- 1スレ主25/11/01(土) 22:57:18
学園生活部…それは雄英高校の設備を使って学校内で寝泊まりしよう、という部活。寮とはまた違った生活が楽しめる。
これは、そんな学園生活部の部員が活動を楽しみながら最高のヒーローを目指す物語だ。
↓前スレ
https://bbs.animanch.com/board/5781214/?res=196
パロディ元
『がっこうぐらし!』
がっこうぐらし!│漫画の殿堂・芳文社芳文社発行のがっこうぐらし!紹介ページ。houbunsha.co.jp※時系列は文化祭の準備期間中。
※原作のストーリーからは乖離した展開になるかもしれませんが、ネタバレ等は無しでお願いします。
※見切り発車スレです。今後の展開も何も決めていません。最悪ダイスで全部決めます。
※閲覧注意スレです。
- 2二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:03:33
この状況で集合写真は反則だって…
- 3スレ主25/11/01(土) 23:16:36
これまでのまとめ(まだ一章しか作ってませんが)
ゆうえいぐらし! 加筆修正ver. まとめ | Writening第一章 https://writening.net/page?hKaYRDwritening.net各々の救済措置ダイスは後回しにして、まずは寮に向かった教師をダイスで決めていきましょう。
何人教師は向かった?
dice1d3=1 (1)
- 4スレ主25/11/01(土) 23:18:22
- 5スレ主25/11/01(土) 23:19:22
- 6二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:21:12
- 7二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:23:43
13号先生
- 8二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:26:30
相澤先生
- 9スレ主25/11/01(土) 23:27:11
1.ミッドナイト
2.13号
3.相澤先生
dice1d3=1 (1)
- 10スレ主25/11/01(土) 23:33:14
…よし、救済措置ダイス(という名の生殺与奪ダイス)も今日中に振ってしまいましょう。
上鳴 dice1d2=2 (2)
瀬呂 dice1d2=2 (2)
常闇 dice1d2=1 (1)
轟 dice1d2=1 (1)
葉隠 dice1d2=1 (1)
鎌切 dice1d2=2 (2)
小森 dice1d2=2 (2)
庄田 dice1d2=2 (2)
角取 dice1d2=1 (1)
骨抜 dice1d2=1 (1)
ミッドナイト dice1d2=2 (2)
1.生還
2.……
今日は以上となります。
土曜日ということで一気に更新してしまいました…追って来てくださった方、ありがとうございます。お疲れ様でした!
- 11二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:39:40
(2がいる結果に)おっふ(吐血)
お疲れ様です。色々情緒乱されて大変だけどすんごく楽しませてもらってます - 12二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 07:51:04
推しが2だったことで激しく情緒が乱れておりますが、最後まで希望を捨てないように心を強く保とうと思います…
続きも楽しみに待っています…! - 13二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 16:11:38
中々の2の多さにそっと正座をする
- 14二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 19:10:00
ほしゅ。
- 15スレ主25/11/02(日) 20:07:35
えー、番外編2を始める前にお知らせを一つ二つ…三つ…
まず、2スレ目から『シークレットダイス』を導入します。
展開のスパイスとなる要素を決めるもので、スレではなく外部のサイトを使ってダイスを振ります。
ダイス結果はスレには載せません。
不正防止のため(不正を働く気は毛頭ありませんが)ダイス結果は証拠映像を録画しておいて完走後にスレに動画を載せることになるかもです。
あと3スレ目があれば最初の注意文から「今後の展開も何も決めていません。最悪ダイスで全部決めます。」の記載が消えるかもしれません。
…2つだけでしたね。では、番外編2スタートまでもうしばらくお待ちください。 - 16スレ主25/11/02(日) 20:28:10
- 17スレ主25/11/02(日) 21:26:13
-ハイツアライアンス 1-A 上鳴の部屋-
上鳴「んー…んん…んー????」
常闇「上鳴、どうした。」
上鳴「いやさぁ…指の動かし方がよくわかんなくて…ほらここ。」
常闇「ふむ…少し見せてみろ。」
雄英高校文化祭。1-Aはバンドとダンスを披露することになっていた。
まだまだ時間はあるとはいえ、普段から多忙を極めるヒーロー科。
余裕をかましていられる時間、だなんてものは無かった。
隙を作っては練習を詰め込む日々。バント隊として名乗り出た彼らもまた、例外ではなかった。
常闇「上鳴…お前はまず指の形からして違う。」
上鳴「えっっ、そこから!?」
常闇「そこからだ。弦に触れるのは指先だけ。そして弦の上から押さえるように弾くんだ。…こんな感じにな。」
上鳴「おー…」
ギター完全初心者である上鳴とは違い、一日の長がある常闇。二人で練習する時はもっぱら常闇が教える側に回っていた。
常闇「それと、指がフレットから離れすぎている。もう少し際を攻めろ。」
上鳴「ふれっと…ってなんだっけ?」
常闇「……弦の下に等間隔に付いている突起の事だ。」 - 18スレ主25/11/02(日) 21:45:31
-ハイツアライアンス 1-A 轟の部屋-
瀬呂「でさぁ、サビんとこの演出なんだけど…」
轟「あぁ、テープ射出と氷結を同時に繰り出すとこだな。」
