- 1二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:35:46
- 2二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:37:02
俺はどこで間違えたんだろうか。
俺はいつ楽になれるのだろうか。
同じ事ばかり考える時間が今日も始まる。 - 3二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:39:21
「おはようございます、プロデューサー」
今日も薄暗い部屋で目が覚める。
今が朝なのか昼なのかもわからない。
かれこれ1ヶ月くらいはこんな生活を送っている気がする。
「……いい加減俺を自由にしてくれませんか?」
「質問の答え次第です」
麻央さんが俺の顔を覗き込む。
……距離が近いせいで俺も麻央さんの顔がよく見える。
目の下にクマができているようだった。至近距離で見ると化粧でも隠しきれない程の酷いクマだ。
「気は変わりましたか?」
「この結論は一生変わりませんよ」
「ならダメです」
1か月前まではメンタル方面の疲れがキツかった。だけども、こうして1日中何もできず同じ体勢で縛られてると身体的にも衰弱してるというのがわかる。
今すぐにでも死にたい。
「なんで自由にして欲しいんですか?」
いつもならここで食事の時間だ。でも、何故か麻央さんがいつもとは違う行動を取った。
少し意外だった。
「ここに居ればプロデューサーの事を酷く言う言葉も見えません。怯えて歩く事もありません。今のプロデューサーには、快適な空間じゃないですか?」
「……この場所が快適?はは、死んだ方が楽になれますよ」
「......ッ」 - 4二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:41:27
俺は、自殺をする予定だった。
麻央さんと長い間二人三脚で頑張ってきた。嬉しい時も、辛い時も、悲しい時も同じ時間を共にした。信頼関係も築けていただろう。全てが順調に進んでいた。
……順調に進んでいたんだ。麻央さんがN.I.Aを優勝するまでは。
勿論、麻央さんがN.I.Aを制したのは喜ばしい事だ。そのおかげでアイドル有村麻央の存在が世に広まった。……広まりすぎてしまった。
N.I.A優勝者という肩書きは想像以上に重くのしかかった。
麻央さんのアイドル像を深く知らない人が麻央さんのライブを見る機会が増えた。中には麻央さんのパフォーマンスが刺さらなかった人も居ただろう。当然、中にはSNSにその事を投稿する人もいる。ここまではさほど問題はなかった。少なからず以前からこういった人たちは居た。
しかしN.I.Aを優勝した事によって、多くの人の目に入る機会が増えて、そういった人たちが急激に増えた。
勿論ファンの声も以前より多く届いていたのだが、俺はアンチコメントばかり気にするようになっていった。
それに加えて麻央さんが戦うステージは以前よりも当然過酷になる。既に固定ファンが大勢いる先輩方と競う訳だ。N.I.A優勝で浮かれていた俺は現実の厳しさに直面した。
麻央さんのパフォーマンスは悪くない。なのに、何かが足りない。それがわからない。打つ手は打った。寝る間も惜しんで思考を練った。その甲斐あってか、麻央さんは100プロからスカウトの話が舞い込んできた。条件付きで。
その条件が、麻央さんのプロデュース権限を100プロへ委託する事。簡単に言えば俺が麻央さんのプロデューサーを降りる事だった。
話を聞いて喜んでいた麻央さんもこれを聞いた瞬間表情が曇った。麻央さんが悩む必要なんて微塵もないのに。
俺が何度説得しても麻央さんは最後まで納得してくれなかった。最終的に向こうが折れて、今はレンタル移籍という形で麻央さんは100プロに所属している。向こうのプロデューサーは凄腕で、あっという間に麻央さんはトップアイドルへ近付いた。麻央さんの意見を取り入れない自分勝手なプロデュース方法だと思う。でも、それでいいんだ。
売れないよりかは売れてる方がいい。
罵声を浴びるよりかは歓声を浴びる方がいい。 - 5二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:43:26
麻央さんには"今は我慢の時。もっと売れればいずれ君のやりたい事ができるようになるだろう"なんて見え透いた嘘をついて丸め込んでいる。
この調子でいけば麻央さんはトップアイドルになれるだろう。そのためには、麻央さんの悩みの芽を摘む必要があった。
麻央さんの悩みの芽……それが俺だ。
彼女は俺が居るせいで100プロへのスカウトを受ける決断ができずにいる。俺なんかが麻央さんの夢の邪魔をしていい訳がない。
だから俺は自殺した。
方法はシンプルだった。
あの日はいつも通りの夜だった。元気なく帰ってきた麻央さんの相手をして酒を飲んだ。酒を飲まなきゃ眠れないと言って麻央さんに止められても飲み続けた。吐くまで酒を飲んで、睡眠薬を使って眠るのが俺の日常になっていた。そして、その日も麻央さんに悟られないように同じように過ごしていた。麻央さんが眠りに就いたのを確認して睡眠薬が入った瓶を手に取る。アルコールと眠剤の過剰摂取で俺は死ぬつもりだった。
『麻央さん』
『んん……』
最期に愛する人に触れてみたくなって、寝ている麻央さんの髪に触れた。寝顔が少しだけ和らいだ気がした。
『俺が消えれば、麻央さんは完璧になれる。俺の事なんか綺麗さっぱり忘れて、正しい道を進んでください』
八割以上入ってる瓶の中身を無理矢理体の中に詰め込む。
次第に意識が遠のき始める。
俺は抵抗する事なく瞼を閉じた。 - 6二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:48:33
「プロデューサーは死なせませんよ。ボクが一生守るって決めたんです……」
麻央さんが俺の事を抱きしめる。
……俺はあの日、死/ねなかった。
あんなの、自殺未遂とも呼べないだろう。
睡眠薬は麻央さんが用意した罠だった。
目を覚ますと体が拘束されていて、頭が混乱したのを覚えている。そうだろう。死んだと思っていたのに目が覚めたら体を拘束されているんだ。声を出しても何も反応がなかった。結局、長い時間放置されて二日酔い由来の頭痛が治ってきた頃、部屋の扉が空いた。
『プロデューサー、気分はどうですか?』
『……麻央さん、こんな事して何が目的なんですか』
麻央さんが見覚えのある瓶を取り出した。
『プロデューサー、昨日自殺しようとしましたよね』
『……そうですね』
バレてる以上誤魔化しようがないな。
『なんでですか?まあ、答えは想像できますけど』
