけが、その感情を伝えていた。

    「…ああなっちまってたら、始末してたのかよ。」

    言ってから、やってしまったと言わんばかりに焦って顔を上げた峰田に、麗日は静かに言った。

    麗日「わからない。」

    続けて、八百万も言葉を発した。

    八百万「…わたくしは、悩んだときはいつも皆さんだったらどうするか。それを考えていますの。…でも、皆さんでもどうするかはわかりませんわ。その時になってみませんと。」
    峰田「…そうか、そうだよな…すまねぇ、変な事聞いて…」
    麗日「…ええんよ、いつかは話し合っておかないといけないことでもあるし…」

  • 75スレ主25/10/27(月) 19:10:00

    飯田「そういえば…マイク先生は先のことをどう考えてらっしゃったのだろうか…」

    自然と暗くなった話題を無理やり変えるように飯田が口にする。

    麗日「どうやろねぇ。あの頃はみんないっぱいいっぱいだったから…」
    八百万「ノートに書いてあるかもしれませんわ。」
    飯田「…ノート?見ていないのか。」
    八百万「見ようと思ったのですが…なんとなく、その…」
    飯田「…そうか。」
    峰田「ならオイラ達で見てこよーぜ。」
    飯田「そうだな。構わないだろうか、二人とも。」
    麗日「うん。よろしく頼むよ。」
    八百万「お願いしますわ。…すみません、お二人に押し付けてしまって。」
    飯田「いいんだ。これくらいさせてくれ。」

    そうして徐に椅子の上で立ち上がった峰田が格好つけたポーズを決める。

    峰田「オイラに惚れてくれてもいいんだぜ?」
    麗日「それはないかな!」
    峰田「なんでだよ!!」

  • 76スレ主25/10/27(月) 22:34:05

    -放送室-
    峰田「…口田って別に放し飼いをしてた訳じゃねぇよな。」
    飯田「その筈だ。一度脱走騒ぎがあってからは戸締りにも気を配っていたようだしな…」

    マイクが根城としていた放送室内で二人は手分けして彼の遺したノートを探していた。
    しかし話題に上がったのは先ほど聞いたクラスメイトのペットの事であった。

    峰田「…なんで、ここまで来られたんだろうな。どうやってあの兎は寮を出て…」
    飯田「峰田くん。…それ以上は、今は止そう。」

    あの日。全てが始まったのは土曜日の放課後の事だった。ヒーロー科は他の科よりも授業時間が長いため校舎に残っていた生徒がまだちらほらと居たがその他の殆どの雄英生はとっくに寮に帰っていたことだろう。
    つまり。
    校舎周辺よりも、寮の方が……
    頭に浮かんだ疑念を払うように手を動かす二人。
    そうして、放送室の机の上には何冊かの本が並べられた。
    『解離性同一性障害の診断』『多重人格の実態』他、多数の心理学に係る本。
    …そして。

    峰田「これがノートってやつか?」

    『部活動日誌』と書かれたシンプルなデザインの大学ノートを手に峰田が言う。
    ノートのページ中ほどを開いた彼だったが、ページの隙間からひらりと紙束が舞い落ちる。

    飯田「峰田くん、何か落ちたようだが…」

    床からそれを拾い上げた飯田の目に紙束に記載されたタイトルが映り込む。
    そこには、校外秘と書かれた紅い文字が添えてあった。
    峰田もまた脇からそれを覗き込み、そしてその文字列を認識した。

    『職員用緊急避難マニュアル』

  • 77スレ主25/10/27(月) 22:45:03

    「感染対策は初期の封じ込めが重要であるが、それに失敗し、感染が爆発的に増加した、いわゆるパンデミック状態が引き起こされた場合―――」

    「対応できる資源、人員ともに限定――」

    「――厳密な選別と隔離を基本方針とすること。」



    峰田「…なんだよ。…なんだよこれ!!」

    今のこの状況を想定していたとしか思えないマニュアル。その内容に峰田が声を荒らげる。
    それを窘めようとする飯田の声もまた、震えていた。

    峰田「なんで…なんでこんなものが先生のノートから出てくんだよ…もうオイラ訳わかんねぇよ…!!」
    飯田「…落ち着こう、峰田くん。……とにかく、二人にこれを共有するのが先決だ。」

    何か、先へ進むための希望が、光があるものだと二人は…否、四人は考えていた。
    しかし…そこにあったのはとてつもなく深い闇への入り口だったのだ。

    部室へと戻る二人の足取りは、まるで鉛のように重く苦しいものであった。

  • 78スレ主25/10/27(月) 22:55:32

    -学園生活部-
    麗日「…これが、先生のノートに?」
    峰田「…ああ。間違いねぇよ。」
    麗日「これが…これが本当なら、先生は全部最初から知ってて…?」

    マニュアルを流し読みしていた八百万がぱたりと紙束を閉じて首を振った。

    八百万「それは違いますわ。…こちらを。」

    八百万が示したのはマニュアルの表紙部分。
    《以下の場合にのみ開封すること》
    と書かれた項目であった。そこには三つの項目が記されている。

    ・校長およびその代理よりの指示があった場合
    ・A-1警報の発令時
    ・外部よりの連絡が途絶し十日以上が経過した場合

    飯田「…渡されて持ってはいたが内容までは知らなかった…ということだろう。」
    八百万「…こんなことになって、思い立って開けてみれば…そんなところでしょうか。」
    麗日「そんなの……言ってくれれば、よかったのに…」

    喉の奥から絞り出すように麗日は言った。
    彼は、一体どんな思いでこの秘密を抱えていたのか。

    八百万「…希望はまだ、残されていますわ。」

    マニュアルには雄英高校の校舎内地図が描かれている。その一画を彼女は指さした。

    八百万「非常避難区域…我々生徒も知らない場所。ここになら、なにか有用なものがあるかもしれません。」

  • 79スレ主25/10/27(月) 23:01:40

    麗日「…ここから行けばいいんだね。」


    真剣な顔で、麗日は地図の上を指でなぞる。


    峰田「…まさか、麗日…今から行くつもりかよ!?」

    麗日「ちょっと見てくるだけだよ。軽い偵察だけ。」


    そう言って彼女はシャベルを抱え直すと部室の扉に向かっていった。


    しかし。


    飯田「…単独行動は慎みたまえ、麗日くん。これだけの人数が居るんだ。もう一人同行するだけの余裕はある。」

    八百万「そうですわ。一人では危険極まりません。それだけは、部長として許可できません。」


    麗日は…

    1.それでも一人で行く

    2.誰か一人連れていく(1.八百万 2.飯田 3.峰田 dice1d3=1 (1) )

    dice1d2=1 (1)

  • 80スレ主25/10/27(月) 23:09:29

    麗日「ありがとう。気持ちはありがたいけど…これは偵察だから、一人で行ったほうがいいと思うんよ。」

    強い、覚悟の籠った目。
    決して長くはない、けれど短くもない。濃い時間を共に過ごした彼らはこうなった彼女は梃子でも動かないだろうと、そう確信した。

    八百万「……わかりました。しかし、くれぐれもお気をつけて。」
    麗日「大丈夫。危なそうだったらすぐに引き返すから。」

    三人は苦虫を嚙み潰したような顔で麗日を見送った。
    強い不安感を前に、しかし何もできずに無事を祈る他無かったのだ。




    しかしこの時もっと強く彼女を引き留めていれば、と彼らは後に強く後悔することとなる。
    お節介は、ヒーローの本質だと言うのに。
    あっさりとそれを諦めてしまった自分たちに、強く、強く自責の念を抱くこととなるのだ。

  • 81スレ主25/10/27(月) 23:17:32

    峰田「…麗日のやつ、あんなに急がなくても…」

    麗日はバリケードを超え、安全地帯の向こう、目的地へ向かってシャベルを片手に進みだした。

    八百万「マイク先生の事が気になっているのでしょう。…どうして隠していたのか、と。」

    道中で何人ものかれらに遭遇し、その度にシャベルを振りかざす。

    飯田「八百万くんは…どう思っているんだ?」

    これはもう人ではない。人の体を借りた何かなのだと、そう言い聞かせながら。

    八百万「そうですわね…わたくしも、分かる気がしますわ。」

    そうして、彼女は目的地への入り口を発見する。シャッターはこじ開けられ、自然に閉まることが無いように机が間に噛まされていた。

    八百万「自分がもしマイク先生の立場であったら…責任を感じてしまいますから。」

    シャッターはカードキーとパスワードを入力しなければ開かない仕組みになっているようだった。

    飯田「…責任?」

    麗日はシャッターを軽く持ち上げ、中を覗き込む。

    八百万「知らなかったとはいえ、自分もそちら側の人間だった、ってことですから…」
    峰田「んなの…先生のせいなんかじゃねぇだろ…!」
    八百万「もちろんそうですわ。けれど…そんなこと、あとから知ったら…」
    飯田「…ショック、だろうな。」
    八百万「でも先生は…いつも明るくて、元気で…わたくし達が不安にならないようにと…ただ一言、先生は何も悪くないのだと、そう…お伝えしたかった。」
    飯田「気持ちは…伝わっているとも。きっと…」

  • 82スレ主25/10/27(月) 23:25:16

    懐中電灯を携えて、麗日は階段を下りていく。
    微かに水が溜まっているようで、ショッピングモールで拝借したケミカルライトを振り、水面に投げ込む。
    ライトは沈み込むことなく軽い音を立てて跳ねた。水深は深くないようだった。
    水音を立てながら慎重に進んでいく麗日だったが、ふとその足を止める。

    …何か、音がする。

    ぴちゃり、ぴちゃりとゆっくり、しかし確実に麗日の方にその音は近づいていく。

    麗日は音のする方向に懐中電灯を向けた。

    まず見えたのは、足だった。

    黒く艶のあるズボン、ベルト。

    音が近づいていくにつれてそれの全体像が次第に明るみに出ていく。

    革のジャケット

    そして。



    首に取り付けられた、スピーカー。



    ぼちゃん。

    一際大きな音を立てて、懐中電灯が水面に落下した。

  • 83スレ主25/10/27(月) 23:33:36

    -学園生活部-
    青山「今日のお昼はなんだと思う?…秘密さ☆」

    うきうきと学園生活部に足を踏み入れた青山はしかし、浮かない顔をしている三人を見て首を傾げた。

    青山「どうしたんだい?みんなしてそんな暗い顔をして…」

    そうして辺りを見渡して、彼は気が付いた。

    青山「…麗日さんは、どこに?」
    八百万「麗日さんは…」

    八百万が答えようとしたその時。
    カリ、カリ…
    扉から微かに音がして、彼らはその身を強張らせた。
    意を決した八百万が扉を開くと…

    八百万「麗日さん!?」

    麗日が八百万に倒れこむようにして部屋へと入る。その身を支えられながら、彼女は震える声で告げた。

    麗日「…ごめん、失敗した…」
    「「「「!!」」」」

    「オイラたちが…ああなっちまってたら、始末してたのかよ。」
    「どうするかはわかりませんわ。その時になってみませんと。」

    八百万に支えられたその体には、深い、深いひっかき傷がつけられていた。
    彼女の右腕からは温かな血がどくどくと流れ出す。
    麗日にはもう、自身の体を支え切るほどの力は残されていなかった。

  • 84スレ主25/10/27(月) 23:35:17

    第三章 終わり
    (今日はここまで…この続きは明日以降となります。)




    第四章 始まり

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 08:50:06

    保守
    元ネタ知らないからめっちゃハラハラする

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 11:47:53

    保守

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 16:46:24

    ほしゅ

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/28(火) 17:41:20

    救い、救いはどこ?峰田?