瀬呂「そうそう。そこさ、中々テープの軌道がまとまんないって話だったじゃん。」
轟「あの広い空間でやるとばらけちまうんだよな。」
瀬呂「そこでなんだけどさ、峰田の個性使ったらどうって話になって。」
轟「…?峰田はダンス隊だろ。」
瀬呂「ふっふっふ…そこでだよ轟くん。…いっそのことダンス隊も演出に取り込まねぇ?」
メインは何もバンド隊、ダンス隊だけではない。
影の立役者、演出隊もまた熱量を持って準備に勤しんでいた。
轟「なるほど…いいかもな、それ。」
瀬呂「だろ?…ま、詳しいことは切島と口田が来てからだな。」
轟「そういやあの二人はどうしたんだ。」
瀬呂「さぁ?切島はどうせどっかで軽くトレーニングでもしてから来るんだろうけど…口田は…どうしたんだろうなぁ。」
いぐさの香りが漂う畳の上で瀬呂は大きく伸びをする。
そして、派手な演出に向いていそうなダンス隊の面々を思い浮かべて彼はにやりと笑った。
瀬呂「…結構いい出来になりそうじゃね?」 - 19スレ主25/11/02(日) 21:57:59
-ハイツアライアンス 1-A 共有スペース-
葉隠「もー!皆遅すぎ!何やってんだろ、もう!」
共有スペースのソファに腰をかけて、葉隠は見えない足をぷらぷらとさせていた。
ダンス隊の一員である彼女は今日もまたダンスの練習をするために一足先に寮へと帰っていた。
一番人数が多いのがダンス隊なので、毎回毎回全員で取り組むのではなく小さなグループに分かれて自主練を行っている状態だ。
そして葉隠含むダンス隊女子グループは今日、共有スペースでダンスの練習をするために集まろうと約束を交わしていたのだった。
葉隠「うーん……お茶子ちゃんは忘れ物取りに行くってさっき出てっちゃったでしょ?ヤオモモは先生になんか山のような書類押し付けられてたでしょー?……三奈ちゃんは…どうなんだろ、他のグループの方を見てて遅くなってるのかな。梅雨ちゃんは……分かんないなぁ。ヤオモモのお手伝いをしてたりするのかな。」
葉隠「……よし!ちょっとだけ振付の確認でもしてよっと。」
まだまだ皆が来るまでには時間がありそうだと判断した葉隠は携帯電話で芦戸がダンスの振付を踊っている動画を再生し、自らもその動きをまねていく。
葉隠「手先は…伸ばす!動きはちょっと大げさなくらいに!」
哀しいかな、彼女が実践しているアドバイスの7割ほどは彼女の個性の都合上観客からは全くと言っていいほど見えない。
しかし服だけでも楽しんで踊っているのだ、ということは十分に分かる。そんな踊りであった。 - 20スレ主25/11/02(日) 22:18:12
-外-
骨抜「そろそろ物間も息抜きくらいしてもいいだろうに。」
庄田「それが彼らしいと言えば彼らしいのだけれど。」
小森「でもそれで煮詰まっちゃ意味ないもんねー!」
角取「ですネー!」
鎌切「ま、俺たちには俺たちに出来ることをやってこうゼェ。」
彼らは少し前までB組の教室に残り、一人脚本の修正を進めていた物間に対して手伝いを申し出ていた。
しかし、『一人で集中して取り組みたいんだ。なにか、掴めそうな気がしていてね。』と言われてしまい、こうなったら梃子でも動かないだろうと判断した5人は一足先に寮へ帰ることにしていた。
庄田「そういえば、4人はなんで残っていたんだい。僕は側近役のことで少し調整したいことがあったからだけど…」
骨抜「演出面で擦り合わせがしたくてさ。」
鎌切「照明のタイミングとかな!」
角取「Dragonの演出についても、4人デ相談しまシタ!」
小森「物間一人だけに任せるわけにもいかないノコ!」
珍しい組み合わせであったが、共通の話題は尽きない。
寮までの道をゆっくりと歩きながら彼らは物間への小言からA組のバンドへの期待まで、様々な話に花を咲かせた。
そして、5人の前にB組の寮が見えて来た頃のことだ。
和気あいあいとした雰囲気の中にヒビを入れるような悲鳴が響き渡った。 - 21二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 06:51:55
このレスは削除されています
- 22二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 07:07:08
このレスは削除されています
- 23二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 13:13:39
保守
- 24二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 17:03:42
このレスは削除されています
- 25スレ主25/11/03(月) 17:38:13
スレ主です。ここから!って時に申し訳ないですが、ちょっと自我出します。
気が付くのが遅れたので内容は確認していないのですが、今日だけで3レスが削除されているようですね。
荒らしであったのであればご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。
なんらかの理由でご自身で削除されたのであれば上記の内容は全て無かったことにしてください…
すみません、ちょっと気になったもので…
ついでになんですけど、今更ではありますがスレ主はB組のエミュが苦手ですよーということと、原作と同程度かそれ未満のCP要素が今までも、これからも含まれますよーということをここに記載しておきます。 - 26二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 18:25:31
続き楽しみに待ってます!
ファンアートって描いてもいいですか? - 27二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 18:29:00
本人じゃないから分からないが保守のためにレスしてすぐ消す人がいるというのは聞いたことがある
スレ主はあんま気にせんでいいと思うぞ
楽しみに待ってるぜ - 28スレ主25/11/03(月) 18:30:19
- 29スレ主25/11/03(月) 18:31:34
- 30スレ主25/11/03(月) 18:41:43
(二次創作にしても三次創作にしても原作様へのリスペクトは大事ですからね…!)
