- 1二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 05:57:22
やぁ皆。まずこのスレを開いてくれたことを感謝する。そしてここからは残念なお知らせだ。
このスレはいわゆる『特殊性癖』に分類されるSSを綴るスレになっている。その中でも肥満化というヤツを取り扱っているね。
と、いうことでだ。そういったモノに理解を示せる、興味がある者だけこの先に進むといい。
一応すぐ下に過去スレを乗せておこう。未読の者、話の流れが気になった者は是非見てみてくれ。他の同好の士たちによるSSや絵がレスされているからね
ああ、それともう二点。今夜のSSはスレタイにあるマルクト本人がまさかまさかの不参加だ。彼女の活躍が見たかった方は……大変申し訳ない。
それと前回はSSの前半部分で終わっていたが、如何せんそのSSが難産でね。息抜きに書いたほうが先に書きあがってしまったからそちらをぶん投げていく所存だ。まぁこちらも容赦してくれると大変に有難い。
それじゃ、始めようか
- 2二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 05:59:39
前々々々スレ:
[性癖大回転閲覧]まるまるマルクトお姉さま|あにまん掲示板「か弱き子よ。おやつはまだですか?」そう言って、声の主たる女性は俺を見上げていた。白い髪、白い肌、そして黄色い瞳。彼女の名は『マルクト』。曰く、デカい枕なんちゃらのヨ言者……だそうな。「まぁ……うん、…bbs.animanch.com前々々スレ:
[性癖大回転閲覧注意]まるまるマルクトお姉さまと愉快な仲間達|あにまん掲示板「アオバァ!!これ多分接触不良起こしてるぞアオバァ!!基板どこだアオバァ!!」「今外し……ました!こちらです!『プロフェッサー』さんに症状のほう写真で送りますでしょうか!?」「流石だアオバァ!!早いぞ…bbs.animanch.com前々スレ:
[性癖大回転閲覧注意]まるまるマルクトお姉さまと愉快な仲間達 α|あにまん掲示板やぁ諸君。本当に久々だね。このスレはいわゆる肥満化性癖と呼ばれる題材を取り扱ったスレであり、そこらへん閲覧にあたり理解が求められるから注意しておくれ。以下に過去スレを貼っておく、同胞による良SSや絵師…bbs.animanch.com前スレ:
[性癖大回転閲覧注意]まるまるマルクトお姉さまと愉快な仲間達 β|あにまん掲示板やぁ皆。まずこのスレを開いてくれたことを感謝する。そしてここからは残念なお知らせだ。このスレはいわゆる『特殊性癖』に分類されるSSを綴るスレになっている。その中でも肥満化というヤツを取り扱っているね。…bbs.animanch.comいかんな、前という漢字がゲシュタルト崩壊してきた。それじゃあ行ってみようか
- 3二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:01:20
今、俺の目の前には大きく横に広がったデブい黒猫のプリントシャツが広がっている。だがしかし、このデブ猫は元々は標準的・一般的な縦横比の黒猫であったことを明示しておく。では何故これほどまでに太ってしまったのか?
答えは単純。
「……成長性、ものすごいな。お前」
「うっさい、やかましい」
着ている人間が横に大きい___否、横に大きくなってしまっただけの話である。
俺は、無残にも黒猫共々横に伸びきったSugar Rushの文字を眺めながらその服の主……伊原木ヨシミへと声を掛けた。
彼女が何故このような体型と化してしまったのか。それを説明するには時間をやや遡る必要があろう。 - 4二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:03:00
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その日、俺はトリニティ総合学園へと赴いていた。なんでも、トリニティの生徒会組織であるティーパーティーの長、その一人である桐藤ナギサより俺に『個人面談』がしたいなどととんでもない要請が届き、慌てて向かうことになったのだ。『先生』の付き添いで来た事は数度あれど、こと今回は連邦生徒会からの付き添いが一人と簡素なものであり、ほぼほぼわが身ひとつで超がつくほどのお嬢様学校に突入となればそれはもう緊張したことを良く覚えている。
そして付き添いさんが音速でどっか行ったり不良に捕まって電流拷問されたり円堂さんに助けてもらったり桐藤ナギサ殿下様にケーキ作りのイロハを教わったりといろいろあった末、手土産のスイーツを片手に帰路に着こうとしたその時。そこでヨシミ嬢と出くわしたのだ。
「あれ、アンタ先生の所の……」
「そういうキミはシャーレの……」
ファーストコンタクトは簡素かつ無味な会話であった。それもそのはず、両者は『先生』を介して顔見知った程度の、いわば友人の友人といった立ち位置だ。別に話す内容もなく、むしろ気まずいくらいだ。このまま互いに適当に挨拶か何かを二・三言ばかり交わして別れて終わりが妥当なところだった。
___彼女が俺の手に持っているものに目を付けるまでは。
「あー……先生は元k待って!!その手に持ってるのはまさか!!?」
「なっ何事ォ!!?」
彼女の視線が俺の手荷物に釘付けになる。箱の形、それから記された刻印を彼女のスイーツセンサーが一寸たりとも見逃すまいとじっくりなめ回すように捉えると、そこから得た情報は伊原木脳内スイーツ情報管制システムへと移送、膨大なデータバンクから該当するスイーツを驚くべき速度で割り出す。 - 5二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:04:03
「間違いない、リベッラのチーズケーキ……!ティーパーティー御用達……というか半ば専用ブランドの逸品がどうして……!?いや、どうやって……!!?」
「えっそんな高いもんなのコレ???」
「高いなんてもんじゃないわよ!とんでもなく高価でなおかつ購入するためにも厳正な審査をパスする必要アリ!庶民じゃまず間違いなく生涯を掛けても味わえないそれはそのあまりの入手難度からさっきも言った通りティーパーティー専用ブランドに片足突っ込んでて、庶民いやそれなりに高い地位の先輩方からも『存在しない味わい』とまで呼ばれて羨望の的になってるっていう……!!えっ、それ本当に本物?嘘じゃないのよね?」
「えぇと……さっきナギサ殿下様よりお土産に頂いた品で___」
「ナギッ……!?ほ、ほほほ本物じゃないのそれ!!!バカ、こんな無防備にぶら下げてんじゃないわよこっち来なさい!!」
「トリニティは誘拐が今のトレンドなので???」
こうして俺はその日二度目の路地裏へと連れ込まれていったのだった。
. - 6二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:05:44
.
「ここなら誰にも見つかることはない……わよね?」
「あの、ちょっと……えぇと、ヨスミさん……だっけ?」
「ヨシミよ。言っとくけど『こんなにする必要ある?』って質問なら答えはYesだからね?これがどんな価値を持ってて周りの人間がどれだけ欲してるかなんて外の人間にはわかるもんじゃないでしょうけどね、これはとんでもない魔力を持ってるのよ。……それこそ、3マガジンぶん至近距離から弾薬を浴びせてでも奪い取ろうって考える奴が山ほど湧いて出てくるほどにはね」
「ヒィイ……」
とんでもないことを言ってのけるヨシミ嬢だったが、その目は真剣そのものであったのを覚えている。多分マジもマジマジ、大マジであったのだろう。
が、そうなると一つ懸念点が生まれる。
「……じゃあコレどうすればいいの?」
「どうって……食べる以外に何があるの?」
「今の流れで!?これとんでもなく高価なんでしょ!?俺、おま、俺そんなの身体が受け付けんぞ!?俺は一汁二菜に美味しい白米で日々を過ごす学生だぞ!!?それがこんな……高貴が過ぎる!!」
「何よそれ!?どんなわがままよ!!」
今のヨシミ嬢の話を総括すると、今手に持っているケーキはお嬢様集団トリニティにあって尚高嶺の花である贅沢爆弾とんでも化け物スイーツということである。こんなの一口ウン万とかが頭を過ぎって到底味わえる気がしないのである。
「わがままでも俺には無理だぁ……!ヨシミ嬢、これ代わりに食ってくれ……!!」
と、いうことで目の前のお嬢様に押し付けることにした。 - 7二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:06:57
「また何を……はぇ!?わ、私がっ!!?」
「俺よりはヨシミ嬢のほうがこういうの味とかわかるだろうし高い食べ物にも耐性とかあるかと思って……」
「じょ、冗談じゃないわよ!そりゃ私だって味が気にならないって言えばウソになるけども……でもアンタが貰ったものじゃないの!」
突如として訪れた機会に激しく狼狽えながらも礼儀に沿って突き返すヨシミ嬢。育ちの良さが窺えるというものである。だがしかし。
「俺が……俺が食ったら多分吐く……!高すぎて、緊張しまくって……!!食い物は粗末にしないってイデオロギーを掲げる俺にとってそれはあまりに残酷でむごすぎるんだ……!!頼む、人助けと思って……!!」
「そ、そんな……えぇ……!?」
食に携わる人間として、「高価すぎて食えませんでした吐きます」なんて到底許容できるものではないのだ。そんなことしようものなら腹を切って詫びて死ぬ。
と、いうことで箱を突き出し必死の懇願を見せれば、これまた大きく狼狽えたヨシミ嬢であったが次第に落ち着きを取り戻すと、おずおずとこちらを伺い、小さく訊ねてくる。
「…………いいの?本当に?」
「頼む……キミが美味しく頂いてくれ……!」
「その……いや……そこまで熱く頼み込まれちゃあ……引き受けなきゃ人でなしってもんよね……!」
その内心の中で整理がついたのだろう、次第に声色に歓びを滲ませつつ、ようやく箱を受け取ってくれた。表情もえらく笑顔だ。
「わぁ……!本当に私の手の中にあのリベッラのチーズケーキがあるんだ……『存在しない味わい』がここにあるんだ……!!」
「すまん……この恩はいつかどこかで必ず返すから……」
「!?ちょちょちょ、待って待って、待って。こんな良いもの貰っておいて恩まで売っちゃったら悪いわよ……!?」
「でもあのままだと俺もチーズケーキも悲しい結末だったろうし……」
「それでもよ!頼むから私をこれ以上悪者にしないで……!」
俺は願ったりかなったりな取引だったが、彼女には納得できない箇所があったらしい。いろいろ考える素振りを見せ、「相場なら……」「人生で……」などと小さくぶつぶつと呟いた末に彼女は一つの落としどころを提案する。 - 8二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:08:30
「……わかった。アンタが私に感謝してるのはよく分かったわ。でも、だからこそ、私のいう事も聞いて。……これから、私はアンタの言う事を三つだけなんでも聞いてあげる。これでどう?」
落としどころ、どころかとんでもない提案だった。
「なんでも……っ!?ちょっ、キミそれは……!軽率が過ぎるだろ、だってそれで俺がもし___!」
「覚悟のうえよ!……このスイーツにはそれだけの価値がある、それこそ人生を売り払ってもおつりが来かねない価値がね!それとも何?アンタ、私の意志を尊重する気が無いっての?」
「それは……!そんなつもりは……」
たまらず反論したつもりだったが、既に言質はとられてしまっていたようで、思わずどもってしまう。結局、有用な反撃手段も思いつかず受け入れるほか無かった。
「……わかった。どんなお願いであっても後悔するなよ?」
「言ったでしょ?覚悟の上だって。……それにきっとアンタなら、そんなに嫌がることはしないと思うから……多分、きっと。根拠はないけど、恐らく」
……年端も行かぬ少女にこれほどの決意を固めさせるこのスイーツはいったい何者なのだろうか。彼女の手元に所有権の移ったソレの秘めたる価値に戦慄しながら、俺はふと丁度人手が欲しかったことを思い出した。
「……そうだ、それなら。なぁヨシミ嬢、早速のお願いなんだが、俺のスイーツ作りのトレーニングに付き合ってくれないか?」 - 9二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:09:38
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あの日、俺はナギサ殿下様よりスイーツ……あの日はロールケーキの作り方を教わったのだったな。それの練習や次またナギ殿と会う日のために自宅のほうでもスイーツ作りの練習を始めたのだ。そしてその味見に起用したのが、ちょうどお嬢様ということもあり舌がいい具合に肥えているであろうヨシミ嬢であったという訳だ。
彼女は「それだけのことでいいの?」と訊ねてきたが、俺にとって未熟な料理を振る舞うというのはそれだけで過酷な行為であるしそれに付き合わせるのにも命令権がなければ後ろめたくて堪らなかったろう。「それだけのこと」ではなく、俺にとっては「それほどのこと」だったのだ。
……尤も、彼女からしてみればそんなことなかったのだが。
「あーもう、横じゃなくて縦に伸びて欲しいのよ私は……!こうなったのもアンタの責任なんだからね!?」
「いや全くもって仰る通りで」
あれから頻繁に彼女を呼び寄せるようになった。そしてそのたびに大量にスイーツ___ある時はロールケーキを、ある時はカップケーキを、またある時は___を食わせては感想を聞き、そこからフィードバックして改良品を作ってはまた食わせて……を繰り返していくうちに、彼女はぷっくぷくのぶっくぶくに肥えてしまったのだ。
ズドンと大きく膨らんだ腹は、シャツでは覆い隠しきれずにヘソが白日の下に曝け出されてしまっている。そのシャツも下はともかく上までも過剰な栄養により豊満に育った胸に襲われて表にプリントされたロゴが悲惨なことになっている。バンド衣装として羽織っている上着も本来はオーバーサイズであったはずだが、腕部分を始めあちこちで張り詰めた皺が寄っていて繊維の限界の訪れを予感させる。スカートももやは低めの腹巻といった様相を呈しており、というよりもその上から腹肉がどっぷりと圧し掛かっているため腹巻としての働きすらできていない。
キッと上がった目尻と眉尻は見る者に鋭い印象を与えていたが、今の頬や顎に肉を蓄えたまん丸お顔の彼女にあっては以前と同様の印象を持つことは至難と言っていいほどであった。
肥満児。デブ。それが彼女の現状を表す言葉群であった。
やってしまった。俺は頭を抱えた。 - 10二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:10:39
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「けぇっぷぅぅう……はぁ~食べた食べた、もうお腹ぱんぱん」
時期は変わってハロウィン。キヴォトスでも「トリックオアトリート!」の掛け声が響くこの日、俺の部屋にも何人ものデブが訪れたものだ。その中の一人、伊原木ヨシミは脂肪だけでなく内容物によって大きく膨れ上がった腹をぽんぽんと叩きながらソファでくつろいでいた。
そんな彼女の恰好は、ミイラである。
全身をくまなく包帯で覆った風体を想像しただろうか?残念、全裸に包帯をまばらに纏っただけの痴女一歩手前スタイルである。もしもしヴァルキューレ?
いや、これがもし美しいスタイルの美女による作であったならば容赦なく矯正局かもしくはワイルドハントの美術館行きだっただろう。だがヨシミ嬢は違った。
「ふぅ……あぁ~キッツ……ちょっと緩めようかしら、包帯……」
現状の彼女は全身に肉を蓄えたデブである。それが包帯などという紐状の物体を全身に巻きつければ、ハムよろしく肉が挟まれはみ出るのは必然と言えよう。
俺には、それがどうしようもなく性的魅力に溢れて見えて仕方なかった。
ギチギチに絞った包帯の間からどたぷんと溢れ出た駄肉は、それが作り出す彼女の歪なシルエットと合わせてとても滑稽で、しかし可愛らしく、肉感に満ちて最早母性すら感じるほどであった。それがスイーツの飽食で膨らむとなれば、包帯がさらに食い込み重量感も魅力も増すというものである。
俺は我慢できなかった。 - 11二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:11:51
「……なぁ、ヨシミ嬢。三つのお願い事、覚えてるか?」
「うっぷぅ……ん?あぁ、まだ二つ残ってるわよね」
「……今ここで一つ使わせてくれ。その……肉を。揉ませてほしい」
「!…………うん、わかった」
女性であれば到底受け入れがたいであろうその要求を、彼女は蚊が鳴くような声で了承してくれた。自分の中に罪悪感と些かな嗜虐心が芽生えるのを覚えつつ、俺は彼女の腹に手を伸ばす。
「んっ……ひゃっ……!」
「あ、ごめ___」
「いい。続けて……」
たぷたぷ、もにもに。ずっしり育って詰まった巨腹からユウカもびっくりの太腿に、そしてふくらはぎへと手を添わして揉みしだく。そのいずれもとても柔らかく、それでいて普段触れあっている白大福とはまた違った触感と体温に新鮮さを覚えていた。
「んぁ……!ふ、ぅィっ……!?」
手を上へと、胸元へと寄せる。ちらりと彼女の表情を伺えば、普段の強気で反抗的な性格は何処へやら、熱っぽく恍惚とした表情を浮かべたヨシミ嬢は視線で俺に了承の意を告げる。
「ぁ、ぁっ、~~~~~~~っ!!っは、あぅっ……!!んむ、うむみゅ……!」
その胸元に実った巨峰を両手でぐにぐにと揉み、掴み、抱きしめる。手に返ってくる感覚が心地いい。そのまま首元へと腕をもっていき、両頬の弾力を二つの掌でもちもちと堪能する。
興奮が収まらない。下腹部に血が集まっていくのを感じる。気づけばヨシミ嬢も目元を潤ませ、尚俺の全てを受け入れようと両手をこちらに伸ばして広げる。 - 12二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:13:01
___駄目だ。このままだと一線を越える。
確信に近い予感を覚えた俺は彼女の手の内から離れようとした。
が、それを彼女は許さなかった。その肉厚な手で俺の両腕を掴むと、そのまま自身の胸元へと引き寄せ、そしてその脂肪のクッションへと放り込んだのだ。
「……!?な、ヨシミ嬢いったい何を……!?」
「わかんない……けど、こうしたくって……!」
彼女の吐息が熱い。完全に熱に浮かされている。このままではとりかえしのつかない所まで行ってしまいそうだが、すでにあの白大福と関係を持った俺にそんな不義理は働けない。いやもうここまでやってしまっている時点で十二分に不義理かもしれないが。
が、さりとて拒絶しようとすれば彼女を傷つけかねない。さてどうしたものか……と悩んでいるところに、何処からともなく異音が聞こえてくるではありませんか。
なんだ、この……カリカリカリカリ……て感じに紙とペンの擦れる音は……?俺が不審がって周囲を見渡せばヨシミ嬢もその様子に釣られてその短い首を左右に振って。
「はぁ……はぁ……これよ……脂肪とエロスの融合……これは天下を取れるわ……!!」
「れっレナさんっっっ!!!??」
何とそこにおわすはワイルドハント芸術学院は一年、オカルト研究会所属の衣斐レナそのひとではありませんか。ここに来てるだけあってしっかり全身に脂肪を蓄えた彼女、いろいろあって性癖が歪んでしまったらしくてですね、あの白大福ことマルクトの巨体に合う特注服をデザインしてからというもの、脂肪を芸術品に仕立て上げる独自思想に基づくデザインを数多く生み出しております。オイ誰が責任とるんだよコレ。
そんな彼女が自分らの情事一歩手前のやり取りから必死にスケッチブック上に筆を走らせてるもんですから今までのムードはどこへやら。二人慌ててレナの元に駆け寄りてんやわんやのちょい騒動。結局スケッチブックは回収できたが、スケブに書かれた衣服デザインのほうはとてもえっちだったから後日こっそりヨシミ嬢がそのデザインで発注を掛けたそうな。 - 13二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:14:33
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そうしてなんとか不貞の危機を乗り越えようとした、そんな中で。
「……ねぇ。私、まだお願い事は一回しか聞いてないから」
「?いや、だってさっき俺___」
「さっきのは……私が求めたこと。私がアンタの手を取って……。だからまだ……権利は二回ある。そういうこと」
そう言うと、むにゅりと腹の脂肪を押し付けてくる。
「さっきは私も止まらなきゃいけないラインで止められなくなっちゃったから……次はちゃんと我慢するわね。だからまた……よろしく」
そういってまだ熱の残る吐息を吐き掛けると、彼女はどすどすと部屋の奥へと消えていくのであった。
はたして俺の方が我慢できるのだろうか。頭を抱えるのであった。 - 14二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 06:21:03
やぁ諸君。ひと月ぶりだね、私だよ。今日も今日とて深夜に……あれ?おかしいな、外が明るいぞ……?