  • 89スレ主25/10/28(火) 21:16:27

    腕から血を流しぐったりとする麗日。
    誰もがショックを受けていた。
    青山もまた、例外ではなかった。
    目を見開き、苦し気に呼吸を繰り返す麗日から目が離せないでいた。

    八百万「…青山さん、救急箱を!放送室に!」
    青山「う、ウィ…!」

    とにかく、この場から遠ざけねば。
    そう判断した八百万が指示を飛ばすと青山は我に返り一目散に放送室へと駆け出して行った。

    八百万「…一体、どうして…」

    今更かれらに遅れを取るような麗日ではない。
    どうして、こんな深手を負うことになったのか。

    麗日「……だ」
    八百万「…?」

    小さく、呟かれた声。
    聞き逃すまいと耳を近づけた八百万に、麗日は再び言った。


    麗日「マイク先生、だったんだ。」


    麗日に肩を貸し移動させようとするその動きが、体が凍り付いてしまったかのようにその場で停止した。

  • 90スレ主25/10/28(火) 21:26:54

    -少し前 非常避難区域-
    プレゼント・マイクだったものと会敵した麗日はその後懐中電灯を取り落としながらも咄嗟に柱の陰に逃げ込んだ。
    死角となるその場所で麗日は動揺で暴れ狂う心臓を必死に抑え込もうとしていた。

    麗日「どうして…うぅ…マイク先生…こんなところに居たなんて…」

    それが足を動かすことによって生じる水音は、彼女が身を隠した後も尚止まることはなかった。
    近づいてきているのだ。少しずつ。尚も、かれは。

    麗日「なんでっ…!!」

    シャベルの柄を握り直す。
    かれは、もうすぐそこまで迫っていた。

    「どうしてなのっ!?!?」

    勢いよく陰から飛び出し、シャベルを頭上に掲げる。
    しかし。

    接近してしまったがために、彼女の目にはよく見えてしまった。

    『麗日!』

    麗日「…あ…」

    サングラスの下の目を細めて明るく笑う、その笑顔を、彼女はそれに重ねてしまった。
    動きを止めてしまった彼女の目の前で、まさに今、かれの腕がぐらりと持ち上がる。

    そして。
    麗日の腕から、鮮血が飛び散った。

  • 91スレ主25/10/28(火) 21:42:10

    -空き教室-

    ソファの上に寝かされた麗日は苦し気に荒い息を吐き出していた。

    八百万は救急箱から脱脂綿を取り出し、アルコールを染み込ませると傷痕に押し当てていく。


    青山「…何か、僕にできることは…?」

    八百万「…お湯を、沸かしてきてくださいますか。」


    小さく頷いた青山は足早に教室を去る。この場に居る皆が、何かしなければと、ただただそう考えていた。


    峰田「…噛まれなくても、感染しちまうのかよ…?」

    八百万「かれらによって受傷してしまえば…それが噛傷であるかどうかに関わらず感染してしまいますの。たとえ…掻き傷であろうと。」


    麗日の手当を進めていく二人とは別に、何か手がかりがないかとマニュアルを今一度読み直していた飯田が目を見開く。


    飯田「八百万くん…!麗日くんの行った避難区画だが…薬があると、ここに…!」

    八百万「!」


    ば、と立ち上がりマニュアルを半ば奪うように飯田の手から受け取った八百万はマニュアルの8ページ、救急物資の項目を読み、それが嘘ではないことを確認する。


    八百万「行かなければ…!!」

    飯田「であれば二人で行くべきだろう。…麗日くんは、一人で向かって怪我を負った。」

    峰田「問題は、誰が行くかだよな…」


    誰が行く?

    dice2d3=1 2 (3) (1.八百万 2.飯田 3.峰田 )

  • 92スレ主25/10/28(火) 22:02:16

    八百万「やはりここは、部長のわたくしが…」
    峰田「っ、おいおい!お前はここの要だろーが!なんかあったらオイラじゃどうにもできねーぞ!?」
    八百万「あの時…部長として、麗日さんの友人として…強く引き留めていたら。…ここで動かなければわたくしは…ヒーローでも、この学園生活部の部長でもなくなってしまう…」
    飯田「ならば…俺も連れていけ。部長の君に責任があるというのなら、それは副部長たる俺にも言えることだ。君一人にすべてを背負わせる訳にはいかない。」
    八百万「飯田さん…」

    唇を強く噛みしめながら絞り出すようにそう告げた八百万に、まるで彼女がそう言いだすことが分かっていたかのように迷いなく飯田は自分を同行者に選ぶように言った。

    峰田「お前ら…本気かよ…」
    八百万「…これは、わたくしたち自身がどうにかしなければならない問題ですわ。どうしても部員の中から誰かが行かなければならないのであれば、やはりわたくしが行くべきです。」
    峰田「…飯田も…」
    飯田「部長を支えるのが副部長の役目だからな。…かならず、生きて帰ってくるさ。だから、麗日くんのことは任せたぞ、峰田くん。」
    峰田「…クソッ…!お前らだけカッコつけやがって…!生きて帰ってくる?当たり前だ!怪我の一つでもしてたら一生許さねぇからなオイラは!!」
    八百万「ええ。…ありがとうございます、峰田さん。」
    飯田「すまない。…そして、ありがとう。」


    そうして……麗日のシャベルを片手に、八百万は飯田と共に避難区画へと出発した。

    峰田「……絶対、絶対に無事に生きて帰って来いよ…八百万、飯田…」

  • 93スレ主25/10/28(火) 22:09:11

    安全地帯のその向こう。
    八百万はシャベルで、飯田は蹴りでかれらを次々にいなしていく。
    そうして全力で走り辿り着いた先に、その入り口はあった。

    シャッターは学校机を噛むように閉められており、本来カードキーを使わなくてはいけないそこは屈んで通り抜けられる程度の高さの通り道が出来ていた。

    懐中電灯を片手に、飯田が先行して階段を下りていく。


    最下段まで下りた先。
    薄く水の張るその通路の向こう側に、それは居た。

  • 94スレ主25/10/28(火) 22:21:07

    -学園生活部-
    青山「全く君も間が悪いったらない!今日の夕飯は君の好きな餅だという話だったじゃないか☆それに、また皆で遠出をしようという話にもなっていたというのに……」

    青山「…麗日さん…早く、良くなるといいけれど…」

    祈るように口にした青山の声に反応したのか…気を失っている麗日の今は上がるはずのない右腕が持ち上がる。

    青山「…!峰田くん…」

    喜々として峰田の方を振りかえった青山だったが、服の裾を峰田に強く掴まれていることに気が付き、動きを止める。

    青山「…どうか、したのかい?」
    峰田「…いや、なんでもねぇ…青山、廊下見てきてくれるか。誰か間違えて入ってきたら困るだろ。」
    青山「ふーん…?いいよ、任せて☆」

    背後で扉が閉まる音を聞いた峰田は、さらに息の荒くなった麗日を見遣った。
    その手には、出発する前に八百万が作っていった手枷が握られていた。


    青山「…麗日さん…」

    空き教室の扉の前。
    扉に背を預けるようにして青山は下を向く。
    きっと、きっと救かると、…救かってほしいと、そう願いながら。

  • 95スレ主25/10/28(火) 22:33:27

    熱に浮かされる麗日の額に浮かんだ汗粒を峰田はタオルでふき取っていく。

    毛布をかけられた彼女の手足には今、枷が取り付けられている。

    念には念をと、峰田はさらにもぎもぎを使い拘束を強化していた。


    峰田「…」


    『…ここで動かなければわたくしは…ヒーローでも、この学園生活部の部長でもなくなってしまう…』


    峰田「…あの時寝てたのはアイツだったな、そういえば…」


    雄英高校が寮制を導入するその少し前。激動の夏。

    深手を負った友人の見舞いに行った先の出来事を峰田は思い出していた。


    峰田「まだ手は届く、か…」


    頼れるプロもいない。

    未だ保護下にあるべき自分たちがどうしてこんなことに。

    どうしても峰田はそう考えずにはいられなかった。


    峰田「また、先行かれちまったな…」


    「うぅ…っはぁ、はぁ…っ!」


    峰田「麗日……」


    病魔と闘う麗日を見て、彼はその脳裏に浮かんだ人物の名を…


    1.口にしてしまった。

    2.仕舞い込んだ

    dice1d2=1 (1)

  • 96スレ主25/10/28(火) 22:37:55

    峰田「麗日…オイラ、お前に何かあったらアイツに合わす顔が無くなっちまうよ…っなぁ、麗日…!頑張れ、頑張ってくれよっ、じゃないと……っじゃないと、緑谷が…!!!」


    麗日「……でく、くん…?」


    それまで、固く閉ざされていた麗日の瞼がほんの少しだけ持ち上がる。


    峰田「麗日っ!!」


    彼女は今の今までその名を、存在を思い出さないようにして、記憶の奥底に仕舞い込んで過ごしていた。

    峰田の一言でそれが表層にまで引き上げられてしまったのだ。


    その名を思い出した麗日は…

    1.そうか、デクくんもどこかで頑張ってるんだ…

    2.デクくんはもしかしたら、もう…

    dice1d2=2 (2)

  • 97スレ主25/10/28(火) 22:46:48

    麗日「…でくくん…もう、わたし疲れたよ…ここでねむれたら、でくくんのところにいけるのかな…?」

    焦点の合わない目で虚ろに言葉を紡ぎだした麗日を見て、峰田は自分が何を言ってしまったのかを漸く理解した。

    峰田「っあ…麗日っ…ごめん麗日っ!オイラが悪かった、軽率だった…!だからそんなこと言わないでくれよ麗日!!まだ、まだそうと決まった訳じゃねぇだろ!なぁ!っ、だから、諦めないでくれよ麗日…!!」

    必死に麗日の手を握り語りかける峰田であったが、麗日の瞳はすでに閉じられており、また苦し気な呼吸音だけを発する体となっていた。

    「うぅぅぅ……はーっ、はぁっ…」


    峰田「…ごめん、麗日…ごめん、……」


    力なく峰田は床に座り込む。


    悪化していく状況の中で、彼の中に一つの選択肢が浮かんでしまっていた。

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 06:34:04

    原作も少し見に行ったけどシャベル持ってるのがどっちも恋する乙女だったのすごいな
    でもつらい…つらいよ…

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/29(水) 15:52:05

    保守
    しかしダイスなのに人選良いなぁ

  • 100スレ主25/10/29(水) 20:50:56

    -非常避難区画-
    八百万「ッ…」

    「ギギギギギギ…」

    シャッターのその向こう側。
    淀んだ水溜まりの上に立つそれはまさしくかつてプレゼント・マイクだったものだ。
    分かっていた。既に、知っていた。
    しかし、二人はそれでもショックだった。
    嘘であれば、見間違いであればどんなに良かったか。

    飯田「…八百万くん。」

    シャベルを持つ手に、八百万は力を入れなおした。
    …自分たちの無事を願うものがいる。救わねばならない人がいる。
    それだけで、十分だった。

    八百万「すみません。…もう、大丈夫ですわ。」

    何も言わず、飯田は頷く。


    『まずは拘束を優先すべきですわ。』

    事前に決めていた手筈。いざかれを目の前にすれば何も考えられなくなってしまいそうであったがために。
    一拍置いて、飯田は動き出した。

    飯田「…こっちだ!!」

  • 101スレ主25/10/29(水) 21:09:13

    『マイク先せ……いや…かれの注意は飯田さんが引いてください。』

    飯田はエンジンは使わず、全力で走ってそれの視線を自らに誘導する。
    目の前を機敏に動くそれに単純な思考回路で動くそれは簡単に注意を奪われた。

    『その隙にわたくしはアレを作ります。』

    八百万の体から生成されたそれが水溜まりの上に積み重なっていく。

    『…あの時の、再現ですわ。わたくし達だけの力では恐らく、足りない。いざという時に、躊躇してしまう。』
    『…だからこそ…また、お借りさせていただこうと思いましたの。』
    『素材は前回と同じ。加えて、地面の水に着火剤を混ぜておきます。』
    『機を見て合図を飛ばしますわ。飯田さんはタイミングを合わせて…』


    八百万「飯田さん!!!」

    山のように創られたそれは時を同じくして創造されたカタパルトに乗せられてかれの方を向いていた。

    八百万「エンジンの、炎熱を!!」

    カタパルトの射出レバー。今度は、外さなかった。

    飯田「承知した!!」

    水面から数センチ上。飯田がエンジンをブーストすると同時にその熱が液体に伝わり。

    飯田「一時退却だ!!」

    勢いよく、燃え上がった。

  • 102スレ主25/10/29(水) 21:21:17

    炎が燃え広がるよりも飯田が八百万を抱えて階段の上に避難する速さの方が僅かに速かった。

    『ニチノール合金…ご存知ですか?』
    『加熱によって瞬時に元の形状を復元する…』
    『形状記憶合金ですわ!』

    カタパルトに乗せられていたのは二人の…A組の担任、相澤消太ことイレイザー・ヘッドの武器である捕縛布によく似ていた。
    ただし、八百万によって手を加えられたそれは熱によって元の形に勝手に戻るようになっている。
    射出され広がったそれは地面を這う炎の熱で瞬時に元の一塊の形へと戻り…

    八百万「とっておきのオペレーション、ですわ…」

    かれを、捕縛していた。
    その手がもう誰も傷つけることがないように。しっかりと。


    …着火剤はそれほど多くは無い。周りに水があることも手伝って炎はすぐに勢いを弱めていった。
    捕縛布の中でかれは藻掻いていた。何かに抗うように、必死に。

    八百万は深く息を吐き、左手に持っていたシャベルを両手で握り直した。

  • 103スレ主25/10/29(水) 21:32:00

    「…マイク先生。」

    階段を一つずつ降りながら。八百万は自分でも驚くほどするりとその名を口にした。

    「わたくし…言わなければならないことがありますの。」
    「先生は…何も悪くなんてありませんわ。あなたが生徒のためを思っていつも行動してくださっていたのは他でもない、我々が一番よく知っています。」
    「おかげで…今はわたくし達、みんな元気ですのよ。」
    「青山さんはいつも元気で…そして、皆のことをよく見てくださっています。」
    「麗日さんは…困った時に、とても頼りになります。」
    「飯田さんも、峰田さんも加わって…本当に、賑やかになったんですのよ。」
    「先生が居なかったらわたくし達、ここにはいませんでした。」

    「もう、大丈夫です。…だから…」

    シャベルの先端を向けるその手が、ひどく震える。

    「…八百万くんは立派な部長です。みなを先達するのに今、彼女以上に適した人物はいないでしょう。」

    八百万の後に続いて階段を降りていた飯田が彼女の隣に立ち並ぶ。
    その手は八百万の手と共に、シャベルの柄に添えられていた。

    「飯田さん…」
    「君一人にすべてを背負わせるわけにはいかないと、そう言っただろう。」

    震えは止まっていた。
    二人はシャベルを振り上げる。


    「ゆっくり…休んでください。」
    「今まで、ありがとうございました。」

  • 104スレ主25/10/29(水) 21:48:56

    -空き教室-
    ソファに寝かされていたはずの麗日はその手足をがむしゃらに動かし暴れていた。
    手枷、足枷は激しい金属音を鳴らし、その体にかけられた毛布からは布が擦れる音がひっきりなしに鳴っている。