すみません、脱線してしまいましたがここから番外編2、再開していきます。
大方の構想は出来てきたのでここからテンポ上げていきたいところですね。 - 31スレ主25/11/03(月) 18:47:13
小森「……っえ、今の……」
5人が足を止めると、寮の立ち並ぶ方向。
他の科や学年の寮のある方向から次々と顔を真っ青にさせた生徒たちが流れ出し押し寄せる。
角取「What!?パ、パニックが起きてマスよ!?」
骨抜「落ち着いて。絶対に離れないように、冷静に状況を確認しよう。」
庄田「この感じだと、震源地は寮の方向……」
鎌切「ヴィラン……じゃねぇよナァ!?雄英バリアは反応してねぇ!」
骨抜「……と、なると内部からの攻撃……?」
「君たちっ!何してるんだ、早く逃げろ!」
と、人混みの中から1人、恐らく先輩であろう生徒が顔を出し彼らに忠告の言葉を叫ぶ。
小森「に、逃げろって、一体何が起こってるのこ!?」
「こっちが聞きたいっ!急にクラスメイトが苦しみ出したと思ったらっ、ぞ、ゾンビみたいに……!!」
角取「Zombies!?」
「と、とにかく、校舎なら先生方がいる!そっちの方に……わぶっ!」
混乱する人の流れに押され、先輩生徒は全て言い切る前にどこかへと消えていった。
骨抜「よく分からないけど……なにか事件が起きていることは分かった。でも……どこへ行くにしてもこの人の流れに飲まれるのはマズイ。」
角取「っ、分かりまシタ!私の個性なら皆サンを押し上げられマス!上空から様子を見まショウ!」
骨抜「それだっ……!頼むぜポニー!」
角取「ハイ!」
角取「"THUNDER HORN"!!!」
角取は一度に多くの角を操作することは出来ない。
ので、小柄な小森を骨抜が抱えることで4本の角だけで5人を上空へ飛ばす事を可能にしていた。 - 32スレ主25/11/03(月) 18:48:42
鎌切「オイ……オイオイオイオイ!こりゃあ……マジにこんな事が起こってんのかよォ!?」
そうして、空から彼らがみた光景は悲惨なものであった。
寮の方向、最後尾では逃げ遅れた人々が次々にゾンビのように変わり果てた人々に襲われ、食い殺されている。
一方で、校舎の方は安全かと言えばそういう訳では無いようで。
なんと、こちらにもゾンビのようになった人々が待ち構えていたのだ。人の列はさらにパニックを極める。
庄田「どうする骨抜。僕は正直どちらに転んでも地獄としか思えない。」
骨抜「……この時間帯、先生方は校舎に集中している……となれば、ヒーロー科である俺たちが向かう方向は……」
骨抜の言葉に、4人は頷く。
角取「寮の方向、デスネ!」
骨抜「折角取った仮免、こういう時に使わないと、でしょ。」
小森「のこっ!広範囲制圧ならお任せノコ!」
鎌切「ゾンビヴィランだかなんだか知らねぇが全員ブッタ切ってやんゼェ!!!」
庄田「……ゾンビ……嫌な予感がする。」
感情の読みにくい顔で眼下を見下ろす庄田。
その視線の先で、地に伏し血を流していた生徒がピクリと動いた……そんな気が、していた。 - 33スレ主25/11/03(月) 19:30:08
-ハイツアライアンス 1-A-
ところ変わってA組寮。
外の喧騒はこちらにも伝わっており、寮内に居た5人は共有スペースに集まって外の様子を窺っていた。
上鳴「なになになになに!?一体何が起こってんの外で!?」
葉隠「っ……電話繋がんない!どうしてっ、雄英内は安全な筈じゃなかったの!?」
轟「……バリアが反応しなかったのか?USJの時のように……」
瀬呂「敵連合が攻めてきた、ってことかよ…?」
常闇「今戻った!」
階段のある方から慌ただしく常闇が共有スペースへと駆け込む。
黒影と共に空を飛べるようになった常闇が一足先に寮の窓から飛び出して外の様子を確認してきていたのだ。
上鳴「常闇っ!外は……」
常闇「……あえてハッキリ言おう。外は、地獄そのものだった。」
常闇は語った。
逃げ惑う人々。それを追う、人ならざる者たち。
そして… - 34スレ主25/11/03(月) 19:31:36
一瞬言い淀んだ常闇であったが、その目を鋭くさせて、彼は告げた。
常闇「…あれは、感染する。それも、凄まじいスピードでだ。」
黒影「マルデゾンビ映画ダゼ…」
上鳴「な、なんだよ、それ…」
葉隠「み、皆はっ!皆は無事なの!?」
常闇「姿が確認できたのは……B組の5人のみ。他は…」
葉隠「…そんな…」
最悪の結果を想像してしまった葉隠が、見えない顔を青くする。
その様子を見るや否や、轟が立ち上がった。
轟「俺たちも動こう。俺たちにはその資格がある。」
瀬呂「二重の意味でね。…仮免、こういう時のためっしょ?」
轟「ああ。皆を、救けに行こう。」
5人が闘志に燃えたその時だ。
A組の寮の扉が、何者かによって激しく叩かれる。 - 35スレ主25/11/03(月) 19:41:49
ドンドンドンドン!!