まぁそれはさておき、今回一つ謝罪しておきたいことがあってね。これ、本当にヨシミ君じゃなきゃ駄目だったかな?って。ヨシミ君を題材に据えるならもっと活かしようはあるんじゃないか?って。その思考がずっと頭の中をぐるぐるしつつ、しかしややツンケンして、それでいて至って普通の、だけどもどこか普通じゃない、そんな彼女に惹かれて息抜きの見切り発車に書いてみようとした次第でね、正直なところ今でももっとやりようはあったのではないかと考えてしまうんだ。
だがしかし、私はこれで書いた。書き上げてしまった。もしもキミたちが求める人物像に至っていなかったとしたら、その時は……まぁ、寛大な心で容赦してくれると助かるということで、ね。
- 15二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 07:41:46
今度はヨシミがもっちり大成長…相変わらずのおにくの描写とても好きです
それにしれっとレナちゃんまでまるまると…本当甥くんはどれだけ肥やしているんだろうか… - 16二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 14:50:55
げっぷがずっと漏れてるヨシミえっちぃ……
縦はともかく横の成長性はものすっごいね
身体のシルエットがどんどん球に近づくのを想像するだけでクるものがある - 17二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 15:11:15
エッッッッッッッッ
あれだけツンツンしてるヨシミが普通に受け入れてしかも自分の方に抱き寄せてきてるの凄くいい…
まだまだ成長性は残ってそうで何よりで
今回もありがとうございます、また時間良ければアザミの続きも是非…! - 18二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 00:00:49
揉みしだくたびに包帯がはだけて、ぎっちり締め上げてたシルエットがぽよぽよ膨らんでいくんだよね…
- 19二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 09:03:04
やはり甥くん、先生の血縁
- 20二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 18:40:55
甥くんにかかれば誰でも成長性S(肥満方向)
- 21二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 01:52:49
他の子の仮装も皆相応にみっちみちなんだろうなぁ
- 22二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 11:18:57
毎日目に見えるレベルで増量して行くなら、そのうちヨシミも動けなくなるのでは(迷案)
- 23二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 11:57:08
このレスは削除されています
- 24二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 21:39:17
保守
- 25二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 02:10:54
このレスは削除されています
- 26二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 09:38:46
スイ部もヨシミに引っ張られてもちもちし出してそう
- 27二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 18:25:52
hosyu
- 28二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 04:17:12
- 29二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 13:39:03
- 30二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 21:13:14
- 31二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 21:14:44
あっ良い
- 32二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 22:15:48
最初の三ヶ月より次の方が増え幅すごいの食事量の増加に運動量の低下、体質も変わっちゃった感じが見て取れてすごく良き
ずっとヨシミ見て油断してそうだけどヨシミは少なからず痩せてるから、そのうち追いついてすぐ追い越しそう
- 33二次元好きの匿名さん25/11/06(木) 06:55:49
毎日のスイーツ巡り、大量の先生からの贈り物、運動量の低下…
うーんなんで太るんだろうなぁ - 34二次元好きの匿名さん25/11/06(木) 16:30:52
「なんで太るんだろう(もぐもぐ」好き!
- 35二次元好きの匿名さん25/11/06(木) 19:51:41
というかさらっとワイルドハントにも手を広げてるのに笑う
- 36二次元好きの匿名さん25/11/07(金) 02:08:35
女性の脂肪は古来から芸術と深くかかわってたりするから……
- 37二次元好きの匿名さん25/11/07(金) 08:27:58
うおおおおお新作待ってた
- 38二次元好きの匿名さん25/11/07(金) 17:57:46
包帯千切れたら大惨事だね♡
- 39二次元好きの匿名さん25/11/07(金) 19:48:09
アイドルイベの包帯が大変なことになってそうなのはそうなんだけど、通常の服から太るごとに包みきれなくなった脂肪が溢れていって、服として機能しなくなっていくの凄くエッチじゃないです?
≒だんだん裸になってるようなもんだし
- 40二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:34:15
『ソレ』は、あまりにも唐突であった。
「なんだ……この値段は……!?」
陳列棚の前、丁寧に並べられた食品のその前に貼られた値札に書かれた数字に、俺は愕然としていた。
「卵が……レタスも……もやしですらも……!?馬鹿な、高すぎる……!?」
棚に所せましと並ぶ食品、その全てが平時では考えにくい数値にまで値上げされていたのだ。
そんな馬鹿な。台風も酷暑も無縁であったはずだ。いったい何があったのか……その答えを求めて店員さんに話を伺ってみれば。
「あ~……なんでも、物流のほうでトラブルがあったらしくてねぇ。この先ずっとこの調子だろうってさ」
「な、なるほど……」
産地のほうではなく、輸送のほうに問題があったようだ。が、重要なのは『この先ずっとこの調子だろう』という文言のほうだ。
「(……マズい。ただでさえ食費は他所様とは比べ物にならない数値になってるのに、ここに更に値上げの波に当てられたら連邦生徒会からのバイト代じゃ賄いきれなくなるぞ……!?なんとか、何か手だてを考えなくては……!)」
と、軽く思案して一人の少女の顔が思い浮かぶ。そうだ、こういう時は彼女ならば何か知っているはず……! - 41二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:35:21
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『はいもしもし、フウカです……あっ、その声はチアキの……』
『うん、うん……あー、値上げの件ね。実はこっちも思いっきり煽りを受けて……うん、今新規に仕入れルートを開拓できないか模索中。流石にこのまま何もしなかったらつぶれちゃうわよ、給食部が』
『うん、そうね。生産地のほうに直接出向いたりなんかも一つの手ね。というか、キミなら私たちほど仕事に圧殺されてる感じでもない、フットワーク軽めに動けるだろうしむしろそういったやりかたのほうが合ってるかも……?』
『力になれたようでよかったわ。また何かあったら気軽に連絡頂戴?こういう時間帯ならいつでもオッケーよ』
『……今度、またゲヘナにも寄りなさいよ。ジュリも待ってるわよ』
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「うん、やはりだ。こういう時はフウカさんを頼るに限る……!」
愛清フウカ。給食部としてゲヘナ学園に在籍する生徒の胃袋を支えるその手腕は伊達ではなく、故に料理という分野における知識で並ぶ者は数えるほどしかいない。仕入れや在庫の管理などまで含めればなおの事だ。その知識には俺も大量の料理を作るようになって世話になったものだが……今回も存分に頼らせてもらった。おかげで有用なアドバイスを貰えたというモノだ。
「生産地、か……」
陳列棚にあった商品を手に取り、その裏を確認する。そして俺が目指すべき目的地を口にする。
「……百鬼夜行。エビス自治区」
「……………………百鬼夜行、かぁ……」 - 42二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:36:25
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エビス自治区。
百鬼夜行連合学園における書類上は多数の生徒が在籍していることになっているその校舎の中を、唯一人の生徒が我が物顔で歩く。随分と都合のいいことでもあったのだろう、その口角は上機嫌を隠すことなくつり上がっていた。
『近く客人が訪れる。用意せよ』
その報せを受け、やってくるであろう客人の素性を調べたその生徒は思った。
「これは使えるぞ」、と。
何せその人物はあの『シャーレの先生』、その血縁者であったのだから。
『シャーレの先生』。連邦生徒会によって外から呼び出された大人であり、今やキヴォトスにおけるあらゆる事件に介入・解決していっている、決して無視できない存在。同じ組織に属する箭吹シュロもあの大人に手酷くやられたと聞いており、その脅威は彼女も認知する所であった。
彼女___土生アザミは秩序に仇なす存在である。故に先生と事を構える事態を想定し、そのための手札を欲していた。そのタイミングでこの報である、好都合を超えて最早運命すら感じるほどであった。
「手元に転がり込んだこの吉報。使いどころによっては切り札たりえましょうが……さて、どう使ったものでしょうか……」
口元が歪に歪み、後ろ髪がまるで生を得たかのように揺蕩う。彼女の思考は既にかの存在をどう引き入れるかではなくどう活用するかの域にあり、それはただの人間風情に遅れを取るはずがないという彼女の驕り、自信からくるもの___あるいは、彼女という存在の恐ろしさの左証であろうか。
蛇は一人、巣穴にて獲物を待つ。極上の獲物を、ただ牙を研いで待つ。 - 43二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:37:31
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「今回案内を務めさせていただきます、百鬼夜行連合学院はエビス分校の自治委員会会長、土生アザミと申します。よろしくお願いま___」
「よろしくお願いします」
「ふぅ……ようやく着きましたか、か弱き子よ……」
「デッッッッッ」
「……?」
長旅の末列車を降りた俺達を出迎えてくれたのはガイド役を務め___ようとしてマルクトの巨躯に圧倒された様子の土生アザミさんだ。おうコラマルクトきょとんとするな、お前のせいだぞこれ。
「……っ、こほん。お話はお手紙にて既に伺っております。輸送網のトラブルによる物価の高騰……農作物や特産品の輸出を主な財源としているこの自治区としてはとても無関係とは言っていられない状況です。あるいはそのあおりを受けてこのまま産業が先細り……などという展開もあり得たかもしれないこの状況下において、わざわざこのような僻地にまで足を運んでいただいたその熱意と誠意に私は感激いたしまして……!」
「誠意だなんてそんな……自分は少しでも食費を浮かせられたら、なんて純度100%の下心で伺った次第ですし……」
「ですがそうして我々を選びこの地まで足を運んでいただけたことこそ、我らにとって無上の喜びですとも!さぁ、立ち話もなんですしまずはこの自治区を見て周りましょう!そして願わくば互いに望む結果を得られればと存じます……!」
そう言ってこちらに手を差し伸べてくるアザミさん。こういった観光ガイドには慣れているのだろうか、あるいは生徒会長として役所仕事に精通しているからか?最初のマルクトを目撃したときの衝撃からさっぱりと復帰するとその後の対応は堂に入っていて貫禄すらあった。
……成程、とても頼りになりそうだ。今日の俺達は運がいい。
「……ですね。改めて、本日はよろしくお願いします!」 - 44二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:38:34
そう言って差し出された彼女の手を握った。
尚、駅のホームから階段を上がろうかというシチュで握手したものだったのでそのまま手を引かれる勢いだったが、大した荷物も持っていないしお手数おかけする訳にもいかないから「自分は大丈夫」とやんわりと断ったら俺の後ろのマルクトのほうを見遣って「えっ、じゃあこの白大福の手を引……補助しなきゃいけないんですか?」ってほんの一瞬固まった。ごめんね、そいつこの前のFOXダイエットの際に昔の勘を取り戻しただかで特殊部隊顔負けの体力発揮しだしたから階段程度なら一人で上り下りできるし平地なら凄い勢いでダッシュできるくらいにはスタミナお化けで補助とか必要無いんだ。変に怖がらせちゃって本当にごめん。 - 45二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:40:18
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「ずいぶんと……買い込みましたね……?」
「い、いやぁ……どれも気に入ってしまいまして……あはは……」
数時間後。駅を降りた時の軽装から打って変わって、俺はまるでコミケ帰りの戦士たちのような重装と化していた。
俺は悪くねぇ、丁寧で情熱溢れて思わず見入る作品を並べてとても良いお仕事をする工芸家職人さんたちが悪……いややっぱ俺が悪いや、以後気を付けねば……しかしいい買い物であった……。
「この地の工芸品を気に入っていただけたのでしたら私としましても委員長冥利につきるというものですが……しかし本来の目的をお忘れではありませんよね?」
「あぁ、いや、そっちもちゃんと覚えてますとも。本命はそっちですもんね」
俺の目的。そう、食品の件である。
ぶっちゃけ買い物中は何度か頭からすっぽ抜けることもあったが、それは言わぬが花というヤツであろう。あれこの言葉こういう用途で合ってたっけ。
「……忘れていないならこのまま参りましょうか。視覚で工芸品を堪能していただいた次、ここからは視覚ではなく___味覚の時間です」
「味覚……!」
「じゅるり」
アザミさんのその言葉の意味することを察し、そしてそれは連れのマルクトも同様だったのであろう、後ろからよだれをすする音が聞こえてくる。こら、みっともないからやめなさい。 - 46二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:41:23
と、なにやらいそいそと用意しだすアザミさん。さて何が出てくるのかと期待に胸を膨らませているとなにやら香ばしい、それでいて甘い香りが漂ってくる。これは……。
「はい、こちらはこのエビス自治区で採れたじゃがいもを使用しました___」
「じゃがバターだぁ!!」
「ふふっ、正解です。ささ、暖かいうちにどうぞ」
見覚えのあるその料理についついアザミさんの言葉を遮ってしまう。そのまま勧められるがままにじゃがいもを手に取り、パコっと割って__その柔らかさに感嘆しつつ__口に含んでみれば……
「甘い!これは……バターの甘味じゃない!イモ自身が蒸されたことで出る甘味っ!こびりつかないさわやかな、旨味と密接に繋がった甘味……!だがイモがこれほど甘くなるとは……!!」
「おいしいです」
「品種も違えば生育環境も違う。例えそれらがこのいもと同じ、この地で収穫されたものであっても鮮度が異なります。ならば味に差ができるのは自明の理……さらに言えば、じゃがいもはどちらかというと保存の利く作物です。長期保存しても味は本来ならば早々落ちるものではありません。しかしてこれほどに鮮度が旨味を引き出しているのです、これがもし保存の利きにくい作物であったならば___いったい、どうなってしまいますでしょうかねぇ?」
「___!!」
「食欲がとまりません」
馬鹿な……つまり、この『鮮度』というパロメーターはこの絶品じゃがいもでもまだ本気を出していないということか……!?
その事実に戦慄する俺とその後ろでもっしゃもっしゃと三つ目のじゃがバターを口にするマルクト。どうやら今回の遠征はとんでもないことになりそうだ、そう予感するには充分すぎる状況であった。 - 47二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:42:25
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「凄かったな……どれも美味しかった……」
「それに量も充分でした。私も大満足です」
「……うん、そうだな」
今日予定していたスケジュールを全て終え、女将さ……アザミさんの用意してくれた宿にて明日の英気を養うためにくつろぎながら今日という日を思い返す。
じゃがバターから始まったエビス自治区味覚堪能ツアーは、その後もとうもろこし、焼きイカ、ホタテ、キャベツ、etc……と様々なものがお出しされたが、そのいずれも市場でお目にかかることは難いであろう絶品揃いであった。凄い勢いで試食を平らげていくマルクトにちょっと抑えるよう言おうともしたが……そも今回の目的は大量の食材と食費を賄うためのものであり、そういった意味ではマルクトの食欲と胃袋に対応しきった今回のツアーは合格点を優に超えているであろう。
さて今夜はどんな料理が出てくるのか……そう思って、ふとひとつ考えがうかぶ。
「……!そうだ、おkアザミさん!この付近にお店やってるところありませんか!?それと厨房をお借りしたいのですが……」 - 48二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:43:30
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土生アザミは勝利を確信していた。
『ここ』に連れ込めた時点で勝負は決した、後はいくらでも時間をかけてじっくりと篭絡していけばいい。洗脳といっても差し支えは無かろう。そうやって自分にとって従順な駒を仕立てあげられれば、こちらもシャーレに干渉する経路を得られるという話だ。
一介の人間とただのデブがこれから行われる責め苦に耐えられることなど不可能。外からイレギュラー要素でも突っ込んで来れば話は変わってくるかもしれないが……だがこちらには『彼女』が、百花繚乱最強の彼女がいる。負ける見込みなど無いに等しかろう。
王手にむけ、駒は得た。後はこれで以て我が宿g「うっま」
思考が途絶えた。卓上に並べられた、彼の作ったその料理を口にしたその瞬間、彼女の脳内は美味という感情に塗りつぶされ、謀略の一切合切が蚊帳の外に押しのけられてしまった。
「え、あ、旨……おいし……!?こ、これは……!?」
口の中に広がる美味、その衝撃に箸が止まる。この味、この風味、間違いなく自分の自治区で採られたものだ。だが引き出し方が違う。作物たちが持つスペックを、風味から食味まで余すことなく最大限に引き出している。こんなやりかたがあるのか。これほどまでに伸びしろがあったのか。 - 49二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:44:34
「よかった、お口に合ったようでなによりです。……試食してる間に『これならこういった料理に使えるかも』ってずっと考えてたもので、それを実際に形にしてみたのですが……見立てが当たったみたいですね。やはりこの調理法なら甘味と歯ごたえがより引き立つ……!」
「?どうしましたか、案内役よ。そう呆然として……口に合わなかったのであれば私が頂きますが?」
「え、ちょっ、美味しいって言ったでしょう!?私ももっと頂きますからそんな勢いよく食べないでむっは美味しい……!」
と、白大福がお皿にこんもりと盛られたじゃがいもの煮付けを掃除機もびっくりの勢いで口に放り込み始めるものだから自分の分を取られまいと大慌てで箸を伸ばす。
「(美味しい……この野菜たちも、よもやこれほどの実力を秘めていたとは……もうひとつ、いや、もっと……あっ旨……)」
ふたつ、みっつとロールキャベツを口に運ぶ。よっつ、五つと春巻きを口に放り込む。そのたびに美味に打ちひしがれ、更なる美味を求めて食卓に箸を伸ばす。
……この時点で既に彼女は並の人間の食事量を軽く凌駕していた。だが、彼女がそれに気づくにはもう暫し時間が必要であった。 - 50二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:45:36
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卓上の皿に空きが目立つようになってきた頃合い、アザミの身にそれは起こった。
「おぉ……こちらは七味唐辛子でしょうか?ピリリと舌を撫でるような辛味が野菜の秘めた甘味を引き立ててまた素晴らしい仕上がりで……っ!?」
ぶちぶちぶちっ ぼんっ!