    教室の隅に座り込んだ峰田は真っ青な顔でそれから目を逸らし続けていた。
    彼の脳内には、出発前に八百万がシャベルを持っていくからと代わりに用意したそれの存在が鮮明に浮かび上がっていた。
    震える足に鞭を打ち、彼は机の中からそれを取り出した。


    -非常避難区画 地下二階-
    物資が詰まっているのであろう箱が立ち並ぶその部屋の通路。
    その道を塞ぐように、自らの存在を主張するように、それは置かれていた。

    『医薬品』

    血の手形がつけられたそれの前に、八百万と飯田は膝をついて両手を合わせる。
    彼が、最期に残していったもの。
    二人は医薬品と書かれた箱から目ぼしいものを次々と取り出し、非常用の袋に詰めていった。

  • 105スレ主25/10/29(水) 21:55:29

    廊下を勢いよく駆けていく。
    ルールなど、とっくに意味を成していない。
    今はとにかく急がなくては。

    青山「おかえり☆」

    その部屋の前で二人を笑顔で迎える青山になんでもないような顔をして。
    勢いよくその扉を開けた。

    八百万「薬、取ってきました。」

    「…え…?」

    一人。
    たった一人で何を思い、考えたのか。

    護身用にと用意した出刃包丁を彼は握りしめ麗日に向き合っていたのだ。

    峰田「…」
    八百万「もう、大丈夫ですわ。」

    優しく、包丁を握るその手を上から八百万が触れる。

    包丁は彼の手の中を滑り落ち、床に当たって甲高い音を立てた。

  • 106スレ主25/10/29(水) 21:59:51

    調達してきた注射薬を麗日に注射する。
    じたばたと暴れていたその動きが次第に落ち着いていく。
    彼女は規則正しい寝息を立てて、深い眠りについた。

    峰田「大丈夫、なのかよ…?」
    八百万「鎮静剤と抗生物質と実験薬だそうですわ。脈拍も、体温もあります。」
    飯田「あとは…待つだけ、だ。」
    峰田「そう、か…」

    峰田ははだけてしまった毛布を掛けなおす。


    「…頑張れ、麗日。」

  • 107スレ主25/10/29(水) 22:10:10

    -???-
    廊下は人で溢れ返っている。
    人の流れに逆らって、青山は進んでいく。

    「ちょっと…通してくれないかな…☆」
    「ごめんよ…ちょっと…」

    その視線の先には学園生活部の4人の後ろ姿があった。
    さらに先には見覚えのある人物たちが4人を待つようにして立っている。
    青山は必死に4人に手を伸ばす。

    「まって…まってよ!みんなどこに行くんだい!僕を、置いて行かないで…」
    『おいおい、とんだバッドボーイだな。廊下は走っちゃいけないって習わなかったか?』
    「マイク先生…?」
    『早く教室に入れよ青山。みんなそこに居るぜ。』
    「みんな、教室に…?」

    言われるがままに彼は教室の扉を開ける。
    その先にはいつもの、明るい、教室が

    「あ…」

    割れた窓。辺りに飛び散った夥しい量の血液。
    乱雑に散らかされた机と椅子。

    「ま、マイク先生…?」

    振りかえるも、そこには誰もいない。
    ふと手元を見下ろす青山。
    その手には、血のついた…

  • 108スレ主25/10/29(水) 22:13:36

    -学園生活部 寝室-
    「!!!」

    布団の中で青山は目を覚ます。
    酷い、夢を見た。
    気持ちの悪い汗が彼の背を伝う。
    周りには、誰もいない。
    あの日からいつも彼と同じ部屋で寝ている飯田の姿も、峰田の姿も無かった。

    「っひ…」

    それが、今の彼にはひどく恐ろしいことのように感じられてならなかった。
    悍ましい感覚が彼を襲う。
    彼の中で何かが、変わろうとしていた。

  • 109スレ主25/10/29(水) 22:24:56

    -空き教室-
    峰田「オイラ…言っちまったんだ。麗日の前で…その、あいつの名前を…」

    二人が駆け付けた時の彼は酷く狼狽していた。そして、疲労してもいた。
    聞けば、麗日の前で彼女の思い人の名前を出してしまったのだという。

    八百万「麗日さんはずっと彼のことを思い出さないように、考えないようにしていました。…もしもの事を思えば心が折れてしまうと、そう考えてのことでしょう。」

    結果。麗日は一瞬生きることを諦めかけた。
    今は、分からない。落ち着いているように見えるがそれは薬の効果に過ぎないのかもしれなかった。

    峰田「…すまねぇ。…オイラが…っ、オイラのせいだ。これ以上、あんな姿の麗日、見てられなくって…」
    飯田「…君のせいじゃないさ。こんな状況だ。…皆、心をすり減らしていたんだろう。知らないうちに…少しずつ。」
    八百万「今は…ゆっくり休む時ですわ。ヒーローにも、休息は必要ですもの。少し…少しだけ、わたくし達は頑張りすぎたのかもしれませんわ。」

  • 110スレ主25/10/29(水) 22:35:24

    -空き教室 夜-
    青山「…」

    寝室からこっそり抜け出した彼は麗日の眠る空き教室の扉を開けた。
    ソファのその傍で三人は一つに固まって眠っている。

    その中の一人、峰田が持っていた鍵を抜き取った青山はそれを使い、麗日の枷を取り外した。

    『そんなこと言わないでくれよ麗日!!まだ、まだそうと決まった訳じゃねぇだろ!』

    青山「…」

    青山「君…彼の頑張る姿が好き、なんだっけ?」

    どこかで聞いたような話を、青山は口にした。

    『君…彼のこと好きなの?』


    青山「…彼も、君の頑張る姿が好きなんじゃないかな。」


    その時。
    毛布の下。ぐったりとしていた彼女の腕が微かに動いた。

  • 111スレ主25/10/29(水) 22:41:46

    -空き教室 朝-
    どこか遠くで鳥が鳴く声がして、三人はばらばらに目を覚ましていく。

    いつの間に朝になっていたのだと思う彼らは…すぐに気が付いた。

    「しーっ!」

    ソファの上。
    そこに腰かけて口元に人差し指を当てて笑う、麗日の姿に。
    座面に背中を預けるようにして眠っている青山の体には彼女が被っていた毛布が掛けられていた。

    峰田「う、麗日ぁぁぁぁ!!!」

    真っ先に峰田が飛びついていく。
    続いて八百万と飯田も彼女に駆け寄った。

    青山「えっ、なに、なに!?」

    急に騒がしくなった周囲に飛び起きた青山だったがしかし、互いに抱き合って目尻に涙を浮かべる4人を見て…
    彼は言った。

    「おはよう!」

    「「「「おはよう/ございますわ!!」」」」


    長い、長い夜が明けた瞬間だった。

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 07:58:19

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 08:03:34

    青山くんの情緒とかデクその他の生存とかまだまだ不穏だけどお茶子良かった…

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 16:26:24

    ほしゅ

  • 115スレ主25/10/30(木) 22:10:06

    -いつかの日 放送室前-
    放送室の扉の前。
    扉を背にプレゼント・マイクは辺りを取り囲む大量のかれらを睨みつける。
    その腕からはすでに大量の出血が見られ、息も絶え絶えであったがそれでも彼は諦めなかった。

    「この先にはなぁ…あいつの教え子たちが居んだよ…」

    大きく息を吸う。
    彼の個性ではかれらを再起不能にするほどの破壊力は生み出せない。
    精々聴覚を鈍くしたり、注意をひきつけたり動きを止めることしかできない。それでも。

    「ラウドアウト…シャウト!!」

    押し寄せるかれらの波が止まる。
    喉が枯れるまで?
    喉が潰れるまで?

    否。

    「死んでもここは通さねぇ……お前たちも雄英生なら分かんだろ、ここの校訓…!!」

    「PLUS ULTRA《更に向こうへ》…限界を超えた俺の魂のラストライヴ、特等席で聞かせてやるぜ…!!!」


    ………
    ……

  • 116スレ主25/10/30(木) 22:26:47

    -『あの日』よりも前 職員室-
    マイク「緊急避難マニュアルゥ?なんすか、これ。」
    根津「ある、ってことだけ確認して欲しいらしくてね。」
    マイク「…ってことは校長が関わってる訳じゃないんスか?」

    《以下の場合のみ開封すること》
    穏やかではない一文にマイクは眉根をひそめた。

    根津「うちは一応国立だから僕一匹の権限で学校全体をどうこうできる訳じゃないのさ。上が何か考えているらしいんだけど、僕のところまでは全く情報が下りてこなくってね…」
    マイク「はぁ、そういうもんなんすか…正直今はこんなもんよりも内通者の方を探るほうが先デショ。全く上も何を考えてんだか…」

    雄英が寮制を導入するキッカケ。
    林間合宿襲撃と、それに伴い浮上した内通者疑惑。
    マイクが生徒の中に内通者が居るに違いないと不断に主張していることを知る根津は深く頷いた。

    根津「もちろんそれも大事さ。ただ、雄英はいざという時に国民の皆様を守る場所でもある。目先のことだけに囚われてはいけないよ。」
    マイク「それは、モチロン分かってますケド…」
    根津「とにかく…これはこの辺に置いておくから、非常事態になったら開けるように。」
    マイク「へーい…」

    気の抜けた返事を返すマイク。
    その声を背に受け止めた根津は急に声を潜めて言った。

    根津「…そうだ、これはここだけの話にしておいて欲しいんだけどね。……どうにもこのマニュアル、僕には裏があるように思えてならない。」
    マイク「…裏?」
    根津「頭の隅には置いておいて欲しいのさ。……僕の杞憂に終わるといいのだけれども。」
    マイク「はあ…非常事態、ねぇ…」

  • 117スレ主25/10/30(木) 22:36:19

    -『あの日』から少し後 職員室-
    どうして、どうして俺はあの時ちゃんと確かめなかったのだろう…

    「…非常事態、だよな…」

    ただの避難指示だ。
    関係ないはずだ。そう願った。
    そうでないという確信もあった。

    『感染率が高いものは致死率が低く、致死率が低いものは感染率が高い』

    『研究途中のものが漏洩した場合は、この限りではない』


    「…なんだよ、これ……」

    知らなかった?関係ない?
    …違ぇだろ、あいつらを巻き込んじまったのは俺たちだ。
    俺たち、大人だ。
    誰かが、俺が、ちゃんとこれを見ていれば。
    だから、だから全部……俺が…

  • 118スレ主25/10/30(木) 22:37:51

    -『あの日』から少し後 廊下-
    マイク「だいぶ進んだんじゃねーか?」

    机で出来たバリケードが天井近くまで積みあがっている。
    有刺鉄線を張り巡らされたそれは簡単には突破できないだろう。

    八百万「もう少しで三階は完全に確保できますわ。」
    麗日「そしたら二階だね!」
    八百万「脱出路の確保もしたいところですが、一階はまだ遠いですわね…」
    マイク「ああ…一階はまだしばらくかかりそうだな。」

    『地下一、二階を本校における非常避難区域とする』

    マイク「…」

    今、無理に一階を目指すのも危険だ。
    …こんなことを話して、一体あいつらはどう思う?
    しかし、いつかは地下に行かなくてはいけない。
    ……その時までには、話しておかねーと…


    ……
    ………

  • 119スレ主25/10/30(木) 22:51:19

    青山…麗日…八百万…

    はら、へった…

    あけて、くれよ……あけろ、どうして…あけて、くれないんだ…

    「せんせい!!!」

    ……

    ちがう ちがう ここじゃだめだ はらへった…けど、だから……

    血を地面に垂らしながら。
    一歩ずつ彼は進んでいく。下へ、下へと。
    シャッターには机が噛まされていた。誰かが、開けたのだろう。
    地面に這いつくばりそこを潜り抜けた彼は最期の力を振り絞り、そこへ向かった。
    水の溜まる通路を抜け、その先。
    コンテナの立ち並ぶその部屋で、彼は滲む視界の中それを見つけ出した。

    『医薬品』

    さいごまで、あいつらを守ってやれなくて…ごめん、相澤……お前はどうか、こっちに来んなよ。
    でももし…そっちに行ったときに二人揃ってやがったら…そん時ぁ、全力でぶっ飛ばす……

    朧げな視界の中。彼は、自分の終わりを悟った。

    「あいざわ……しら、くも…」

    どこか遠くで、かれは水音を聞いたような気がした。

  • 120スレ主25/10/30(木) 22:56:02

    -現在 屋上-
    屋上の畑の一角。十字架の形をしたそれに、学園生活部の5人は揃って手を合わせる。

    麗日「遅くなってすみません、先生。」
    八百万「見守っていてください…」

    柔らかな日差しが白い雲の隙間から屋上へと降り注ぐ。

    青山「……」

    光を受け輝く十字架を、青山は静かに見つめていた。

  • 121二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 08:21:56

    ほしゅ

  • 122二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 17:21:06

    保守
    このスレの更新がここ最近の楽しみです 情緒がめちゃくちゃ荒ぶるけど

  • 123スレ主25/10/31(金) 18:29:20

    展開もキリがいいのでここらで一度自我を出します。
    皆さん、保守、感想コメント及びいいね、大変ありがとうございます!スレ進行において大変励みとなっております。
    全てのご感想に対し返信することはできませんが、時折見返してはにやにやさせていただいております。