上鳴「っひぃ!?何!?ゾンビ!?」
ソファの上で縮み上がった上鳴であったが、彼らの予想に反して直後に扉から聞こえて来た声は彼らにとって非常になじみ深いものであった。
ミッドナイト「誰か中にいるのならその場から動かずに聞きなさい!!」
上鳴「ミ、ミッナイ先生!?」
ミッドナイト「その声、上鳴くんね!?他には!?」
上鳴「瀬呂、常闇、轟、葉隠が居ます!」
ミッドナイト「5人ね、全員そこにいる!?」
上鳴「は、はいっ…!」
ミッドナイト「分かったわ。一度しか言わないからよく聞くように!生徒は全員一人も外へ出ないこと!いい!?これは私達だけで対処すべき事案よ!寮の外へ今一歩でも出たら命の保証はしません!いいわね!?」
上鳴「っえ…!?ちょ、ちょっと!それってどういう…」
ミッドナイトはそれだけを口早に言い残すと扉の傍を離れたのかそれきり上鳴の声に言葉を返すことはなかった。
瀬呂「…これじゃあ、まるで林間学校の時と同じ……」
上鳴「…また、何もするなって言うのかよ…?」
葉隠「そんな…皆が、危ない目に遭っているかもしれないのに…」
常闇「無念…」
轟「………」
A組の寮に、沈黙が満ちる。
しかしただ一人、轟だけが何かを深く考えているようであった。 - 36スレ主25/11/03(月) 19:50:35
-外-
時は少し巻き戻る。A組の寮の扉をミッドナイトが叩くよりも、少しだけ前に。
ブラドキング「外も、もうこんなに…!」
校舎を飛び出したブラドキングはあまりのかれらの多さに眩暈がした。
かろうじて生き残っていた生徒たちを個性を使いながらも素早く担ぎ上げた彼はかれらを無力化しながら寮の方向へと駆けていく。
ブラドキング「…B組は…」
今この状況では寮の中が一番安全だろう。そう考えたブラドキングはB組の寮へと一目散に駆けてゆく。
粗方こちらにいたかれらは校舎へ向ったのか、幾分か数は減っていた。
しかし後に残された悲惨な争いの形跡が、ひたすらに彼を苛んだ。
ブラドキング「…くそ…」
B組の寮は目の前だ。
彼は、大きく重たいその扉を開ける。
しかし中には、誰も居なかった。 - 37スレ主25/11/03(月) 19:59:51
ミッドナイト「ブラドキング!」
ブラドキング「…ミッドナイト…」
生き残りを寮の中に押し込めたブラドキングは、扉を閉めたその瞬間にこの場に駆け付けて来たミッドナイトと目が合った。
ミッドナイト「ヒーロー科はっ!?」
ブラドキング「A組は分からない。が、B組は誰も…」
ミッドナイト「外はっ…!?」
ブラドキング「外…?」
オウム返しをしたブラドキングに対し、ミッドナイトは呆れながらもぴしゃりと言った。
ミッドナイト「あのヒーロー科一年がこんな時に大人しく寮に避難している訳ないじゃない!」
ブラドキング「!!」
ミッドナイト「A組は私が確認してきます。だからあなたは他の寮に確認に!」
ブラドキング「すまないミッドナイト…恩に着る!!」
どうか、どうか無事で居てくれ。
ブラドキングは強く願いながら他の寮へと足を動かした。
…二度と、教え子を失わないためにも。 - 38スレ主25/11/03(月) 20:16:46
-外 他学科の寮周辺-
小森「もっと、もっとキノコちゃんたちを…!」
骨抜「…悪いけど…この先には向かわせないよ。」
広範囲の制圧に向いた個性である小森、骨抜は生徒達を追うかれらを次々に無力化していた。
小森はキノコを使うことでかれらの感覚器官を塞ぎ、動きを妨害。
骨抜は地面を柔化させることでかれらを地面に縫い付けて動きを妨害。
鎌切「この先に進みたくば俺たちを倒してから行けェ!!」
角取「私達が相手デス!」
庄田「二人とも、接近しすぎないように気を付けて。」
二人の妨害を潜り抜けてきたかれらの対処は、三人の役割であった。
遠距離攻撃が可能な庄田と角取は十分に距離を取って。
ある程度接近する必要のある鎌切はヒットアンドアウェイを繰り返しながら。
五人の後ろには怯える生徒達がいた。
校舎に逃げてもかれらが居る。どこに逃げることも出来ずにただヒーロー科の後ろで身を小さくする他無かったのだ。
B組五人による防波堤が破られないことを、必死で祈っていた。
ブラドキング「…居た…!」 - 39スレ主25/11/03(月) 20:25:02
-ハイツアライアンス 1-A-
轟「…要は、寮から出なきゃいいんだろ。…なら、俺に考えがある。」
轟は、夏の出来事を思い出していた。
クラスメイトが攫われて、救けに行こうとなった日の事を。
戦闘行為が出来ないのなら、戦わずして救ければよいと行動した、あの日の事を。
…丁度、あの時も5人だった。
轟「ルールを破ったと言われても仕方のねぇことをする。…それでも、良いか。」
上鳴「考えるまでもないだろそんなの…!」
葉隠「それで、それで皆を救けられるなら…!!」
轟の提案に、4人は飛びついた。
―どんな形でも、自分がどうなっても、救けられるのなら。
轟「分かった。…手短に話す。聞いてくれ。」 - 40スレ主25/11/03(月) 20:33:26
-外-
ブラドキングを加えた6人はかれらを必死に押しとどめていた。
しかし加勢が来たのはヒーロー側だけではなかった。
いつの間にか校舎の側から逆流してきたかれらも加わり、この場はまさに泥沼状態になっていた。