腹部のあたりからにわかに鳴り出したその異音は瞬く間に広がり、締めに爆発音に似た何かと共に腹まわりに妙な解放感を与えて消えた。
いったい何か……状況も読めぬまま視線を下に向け___
「……へ?」
ぱんぱんに膨れ上がり着物を押し退けてはみ出たヘソが、視界の先に飛び込んできた。
「なん、でしょうか……これ___」
ヘソ。つまりお腹の先である。お腹……お腹?何故?誰の?自分の?自分の……お腹が?膨らんでいるのか?……着物を押し退けて? - 51二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:46:42
……食べ過ぎて、いつの間にかこれほどまでにお腹が膨れ上がったのか?その思考に行き着いたその瞬間。
「___っぐ!!?」
食欲によってごまかされていた満腹感が彼女を襲う。
「お、お腹、キツ……!?」
「あ、アザミさん!?」
噴き出る脂汗。頭上からはミシミシと何かが__おそらくはヘイローが__軋む嫌な音が響き、彼女の身が限界を過ぎていたことを知らせる。
「う、ふっぁ……!!お腹、がぁ……破裂す……!!」
「アザミさん!ま、マルクト!」
「わかりました、布団を取ってきます。その間にあなたは座布団で簡易的なベッドを」
周りがにわかに騒がしくなり、動きが激しくなる。が、アザミにとってはそれどころでなく、帯が弾けたことで抑えのなくなった腹がブクゥと二回りほどさらに膨れ上がって彼女の意識を圧迫する。
傍から見れば生死の境、あるいは食い過ぎて倒れた阿呆に見えるであろう。だが、そんな彼女の中には未知の感覚が湧き出ていた。
(あ、ぅう……苦しいはずなのに……気持ちいい……!♡)
それは膨れ切った胃袋が彼女の性感帯を圧迫したのか、あるいは苦しすぎる状態にドーパントが過剰に分泌されたからか。理由がどうあれ、彼女は腹の膨らみに快感を覚え、興奮していた。
「あ……あぁ……ぁっ……!♡」
言葉にならない、最早喘ぎ声とすら取れる音を口から発しながら、アザミの意識は腹に圧し潰されるように消えていった。 - 52二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:48:43
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「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」
「あっ、アザミさん……」
一夜明けて翌朝。寝室から出た俺をアザミさんが優しく出迎えてくれる。が、昨夜の件もあって彼女と顔を合わせるのは正直に言って気まずく感じていた。
「……はい、ぐっすり眠れました。それよりもアザミさんのほうは……」
「私は……昨夜はお見苦しい姿をお見せしてしまいました。申し訳ありません。まさか自分でも気づかないうちに気絶するほどに食べていたとは……人生で初めての経験でした」
そういって恥ずかし気に頭を下げるアザミさん。が、気負った様子も怒った気配もなく、むしろ機嫌は良さそうだ。
「それもこれも、あなた様のお料理の腕前の為せる技……感服致しました。私ももっともっと精進せねばと気を引き締めたい所存です」
「あはは……気に入っていただけたならなによりです」
どうやら昨夜のことに対して怒っているような様子はなさそうで、それどころか料理の腕を褒められてしまった。こう、旅館の女将みたいな人にドストレートにべた褒めされるとさすがに気を良くしてしまう。調子に乗ってしまわないよう自制はしているつもりだが、それでも笑みがこぼれるというものだ。
と、女将さゲフンゲフンアザミさんが不意に窓の外に視線をやるものだから、俺もそれにつられて外の様子を伺う。
「……大雨ですね」
「土砂降り、ってヤツですね」
窓の外に映るのは、バケツをひっくり返したような絶え間ない豪雨のただ続く光景であった。空に青は一片も見当たらず、それどころか向かいにあったはずの街灯も雨粒に遮られて見失ってしまうほどだ。
「これでは本日の予定は難しいでしょうね……それどころか、この地を離れるのにも命の危険が出てくるというものです。今日のところはこの宿で雨宿りしつつ、明日改めて見て周るというのをおすすめしたいのですが……大丈夫でしょうか?」
「ん、まぁ連邦生徒会に事情を説明すれば納得してくれるでしょう」
「でしたら連絡のほうは私にお任せを」
アザミさんからの有難い提案にありがとうございますと感謝を述べ、再び外の景色に意識を向ける。 - 53二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:49:43
あいも変わらぬ灰色の雨模様は、しかし止まぬ雨はないと知っていながらそれでも尚、永遠にこの雨の中に囚われてしまうのではないかという漠然とした不安を感じるほどに勢いを衰えさせず降り続ける。
……この時感じた不安は、後に見事に的中することとなる。
「あ、じゃあ朝食作るのお手伝いしましょうか?」
「!!!……コホン、それではお言葉に甘えて……」
その日、朝昼晩と三度にわたり俺も厨房に立ち入ることとなった。アザミさんは流石に食後にぶっ倒れるなんてことはもう起こさなかったが……が、食事を終えるといそいそと別の部屋に籠るようになった。食直後を見られるのは恥ずかしいのだろうか……? - 54二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:50:44
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(不覚を取った……よもや、ただの料理にあれほどの醜態をさらすことになるとは……!)
時間は遡って数時間前にて。誰よりも早く目を覚まし、土生アザミはぎりりと歯噛みする。思い出されるのは昨夜の出来事。自身の胃袋の限界を見誤って過食し、その果てに気絶するというなんとも言えぬ間抜けを晒した挙句、その場に居合わせたただのガキと白いデブに介抱されたという事実が彼女の自尊心を著しく害していた。
(……いや。だがしかし、それよりも……)
が、記憶を掘り起こしていくうちにより懸念すべき事柄を思い出し、思考をそちらに向ける。
(……私は、意識を手放すその寸前に『感じて』いなかったか?)
思い起こされるのは昨夜の記憶の末尾。張り裂けんばかりの腹の圧迫感と薄れゆく意識の中に、艶めかしい声が混在していたような気がしてならないのだ。
「……馬鹿げているにも程がある。食事と性的快楽を結びつけるなど畜生にも劣る行為……酷い記憶違いだろう、まったく……」
確かに腹を満たすことは欲求を満たす行為であり、あるいは快感を感じることもあろう。だが冷静に考えればその程度のことで喘ぎ散らすほど自分が落ちぶれているなどあり得るはずがない。であるならば勘違いであろう。そう結論付け、彼女は着替えを終えると善良なガイド役を演じるべく客人__獲物らが待つ寝室へと足を運んだ。 - 55二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:51:45
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「はっぐ、ぅぷ……ぉっ♡」
勘違いではなかった。桁違いの量の朝食を白大福と競うように食べ、弾けんばかりに膨れ上がった腹を抱えて自室に籠ったアザミ。その吐息と喘ぎ声には、確かに嬌声が混在していた。
「なん、でっ……おぐ、きもち良……!」
ぎちぎちと張りつめる腹、腹を内側から自身を破壊せんとばかりにじくじくと迫る圧迫感。あるいは拷問でも受けているかと錯覚しそうなほどの苦痛の中で、しかし彼女は内から溢れ出る性的快感に打ち震え、身悶えしていた。
「はぁ、はぁ……!苦しいのに、苦、じぃっ!?……の、にぃ……!!」
彼女の中で苦痛と快感が拮抗し、しかし打ち消し合うこともなくその暴威が彼女の思考力を奪っていく。が、苦痛は一定量が流れ続けるのに対して快感は溜まっていく。次第に快感が溜まっていくと彼女の理性を溶解させにかかる。
「あっあっ、気持ち良、だめっ、もう我慢っ、あっ、できないっ」
ついには快感に屈し、自ら更なる快感を求めて胸元へと手を伸ばすと、自身の豊満な胸を掴んで揉みしだく。
「~~~~~~~~~~~っ!!!あっ、へっ、へっ……!」
波が彼女の全身に駆け巡り、股下に体液の池を作る。だがしかし、身体に溜まった快感の全てを吐き出せず、やるせない感覚に身をよじりながら股下へと手を伸ばす。
「あっ、はっ、あっ、ぃ__________っ!!!」
水音が小さく鳴り響き、池がじわりと面積を広げる。それと同時に快楽の波が引いたのか、アザミは自らの生み出した池の中に力なく崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
気付けは腹囲を襲う圧迫感も苦痛もだいぶと和らぎ、心地よさばかりが残っている。その多幸感に浸りながら、アザミは働かない頭でぼんやりと考えるのだった。
___食直後は絶対に他人には見せられないな、と。 - 56二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:53:41
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「……雨、ですね」
「ですねぇ」
エビス自治区、二回目の朝。相も変わらず空は曇天、人も車も走らない街中を、雨あられだけが元気に降り注いでいた。
「……その、提案なのですが。今日もこちらで泊まっていきませんか?」
「……ですね。昨日とそう変わらない天気ですし、昨日が駄目なら今日も駄目でしょう。お言葉に甘えさせてください」
連邦生徒会とかのほうが気がかりだが、まぁ外様の一介の子供が二日三日帰らない程度で何か影響が出るほど細い組織でもあるまい。それに一応連休を狙って来ているし、時間はあるはずだ。俺は女将さゲフンゲフンアザミさんの提案に有り難く乗らせていただくことにした。 - 57二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:54:42
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夜。
(ん……ちょっとお手洗い行きたくなってきたな……)
ふと目が覚めた俺は、尿意を我慢できずにお手洗いに向かうことにする。その為に頭上に乗った白い肉塊を掻い潜ってマルクトの腹と胸の谷間から顔を出すと、そのまま枕にしていた彼女が起きないよう細心の注意を払いつつ起き上がり、部屋の外へと出る。
と、その時だった。
「___っ!?」
暗い廊下の向こうに、人影が見えた。アザミさんか……いや、違う。ややぼさっとしたあの髪型はアザミさんのものではない。
ならば誰だ。マルクトは違う。隣の部屋で寝てるし、第一あんな細い身体つきじゃない。自分、なんて以てほのか。そしてアザミさんでもないとすれば……不用意に接していい類のものではないことは明白であった。
(出た……幽霊……!!いや、あるいは泥棒……!?)
などと考えていると、謎の人影は向きを変えて別館のほうへと移動していった。
遠くから物色するような物音などはしない。物取りではなったようだ。
だがそれでもなお、いや、だからこそ、俺は足の一本も動かすことができず、ただ立ち尽くすのみであった。 - 58二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:55:52
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ざぁざぁと降りしきる雨が朝日を遮る。この宿で迎える三度目の朝も相変わらず曇天なんてものじゃない天気模様である。
「……相変わらずですね」
「ですねぇ」
流石に三日連続の土砂降りには女将sゲフンゲフンアザミさんも想定外も良い所なものらしく、困った様子で笑みを浮かべていた。
「とはいえ、先程頂いた話ですとこの悪天候も今日までとのことで……それまでご不便おかけすること、大変心苦しくはあるのですが何卒もう一日……」
「いえ、自分らとしましても渡りに船というものです。明日まで有り難く泊まらせていただきます」
ありがたいことだ。既に規定の日数を大きく超過しているというのにこちらからお願いする前に提案していただけるアザミさんの懐の広さに感服し、礼で応じる。
「本当にここは娯楽の無い宿です。……いえ、たしか古い書庫がありましたね。もしかしたら退屈しのぎになるかもしれません、後で開放しておきましょう」
「!ありがとうございます!」
正直なことを言うと、列車内での暇つぶし用に持ってきていた本では限界が来ていたところだったのでこの提案はまさに渡りに船であった。
しかし古い書庫、か……古本とか沢山出て来そうでワクワクするというものだ。もしかしたら昨晩のアレの正体も……と、そこまで考えてそういえばと思い出す。
「あの、アザミさん……昨晩、なんか髪がぼさっとした女性をあっちの廊下で見たんですが誰でしょうか?」
「昨晩……?私ではありませんね、従業員もいませんし……もしや別館のアレが戻ってきた?」
……?最後の言葉は独り言だったのかうまく聞き取れなかったが、なにやら不穏なニュアンスが漂っていることだけは窺い知れる。ともかく、昨夜遭遇したモノはこの旅館に本来いるべき者ではなさそうだ。
「……あるいは、消灯後は不用意に部屋の外に出歩くのは控えたほうがよろしいかもしれませんね」
アザミさんが怖いことを言ってくる。どうしよう、すごく帰りたくなってきた。 - 59二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:56:54
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「夕飯はグラタンも行けるな……エビとホタテで海鮮風にするのも……女将さん、あぁいやアザミさんの伝手も凄いな、欲しい物なんでも揃うし……」
ぶつぶつと独り言ちながら廊下を歩いていると、ふと雨音が止んでいることに気付く。
まさか、そう思い視線を上げてみれば縁側に数日ぶりに陽光が差し込んで照らしているではないか。
いや待て、陽の中を誰かがいる。アザミさんだ。俺は思わず声を掛けた。
「……久しぶりのお日様ですね」
「おや……えぇ、そうですね。この後はまた降るそうですが……束の間とはいえ、晴れ間とはやはりいいものです」
陽に照らされ、露に照らされたアザミさんは、とてもとても美しかった。美しさと色気、そして安心感を感じさせる笑顔はとても同じ学生の身分であるとは思えず、まさしく大人、旅館の女将といった貫禄であった。
ここで会話を終わらせたくない。そう思い、必死に言葉を紡ぐ。
「あの……こんな何日も泊めていただいてありがとうございます。そちらにも都合があるでしょうに、自分らのわがままでこんな……」
「いえ、わがままなどではありません。ガイド役として、この自治区の自治委員会会長としてあなた様方を迎えたからにはどのような事態にも毅然に対応するのが私の責務というものです。……それに」
「それに?」
「……私個人としましても、あなた様方にはできるだけのことをしたいのです。ここにいらした際に説明したかと存じますが、この地は作物の生産・輸出が主な産業となっています。ですが一次産業故かあまり見向きもされず、知名度も低いのが現状です。工芸品の生産のほうも行っていますが、それでも尚です。ですので私は……嬉しかったのです。遠路はるばる、私たちの作った作物を求めて足を運んでいただける方がいらしたという事実が。私たちの努力が報われた、そう考えると嬉しくて嬉しくて……それで、出来る限りのことをしたいと思った次第です」
「……大好きなんですね、この場所が」
「ええ、とても。でなければ会長などやっていません」
あまりに直球に誠意と好意をぶつけられてしまったものだから、つい照れながら言葉を返せば、アザミさんは上品に、しかし満面の笑みでそう言い切ってくれた。
……ほんとうに、凄い人だ。
その後も晴れ間が雲に塞がれるまで話は続き、弾んだのだった。 - 60二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:57:55
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深夜。ふと目を覚ませば雨音はなく、窓の外から月光が差し込む。まるで昼間の陽光と対照的だな、などと考えながら部屋の戸に手を掛けて。
『……あるいは、消灯後は不用意に部屋の外に出歩くのは控えたほうがよろしいかもしれませんね』
アザミさんが今朝言っていたことを思い出して、思いとどまる。もし仮に昨夜のアレにまた遭遇したとて、今度も無事とは限らないのだ。今夜、この夜を乗りきればアレが何だったのかなど知る由もなくさよならできる。
俺は布団に戻ると、マルクトの腹に頭を乗せて再度夢の中へと意識を投げ込むのであった。 - 61二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 01:59:03
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月光を浴びて、その影は人の形を成す。
大きく後ろから編んで肩にかけた三つ編み。ややぼさっとした髪質。尖った耳。後頭部にはヘイロー。
「ご愁傷様」
この館に囚われた憐れな獲物たちに哀悼の意を籠めたその言葉を贈ると、黒く染まった制服を翻して闇の奥へと消えていく。
窓の外は、豪雨に覆われていた。 - 62二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:00:13
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「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」
「アザミさん……ええ、ぐっすりと。言いつけ通り廊下の外には出ませんでしたよ」
「?言いつけ……?」
四度目の朝。居間で出迎えてくれたアザミさんに朝の挨拶をしていたところ、怪訝そうな顔を向けられた。もしや昨日の今日で忘れてしまったのだろうか?