    現在進行中の第4章、そして次の第5章は物語全体で見たときのプロローグに当たる部分だとスレ主は考えております。
    つまり、まだまだ序章な訳ですね。
    (原作をご存じの方はお気づきかとは思いますが、章分けは原作コミックの巻号に対応させています。)
    第5章が終わったらオリジナル展開を作ってA組、B組ともに一度に大勢登場する機会を設けたいと思っておりますのでまだ推しが出ていない!という方、もうしばらくだけお待ちくださいませ。

  • 124スレ主25/10/31(金) 21:10:57

    -学園生活部-
    シャベルを手に持ち、頭上でくるくると回す麗日。
    最後に柄を両手で掴み、中段の構えを取る。

    麗日「うん、完璧!」
    八百万「調子が戻ったようですわね。」
    麗日「いやー、ご心配おかけしました!」
    峰田「流石に様になってんなー。」
    飯田「洗練された動きだな!すっかり治ったようでよかった!」
    青山「アクション俳優とヒーローを兼任できるんじゃないかい?」
    麗日「え、そうかなぁ…えへへ…」

    照れたように笑う麗日。
    見かねた八百万がぽん、と両手を叩く。

    八百万「皆さん静粛に!そろそろ出かけますわよ!」
    青山「はーい☆今日はどこに行くんだい?」
    八百万「今日は倉庫の整理をしますの。」
    麗日「地下一階の倉庫、広いよー?」
    八百万「ちゃんとお仕事をこなせば備品にもしていいそうです。しっかり取り組んでまいりましょう!」
    青山「そういうことなら…頑張らないとね☆」

  • 125スレ主25/10/31(金) 21:19:11

    -少し前 学園生活部-
    峰田「…宝の山?」

    青山を除いた4人は情報共有を行っていた。
    薬を取りに地下に向かった八百万と飯田がそこで何を見たのかを。

    飯田「ああ。あの時は急いでいたから救急箱しか持ち出すことができなかったが…」
    八百万「他にもたくさんのコンテナがありましたの。」

    その言葉に麗日は視線を落とす。

    麗日「…最初から、全部準備していた、ってこと…?」
    八百万「怖い、ですわよね。…でも、手がかりもあるかもしれませんの。」
    峰田「手がかり?」
    八百万「こんな事態をつくった人が居るというのなら、そこに続く手がかりがあるはずですわ。」
    峰田「なるほど、確かになー。」
    飯田「そういう訳だから、また俺と八百万くんで見てこよう。」

    一度そこに赴いたことがあるのだからと申し出た飯田に対し、麗日は首を振る。

    麗日「いや…みんなで行こう。青山くんも含めて。」
    八百万「何があるか分からないからこそ、慎重に行かなければ…」
    麗日「うん、何があるかわからない。…だからこそ…やれるうちに色々やっとかないと、でしょ?」

    深く考え込むそぶりを見せる八百万。
    …確かにそろそろ動く時かもしれない。彼女はそう思った。

    八百万「分かりましたわ。でも、くれぐれも気を付けて。」

    こうして学園生活部全員での『倉庫整理』決行が決定した。

  • 126スレ主25/10/31(金) 21:26:59

    -非常避難区域-
    シャッターの下を覗き込み、麗日が中の安全を確認する。
    先の戦闘の片付けは済んでいる。が、万が一ということもあった。

    八百万「まだ授業をしているクラスもありますから、お静かにお願いしますわ。」
    青山「了解☆」

    麗日からのOKサインを受け取った4人は中へと入っていく。

    青山「…暗いね!明かりはないのかい?」
    峰田「どうだろうなー。」
    青山「…あ、」

    何かに気が付いた青山がそれを押すと途端に辺りに光が満ちる。
    灯りが点いたのだ。

    八百万「…電気、通っていたんですのね…」
    麗日「ぜんっぜん気が付かなかった…」
    峰田「いいもんあるかなー!エロ本とかよぉ!」
    飯田「峰田くん!勝手な行動は慎みたまえ!!」

    落ち込む二人を他所に男子たちは元気なもので先へ先へと駆け出していく。

    麗日「うわ!ちょっと皆待ってー!」
    八百万「み、皆さん!?いつの間にあんなに遠くに…!あぁ…!」

    その後を急いで女子二人も追いかけてゆく。
    薄暗く不気味であったはずのそこは今、不思議なくらいに明るかった。

  • 127スレ主25/10/31(金) 21:34:58

    -非常避難区域 地下一階-

    そこには決して小さくないサイズのコンテナが天井近くまで埋め尽くされていた。

    あまりに壮観な光景に5人は息を飲む。


    峰田「うげぇ…これ全部確認すんのかよ…」

    八百万「後々のためですもの。頑張りましょう!」


    コンテナを一つ一つ開けて彼らは中身を確認する。

    少しでも使えそうなものがあればメモに残したり、持って帰れそうなものは取り出していく。

    八百万は例の『医薬品』と書かれた箱を今一度確認することも忘れなかった。



    そうして。

    棚一列分を確認し終わった麗日は次の列に取り掛かろうと棚の合間を抜け出した。


    麗日「…!!」


    その時、彼女は地面に点々とついた血痕を見つけてしまった。

    それは真っすぐと続き、扉へと向かっているようであった。

    ドアノブに手をかけ、一息ついて彼女は扉を開ける。


    その先には…

    1.誰もいなかった

    2.……

    dice1d2=2 (2)

  • 128スレ主25/10/31(金) 21:44:04

    天井から垂れ下がる麻縄。
    そこに括り付けられていたのは。
    だらりと垂れ下がった、

    麗日「………」

    見覚えのない顔だ、と彼女は思った。
    ヒーローではないだろう。恐らく他の学科の教師か、その他の職員か。
    かれらに襲われて、せめて自分は誰も傷つけまいと、自ら幕を下ろしたのだろうか。
    彼女には、わからなかった。
    ただ……ただ、そこには深いかなしみがあったような気がして、彼女は無意識のうちに手を合わせていた。


    青山「おーい!こっちこっち!!」

    は、と彼女は顔を上げる。
    遠くで青山が何か見つけたようだった。急いで彼女はその場を後にした。

    -冷蔵室-

    その三文字に集まった5人は生唾を飲んだ。
    もしかしたら、缶詰や乾きもの以外の食糧にありつけるのでは?
    そんな淡い期待が彼らの中に湧き出てくる。

    峰田「ま、まだ!まだ決まったワケじゃねぇよな…」
    八百万「中身があるとも限りませんし…」
    飯田「腐っているということもあり得る。」

    期待に踊る胸を押さえながら、麗日はそっと重たい冷蔵室の扉を開く。
    そして、そこには……

  • 129スレ主25/10/31(金) 21:51:56

    -学園生活部-
    熱々に熱された鉄板の上。
    冷蔵室の中にあったそれがミディアムレアに焼き上げられて寝かされていた。

    ステーキ肉。久々のご馳走に5人は目を爛々と輝かせる。

    峰田「おいおい良いのかよぉ…こんな、こんな…!!」
    麗日「いいんよぉ、最近頑張り続けてきた私達へのご褒美なんだよこれは…!」
    青山「うーん…délicieux☆」
    飯田「…沁みる…」
    八百万「あぁっ、久方ぶりの上質な食材…!わたくしの中で上質な脂質になっていくのがわかりますわ…!」

    先への不安も、今までのことも。
    この時ばかりはそれら全てを忘れて5人は目の前の食事に向き合った。
    突然降って湧いたひと時の休息は彼らの心も体も癒してくれたのだった。

  • 130スレ主25/10/31(金) 22:01:03

    -???-
    手術室のような空間で、全身を防護服に包んだ人物たちがそれに向き直る。
    『巡回発見物』と書かれたジュラルミンケースを念入りに消毒し、中を開く。

    財布、刃の折れたナイフ、携帯電話、拳銃。
    様々なものが取り出されていく。

    そして、一人がそれを持ち上げる。

    ビニール袋の中に入れられた、一枚の紙。
    光を受けて煌めくそれには装飾の多い筆記体でこう書かれていた。

    『Nous sommes très bien.』
    (ぼくたちは元気です)

  • 131スレ主25/10/31(金) 22:10:00

    -学園生活部-
    4人は本格的に外へ出ることを考えていた。
    緊急避難マニュアルの最後のページ。
    そこには緊急連絡先と拠点一覧が載せられていたのだ。
    目的地はここから選ぶのがいいだろう、ということになり彼らは話し合いを重ねている。

    八百万「…どこに行くにしても、万全に準備して行く必要がありますわね。」
    飯田「そういえば、図書室にサバイバル辞典があったな。持っていくとしよう。」
    峰田「八百万が生きる辞典みてーなもんだから早々にお役御免になりそうだけどな。」
    麗日「そうなったらいざという時に武器にしよう!!」
    八百万「本をそういう風に扱ってはいけませんわ!…目的地はまた後で決めるとして…今はどこに行くことになってもいいように準備を進めることにしましょうか。」
    峰田「準備…そーいやラジオがあったよな、それも持ってくか?」
    八百万「そうですわね…なにか電波を受信できるかもしれませんし、そうしましょう。」

  • 132スレ主25/10/31(金) 22:20:26

    -学園生活部-
    『授業』を終えた青山を加えた5人は集まってラジオが何か電波を受信しないか長いこと待ち続けていた。
    救助活動を行う何者かが電波を、情報を発信しているのかもしれない。
    それを受信できればと思ってのことであった。

    八百万「…電気やインターネットがなくとも、これならと思ったのですが…」
    峰田「そもそも…そう簡単に電波なんか流せんのかよ?」
    八百万「原理は簡単ですから、可能性はあるはずなのですが…」
    峰田「八百万の簡単はイマイチ信用出来ねぇんだよなぁ…」
    青山「…よくわからないけれど…それならいっそこっちから発信するのはどうだい?」
    八百万「発信…こちらから、ですか?」
    青山「簡単、なんだろう?待ってるよりもずっといいと思わない☆?」

    なるほど、と八百万は驚きながらも得心した。

    八百万「確かに…そうですわね。放送室の設備を使えば十分に可能でしょうし…やってみる価値はありますわ!」
    飯田「外部との連絡が取れれば出来ることも増える。頑張らねばな!」

    希望が見えた学園生活部はラジオをその場に置くと揃って放送室へと向かっていく。

    誰も居なくなったその教室。
    机の上にぽつりと置かれたラジオが突然ノイズを発する。

    『……きこえ……すか……』

    『こち……れが……たら…じんる……ま……きこえ……すか』


    第四章 終わり

  • 133スレ主25/10/31(金) 22:34:28

    『部活動日誌』 プレゼント・マイク
    No.1
    少し落ち着いた。まだまだ予断は許されないが、少しだけ余裕ができたんで、思ったことを書いておこうと思う。
    何を書けばいいのか、何から書いたらいいのか、まだよくわかってない。
    このノートが何になるのかもわからない。手記にでもなるのか。
    もしかしたら手紙。告発。あるいは遺書。

    俺はプレゼント・マイク。国立雄英高等学校の(英語教師だ、と一度書かかれたのち『だ』の文字が塗りつぶされている。その後『だった』の文字が書き加えられた上を二重線で消されている。)英語教師だ。
    いやまだ教師だ。あいつらがいるんだから。

    No.2
    あの日のことについて書いておくべきなんじゃないかと思う。思うが(ミミズが這ったような字)
    思い出すと気分が悪い。体が寒くなる。耳の奥で悲鳴が聞こえちまう。
    茶を飲んだ。少しずつ書くことにする。

    うちの屋上は園芸部とやらがある関係で生徒たちが出入りしているそうだ。
    厳密には園芸部員が決められた時間だけ入場が許されているそうだがあまり守られていない。
    自由な校風のせいだろうが、そういう所があるから敵に付けこまれるんだ。…いや、今は関係ない。話を戻す。

  • 134スレ主25/10/31(金) 22:44:50

    No3.
    あの時。俺が屋上にいたのはたまたまだ。なんとなく、空を見たくなった。
    屋上に行く途中で青山と、八百万に会った。
    担任に雑用を言いつけられたのだと大量の書類を抱えていたもんだからあいつには内緒だとこっそり屋上に連れて行った。ルールが緩いだなんだと文句を言う割には俺もそんなに変わらない。
    とにかく、この時の気まぐれがその後の命運を分けた。
    最初に気づいたのは青山で、校庭を指さした。
    何か暴動のようなものが起きているのがわかったが、現実味が湧かなかった。
    それから麗日が息を切らして駆けあがってきてそしてドアの外にいた大勢の生徒たち。悲鳴。
    俺はあの時ドアを押さえ続けた。

    No.4
    なんとか生きて暮らしている。水と電気があるのがこんなにもありがたいとは思わなかった。
    屋上の太陽電池が無事だったのは何よりだ。お湯さえでてくる。
    避難対策がしっかりしているというか、しすぎている。雄英だからといえばそうなのだが。
    いずれ職員室に行って確かめないといけない。
    教室の片付けが進んで、他の事を考える余裕ができた。
    教師として、いちプロヒーローとして。こいつらに何をしてやればいいのだろう。
    こんなことは初めてだった。考えが、まとまらない。
    青山がとくにしおれている。俺もだった。なんとかしねーと。