俺は胸の内を全て麻央さんに話した。全て話した後、麻央さんに何故俺が生きてるのかを聞いた。簡単な話だった。流石担当アイドル、と言ったところか。長い間過ごしてきた時間は嘘をつかないのだろう。気付かれてないと思っていたのにしっかりバレてたらしい。あの瓶の中身は半分が睡眠薬で半分は単なるビタミン剤だったそうだ。いきなり睡眠薬を没収したり瓶本体を隠したりすると俺が反発すると思ってこっそりビタミン剤を混ぜていたらしい。
ビタミン剤を混ぜられたせいで全然致死量に達していなかった。意識を失うのが関の山。麻央さんのせいでまんまと生き永らえてしまった。
「今ご飯を持ってきますね」
「いりませんよ」
「何も食べないと餓死しちゃいますよ?」
「俺は餓死したいんです」
「言いましたよね?プロデューサーは死なせません」 - 7二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:51:05
麻央さんが部屋から出ていく。しばらくして、薄暗い部屋に一瞬だけ光が入ってくる。トレーを持った麻央さんが戻ってきた。
食事中くらいは楽に、という麻央さんなりの配慮なのか拘束を外してくれる。
だけど、俺は食う気はない。
30分程経っても俺が手を加えてなかったら麻央さんが栄養補給の為に食べさせにくる。だけどこんな人間に貴重な時間を使わせるにはもう辞めようと麻央さんが料理を持ってくるまでの間考えていた。麻央さんにすら見捨てられて、ここでひっそりと息絶える。そのためには麻央さんに嫌われなくてはいけない。
「プロデューサー、食べてください」
いつものように口を無理矢理開けられてスプーンが口に入ってくる。
口をいつもより固く閉じて抵抗の意志を見せる。
「プロデューサー……!」
だけど弱りきった体、その上相手は毎日レッスンをしてるトップレベルのアイドル。
力負けしてしまう。
「ちゃんと食べて下さい」
麻央さんに嫌われる為……
「ぷっ…プロデューサー……?」
何度か咀嚼し、吐き出した。
「だ、だめじゃないですか……ちゃんとたべないと……」
麻央さんが明らか動揺してる。
頑張ってつくってきた料理を粗末に扱われるのが嫌だったのか、それとも今までとった事のない行動だったからかは分からない。
「す、すみません、スプーンを奥の方まで入れてしまって。それでえずいちゃって.......」
再び麻央さんが俺に栄養を与えようとしてくる。
また俺は吐き出す。
「食べなきゃ……食べさせなきゃプロデューサーが……」
流石に2回も繰り返せば俺の意図に気づいたらしい。
「どうしよう………」
その後、暫く動かないままだった麻央さんに変化があった。麻央さんは俺用につくったご飯を掬い、自分で食べ始める。
ようやく諦めたのか。そう思ってると、麻央さんが口を近づけてきた。
「……んんッ?!」
どろどろになった物が口に流し込まれる。
吐き出そうにも麻央さんの舌が邪魔をして上手くいきそうにない。 - 8二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:52:09
「……がっ…っぁああッ!」
変に抵抗したせいで物凄く苦痛だった。咳が止まらない。
「この調子で全部食べましょう」
この方法なら俺に食べさせられるとわかったのか麻央さんの目に光が宿った。
こっちはそんな余裕ないっていうのに。
「……はい、これで全部です」
「見ればわかります」
「ふふっ……美味しかったですか?」
「……」
今日の麻央さんはなんだかやけに楽しそうだ。
「今日からずっとこうして食べさせてあげます」
「いりません。放っておいてください」
「プロデューサーとのちゅー……嬉しかったなぁ……お腹が減ったらすぐに教えて下さいね」
言う訳ないだろう。
「プロデューサーも嬉しかったですよね?幸せでしたか?」
さっきから1人で盛り上がってて五月蝿いな……
こっちは早く楽になりたいってのに邪魔ばかりしてくる癖に。
「幸せな訳ないでしょう。そんなものもう全て崩れ落ちていきましたよ」
「……そうですよね。最近はお疲れみたいでしたし」
「そうです。俺は疲れたんです。ですから…」
「ここなら誰に対しても怯える必要はありませんよ?」
「……簡単に言いますね。何もしてなくても思い出すんです。麻央さんに俺の辛さがわかりますか?もう放っておいてください」
「ぷ、プロデューサー……?」 - 9二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:53:12
「触るな!」
麻央さんの動きがピタッと止まる。
こんな思いをするんだったら……
麻央さんにあんな思いをさせるくらいだったら……
麻央さんの時間を奪うくらいだったら……
「君のプロデューサーになるんじゃなかった……」
自然と口から言葉が漏れていた。積もり積もった感情が爆発したのかもしれない。言ってはいけない最低の言葉が。
「……そんな…ボク、ぼくっ……」
そうだ。そのまま動揺しろ。こんな酷いヤツの事なんて忘れて生きろ。
「嘘、ですよね?嘘って……言ってください」
「……」
「あ……あぁぁあァァ……そう…だっ…たんだ……」
その後、麻央さんはぶつぶつ何かを言いながら部屋を出ていった。もう彼女が戻ってくる事はないだろう。
これでもう……楽になれる。 - 10二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:54:36
あの日からかなりの時が経過した。
あれ以降麻央さんは姿を見せなくなって、俺は順調に死への道を進んでいる。
空腹感は数日ほど我慢をすればあまり気にならなくなるという事を知った。波はある。しかしその波もやがて収まる。収まるという事を知ってからは多少の波にもじっと耐えれた。最初の頃にあった偏頭痛もだいぶ治ってきた。今はこめかみを刺激する程度の軽いものだ。一時期酷かった胃が捩じ切れる感覚もない。
あぁ、もう……何も感じない。
死ぬって、簡単な話なんだ。泣いちゃうくらい、ああそうなんだ。って腑に落ちる感覚で。今寝て、そしてもう起きなくていい。そんな感じだ。おやすみ、もう何も心配しなくていいから、その温かい寝床から出てこないでいいよ。悪い夢も見ないから。どんな夢も見ないから。なんて言われてるようだ。
何も見たり聞いたりしない。もう新しい経験を肉体に痛く痛く刻むこともない。ただ、眠るだけ。安心して、ぐっすり眠るだけ。
いったん寝てしまえばもう、誰も恨まず誰も妬まず、何も恐れず何も嫌悪せず、何ものからも脅かされない。落ち込むことも落ち込まれることもない。何も感じなくていい。これからはもう、なんにも感じないでいいんだ。なにも思い出さないでいいんだ。
……もう休もう。こういうのに早すぎるなんてものは存在しない。もう十分と言えば、いつだって十分すぎるほどだ。
……時間が経過すると誰もいないはずの部屋から物音がなった。とうとう幻聴も聞こえるようになってきたか。
「……───」
話……かけられてるのか?