「ほら、アザミさん昨日言ったじゃないですか。消灯後は不用意に部屋の外に出歩くのは控えたほうがいいかもしれないって」
「? ?? そ、そうでしたでしょうか……?」
今ので思い出してもらえるかと思ったが、むしろ混乱を深めている様子だ。これは俺の方がなにかおかしいのだろうか……?とにかく、この微妙になった空気を変えるべく別の話題を切り出す。
「あ~~っとぉ……あ、雨ですね今日も……相変わらずだ。これ帰れるんでしょうか?」
「相変わらず……?ですが、昨日は快晴だったはず……?」
「えっ」
が、空気を変えるどころかさらに混沌としてくる。確かに昨日は晴れ間もあったはずだが、それでも快晴とはとてもじゃないが言えない天候だったと記憶している。
……おかしい。何かがおかしい。激しい違和感に襲われている俺を後目に、アザミさんは更なる爆弾発言を投下する。
「だって、昨日はあなた様方と一緒にこの自治区を見て周ったはずです。そうですよね?」
「…………」
自治区を、見て周った?馬鹿な、昨日までの三日間はずっと宿の中に籠っていたはずだ。それは初日の出来事で……待て。まさか。
「……アザミさん。今日って何日ですか」
「?えぇと、2日のはずですが……」
ぐにゃり。足元が覚束なくなる感覚を覚える。
___俺は、エビス自治区一度目の朝に戻っていたのだ。 - 63二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:01:14
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「どういうことだ……時間が巻き戻るなんてそんなことあっていいのか……!?」
「ですが現に巻き戻ってしまったのです。ならば今は建設的な話をしましょう。私もこの事件の究明をするには機材が足りていないのが現状ですし」
寝室に戻って二人作戦会議を執り行う。幸いなことにマルクトも俺と同様に雨天の三日間の記憶はあるようで、とりあえず俺の精神がおかしくなったという線は潰えた。本当によかった。
「だが建設的っていったって……建設的、かぁ……何しよう?」
「過去に戻ったというのであれば、また3日間もの時間が与えられたというもの。お料理などどうでしょうか。私はイカ飯なるものを所望します」
「ははっ、この食欲大福め……」
とことんブレないものだ、コイツは。抜群の安定感と言っていいもんで、そんなのだから俺の胸中に渦巻く不安もあっというまに鳴りを潜めてしまった。
「そうだな、せっかくの機会だ。前の三日間で作れなかった海鮮料理とかに手ぇ出してみっかぁ!」
「その調子です、か弱き子よ。あとシーフードピザも所望します」
「それここじゃないと駄目かなぁ!?D.U.でも頼んだら普通に届かないかなぁ!?」 - 64二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:02:16
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こうして二度目の一日目は食卓に並んだ料理の品目が変わった程度で終わった。
そして今は二日目の夜である。
……そう。前回はこのタイミングでアレが、あの謎の存在が現れたのだ。
「巻き戻しが怪現象なら、アレも怪現象……正直、無関係とは思えないのよな……」
そう独り言ちながら戸に手を掛ける。確か前回はこちらを気にも留めず、あるいはこちらの存在に気付きもせずに去っていった。ならば前回と同じ行動を心がければ今回だって……。
覚悟を決め、戸口を開けて廊下の奥を確認する。
「いたっ……!」
間違いない。あのぼさっとした髪型は前回見たものと同じだ。アレは豪雨ばかりを映す窓を眺めているようで……今、向きを変えた。そのまま別館へと歩んでいく。
追いかけるべきか。いや、それはリスクが大きすぎる。もしこのまま明後日帰れるならそれまでの付き合いだ、今ここで深追いする必要性は薄い。
俺は部屋へと戻ると、マルクトの胸の中に飛び込むのであった。 - 65二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:03:26
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三日目。前回と同様に書庫が開放されたのでそこでアレの正体を探ってみることとした。の、だが……。
「……それっぽい逸話が多すぎる!!」
出てくる出てくる、幽霊や妖怪、心霊に怪談話の数々よ。これ程の量の中から特定の話に絞り込むことなどできるはずがなく、半ば迷宮入り状態であった。
「やっぱ一人じゃ限界があるか……今度はマルクトを連れて、っと……?」
頭を抱えながら部屋の中を見まわしていたところ、一冊の本が目に留まる。
「……コイツ、料理本だ。随分と古いが……だからこそか、知らないレシピとかも載ってやがる。コイツは……!」
それは俺にとってのお宝本だった。百鬼夜行の伝統料理だろうか、年期を重ねたのであろう紙に印刷されたそれは百鬼に直接出向くことを忌避していた俺ではなかなか手に入れられない情報ばかりであった。
「味噌をこのタイミングで……みりんと米のバランスが……ここ、あれで代用できるな……」
すっかり本来の目的を忘れて本に齧りつく。それから夕食まではあっという間であった。 - 66二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:04:50
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夜が来た。相変わらず月明かりの差し込む部屋の中で思索に耽る。
「……前回は三日目の夜から今回の一日目の朝になった。過去に戻ったのは多分このタイミングだ。たった一回だけ起こった奇跡だったならいいが……」
ちらりと窓の外に目を向ける。月明かりが変わらず俺を照らしてくれる。
「……まぁ、こればっかりは変に気をもんでてもしかたないか。明日どうなってるかは明日の俺に任せるさ」
そう言ってマルクトの腹の上に頭を乗せ、目を閉じた。そしてあっという間に眠りに落ちてしまった。
窓の外が晴れ間から一転して豪雨のカーテンに覆われていることなど、気付く間もないほど。 - 67二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:05:51
___
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「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」
既視感。居間で迎えてくれるシチュエーションも、今の挨拶も、その佇まいも、何もかもが既視感の塊である。
「……おはようございます。今日って何日ですか?」
「二日のはずです」
「……ん、ありがとうございます」
はい確定。またしても一日目の朝に時間が巻き戻っている。
___何故!?巻き戻っている!?一度ならず二度までも!!?
たった一度巻き戻っただけならそういう事象もあるのかもしれないとなんとか自分自身を誤魔化してきたが、流石に二度目ともなれば誤魔化しが利かなくなってくるというものだ。一気に見て見ぬふりをしてきた不安が胸の内から溢れ出してくる。
___二度あることは三度あるっていうしまた戻るのでは?そも俺はここから抜け出せるのか?永遠にループ構造の中を彷徨う存在にでもなったんじゃないか?
不安、疑問、懸念。それらが胸中で錯綜する中、改めてアザミさんのほうを見て___気付く。
「(……ン?アザミさん……えらくふっくらしてきていないか???)」
着物で誤魔化されてはいるものの、明らかに横幅が広くなっているように見えるのだ。
否、『ように』などではない。そう考えたうえで改めてよくよく見てみると、胸や臀部も明らかに大きくなったように感じ……感じじゃないな、うん。少なくとも俺たちが初めて会ったときのアザミさんは帯の上に肉が乗ってたりしなかったし手首に付けた数珠が若干食い込んでたりなんかしていなかった。
うむ、ここに断言しよう。
「(……いや、太ってるな。明らかに太ってる)」 - 68二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:06:53
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「つまり時間が巻き戻ってもあの案内役に蓄積したカロリーは巻き戻らない、と……」
「ああ、そういうことだ」
恐らくこの先も恒例になるのであろう俺とマルクトの二名による作戦会議タイム。そこで俺は自分の得た見識とそこから導き出される希望的観測をマルクトに報告することとしたのだ。
「そして、この事実はこの繰り返される三日間が完全なループ構造でないことを示唆している……と、俺は考えている。あるいは人体の状態が次の周に持ち越されるのであれば……もし仮に本当に終わらないループに巻き込まれていたのだとしても、やりようは生まれてくるってもんだ」
「そうですね。もし本当に永遠に繰り返されるというのであれば、それは私たちに無限の準備時間を与えたも同然です。そして同様に取っ掛かりも。そんなものがあっては、あなたの料理と私の技術をもって不可能はないでしょう」
そう自信満々に言ってのけるマルクト。いや待ってくれ、料理でどうしろというんだ。
……だが、なぜだろうか。彼女のその自信に満ちた様相を見ていると俺のその料理とやらでもなんとでもできてしまいそうな気がしてくるものだ。
「……そうだな。こっからどれだけの長期戦になるかもわからないんだ、気楽に、楽しく、じっくりと攻略していこうじゃないか」
「おー」
突破口に通じるかはまだわからないが、手掛かりは見えた。ならあとは進むだけだ。 - 69二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:08:06
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仕込みは無事機能した。
この空間は外界から隔離され、既に二度、三日前の始点を完全に『再現』している。
計は___成った。
「さぁ、憐れな哀れな迷い子たちよ。お前たちはいったい何巡目で狂い果てるでしょうかね?」
誰もいない部屋にひとり、彼女はその口元をいびつに吊りあげる。髪は妖しくたなびき、やがて蛇の形をとってうねる。繰り返されるこの空間の中心、その主たる怪物は___土生アザミは、心底愉しげに笑みを浮かべる。
人は変化を嫌う生き物であると同時に、変化を必要とする生き物である。何の変化もない日々、一切が複製されたように進行する日常に放り込まれれば、常人であればやがて気が狂うものであろう。それは堕落によってか、はたまや恐怖によってか、あるいは別の何かか。そうして気がふれ、弱った人間などいくらでも付け入る隙はある。思考なり精神なりをいじくりまわせば、先生や連邦生徒会に対するワイルドカードの出来上がりだ。
彼女は、勝利を確信していた。そしてその先に待つ自身の栄光すらも。
「ずいぶんと調子良さそうだね。うまくいってるようで何よりだよ」
と、そこに人影が現れる。本来この場にいないはずの、否、来客者に秘匿されていた4人目の人影が。その名は。
「……七稜アヤメ。ええ、それはもう順調そのもので。あなたの手も借りた甲斐があったというものです」
「それは僥倖だけどさ、そんなわざわざ勿体ぶってフルネームで呼ぶ必要ある?」
「雰囲気ですよ。ことさら怪芸において最重要要素ともいえましょう?」
七稜アヤメ。本来は治安維持側のトップとなるはずの人間だが、様々な所以や経緯を経て今はアザミら花鳥風月部と行動を共にしている生徒である。彼女がこの空間にいる理由はひとえにアザミの計略の補佐である。 - 70二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:09:10
「……とはいえ、こと雰囲気を重視するならば裏方の黒子がこうも早くに人目に触れるのはあまりよろしくありません。即興で脚本を組み直すのも楽ではないのですよ?」
「それは……まさかあんな深夜にバッティングするとは思わないじゃん。真夜中にお手洗いに起きるタイプだなんて聞いてないよ?私」
じろり、と軽く睨むアザミ。要は、『一周目から何アイツに見つかってんだオメー。即興でそれらしいこと言ったけども苦労したぞコノヤロウ』と言いたいのであるが、それを分かっていてアヤメも愚痴めいた弁明を零す。彼女が二日目の夜にあの場に居たのは、この空間を維持するための雑用であったのだが……そこに彼が音も無くやってきたのは完全に不運であった。
「……はぁ。まぁいいでしょう。調査不足と責められればそれもまた事実だし、何より挽回は既に済ませている。この話題はここまでとしましょう。では引き続きよろしくお願いいたしますね」
「……はいよ」
良い感じに使いっパシられている。何となくそんな気に自身の機嫌が曲がるのを感じつつ、さりとてもう話題もなさそうだから部屋の出口へと歩みを向けるアヤメ。と、その途中で卓上に置かれた物体が目についた。
「?」
「あぁ、それは今朝彼が作り置きしておいてくれた大学イモですよ。冷えても美味しいよう工夫を凝らしただとか」
「……そう」
こっちは裏方仕事で面倒事だってのにコイツだけ何楽しんでやがるんだか。なんとなくイラついたアヤメであったが、それを表に出すことはせず、ひとかけらつまむと口の中へと放り込んで歩を進めた。
「………………うっま」 - 71二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:10:15
___
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6周、17日目。
その日の俺は書庫で古い文献を漁り、今の状況を理解するための手がかりを探していた。そのうえで分かったことだが、どうやらここ百鬼夜行には古くから人ならざる存在、怪異が姿を現しているらしい。こういうのは外の常識に照らし合わせるならば何かしらの自然現象、または因果関係に起因する事象を昔の人が超常の力と勘違いしたものであると考えて然るべき……なのだが、あいにくとここはキヴォトス。何がいてもおかしくはない土地だ。
と、いうことで時間に関係する怪異の資料と共に俺の知見をマルクトと共有する。すると、マルクトはマルクトで何か新たな啓示でも得たのか宿周りでかき集めたスクラップを部屋に並べて整えリストで整頓するや、凄まじい勢いで設計図を書き起こしはじめたではないか。
とても集中している様子だが、度々「突破口が___」「術式の解明を___」と呟きながら図面を引き続ける彼女は、表情こそ変化に乏しいが雰囲気からしてとても楽しそうであった。
が、しかし。こうなってしまうと俺にできることなどありゃしない。そうしてマルクトの楽しそうな姿を眺めているうちにすっかり日を跨いだ時間になってしまったので、自分は自分でお手洗いを済ませたら早々に寝てしまおうと廊下に出て。
___暗闇の中に、闇に溶け入りそうなほどに黒い羽織を見に纏った人影を見つける。
(___っ!!そうだ、幽霊!!)
この時間帯は外に出るのを控えるようにしていたものだからすっかり忘れていた。そう、アザミさんが忠告してくれた、あの謎の存在。
安全面で考えるならば今すぐにでも部屋に戻って見て見ぬふりをするのが一番なのだろう。しかし、以前も考えたことだがこのループが怪現象ならば彼女も怪現象。そこに何らかの繋がりを見出だすことはなんら不自然でもない。あるいは、彼女こそがこのループの鍵となっている可能性すらある。
ならばここは接触すべきだろう。……が、相手の正体がわからない以上、下手な行動も慎むべきだろう。声を掛けた瞬間頭から丸かじりなんてされたら目も当てられない。
ではどうすべきか。あれこれ悩んだ末、俺は部屋にあるものを持ち出すのだった。
. - 72二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:11:32
この結界を維持するにはこのタイミング、この場所で怪書の文言を手入れする必要がある。定期メンテナンスというやつだ。そのために、そのためだけにこの七稜アヤメはお呼ばれされてもう十数日間この空間にいる。
普段は例のターゲットと遭遇しないよう廃屋のほうで隠れ潜み、この日この時だけこちらの母屋に出向く。そう、そんな日をもう十数日もだ。幸いにも私は我慢ができるほうの性質だったから耐えられているが、並大抵の人間ならばもう音を上げている頃合いだろう。
こんな退屈な仕事になるなら本でもなんでも持ってくるべきだったな、だなんて他愛のないことを考えながら今周も指定の時間に指定の場所で作業をし。
なんか、いい香りがする。
誰だこんな時間に夜食なんか作ってるのは……!そう思いながら匂いの元に顔を向ければ。
そこにはなんと例のターゲットとなる青年がいるではありませんか。それも手にタッパー詰めの焼そばを抱えてあまつさえこちらへと扇ぎながら。
何してるんだコイツは___
え、何?何してんのキミ?差し入れ?それとも煽ってるの?えぇ~わからない……まぁきっと世の中には残念な思考の人もいるってことなんだろうなぁ……。
ともかく。これ以上ここにいると変に絡まれかねないからさっさと引き返そうと廊下の外へと踵を返し。
ぐぅうぅぅ~~~~~……
タイミングってもんを選べよ私の腹……!!なんでこう、なんだってこう……!これじゃあまるで美味しい匂いに釣られてみっともなくお腹を鳴らした間抜けみたいで……!
大正解だよチクショウ!あぁもうっこれが焼きそばの香りだっての!?さっきから胃袋が空腹を訴えかけてきてしつこいったらありゃしない!ほら見たことか、足を止めたせいでヤツが何か得心いったような顔してるし……というか「食うか?」って顔してるし!
「…………いただくよ」
もうここまでだらしない有様を見られては不気味な心霊現象という役柄をこなすのももう無理な話、ならばせめて差し出されたぶんだけでも頂いていこう。
私は彼の手から温もりの残るタッパーを受け取ると、そそくさと廃屋のほうへと退散するのだった。
焼きそばは驚くほど旨かった。どうしよう、次周もたかりにいこうかな……。 - 73二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:12:34
___
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この宿を訪れて8周、22日が経過した。マルクトは何やら設計段階を終えたようで、いよいよもって組み立て作業に入っているようだ。果たしてそこらへんに転がってた廃材から装置なんて作れるのかと思ってたが、昨夜頃に覗いてみたらなんかいろいろとマシンを部屋の中で作り上げてたから案外なんとかなりそうである。
そして俺のほうはというと、料理のほうに精進していた。これは別に脱出をサボっていた訳ではなく、周回を繰り返す中で人体の状態がどのように変化するのかの調査・分析を目的としたものであった。対象はもちろんアザミさん、結果は___
「最近、どうにも服がキツいような気がしていましてね……」
「えぇっ?見た感じ今のままでも充分細いような気がしますが……さすがはアザミさんだ、ストイックなんですね」
___気持ち、あれから更に太ったような気がする。
いや、時間が巻き戻るせいで記録に残せない都合上、元の体型と見比べられないから断言はできないのだが……いややっぱ太ってるってこれ。
数珠はみっちりと手首の肉に食い込んでるし……いや違う、よく見たら初日のと別物だコレ!?帯もずいぶんと緩んだものだ、それでも尚足りないとばかりに肉が上下から溢れ出ているから随分と成長したことが窺える。胸元もそれを収める双丘が立派な巨峰と化したせいでもうすっかりはだけ、襟がだいぶと下に下がってきてしまっている。二の腕や脚は着物に隠れて見えないが、その下は恐らくしっかりと太ましくなっているはず。そしてそんな全身むっちむちボディな彼女のその顔付きは、ちゃんと頬や顎にも肉が付いてふっくら柔らかい系に路線変更した模様。 - 74二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:13:42
総評:気持ちどころかがっつり太ってた。
「ふふ、これを細いだなんて……そんなことを言っては、このキヴォトスに住まう人々のほとんどが肥満体型になってしまいますよ?」
「あー……うん……そう、ですね。でもちゃんと細いと……はい、細いと思います……よ……?」
まずい。改めて彼女の現状を再確認してみると、『細い』などあまりに欺瞞に満ちた評価であると気付いてしまう。言ってしまった手前、取り消すのも忍びないしこのまま突き通すが……うむむ、アザミさんの言うとおり、普段から巨デブに慣れ過ぎて気付くのに遅れたのだろうか。
……これ以上余計なことを考えてると変な事を口走りそうだ。ちゃんと肉体がループの影響を受けないことを確認できたし、後はアザミさんと話したいことお話しよう。
「そういえばアザミさんって演技とか得意なんでしたよね?」
「おや、覚えていてくださりましたか。どうでしょう、気になったのであれば一つお見せすることもできますが」
「!でしたら、是非____」 - 75二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:15:45
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白蛇を指で弄りまわしながら思索に耽る。
奴らをこの空間に閉じ込めてから結構時間が経ったと思うのだが、連中に気がふれる兆候は見られない。なるほど、精神力は強いようだ……が、こちらには無限ともいえる時間がある。それらを豊富に使って、焦らず騒がず、毒が回るのを待つかのようにじっくりと待てばいい。そう、彼等の心が壊れるそのとき、ま、で……?
「……?」
その時だった。ふと、彼等の精神を壊すという最終目標を心中に復唱しようとしたその時、胸中に妙な疼きを覚えたのだ。
何故?なんだこれは?嫌な予感……いや、それとも微妙に違う。なにかそわそわして、「このままでいいのか?」と何かが私に語り掛けてくるようだ。
「何を……私は迷っている?何故……?だって私の目的は始めから一貫して___」
迷い。そう仮定したその感情は、しかし因果関係がわからずただ困惑する。
どうして私は迷っている?彼らを、彼を陥れることの何が問題だというのだ?毎日美味しく温かい料理を振る舞ってくれる彼を、毎周あの廊下で雨の切れ目を隣に座って眺める彼を、私の怪芸に驚き慄き風情を分かち合ってくれる彼を。
それを、陥れて、壊して、人形にすること、の……何が……
「__嫌だ。」
ぽつりと、しかし驚くほどに自然と言葉が漏れた。
あぁ、そうか。私はこの延々と繰り返される日々を、日常を、楽しんでいたんだ。
「終わらせたくない。壊したくない。私はまだ……共に居たい」
一度枷が外れてしまえば、溢れんばかりに本音が流れ出る。どうしようか、私はいつのまにやらこれ程にまでこの日々を愛おしんでいたようだ。
明確に自覚したからだろうか。先程まで胸中に疼き程度で済んでいた違和感は明確な痛みとなって私の心に突き刺さり圧し潰そうとしていた。
「そう、そうだろうとも。時間ならある。それこそ無制限に。ずっと……ずっと一緒にいよう。そうしよう」 - 76二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:16:47
かけがえのない、しかしいつまでも続く日常。永遠のモラトリアム。いいじゃないか、夢のようだ。私にはそれを得る権利がある。いち自治区を一人で切り盛りしていたのだから、その権利があって然るべきだ。
彼等の心だって私が適時ケアしていけばいい。大丈夫、私ならできる。
……こんな理屈、通用しないことはわかっていた。この領域の性質を考えれば、前述の発想には欠陥がある。永遠の日常などこのまま惰性に身を任せても手に入るはずがない。
でも、いいじゃないか。今、私が望んでいるのだから。 - 77二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:17:48
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彼から施しを受けてはや三日。時間は過去に戻り、私もまたこの領域を構成する文言の手入れに赴く。
何も変わらない。いつもどおり。
……わたしはこんなにお腹をすかせていただろうか?