  • 135スレ主25/10/31(金) 22:54:32

    No.5
    八百万百。彼女は落ち着いている。芯が強い。みんなを思いやる力がある。それはヒーロー科全員に言えることだが。
    その八百万から、部活動と、授業の提案があった。少しでも気を紛らわせるために、非日常を薄めるために。
    悪くないと思った。こいつらはヒーローの卵のクセして今すぐにでも外へ出てヒーロー活動をしたいだなんて顔をしている。これで少しでも学校に縛り付けて、いや、留めておけるのなら。
    生徒は教師に教わるだけじゃない。教師が生徒に教わることもあるのだと、そう思った。

    No.6
    青山優雅。彼もずいぶん明るくなった。
    学園生活部。悪くない名前だ。俺が顧問で、あいつらが部員。
    ここに閉じこもっているのではない。ここで暮らしているのだ。
    状況は変わらなかったが、意識が変わった。少しずつ、余裕が出てきたように思う。
    あいつらはどう思っているのだろう。家族と離れて。
    今はただ部活を、毎日を重ねていこう。きっと、なにか意味があるはずだ。

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 22:56:54

    マイクはアニメでいつもナレーションしてくれてるからこういう独白似合うな…声が聞こえてくる

  • 137スレ主25/10/31(金) 23:00:27

    No.7
    麗日お茶子は強い。戦闘力だけの話じゃない。精神面においても、だ。
    これだけ生活圏を広げられたのも彼女の力あってこそだろう。俺たちだけだったらもっと時間がかかっていたはずだ。
    教え子を危険な目に遭わせるこおには悩みもある。俺が代わりになれるもんならなってやりたいが、そうしても犠牲が増えるだけだ。
    俺にできることは、こいつらの成長の支えになること。心を庇うことだ。そう思っている。

    No.8
    青山が(黒く塗りつぶされている)
    いや、気のせいか?
    気のせいかもしれないが、書いておく。
    前からどこか調子の外れた言動をすることがあるとは思っていたが、最近それがもっとひどくなったような気がする。
    わからない。こんな時、お前だったら(ミミズの這ったような字)いや、やめておこう。
    青山は明るくなった。元気になった。あいつの笑顔は、本当に力づけられる。
    でも、これでいいのか。不安になる。

  • 138スレ主25/10/31(金) 23:03:43

    No.9
    (職員室が、と書かれた字が黒く塗りつぶされている。)
    かわいい兎だった。
    口田が飼っていたという。毛並みも綺麗だった。
    悪いことをした、と思う。ただ、こいつが逃げ出してきたってことは(黒く塗りつぶされている)

    でも(ミミズが這ったような字)

    戻って(ミミズが這ったような字)

    このノートが何になるかわかった気がする。

    No.10
    これはたぶん遺書だ。

    俺は罪を犯した。

    いつかこれを読む人にそのことを知って欲しい。

    あいつのことだ。

    青山優雅の時間が止まったのは俺のせいだ。

  • 139スレ主25/10/31(金) 23:08:59

    No.11
    青山の笑顔を望んだのは俺だ。学校生活の幻想を作り上げたのも。
    あいつの様子がおかしくなった時に、笑顔が増えたのだからと、それを好ましいと思った自分が居た。
    この境遇すら俺のせいだ。この前、職員室に行った。避難マニュアル。俺の責任。大人達の責任。
    あいつらの周りにいる大人は今や俺だけだ。だから、これは俺の責任なのだ。
    時間の流れは止まらない。いつか、もしあの三人がこの学校から笑顔で出られるのなら、
    そのためなら俺はどうなってもいい。
    あいつらを元気に送り出すこと、俺はそのために生きている。
    俺はプレゼント・マイク。国立雄英高等学校の英語教師であり、プロヒーローだ。

    (水滴によるものと思われるシミが紙に残っている。)



    (…さらに続きがある。)

  • 140スレ主25/10/31(金) 23:28:12

    No.12
    ここからは俺と同じく国立雄英高等学校で教鞭を奮う教師、イレイザー・ヘッドこと相澤消太に宛てたものだ。
    もしそれ以外のやつがこれを読んでいるならどうか、これをイレイザーに見せて欲しい。

    相澤。俺は今もお前が生きていると思って筆を取っている。
    もし、万が一にもくたばっちまったなんてことがあったら、そん時はお前の黒歴史全部A組に暴露してやるからな。
    最初に書いておくが、これは遺書だ。柄じゃねぇとは思うが、こんな時だ。何が起こるかわからない。
    だからこそ、遺しておく。
    青山のことは、悪いと思っている。腹の底が見えないヤツだとは思っていた。
    そういうタイプが一番警戒しなくちゃいけないんだと、分かっていたはずなのに、怠った。
    あいつが今幸せな幻を見ているのは俺のせいだ。気が付いてやれなかった。いや、気が付いていたのに目を逸らしていたのかもしれない。無意識のうちに。

    No.13
    他のA組の生徒に関してもそうだ。結局今生存が確認できてんのは3人だけだし、その3人にしたって俺一人の力だけじゃ救いきれなかった。本当に、情けない。
    でも、だからこそこの3人だけでも俺は死力を尽くして守り切るつもりだ。
    こいつらに、俺たちのような思いをさせてはいけない。そうだろ?
    A組のやつらは強いよ、相澤。B組だってそうだ。だから、俺はこいつらを生かすことだけを今は考えている。
    生きてさえいれば、いつかは会える。逆に死んじまえばそれきりだ。

    (ミミズが這ったような字)ダメだ、書きたいことがまとまらない。
    なぁ、こんなもん書いといてなんだけど、俺は直接これをお前に伝える気でいんだよ、相澤。
    そん時までには言いたいこと、言わなきゃいけねぇこと、まとめとくから。
    生きて待っててくれよ、相澤。お前まで、白雲のところに行くな。たのむ。
    お前の永遠の親友 山田ひざし

    (前のページよりも多くの水滴によるものと思われるシミが残っている。)
    (これ以降のページは全て白紙だ。)


    第五章 始まり

  • 141スレ主25/11/01(土) 00:04:34

    すみません、自我もう一回出します。

    (誤字見つけたので…)

    スレを一から見返してみると修正したいところや誤字がいたるところにあるんですけど一度投稿したレスは編集ができないんですよね残念なことに。


    ということで今まで投稿してきた文章の加筆修正verって需要あるでしょうか?

    もちろんあくまでこのスレがメインなので気が向いた時に進める形になるとは思うんですけど…

    …というか既に第一章の分は作っちゃったんですけどね。もちろんストーリーは据え置きです。

    ゆうえいぐらし! 加筆修正ver. まとめ | Writening第一章 https://writening.net/page?hKaYRDwritening.net

    今までのストーリーを振りかえりたい、という時にもどうぞ。

    スレの方の進みに比べれば牛歩の歩みになるとは思いますが、需要があるようならこちらも頑張って更新します。

    ダイスを途中で振る都合上全てこちらで書くという訳にもいかないのが難しいところ…

  • 142二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 08:39:45

    まとめはそれはそれで助かるので嬉しいです

  • 143スレ主25/11/01(土) 10:47:26

    >>142

    ありがとうございます!!!

    裏でちまちま進めておきますのでたまに覗いてやってください。


    では、今日は土曜日で時間があるので一気に第5章駆け抜けていきます。

    その後は物間くんの分の救済措置ダイスを振ったりオリジナル展開用ダイスを振ったりしていきますよー!

  • 144スレ主25/11/01(土) 10:59:52

    -校舎内 廊下-
    青山「Bonjour☆どうだい、リスナーの皆!僕のこの煌めきは!!カメラでは表しきれないくらいに…」
    峰田「青山、これラジオだっつってんだろ!」
    青山「おっと、そうだった。失敬失敬☆…さて、こちら学園生活部放送局…今日は雄英高校から校内の様子をお届けするよ☆」

    学園生活部は自分たちの存在を外部にアピールするため、ラジオ放送を始めていた。
    内容をどうするか、という問題は彼らを非常に悩ませたが…
    暗い内容を放送しても仕方が無い。嘘が無い程度に、しかし聞いてくれる人に希望を感じてもらえるようなそんな放送にしよう、そういう話にまとまったのだ。
    その結果が青山による校内散策の生中継と、そういう訳である。

    青山「僕たち学園生活部は学校に泊まる代わりにいろいろな部活や委員会の手伝いをしているのさ。たとえば…ここ☆!」
    青山「放送部の皆はいつも放課後に音楽を流したり、普段から様々な放送を流してくれているんだけど、今日はその設備を借りて放送しているよ☆」

    マイクロフォンを片手にポーズを決めた青山を、放送室の機材の前で八百万は穏やかな顔で見ていた。

    その後も青山と学園生活部の面々による校内散策は続いた。
    図書室、学園生活部の部室、教室…様々な場所を巡っていく。

    青山以外の部員の目には依然として荒れ果てた校舎が見えているのだが、不思議と青山の紹介を聞いているとそれがかつての姿に蘇ったような錯覚に陥った。

  • 145スレ主25/11/01(土) 11:06:46

    -放送室-
    ラジオ放送を進めていく学園生活部の話し声を微笑ましく聞いていた八百万。
    しかしその耳に当てていたヘッドフォンから流れる音声にノイズが混じる。

    八百万「…?」

    首を傾げた八百万は機材に取り付けられたツマミを回していく。

    電波に乱れでも生じたのだろうか…

    カチカチと機材を操作する彼女の耳に、それは唐突に流れ込んできた。

    『……い存者を捜索中』

    明らかに、学園生活部のものではない声。
    八百万は手の動きを止める。

    『応答せよ応答せよ こちら―――』

    脳が理解するよりも早く。八百万は叫んでいた。


    「みっ、皆さん、大変!!!」

  • 146スレ主25/11/01(土) 11:14:14

    -屋上-
    無線イヤホンでその声を聞いていた学園生活部はその後急いで屋上へと向かう。
    息を切らす青山と峰田を横目に麗日と飯田は屋上の柵へと飛びついた。

    麗日「どこっ…どこに…!!」

    見える範囲には辺りをうろつくかれらしか見えない。
    と、飯田が空を見上げて声を上げた。

    飯田「…上だ!!」
    麗日「!!」

    飯田が指さした先には、小さいながらも確かにヘリの姿が見えていた。
    一も二もなく麗日は叫ぶ。

    麗日「おーーーーい!!!」

    つられるようにその場に居る他の三人も空に向かって声を上げる。
    こっちだ、こっちに居るんだ、気が付いてくれ、そう願いながら。

    青山「……なんか、怖い…ような?」
    峰田「な、なに言ってんだよ青山。怖くないだろ、あれは…」

    彼らは空を見上げる。
    分厚い雲の隙間から差し込む太陽光を一身に受けるそれに不審な点は無い、ように見える。


    …一方、ヘリ内部では。

  • 147スレ主25/11/01(土) 11:18:09

    迷彩服にガスマスク。
    対策は、万全なはずだった。
    手には先日発見されたNous sommes très bien.の字が書かれた手紙。
    裏には、ここの詳細な座標が書かれていた。

    力が上手く、制御できない。
    手に持っていた手紙を思わず強く握りつぶしてしまう。
    だめだ。はやく。あれを。

    傍らに置いていたバッグから注射器を取り出す。
    キャップを外して、はずして…


    注射器は、言うことを聞かなくなってしまった己の手の中で粉々になってしまった。

  • 148スレ主25/11/01(土) 11:22:58

    いろんなことがあった。

    みんながいて、飯田くんや峰田くんも加わって。

    つらいこともあったけど、みんな一緒に乗り越えた。

    だから毎日がとても楽しい。

    うん、すごく楽しい。

    「…揺れて、ませんか?」

    「どう、だろ…」

    「着陸するんじゃ、ありませんの…?」

    あぁ、でも楽しい時間って

    どうしてこんなに短いのだろう―――


    急激にバランスを崩したヘリはそのまま地面に吸い寄せられるように落下していく。
    直後、爆炎。
    大きな爆発音と共に、黒い煙が屋上にまで立ち昇って来る。
    泡沫の希望は、たった今彼らの目の前で無残にも潰えた。

  • 149スレ主25/11/01(土) 11:26:49

    麗日「っ、私、行ってくる!!」
    飯田「なら、俺も…!」

    青山「ぁ…」

    麗日「青山くんは、ここで待ってて!!」

    自分も、と動いた青山を急いで麗日は静止する。
    渋る彼の肩に八百万はそっと手を置いた。

    八百万「…歓迎の準備をしなくてはなりませんものね。」
    青山「…うん。」
    峰田「…気をつけて行ってこいよ。」

    麗日「うん!」
    飯田「あぁ、行ってくる!」

    屋上から二人を見送る青山の顔は、少しも晴れることはなかった。

  • 150スレ主25/11/01(土) 11:31:10

    -校舎内 安全地帯外-
    廊下を一目散に駆けていく二人。
    麗日は異変に気が付く。

    麗日「…いつもより、少なくない?」
    飯田「減るはずはないから、どこかへ集まっているんだろう。」
    麗日「どこ、に…?」
    飯田「それは、おそらく…」


    校舎内一階。
    身を隠しながら外の様子を窺う二人は予想通りの光景に顔を顰める。

    煙を吐き出しながらひしゃげるヘリに、大勢のかれらが群がっていた。
    中には雄英高校の制服を着ていない者も多く居た。

    飯田「…外からも来ているようだな。」
    麗日「雄英バリアを維持するための電力まではないから…」

  • 151スレ主25/11/01(土) 11:36:37

    -屋上-
    青山「準備、かぁ…客人にはチーズをお出しした方がいいと思うかい?」
    八百万「えぇ…そうですわね。お紅茶もあったかしら…」
    峰田「…そーだな、ちゃんと準備し…」

    DOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!

