本当に怖いのは(SS注意)

  • 1二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:19:23

    最近、虚しいような寂しいような悲しいような…そんな感覚に襲われることがある。
    それは決まって寮に戻ったときのことで、なにかこう、大切なものを失ってしまったような…そんな気がしてならないのだ。
    尤も、そんな正体不明の感情に足を引っ張られるほどキングは甘くない。一流のウマ娘はメンタルコントロールも一流なのよ!
    ……だからこそ、なのかもしれない。
    菊花賞で味わった苦しさ、そこから這い上がった時の清々しさ。苦難を乗り越えた先で手に入れたURA優勝の喜び。
    それらの気持ちを体感するほどに、寮に戻ったときの寂しさは大きくなっているような気がする。

    「この気持ちを分かち合いたい」

    誰に?
    友人たちだって、トレーナーとだって、十分に噛み締めて来たじゃない。この他に、いったい誰と…。

    「いったいあなたは誰なの?」

    月夜だけが照らす寮の部屋。倒れるようにベッドによこになり、『独り』の部屋に向かって声をかける。
    だけど返答なんてあるはずもなく、知らず知らずのうちに意識は闇の中へと落ちていった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:20:42

    ウララちゃん...

  • 3二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:21:02

    えっ、ちょっと…

  • 4二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:21:14

    何があったんだ…

  • 5二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:22:18

    幻覚…?

  • 6二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:27:08

    2人が出会わなかった世界線?

  • 7二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 15:29:29

    ウララちゃんが中央を無礼るなされてる世界線なのかもしれない

  • 822/04/30(土) 15:36:40

    「…ちゃん!キングちゃん!」

    誰かに呼ばれる声で意識が戻り、目蓋越しに光が刺しているのを感じる。
    遠くから聞こえる小鳥のさえずり。もう朝が来たのかしら?
    ゆっくりと目を開ける。
    一番に飛び込んできたのは、こちらの顔を覗き込んでいる可愛らしい少女の顔。
    少し困ったようにしていた彼女は、私が目を覚ましたのを知って少し安心したようである。

    (そんな大袈裟な…)

    ただ眠りから覚めただけなのに。
    …そういえば、ウララさんが先に起きることなんて珍しい。今日は雨でも降るのかしら?
    どうして今日に限って早起きできたのか。それを問いかけてみると、

    「なんだかね。キングちゃんの悲しそうな声が聞こえたの。だからビックリしたゃって…でもよかった!キングちゃん、寝てただけだもんね!ごめんね、起こしちゃって」

    時計に目を映してみると、まだ午前の五時。今日は土曜なので授業もないし、トレーニングもオフなのでもう少し余裕がある。

    「いいのよ。ふふ…それよりどう?たまには誰かを起こすことも悪くないでしょ?」

    申し訳なさそうにする彼女の頬に手を当てようとした時だ。
    フラッシュバック。体験していない記憶が流れ込むような感覚。
    …いや、少し違う。
    夢だ。さっきまで見ていた夢。
    どうして気が付かなかったのだろう。私の世界に、彼女がいないなんて。
    いえ、それより怖いのは…彼女がいなくても、夢の中の私の歩みには全く躊躇いもへんかもなかったこと。
    もちろん「黄金世代」なんて呼ばれ切磋琢磨できるライバルたちもいるし、苦楽を共にするトレーナーだっている。
    だけど…それだけじゃない。
    寝坊したり、勉強がへっぽこだったり、トレーナーからも中に他のところへヒラヒラといってしまう彼女だけど…でも、その純粋さに何度も救われてきた。
    それが、夢の中では一切なかったことが怖かった。私のなかで彼女を否定しているような気がして。

  • 922/04/30(土) 15:50:58

    「キングちゃん?」
    再びウララさんが顔を覗き込んでくる。
    「大丈夫?おめめがうるうるしてる…」
    自然な流れで、彼女は私の瞳から涙をぬぐう。それでも止めどなく粒は溢れてきて。
    気がつけば彼女の体を強引に抱き寄せていた。
    突然のことに、しかしウララさんは驚くでも拒絶するでもなく、私の背中に手を回して優しくぽんぽんと擦る。
    「だいじょうぶだよ」
    暖かな彼女の声に、やはり涙が溢れてくる。それはどこか儚げな雰囲気を孕んでいて、手を離せばすぐにでも消えてしまいそうで。
    「キングちゃんがだいじょうぶになるまで、ずっとこうしててあげる」
    そこからはもう、一流が聞いてあきれるほどに情けない大声。
    暫くして落ち着いてからも、結局はウララさんを話すことはできなくて、膝の上に座らせて後ろから抱き締めるようになっていた。
    「キングちゃんはあったかいねぇ」
    「…あなたもよ」
    「そっかぁ」
    桜色の髪が愉快そうに揺れる。
    「ねぇ…」
    「うん?」
    「……ウララさんは、いなくならないわよね?」
    その言葉を発したとき、ウララさんはこっちを向いてにこりと笑い、
    「いなくならないよ。ずっとキングちゃんと一緒だもん」
    その言葉が。笑顔が。今まで見ないほどに眩しくて、頼もしくて。
    「…そうね…」
    それだけを返すので精一杯だった。

  • 1022/04/30(土) 15:53:10

    終わりです
    ノスタルジックトレインってゲームプレイしてたら思い付いて、殴り書かずにはいられなかった…。

  • 11二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 16:37:43

    キングがウララの支えになってるのと同時にウララもキングの支えになってるんだよな.......てえてえ

  • 12二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 16:38:49

    ドキドキした…
    よかった…ずっと一緒にいてくれえええ

  • 13二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 16:56:59

    語彙力なくて申し訳ないけど凄い好き

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