いつもの場所で作業を終える。期待を持って彼等の宿泊する部屋の前を覗く。
果たして、彼は待っていてくれた。扉の前で弁当箱を持った人物は私の存在に気付くと嬉しそうに弁当箱を掲げて手招きしてくる。
あぁもう、何さそれ。まるで餌付けじゃん。私、百花繚乱の部長だよ?そんなみっともない真似する訳ないじゃん。
あ、でももう百花繚乱は黙って抜け出してきたんだった。じゃあいいや、多少みっともなくたって。
招かれるがままに部屋へと足を踏み入り、明りの下で彩り豊かなお弁当を頬張る。うん、美味しい。
自分が小食なことも忘れて、随分と食べてしまった。ははっ、こりゃ胃腸薬なり何なり必要かな。でも……うん、悪くない。
明日も来よう。そうしよう。 - 78二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:19:57
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「つまり……この空間での一日は外での1時間、ってこと……?」
10周目、累計29日目。
マルクトが遂に突破口となる装置を完成させ、現在試運転中である。の、だが、さっそく驚くべき情報が入手できたわけだ。
その装置というのが一見すると様々な計器のついた白いタイプライターといった風体なのだが、その計器のうちに取り付けられた周囲の時刻とこの雨雲の向こうのキヴォトス標準時刻をそれぞれ指し示す針の進む速度にズレがあるのだ。それらズレから概算した結果、導き出せた答え。それこそが前述のものである。
「ええ、そう見て間違いないでしょう。この一帯には何か物理法則すら捻じ曲げる超常的な力が働いている……以前あなたがもたらした『常識外の存在を示唆する情報』が無ければ調査はもっと難航していたでしょう。感謝します」
「よかった、俺も脱出に一枚噛めたみたいで嬉しいよ」
「えぇえぇ、お手柄です。いい子いい子してあげるのでこちらに___いえ、すみません。分析の結果が出たようです」
タイプライターがひとりでに駆動音を奏で、文字の打たれた紙を吐き出し始める。もうそれはファックスで良くないか?と思ったが、マルクト曰く「入力できることに意義があるのです」との事。きっとまだ隠された機能があるのだろう、なんだか楽しみである。
「……で、その紙には何と記載が?」
「この空間を仕切る超常的な法則。それを図式化、さらに翻訳したものです。つまり……はい、ここの行で時間の制御を行っていますしこの箇所で空間の範囲指定、そこの行で___」
「えっ、全部丸わかりじゃん」
「そうとも、全部丸わかりです。えっへん」
べーーーー、っと排出された紙には何やら筆記体の漢字めいた文字とその下に細かくプログラム言語のような文字列が続いている。恐らく前者がオリジナルに近く、それをマルクト流に意訳したのが後者といったところか。俺にはどちらもちんぷんかんぷんだが、マルクトには全てが読み取れる模様で。謎解きゲームでソースコードから正当を導き出すかのようなものだが、そのお手並みにただただ感心するばかりであった。 - 79二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:21:02
「え、じゃあもう脱出とかってできるのか……?」
「そこでタイプライター型にしたのが生きてくるというものです。見ていてください」
俺の質問にマルクトはタイプライターを向き合い、そしてキーボードを軽快に叩いていく。タンタンタンタンと小気味良く駆動音が弾み、紙にマルクト流ソースコードとそれを自動で翻訳されたオリジナル漢字記号が記されていく。そして。
「これで……はい、あなたの右手をご注目」
「右……うわっなんだ空中からじゃがいもが降って湧いた!?」
言われるがままに自身の右手の方を見た、その時。上に向けた手のひら、その上に突如としてじゃがいもが出現し、そのまま重力のままに手の中に飛び込んできたではありませんか。
「こ、これは……!?」
「私がこの装置を用いて空間に張られた法則、それを指示するソースコードを書き換え、指定座標にそのイモを出現させました。いまや私たちはこの超常的な法則が持ち得るリソースの限りこの空間を好きに弄りまわせる、全能の神となった訳です」
「それ、ってことは……!」
「ええ、いつでも脱出可能ということですね」
「でかした!!やったぞ!!いよっ天才!!」
自慢げと達成感の入り混じった笑みを浮かべるマルクト。その姿がとてもとても心強くて、とりあえず今夜は精一杯豪勢な晩飯にさせていただこうと心に決める。
しかしやろうと思えば本当に自分らの手で脱出にまで漕ぎ着けられるのだから驚いたものだ。途中、この部屋に居座ったあの幽霊___アヤメから「私ならキミたちを外の世界へ開放させることもできるかもよ?」なんて言われたときに「いやここまで来たら自分たちだけでやりきりたいっす」って返しちゃったときは後からちょっと後悔したりもしたけれど、ゴールまで辿り着けた今となってはその選択も間違えてなかったと思えそうだ。 - 80二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:22:03
「さぁてそうと決まれば今すぐにでも___」
「お待ちください、か弱き子よ」
ということでさっそく脱出すべくタイプライターに向かおうとしたところ、マルクトにがっしと肩を掴まれてしまった。いや重ぇや。何事か、不用意に触れたら爆発するとかそういうのかな?
「……せっかくの機会です。もう数日ばかり滞在していきませんか?どうせ外では大した時間は流れていないようですし、もう少々いたところで致命的な悪影響は出ないでしょう」
「……そっか?」
う~ん、滞在。思い返してみれば、出口がわからなかったから必死に脱出しようと足掻いていた訳だったが、いざこうして出口が見つかって尚且つ時間に余裕があると考えるともう少しここにいるのも悪くない気がしてきた。生活するうえで大した不便は被っていないし、布団は柔らかいし、食材は良質だし、調理道具も揃っているし。
「そう、か。うん、そうだな、それがいい。俺もちょっと長めに休みを取ってたからな、もうちょっと楽しむか!」
「さすが、話の分かる子です」
わぁい、と言わんばかりに両手を挙げて喜ぶマルクト。
俺たちの長期休みはこれからである。 - 81二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:23:06
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11周目、累計31日目。アヤメの食が太くなってきているような気がする。ちょっと量を増やしておこう。
13周目、累計37日目。アザミさんが俺の膝を枕にして寝ている。髪の中に蛇がいたような気がしたが、寝ぼけているのだろう。
14周目、累計40日目。季節外れのクリスマスターキー風チキンを作ってみた。鶏まるまる一羽は流石にデカいな……。
16周目、累計48日目。アヤメがとうとう食卓に参加するようになった。アザミさんが死ぬほどビビってたのが印象的だった。
19周目、累計58日目。アザミさんもだが、アヤメもむっちりを超えてぽっちゃりしてきている。沢山食べられるようになったのは何よりだが、これじゃ不健康なんじゃないか……?いや、食べられるに越したことはないか……。
22周目、累計65日目。アザミさんの距離が近い。でっぷり太ったからだろうか、俺と話してると事あるごとに胸や腹が当たって股間に悪い。にしたって距離が近いような気がする。気のせいか?
23周目、累計67日目。食直後にアザミさんに用があったから伺ったら自慰行為の真っ最中だった。慌てて踵を返そうとしたらまさかまさかの「手伝ってほしい」と頼まれてしまった。
頑張った。
24周目、累計73日目。
28周目、累計85日目。
30周目、累計93日目。
………………
…………
…… - 82二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:24:31
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___滞在しすぎた。
34周目、累計101日目の朝食を食べながら考えることはそんなことだった。
そう、101日目だ。外ではもう101時間、つまり4日と5時間が経過している。
マズイ、マズイぞ。これはマズイ。計算が正しければ外においてはとうに俺の休日など消え失せて始業時間は4時間後に迫っている。帰りの便のことも考えると今すぐにでも脱出すべき時間だ。なんならもう若干手遅れまである。
「マルクト、そっちの荷物は?」
「全てまとめ終えました。こちらの装置についてもいつでも撤収可能です」
「僥倖だ。それじゃ女将さんには悪いがさっさとずらからせて貰おう」
荷物をまとめ、部屋を片付ける。アザミさんを置いていくという判断は酷なものに見えるだろうが、しかし俺たち二人のほかにアヤメも周回ごとに記憶を保持しているとなると、むしろただ一人だけ記憶がリセットされているアザミさんが怪しく見えてしまうのだ。結局、彼女が白か黒かをはっきりとさせることはできなかったが……いや、まだ一つだけ残っている。アザミさんがどちら側の人間かをはっきりとさせるチャンスが、まだ一つだけ。
内心で白であってくれと願いつつ準備を進め、いよいよタイプライターを起動するのみになったその時、廊下のほうからドスドスと足音が近づいてくる。アヤメか……いや、違う。
「……!はぁ、はぁ……何を、しているのですか……?」
「……アザミさん」
___確定。彼女は『黒』だ。俺のすぐ横で白大福が圧迫的な威圧感を放つ。
「何故、ここに?」
「何故って……たまたま通りがかったら何やら音がしたので……」
「音、ね……防音は完璧だったと自負しているところなのですが?」
「っ!で、ですが……」
「それともうひとつ。たまたま、だなんて言いましたがアザミさん、あなたこれまでの何十周の中でこの時間帯にここに立ち寄ったことなんて一度もありませんでしたよね?」
「っ!!」
「今。周回のことを示唆したときに困惑よりも先に驚愕が、図星が来た。___気付いてるな?この事態に」
確定だ。アザミさんは俺たちを何らかの手段で監視しており、それどころかこのループを認知している。『黒』で間違いない。 - 83二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:25:32
俺の推理を聞き受けたアザミさんは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、天を仰いで頭を抱えると、次いで観念したように項垂れて。
「……ふっ。ふふふふふ……このままここで一生を終えるならば手荒な真似をする気もなかったのですが、逃げようというのであれば話は別です……!」
垂れた前髪の奥から笑みを漏らす。マルクトに並び立ちそうなほどに立派に肥えた肉体を揺すりながら笑い声を漏らすその様には、いつもの女将さん然とした雰囲気は欠片も無い。
これが彼女の本性なのか。そう思った矢先、彼女のその長い髪の中からいくつもの影が伸び、俺たちのほうへと飛来する。えっちょっ速___!?
「子よ!!」
瞬間。横っ面に脂肪が叩きつけられたかと思えば俺は横方向に吹っ飛んでいた。いや、これは……!
「!マルクト!」
「か弱き子よ……無事ですか……!」
マルクトに突き飛ばされたのであろう。さっきまで自分の立っていた場所に目を向ければ、マルクトが手足を白い縄で縛られていたのが見えた。
いや、縄じゃない。光沢を持った白いウロコ、蛇だ。……蛇、か?え、蛇ってこんなに太い生物だっけ?あっツチノコ!ツチノコか!アザミさん髪の中に白いツチノコ飼ってやがったんだ!!器用!!
「っ!やめてくれアザミさん!何が目的でこんな!」
「目的?目的ならば……そう、あなたがたこそがそうですとも。シャーレの先生、その血縁者。これを手中に収めたとき、連邦生徒会はいったいどう動けましょう?不安要素は取り除き、その後はゆっくりと、丁寧に、この百鬼夜行という学園を恐怖と風流で喰らい尽くす……そのための仕込み、そのための仕掛け。延々と巡る三日間……全ては、あなたを我が傀儡とするため!」
「あ、アザミさん……!」 - 84二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:26:32
なんてこった。あるいは協力者の一人か何かと思っていたが、まさかまさかの黒幕と来たものだ。ある程度は覚悟しているつもりであったがこの三か月間の思い出が全てまやかしの演技であったかと思うとさすがに堪えるものがある。
「あぁその顔が見たかった!恐怖と絶望にうちひしがれるその顔が見たかった!ずっと!そのためのこの日々!百にものぼる代り映えのせぬ日々!!」
おおげさにこちらに手を伸ばし、演出するアザミさん。その声にも熱が籠っている、が、それと同時にこう……自棄になっているようにも感じられた。
「っ子よ!装置を!!」
「アヤメ!!」
「っとゴメンよ!」
マルクトの声にタイプライターのほうへと駆け寄ろうとしたその時、その背中にズンと重しが圧し掛かる。この肉厚感……!
「アヤメ……やっぱグルだったか……!」
「そういうこと。飯の恩を仇で返すようなことになって不本意だけども、これも仕事だからね……!」
そう言ってよく育った巨腹を押し付け、床に縫い付ける。さっき大皿でポテトサラダを平らげたのもあって胃の中がぱんっぱんに詰まっているのだろう、脂肪の奥にずっしりと固く重い感触が圧し掛かる。
「しかしまだ恐怖が浅い。これでは傀儡にするにはまだ足りぬ。更なる恐怖……さて、これはいかがか?」
そう言うと、マルクトを縛り上げるツチノコが突如として彼女の白い四肢に牙を立てる。そんなツチノコらの根本がぶくんと膨らむと、まるでポンプの如くその膨らみは牙で咥え込んだマルクトのほうへと流れていく。そして。 - 85二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:27:44
「___っ!!?」
「マっ……!?」
マルクトの体内に到達したその時、彼女の身体がぶくんと大きく膨れ上がった。
「あなたの美味なる料理が私に新たなる力を授けたのです。さぁ、もっともっと堪能してくださいまし?」
「ふ、うっ、ぅあっ……!!」
むく、ぶく、みちみち。無数のツチノコから一様に何かを___おそらく脂肪そのものであろう液体状のものを注入され、みるみるうちに胴体を中心としてそれに付随する手足や胸元、頬までも風船じみて膨らんでいくマルクト。そのたびに苦し気な声をあげている様から、決して楽なものではないことは容易に想像がついた。
「___さて。このまま破裂させてしまうのも悪くはありませんが」
マルクトの腹の直径が彼女の身長と同じほどになったタイミングで、ふと注入が止まる。
破裂、という単語に身体が強張るのが感じられた。
「ひとつ、ここで取引をしましょう。このまま私と共に花鳥風月部……私の属する部活へと赴き、あなたの身体と身分を差し出す。私とて面倒事は避けたいですからね、そうすればわざわざ彼女を弾け飛ばさせることなく開放してあげることを約束しましょう」
「!」
「ひゅー、ひゅー……!だ、駄目、で、す……逃、げ「誰が発言を許可しました?」ぅっ、ぐぅぅぅぅぅう!!」
割って入ったマルクトに容赦なくツチノコが何かを注入すれば、激しい軋み音を発しながらさらに一回り大きく膨らむ。その様子から、最早猶予など僅かであることが読み取れた。
……俺は、どうすれば。そもこの状態からアザミさんの提案に乗ったとて、マルクトが無事で済むのか?もう手遅れじゃないか?だからと言ってマルクトの言う通り逃げようっていったって、背中にアヤメが乗っかったこの状態でどうやって?
俺は……これは……チェックメイト、では? - 86二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:29:09
全身を無力感が襲い掛かったその時だった。
「……行きな」
「えっ___」
ふと、背中の圧迫感が軽くなる。まだ肉が乗った感触はあるが、抜け出せないというほどでもない。どういうことかとアヤメのほうを振り返る。
「こんな茶番、誰も望んでないでしょ。キミも私も、あのアザミも。さっさと行きな」
「っ!お、応!」
声の意図するままに肉の布団を抜けだし、向かうはタイプライター。
「!?あ、アヤメ!?何を!?」
「あー、ゴメンゴメン。底力ってヤツかな?案外強くってさ」
「何を……早く追いなさい!」
「わー身体が重くて動けないやー」
「ふざけ……お前も膨らみたいのか!!?」
「えっ、ちょっ……むぷっ!?」
後ろのほうで喧噪が聞こえてくる。ちょっと振り返れば、ツチノコのうちの一匹がアヤメの尻にかみつき、彼女を膨らませていた。南無三……!
「えぇと、装置のほうは……!」
「右、手……!っひゅー、ひゅー、カウンター、プログラムが……!」
「何を……やめなさい!本当に破裂させますよ!!?」
「右……コイツか!」
吐息紛れの指示にコードの書かれたメモ用紙を発見し、急いでタイプライターで入力する。すぐ後ろからは「うぅぅぅぅぅぐぅぅぅぅぅぅ……!」という呻き声と破裂する直前の風船みたいな音が聞こえ始めてきており、最早猶予は無かった。
「頼む、行けっ!!」
最後の行を書き上げ、ジャっと行を区切る。コードが正しければこれで空間を仕切る法則を乗っ取れるはず___ - 87二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:30:53
「っぶ、うぅぶ!!?」
果たして、効果はあった。
呻き声の中にアザミさんのものが混じり、その声に振り向けば彼女の身体もまた他二人と同様に膨らみ始めていたのだ。
「マルクト……これは?」
「ふぅ、ふぅ……彼女の体型が私の体型と完全に連動、トレースするようにしました。本来は拘束用だったのですが……今の行動が完全に裏目にでた形となりましたね」
「なるほど……あれ、マルクトお前、大丈夫なのか?」
「私の機体には元より胃袋を拡張させる機能があります。それをぶっつけ本番で全身に適応させたのですが……うまくいったようです。これでかなり猶予が生まれました」
目の前でぷくーーーっと膨らみ、身動きが取れないといった様子のアザミさん。一方でマルクトのほうはぱっつぱつに張り詰めていた肌が柔らかさを取り戻し、しかしてアザミさんは体型こそ同期すれど耐性は据え置きなためいつ何時破裂するかもわからぬ状況となり、今やどちらが優勢であるかなど一目瞭然であった。
「さぁ、投降しなさい。土生アザミ。先程あなたが私を殺すのを躊躇ったように、私もあなたを殺すのは不本意です」
どすん、どすん。と音を立てて風船アザミさんへと歩みを進めるマルクト。最早勝負は決した。そう俺も思い込んでいた。
「……ふ、ざけ、るなぁ……!!」
「っ!?何を、うぐっ!?」
あろうことかツチノコポンプが再起動し、マルクトにさらなる膨張をもたらし始めたのだ。アザミさん、破裂する気か……!?
が、違う。彼女もまた張り詰め、血管が浮き出始めていた皮膚がゆとりを取り戻していた。これは……!