    「「「!!!!」」」

    ヘリが墜落した方向。
    麗日と飯田が、向かっていった方向。

    デトネーションと共に先ほどとは比べ物にならないほど大量の煙と炎が噴き上がる。
    三人は屋上から下を見下ろした。

    ―その先には、まだ、二人が。

  • 152スレ主25/11/01(土) 12:23:07

    -少し前 外-
    麗日「よし…いつでもいけるよ!」

    二人が即席で立てた作戦はこうだ。
    麗日の個性で二人ぶんの重力を打ち消す。
    そして飯田の個性を推進力にして、かれらの頭上を麗日を抱えた飯田が進み一息でヘリに接近する。
    ショッピングモールで峰田救出の際に使った作戦を、二人用に組みなおしたものだ。
    あの時の防犯ブザーも手元にある。飯田は頷いた。

    飯田「3 2 1で行こう。」

    「3」
    紐に手をかける。

    「2」
    エンジンに、火が付く。

    「1」
    紐を引き抜いて。

    RRRRRRRRRR!!!!!!!

    けたたましい音量の防犯ブザーが鳴り響き、周囲のかれらの動きが止まる。
    その隙に二人は高く、高く空を舞う。
    麗日は視線を地面にやり、どこか身を隠せる場所が無いかを探す。

    ヘリが落ちたのは雄英高校の駐車場近くだった。
    まだ原型が残っている車の近くまで来た二人は一度そこから様子を窺うことに決めた。

    麗日「解除!」

  • 153スレ主25/11/01(土) 12:28:02

    細く、黒煙を噴き出すヘリ。
    車の陰からその様子を見ていた麗日は首を振る。
    ヘリ内部は煙で満たされていた。

    麗日「…無理だ。」
    飯田「麗日くん…?」
    麗日「あの中じゃ助からないよ。…もしかしたら、先に脱出しとるかも…」
    飯田「…それもそうだな。よし、探そう。」

    また空を移動しようとエンジンをブーストしかけた飯田は、ふと気が付いた。

    炎が、迫っている。

    自らにではない。液体を伝って、ヘリの方向へ。

    その先には、ヘリの、燃料タンクが。

    「――――」


    DOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!

  • 154スレ主25/11/01(土) 12:31:17

    -屋上-
    八百万「なんで…どうしてっ!!!」

    柵に手をかけたまま、八百万はその場に頽れる。

    峰田「……嘘、だよな…?」

    その横で、峰田は足を震わせる。視線は、ヘリの方から離れなかった。

    青山は。

    絶望に打ちひしがれる二人をただ、見ていることしかできなかった。

  • 155スレ主25/11/01(土) 12:33:59

    ―誤魔化し続けた日々は、もう終わり。

    名残惜しいけれど、仕方がありませんわ。

    思い出を、力に変えて

    気持ちを入れ替えて、頑張ろう

    今日から始まるのは―


    予習復習は欠かしたことがない。

    すぐには見えなくとも、積み重ねが大事。

    そうでしょう?

    一度に少しずつ。それが大きなものになる。

    そう思ったから頑張れた

    学園生活部をみんなと一緒に積み重ねた

    なのに………

  • 156スレ主25/11/01(土) 12:40:50

    -屋上-
    青山「…八百万さん、峰田くん…二人を、迎えに行った方がいいんじゃないかい?」
    八百万「そう、ですわね…」

    答えながらも、八百万は立ち上がることができなかった。
    峰田は、返事を返す余裕すらないようだった。

    八百万「すみません…先に、行っててください…」

    心配そうな表情を浮かべながらも、青山はその場を立ち去る。
    後に残された八百万は、柵に縋りつきながら慟哭する。

    「……どうして!!」
    「なんでっ…!!危険だと分かっていながらっ、わたくしは…!!」
    「こんなのっ、こんなの、どうしようも…!」

    峰田「…青山?」

    は、と八百万は後ろを振り返った。
    覚悟を決めたような顔の青山が、そこには居た。

    青山「…もう、大丈夫みたいだね。二人とも。」
    八百万「え…?」
    青山「だって、立てているじゃないか。」

    自分の足を見下ろす。
    いつの間にか、感情に突き動かされた彼女は立ち上がっていたのだ。

    青山「行こう。一緒に。」

  • 157スレ主25/11/01(土) 12:45:41

    -校舎内-
    煙は校舎の中にまで入り込んでいた。
    八百万が創造したガスマスクをつけ、彼らは階下に下っていく。

    峰田「窓からは行けねーのか?避難梯子あっただろ…?」

    近くの窓から外を覗き込んだ八百万はかぶりを振る。
    無数のかれらが窓から身を乗り出しているのが見えたからだ。

    峰田「オイラだけだったら個性でなんとかできっけど…」
    青山「…そうだ、館内放送。」
    八百万「放送…?」

    突然、青山が閃いたように言う。

    青山「避難訓練さ。訓練火災ってやつ…二人にも、聞こえるだろう?」
    八百万「!!」
    峰田「それだ、青山!!」

    -放送室-

  • 158スレ主25/11/01(土) 12:48:50

    放送室に入った三人。
    真っ先に機材の方へ向かった八百万は、タイマーを探す。

    八百万「タイマーは…7分ほどがいいかしら…」
    峰田「タイマーなんてあったか?」
    八百万「…ありませんでしたわね。…それなら…」

    携帯電話を取り出した八百万は録音アプリを立ち上げる。

    八百万「青山さん、お願いしますわ。」
    青山「任せて☆」

    録音したその音声が7分後に再生されるように設定した八百万はその携帯電話をその場に置く。
    機材の電源を入れて、三人は足早に放送室を後にした。

  • 159スレ主25/11/01(土) 12:55:20

    煙で満ちた校舎の中を、三人はかれらを避けながらとにかく階下を目指して歩いていく。
    保護されているハズの目に、煙が沁みたような気がした。
    ―早く、行かなくては…でも、どこに…

    『訓練火災です☆』

    八百万「…!急がなくては…!」
    峰田「嘘だろっ、もう7分が…!」

    『麗日さん、飯田くん、聞こえているかい?』

    焦る二人の服の裾を、青山が力強く握る。

    青山「あっち…」

    朧げに白む視界の中。
    八百万と、峰田は煙の中に浮かび上がるその姿を見た。
    すらりとしたシルエット。高く逆立った、髪の毛。

    八百万「え……」

    『僕たちは先に避難しているよ☆』

    二人は、その影に向かって手を伸ばす。
    ―待って、まって…!
    手が届く。そう思った時。

    八百万の手に、固い感触が伝わった。

    八百万「これ、って…」

  • 160スレ主25/11/01(土) 12:59:36

    八百万の手が触れたのは、シャッターの扉だった。
    三人はいつの間にか非常避難区域の入り口にたどり着いていたのだ。

    八百万「ここ、って…」

    シャッターの下の微かな隙間を三人は潜り抜ける。
    階段をいくらか下ったところで、峰田が後ろを振り返った。

    峰田「シャッター閉めないと煙が来るだろ、オイラが閉めてくる。」
    八百万「ありがとうございます…お願いしますわ。」

    階段に座り込み、峰田を見送る八百万。
    そのすぐ横で、誰にも聞こえないような小さな声で。
    青山は独り言つ。

    「…メルスィ、マイク先生…」



    『安全なところに避難してまた会おう!アデュー!!』

    放送の声が、大きく響き渡った。

  • 161スレ主25/11/01(土) 13:08:30

    -外-
    「PLUS……」 「ULTRA!!!!!」

    「大丈夫かい、麗日くん!」
    「大丈夫、飯田くんは!?」

    直前にエンジンを温めていたのが功を奏した。
    間一髪、爆発の寸前に飯田は麗日を抱えてヘリから遠ざかることができたのだ。
    無重力にはなれなかったため、かれらの合間を縫うように飯田は走る。

    「大丈夫だとも!」

    再び身を隠せる場所を見つけた二人はそこへと滑り込む。
    最早ヘリの操縦者の生存は望み薄であった。

    麗日「…どうしよう、これ以上は私たちまで…」
    飯田「…皆のところへ戻るべきだろうか…」

    頭を悩ませる二人の元に、突然その声は振って来た。

    『訓練火災です☆』

    「「!」」

    二人は揃って顔を見合わせる。青山の声だ。

    『安全なところに避難してまた会おう!アデュー!!』

    麗日「安全な、ところ…皆は、そこに…!」
    飯田「…心当たりならある。行こう、麗日くん…!」

  • 162スレ主25/11/01(土) 13:17:01

    -非常避難区域 シャッター前-
    地下一階。コンテナの立ち並ぶエリアまで到達した三人はしばらくその場で息を落ち着けていた。
    ―二人は、大丈夫なのだろうか。
    悪い考えばかりが頭を支配する。
    しかし、疲れ切っていた様子の二人はそれ故すぐに眠りについてしまった。

    青山「…迎えに、行かなくちゃ。」

    シャッターの前。階段に足をかけた青山は眠る二人に代わって麗日と飯田を迎えにいくつもりでいた。
    中ほどまで上った青山は突然足を止めて、後ろを振り返る。

    青山「…ええ、麗日さんと飯田くんを迎えに。」

    青山「大丈夫ですよ。」

    青山「そりゃ…そうですけど、僕は…僕はずっと……皆と対等に、なりたかったんです。」

    青山「だから、たまには…」

  • 163スレ主25/11/01(土) 13:21:17

    青山「あっっつ!?」

    シャッターに手を振れた青山はしかしすぐにその手を引っ込めた。
    爆炎の影響かそのシャッターは熱を帯びていたのだ。

    青山「…」

    しかしここで諦める青山ではなかった。持参していた懐中電灯をシャッターの隙間にねじ込むと、梃子の原理でシャッターを開こうと試みる。

    青山「よし…」

    …その時。
    青山の頭上でシャッターが勢いよくがたがたと揺れだした。

    青山「…!?」

    人が掴んで、揺らしているような、そんな音。
    後ずさりした青山だったがすぐにシャッターの方向を睨みつける。
    いつでもレーザーを発射できるようにと構えたその時、シャッターが開かれた。

    シャッターの隙間から、覗いたその姿は。二人は。

  • 164スレ主25/11/01(土) 13:23:36

    つまずく日はある

    ころぶ日もある

    泣きたい日もある

    いっぱい泣いて

    いっぱい寝て

    いっぱい食べて

    もう一度立てばいい


    いつかこの息が止まるその日まで―――


    シャッターの手前。
    青山と、そして麗日、飯田は無事の再会に心を喜びに震わせた。

  • 165スレ主25/11/01(土) 13:33:00

    峰田「よ゛がっだぁぁぁぁぁ!!」

    『避難訓練』が無事終了したことを祝して、学園生活部の5人はシャッターの外でお茶を飲み一息ついていた。
    火の手は止んだようで、すっかり煙も引いていた。

    事の経緯を聞いた八百万と峰田は心から安堵し、怪我が無く済んだことを喜んだ。

    八百万「今外はどうなっていますの?」
    飯田「しばらくはむしろ安全だろう。」
    麗日「そうそう。あれってけっこうよく燃えるみたいでさ、だいたいは燃え尽きてたよ。」

    三人の会話を全くと言っていいほど聞いていない青山は一人校舎の様子を見て嘆いていた。

    青山「あぁっ…!あんなにリアルな火災を演出したせいで校舎の輝きが損なわれてしまっているじゃないか!」
    峰田「あー…まぁ、あんだけ黒い煙だしゃあな…」
    麗日「こっちにまで火もまわってきちゃったみたいだしね…」
    飯田「では…ここは皆で掃除をするというのはどうだろうか!先輩方が積み上げて来た歴史の残る校舎だ、大事にしなくては!」

    反対意見を述べる者はいなかった。
    使えるものをサルベージするためにも、掃除をするべきだと皆思ったのだ。

  • 166スレ主25/11/01(土) 13:41:35

    -教室-
    賑やかな廊下を通り抜けて青山は一つの教室内へと足を踏み入れる。
    黒板を黒板消しで掃除し、机を移動させてはモップで床を掃いていく。

    青山「綺麗に…ね☆」

    ガタッ

    青山「?」

    いつの間に入り込んだのか。
    教室の前方。寄せた机の隙間から、焼け爛れたそれが姿を覗かせる。

    青山「……あぁ、掃除しているのさ。当番じゃないけれど…」

    青山「そうだね、部活みたいなもので…」

    机に体をぶつけながら、それは青山の方へ這いずり近づく。
    黒く変色した手が、伸ばされる。

    「…っ…?」

    ドクン。

    その光景を見て、青山は心臓を跳ねさせる。
    脳裏に浮かぶクラスメイトの顔。
    なにかが、おかしい。

  • 167スレ主25/11/01(土) 13:44:25

    「うあぁあぁあぁああぁあぁああ―――!?!?!?」

    手にしていたモップを振りかざす。
    一度。二度。三度。
    何度も、何度も何度もなんども。
    それを突き刺す。突き刺す。

    それは、液体をあたりにばらまいてそのままぴくりとも動かなくなった。

    「はぁ、はぁっ、はぁ…!!」

    震えが、止まらない。
    モップをその場に投げ捨てた青山は教室を飛び出していた。

  • 168スレ主25/11/01(土) 13:48:29

    最近学校が好きだ

    特に雄英はすごい

    USJ(ウソの災害や事故ルーム)は本当のUSJのような賑やかさ

    食堂はランチラッシュが安くて美味しい食事を出してくれる。僕はまだ食べたことないけれど。

    他にも充実したトレーニング場に施設…

    何でもあってまるで一つの国みたい

    こんな変な建物 ほかにない

    中でも僕が好きなのは…



    『学園 生  』

    半分ほどの面積が焼け落ちたそれを目にして、青山はその場に座り込む。

    「ぁ…」

    わからない。わからないけれど。何かがひどく悲しくて仕方が無かった。
    彼の頬を温かいものが伝う。制服の袖が濡れていく。

    そして、それは学園生活部の部員がそこを通りがかるまで決して止むことは無かった。

  • 169スレ主25/11/01(土) 13:56:16

    -学園生活部-
    泣き疲れて眠ってしまった青山を寝室に運んだ4人は膝を突き合わせ今後の話し合いを始めた。

    八百万「どこに行くか、ですけれど…その前に、我々にはやらねばならないことがあります。」
    飯田「…ハイツアライアンス…寮に向かうのだな、ついに。」
    八百万「…ええ。」