骨抜「っ、流石に、キリが無い…!」
ヒーロー科に居ると忘れそうになる事実であるが、雄英高校は多くの学生を抱える学校である。
つまり、かれらと化す可能性のある人数も、それだけ多くなる。
特に有効打かと思われた骨抜の柔化にも弱点があった。
沈み込んだかれらの上を、足場にされてしまった場合だ。
骨抜の柔化はかれらにまでは及ばない。地面に沈み込ませることもできずに突破を許してしまうのだ。
どうする。どうする。
彼らは辺りを見渡すがどこにも逃げ場は見えた。前も、後ろも、右も左も。
そんな時だった。彼らの『頭上』から声がした。
瀬呂「救けにきたぞ!!」 - 41二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 20:39:54
これはアツい
主さんの文才凄いしめちゃくちゃ面白い - 42スレ主25/11/03(月) 20:40:14
『常闇の話を聞く限り相手は多分、全方位から仕掛けてくると思う。その中を凌ぎきるのは、大変なことだ。』
『ただ…前にも、そういうことがあった。…あの時は、空から攻めた。上が、唯一の脱出経路だったんだ。』
『これから俺たちは黒影に抱えて貰って寮の屋上へ向かう。…そしたら俺と、瀬呂の出番だ。』
『寮の屋根と、寮の屋根の間に橋を架ける。丁度、文化祭の演出と同じ要領になる。』
『…これなら、寮の敷地から出ずに皆の元に向かえるだろ。』
『空から救けよう。それが、俺たちにできる恐らく唯一の方法だと思う。』 - 43スレ主25/11/03(月) 20:54:00
瀬呂「っはは…すげー屁理屈みてぇな解決方法だな…」
上鳴「でも…確かにそれなら出た判定にはなんなくね!?」
葉隠「近づくまではいいけど…そこからは…?」
轟「そのゾンビみたいなやつを引き寄せる方法が、あるはずだ。あいつらは同士討ちをしていない。何か見分ける方法があるはずだ。…例えば、体温。」
常闇「…そういえば…共食いのようなことはしていなかったな。」
轟「ゾンビのようだという話を聞いてピンときた。…死体に、体温はない。そいつらは温度に引き寄せられるんじゃねぇか?だから、俺の火を使って誘導を行う。ただ、近くまで行く訳にはいかないから…そこで、上鳴と葉隠の力を借りたい。」
上鳴「えっ、そこ!?」
轟「そこだ。燃えやすいものに火をつけて、あいつらの動きを誘導する。それには正確な狙いが必要になるだろ。ポインターを使う上鳴なら、任せられる。葉隠はその補助だ。索敵を逃れるのに長けているということは人の探知能力に詳しいってことだろ。あいつらが確実に気が付いて、かつ安全な方向に誘導できるポイントを絞り込んで上鳴に指示してくれ。」
葉隠「わ、わかった…!」
轟「瀬呂と常闇は要救助者の救助だ。瀬呂のテープをバンジージャンプの紐みてぇに括り付けて、屋上から常闇を吊り下げる。そこから黒影に要救助者を掬い取ってもらえば全ての動作を屋上から完結させられる。」
轟「…完璧な作戦じゃ、ねぇとは思うが…今はこれしか考えつかなかった。…頼む。…俺を信じて、協力してくれ。」 - 44スレ主25/11/03(月) 21:11:06
………
……
…
葉隠「上鳴くん、骨抜くんから3メートル北西方向!」
上鳴「了解!」
常闇「瀬呂!もう1メートルほど下げてくれ!」
瀬呂「あんまムリすんなよ!」
黒影「ツカミドリダー!」
轟「あと少し…!」
即興のオペレーションは限られた状況下、条件の下、驚くほど上手く嚙み合っていた。
まるでかれらは要救助者から興味を失ったかのようにあらぬ方向へ誘導され、その隙に次々と屋上に要救助者がすくわれる。
気が付けばヒーロー科を除けば残り数人、という状況になっていた。 - 45スレ主25/11/03(月) 21:16:36
地上にいる皆が視線を上に向けていた。
思わぬ角度から伸びて来た、救いの糸に。
いつだって、予想外の出来事は、意識の外で起こる。
悪い出来事だって、例外ではないのだ。
油断を、しているつもりはなかった。
ただ、強い思い込みをしていた。
『地面に沈み込ませれば、それで十分動きを止められる。』
…それは、ただの人間だけに通じる理論であった。
「…ギギギィ…!!」
腰回りが崩れ上半身だけになってまで動く者がいることなど、想定されていなかった。
ただ、それだけの話だった。 - 46二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 21:18:21
冒頭の生殺与奪ダイス結果を思い浮かべて胃が痛くなってる
- 47スレ主25/11/03(月) 21:21:59
常闇「っ、あと、一人…!」
黒影の手が、伸ばされる。
それよりも早くに、伸びる手があった。
B組も、その担任も、火に誘導されていったかれらを警戒してはいた。
火が消えた途端にまた襲い掛かって来る可能性があったからだ。
…しかし、不幸なことに地面にまでは注意を向けていなかった。
「危ないっ!!!!」
何者かの手によって、残り一人の要救助者の体が、弾かれる。
伸ばされたそれの手は、その何者かの脚をかすめていった。 - 48スレ主25/11/03(月) 21:26:19