「ふぅ、ふぅ……!怪書の力、舐めるなぁ……!!」
「往生際の……!!」
「怪談とはそういうものでしょう!決して逃がさず、絡みついて離れることはない……!逃がさない、私の庭から逃がしてなるものかぁっ!!」
「望む……ところです……!!」 - 88二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:32:36
そして膨らむ白と肌色の二大風船。マルクトの白く餅のような肌が真に餅であるかのように伸び膨らみ、アザミさんの衣服が内圧によってはだけて肌色が晒される。やや釣り上がり鋭さを覚えさせる目元は下から頬が膨れて持ち上がることによって滑稽なまでに細く潰され、その下の顎は首元と一体化してなお膨れ上がる。互いに互いの腹と胸が膨らみ押し当てられ、変形しつつもなお膨張する。乳首はずっとキスをしたままだ。
なんとも滑稽極まる光景だが、しかしその実態は生存を賭けたデスマッチだ。マルクトが先に弾けるか、アザミさんが先に弾けるか。俺としてはどちらにも死んでほしくなどないから先程からタイプライターを弄ってなんとかゲームセットを回避できないか試みているのだが……なんだ?背中を押された?誰が……と、後ろを振り返り。
「!?え、嘘、もうこんなに膨らんで……!?」
いつのまにやら、ふたりとも球体のてっぺんを天井に到達させてなお膨らもうとしているではないか。そのまま行き場を失った肉が横へと広がり、俺のほうへも侵攻してきたということか……!
「……あれ?これ、俺もまずくないか……?」
と、ふと状況を整理してみて気付く。これ自分、押し潰されないか?と。
「えっ?ちょっ、止まって、とま、やば……!?」
とまって、なんて言ったところで止まる訳ないしそも聞こえているかも怪しい。とりあえずタイプライターを抱えて下がるが、あっという間に壁に背がつく。やば、これホントに潰される___!?
「キミ!」
「!?」
と、そのまま白風船に挟み込まれようとしたまさにその時。横合いから声が聞こえたと同時に、なかなか張りと弾力のある物体が俺を突き飛ばして庇ってくる。なんか今日こういうシチュエーション多いな?
「っはぁ、はぁ……!危ないところだったね……無事?」
「あ、アヤメ……うん、なんとか……ありがとう……!」
見ればアヤメももうだいぶと球体に近く、手足などほとんど動きそうにない様子だった。恐らく今のが最後の力だったのだろう。その力でこの家屋から逃げることだってできただろうに、わざわざ俺を助けたのには感謝のしようがない。 - 89二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:33:40
「ふぅ、ふぅ……っ!……大丈夫、私が守ったげるから……!」
「アヤメ……」
苦しげながらもなんとか言葉を紡ぐアヤメ。背中に白風船が触れる感触があったのだろう、この後に自分らに待ち受ける圧迫の試練を予感しながらなおも気丈に振る舞うその様子は、ぷっくぷくに膨らんだ両頬からは考えられないほどにかっこよかった。
「ぅ、ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……!!」
「あぐ、ぅぅぅぅぅううううう……!!」
と、後ろのほうで急激に超巨大風船二つが軋みを上げる。ブーストした分も尽き、いよいよ限界なのだろう。決着の時が近い。
それと同時に彼女らに押し出される形でアヤメも部屋の角に、俺の最後の安置に押し付けられる。
「っぐ、ごめん、耐えて……っ!?ちょ、キミこんな状況で勃起してるの!?馬鹿!変態!節操無しぃ……!!」
「ご、ごめん……!返す言葉もございません……!!」
しょうがないだろう。まだアヤメのほうは張り詰めているとはいえまだ弾力を残しているし、ぷにぷにしてるし、確かな肉感を持っているし。それが人肌の体温と圧迫感と重量感を持って襲ってきて、さらにバランスボール超えの風船胸を押し付けてきたものなのだから。多分手をにぎにぎしたらアヤメさんを揉める。
「っーーー!?馬鹿!!」
本当にごめんなさい。
と、何か軋む音に紛れて異音が聞こえてくる。いや、軋むというなら同じなのだが、こう、皮の軋む音というよりは木の軋む音というか___まさか!!
「!!キミ、私の下に隠れて!倒壊する!!」
「うぉお!?」
その言葉に、アヤメ風船の下に隠れるように身をよじったその時___轟音を立てて、宿が弾け飛んだ。
. - 90二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:36:14
「……これは」
まるでビー玉を射出するひと昔前の玩具の如く、アヤメ風船もろとも吹っ飛ばされた俺。なんとか元の家屋があった場所に戻って見れば、未だ弾力を持ってぶよんぶよんと揺れる白風船と一方でみちみちぎちぎちと今にも破裂寸前の肌色風船の家サイズの二大風船が鎮座していた。
……おそらく、マルクトの勝利だ。家屋が___領域が物理的に破壊されたことで、彼女の持つ異能が急速に効力を失い、結果、先程怪書が何とか言っていた時に発動させた弾力ブーストが無力化されつつあるのだろう。恐らくこのままいけば、彼女は内圧を受け止めきれず破裂する。
「うぐ……ぐぐぐぐ……!!」
その証拠に、苦しげながらも悔しげな声が漏れ聞こえてくる。
……いや、ツチノコが蠢いている。まだ何かする気なのだろう。
「まだ、です……!私は、私はぁ……!!」
「もうやめな、アザミ。私たちの負けだよ」
だが、それを遮ったのはアヤメだった。……だいぶと萎んだみたいだけどもまだまだまん丸でいまいち締まらないなぁ……。
「意地をはる気持ちもわかるよ。私だってこの数十日間は楽しかったし。……でも、それで死んじゃ元も子もないでしょ?そんなの、あんたも彼も望んでないはずだ」
「……っ」
マルクトの手足に食い込み、拘束していたツチノコが牙を離してアザミさんの下へ戻っていく。諦めてくれたようだ。
「……次は。次会う時は、こうはいきません」
彼女の足元に何かおどろおどろしい影が広がり、アザミさん風船を飲み込んでいく。アヤメもえっほえっほと息を切らしつつその影へと歩みを進めているあたり、恐らくは緊急脱出装置的なものなのだろう。 - 91二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:37:58
……そうだな。次会うときはこうじゃないといいな。
「ああ。次会うときは普通に部屋に行くなり来るなりして、普通に飯食って、普通にお話したいな」
「___」
まぁ、予想外だったろうな。絶句といった様子のアザミさんと、面白げなアヤメを影が足元から沈み込み、飲み込んでいく。
最後にハッとした様子で何か言おうとしていたようだが、その直後に口元さえも影に沈み、そのまま地面に消えてしまった。
「……終わった、な」
「ですね。よくがんばりました、か弱き子よ」
何か長い長い夏休みが終わったような、そんな感慨にふけっていると、白風船が器用に身体を転がして自身の手を俺の頭にポンと乗せる。
思えば、当初の食材を手に入れる計画は見事にポシャった訳だが、不思議とそんなこと気にならなかった。
「……マルクトも。こんな身体張らせちまって……ありがとう」
「どういたしまして」
「ぉーーーーーい!!お姉様―――――!!」
「あ、迎え来た」
「よくこの場所がわかりましたね。流石、自慢の妹です」
遥か遠くから、何やら巨大で白い機械に跨りながら雪見大福ゲフンゲフンソフがやってくる。雲一つない快晴の下、俺はマルクト風船を転がそうとして想像外の超質量に心折れながらソフの迎えを待つのだった。
なお、マルクトが萎んで元の大福体型に戻るまで一週間ほど掛かったことをここに記しておく。 - 92二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 02:41:45
- 93二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 11:49:23
文章量も膨張してればマルクトも膨張してんな…
まぁ読み応えあるのでヨシ!(?) - 94二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 21:45:44
このレスは削除されています
- 95二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 22:19:48
- 96二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 22:41:13
このレスは削除されています
- 97二次元好きの匿名さん25/11/08(土) 22:42:16
- 98二次元好きの匿名さん25/11/09(日) 07:13:34
色々とデカぁい!説明不要!
- 99二次元好きの匿名さん25/11/09(日) 16:38:51
うおでっか…
- 100二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 01:41:04
アヤメが起きてるってことはこれから百花繚乱の面々はこのデブ二人とご対面することになるのか……
- 101二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 11:11:32
ほし
- 102二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 11:12:20
ナグサちゃんどんな顔して戦えばいいのさ
- 103二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 20:27:24
笑えば…いいとおもうよ…()
- 104二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 00:28:47
- 105二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 05:41:48
>>104まぁ多少のキャラの解釈ズレは別にいいのでは?
- 106二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 15:02:34
よっぽどじゃなければ自分もあんま気にせんわね
- 107二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 15:07:13
このレスは削除されています
- 108二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 21:53:29
いいスレに出会えたわ…
- 109二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:26:42
「___しかし、その……小塗マキ、という生徒。聞けば聞くほどワイルドハントに入学してこなくて正解だったと思うな」
「ここはいろいろと厳しいからね……いたずらでコンビニのレジにゲーム入れるような子じゃ息苦しくてしょうがなかったと思います」
「だよなぁ。本人もミレニアムで満足してるし、きっとこれが最良の判断だったんだろうな」
ワイルドハント芸術学院のとある一室。そこにふたりの女子生徒とひとりの男子生徒が顔を突き合わせていた。
ひとりは治安維持組織たる寮監隊の副隊長たるヒロミ、ひとりはシャーレの先生の血縁者こと俺。この二人だけでは治安維持組織の幹部に連邦生徒会の役員とやんごとなき雰囲気を感じられそうなところだが、残る一人、ただの善良なる生徒ことミヨがここに加わることで仲良し知り合い三人組の雑談空間が出来上がっている。
……俺がワイルドハントを訪れたのはこれが初めてではない。冒頭でヒロミさんが言及していた小塗マキ、ふとしたタイミングで彼女が「ワイルドハントは私には合わない」といったことがどうしても気になってしまい、連邦生徒会からのお仕事が入ったタイミングでこれ幸いにとこの学院に赴いたのだ。外部の人間にして、連邦生徒会からの客人。寮監隊の世話になることも、その副隊長を務めるヒロミさんと面識を得るのも、その繋がりでミヨちゃんと知り合うのもある種の必然であった。
と、いうことで。それから俺はワイルドハント行きのお仕事は積極的に受けるようになり、こうして学外に得た友人二人と駄弁ったり芸術鑑賞と洒落込むことを楽しみとするようになった。
ちなみにマルクトは連れてない。あの体型はあまりに不審者が過ぎるからね。 - 110二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:28:24
「ああそうだ、これは相談事なんだけどね」
と、何やら次の話題は明るいだけの話ではないようだ。なにやらヒロミさんの声色に困窮の色が混ざる。
「……最近、うちの幹部のなかにびっくりするほど、こう……増量した人が出てきてね。なまじ幹部なうえに相応以上に優秀なだけに表立って𠮟責するのははばかられるし、しかして何も手を打たないとそれはそれで不自然だ。彼女ひとりだけ肥え太り……何かしらの不平やあらぬ疑いをかけられてもおかしくない」
びっくりするほど増量。ほーん何も俺の知り合いが太りやすいとかじゃなくてキヴォトスの子供たちは大増量なんてけっこうある話なのかなーなんて思いながら聞いていると、ミヨちゃんが口を開く。
「ならダイエットさせればいいのでは?」
「そうしたいのはやまやまだが、いかんせん時間がない。最近、どういう訳か密輸品の摘発が増えてきててね。まとまった時間が取りづらいんだ」
至極まっとうな解決案。しかしそうもいかない事情があるらしく、ヒロミさんは首を横に振る。ミヨちゃんの表情が硬くなったことにはその場の誰も気付けなかった。
「ままならないな……服装で誤魔化すとかできないのか?」
「あの体型じゃ無理だ。一応デザイン専攻の子に打診はしてみたが……写真を一見するや丁重に突き返されてしまった」
「そんなにか……あ、今その写真ある?」
「あるよ。はい、これ」
ぺらり、と卓上に置かれた一枚の写真。それをミヨちゃんとふたりで覗き込み。
「ミリア、という名だ」
それはもうびっくりした。アキラじゃねーかお前。 - 111二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:29:30
「……!……ッッ!!」
「だろだろ?びっくりだろう?本人には悪いが、乙女の体型じゃあないよこれは」
よかった、ヒロミさんは写真の女性の体型に驚いてると思っている。実際はそのあまりに見覚えのある顔付きに腰を抜かしているのだが。だがこれ以上は不審がられかねない、いい加減落ち着こう。
「……なる、ほど、ねぇ……?いや確かにこれは、なかなかに凄まじい体型だこと……」
なんとか言葉を紡ぐ。が、実のところ、俺はその太さよりも細さに驚いていた。
というのも、実は俺はこのミリアなる女性___と恐らく同一人物であろう、慈愛の怪盗こと清澄アキラと面識がありついこの前も彼女の根城に差し入れを持って訪れたのだが、その時の彼女は言うなれば肉の小山。全身くまなく脂肪を蓄えてぶっくぶくに肥え、両頬が顎肉と繋がってあたかも浮き輪を首に埋め込んでいるかの如く。手足も半ば埋まってなぜそれで歩行できるのかが不思議なほどであった。
翻って写真の中の彼女はどうか。確かに肥えている。立派な肥満児だ。肥満児なのだが、まだ常識からやや外れた程度の太りようであったのだ。大きく突き出た腹、むちむちぱんぱんの手足、まんまる可愛いお顔。そのどれも先日会ったアキラのものに到底及ばない。いったいどんなトリックを使ったのか……?
「聞いた話じゃだいぶと八方ふさがりじゃないですか……どうするんです?」
「どうしようにもアイデアが沸かないからキミたちにも相談してるのさ。だが画期的な方法なんて早々出るものでもないか……?」
ぐったりと椅子にもたれかかり、諦観を滲ませるヒロミさん。いや待て、こういう時は逆転の発想をすると良いというのがアニメや漫画のセオリーで……。
「……ん!」
「へ?」
「おっ?」
来た。来た来た来ましたピンと来たぁ!逆転の発想!コペルニクス的思考回路!!天を動かさず地を動かす!!!