    雄英高校には校舎の他にも人間が長期間生活可能な区域が存在する。
    それが学生寮。ハイツアライアンス。
    丈夫であるはずの校舎はヘリ墜落の余波を受けただでさえ荒れていたのがさらに酷い有様になっている。
    とてもではないが、住み続けられる環境ではない。
    どのみち外に出るつもりであった彼らであったがその前に完全に準備を整える必要があった。

    きっと、辛い現実がそこにはあるのだろう。
    時間帯を考えれば、そこに居た生徒は校舎に残っていた生徒に比べてはるかに多い。
    …そしてそれは、ヒーロー科も例外ではない。

    しかし、いつまでも目を逸らし続けているわけにはいかないのだ。
    それに。

    峰田「まだ誰もいなくなっちまったとは限らねぇしな!」
    麗日「そうやね!まだ、希望はあるはずだよ!」

    そこに残されているのは何も悪いことだけではないだろう。
    パンドラの箱の底にはいつだって希望が残されているものなのだから。

  • 170スレ主25/11/01(土) 14:06:48

    -外-

    八百万「…という訳で、これから『ボランティア活動をしに遠征に向かう』わけですが…その前に各自自室に必要だと思う物を取りに向かいたいと思いますわ。」
    青山「寮か…なんだか久しぶりな気がするね☆」
    峰田「気がする、じゃなくてマジに久しぶりじゃねぇか?一体何か月になんだよ…」

    徒歩5分。その道を、彼らはようやく歩みだした。
    屋上からは、見たことが無かった、いや、見ようとしなかった寮の様子を、目の当たりにすることになるのだ。
    怖くないと言えば嘘になるだろう。
    しかし、彼らには仲間が居た。学園生活部という仲間が。
    そして、まだ見ぬクラスメイト達が。
    だから、何度でも立ち上がれる。手を伸ばしに行ける。

    麗日「…また、戻ってこれるよね。」
    飯田「あぁ。戻ってこれるとも。」

    校舎から伸びる道を、二人は歩き、振りかえる。
    いつかの日もこの道を横並びになって歩いたな、などと思い返しながら。

    『「頑張れ!!」って感じで、なんか好きだ私!』

    今度は、きっと三人で。


    ―希望を胸に。いつか、またヒーローを目指しここで学べる時を夢見て。

    青山優雅、麗日お茶子、八百万百、飯田天哉、峰田実。学園生活部の5名はここ、ヒーローアカデミアを去った。

    第五章 終わり

  • 171スレ主25/11/01(土) 14:08:30

    オリジナル展開に進む前に物間くんの救済措置ダイスを振ります。


    麗日さんの過去回想で出て来た物間くんは…

    1.お茶子の見間違い

    2.物間寧人本人

    dice1d2=2 (2)

  • 172スレ主25/11/01(土) 14:11:29

    そうですか…


    恐らく彼は校舎で巻き込まれたのでしょう。授業が終わった後も校舎に残っていた理由を決めます。

    1.補習を受けていた

    2.クラスメイトと話をしていた

    3.文化祭の準備

    dice1d3=3 (3)

  • 173スレ主25/11/01(土) 14:16:19

    これで時系列が文化祭直前に確定します。

    以降はこのことを踏まえて進行していきます。


    文化祭の準備、一人でやっていた?

    1.一人

    2.B組も何人か居た(何人? dice1d5=2 (2) )

    3.B組も何人か居た。キリが悪かったので一人残って準備していた。(何人? dice1d5=3 (3) )

    dice1d3=1 (1)


    ブラドキング先生は顔を出しに来た?

    1.来た

    2.来なかった

    dice1d2=1 (1)

  • 174スレ主25/11/01(土) 14:19:10

    …なるほど。


    ブラドキング先生が居た時に巻き込まれた?

    1.二人で巻き込まれた

    2.先生が立ち去った後で巻き込まれた(すぐに駆け付けられる距離)

    3.先生が立ち去った後で巻き込まれた(すぐには駆け付けられない距離)

    dice1d3=2 (2)


    ブラドキング先生は…

    1.生還(この場合後のオリジナル展開で登場予定)

    2.……

    dice1d2=1 (1)

  • 175スレ主25/11/01(土) 14:23:21

    ………これで物間くん絡みの振れる分のダイスは振ったと思います。

    ここからは本編とは少し逸れて
    1.『あの日』、物間くんは…
    その後、
    2.『あの日』から寮の方では何があったのか
    これら二つの番外編を進めていきます。

    完全スレ主オリジナルシナリオになるため進みが遅くなるとは思いますが、ご承知くださいませ。
    では、まずは物間くんの描写から進めていきましょう。寮の方はその後となります。

  • 176二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 16:32:01

    物間犠牲になっちゃったのか
    淋しいなぁ

  • 177二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 17:26:44

    犠牲になっちゃったのは悲しいけどそれまでのドラマが楽しみでもある


    あとレスのタイミング逃しちゃってたんだけど>>141とても助かる&嬉しい

    スレ更新もまとめ更新も楽しみにしてます

  • 178スレ主25/11/01(土) 19:54:18

    -『あの日』 1-B教室にて-
    「……ジュリエット……あぁジュリエット、ジュリエット……!キミはなぜジュリエットなんだ!神様はなんと無慈悲なことをする……!僕の初恋を奪った相手が敵国の姫とは……神という名の悪魔め!僕の心を蝕んでなにが楽しい!?呪われろ呪われろ!この世の恋人たちをすべて地獄に落としてやる……!!この世から恋など燃えてなくなって消えてしまえばいい!!ハハハハハァ!!!アーッハッハッハッ!!!」

    ……

    物間「うん、やっぱりちょっと大げさなくらいが映えるな…」

    『ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~』
    と表紙に書かれたノート。
    B組は文化祭で劇をやることになった。これはその題名である。
    色んな有名作品の要素を織り交ぜた闇鍋的な劇となりつつあるが、本人は大まじめに『B組完全オリジナル』を主張している。
    授業が終わっても一人物間が教室に残っている所以が、この劇であった。
    脚本、演出の中心となる彼はB組の面々から出て来たアイデアをまとめて、取り入れていく。
    A組に負けず劣らずアクの強いB組から出てくる案はどれも奇抜なものであったが物間はその何れも否定することなく良いところを抽出し組み合わせて落とし込むことができた。
    彼の個性は"コピー"。他者の長所を、自分の長所にすることができる個性だ。故に、そういった能力が磨かれる。

    物間演じる主人公ロミオと小大演じるヒロインジュリエットが初めて邂逅するシーンでなかなか納得のいく出来にならないと、彼は一人教室に残って作業を続けていた。

  • 179スレ主25/11/01(土) 20:10:19

    物間「小大は科白の文量を少な目に…その分、一言一言に重みを持たせないと…」

    B組の面々も残って手伝うと申し出ていた。しかしそれを断ったのは他でもない、物間自身であった。

    『一人で集中して取り組みたいんだ。なにか、掴めそうな気がしていてね。』

    物間の性格をよく知る彼らは「根を詰めすぎるなよ」と言い残して随分と前に教室を去っていた。
    ―中途半端な出来じゃ、A組を超えられない…
    ノートに科白を書き込むその手に力が入る。
    …すると、A組のことを考えていたからだろうか、教室の入り口から彼の思考を乱す声が聞こえる。

    「…あれ、物間くん?」
    物間「……あぁ、キミはA組の……」
    麗日「一人で残ってどうしたん?また補習?」

    そこに居たのはA組の麗日お茶子だった。朗らかな笑顔で物間に話しかけている。

    物間「また、とはなんだまたって!仮免不合格者を2名も出したA組には言われたくないね!!それよりキミこそどうしたのさ、緑谷出久の金魚のフン一号!!」
    麗日「あ、相変わらず酷い物言い……私は教室に忘れ物しちゃって…」
    物間「忘れ物、ねぇ?…ふんっ!そんなこと言って敵情視察に来たんじゃないの!?」
    麗日「違うって!大体それをするなら私よりも適任が居るし…」
    物間「あっそ!ならさっさと忘れ物でもなんでも取って帰りなよ!見てわかるだろ、僕は忙しいんだよ!」
    麗日「うん、そうする!頑張ってね、物間くん!」

    物間の嫌味にも眉ひとつ寄せず、最後まで人畜無害そのものな笑みを浮かべて麗日はその場を立ち去った。

    物間「何が『頑張ってね』…だ。言われなくても頑張ってるさ…!!!」

    どこか…いや、かなり捻くれたところのある物間は対照的に苦汁を舐めたような顔をした。
    シャーペンを握るその手に、さらに力が入る。

  • 180スレ主25/11/01(土) 20:58:57

    一度乱れた集中力は、そうすぐには戻らない。
    ため息をついた物間は窓の外へと視線を映す。
    ピーク時に比べればまだ少なかったが、外にはまだ大勢の生徒が居た。
    時期が時期だ。ヒーロー科でなくとも文化祭の準備で遅くまで校舎に残る生徒も中には居る。

    …とはいえ、文化祭当日までにはまだ時間があった。
    多数はさっさと寮に帰ってしまっているだろうと物間は踏んでいた。

    物間「…そんなんじゃ、主役にはなれない。」

    『人生の主役はいつだって自分だ』…だとか、それに類する言葉を物間は耳にタコが出来るくらい聞いてきた。
    …が、彼はその言葉を少しも信じてはいなかった。
    人類は大きく二種類に分けられる。主役と、脇役。
    それは覆しようのない、この世の真理なのだと彼は信じて疑っていない。

    「…頑張っているな、物間。」

    窓に引き寄せられていた視線が再び教室の入り口へと向けられる。
    その先には、物間が敬愛して止まない恩師の姿があった。

  • 181スレ主25/11/01(土) 21:01:58

    物間「ブラキン先生!」
    ブラドキング「文化祭の準備か?」
    物間「はい。今は脚本を書いているところです。」

    物間の席まで近づいてきたブラドキングはその机の上に広げられたノートを見遣る。
    最底辺まで沈み込んでいた物間の機嫌は簡単に上がっていく。

    ブラドキング「よく書けているじゃないか。これならA組のバンドだって目じゃないだろうな!」
    物間「もちろんです!この劇で、今度こそB組がヒーロー科の主役になってみせますよ!」
    ブラドキング「その意気だ物間!…だが、頑張りすぎるのも体に毒だぞ。たまには息抜きでもしてみるといい。
    案外そういった時こそいいアイデアが浮かぶものだからな。」
    物間「息抜き……そうですね。確かにここの所ずっと劇のことばかり考えていたかもしれません。」

    憎きA組の激励は届かずとも、恩師の言葉であればそれは不思議なくらいに素直に受け入れる。
    それが物間寧人という人間であった。
    満足げに頷いたブラドキングは「仕事が残っているから」と早々に教室を去っていった。

    物間「…よし、今日はこのくらいにしておこう。」

    ノートを鞄に仕舞い込んだ物間はそれを肩にかけると席を立つ。
    彼の席は窓際に一番近い列の、後ろから二番目。

    ……故に、すぐにその光景は彼の目に入ることとなった。

  • 182スレ主25/11/01(土) 21:08:44

    物間「……ん?」

    最初、彼は外で誰かが喧嘩でもしているのだろうと、そう考えていた。
    当然だ。人の頭は強いストレスをそのまま処理するのには向いていない。
    妥当な理由をつけて、一旦はそれを真実と思い込む。

    しかしすぐに、それがどうやら違うらしいことに彼は気が付く。

    物間「…なんだよ、あれ……」

    窓の外。彼の視線のすぐ先で、人が、人に嚙みついていた。
    一人二人とか、そういう次元の話ではない。
    無数の人間が、逃げ惑う人間に襲い掛かってはその肌に噛みついているのだ。
    遠く離れているハズのB組の教室にまで悲鳴が響き渡る。
    襲われた生徒はすでに大量の血液を流して息をしていないように彼には見えた。

    物間「…は……?」

    彼は、自分の目を疑った。
    襲われて、嚙み殺されたとばかり思っていた人間がその場で立ち上がり、襲う側の人間の集団に加わったのだ。

    物間「ぞん、び…??」

    フィクションの存在とばかり思っていたそれに、よく似た光景。
    その場から一歩も動くことが出来ずに、彼はただただその頭の中を真っ白にさせていた。

  • 183スレ主25/11/01(土) 21:14:08

    外の光景に気を取られていたばかりに。

    彼は教室のすぐ外の異常にすぐに気が付くことができなかった。


    バンッ!