常闇「っ、な…」
常闇は目を見開いた。
今しがた目にした光景に。
…辺りに、鮮血が舞い散った。
上鳴「ぁ…あ……」
その場に居た誰もが、絶望した。
ミッドナイト「…やっぱり、やると思ったわ。…ヒーローの卵たち。」
駆け付けてきた人物。
ミッドナイトが、その時脚に怪我を負った。
かれらによる、深い、深い傷を。 - 49スレ主25/11/03(月) 21:29:58
A組の寮の扉を叩いた後。
ミッドナイトはかれらの逆流に巻き込まれていた。
眠り香を使おうにも、すでに『眠っている』かれらには一切効くことがなかった。
…しかし、ヒーローは一芸だけでは務まらない。
手にした鞭を奮い、なんとか時間をかけながらもミッドナイトはそこへたどり着いたのだ。
そして…そこで目にしたのが、例の光景であった。
経緯を知らない彼女は事態を把握するために、全てを一から理解しようと、まず地面に目を向けた。
命運が分かれたのだとしたら、きっとその時なのだろう。
残りの一人はすくわれた。
…一人の犠牲と引き換えに。 - 50スレ主25/11/03(月) 21:44:09
ブラドキング「ミッドナイト!!」
生徒たちは、既に寮の中に避難が完了していた。
他でもない。ミッドナイトの指示によって。
地上に居たB組はブラドキングの護衛の下無事B組寮に送り届けられていた。
…あとに残されたのは、ミッドナイトだけだ。
ミッドナイト「…あれだけの人数だけでも…無事で、よかった…」
ブラドキング「っ…」
ミッドナイト「ブラドキング。…あなたに頼みがあります。」
ブラドキング「頼み…分かった。…聞こう。」
既に真っ青な顔で、荒い息を吐きながら地面に横たわっている彼女。
もう、長くはないだろうということは彼女が一番よく分かっていた。
ミッドナイト「まず一つ目。…もし私がかれらのようになってしまったら、迷いなく止めを刺すこと。」
ミッドナイト「二つ目。…かれらは、人間ではない。私の眠り香が利かなかったのが、その何よりの証拠。…だから、あの子たちに伝えておいて。…人間を死なせてしまったのだと思うのなら、それは大きな間違いだ、と。」
ミッドナイト「そして…三つ目。…これを。」
そして、どこからか彼女は一冊の冊子を取り出した。
見覚えのあるその冊子に、ブラドキングは目を見開いた。
ブラドキング「…『緊急避難マニュアル』…!?」
ミッドナイト「これを持ち出していたがために…初動が少し遅れてしまったの。…けれど、それをするだけの価値が、おそらくこれにはある。女のカン、ってやつだけどね。これをあなたに託します。そして…そして、生徒達と協力して、どうか生き延びて。あの子たちはもう、一人前に手が届きつつある。プロヒーローほどでなくとも、戦力に数えられる程には。大人として情けないことだけれど…この局面、きっと彼らの力無しでは乗り越えられない。彼らに、危険を冒してもらわないと……ゲホッ!ゴフッ…っ!」
ブラドキング「ミッドナイトっ!無理をするなっ…!」
ミッドナイト「するに決まってるでしょうっ…!こうなってしまえばもう、希望を、後に託すしかない…!それが、私にとっての希望…!」 - 51スレ主25/11/03(月) 21:51:49
希望を託したのは、彼女だけではない。
一度言い終え言葉を切った彼女。
その直後、わあわあと騒ぐ声が、再び二人の頭上から聞こえて来たのだ。
しかしその方向は寮の屋上ではない。
校舎の方。
屋上に近い高さから、二人の居る方向にゆるやかに高度を落としながら。
大勢の生徒達が向かっていたのだ。
ブラドキング「あ、れは…」
ミッドナイト「あの個性は…無重力?…A組の…」
ブラドキング「違う。」
ミッドナイト「え…?」
ブラドキング「…物間、だ。…物間が、……いや、ファントムシーフがやってくれたんだ。」
ミッドナイト「…………もしかして、あの子も…」
決意を新たに、ブラドキングは生徒たちを見上げた。
託された希望は、後に紡いでいかなければならない。
それが、残された者たちが、散っていった者に向けて出来る最大の餞なのだ、と。
他でもない、教え子がその身を挺して教えてくれたことだった。
ブラドキング「任せてくれ、ミッドナイト。必ず、繋いで見せる。」 - 52スレ主25/11/03(月) 21:59:55
その後。
大勢の生徒と共に戻って来たブラドキングからミッドナイトの最後の言葉を告げた。
彼女の最期について彼が語ることはなかったが、代わりに彼女が託していったものに言葉を費やした。
かれらが人間でないということ、そして緊急避難マニュアル。
生徒もまた、危険を冒さなくてはいけない時が来てしまったということ。
悲しみに明け暮れる暇すら与えられないままに、ヒーロー科は生き延びた生徒達を守り抜く使命を背負うこととなったのだ。
…かくして、生き延びたヒーロー科の1年、A組とB組総勢僅か10名は寮の中を中心とした生活を強いられることとなった。
誰かがそれを地獄のような日々だと形容するのに時間はかからなかった。
しかし。
これはまだ地獄の入り口。ほんの序章に過ぎなかったのである。
番外編2 前編 「希望」 終わり - 53スレ主25/11/03(月) 22:07:22
すみません、キリ良いのでちょっと自我出していいですか?
