【ホラー注意】俺たちはまた、知らない場所に迷い込む③

  • 1スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 20:52:31

    閑古鳥は鳴くのをやめた
    月は雲間から校舎を照らしている

    真夜中の小学校は昼間の喧騒が一切なくて
    シンと静まり返っていた

    窓の向こうで何かが笑ってる

    ただ、それでも、前に進まなきゃいけないから

    *作品:ブルーロック
    *登場人物:潔世一、黒名蘭世、士道龍聖、糸師冴

  • 2スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 20:53:45

    このスレは、ブルーロックの登場人物による探索型戦闘ホラーSSです

    舞台は異界化した“小学校”
    気がついた時には、彼らは学校の目の前に立っていました

    ※プレイヤーの選択(安価)や運命(ダイス)によって、ストーリーの進行・視点・結末が大きく変化します
    ※選択肢次第で“ロスト”“発狂”“絆”に分岐します
    ※精神的苦痛(SAN値)管理あり
    ※肉体的苦痛(怪我値)管理あり
    ※取り返しのつかない選択も……あるかもしれません

    *SAN値:0(発狂)/1~5(精神異常中)/6~10(精神異常小)
    *怪我値:0(ロスト)/5~35(重傷)/40~70(中傷)/75~95(軽傷)

  • 3スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 20:57:23

    ■過去のSS

    【スレ主SS作品まとめ】 | Writening【ホラー注意】遊園地に行くだけのはずだった https://bbs.animanch.com/board/4879089/ 【ホラー注意】時計の針が進むたびに、俺たちは壊れていく https://bbs.animanch.com/board/4884703/ 【ホラー注意…writening.net

    ■固有能力、アイテム(過去作品引き継ぎ)

    ※Part③よりスレ主の判断で使用

    【固有能力・アイテム(本作で使用可能)】 | Writening【固有能力】 ・潔世一 【直感の導き・改】戦闘や探索時、“自分と味方2名”の行動結果を成功に変換できる ・糸師冴 【断罪の策略】敵の攻撃を1回無効化できる。 【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値…writening.net

    ■Part①、②

    【ホラー注意】俺たちはまた、知らない場所に迷い込む|あにまん掲示板閑古鳥が鳴いている月は雲に隠れている真夜中の小学校は昼間の喧騒が一切なくてシンと静まり返っている窓に何かが映ったただ、それでも、逃げることは出来ないから*作品:ブルーロック*登場人物:潔世一、黒名蘭世…bbs.animanch.com
    【ホラー注意】俺たちはまた、知らない場所に迷い込む②|あにまん掲示板閑古鳥が微かに鳴いている月は雲間から少しだけ姿を見せた真夜中の小学校は昼間の喧騒が一切なくてシンと静まり返っている窓の向こうで何かが通り過ぎたただ、それでも、逃げるつもりはないから*作品:ブルーロック…bbs.animanch.com
  • 4スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:02:04

    ■キャラヘイトを目的とするものではありません
    ■キャラsage、腐発言、アンチコメはお控えください
    ■荒らしはスルーします
    ■基本的にとてもゆっくり進行しますのでご容赦ください
    ■感想、質問、イラスト等頂けるとスレ主が大変喜びます
    ■広域ホスト規制に巻き込まれがちです。保守して頂けると幸いです

  • 5スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:05:29

    【登場人物紹介】

    潔 世一(いさぎ よいち)
    初期SAN値:18→14/初期怪我値:100→80(軽傷)

    熱意と直感で動くエゴイスト。感情に振り回されがちだが、仲間のことは決して見捨てない。少しずつ適応してきたため、よく喋り、時にはツッコむ余裕も見せる。痛む身体に鞭を打って、前だけを見据えて進んでいく。

    「13:00遊園地/廃病院ホラー」クリア経験者。
    「廃病院IF」にも登場。
    精神に“ある記憶”が刻まれている。

    ■固有能力
    【空間の支配者】戦闘時、状況を冷静に見極め、自分と味方全員の回避行動を自動成功に変換する(1回限り)。
    【的確な励まし】中傷時、励ましにより味方の異常状態を無効化する(味方2名まで有効)。

    ■所持アイテム
    《ちぎれたかみ》《校長の手紙》

  • 6スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:12:44

    黒名 蘭世(くろな らんぜ)
    初期SAN値:15→13/初期怪我値:100→90(軽傷)

    淡々とした口調でも、その言葉には確固たる意思が宿る。死ぬほど怖いけど、全員無事で帰るためになんとか頑張る健気な最年少。そろそろ安心できる場所で休憩したい。

    ■固有能力
    【ポカリの写真】大好きなポカリの写真を見せることで、自分と味方全員のSAN値をランダムで回復できる(1回限り)。
    【惑星の逆行】“見かけの動き”により敵を混乱させ、攻撃失敗者全員のダイスを振り直すことができる(1回限り)。

    ■所持アイテム
    《からふるなねりけし》×1:SAN値+1回復
    《ぴりぴりするきずぐすり》×1:怪我値+10回復
    《あたたかいこーんすーぷ》

  • 7スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:16:00

    士道 龍聖(しどう りゅうせい)
    初期SAN値:20→16/初期怪我値:100→90(軽傷)

    爆発をこよなく愛するロマンチスト。暴走しがちだが、今回はストッパーがいるため集団行動がギリ成立する。怖さより、自分の予想を裏切る“爆発”があるかが重要。結局のところ“なんとかなるだろ”で突き進む自由人。

    ■固有能力
    【怪我の功名】中傷・重傷時、行動制限等異常状態が付与されない。成功率と引き換えにクリティカル率が大幅に上昇するが、1探索・1戦闘ごとに、怪我値が-5減る(怪我値に応じて常時発動)。
    【悪魔の囁き】戦闘時、挑発により敵の攻撃が全て自分に集中する。よって、味方の回避行動が全て自動成功になる(1回戦闘限り)。

    ■所持アイテム
    《れもんあじのあめだま》×1:SAN値+1回復
    《つめたいたんさんすい》×1:SAN値+2回復
    《せいけつなほうたい》×1:怪我値+10回復
    《ちょっとかわいたまんじゅう》×1:SAN値+1/怪我値+5回復
    《いしょ》《かなしそうなめだま》

  • 8二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 21:18:09

    待ってました
    続き楽しみ

  • 9スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:26:07

    糸師 冴(いとし さえ)
    初期SAN値:24→18/初期怪我値:100→80(軽傷)