なんて言ってるんだろうか。
あの世で使われてる言語なんだろうか。
あぁ、体が浮いている気がする。
死ぬって、こんな感じなのか…… - 11二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:55:46
プロデューサーの部屋に通わなくなって約2日が経った。
ボクがお世話しなくなったから当然ご飯はない。トイレにも行かせてないから糞尿は垂れ流し。日に日に弱っていくプロデューサーを別室で監視していた。
このまま放置すれば、本当に死んでしまうだろう。
プロデューサーが望んだ事とはいえ、ボクは貴方をこのまま見殺しにはしませんよ。
準備を整えて久しぶりにあの部屋へ行こう。
「お久しぶりですね。プロデューサー」
部屋をノックして中に入る。
酷い匂いだった。だけど、そんなの気にせずプロデューサーの元へ向かう。
「まずはお風呂ですね。食事はその後ゆっくり取りましょう」
成人男性とは思えない程軽いプロデューサーを抱えてお風呂場へ向かう。以前だったら抵抗されていたはずの行為。弱りきったプロデューサーは何の行動も起こさず、お人形のようにボクに洗われている。
あまりゆっくりしていられない。早くご飯を食べさせないと。
急いで入浴を終えて比較的食べさせやすいゼリー飲料から与えていく。勿論この前みたいに口移しで。水分と一緒にゆっくり与えていく。
何日、この生活を続けたんだろうか。少しずつプロデューサーの調子が戻ってきた。そろそろお粥あたりを食べさせてもいい頃だろうか。
1ヶ月ほど、この生活を続けていくうちにプロデューサーの意識が戻った。
「……お目覚めですか?」
膝枕をしていたタイミングだったので顔を覗き込む。
「……あ…れ、ここは……?」
「天国です」
「……そうですか。……何故麻央さんもここに?」
思いつきで言ってしまったせいでなんて返事をすればいいか……
「……俺、最低だな。麻央さんまで巻き込むなんて……」
なんか勘違いをしているな。
「すみません、ここが天国というのはウソです」
「……?だって俺、あの時確かに……」
「ええ、死にました。半分以上は」
「ならなんで……」
まだわからないのかな。
「ボクが助けなかったら完全にプロデューサーの目的は達成できましたね」
「なんで助けたかを聞きたいんです」
「何回も言いませんでしたか?プロデューサーを死なせないって」 - 12二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 13:57:31
「だとしてもこれは酷すぎます」
「プロデューサーが失踪してからかれこれ約2ヶ月以上は経ちました。もう誰もプロデューサーの事を覚えてないですよ。プロデューサーの望み通り綺麗さっぱり忘れ去られてます」
「俺の事を忘れるのは麻央さんだけで十分なのですが」
「その件については心配いりませんよ。ボクは今正式に100プロのアイドルです。だって、ボクのプロデューサーは失踪した扱いになっているのでそのまま100プロと契約するのは仕方のない事だったんです」
話を本題に戻そう。
「プロデューサー、1回死んだ人間をボクがどうしようが勝手だと思いませんか?」
「……何が言いたいんですか?」
「今日からプロデューサーはボクの物です。どうせ捨てた命なんですからボクの物にします。ボクがプロデューサーを飼います。トップアイドルまで上り詰めた人間が人ひとり養うくらい容易なんですよ」
ボクの所有物とプロデューサーに思い知らせるために、覆い被さるようにキスをする。
「んふふ、弱りきった体では満足に抵抗もできませんね?大人しくボクに溺れてください」
プロデューサーの目はまだ反抗的だ。
「大丈夫です。プロデューサーの事をもう拘束する気はありませんし、どんなにお願いされても外に出す気はありません。プロデューサーがこれから会える人間......生命体はボクだけなんですから」
だから何も怖くないよ?
耳元で囁く。
「嫌な記憶があるのならボクが時間をかけてゆぅっくり溶かしてあげます♡プロデューサーはボクだけを見て。ボクの事だけを考えてください」
「プロデューサーの心が完全に癒えきって、ボクに堕ちたら、外に出て2人でやり直しましょう?」
「ずっと、一緒ですよ♡」 - 13二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 14:02:07
これで終わりになります。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
思ったより短い出来になったので物足りない人用にこの作品と似た雰囲気の過去作を。
【ss】何もかもが管理されている世界で俺と咲季さんは心中する【花海咲季】|あにまん掲示板bbs.animanch.com【ss】穴の中に埋めるもの【篠澤広】|あにまん掲示板bbs.animanch.comみんなの反応みて想像以上に脳にダメージ受けてる人いたら明日の朝頃甘めの1000字ちょっとの話を書きますね。
では、ありがとうございました。
- 14二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 14:03:50
100プロと学Pの両方を得るとは...