    …と、大きな音を立てて教室の扉が破壊される。

    そうして出来た隙間から雪崩のように人…否、人であったものが流れ込む。


    物間「っは…!?嘘だろ…!?!?」


    彼は思わず後ずさりするが、一歩足を引いてすぐに窓に背中が接触する。

    人の雪崩は止まらない。最前列、物間の足元まで迫ったそれが、彼に手を伸ばす。


    物間「っ……クソッ、なにが起こってるって言うんだよ…!!!」


    悪態をつきながらもようやく思考能力を取り戻しつつあった彼は逆に自らかれらへ手を伸ばす。


    物間は……

    1.かれらの個性をコピーできた

    2.コピーできなかった

    dice1d2=1 (1)

  • 184スレ主25/11/01(土) 21:15:44

    そのコピーした個性は……

    1.見知らぬ個性だった

    2.スカ

    3.見知った個性だった

    dice1d3=2 (2)

  • 185スレ主25/11/01(土) 21:24:51

    コピーした個性を使おうとする物間。
    …しかし何も起こらない。
    物間は舌打ちを零す。

    物間「…スカかよ…!!!こんな時にっ……!!」

    無個性とは違う、スカ。
    何かしらを蓄積しエネルギーに変える個性を彼はそう呼ぶ。
    彼の個性は性質まではコピーできても、その蓄積まではコピーできない。
    故に、コピーしてもその個性を使えないという結果になるのだ。
    個性をコピーできた感覚はあるので無個性との区別はつくがしかし、彼の中では無個性と同等の扱いをしている。

    物間「仕方が無い、もう一回……」

    一人一人の動きは緩慢で、単純明快。
    しかしかれらの神髄はその物量にあった。

    物間は目を見開く。

    遅れて、鈍い痛みが彼の脚に走る。

    二つ目の個性をコピーする余裕など、かれらは与えてくれなかった。

  • 186スレ主25/11/01(土) 21:31:43

    ブラドキング「物間!!!」


    脚をやられたのだと彼が気がついたその時。

    ブラドキングが教室にようやく駆け付けて来た。


    自身の血液を操り近くに陣取っていたかれらを次々に拘束していく彼であったが、あまりのかれらの多さに手間取っているようであった。


    物間「っ、先生…」


    かれらは突然現れたブラドキングに気を取られているようで、再び物間の前に個性をコピーするチャンスが訪れた。

    ストックできるのは、残り3つ。

    物間は両手を近くにいたかれらに伸ばす。


    1.スカではない個性がコピーできた

    2.二つともスカ

    dice1d2=2 (2)

  • 187スレ主25/11/01(土) 21:41:34

    物間「…………は?」

    物間は呆気に取られる。
    三連続で、スカを引いた。こんなことは今まで無かった。
    何かが、おかしい。

    物間「っ……先生!!!!」

    じくじくと痛み、熱を帯び始めた脚の感覚。
    彼に迷っている時間は残されていなかった。

    ブラドキング「物間!今救けるからな!!!」
    物間「先生、聞いてください!!」


    物間「僕は、もう助からない!!」


    この短時間で彼が出した結論であった。
    先ほど彼が窓から見た景色が幻などではないのなら、彼は。

    ブラドキング「な…物間っ!何を言って…」
    物間「いいから聞いてください!僕はこのゾンビもどきの個性をコピーしようとした!けれど結果は三連続全てスカだった!今まで死体の個性をコピーしたことなんてないから不確かではある。けれどハッキリ言ってこんなのは異常だ!」
    物間「僕はさっき脚を引っ掻かれた!あなたも薄々気が付いているでしょう!こいつらに傷をつけられたらお終いだと!あなたは生きて、このことを誰かに伝えるんだ!こんなことは僕くらいにしか分からない!!」
    ブラドキング「っ、しかし生徒を見捨ててむざむざ逃げるなど…」
    物間「ブラドキング!!!プロヒーローとしてのあなたならとっくに気が付いているはずだ!!」

  • 188スレ主25/11/01(土) 21:53:46

    物間「もう救からない人間と、まだ救かるかもしれない人間、どちらの元に向かうべきかを!!!」

    声を、張り上げる。…物間の声は震えていた。
    並々ならぬ覚悟で彼は言っているのだ。自分を優先するな、救けようとするな、と。

    物間「お願いします先生……僕よりも、B組を、他の雄英生を、救けてください…」
    ブラドキング「出来る訳、ないだろう…そんなこと……」

    予想通りの答え。物間は分かっていたというように笑った。

    物間「ですよね。そういう人ですよ、あなたは……」
    ブラドキング「っ、まだ救からないと決まった訳じゃないだろう!諦めるな物間!!」

    かれらの波は少しずつブラドキングによって掻き分けられていた。
    もうすぐそこまでその姿は迫っている。
    物間は自嘲するように、笑った。

    物間「気が付いていますか、先生。……さっきから、こいつら全然僕のことを襲おうとしないんですよ。」
    物間「僕はもう、とっくに……」

    道が、できた。
    教室の出口までの一本道が。

    ブラドキング「物間っ…」
    物間「ブラドキング先生。…B組の事は、頼みました。」

    伸ばされたその手の真横をすり抜け、物間は教室を飛び出した。
    向かう先は上階。皆の居るであろう寮から離れる方向へ。
    …ブラドキングが追ってこれないように。
    …万が一かれらのようになった時に、皆を襲わないように。

  • 189スレ主25/11/01(土) 22:01:01

    物間「っ、はぁっ、はぁっ…!!」

    どうして、どうしてこんなことになったのだろう。
    A組がまた災いを引き寄せた?
    …いや、流石にこれはA組に押し付けるにはあまりにも惨すぎる。

    廊下ですれ違うかれらは誰一人として物間の方を見ようともしない。
    虚ろな目でただただ悲鳴を上げ逃げ惑う人間を追うばかりであった。
    校舎に残っていた人間は皆屋上を目指しているようで、物間は苦虫を嚙み潰したような顔をする。

    物間「クソッ…屋上に行っても逃げ場なんてないのに…」

    …少しでも、遠ざからないと。
    震える脚に鞭を打って彼は上へ、上へと向かう。


    「…わぁっ!!!」

    屋上へと向かう階段、その下まで来た時だ。
    物間の僅か目と鼻の先で、見知った顔が足を躓かせた。

    物間「……あぁっ、もう!!!!」

    パシンッ!!

    やや乱暴に、その背中をひっぱたくようにして、物間はその人物の個性をコピーした。

  • 190スレ主25/11/01(土) 22:14:57

    「…えっ?」

    物間「全く……こんなときに転ぶだなんて演技の悪い…!!これだからA組は…!!」

    ふわり、その人物の体が浮かび上がる。
    …足を躓かせたはずの麗日お茶子の体は地面に激突することなく、宙に浮かんでいたのだ。

    麗日「物間、くん…!?」
    物間「一生あのB組に救けられたことを忘れずに生きていくことだね、麗日お茶子!!!」

    物間は浮いた麗日の体を支え、そして屋上に続く扉に向かって勢いよく突き飛ばした。
    逃げ惑う人間たちの頭の上を飛び越えて彼女の体は扉の前にたどり着く。

    麗日「物間くんっ!!!!」
    物間「早く屋上に逃げろ麗日!君の個性を使えば高所からでも逃げられる!!」
    麗日「っでも、」
    物間「いいから!!!」

    麗日と、そして一般生徒たちを背に物間は"無重力"の個性をかれらに使う。
    重力の影響を受けなくなったことで踏ん張りの効かなくなったかれらは宙でわたわたと手足を動かすばかり。
    彼はここで足止めをするつもりだった。最後の、防波堤として。

    物間「屋上から飛び降りて無事に生きてられる自身のない奴は僕のところに来い!!窓から脱出を図る!」

    大方かれらを浮かせた物間は背後の一般生徒たちに向かって声を荒らげた。
    屋上の扉は固く閉ざされていた。…正確には、麗日がその体を滑り込ませてすぐに誰かの手によって扉が強く押さえつけられたのだ。
    とすれば残された脱出経路は窓しかない。制限時間は残り数分。
    窓の外に放り出した後のことなど考えていなかったが、ブラドキングが自らの願いを聞き入れてくれたのだとしたら。

    物間「…早く!!!」

  • 191スレ主25/11/01(土) 22:25:16

    この世には、主役と脇役、二種類の人間が存在する。
    物間寧人は後者、脇役側の人間であった。
    しかし物間がそれを不幸に思ったことはない。
    だってそうだろう。
    名作にはつきものなんだから。
    主役を喰らう、脇役ってやつが。

    物間「っ……はぁ、これで、全部……おぇっ…」

    生徒を窓の外に出しては、その背中を少しでもかれらが居ない方向へと押す。
    それを制限時間ギリギリまで繰り返していた物間のキャパシティはすでに限界を迎えつつあった。
    反動のせいか、それともかれらになりつつあるせいか。
    胃の中から込み上げるそれを物間は必死にこらえる。

    物間「これだけのことをしたんだ…教科書に僕の名前を載せて貰わないと割に合わない…!!!」

    ふらふらとした足取りで物間は階段に座り込む。
    既に、意識は朦朧としていた。
    物間寧人の役割は、名脇役である。
    彼はそれに不満を感じたことはない。しかし。

    物間「一回くらい……主役、やってみたかったなぁ…」

    肩にかけていたはずの鞄はいつの間にかどこかに落としてきていた。
    彼が主役を飾る劇の台本と共に、今頃は…

  • 192スレ主25/11/01(土) 22:37:39

    麗日「物間くん!!!」

    物間「……なに、やってんだよキミは…」

    屋上に続く扉から五指に肉球のついた特徴的な手が差し出され、物間は目を見開いた。

    麗日「早くっ…物間くんもっ!!」
    物間「…ダメだ。僕はもう感染してしまった。もうじきコピーも切れる。そしたら…また、こいつらが動き出す。…早く扉を閉めるんだ、麗日お茶子。」
    麗日「イヤだっ!!!」
    物間「ダメだと言ったらダメだ!!死にたいのか!!!」
    麗日「諦めない…イヤだっ!デクくんなら、こんな時絶対諦めたりなんてしない!!!」
    物間「デク……また、緑谷か…」

    痺れを切らした麗日は扉をあけ放って物間の体を横抱きにし階段を駆け上がる。
    個性のお陰で物間が微かに残った力で抵抗しようにも、麗日の手が緩むことはなかった。

    八百万「麗日さん!?」
    マイク「っ、おい麗日!そいつ…」

    麗日の手によって物間の体がそっと屋上に横たえられる。
    歪む視界の中、物間はその場に青山、八百万、プレゼント・マイクが居ることを知った。
    四人分の視線が瀕死の『脇役』の姿を見下ろしている。

    物間「……せいぜい、…生きて、ハッピーエンドを迎えてみせろよ、主役共……」

    彼の視界が黒く染まっていく。制限時間を迎えて、かれらの無重力状態が解除される。
    遅れて、屋上の頑丈な扉が強く、激しく叩かれる音を聞きながら彼は意識を手放した。

    これが、彼の最後の記憶であった。

  • 193スレ主25/11/01(土) 22:41:59

    番外編その1「脇役」 終わり



    …かれらと化した人間の個性がどうなるのか、というコメントがあったと思いますが、丁度物間くんが選ばれてしまったのでこれを答えとさせてください。
    今後も誰かが犠牲となることがあるでしょう。
    しかしスレ主は誰一人として雑に扱うつもりはありません。
    彼らは必死にもがき、足掻き、残された人たちに何かを遺していってくれることでしょう。


    では、『あの日』寮に誰が居たのか、それをダイスで決めて今日のところは終わりとします。

  • 194スレ主25/11/01(土) 22:44:19

    というかスレももう終わりそうですね。

    ダイス振ったら2スレ目立てますか。


    『あの日』、A組の寮には…


    4人+dice1d4=1 (1) 人が居た。


    『あの日』、B組の寮には…


    4人+dice1d4=1 (1) 人が居た。


    『あの日』、寮の方向にその他ネームド生徒は…

    1.居た

    2.居なかった

    dice1d2=2 (2)


    『あの日』、寮の方向に先生は…(ブラドキング先生は強制的に向かったこととします。)

    1.向かっていた

    2.向かえなかった

    dice1d2=1 (1)

  • 195スレ主25/11/01(土) 22:45:37

    誰が居た?

    A組dice5d15=12 10 11 13 4 (50)

    B組dice5d19=10 7 11 3 16 (47)


    (教師は2スレ目で安価します。)

  • 196スレ主25/11/01(土) 22:51:59

    A組の寮には『あの日』、
    上鳴電気
    瀬呂範太
    常闇踏陰
    轟焦凍
    葉隠透

    B組の寮には『あの日』、
    鎌切尖
    小森希乃子
    庄田二連撃
    角取ポニー
    骨抜柔造

    が居ました。
    (ズレてたら申し訳ない。特にA組。)

  • 197スレ主25/11/01(土) 22:58:42
  • 198二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:01:36

    ほんとに辛いけどめちゃくちゃ好き
    一人一人の描写が細かくてスレ主の文才を感じる
    これからも追っていきます

  • 199二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:17:42

    パロ元序盤までしか見てなかったからもう未知の領域だ
    続き楽しみにしてます

  • 200二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:30:44

    原作知らないけど読もうかなの気持ちvs完結まで読まない方がいいのではの気持ちvsダークマイトになってる

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