    冷静かつ天然、日本の至宝と呼ばれる実力者。何事にも動じない冷静さがあるが、正直子供が苦しんだりしている様子を見るのは辛い。湿った空気で肌がベタつくのが不愉快、風呂に入りたいがそんなものはないと知ってるので黙ってる。

    「13:00遊園地ホラー」「廃病院IF」クリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。
    精神に“ある記憶”が刻まれている。

    ■固有能力
    【最適の判断】アイテム使用時、アイテムの効果をランダムで上昇させる(自分と味方全員に1回限り)。
    【冷酷な吹雪】戦闘時、敵の行動を止めることが出来る。その後、敵の攻撃成功率が大幅に減少する(行動停止・成功率減少は2ターンまで有効・1ターンずつ戦闘で分けることも可能)。

    ■所持アイテム
    《かいじゅうのおもちゃ》×1:次回クリティカル発生時に再度効果を発揮する【召喚アイテム】
    《やぶれたたいそうぎ》《職員のメモ》

  • 10スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:27:14

    >>8

    ありがとうございます!思ってたより体調不良が長引き遅くなりました…!続きも気合い入れて書いていきます!

  • 11二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 21:48:18

    このレスは削除されています

  • 12スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 21:49:33

    【黒名蘭世:SAN値13→14(+1)】

    黒名「………使ってみるか」

    黒名はポケットを探り、指先で柔らかいものを掴んだ。
    取り出したのは小さな練り消し。青、ピンク、黄緑―――まるで子供の遊び道具のように、無邪気でやけに明るい色をしている。

    潔「それ、俺がさっき使ったくしゃくしゃの湿布くらい役に立たなそうだよな」

    黒名「ああ、けど多分なんとかなるだろ」

    そう呟きながら、黒名は練り消しを指で転がす。
    甘い香りがふわりと広がる。香料の人工的な匂いなのにどこか懐かしく、昔の放課後を思い出すような気がした。

    ぷに、と指が沈む。柔らかく、温もりを持った質感。その小さな触感に、張りつめていた心が少しだけ解ける。

    黒名「なんか……ちょっとだけ気持ちが落ち着いた気がする」

    潔「練り消しにそんな効果あるんだ……」

    黒名は小さく笑い、手のひらで転がしていた練り消しを見つめた。
    次の瞬間、それは淡い光の粒となり、指の隙間からふっと空中に消えていった。

    黒名「案外侮れないな」

    柔らかい声でそう呟くと、静かな廊下に微かに光が残る。

    冴「準備は整ったな。後はあっちが終わるのを待つだけだ」

    壁に背を預けたまま、冴が保健室の方へ目をやる。

  • 13スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 22:13:43

    潔「冴はアイテム使わなくていいのか?」

    冴「ああ、問題ない。ヤバくなった時のために温存する」

    三人はそれぞれの呼吸を整えながら、保健室の扉を見つめていた。
    中で何が起きているのか、誰も分からない。ただ、士道が戻ってくるその瞬間を―――静かに待っていた。

    ---

    【怪我値90→85(-5)※ファンブル影響】

    士道「―――ッいてえ!!!何なんだよクソが!!!」

    床に叩きつけられた身体を起こし、士道は静まった部屋の中で叫ぶ。
    耳を澄ませば扉の向こう、廊下の奥から何かがかすかにぶつかる音がするだけだった。

    士道「………あー、さっきからテーマパークのアトラクションみたいだな、ここ」

    頭を掻きながら立ち上がり、周囲を見渡す。
    床一面に散らばった紙の束。湿気でくっついたカルテやプリントが靴の裏に張り付くたび、“ぺり”と鈍い音を立てた。

    士道「ま、しゃーねー。冴ちゃんの尻拭いしてやるよ」

    ため息混じりに呟き、足元の書類を拾い上げる。
    表紙の文字は掠れて読めないが、裏面には手書きの記録が並んでいた。

    『意識もうろう』
    『体重減少、食欲低下』
    『私にはどうすることもできない』

  • 14スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 22:32:34

    それはどれも曖昧で、結論の書かれていないまま終わっている。

    紙をめくる指先に、ざらりとした感触が残る。


    続いて取り上げた一枚には、生徒の健康管理票。

    体温・脈拍の数字はあるが、どの記名欄も消されており、代わりに黒いインクの線が幾重にも重ねられていた。まるで誰かの名前を意図的に塗り潰したように。


    士道「うわ、気味悪……こんなん保健室に置くなよ」


    さらに手を伸ばすと、ポスターの切れ端が出てくる。

    “バランスの取れたごはんを食べよう!”のスローガンが書かれたもの。

    笑顔の子供たちの一人の頬に、細い赤線が引かれている。紙の下層まで染みており、インクというより血のようにも見えた。


    士道「……これ、誰が描き足したんだ?」


    眉を顰め、プリントの山をさらに掻き分ける。床に膝をつき、視線を低くして確認していく。

    破れた書類の断片、判読できないメモ、薬品の使用記録。そして―――半ば燃えたように焦げた紙片。


    士道「おいおい、どんだけカオスなんだよここ」


    苦笑しつつ、指先で焦げ跡を弾く。

    その黒ずんだ部分に触れた瞬間、静かな空気の中でかすかに“擦れる音”がした。紙の奥、どこかで誰かが同じようにページをめくっているような、微かな音。


    士道「……アイツらじゃ、ねえよな」


    呟きながら、音の方向へ視線を動かす―――


    士道 dice1d100=39 (39)

    ※53以上の場合:探索成功

    ※52以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 15スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 22:58:18

    【SAN値16→15(-1)/怪我値85→80(-5)】
    ※再探索のため、失敗時でもアイテム入手可能

    視線を手元から逸らした瞬間、触れていた焦げ跡が一気に熱を帯びた。ジュッ、と肉が焼けるような音。
    それは赤く燃え上がる炎に変わり、士道の腕を包み込む。

    士道「ッいや、自然発火の類じゃねえだろこれ!!」

    反射的に腕を振るい、壁や床に擦りつけ、なんとか火種を振り払う。
    熱が消えたかと思えば、次は激しい痛み。袖口の布は黒く焦げ、家庭科室で受けた火傷の跡が赤く腫れ、水膨れになり始めていた。

    士道「……ま、腕ならいいわ。サッカーできるし」

    平然を装うように呟き、焦げた袖を乱暴に捲る。
    見慣れた自分の皮膚が、まるで煮られたみたいに破れていく。それでも、士道は笑っていた。

    士道「痛ぇけど……この程度じゃ俺は止まんねえ」

    再び床へ目を落とし、先程音がした方向へ視線をやる。
    散乱した紙の間に、ひっそりと光るもの―――小さな銀色の鍵が置かれていた。

    拾い上げる。
    冷たい金属の感触、そしてそこに刻まれている文字。

    “職員室”