この麻央パイ賢いな - 15二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 14:13:17
すき
- 16二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 16:42:20
良かったけど辛いよ
- 17二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 18:51:48
多分この学Pは永遠に傷が癒えないままなんだろうな…
- 18二次元好きの匿名さん25/10/30(木) 20:23:35
このレスは削除されています
- 19二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 02:07:20
良かった。甘めなやつも楽しみにしてます
- 20二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:39:20
おはようございます。スレ主です。思った以上に反応貰えてて嬉しかったので2作ほどどうぞ。
[一世一代の告白をした恋愛弱者麻央が恋愛強者プロデューサーに分からされる話]
ボクはいつもプロデューサーから「可愛い」だとか「好き」だとか「結婚したい」とか言われて、いつも顔を赤くしてしまう。
恥ずかしがってるボクを見てイジワルなプロデューサーは楽しんでるんだ。
そうに違いない。
ほら、現に事務所に入ってきたボクを見て笑っている。
「今日はどんな事を言って照れさせてやろうか」というプロデューサーの心の声が聞こえる。
今日こそはボクがプロデューサーの事をぎゃふんと言わせるんだ!
鞄を置き、覚悟を決めてプロデューサーの隣に座る。
「今日は積極的ですね」
いつもだったらこの流れで「今日も可愛いですね」的な事を言ってくるからボクが先手を取らねば。
「麻央さ......
「プロデューサーに言いたい事があります」
よし、出だしはバッチリだ。
「どうかしましたか?」
「えと、その.......」
ちゃんと目を見て言わなきゃいけないのに恥ずかしくて直視できない.......
プロデューサーってこんなにカッコよかったっけ......? - 21二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:40:32
「大丈夫です、ゆっくりでいいですから。俺はずっと待ってますよ」
ああっ......なんでボクはプロデューサーにフォローされてるんだ、今日こそはと思ったのに。
「ぷ、プロデューサー.......その、好きです。愛してます」
よ、よし。言えたぞ。
今頃きっとプロデューサーも恥ずかしさで顔を真っ赤にしてるはず......
「........ぷっ...」
なっ?!
「どうして笑うんですか?!」
何かおかしな事でも言ったか.......?
「あぁ、すみません。ただあんまりにも真剣な表情だったので、何か伝えにくい事なのかなと思って」
なにもそこまで笑わなくても........
「大丈夫です、麻央さんの想いはちゃんと伝わりました。俺も大好きですよ」
「プロデューサー......」
プロデューサーに抱きしめられて......あったかい。
......また先手を取られちゃった。
「ビックリしましたよ。あんな顔の麻央さんは初めて見ました。婚姻届でも書かされるのかと思いましたよ」
「そんなにですか?」
「はい、でも嬉しかったです」
本当に嬉しかったようで今日のハグはなんだかいつもより幸せを実感できた。
「それにしてもなんでいきなりこんな事を?」
きた......!
この答えはもう既に考えてある!
「記念日です」
「記念日......今日の日付だと2人で初めて食事に行った記念ですか?それとも初めて麻央さんが俺に好きって言った日ですか?」
......?
なんか思ってた返答と違う.......
「とにかく、今日の麻央さんはリードしたい日なんですね」
「そうです!」
そういう事にしておこう。 - 22二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:42:01
プロデューサーを恥ずかしがらせるのが目的なんてバレたら何をされるか分からない。
「では、俺がいつもしてる事。あれも麻央さんからですか?」
この後する事って.......キス?!
「いつもあれだけ自分からねだってくるのにする側になると恥ずかしいんですか?相変わらず可愛いですね」
「そっ、そんな事.......!」
そうだ、今日はボクがプロデューサーにいつものお返しをするって決めたんじゃないか。
それにハグだって先にされちゃったし、挽回するならこれくらいしないといけない。
「任せてください!」
覚悟を決めるんだ。
いつもプロデューサーとしてるじゃないか。
「じ、じゃあ......目、閉じてください」
プロデューサーがボクを受け入れる体勢になった。
後はボクが口づけするだけ........
.......
「......?麻央さん?」
「なっ!なんでまだキスしてないのに目を開けちゃうんですか?!」
今からいこうと思って体を寄せた瞬間......
タイミングが悪いなんてレベルじゃないぞ......
「いや、あまりにも遅かったもので。すみません」
「これからしようと思ってたのに.......」
不満をこぼす。
「ふふっ」
「な、なんですか?」
「そんな事言って、顔真っ赤ですよ?」 - 23二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:43:51
だっ、駄目だ!
このままじゃいつもみたいにプロデューサーのペースになっちゃう!
「そんな事ないです」
「麻央さんからキス、期待してたんですけどね」
さっきからプロデューサーはキスを強調している。
「するって言ってるじゃないですか.......!」
イヤでも意識してしまう。
プロデューサーの唇を見つめてしまう。
改めてしようと思うほど恥ずかしい気持ちが強くなっていく。
「焦らしてるつもりですか?それなら麻央さんの作戦は成功ですよ。俺も完全にその気になっちゃいましたもん」
プロデューサーがボクに近づいてきた。
このままじゃまたいつもと同じ流れだ.....