「閃いたぞ……名案……!ちょっと俺に仕込みを任せてくれねぇか……?」
「……キミは連邦生徒会の小間使いとしても良くやってくれている。いいだろう、キミを信用するよ」
顔をずいっと寄せて言えば、ヒロミさんも負けじと顔を近寄せてまっすぐ向き合って言い返す。うぉこの人やっぱ顔良いな……。
ミヨちゃんも心なしか楽しみといった表情である。期待されたからにはやり遂げねば。俺は早速仕込みにかかるのであった。 - 112二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:32:10
___
__
_
「貴様―――!!」
「問題ひとつ解決すればそれで大丈夫だとでも思ったクチかーー!?」
「だって名案だと思ったんだもん!!それしか方法ないって思ったんだもん!!」
「確かに他に策を見出せなかった私らの落ち度かもしれんがそれはそれとして常識ないのか常識はーーー!!」
「……あのぅ、この喧噪は?」
ある晴れた日の昼下がり。校舎の一角から聞こえてきたその喧噪に何事かとやってきたミヨちゃんが見たものとは、寮監隊の制服を身にまとった複数のぽっちゃり……おでぶ生徒とその贅肉に挟まれてもみくちゃにされているひとりの男子生徒であった。
と、野次馬の声にすぐ傍で他寮監隊員と並んで見ていたヒロミが気付き、傍に歩み寄る。
「あぁ、ミヨちゃんか……いや、この前彼が言っていた『名案』の真意が今になってようやく理解できてね……」
「……?」
「前も言ったとおりミリア本人を痩せさせることはできない。しかして彼女だけが太っていると変に不平を勘繰られたり痛くもない腹を探られる恐れがある。そこで彼は考えた。……皆等しく太れば平等だ、と」
「あー……」
「っスゥーーーーー―……………フゥ――――――――……………」
そこまで語り、大きく息を吸って吐くヒロミ。その吐息の中には激しい怒りと代案を出せなかった自分らへの𠮟責、現状これが自分の提示した問題に対する最良の答案なのだからなんとか受け入れようという感情らが混じりあって味わい深くなっていた。
そしてそんなヒロミであるが、彼女自身も随分と太ったものである。元々スレンダー寄りだった体型が見る影もなく、腹は膨れ上がって腕を左右に押し上げ、その上に二つのビーチボールがずっしりと乗っかっている。臀部も元々なかなかのものであったが、腹に付随してしっかり増量し、胴体が大きく広がってなお前から見てもその肉厚な巨尻が窺い知れるほどである。彼女もまた鋭い目つきの持ち主であったが、無数の校則違反者を検挙したその眼光はもはや名残り程度しかなく、むっちりもちもちと蓄えられた頬肉が胸元に押し上げられて目尻を圧迫している。 - 113二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:33:37
実の事を言うと、彼女も寮監隊総肥満化の片棒を担いでいたりする。彼が莫大な量の食事を差し入れと称して持ってくるたびにヒロミが嬉々として食し、そして率先してぶくぶくと肥えていくのを目の当たりにしたからこそ、寮監隊の他メンバーもじゃあ私もと後に続き、そしてこのザマである。
「で、でも……私はいいと思いますよ?こう……親しみとか持てますし……!」
などというがこのミヨという女、じつは仕掛け人たる青年の思惑をだいぶ前に看破していたりする。そのうえで誰にもひた隠しにし続けている裏家業___特殊交易部の行う密輸のためにあえて見逃し、なんなら手伝いつつ、最大の障害となる寮監隊の機動力を削ぎ落しにかかっていたのである。
哀れヒロミ。同僚と友人による肥育包囲網の完成である。
が、そんなことつゆ知らぬヒロミはミヨの言葉に表情を明るくする。
「親しみかい?……ふふっ、そっか。ミヨちゃんにそう思われるなら……存外、悪くないかもしれないね。寮監隊自体も何か過剰に恐れられている節があるし、この機にイメージアップを図るのもいいかもしれない」
「ええ、いいと思います……!ほら、だってこんなにまんまるで、かわ、い……」
「ひゃあ!?み、ミヨちゃん何を!?」
冗談のつもりでヒロミの巨腹を掴むミヨ。だが、その感触があまりにも柔らかく優しく、そして気持ちのいいものだから、気付けば意識が手先に集中していた。 - 114二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:37:15
「……!……………あっ!?ご、ごめんヒロミちゃん!?」
「あ、あはは……そんなに気持ちよかったかい……?」
胸を伝って頬肉をぶにぶにと堪能していたところで正気に戻り、慌てて手を離すミヨ。だがその視線はあっという間にヒロミの巨乳から腹までをぎゅっと絞って食い込んだサスペンダーのほうに吸い込まれて離せずにいた。
「……その。そんなに気になるか?あぁいや、嫌という訳じゃないんだ……その、私もミヨちゃんに癒されてる所は多大にある。こんな形で返せるならば……是非」
「ごくり……!」
頬を赤く染め、羞恥に浸りながらも友人の為に出来ることをしようとするヒロミ。ヒロミの言葉につばを飲み込み、両手を掲げてその半ば埋もれたサスペンダーへと向けるミヨ。なにやら甘い雰囲気がにわかに立ち始めたところで。
「挟め挟め!」
「逃がすな!」
「男性はこうして肉で挟み込むと粘つく小便を垂れると聞いたぞ!」
「公開お漏らしの刑だーーー!!」
「やっ「やめろーーーーー!!?」」
恐るべし芸術学院、性教育すらも職務と創作活動のために切り捨てた乙女たち。とんでもない発言が飛び込み、慌てて止めに入るヒロミ。ミヨも続いて割って入り、さっきまでの甘い雰囲気はあっという間に霧散してしまうのであった。 - 115二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:38:22
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__
_
「ひ、ひどい目にあった……」
遠くでカラスの鳴き声が聞こえる夕暮時、ワイルドハントから一人の男子生徒が帰る。その足取りは重く、疲労感を感じられるものであった。
「いやまぁ、よくよく考えてみればアホの極みみたいな計画だったな~とは思うが……反省反省……」
「おやぁ、そう気に病むことでもぉ、ぷひゅー、ないかと思いますがぁ?」
「そっかぁ?女子って体型の変化とか気にするお年頃な感じだと思うけ、ど……?」
と、ここで独り言の中に他人の声が混ざっていることに、次いで自分の肩になにやら肉厚な手が添えられていることに気付き、その手のほうに顔を向ければ。
「アキラ……っ!?いつのまに……!?」
「それこそぉ、始めからぁ♪」
今日の……というよりも、ここしばらくの仕込み、一連の騒動の発端である清澄アキラその人がいた。その巨大すぎる腹肉とそれの上に鎮座する胸、その奥から呼吸音を響かせつつ肉を蓄えた顔を見せる。うん、相変わらずの肉塊だ。
「……その。ワイルドハントの寮監隊幹部のミリアってさ。お前の親戚か誰かで?」
「いえぇ?ぷひゅー、ぷひゅー……私ぃ、本人ですがぁ?」
「そうだよな……じゃあその体型、どうやって誤魔化してんだ?」
「ぷひゅー、ぷひゅー……教授の知り合いにぃ、ミレニアムから来た生徒さんがいるんですよぉ。ぷふぅー、その方からいろいろとぉ、機器のほうを譲り受けましてねぇ……ぷひゅー、ぷひゅー」
以前抱いた疑問を投げかけて見れば、返ってきたのはなかなか興味深い内容で。
「へぇ……それで体型を誤魔化せるってのか?」
「えぇ……この、ようにぃ……っと」
かちりと音がすると、まるで空間が屈折するかのようにみるみるうちにアキラの体型が萎んでいき、あっという間に小山デブが超デブ程度に落ち着いてしまった。 - 116二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:39:24
「はい、完成です。声色についても変声機の応用で呼吸音等を抑えて不自然のないように仕上げています」
「ほぇーすっごい……」
「ま、あくまで見せかけのまやかしなので、触れられればそれまでなのですがぁ、ねぇ。ぷひゅー」
と、装置を解除したのか今度はぶくぅと膨らみ元の小山デブに戻る。超短期間で肥満化したかのようで、結構股間に悪い映像だった。
……それをアキラは見逃さなかった。
「おやぁ?おやおやぁ?どうやらぁ、いまの一瞬があなたのお気に召したご様子でぇ……♪」
「なっ!?そ、そんなんじゃ……!」
「いえいえぇ、隠さなくても大丈夫なんですよぉ?ぷふぅー、お昼ごろもたっくさんのお肉に囲まれてぇ、大変でしたものねぇ?」
「っ!!?そっ、それは……!?」
なんてことだ。見られていたのか。……いや、ミリアとアキラが同一人物であるのなら、あの場にミリアとしていてもなんら不思議ではない。なんとも恥ずかしい現場を抑えられてしまったものである。
だが、それをアキラは咎めることはせず、むしろ声に甘さを乗せ、腹肉を押し付けながら語り掛ける。
「そのうえぇ、発散もできぬままでしたものねぇ……?ぷひゅー、ぷひゅー……そうですねぇ、例えば……『あぁっ!?か、身体がぁ、太るぅ、膨らむぅ……!駄目ぇ、どんどん膨らんでぇ、んぶ、ぶふぅ……!?身動きがぁ……!!』」
と、唐突に装置を起動し、しかし今度は逆に身体が急速に膨張していく。それに合わせて彼女の声も重く太いものへと変貌していき、あたかも本当に肥え太っていくようである。
「『っぶふぅ、ぶふぅ……!!あ、ぐぅ……!!何、身体ぁ、萎んでぇ……どういう、つもりでぇ……う、ぐぅう!?やめ、駄目駄目駄目!もう太りたくないぃ、もう膨らみたくぅ……うぶぅ!!ぶ、ぶひゅぅう……!!ふ、太るぅ……またぁ、太るぅ……!!』」
一度萎んで、再度膨らむ。本人の迫真の演技と相まって、まさに何かしら倒錯した拷問の真っただ中といった様相である。俺は慌てて周囲を確認したが、知らぬ間にアキラに誘導されていたのかひと気のない郊外であったため、誤解の心配はなさそうだ。それよりも。 - 117二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:40:37
「『ら”、ら”め”ぇ”!も”う”ぅ”……限”界”ぃ”……!!ぶ 、ぶ ご ご ぉ”……!!こ”れ”以”上”ぅ”、は”ぁ”……!!う”、う”ご お”ぉ”ぉ”お”ぉ”お”お”お”……!!♡』」
未だかつて見たことのない肉量と野太い声を響かせ、それなりに広かったはずの郊外空き地を肌色の風船で埋め尽くそうとするアキラ。その声には苦しさと気持ちよさが入り混じり、的確に俺の性癖を掴んで離そうとしない。下半身に血が集中し、股のあたりにズボンの皺が寄る。
「『~”~”~”~”~”~”~”っ!!』……っと、こぉんな具合でしょうかぁ?どぉですぅ?お気に召しましたでしょうかぁ?ぶひゅー……」
と、装置を解除し急速に萎み、再度元の体型に戻るアキラ。だがその目には熱が籠っており、彼女自身も先程の熱演でスイッチが入ったと見える。
「ぶひゅー、ぶふぅー……あなた手ずからの芸術品、できればそのままの姿を愛でてほしいところではありますがぁ……ですがぁ、これもまた技法のひとつであるならばぁ、ぷひゅー、喜んで披露致しましょうぅ……♪さぁ、次はどのような演出にしましょうかぁ?先程と同様も良しぃ、別方向でも構いません……ぷひゅー、心行くまでにぃ、楽しみましょうぅ……?大丈夫ですよぉ、粗相をしても問題無いようぅ、ぶひゅー、ズボンや下着の替えならぁ、用意しておりますのでぇ……♡」
何と蠱惑的な提案だろうか。……だが、彼女だって傍から見たらもう随分とみっともない様を晒しているのだ。自分も多少みっともなくたって……まぁ、大丈夫だろう。
その日、人知れず開かれた二人のための個展は、夕日が沈んで夜のとばりに包まれてからも少しだけ続いた。 - 118二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 23:45:05
はい、夜遅くに失礼するよ。
上で言っていたが、今回書いていくうちに後半のアキラのキャラがなんだかワカモと似通ってしまってね、あるいはスレ主の気付かぬうちに本来のキャラ性と致命的な乖離を起こしているような気がしてならないんだ
が、まぁ……所詮は場末の掲示板サイトの場末のスレ、寛大な心で見逃してもらえると有難いということで、ね。
あ、アキラの肥満化度合いについてはこちらのスレ、このレスで頂いた絵のとおりにイメージしてもらえるといいよ
- 119二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 09:19:34
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- 120二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 18:59:09
どうやって動けてるのか謎になるやつ
- 121二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 19:20:42
普通の体型から巨大な肉塊にまで太るアキラエッチすぎるな…
これは誰でも性癖破壊されてしまうぞ - 122二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 19:30:33
愛も体も重いの良いよね…
そしてヒロミの肥満化も助かる…ミヨちゃんもすっかり贅肉の感触にハマって…ヒロミヨも甥くんとアキラももっといちゃいちゃして - 123二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 05:16:06
このレスは削除されています
- 124二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 14:13:05
このレスは削除されています
- 125二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 23:39:32
- 126二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 08:37:33
ぬおお新作きてた たすかる…
- 127二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 09:32:25
- 128二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 13:06:48
- 129二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 22:04:19
うぉぉこれは……!本来であればこういった体型となった人間を𠮟責せねばならないはずの立場の人間がその体型に墜ちて……これは……えっち!!!
……なんじゃあないか?うん、えっち!!!まんざらでもない表情がまたえっち!!!私も性癖の発露を頑張らねば!!
- 130二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 03:47:44
セイアの語彙力が死んでる…
- 131二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 12:51:08
モチベが互いに影響されるのは良き
- 132二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:29:33
保守
- 133二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:36:21
衣斐レナ。ワイルドハント芸術学院一年生。ファッションデザインを専攻とする彼女は成績も悪くなく、学業は順風満帆……のように思われた。
「うぎぎぎぎ……」
唸っている。スケッチブックを前に、頭を両手で抑えて如何にも「私今困ってます」と言わんばかりに衣斐レナが唸っている。これも普段から彼女を振り回している同室の先輩方のせいだろうか?
答えは否。
「駄目……完全にドツボにハマってる……!どうやっても何か物足りない……!こんなんじゃ課題として提出だなんてできっこないわよ……!!」
そう、彼女が今しがた取り組んでいるのは自分の専攻する学科の課題であり、それは衣類のデザインをするというものであった。別にコンテストに出品するものでもあるまいし、今の自分の実力レベルを再確認するため、という側面が強いのだが……しかしレナはなまじ優秀なだけに「私ならここぐらいまで行けるはず!」と志を高く持って自分の中で課題のボーダーラインも高く設定してしまい、そして目の前に書かれた途中かけのデザインではどう足掻いてもそのボーダーに届くことはないと気付いてしまった。故に四苦八苦しているのだが……。
「でも何が物足りないの……?わからない……どうしよう、今から書き直す……?でも一から書き直したところでまたこの状況の焼き直しだったら……」
状況はまさに八方ふさがりといったところだった。思いついて書き加え、しかしこれじゃないともとに戻し。その繰り返しで時間だけが過ぎていく。
何となく、彼女の中にもこのままじゃ解決しないだろうという考えが思い浮かんでいた。
じゃあどうするか。どうすればいいか。記憶の中から何か使えそうなものは無いかと探して。 - 134二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:37:25
「……そういえば。寮監隊の人が話してたわね。アバンギャルドがなんだとか……確かロボットだったわよね?四本腕にキャタピラ付けた脚、あとは黄金比の盾と味わい深い顔つきで……」
さらさらと、盗み聞いた情報から想像図を手元の紙に書き起こす。すると何やらなかなかに愉快な有腕戦車が誕生したではないか。
「ふふっ、何よコレ。ワイルドハントの外じゃこんなのが跋扈してるっての?」
どうやら自分の知らないうちにキヴォトスは随分と愉快なことになっているらしい。目の前の想像アバンギャルド君像に思わず笑みを零す。
「あー笑った。でもこんな現実逃避じゃなくて今度はちゃんと解決策、を……」
と、消しゴムを手に取ってふと思う。自治区の外ではこのスケッチブックに描いたこの愉快極まる珍兵器が跋扈しているというのに、自分らはそんなものに目も向けられずにこの狭いワイルドハント自治区の中でただ紙と向き合うばかり。
私が向き合うべきは、私の求めるものは、外にあるんじゃないか?
「……脱走。しちゃう?」
ぽろりと零れたその言葉は、普段の彼女であればおおよそ口にしないであろうものであった。が、たまたま寮監隊に外の逸話を持ち込んだ者がいて、たまたまその会話をレナが聞いて、たまたま今この追い詰められたタイミングでそれを思い出した。偶然という名の歯車が、しかしがっちりと噛み合い、彼女をとんでもない行為へと駆り立てる。
その日オカルト研究会の三人が見たものは、開け放たれた窓と忽然と姿を消した後輩の痕跡だけであった。 - 135二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:38:47
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「やっちゃった……やっちゃったやっちゃったやっちゃった!成り行きとはいえ来ちゃったD.U!どうしようどうしよう!」
人込みのまばらな駅のホーム。ぼろぼろの車体から可愛らしい女子生徒がひとり、緊張した面持ちで降りる。誰であろう。家出少女こと衣斐レナである。
元々近場の自治区で済ませるつもりだったのだが、しかしハイランダーの無法っぷりを侮っていた。突発的な銃撃戦、緑髪の双子による寸劇、アオバ砲だのなんだのと要領を得ないアナウンスときて、最後にはすぐ後ろの座席から奥に謎の肌色の超巨大砲弾が直撃してそれより先の後部車両が脱落、たまたますぐ前の座席に座っていて助かったレナをそのまま乗せた車両は緊急措置としてD.Uのドッグに運ばれる流れとなったのだ。乗員乗客含めて。
もうこの時点で気が滅入りそうなものだが、しかしレナはこれらの事件すらも貴重な体験と割り切って考えており、既に整理がついていた。最早彼女にとって気に掛けるべきは既に終わった事件でなく今目の前に広がる問題なのだ。
「うぅ……何を今さら怯えてるの衣斐レナ!もうここまで来ちゃった以上、ちゃんと今後に活かせるような経験を積むのよ!」
震え竦む足腰を叱咤し、喧噪と窓ガラスの反射光溢れるコンクリートジャングル、D.Uへと脚を踏み入れた。 - 136二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:40:19
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「このデザイン……いいっちゃいいんだけども……ワイルドハントでも普通に見るもんなぁ……」
ガラス越しにマネキンが身に纏うコーデを観察する。……が、そのどれも既視感を覚えるものばかりで、新たな視点や学びに繋がるようなものは見られなかった。
「はぁ……いやでも一応色使いとか他部位との兼ね合いとか、そういった基礎的な点は見習っていこ。それから……」
と、言いかけたところでお腹がキュルルルと間の抜けた音を発する。もう日は頭上に昇って傾こうという時間であった。
「……お腹空いた。なんか適当なお店で……いや、美味だって貴重な体験よ。きっとそれがインスピレーションに繋がるかもしれないし、せっかくならとびっきり良い所で……」
財布に余裕を確認すると、手にしたスマホで良さげな場所を探す。……が、ただでさえ経済密集圏のD.Uでしかも土地勘もなく、膨大な量の飲食店からこれと思うものを決めるだけでも遥かに難題であった。
「えぇ……?ここはもうない……?何で、爆破……??じゃあこっちは……いや何処よここ……!どーしよ、全然いい所見つからない……」
そうこうしている間にも空腹感が思考の余裕を奪っていく。最早考えることも億劫になり、途方に暮れてあたりをぼんやりと見渡してみれば。
「……………ん?何今の」
なんか今、視界の端に真っ白い巨デブが現れたような気が。気のせい、あるいは見間違いかとは思いつつもその白い何かが消えていった先に向かえば。
「……!デッッッッッッッッ」
でっっっか。本当に真っ白い巨デブがそこにいた。隣にいるのは若い男性だろうか、自分とそう歳は変わらなさそうである。 - 137二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:41:57
と、ここでひとつ案が頭に浮かぶ。
「……太ってるってことは、食に理解があるってことよね。もしかしたらどこかおすすめの所とか教えてくれるかも……!あ、あの~!」
「おや、見られてしまいましたか。どうします?か弱き子よ」
「うん、ちょっと待ってねマルクト。……え~、ゴホン、ダイエットとかのお誘いでしたら丁重にお断りさせて……」
「あぁ違うんです!その、この辺で美味しいお店とかないか訊ねたくて……!」
勇気を出して声掛けしてみれば、ちゃんと返事があった。話も通じるようだが、どうにも誤解されようとしている様子だったから慌てて割り込み、さっさと目的を話してしまう。
「ふむ。検索結果が21件ヒットしましたが、全て挙げていけばいいでしょうか?」
「検索?いつの間に……っと、そうじゃなくてですね……見たところ随分と肥え……ゲフンゲフン食に詳しそうな様子だったので、お自身のこれまでの体験からおすすめの食事処とかあれば教えて欲しいなー、と……」
流石に図々しすぎるか……?内心で冷や汗を垂らすレナを前に、男女二人は顔を見合わせる。……なにか、巨デブが男性のほうを指差している。彼等はこれで通じ合っているのだろうか?