    士道「これで次に進めるってわけだな」

    少し満足げに頷き、怪我した腕を躊躇なく伸ばして鍵を握りしめる。
    目的は、達成した。

  • 16スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/01(土) 23:34:53

    立ち上がり、扉の方へ一歩。


    ノブへ手が伸び―――

    その瞬間、背後でカサ………と何かが擦れる音。


    士道「なんだよ、しつけーな」


    振り返る。

    舌打ち混じりで、苛立ちを隠さず。


    それは、そこに“いた”。


    白衣を着た女。髪は肩にかかり、うなだれるように俯いている。

    まるでそこに、最初から立っていたかのように。


    士道「………誰だよ、お前」


    足を軽く開き、重心を落とし、戦う準備。

    冗談めいた態度も消えている。


    女は、ゆっくりと―――顔を上げた。


    目はなかった。眼球のあるはずの場所には、黒い“穴”が二つ。

    深い深い闇が、そこにあった。


    そして、その空洞が士道を真っ直ぐ見返していた。


    士道 dice1d100=75 (75)

    ※53以上の場合:影響なし

    ※52以下の場合:SAN値減少

  • 17二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:40:36

    目のない人きたね
    これってもしや…?

  • 18スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 08:27:00

    >>17

    はい、ちょっとずつ伏線を回収していってます!

  • 19スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 08:40:49

    士道は動じなかった。
    空洞のようなその“目”を、真正面から見返す。殺意も怒りもない、ただ喪失だけを抱えた影。

    気配を読めば、敵意は―――ない。
    静かに息を吐き、構えを解いた。少しだけ、目を細める。憐憫とも、諦めともつかない表情で。

    士道「アンタ……この“いしょ”を書いた本人だな」

    サッカーバッグを肩から下ろし、中から手紙を取り出す。涙の跡がにじんで、文字はところどころ読みにくくなっていた。

    それを女の前へ突き出す。
    白衣の裾が揺れ、女はゆっくりと腕を伸ばす。震える指先で紙を受け取り、胸の前に大事そうに抱いた。

    『……ごめんなさい』

    声にならない声。
    だが確かに聞こえた。頭の奥に、刺さるように。

    その響きを受け止め、少し視線を落とす。
    この人はずっとここで、取り返せなかった命の重みを抱えたまま、何度も、何度も謝り続けてきたんだ。

    士道「………まあ、仕方ねえだろ」

    女の顔は涙のように黒く曇り、揺れている。
    士道は淡々と、けれど優しく言った。

    士道「アンタが全部悪いわけじゃねえ。この学校がおかしかったんだ」

    その言葉に、女はかすかに肩を震わせた。
    けれど答えは返らない。罪悪感は形を持って残り続ける。

  • 20スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 09:00:00

    肩を竦め、いつも通りの軽い口調へ戻る。

    士道「だからって許したわけじゃねえけどな。………けどさ、別に目ん玉まで抉り抜くことはないんじゃねーの?」

    士道は再びサッカーバッグに手を伸ばす。
    手探りで取り出したそれ―――小さな、湿った重み。
    手のひらに転がる二つの目玉。乾きかけの涙の膜が光を鈍く返し、それでもまだ“誰かを見ている”ように潤んでいた。