「んっ.....///」
勢いでやっちゃったけど......これくらいでいいかな。
「ふんっ、ボクだってキスの1つや2つ余裕なんですから!」
「偉いですよ。ご褒美をあげましょうか」
「まっ.......今日はボクがぁっ///」
プロデューサーに抱きしめられる。
プロデューサーとの距離がどんどん近くなっていく。
「麻央さん、俺まだ何もしてませんよ。そんなに顔を蕩けさせるなんて......素直じゃないんですから」
プロデューサーと1回、軽く唇をつける。
「ぷろでゅーさぁ.......///」
「麻央さんが満足するまでしてあげますよ」
今日も結局......負けちゃった......♡
1作目終わり。
2作目は[寝てるプロデューサーに麻央がイタズラする話] - 24二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:45:27
自然と目が覚めた。
寝過ごした事はないと思うけど時間を確認する。
まだまだ深夜と言っていい時間帯だ。
......何故だか頭が覚醒してきた。
いつもだったらすぐに2度寝できそうなのに。
とりあえず横で寝てるプロデューサーに近付く。
起こしちゃわないように慎重に。
ボクの肩とプロデューサーの肩が触れ合う。
......暇だな。
左腕、少し借りますね。
抱き枕の要領でプロデューサーの左腕をかかえる。
ボクの太ももの間に腕があるせいで少しドキドキしてきた。
なんかの拍子に動かされたらボクの大事なところに当たっちゃうと思うと興奮してくる。
それ抜きに、無防備に寝てるプロデューサーが目の前にいる。
「あむ.......」
プロデューサーの左耳を啄む。
「ぷろでゅーさぁ......」
気付けばボクは何度もプロデューサーの事を呼んでいた。 - 25二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:46:46
「んん.......」
起こしちゃったかな。
......大丈夫そうだ。
ボクは目が覚めちゃったのにプロデューサーだけ熟睡してるなんてズルい。
「ぷろでゅーさぁ」
引き続き囁き始める。
夢の中でもボクの事を考えてくれたら嬉しいな。
「ん.......」
......っ。
プロデューサーがこっち向きに寝返りを打った。
そのせいで、ボクはプロデューサーに抱きしめられるような体勢になる。
この体勢じゃ囁けない。
でもプロデューサーの寝顔が見れるからヨシとしよう。
もう少しプロデューサーとの距離を縮める。
ボクは幸せ者だ。
こんな素敵な人がプロデューサーで、ボクのために毎日頑張ってくれてるんだ。
「いつもありがとうございます」
おでこにキスをする。
徐々に満足できなくなっていって、何度も何度も唇を落とした。
額に、鼻に、頬に。
「はふぅ.....♡」
最後は唇に。
「プロデューサー......♡」
自分で自分を制御できない。
これで終わりにしようと思っても、唇を離すと寂しさが勝ってしまう。 - 26二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:48:39
「ん......ちゅ.....♡うぅ......♡」
普段はカッコいいプロデューサー。
でも、寝てるからか今は少しあどけない表情で。
そんなプロデューサーを独り占めにできる幸福感がボクを襲う。
勝手にこんな事をしてるとバレたら、どんな反応をされるんだろうか。
きっと、優しく微笑んで「寂しかったんですか?」なんて言ってくれるに違いない。
ボクが欲しい言葉をくれて、優しくボクを包み込んでくれる。
そうに違いない。
抱き合ってるはずなのにプロデューサーが恋しくなって、もっともっと求めてしまう。
「甘えんぼですね」「誰のせいでこうなったと思ってるんですか。責任とってください」なんてやり取りをして。
優しく頭を撫でてくれるはずだ。
「.......麻央さん?」
何度目かのキスをしていたらプロデューサーが目を覚ましてしまった。
起きてくれて嬉しい。
もっとプロデューサーを堪能したかった。
2つの気持ちが競り合っている。
「悪い子ですね」
プロデューサーがボクの事を抱き寄せる。
「起こしちゃってすみません」
「言動が一致してませんよ」
優しく頭を撫でてくれる。
もっとプロデューサーが欲しくなる。
「プロデューサー.......」
「怖い夢でも見たんですか?」
「......そうかもしれません」
プロデューサーの手がボクの頬に触れる。
「もう大丈夫ですよ」
その手にボクの手を重ねる。 - 27二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:49:52
「えへへ......」
「甘えんぼですね」
「プロデューサーのせいでこうなったんですよ」
「なら、責任を取らないといけませんね」
プロデューサーの顔が近づいてきた。
「な、何をするつもりですか?」
「キスしたかったんですよね」
「それは......その......」
寝てる間に何回もしてたなんて言えない。
目を瞑る。
ボクのおでこにあたたかいものが触れた。
「ふえぇっ?」
ボクの反応を見てプロデューサーがイジワルそうに笑う。
「な、なんでですか?!」
「俺が寝てる間にひとりで楽しんでたんじゃないですか?」
も、もしかして起きてた......?
「その反応、図星ですね」
「ボクをハメましたね?!」
「痛いです」
ぽかぽかプロデューサーを叩く。
くすくすと2人で笑い合う。
「なんだか眠たくなってきちゃいました」
「時間も時間ですし寝ましょうか」
自然とプロデューサーと手を繋ぎ合う。
良い夢が見れそうな気がした。 - 28二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 06:52:31
これで終わりになります。
まだまだ麻央の甘い話見たりないよーって人は土曜の朝まで頑張ってこのスレ残しといてください、残ってたら多分また書きにきます。
金曜日、お互い頑張りましょう。 - 29二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 11:02:22
一旦おつ
- 30二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 11:53:50
あーもーしゅきしゅきだいしゅき
- 31二次元好きの匿名さん25/10/31(金) 21:43:38
しゅ。
- 32二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 02:52:12
ほしゅー
- 33二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 07:20:59
ほしゅ
- 34二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 07:54:07
ほしゅ
- 35二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 11:00:22
ほしゅ
- 36二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:19:19
想像以上に戻ってくるのが遅くなってしまった。夜勤終わりひと眠りしてから書こうと思ってたら爆睡しちゃいました。
[プロデューサーと同棲したら麻央は多分こんな感じなんだろうなって話]をどうぞ - 37二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:21:15
──さん
.....聞きなれた声が聞こえる。
──麻央さん
......んー....