いいですね?出します。
大方の構想は出来てきたって書いたじゃないですか。
スレ主が決めてたのは『序盤でなんとかしてミッドナイトが犠牲になる』という点と『生徒達が残されて寮中心の避難生活が始まる』という二点だけだったんですよね。
つまり何が言いたいかというと、途中で轟くんが出した案、あれ全部その場で即興で考えたんですよね。
だからクッソ重大な穴があるかもしれなくってぇ…推敲しようにも、なんか疲れちゃってぇ…動けなくってぇ…
なんかうまいこといった風に書きましたけどネ…
ここはこうならないんじゃ!?みたいな点ありましたらご意見お寄せください。
加筆修正verでなんとかします。
じゃ、明日から後編を進めていきましょうね。
後編はちょっと形式が変わります! - 54スレ主25/11/03(月) 22:13:23
(他にも展開的にちょっとおかしい点があったら是非ご指摘ください。キャラクターの口調、誤字脱字等でも構いません。加筆修正verに全て押し付けます。大筋は変えませんが…)
- 55二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 22:26:07
細かいのだけど文化祭からお茶子って女子に対して基本ちゃん付けになるはず
八百万のこともヤオモモちゃん呼びだと思う…! - 56スレ主25/11/03(月) 22:26:50
そもっそもスレ主はあんま頭使うの得意じゃねぇんですよぉぉぉぉ!!(泣)
こんなつまらないクソくだらない愚痴で3レス消費するのもどうかと思うんでちょっと本家「がっこうぐらし!」の宣伝をば。
実はがっこうぐらし!は過去に一度アニメ化されたことがありまして、その時アニメになった範囲が原作の5巻までの内容なんですね。このシリーズでいうところの第五章までがそうです。
アニメは原作コミックとはまたちょっと違った展開で、これだけで綺麗に物語が完結しているんです。
(もっとも、スレ主はアニメの方は随分と前に観たっきりなので記憶が定かじゃないです)
ありがたいことにがっこうぐらし!に興味を持っていただいてる方も多くいらっしゃるようで…ですので宜しければまずアニメの方を見ていただけたらな、と。もちろん完走後でも構いません!ただ、先のネタバレはほとんど無かったはずなのでぜひご一考ください。
↓がっこうぐらし!OP
- 57スレ主25/11/03(月) 22:28:11
- 58二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 22:37:58
がっこうぐらし面白いよね
途中までだけど漫画も面白かったな
轟くんの案は即興とは思えないほど楽しんで読ませてもらいました
ミッドナイトと物間の犠牲は悲しいけどそれはそれとして物語のスパイスだと思うようにして…でもやっぱり犠牲は悔しいぐぬぅ - 59スレ主25/11/03(月) 23:08:37
当初見切り発車で始めたこのスレがこんなに支持していただけるとは思ってなくて…
なので自分の中で、
自分が楽しけりゃよくね?VSスレ民にも楽しんでもらえるようにしなきゃVSダークマイト
な状況が起きてるんです。プレッシャーで。
なのでこれからもちょくちょく突然愚痴りだすかもしれませんがスレ存続のためには必要なことですのでお付き合いいただければ…
それはそうとスレ主の続き書きたい欲がすごいので明日と言わず今日から後編やります。 - 60スレ主25/11/03(月) 23:14:41
〇月XX日
部屋をひっくり返していたら前に表紙が気にいって衝動買いした日記帳が出て来た。
昨日だったか一昨日だったか。上鳴が急にスマホでみんなの写真を撮り始めた。
何かを残さなきゃいけないという気になったのだと言っていた。
なんだか、分かる気がした。
ので、俺は日記を書くことにしてみた。
と言ってもこれはただの日記じゃない。
誰かに見せることを想定した日記だ。
俺たちの生きた証と、足掻いた証。その証明ってところか。
手始めに、今日この日まで何があったか、掻い摘んで書いていきたいと思う。
ようやく、少しずつ過去を飲み込むことができるようになってきたところだから忘れないうちに書き残す。 - 61二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 23:18:58
- 62スレ主25/11/03(月) 23:25:37
『あの日』…俺たちは全てが崩れ去ったあの悲劇の始まりの日をそう呼んでいる。
とにかく、その日俺たちの先生、ミッドナイト先生が亡くなった。
不幸な出来事が重なった末の死だった。
同日、恐らく物間も息を引き取った。
恐らく、というのはここに居る誰もその瞬間を見ていなかったからだ。
ただブラドキング先生が、(不自然に空白が空いている)
決定的なことは何も言っていなかった。
先生の死はショックだった。
けれど、同年代の、もっと身近な人物の死は、そんな言葉じゃ言い表せないほど辛く苦しいものだった。
しばらく俺たちの間に漂う空気は最悪そのものだったと思う。
そういえば、ブラドキング先生は物間が情報を掴んで託したと言っていた。
どうせなのでここにも書いておく。
『かれらの個性をコピーしようとすると全てスカになる』
らしい。これが何を意味するのかは俺には分からないけれど、重要であることくらいは分かる。
二人の死は俺たちにとってそれはそれはひどい痛みを伴うものだったけれど。
どちらも最期まで足掻いて、俺たちに想いを託していったんだという事実は、俺たちの背筋を伸ばして見せた。 - 63スレ主25/11/03(月) 23:34:24
葬式の準備をしていると忙しさで悲しみを忘れられるだとか、そんな話を聞いたことがある。
俺は、それは本当だと思う。