    士道はしばらく黙って見つめ、指先でそっと転がす。

    士道「俺さ、後悔とかしたことねえし」

    ぽつりと言葉を落とす。

    士道「親しい奴らが死んだこともねえから―――アンタの気持ち、分かんないけど」

    それは言い訳でも慰めでもなく、ただ事実を言っただけの口調だった。
    そのまま、女の前に掌を差し出す。濁った眼球が、揺れる女の顔を映している。

    士道「もう、十分謝っただろ」

    言葉は軽い。
    けれど声の奥には、熱い芯がある。

    士道「死んだ後もずっと謝り続けてさ。虐められて死んだ子供も、餓死した子供も………誰もアンタを恨んでねえって」

    その瞬間、女の肩がピクリと震えた。
    掴んでいた白衣が小さく音を立てる。

    士道「アイツらは成仏したぜ?家族の元に笑って還っていったよ」

  • 21スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 16:49:19

    女の影が揺れる。中空の穴が、僅かに震えた。

    士道「だからもう、アンタもいいだろ?」

    指先がそっと目玉を押し出すように前へ。

    士道「天国があるのか知らねえけど、上はここよりずっとマシだと思うんだわ」

    ヘラッ、といつもの調子で笑う。
    その笑みは飄々としていて、だけど妙に優しい。

    女はその笑顔を見つめ、ただ―――立ち尽くしていた。

    やがて女は、口を開く。掠れるような、けれど確かに届く声。

    『………ありがとう、ございます。あの子たちを救ってくれて。私に、赦しをくれて』

    震える手で目玉を受け取り、そっと、失われた窪みに当てがう。

    指先が触れた瞬間、柔らかな光がじわりと手のひらを包み込んだ。その光が少しずつ顔へ広がり、黒い空洞だった場所にやさしい色が戻っていく。

    潤んだ瞳―――もう逃げず、揺らがず、まっすぐ士道を見つめていた。
    そして、深々と頭を下げる。

    士道「気にすんなって!俺たち、まだこの学校から出らんねえし、ついでに他の奴らも救ってくるわ」

    明るい声。眩しいほど真っ直ぐな笑顔。
    女はその光を受けるように、そっと目を細めた。

  • 22スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 17:17:38

    【《てづくりのなんこう》×3:怪我値+5回復】

    『……これ、良ければ使ってください』

    差し出されたのは小さな容器。白い軟膏が三等分され、丁寧に詰められている。

    『三回分、使用できます……。あなたたちが、無事でありますように』

    士道「お、サンキュな!ヤバくなったら使わせてもらうわ!」

    軽く手を振るみたいに明るい調子で、軟膏をサッカーバッグへと滑り込ませる。

    その瞬間―――風もないのに、白衣がふわりとなびいた。光が舞い、影がほどけ、女の姿はゆっくりと薄れて消えていく。

    ただ、そこにはほのかな温もりだけが残っていた。

    保健室には明かりが戻り、いつの間にか散乱していたプリントも、汚れていた薬品棚も、乱れていたベッドも―――すべて整えられていた。

    まるで誰かが“ここはもう大丈夫だ”と告げるように。

    士道「……なんかここ、休憩場所として使えそうじゃね?」

    ぽん、と膝を叩き、勢いよく立ち上がる。

    士道「マシな場所、ちゃんと残ってんじゃん!疲れたら戻ってくるか」

    鼻歌混じりに扉を押し開け、軽い足取りで廊下へ出る。

    廊下にはすでに明かりが灯っていた。光の下、壁にもたれる三人と士道の視線が交わる。

  • 23スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 17:34:13

    【保健室:1回だけ休憩が可能(SAN値/怪我値回復・アイテム入手イベント付き)】

    士道は片手を挙げ、いつもの調子で笑った。

    士道「待たせて悪ぃな、こっちは無事終わったぜ!」

    サッカーバッグをガサゴソ漁り、小さな軟膏を取り出してひらひらと掲げて見せる。

    黒名はほっとしたように息を吐き、口元を緩めた。

    黒名「……無事で何よりだ、士道」

    潔は肩を撫で下ろしながら、傷ついた足をさする。

    潔「傷薬?……マジで助かるわ」

    士道は胸を張り、親指で自分を指す。

    士道「だろ?この保健室、たぶん休憩場所として使えんぞ。出る頃にはピカピカだったしな!」

    冴は腕を組み、疑わしげに目を細める。

    冴「……そこで何してたんだ?」

    士道は悪びれもせず、軽い笑みを浮かべて肩をすくめた。

    士道「内緒♪……それよりさ、職員室の鍵も拾ったしさっさと次行こうぜ?」

    士道は横目で、二階へ続く階段を見遣る。

  • 24スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 20:23:03

    潔はゆっくりと立ち上がり、黒名は服を整え、冴は短く息を吐く。

    冴「……行くか。道のりはまだ長い」

    士道はポケットに手を突っ込みながら、ひょいと先頭へ踏み出す。その背中に続いて、三人も階段へ足をかけた。

    軋む音。薄闇が広がる二階へ―――
    息を揃え、覚悟を持って進んでいく。

    木の段差がみしりと軋み、暗さが濃くなるにつれて、空気の温度が微妙に変わっていく。

    踊り場に出た瞬間、鼻を突く焦げた匂い。
    壁紙は焼け爛れたように黒くすすけ、天井には茶色く煤がこびり付いていた。嫌な熱気が、薄闇の中にじっとりとこもっている。

    潔「……なんかここ、燃えた跡があるな」

    黒名はジャージの襟に口元を隠しながら、視線を左右へ。どこかで空気が裂けたような、張り詰めた気配が漂う。

    黒名「一階のトイレに似てるけど……匂いと空気が違う。重い」

    士道は割れた鏡をつま先で蹴り、片眉を上げた。

    士道「焦げ臭ぇな。誰か爆発でもさせたのか?」

    冴は踊り場の中央に立ち、腕を組んだまま観察する。

    冴「ふざけた小細工だな……行くぞ。さっさと終わらせる」

    一つ目は、踊り場の洗面台と割れた姿見。
    曇った鏡には複数の指痕がべっとりと付着している。排水溝は黒く詰まり、時折“ポコ…ポコ…”と泡が立ち上っていた。

  • 25スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/02(日) 20:30:11

    二つ目は、女子トイレ。

    和式が三つ並び、ドアの縁には黒い焦げ跡と、手形のような煤が重なり合って付いている。


    三つ目は、男子トイレ。

    小便器が二つ、和式が一つ。床には乾ききらない水溜まりが点々とし、焼け焦げた紙切れが便器に貼り付いている。


    潔がため息をつき、肩のサッカーバッグを持ち直す。


    潔「とりあえず、組み分けはあとで決めよう。探索に入る前に落ち着かないと」


    黒名は手をポケットに突っ込み、ぼそっと呟く。


    黒名「……今のうちに、深呼吸」


    焼け焦げた通路が静まり返る。聞こえるのは、滴る水音と、遠くの木材の軋む音だけ。


    ―――ここにも、影が潜んでいる。

    誰もが、そう思わずにはいられなかった。


    【探索ポイント:二階踊り場のトイレ】


    ① 洗面台と割れた姿見

    ② 女子トイレ

    ③ 男子トイレ


    >>26

    ※探索箇所・キャラを全員分選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※ここからスレ主の判断でアイテム等を使用しますが、事前に使用したいものがあれば教えてください

  • 26二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 21:47:46

    ① 士道
    ② 黒名と冴
    ③ 潔

  • 27二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 02:55:39

    ドキドキ

  • 28二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 12:09:27

    保守

  • 29スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 13:18:06

    >>26

    ご回答ありがとうございました!


    >>27

    二階からは探索どうなるんでしょうね…


    >>28

    保守ありがとうございます!バタバタしていたため大変助かりました!

  • 30スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 13:31:18

    【① 洗面台と割れた姿見:士道龍聖】

    士道「んじゃ、俺はこっち探すわ」

    軽い調子で言い残し、士道は踊り場の洗面台へと歩み寄る。足音が薄暗いタイルに吸い込まれ、空気がひやりと肌を撫でた。

    蛇口をひねる。
    ギ、ギ……と空回りするだけで、水は一滴も落ちない。

    士道「あ?節水モードってヤツか?」

    冗談めかした声が、焼け焦げた天井に虚ろに響く。ぶら下がった黄ばんだ固形石鹸が、かすかに軋みながら揺れた。まるで誰かがさっきまで触れていたみたいに。

    排水溝は黒く変色し、内部は見えない。
    士道が腰をかがめ、覗き込みながら眉をしかめる。

    ポコ……ポコポコ……

    空気が弾ける音とともに、濁った黒い水面が泡を孕む。次第に、酸っぱく、腐ったような臭いがせり上がってくる。

    士道「うわ……くっさ。残飯でも詰まってんのかよ」

    右手で鼻を仰ぎながらも、排水トラップにそっと指先を伸ばす。軽く押すと、ぶよりとした柔らかさ。金属ではない。配管でもない。

    まるで―――腐った肉を押し返しているような感触。

    士道「キモいんだけど、マジで」

    即座に手を引っ込め、ジャージで指先を拭う。だが黒い液が指の節に薄くまとわり、なかなか取れない。

  • 31スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 13:48:51

    士道は舌打ちをして踵を返す。


    士道「チッ、ゴミしかねぇな」


    蛇口、揺れる固形石鹸、黄ばんだ洗面台、そして排水溝。どれもこれも、触ったところで得られるものなど何もない。あるのは、ひっそりと腐った何かの匂いと、古びた水道設備の嫌な湿気だけ。