「麻央さん、起きてください」
......さむい
夏が終わってから一気に布団が恋しくなったな......
そもそも今日は日曜日だったはず.......
後3時間......
「今目が合いましたね」
合ってないですよ。
多分、プロデューサーの気のせいです。
うん、きっとそう。
「俺の目は誤魔化せませんよ」
「後3時間くらいいいじゃないですか......」
「寒いのはわかりますけど2度寝は駄目ですよ」
「プロデューサーもこっちきてください.....」
「それは魅力的な提案ですが今日は俺と出かける予定が入ってますよ」
「午後からでもいいじゃないですか.......」
なんか用事でも入ってたっけな.......
眠い、頭が回らない。
「麻央さん」
「んん......プロデューサーも一緒に.......」
布団から出たくなかったけど一瞬だけ起き上がり
プロデューサーを布団の中に引き寄せる。
「プロデューサー......」
そのままプロデューサーを抱きしめて身動きが取れない状態にする。 - 38二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:22:24
「.....仕方のない人ですね」
「ふふ、ボクの勝ちですね」
んん.......プロデューサーの首、温かい......
「暖房で部屋が暖かくなるまでですからね」
「はい......」
プロデューサーはなんでこんなにあったかいんだろう。
ずっと触っていたくなる.......
「麻央さん?」
重い瞼を開けてプロデューサーの顔がどこにあるかを確認する。
顔に狙いを定めて手を伸ばす。
想像以上にあったかい.......
心までぽかぽかしてくるような気がする.......
「気持ちいいですか.....?」
「否定はしません」
「素直じゃないんですから」
.......寒くなってきた。
手を動かしてるせいか寒気がお構いなしに布団の中に入ってくる。
「麻央さんは寒がりですね」
「仕方ないじゃないですか。文句があるならプロデューサーが温めてください」
プロデューサーがボクの手に触れる。
「可哀想なくらい冷えてますね」
プロデューサーがボクの事を抱きしめてくれた。
至高のひととき。
「もっとこうしててください」
「言われなくてもそうしますよ」
「ありがとうございます.......」
ボクもプロデューサーの背中に手を回す。
回したいんだけど......腕が重くてちゃんとできてるのかわからない。
「麻央さん?」
あったかぁ..... - 39二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:23:44
最高......
ねむ......
プロデューサーの声がぼんやり聞こえる......
やばいぃ.....
「起きてますか?」
「起きてます......」
「なら良いのですが」
「もっと抱きしめてください......」
「我儘ですね」
「プロデューサーだからワガママなんです」
「知ってます」
「朝弱い麻央さんも甘えたがりな麻央さんも全部俺のものですから」
「ん.......」
......
「麻央さん?」
......
「ふぅ〜......」
......っ??!?!!
「起きましたか?」
「ずっと起きてましたよ」
「その言い方は怪しいですね」
「ぁ......離れちゃダメです.....」
「そろそろ部屋が暖まってきましたよ」
「ぷろでゅーさぁ......」
「そんな可愛らしい顔をしても無駄ですよ」
泣きつく作戦に出ようとしたけど今の様子じゃ厳しそうだ.......
「今ご飯用意しますから起きてください」
......まぁこれくらいの温度なら。
「食べたら一緒に出かけますよ」
「......そう言えばどこに行くんですか?」 - 40二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:25:07
「俺の実家です」
「......はい?」
「両親が麻央さんに会いたがってるんです。彼女がどうのこうのうるさくて」
「ボク、そんなの聞いてませんよ?」
「昨日思い出しましたからね」
.....あれ?
もしかして何時に向かうとかプロデューサーは連絡してたりする......?
「あ、あの。ちなみに何時から会う予定だったんですか......?」
だからわざわざ起こしてくれたのか.....?!
休日のプロデューサーにしては珍しいと思ったんだ.......
「今のペースだと伝えてた時間より少し遅れるかもしれませんね」
.....ああ、やっちゃったな。
「.......すみません。電話が」
これ絶対プロデューサーのご家族だよね.......
しばらくしてプロデューサーが電話を切った。
ボクも少し身構えていたけど変わる事なく終わった。
「昨日麻央さんと撮った写真を送ったんですけど、それで十分だったようです。式はいつ挙げるのかだけ伝えるよう言われました」
「あぁ、そうですか」
......んん?!
「し、式?!」
「そうですが」
「それってなんの式ですか......?」
「結婚式なんじゃないですか?気が早いですよね」
き、気持ちの整理ができないぞ......?
こんなの.....実質告白じゃないか!