と、話はまとまったようで。
「……わかりました。いいでしょう、とびきり美味しい料理の出る所に連れて行ってあげましょう」
「!いいんですか!?ありがとうございます!!」
聞き込み成功。ようやく昼食にありつけそうで、レナは弾むように返事をすると彼等の後に続くのだった。 - 138二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:43:41
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「お……美味しい……!手料理がこんなに美味しいだなんて……!」
「気に入ってもらえたようでなによりだ」
「我が子自慢の味です」
向かった先は、なんと仮屋の一室だった。男の子の部屋に連れ込まれ、これから自分はいったい何をされるのか……!?と当初は恐れ竦んでいたレナであったが、マルクトの説得(とその純白のマシュマロボディ)ですっかり怖気も疑心も抜かれて、あれよあれよと居間に案内されてしまった。
そして出てくる出てくる美味の山。皿いっぱいに盛り付けられた料理、料理、また料理!見た初めはこんなの食べきれる訳がないとひるんでいたが、いざ一口目を口へと運ぶとその美味に舌をやられ、驚くほどするすると大皿を平らげてしまった。
「……っぷ。ちょっと調子に乗って食べすぎたかも。もうお腹ぱんぱん……」
が、やはり限界は訪れるもの。キツくなったスカートをこっそり降ろし、お腹を露出しない程度に開放しているがなお苦しい。
これで隣のマルクトは自分と変わらぬ……どころか、それ以上のペースで食べ進め続けているのだから胃袋の容量がおかしい。こんな旨い料理を毎日これだけ食べてればまぁこんな巨体にもなるだろうなぁ、というのがレナなりの感想であった。
と。
「ふぅーーー、満腹です。ごちそうさまでした」
観察している間にも、卓上の皿を全て平らげて両手を合わせるマルクト。よく見れば腹は最初見たときから随分と膨れ上がり、こちらは外聞など知らぬと言わんばかりに腹がシャツを押し上げてへそを露出させている。
「(すごい……この膨らんだぶん、全部食べ物なんだ……)」
学院内じゃあ絶対に見られないであろう光景に、思わず息を呑む。あるいはこれを見られただけでも脱走した甲斐はあった……などと考えたところで、いやこれ見て何に活かせるのよと脳内で自分自身の思考にツッコミをかます。
そんなことに意識を割いていると、いつのまにやらマルクトがあくびをし、随分とお眠な様子となっていた。 - 139二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:46:57
「んむ……すみません、私は横に、なり……ます……」
「ん、ああ。おやすみ、マルクト。……レナさんも、せっかくだし昼寝してくか?」
「えぇ!?そんな……悪……ふぁあ…………ん、ごめん。やっぱ私も付き合うわ……」
その提案にはじめは乗り気ではなかったレナであったが、マルクトのあくびが移ったのかあっという間に睡魔に襲われ、傍で一番柔らかそうなクッション___マルクトに身体を預け、横になる。反対側には、その状況を作り出した張本人がもたれかかる。随分とこなれた手つきだ、普段からこうしているのだろうか。共に黙り、静寂に身を浸す。
拍動が聞こえて心地いい。弾力が自分を支えて心地いい。脂肪の奥に感じるぱんぱんに詰まった胃袋の重量感が心地いい。瞼を閉じれば、あっという間に夢の中だろう。
「……んム、マルクト……」
「……………」
「……………ひゃあ!?ちょ、なんで今私のお腹揉んだの!!?」
「うぇあゴメン!マルクトの肉と間違えてつい!!」
「ついってなによついって!シャーーーーッ!!!」
……トラブルはあったが、今度こそ瞼を閉じれば夢の中だろう。 - 140二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:48:41
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「美味しいごはんを頂いて、一睡まで取らせてもらっておいて何も返さないのは不義理ってもんでしょ?それで考えたんだけども、マルクトさんの服をデザインさせてもらえないかしら?」
「私の、ですか?」
「そう、あなたの。その大きさじゃ着れる服だって限られてくるでしょ?外じゃ随分と伸縮性に優れた見慣れない素材の服着てるみたいだけども、あれじゃ無理やり伸ばして着てるって印象だったし、部屋着はそのシャツくらいのものみたいだし……」
目が覚めて、食事の片づけをした後の事。彼女なりに受けた恩義に報いようとした末の提案であった。
その提案に、青年はちらりと箪笥のほうに目を向ける。あの中にはいくつかXがついて末尾にLで締めるサイズの衣服が収められているが、確かにそのどれも飾りっ気が薄い。外着には彼女がこの部屋を訪れたあの日に着ていたものが伸縮性に優れていたのをいいことにそのまま着させつづけていたが、正直いつ破断するかわかったものではない。この機に素敵な衣服をデザインしてもらえるなら願ったりであった。
「どうだマルクト?俺は是非お願いするべきだと思うけども」
「私も断る理由はありません。私からもお願いします」
「わかったわ!じゃあちょっとモデルとしてそこに立っててもらえるかしら!」
スケッチブックとペンを取り出し、マルクトのほうに向き合う。
そういえばこんなにわくわくしながらファッションデザインと向き合うのは久々だな、などと思いながらペンを走らせるのであった。 - 141二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:50:20
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「できた……!どう、これ……!」
「なるほど、これは……!さっそく起こしてみますね」
スケッチブックに描かれたこの世にひとつだけのデザイン。それをマルクトに見せると、彼女の感情を司る回路にも響くところがあったのか感嘆を漏らす。
「ん?起こす?」と今しがたの発言を理解しきれず反芻するレナをよそに、デザインアートが伝えようとしている意匠性や機能性をとりこみ、解析する。よく完成されたスケッチだ、後は布と糸があれば実物を作れてしまえそうだし恐らくはレナも後で完成品を送るつもりだったのだろうが……しかし、情報さえあればこちらのものだった。
「これを、こうして……」
「えっ何何なにが起こってるの!?空中に布が浮かんで……織ってる!?す、3Dプリンターってやつ!?」
部屋の一角に円柱状の光が昇ると、その光の中を踊るように布が現れ、糸が現れ、互いに交錯し、形を成していく。
これもデカグラマトンの持つ驚異的な技術力、その一端なのだが……幸いなことに今この場に彼女の正体を知る者は一人もいない。何やら最新鋭の3Dプリンターなり超高性能ミシンなりと都合の良いように各々解釈していってる様子だ。
「……できちゃった。凄いわね、最近のミシンって……」
「さて。着かたはおおよそ把握しています。まずは___」
「あぁ待って、私も補助するわ。後ろまで手が届かないでしょ?」
乙女二人、共同作業で大きな贅肉に布をかけていく。時に優しく、時に強引に、肉を包み、押し、かき分け、どんどん素肌が隠されていく。そして。 - 142二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:51:42
「……これで、完成よ」
「おぉ……!」
「ふむ……着け心地は良いですね。可動域もしっかりと確保されています。少々息苦しいのは難点ですが」
数分後。心機一転、新たな装いを身にまとったマルクトがそこにはいた。
元の素肌の色を活かすべく白をベースとして黒を掛け合わせた色合い。脂肪が抑え込まれないように、つまりは肉の逃げ場を作るべくあちこちに備え付けられらX字型の意匠はレナの好みとするものであったが、しかしその使命をしっかりと果たして脂肪の中に沈んでいる。
布で覆った部位はやや余裕をもたせて息苦しさを覚えさせない作りを目指している。尤も、構造上の問題からか場所によってはぴっちりと張り付いてシルエットを浮き彫りにさせており、技量の甘さが所々に残っているが。
総じて、学生が超オーバーサイズな体格に初挑戦して作ったものとしては充分に合格点を与えられる出来であった。
マルクトは感心したように手足を動かし、可動域を確かめている。
一方で、制作者のレナのほうはというと……なにやら少し頬を紅潮させ、落ちつかない様子であった。
「……あの。その、マルクトさん。これは完全に私のわがままなんだけど……もう一着、デザイン起こしていい?頼み込んでおいて図々しいのは百も承知なんだけど……」
「……わかります。技術を持つ者としての矜持が妥協を許してくれないのでしょう?どうぞ心ゆくまで試行を重ねてください」
「あ、ありがとうございます……でも、ちょっとこれからの作業は人前でやるのは恥ずかしいから……体型の写真を撮ったら___」
「奥の部屋使うか?」
「あ……ありがとう、ございます……」
彼の提案におずおずと頭を下げ、指差された扉のほうへと吸い込まれていく。それを見送った後、残された家主らが一言。
「……あれ、えっちなヤツだよな」
「はい。えっちなヤツですね」 - 143二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:54:01
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「はぁ、はぁ……!」
吐息を荒げ、スケッチブックに無数の線を書きこむ。
風邪ではない。疲労でもない。彼女の息を乱すもの、それは己の内から迸る性欲であった。
マルクトが自分の描いた衣服を身にまとおうという時。それを補助し、肉を掴んで掻き分け、持ち上げていく中で、彼女は自身の中に何か妙なざわめきを覚えた。それが性的興奮であることを理解したのは、いざすべての留め具をはめて着衣が完了したマルクトを正面から目の当たりにしたときだった。
外圧により変形する肉、内圧により押し拡げられる生地。X字の意匠に押し絞られ、ぶにゅんと分断されてはみ出る肉。
そこに彼女はエロスを見出した。
「はぁ、はぁ……ぅっ、……!」
こんなの異常性癖だ。一般にワイルドハントで表現されるものとは違う。こんなのが学園に受け入れられ、評価される訳がない。
___そんなの、わかってる!でも感じちゃったのよ!自分の性欲を、その身に宿るえっちを!もう歪んじゃったのよ、性癖が!ならば突っ走るしかないじゃない!
「ふ、ぐぅ……!っ~~~、はぁ、はぁ……!」
己のリビドーを目の前のスケッチブックに叩きつけるたび、自身の追求する性欲の形が明瞭となっていき、それがさらに自身の性癖を刺激して激しい熱を産む。これがあの白い巨体の身体を覆った様を想像するだけで股がじくじくと疼き、甘く病的な快感を脳へと届ける。
先程から何度も利き手でない暇な手を股へと伸ばし、擦り、押し、快感を享受してさらに熱を溜め込んでペンを走らせている。この女、オナ二ーをしながらデザインしているのである。
「……っ!?はっ、やばっ、はっ、はっ、はっ!~~~~~っ、ぐぅ~~~~……!!」
だが、達しはしない。寸でのところでなんとか踏みとどまる。今ここでその一線を越えるとまず間違いなく声を抑えられないだろうし粗相も免れないという確信があった。それ以上に、せっかくこんな破裂寸前にまで溜め込んだ熱が霧散してしまいそうな気がして、達するに達せず、また上がってきた快感をなんとか押し留めてペンを走らせる。
狂気的な熱意と性欲の坩堝が、部屋の中に広がっていた。 - 144二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:57:03
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「で、きま、した……」
「……わかりました。起こしてきます」
明らかに様子のおかしいレナを前にして、マルクトは詮索することなくデザインを受け取る。
正直なところ、まぁこうなるだろうなという予想はあった。部屋の外にも喘ぎ声が若干漏れてたし。
では何故そんな彼女の性癖の結晶とも呼べるそれを理解し滞りなく受け入れることができるのか。家主がとっくにその癖の人間だからである。なんならさっきからその彼が興味深げにガン見してきているし、それを心地よく思う心もマルクトにはあった。
「ふむ、今回は私一人でも着脱できるように工夫が凝らされていますね。着心地もよし、包み込んで離さず、しかし支えてくれるこの感触……素晴らしいです」
「……!!」
着替えが終わり、素直な所感を漏らすマルクト。一方でレナは、ただ目の前の光景に言葉を失っていた。
なんと、美しいんだろうか。
ボディラインを一切隠すことなく、彼女本来の極太のシルエットをそのまま残す。脂肪全体が重力によって垂れ、その蓄えられた重量感を演出しているが、しかして末端がだらしなく垂れさがるのは生地で抑え、贅肉全体を支えて弾力をもってでっぷりと膨らんだ丸い体型を維持している。X字型の意匠は胸元やみぞおち、ふくらはぎや二の腕に点在してぶにりと脂肪に沈んで柔らかさを主張する。胸元は二分割された生地が左右から両房を挟みこみ、X字で互いの生地を結んでいる。これ以上胸が膨張したら乳首がはみ出そうなところだが、そこは調整可能にしておいてある。そして何より目を惹くのは大きく露出し存在感を放つ巨腹である。ヘソも脂肪も覆い隠すことなく、堂々と誇るようにそこに存在するそれはこれまでの彼女の摂取カロリー、ひいては膨大な食事量を克明に物語る。
衣斐レナ、彼女の歪められた性欲が求めた果てがそこにはあった。
「?どうしましたか?なにか気になる箇所でも……」
「ぁっ、やめ、触れちゃ、抑えられ……」
はー、はー、と彼女の息遣いがどんどん荒くなる。目の前の作品が放つエロスの波動にやられ、熱が胸から股へと広がり、溜まっていく。疼いて疼いて仕方がない。 - 145二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 21:59:37
「……激しい動悸、呼吸。顔の紅潮。足腰の震え。強い性的興奮の症状ですね」
「せっ……!?いや、違います、そんなん、じゃ……!」
自身の現状を見抜かれて、思わず後ずさるレナ。それを認めてしまえば自分は恩を感じた相手に性的な衣装を作って着させ、興奮する最底辺の変態である。はずなのに。
「いえ、いいんです。……辛いでしょう?苦しいでしょう?我慢、しなくていいのですよ」
「あ、あ____!」
肯定されてしまえば、逃げる理由もなくなってしまうではないか。マルクトが優しく抱き上げると、その肉が、元よりこのシチュも織り込んで開けておいた前側から溢れ出た肉がレナの身を包む。我慢できない。疼きが最高潮に達し、熱が破裂する。
「あぁあーーーーーっ!!っぐ、イぐ、イッぐ、いっ……~~~~~~~~!!」
マルクトが彼女の下着を降ろして直接秘部を刺激しようとしたタイミングだったからだろうか。プシッ、ブシュッ、と勢いよく体液が迸り、しかして受け止める布もなく、床を音を立てて濡らす。
「っはぁ、はぁ、はぁ……ああっ!?やめ、マルクトさん、私今イッたばっかで、ぅぐ、あ、またイく……~~~~~~っ!?」
「ほら、まだ溜まっているのではないのですか?こういうのは残さずしっかり発散させるものです」
ぐったりと脱力したレナであったが、しかしマルクトが彼女を抱きしめ、胸と腹で圧迫すると、肉の中から悲鳴が聞こえてまた液体が下へと垂れて零れる。
「ほっ、ほっ、やめっ、マルクトさん、駄目、わたし、おかしく、なる、っ~~~~~~~~!!」
そのまま壁に押し付けられ、さらに圧迫。彼女の性欲が、熱が溜まり、膨れ、しかして吐き出した先からさらに熱を籠められて性欲が膨れ上がる。まるで熱を注がれては吐き出してを繰り返すポンプと化したかのようであり、意識が途切れるその寸前までこの作業は続いた。
「あー……マルクト。もしかしてなんだが、その。彼女、止め所がわからないんじゃないか?こういうの不慣れっぽそうだったし」
「……?…………!!?わぁあ本当ですなんだかとっても大変なことに!!?」 - 146二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 22:03:40
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「はい、水」
「ん……ありがと……」
ソファに深く腰掛け、ぼうっとする頭で水を受け取るレナ。あの性戯から時間が経って意識がだいぶ戻ったとはいえ、未だ本調子ではなさそうだ。
「……その、ごめん。本当に」
「……いいってもんよ。俺もお前の恥ずかしいところ目撃しちゃっただろうし、これでおあいこ様だ」
「でも私の……アレなんて見苦しいだけだったでしょうに」
「いや、結構眼福だったぞ?」
「変態……」
流れるような罵倒。きっと普段の彼女ならばシャーーーーッと猫の如く威嚇し非難の二つ三つ投げかけていたところだろうが、意識が朦朧としているからかあるいは自分も負い目を感じているからなのか、語気は随分と弱弱しい。
と、ひとつ思い付いたように。
「……ねぇ。これは本当にわがままなんだけど、さ。私を……太らせてくれない?あの服が似合うくらいにさ」
「本当にわがままなお願いだな、うちじゃなかったら……俺にかかればお安い御用よ。数日でぶっくぶくにしてやる」
「変な所でえらい自信ね。やっぱり変態じゃないの。……でも」
とても華の女子高校とは思えない提案。だがしかし、今回の一件により彼女は性欲の果てに一つの目的地を見出していた。多少恥じらいはあれど、迷いはない。
「ありがとう。……お願い」 - 147二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 22:06:02
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ワイルドハント芸術学院、第4寮は404号室。どたどたと足音が響き、知り合いからの筋で情報を掴んだ魔女っ子帽子の少女が部屋へと飛び込む。
「レナちゃん!レナちゃんが帰って来ましたよ!」
「心配したよぉ。イヒヒ……」
「もしやこの部屋に嫌気がさして飛び出してしまったのかと気を揉んでいましたが……」
数日ぶりの帰還だ。ルームメイトである彼女らの安堵も大きく、そして反省も大きい。思えばここ最近は特に彼女に負担をかけていた気がする。
と、自分らとは違う足音が近づいてくる。おそらくは話題の渦中の主たる衣斐レナその人だろう。さっそく入口付近に集まって友人の帰還を心待ちにする。ただ一人、足音に異常性を覚えた板垣カノエを除いて。
「レナちゃん!おかえりなさ、い……!?」
「ん、ただいま~」
その恰好を見て、皆絶句する。
びっくりするほど太っていたのだ。いや、太っているだけではない。まるで自身の体脂肪を誇るかのような衣服に身を包んでいるではないか。
腹は突き出てその横幅たるや標準体型3人分、胸は零れ落ちんとばかりに膨れて首元どころか顎先まで隠すほど、手足は交差した紐からはみでてぷるんと揺れ、本来彼女が好むはずのダボついた意匠がその余地を残すこともできずぱっつぱつに浮き出たそのシルエットは一目見てデブのそれと判別が付く。彼女のイメージカラーである黄と茶色の生地でまとめたそれは……なんとだらしない、恰好のはず、なのに……。
「……ごくり」
誰かが唾を呑んだ。いや、もしかしたら自分かもしれない。そう思えるほどに、目の前の変わり果てた友人は魅力的だった。
その日、ワイルドハントに鬼才と化した生徒が帰還した。彼女は芸術品にまで昇華させた自らの肉体を隠す事無く晒して学院中を練り歩き、道行く人々に啓蒙してまわった。
___かの学び舎の平均体重が爆増したのは、それからすぐのことであった。 - 148二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 22:12:55
はい、私だ。
いやホント済まない。今回ちょっと生々しめの性的描写を入れてしまった。スレ主は女性と付き合ったことがないから実際の生理反応と異なる場合があるかもしれんが勘弁してくれると助かるということで、ね。
そしてレナちゃんによる価値観粉砕RTA、これにて完走だよ。換装した乾燥だが、うん、ワイルドハント箱推しの方には悪いことをしたという自覚があるね。すまんかった。あの衣装のX字を見た時ふと「これ太らせたらえっちになるんじゃないか__?」って思ってね、書かずにはいられなかった。
レナちゃんシナリオはあと1.5個くらい思いついてるのがあるからそちらも機会があれば書き起こしていくよ。今の私はモチベーションがあるからね。いややっぱ誰かが見てくれるって心強いね、性癖がタービンの如く大回転しまくってるよ。
それじゃあまたの機会に、ね。
- 149二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:15:38
レナちゃんの性癖完全に破壊されてるの良い…エリちゃん達もぶっくぶくになっちゃうんだろうなあ
それはそうと数日間で肥満体になるのはオカルトでは? - 150二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 07:25:35
- 151二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 16:56:03
新作助かる…
- 152二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 02:43:55
作者も作中も肉への熱量がすごい
- 153二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 12:04:31
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- 154二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 19:15:57
恐らく自分から太らせてと言ってきたのは初めてでは?
それはそれとしてワイルドハントが肉塊学園になりそうな予感が… - 155二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 01:50:12
相手から肥育を求めるって……えっちだよね!!
- 156二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 11:46:29
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- 157二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 21:12:59
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- 158二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 01:32:24
- 159二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 09:51:32
こういう変化に先生はどう思ってるんだろうね?
- 160二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 19:05:05
- 161二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 21:04:24
こっちの世界での動けなくなるレベルって逆にどんだけの肉塊なの…?
- 162二次元好きの匿名さん25/11/20(木) 06:34:46
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- 163二次元好きの匿名さん25/11/20(木) 16:01:58
建物よりでか…くなっても動けてるわ
スゴいね人体(画像略) - 164二次元好きの匿名さん25/11/20(木) 21:12:39
ぶっちゃけ先生の存在が一番ネックだったりするのだこのスレは
生徒のしたいことを応援する人ってのはわかってるし生徒がデブでいい!って自身で言っているならそれもまた青春と見守りに徹するだろうが、しかし人というものは得てして身内に対しては扱いが雑になりがちなものさ。甥がなんかすごい勢いで色んな子を太らせてるとなると鉄拳が飛んで来てもおかしくないと私は思うんだ
ここまでシャーレに関わる子に触れてきた手前、いつかは先生についても触れなければならないだろうがしかしこのままでは先生に触れた瞬間にこの物語が終わる、まさにデウスエクスマキナ的存在であるといえよう
まったく、ままならないものだね。ブルアカカテにありながらプレイヤーのアバターが実質出禁とは。なにか抜け道はないものか……
- 165二次元好きの匿名さん25/11/21(金) 06:54:19
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