    士道「詰まり直せとか言われても知らねーし」


    軽口を吐きながらも、士道の眉間にはわずかに皺が寄る。この空間の嫌な静けさは、ただの学校のそれとは違っていた。


    次に視線を向けたのは―――割れた姿見。

    ヒビが走った鏡面は、曇りが抜けず、映る自分の顔は輪郭すらろくに定まっていない。ぼやけた士道の姿が、何かの影と混ざり合うようにゆらりと揺れる。


    鏡の表面には、じっとりとした指紋がいくつもいくつも貼りついていた。まるで鏡の中から誰かが触れ続けたような、内側から這いずる手の跡―――気味の悪さが肌を撫でていく。


    士道「掃除、サボんなよな」


    皮肉めいた声を落とし、冗談めかした笑みなのに、瞳の奥には緊張が滲む。

    この鏡はただの鏡じゃない。誰かの気配が、確かにそこにいる。


    士道はゆっくりと手を上げ、曇りかけた表面へ、そっと指先を伸ばしていく―――


    士道 dice1d100=92 (92)

    ※55以上の場合:探索成功

    ※54以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 32スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 14:25:18

    【探索成功】

    鏡に手が触れた瞬間、表面が水面のように波打ち、向こう側の“自分”が揺らいだ。士道の指先を追いかけるように、鏡の中の士道が手を伸ばす。そして―――ゆっくりと口が開いた。

    声はない。けれど何かを伝えようと必死に言葉を探しているように、唇が震えていた。

    次の瞬間、内側から添えられたもう片方の手が、鏡を押し開くように浮かび上がる。

    カランッ

    硬い音を立てて、鏡の境界を割って落ちてきたのは―――小さなナイフ。刃は鈍く光り、柄には黒い染みがこびりついている。

    士道はひょいとそれを拾い上げ、ニイっと口角を上げる。

    士道「……やるじゃん、鏡の中の俺」

    その言葉に応えるように、鏡の中の士道は困ったように、だけどどこか誇らしげに笑って―――ふっと、煙のように消えた。

    今、姿見には何も写っていない。
    士道自身も、踊り場の陰影も、まるでそこが“鏡”であることをやめたかのように。

    だが、士道は満足げに息を吐く。

    士道「サプライズってやつ?俺、そういうの好きだぜ」

    その背後で、視界の端―――鏡面の奥が、今だけ光の粒を瞬かせた。

    【《よごれたないふ》×1:効果は不明だがどこかで必ず役に立つ】

  • 33スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 14:49:59

    【② 女子トイレ:黒名蘭世&糸師冴】

    冴「……行くか」

    低く呟き、靴裏を鳴らして女子トイレの前に立つ。

    黒名「ああ、早く終わらせる」

    迷いのない返答。二人は扉を押し開け、中へ踏み込む。

    中は一階と変わらぬ造り。個室が三つ、壁際に古びた掃除用具入れ。

    ただ―――空気だけが違った。焦げた匂いが鼻腔を刺し、湿った床が靴底に重くまとわりつく。奥の暗がりが、じっとこちらを見てくるような不快な圧があった。

    冴「俺は掃除用具入れと個室を一つ確認する。お前は残り二つだ」

    黒名「分かった」

    短い言葉を交わし、それだけで十分に役割は共有される。

    冴は掃除用具入れの前にしゃがみ込む。
    金具が焼け、歪んだ扉をゆっくり開くと、中には黒く炭化したモップやほうき、溶けかけのプラスチックのバケツ。底には灰が薄く溜まり、触れると指先でざらりと崩れた。

    冴「……ここには何もないな」

    焦げた匂いを一度吐き出し、扉をそっと閉じる。乾いた音が静寂に溶けた。

    黒名は個室の扉に手をかける。
    そこには黒く焦げた跡と、指の形をした煤がべっとりと付いていた。触れるのを避けるように、指先だけで静かに押し開ける。

  • 34スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 14:59:03

    中は狭く、貯水タンクと古びた和式便所が存在していた。床は焼け焦げたように黒ずみ、ところどころ炭が砕けるような音がする。鼻を刺す嫌な臭気―――腐敗とも、薬品燃焼ともつかない重い匂いが漂う。


    黒名「……ここはハズレ、ハズレ」


    淡々と呟き、そっと扉を閉じる。


    もう一つの個室へ足を運ぶ。

    隣では冴が何かを動かしている僅かな物音。それがかろうじて現実に繋ぎ止める手掛かりのようで、黒名は息を整えた。


    次の扉も同じように煤だらけ。慎重に開けると、同じく焦げ跡が付きまとい、床には黒い染み。和式便所の縁も壁も、火が舐めたように色を失っていた。


    便器の周囲、壁と床の隙間―――視線を這わせていく。

    音も、気配もない。

    焦りすぎず、けれど逃げない。


    黒名はそっと手を伸ばし、貯水タンクの蓋に触れる。冷たい陶器の感触。僅かに力を込めて、ゆっくりと持ち上げる。


    そして、その中を覗き込んだ―――


    黒名 dice1d100=33 (33)

    冴 dice1d100=4 (4)

    ※合計値85以上の場合:探索成功

    ※合計値84以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 35スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 20:38:10

    【糸師冴:《レゾナンス・ノード》使用により、ファンブルをクリティカルに変換→かいじゅうのおもちゃ再使用可能】
    【合計値85以上到達:探索成功】

    乾いた貯水タンクの底。そこには月光の欠片のような光が沈んでいた。

    黒名は息を潜め、そっと指先を伸ばす。冷たくて、小さい金属の感触。引き上げたその瞬間、刻印が目に入る。

    ―――“2年1組”

    黒名「……よし、いい感じだ」

    囁くように呟き、制服のポケットへ滑り込ませる。これで、確かに一歩前に進んだ。

    扉を押し開け、踊り場の方へと足を踏み出す。湿った空気と、焦げ跡の匂いが背中に張り付いてくる。だが、黒名の表情には微かな安堵が浮かんでいた。

    一方その頃、冴は最奥の個室で動きを止めていた。壁に背を預け、視線は床の黒い焦げ跡へ。
    異常は―――ない。そう判断し、扉に手をかけたその瞬間。

    ぐらり、と視界が歪む。

    冴(………なんだ、これ)