「それよりも布団へ戻りましょうか」
「へっ?プロデューサー?」
「あんな顔見せられたら我慢できません。今日はたくさん甘やかしてあげますね」
「......プロデューサーのえっち」 - 41二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:28:08
沢山の保守に応えて最後になんやかんやあって麻央(27)とPが結婚する話で終わろうと思います。
夜の22:00。
会社の人達は殆ど退勤してる時間帯。
ボクもそろそろあがろうかと思っていたら明かりが点いてる部屋がひとつ。
プロデューサーの部屋だ。
朝はボクより早く出勤してるのに夜はボクより遅く帰るらしい。
何回も注意してるのに返ってくる言葉は「ボクのためなら苦にならない」という言葉ばかり。
疲労は目に見えないからしっかりケアをするように口酸っぱく言ってくる人はどこの誰なんだろうか。
「プロデューサー、居ますか?」
「......麻央さん、どうしたんですか?」
プロデューサーはちょうどコーヒーを淹れてる最中だった。
この様子だと.....今日も徹夜なのかな。
「......帰らないんですか?」
「ええ、後少しだけ」
そう言ってプロデューサーはブラックコーヒーを口に運ぶ。
「一緒に帰りましょうよ」
「そういう訳にもいきません」
「......ボクのため、ですか?」
「はい、今が踏ん張り所なんです」
「......何回聞いたか分からないセリフです」
「すみません」
......もうすぐ、ボクの誕生日なのに。
どんなに忙しくても出会ってから毎年必ず時間を作ってくれてたのに。
......今年は厳しそうなのかな。
「プロデューサー」
「なんでしょうか」 - 42二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:29:52
「信じてますから」
ボクの誕生日が近いことを込めて言う。
「......ええ」
プロデューサーは少し考えてから返事をくれた。
「先にあがりますね」
「おやすみなさい」
「はい」
会社を出て暗い町中を歩く。
窓から漏れる幸せそうな光が道路を照らす。
テレビの音だったり、笑い声だったり、色んな生活音が聞こえてくる。
だけど、家に着いてしまえば一気に静かになる。
真っ暗な部屋に電気をつける。
この時間帯じゃ近所にやってるスーパーがないからコンビニで済ませるハメになる。
バランス良く買ってるつもりだけど不健康な気がしてならない。
このままで明るい未来は来るんだろうか。
......こんな事を考えてもしょうがないか。
明日も早い。
食事と入浴を済ませて寝るとしよう。 - 43二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:30:53
1月11日。
ボクの誕生日1週間前の日。
事件が起こった。
今日もいつも通り退勤際にプロデューサーの部屋に寄ってから帰ろうと思っていた。
「プロデューサー」
いつも通りに扉を開ける。
「麻央さん」
何らかの作業をしてると思っていたけどどうやら休憩中だったようだ。
スマホと睨めっこしている。
「珍しいですね。そんな顔をするなんて」
「え?」
「なんか、難しい顔をしてた気がしました」
「ああ、気にしないでください」
「何か悩み事ですか?」
「まあ、そんな所ですかね」
プロデューサーが悩み事なんて珍しい......
少しでも力になれたらいいな。
「一体何で悩んでるんですか?」
「結婚を考えています」
......は?
「け、結婚?」
「そろそろいい年ですからね」
「あはは......」
いい年って......
ボクもそうなんですけど?! - 44二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:32:20
「麻央さんはそういった相手はいますか?」
「ボクはいませんよ?」
な、何なんだこの人っ......!
出会ってそろそろ10年になるけどこんなに怒りを感じたのは初めてだ......
ボクとは遊びだったって言うのかい?!
プロデューサーと出会ってから毎日毎日キミの事を想ってる相手が目の前にいるのに......
よりにもよってその相手に結婚の話を振ってきた......?!
スキャンダルも起こさないようにしてたのに.....?
プロデューサーにとって、ボクって一体なんなんだ......?
「麻央さん?」
「......ぇっ?」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫......?」
大丈夫な訳ないでしょう?!
「ぼ、ボク......今日はもう帰りますね」
「ゆっくり休んでください」
事務所の扉を閉じる。
扉の向こうにはプロデューサーがいて。
きっと、どこかで出会った女性とメッセージのやり取りをしていて。
何年も隣で寄り添ったボクを横目に、プロデューサーと添い遂げようとしてる。
今日ほど悲しくなった日はそうそうない。
こんなに悲しい気持ちになったのはいつぶりだろうか。
......帰って寝よう。
そして忘れよう。 - 45二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:33:43
今日はボクの誕生日。
プロデューサーも今日がボクの誕生日という事は覚えておいてくれたみたいだ。
もしかしたら、プロデューサーに誕生日を祝ってもらえるのは今年で最後かもしれない。
......いや、この人ならボクの気も知らないで籍を入れた後でも平気な顔して祝ってきそうだ。
そんな最悪な未来を避けるために、ボクは今日最終手段を使う事にした。
2人でいつもより早く仕事を抜けて解散する。
数時間後、とびっきりな勝負服を身に纏ってプロデューサーと待ち合わせの場所に向かった。
......去年とは比べ物にならないくらい豪華なホテルだ。
ボクと同じくらいのタイミングでプロデューサーも来た。
プロデューサーも心なしか気合いが入ってそうだ。
......これに関してはボクの思い込みかもしれないけど。
「凄いですね、こんなところ滅多に来れませんよ」
プロデューサーにエスコートされる。
「今日くらいは贅沢してもいいでしょう。麻央さんの誕生日なんですから」
こんな豪華なお店に連れて来てくれるって事は、少なからずボクに対する好意はありそうだ。
......なら、実行してもいいよね?
食事も終盤に入り、ボクもプロデューサーも気持ち良くなっていた。
美味しい食事に手厚いサービス。
それに綺麗な夜景。
全てにおいて満足していた。
「ちょっと、失礼します」
プロデューサーが席を立った。
多分お手洗いだろう。
ボクはこの時を待っていたんだ。
鞄からこっそり粉末状の薬を取り出す。
だ、誰も見てないよな......?
プロデューサーの飲み物にこっそりと睡眠薬を混ぜる事に成功した。
後はこれをプロデューサーが飲んでくれるだけで全てが終わる.......
ぷ、プロデューサーが他の女に取られるくらいだったら....... - 46二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:34:59
プロデューサーが戻って来た。
ボクの不安とは裏腹に、何の疑いもなく薬が入ったそれを飲み干してくれた。
「そろそろ出ましょうか」
「そうですね」
睡眠薬を飲ませてしまった以上長居はできない。
ボクにとってもありがたい提案だ。
会計を済ませて外に出る。
そして、タイミングを見計らって声をかける。
「プロデューサー」
「何ですか?」
ボクが誘導するかのようにホテル街方面に歩いてる事をプロデューサーは理解してるのだろうか。
プロデューサーもこの先はそういう場所だというのは分かってるだろう。
でも、拒否されないという事は.......?
「少し、休憩していきませんか?」
適当なホテルを指差してプロデューサーを誘った。
これに乗ってくれたら勝ったも同然だ。
次第に薬の効果が出てきて、プロデューサーは眠ってしまうだろう。
そしたら......