    膝が抜ける。壁に手をつく間もなく、視界が暗く沈む―――

    ……カチッ

    サッカーバッグの中から、小さなスイッチのような音。それと同時に、眩い光。冴の身体を優しく支えるように温かさが広がり、目眩がすっと引いていく。

    バッグを開ければ、円形の装置が淡く光を放っていた。それに応えるように、横で怪獣の玩具がちろりと光る。

  • 36スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 21:19:08

    冴「……お前が作動させたのか?」

    誰も答えない。ただ、怪獣の玩具が一度だけ光を跳ね返し、冴の表情を照らした。

    冴は息を整え、扉を開ける。そこには黒名が、眉を寄せてこちらを見ていた。

    黒名「大丈夫か?……トイレの中、光ってたぞ」

    冴「ああ、大丈夫だ。……どうやら俺はツイてるらしい」

    僅かに胸を張るその姿に、黒名はぽかんと首を傾げる。冴は口元だけで笑い、歩き出した。
    二人の足音が、静かな女子トイレから遠ざかっていく。

    ---

    【③ 男子トイレ:潔世一】

    潔「……俺もそろそろ行かないと」

    冴と黒名が女子トイレへ、士道が洗面台へと歩くのを見送り、潔は一人、男子トイレへと足を踏み入れた。

    空気が湿っている。足元には点々と水溜まりが広がり、靴底が床を踏むたびに、ぱしゃ、ぱしゃと嫌な音がこだまする。

    潔「……なんでこんなに濡れてるんだ?」

    入口側に据えられた掃除用具入れへ手を伸ばし、錆びついた取っ手をゆっくり引く。ギ……と重たい音。

    そして扉の向こうには―――まるでこの中だけに雨が降ったかのように、水が溜まっていた。モップや雑巾はずっしりと濡れて垂れ下がり、バケツには濁った水がたぷんと揺れている。

  • 37スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 21:46:09

    潔「どうなってるんだ……」


    ぼそりと呟き、扉をそっと閉じる。湿った空気を払いながら、慎重に奥の個室へ向かった。


    そこは―――焼け跡そのものだった。真っ黒に炭化した床。焦げて崩れ落ちた壁。和式便所の原型が辛うじて分かるほど、朽ちた黒い塊。


    潔「もし、学校で火災が発生したなら……出火元はここ……?」


    焦げた臭いに眉を寄せ、個室を一歩後ずさるように出る。そして視線は最後の箇所―――小便器へ。


    そこには、焼け焦げた紙切れが御札のように、べったりと貼られていた。不自然なほど黒く、端が僅かに燻んでいる紙。ただ、それが“何かを封じている”ように見えた。


    潔は喉を鳴らし、拳を握る。深く息を吸い、そして―――そっと紙に指先を伸ばした。


    潔 dice1d100=44 (44)

    ※55以上の場合:探索成功

    ※54以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 38スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 22:02:08

    【探索失敗:ハズレ】
    【SAN値14→13(-1)/怪我値80→75(-5)】

    焼け焦げた紙に指先が触れた瞬間、肩の傷口を内側から抉られるような痛みが走る。

    潔「ッ………!!」

    反射的に壁へ手をつく。呻き声が漏れ、膝が落ちた。肩を押さえる手が震え、呼吸が荒くなる。

    潔(何が起きた―――?)

    目の前はただの焦げ跡で、誰もいないはずなのに。

    皮膚の奥を焼き切られたような激痛。鈍く、深く、骨に触れるような痛みがじわじわ広がる。

    潔「……っ、ぐ……っ」

    眉間に皺を寄せ、歯を食いしばったまま耐える。
    そしてそのとき―――燃え尽きた個室の中から、焼け焦げた闇の中から、幼い声が囁くように響いた。

    『早く、たすけにきてね』

    バッと振り返る。だが個室はただ黒い跡だけを残し、静かに沈黙している。

    何もいない。
    何も聞こえない。
    けれど確かに、誰かがそこに“いた”。

  • 39スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 22:15:03

    潔「………助けるからさ」

    呟きは、苦笑とため息が混ざった。

    潔「怪我させんのやめてくれよ……」

    肩を押さえたまま立ち上がり、男子トイレの扉を押し開ける。

    湿った空気の残る空間を後にして、潔は三人の元へと戻った。

    黒名「……潔、大丈夫か!?」

    黒名は反射的に駆け寄り、肩を貸す。その手が背中を支えると、潔は息を乱しながらも頷いた。

    潔「大丈夫……よく分かんないけど、やられた」

    肩を押さえ、苦笑混じりに息を吐く。

    潔「あとこっちはハズレ。……何もなかったよ」

    冴「怪我損だな」

    短く吐き捨てるように言うが、視線はしっかり潔の状態を確認していた。

    士道「ま、しゃーねーって!生きて帰ってきただけマシだろ!」

    軽く鼻で笑いながら、士道はサッカーバッグを漁る。ズサッ、と何かを取り出し―――

    士道「ほい潔ちゃん、これ使っとけ。お前のサッカー面白いからさ、死なれると困るんだわ」

  • 40スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/03(月) 22:35:45

    【潔世一:《せいけつなほうたい》使用により、怪我値75→85(+10)】

    差し出されたのは、丁寧に包まれた茶色い紙包み。潔は目を見開き一瞬戸惑うが、すぐに素直に受け取った。

    潔「……ありがとう、助かる」

    黒名が手伝い、慎重に肩へ包帯を巻く。紙包みを解く黒名の指は、微かに震えていた。

    巻き付けられた包帯が、淡く光を放つ―――やがて傷口が締まり、熱も痛みも引いていく。

    潔「……うわ、ビックリするほど楽になった……」

    肩を回して確かめるように動かし、安堵の息を漏らした。
    士道は腕を組み、誇らしげに鼻で笑う。

    士道「だろ?俺ってば探索のセンスあるわ!」

    黒名はふっと笑い、冴は視線を逸らしつつも口元が僅かに緩む。

    冴「……これも持っとけ。あとで役に立つはずだ」

    そう言って冴は、サッカーバッグの中をごそりと探り、掌に収まるスカイグレーの小さな箱を取り出した。

    潔「これって………」

    冴「ああ。お前が一番分かってるだろ」

    淡々とした声。だがその指先は、丁寧に箱を扱っていた。

  • 41二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 02:42:15

    まだドキドキするよ

  • 42スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 07:24:38

    >>41

    アイテム等使いながら、なんとか脱出出来るように引き続き頑張っていきます!

  • 43スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 07:39:44

    【糸師冴→潔世一:スカイグレーの小さな箱(二子の支援により、一度だけ恐怖イベントを“無視”(SAN値/怪我値減少回避)して情報として記憶する)】

    蓋を開ければ、柔らかい光を宿した同色の宝石がひとつ、静かに眠る。その光は優しく―――まだあの時の“願い”を覚えているかのようだった。

    過去の記憶が胸を掠める。
    崩壊した廃病院。絶望の中で、ただ生きてほしいと願って作ったもの。救いに来てくれた彼らへ、かろうじて示した自分なりの“道しるべ”。

    潔はゆっくりと箱を受け取り、胸に押し当てる。そして、誰にも聞こえないほどの声で呟いた。

    潔「……頼んだぞ、二子」

    光が一度だけやわらかく瞬き、箱は大切にサッカーバッグへしまわれた。

    空気が静かに落ち着く中、士道がぱっと両手を叩き、話題を切り替える。

    士道「んじゃ、準備も整ったところで俺んとこの成果な」

    にやりと笑い、士道はサッカーバッグから小さなナイフを取り出す。それは鈍い銀色の刃先からじんわりと黒い光を漏らしていた。

    士道「鏡の中の俺がくれた」

    冴「……ついにイカれたのか?」

    士道「いやいやいや!マジだって!!」

    軽口を返しながらも、嬉しそうに指先でナイフをくるりと回す。

    士道「この学校、敵ばっかじゃねぇんだよ。……多分な?助けてほしいヤツらが、俺たちに力貸し始めてんだろ」

    ふっと息を吐いて、そのままナイフをサッカーバッグへ戻す。

  • 44スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 09:12:01

    黒名は少しだけ目を丸くし、潔は小さく頷いた。冴は呆れたように鼻を鳴らすが、誰もそれを否定しなかった。

    黒名「……最後に俺たちの成果だな」

    静かに言い、黒名はポケットへ手を差し込む。
    指先が金属の感触を掴み、ゆっくりと引き出されたのは、“2年1組”と掘られた小さな銀色の鍵だった。

    冴がちらりと視線を向け、潔も思わず前のめりになる。

    黒名「トイレの貯水タンクの中にあった。これでまた、先に進める」

    潔「……助かった……ほんと、二階もこの調子でなんとかできれば………」

    長く続いた緊張が、ほんの少しだけ緩んだように見えた。

    潔がふっと息を吐いた、その瞬間―――踊り場の照明が、まるで呼吸のように点滅し始める。一瞬闇が落ち、次に光が戻った。

    冴「この場所はもう、終わりだな」

    短く、確信を持った声音。
    そして士道は、堪えきれないように大きく伸びをし―――

    士道「次行こうぜ!まだ、やるべきことが沢山あんだろ?」

    軽口混じりの調子でそう言うと、躊躇なく階段へ足をかける。靴音が軽やかに響き、二階へと駆け上がっていく。

    潔「待てよ士道、突っ走るなって……!」

    慌てた声に、黒名がため息をつきながら肩を竦める。

  • 45スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 11:37:37

    黒名「でも……あれくらい勢いがある方が助かる時もある」

    冴「落ちる時は派手に落ちるタイプだけどな」

    そう言いつつも、口調はわずかに和らいでいた。

    三人は互いに目を交わし無言で頷くと、静かに、けれど確かな足取りで士道の背中を追う。

    昇り始める階段。その先に何が待つのかは、まだ誰にも分からない。

    ―――光が戻った踊り場を背に、四人は再び闇の中へと進んでいった。

    二階の東側廊下に着くと、また空気が変わる。
    階段を上った瞬間、四人の足が同時に止まった。

    そこに漂うのは――重く沈殿した、不吉な気配。壁紙は焼けただれ、天井には煤が広がり、それなのに、頬を撫でるのは氷のような風。

    焦げた臭いと、冷気。相反する感覚がぐしゃりと重なる異常空間。

    潔「気温がおかしくなってる……?」

    額に汗が滲むのに、肩が震える。サッカーバッグを握る手に力がこもる。

    黒名「寒いのに、暑い……」

    黒名の吐息が白く曇る。けれど、手の甲には火照ったような赤みが走っている。

    冴「……嫌な感じだな。ここが“中枢”なのか?」

    視線をゆっくりと前へ滑らせ、壁に取り付けられたプレートを確認する。

  • 46スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 12:54:10

    “職員室”―――その文字が、焦げの中で浮かぶように見えた。

    士道「原因確かめねえとな」

    軽口に聞こえるが、指先には迷いがない。ポケットから、小さな銀色の鍵を取り出し、鍵穴へと差し込む。

    ―――カチリ
    枷が外れる、小さな音。

    その瞬間、プレートがかすかに震えた。風などどこにもないのに、ガタガタと揺れる。
    四人は息を呑み、互いに一瞬視線を交わす。

    潔「……正念場だな」

    士道は笑みを浮かべたまま、扉へ手をかける。

    重く、鈍い空気が滲む。
    息を呑んだ四人は、扉の向こうに何が待つのかを確かめるため―――静かに、しかし確実に職員室へとその手を押し込んだ。

    職員室は、静寂に包まれていた。
    扉を閉めた途端、外の空気が断ち切られ、この部屋だけが異質な世界へ切り離されたかのようだった。

    目の前に広がるのは―――焼け落ちた風景。黒く炭化した机と椅子。焦げ崩れた紙屑が床を覆い、踏みしめるたびに“ザク”と灰が砕けた。

    だがそのすぐ隣―――そこはまるで別の世界だった。

    凍り付いた机。白く輝く氷柱。天井からは氷片が垂れ、机の表面には霜の花が静かに咲いている。
    月明かりが窓から差し込み、氷を銀色に光らせた。

  • 47スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 14:13:39

    士道「……夏と冬、良いとこ取りってヤツ?」


    冴「そんなぬりぃもんじゃねえだろ」


    吐く息は白く、しかし背中には汗が伝う。寒気が背骨を刺し、同時に喉が焼けるように渇く。体が、熱と冷気の板挟みにされるようだった。


    潔「四箇所に分かれて探そう。机と椅子、キャビネットと書類。……さっさと終わらせる」


    声を出した瞬間、空気が震えた気がした。この部屋は、息をするだけで体力を削られる。


    黒名「長居すると気絶しそうだ………」


    黒名は眉を寄せ、胸元を押さえ、呼吸のリズムを無理やり整えようとする。


    冴は顎をわずかに上げ、空間全体へ鋭い視線を投げる。士道は肩を回しながら、炎の跡と氷の境界線を面白そうに足でなぞった。


    潔は灰を踏みしめ、わずかに背筋を反らし―――四人は迷いを振り払うように散開する構えを取った。


    この部屋に潜む“何か”を暴き出すために。


    【探索ポイント:職員室】


    >>48

    ※探索順序を決めてください

    例:潔→黒名→士道→冴

    ※スレ主の判断でアイテム等を使用しますが、事前に使用したいものがあれば教えてください

  • 48二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 19:32:44

    潔→士道→黒名→冴

  • 49スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 20:33:28

    >>48

    ご指定の順番で探索を進めていきます!