「実は、今日泊まる場所は予約してるんですよ」
まさかプロデューサーもボクと一夜を過ごすつもりだったなんて......
これはもう合意の上では......?
「もう少し先にありますよ」
プロデューサーが先を行く。
覚悟は決めていたはずなのに......
一歩、また一歩進むたびに心臓がドキドキ鳴る。 - 47二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:36:25
正直、ボクは自分がした行動を後悔した。
あの時睡眠薬を飲ませなければ良かった。
高級そうなホテルに入って、シャワーを浴びる事にした。
先に入って良いと言われたからお言葉に甘えた。
そしたらどうだ?
プロデューサーは寝てしまっていた。
あのまま行けば......確定コースだったのに。
でっ、でも.....焦る必要はない。
これはボクが本来想定していたプランなんだから。
寝てるプロデューサーの手足を拘束する。
これから......プロデューサーはボクの物になるんだ。
一緒に帰って.....一緒に帰れなくても家に帰ればプロデューサーが居て。
忙しい日はプロデューサーよりもボクが先に帰ってこれるからお風呂と食事の準備をして。
おかえりなさいって言っちゃって。
......あははっ、ダメだな......
想像しただけで体が疼く.......
プロデューサー、子どもは何人欲しいですか?
早く起きてくれないかなぁ。
薬も少量にしたし、ボクの計算が正しければ後少しで目覚めてくれるはずなんだけどな.......
プロデューサープロデューサー.......
「......ん...」
プロデューサーが目を覚ましたようだ。
「お目覚めですか?」
「......あれ、麻央さん.......」
プロデューサーが拘束されてるのに気づいたらしい。
「何をしてるんですか?」
「ボク、誕生日プレゼント......欲しいなあって」
「ええ」
「プロデューサーが欲しいなぁって......♡」
プロデューサーの唇に指先を持っていく。 - 48二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:37:41
プロデューサーの瞳......吸い込まれるみたいだ......
離したくても目を離せない.......
「......麻央さん」
「なんですか?」
「これ、解いてください」
「イヤですよ?」
「逃げたりしませんから」
「......ホントですか?」
「ええ、誓いましょう」
......ダメだ。
揺さぶられるな.......
「先に言っておくと、部屋の鍵は締まってます」
「ええ」
「プロデューサーのスマホも、隠してます」
「逃げませんよ」
プロデューサーをボクの物にする。
今日で絶対ボクの物にする。
これは絶対なんだ......
どんな手を使ってでも......
「麻央さん、信じてください」
「......わかりました」
......ダメだった。
思った以上にボクはプロデューサーに弱い。
心の中ではプロデューサーとこんな形じゃなくて自然に愛し合いたいのかもしれない。
「......抵抗は無駄ですよ」
手錠を解いた以上何を言っても無駄なのに。
「格闘技を....嗜んでいたので」
言い終わると、プロデューサーに抱きしめられた。
「......ぇ?」
「.......麻央さん、俺の鞄の中身は見ましたか?」 - 49二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:40:20
「......まだ、ですけど」
「見てきてください」
「プロデューサーの鞄......」
今日1日、プロデューサーは鞄に触れもしなかったから完全に意識の外だった。
一体何が入ってるんだろうか。
......え?
「ぷろ......これは......?」
封筒の中身を見る。
真っ先に飛び込んで来たのは婚姻届という文字だった。
「麻央さん」
まともに物事を考えられなくなってるボクにプロデューサーが話しかけてくる。
「俺と結婚しましょう」
「ぼ、ボクと......?」
た、確かにプロデューサーは結婚を考えていた。
相手は他にいると思ってたけどボクが相手だったなんて.......
「......心配、したんですから」
「麻央さんが生涯現役で居続ける勢いで売れていたので、タイミングが遅くなってしまいました」
「ボクが売れなくなってきてるってバカにしてます.....っ?」
「みんなの有村麻央じゃなく、俺だけの麻央さんになって貰います」
「......いいですよ。なってあげます」
ま、まさかこんな形で結ばれるだなんて。
「ぷろでゅーさぁ......!」
嬉しくなってベッドに押し倒してしまった。
我慢してた色んな感情が溢れ出てくる。
だけど、イジワルなプロデューサーはボクにそんな暇を与えてくれなくて。 - 50二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:42:27
「麻央さん」
今度はボクが押し倒されてしまった。
「ぷ、プロデューサー.....?」
「俺が手を出さないからといって随分煽ってくれましたね」
「な、なんの事ですか......?」
「出会ってから今まで......数えたらキリがないくらいありますが」
も、もしかしてボクがプロデューサーにしてきた色仕掛けのこと.....?!
「麻央さんが22歳の誕生日の時は今にも押し倒してやろうかと思ってましたよ」
「ぼ、ボク.....何しましたっけ?」
「ベロベロに酔っ払って物凄く際どいボディタッチを何回もしてくれましたね」
「あはは.....そんな事もありましたね」
「俺が麻央さんの人生設計を狂わなさないように我慢してたって言うのに......」
「それを言うならプロデューサーだって.....!」
「俺サイドにも問題があったと?」
「ボクがまだ20とかそこらの時から事務所で寝てる時寝言でボクと結婚しようとか言ってたんですよ?!」
「寝言を間に受けないでください!」
2人で暫く戯れあっているとプロデューサーがボクの手を押さえつけてきた。
「.....麻央さん」
「......なんですか?」
「抵抗は無駄ですよ」
「な、何がです?」
「ずっとこっちは溜め込んできたんです。メスがオスに勝てると思わないでくださいね」
この後滅茶苦茶🍞🍞して子宝にも恵まれて幸せな家庭を築きましたとさ。
おしまい - 51二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:43:43
長い間お付き合いありがとうございました。
これ以上このスレ残っててもおそらく何もおきません......!