  • 50スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 20:48:39

    【① 職員室:潔世一】

    潔は焼け焦げた机へ、一歩踏み出す。

    靴底が灰を踏み潰し、パラ……と崩れた炭が床に落ちる。黒く炭化した机と椅子はまるで影が固まったかのようで、その輪郭すら曖昧だった。

    指先で机の端に触れる。
    軽く触れただけで煤と灰が一気に崩れ落ち、かつて木だったものの断片が指先にまとわりつく。

    潔「目を凝らさないと、絶対見落とす……」

    袖で口元を覆いながら、机の上に積もった灰を手の甲で払い落とす。

    下から現れたのは焼け焦げた紙片―――完全に炭となっており、触れるだけで散った。

    床を靴で払うと、白と黒が混ざった灰がザザッと流れる。焦げたノートの破片、溶け固まったペン、割れたホチキス。どれも原型を失っていた。

    キャビネットに手を伸ばし、取っ手を握る。

    ―――バキッと音を立てて折れ、指先に黒い粉がまとわりつく。

    潔「……酷い有様だ」

    それでも視線を落とし、ひたすら灰を払う。

    机の隙間、椅子の影、床に散った金属片―――ひとつひとつ、確かめる。

  • 51スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 20:55:40

    暑さが皮膚を刺し、汗が背を伝い、息が重くなる。


    潔は少しだけ、息を止めた。

    焦がされるような熱を、ほんの一瞬でも遮るために。


    そして膝を折り、次の机へと身を寄せる。


    潔「……行ける。まだ、いける」


    指先の震えを力で抑え、机の下―――崩れた引き出しの奥へと手を伸ばす。陰に沈んだ黒の、さらに奥。


    ……かすかな違和感。


    潔はゆっくりと身体を伏せ、机の下へと視線を滑り込ませた。


    その瞬間、熱が一瞬だけ遠のいたような錯覚。


    そして、潔は机の奥底を覗き込んだ―――


    潔 dice1d100=56 (56)

    ※55以上の場合:探索成功

    ※54以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 52スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/04(火) 21:29:45

    【探索成功】

    一瞬、煤と灰で視界がボヤける。
    ふっと足元の空気が揺れ、まるで“正解だ”と囁くように、灰が潔の周りをくるくると舞い始めた。

    黒い粉塵が渦を描き、肌に触れた瞬間、ひやりと溶ける。

    潔「………ッ」

    目頭が熱くなり、思わず目をこする。霞む視界のまま、ゆっくりと机の下を覗き込んだ。

    そこに、“ぽつん”と。

    焼け焦げた世界の中でただひとつ、形を保ったまま横たわる木製のバットがあった。

    焼けていない。
    煤も付いていない。
    触れれば、しっかりとした感触と重みがある。

    けれど―――バットの先端には、べったりと黒ずんだ血が固まっていた。

    潔「……嫌な感じがする。けど、どこかで役に立つはずだ」

    喉が張り付く。
    熱気が肺を焼く。
    それでも、手を伸ばしてバットを掴んだ瞬間だけ、ほんの少し周囲の温度が下がった気がした。

    机の下で一度深く息を吸い、灰を払うように身体を引き抜いて立ち上がる。

    視線を巡らせれば、黒名は静かに机の中を整理し、士道は引き出しを蹴飛ばしながら何か探し、冴は冷気の溜まる机を淡々と調べていた。

  • 53二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 04:48:53

    これからどうなるのかと思うと胸がザワザワする

  • 54スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/05(水) 07:51:09

    >>53

    きっとなんとかなります!今回も救済イベント用意しておりますので!

  • 55スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/05(水) 09:36:26

    潔「みんな、無事でいてくれ」

    搾り出すように呟き、職員室の入口へと足を運ぶ。

    背中を壁に預け、血のついたバットを握り直す。その感触を確かめるように、潔はゆっくりと息を吐いた。

    ---

    【② 職員室:士道龍聖】

    士道「俺、寒いより暑い方がワクワクするからこっちな!」

    宣言と同時に、炭化した机へ挨拶代わりの蹴り。
    バギッ、と乾いた音と共に灰が舞い上がり、士道の顔面と肺を容赦なく直撃した。

    士道「ゴホッ、ゴホッ…!……んん、あー。灰って胸に入ると痛えんだな」

    胸を押さえてしかめっ面。それでもどこか楽しそうに、パタパタと空気を仰ぐ。

    燃え尽きた机、崩れた椅子、床に積もる黒い層。ここで何が起きたかなんて、想像する必要すらない。ただ“全部燃えた”という結果だけが残っている。

    士道「……お?ここ、何かあるっぽいな」

    ぼそりと呟き、炭化した机の側面に目を止める。
    引き出しの取っ手は溶けて落ち、灰になって消えていた。代わりに出来たわずかな隙間に指先を突っ込み、力を込める。

  • 56スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/05(水) 09:38:26

    士道「蹴ると中身ごとぶっ壊れそうなんだよなー……ったく」


    らしくない慎重さ。

    歯を食いしばり、熱を帯びた木片に指を食い込ませ、ゆっくり、じりじりと引き出しをこじ開けていく。


    ギィ……バキッ―――


    中がどうなっているか分からない。爆発するかもしれないし、ただ灰が詰まってるだけかもしれない。


    それでも士道は、期待と好奇心の入り混じった顔で引き出しの隙間をさらに広げた。


    ―――この先に、何かがある。


    そんな予感を胸に抱えながら。


    士道 dice1d100=23 (23)

    ※55以上の場合:探索成功

    ※54以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 57二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 16:55:53

    >>54

    期待してるよ

  • 58スレ主◆jCG/LXEbdA25/11/05(水) 22:00:18

    すみません、現在出張中で投稿が全然出来てません……できる時に投稿しますのでよろしくお願いします……!

  • 59二次元好きの匿名さん25/11/06(木) 03:36:42

    了解
    感想or保守しながら待ってるから無理はしないでね

スレッドは11/6 13:36頃に落ちます

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