『あの日』から俺たちヒーロー科は生徒も先生も関係なくヒーローとして動き始めた。
周囲の安全確保だったり、生き残った生徒の支援だったり、インフラの維持だったり。
それはもうしばらく目まぐるしいほどの忙しさで。
それがようやく落ち着いたのが数日前のことだったので、上鳴は急にあんなことをやり出したのだと思う。
いや、急では無いのかもしれない。ずっと考えていたのを実行に移したのかもしれなかった。
そうだ、生き残った俺たちのことを書いておいたほうがいいだろうか。
まず、ヒーロー科1年A組は5人(と、1人?)が今ここに居る。
上鳴電気。常闇踏陰(と、その個性のダークシャドウ)。轟焦凍。葉隠透。そして俺、瀬呂範太。
B組もまた5人が生き残っている。
鎌切尖。小森希乃子。庄田二連撃。角取ポニー。骨抜柔造。
ブラドキング先生を含めたら6人か。
出来ることなら、この日記帳を全て埋めて、そしてその後も誰一人欠けることなく終息を迎えたい。
全てのページの日付欄に既に日付を書き込んでおいた。 - 64スレ主25/11/03(月) 23:43:38
〇月YY日
今日は水道設備の点検に向った。
今までは各寮の冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターやら何やらを少しずつ消費して繋いでいたがいつまでもそれで繋いでいけるわけがない。
雄英の寮は断水に備えて雨水を溜めて置ける貯水タンクが少し離れた所に設置してある。
幸い濾過装置もポンプ等の設備も生きていたので明日からでも水道も一部復帰できそうだ。
とはいえ水が貴重であることには変わりない。
俺は引き続き自前のミネラルウォーターでも飲んでいようかと思う。
健康志向が行き過ぎて箱買いしたものだけど、買っていてよかった。
X月BB日
もうすぐ本来なら文化祭があったはずの日だ。
こんな状況でそんなこと言ってられないとは思うが。
そういえば最近自室に居ると下の階からギターの音色と歌声が聞こえてくることがある。
上鳴と、常闇が練習でもしているのだろうか。
ひそかに癒されているとは言ってやらないことにする。 - 65スレ主25/11/03(月) 23:53:32
-ハイツアライアンス 1-A 上鳴の自室-
上鳴「写真だけじゃなくってさ、音も…映像も、色々残してみたくって。」
ギターを肩からかけて。
スマホの録音アプリを立ち上げた上鳴は言った。
常闇「生きた証…という奴か?」
上鳴「そんな大げさなものじゃない…と思う。ただ…なんも残ってないよりかはいいっしょ?」
常闇「…そう、だな。」
上鳴「…耳郎がさ、自分の演奏と歌声を録音して、それを自分で聞いて練習することがあるって前に言ってて。それで、思いついた。」
常闇「…」
上鳴「それにさ、練習も進められて一石二鳥っしょ?」
常闇「お前は…そうか、諦めていないんだな。文化祭…日常の帰還を。」
上鳴「諦めきれねぇよ、そりゃ。……いつかさ、皆集まれたらさ…そん時にやろうよ、バンド。」
常闇「…そうだな。その時は、必ず…」
上鳴「っし!約束な!じゃーとりあえず今日は通しで一旦やろーぜ!」
常闇「近所迷惑にならない程度にな。」
上鳴「わーかってるって!」 - 66スレ主25/11/03(月) 23:58:40
X月FF日
寒くなってきた。秋ももう終わりごろを迎えつつある。
文化祭があるはずの日まで、あともう少しだ。
そういえば風邪が流行っているのか、鎌切が最近咳をすることが多い。
ハーブティーを淹れてやったらマシになったようなのでちょくちょく淹れてやろうと思う。
X月JJ日
上鳴と葉隠が文化祭をやろうと言い出した。
二人して何を、と思ったが目が真剣そのものだったので聞くことにした。
曰く、この閉塞しきった空気は非常によろしくないのだと。
だから日常を思い出して活力にするんだと、二人は言っていた。
避難民も最近はピリピリしていて、その雰囲気に飲まれることがこっちも多々あった。
少しくらいなら、息抜きもいいのかもしれない。俺はとりあえず頷いておいた。 - 67スレ主25/11/04(火) 00:05:10
X月LL日
あれからあれよあれよという間に話が進んで結局文化祭をやるということになった。
ただしAB合同で、ヒーロー科内だけで行われる。
俺たちが息抜きしているところを他の科の生徒に見られたら反感を買うのは必至だ。
市民感情というのは時に面倒臭い。
演目はバンド。ギターは引き続き上鳴と常闇が。キーボードは小森がやることになった。
ベースは骨抜が名乗りを上げた。経験があるのかと思えば無いと言っていたが、それなら今から習得すればいい話だと柔軟に対応していた。
残るドラムだが鎌切にやらせてはどうだという話になった。
口調があいつに似ている6割、身体能力が高いから案外いけんじゃねが4割といったややふざけた理由であったが、鎌切は了承してくれた。
そうして残った俺たちはこの5人の分の仕事を代わりに引き受けたりすることで協力するという形になった。
なんだか今から本番が楽しみだ。やはり、目標というか、目指すべき点があるとやる気も変わってくる。 - 68スレ主25/11/04(火) 00:17:19
ブラドキング「…ということで、ヒーロー科内だけであれば文化祭の開催を認めることにした。」
上鳴「よっしゃぁぁぁ!!」
葉隠「やったぁ!!!」
ブラドキング「ただし、あまりはしゃぎ過ぎないようにな。…いい印象は持たれまい。」
上鳴「なぁなぁ、誰がどの楽器やる?俺たちはギター継続ね!」
小森「じゃあ、私がキーボードをやるノコ!実はアイドルを目指す上で必要かと思ってちょっぴり練習してたことがあるノコ…」
葉隠「なにそれ素敵!そしてカワイイ!!」
骨抜「じゃあ俺ベースやるわ。」
上鳴「え、骨抜弾けんの!?」
骨抜「いや、初心者。けどそれならそれで今から練習すればいいだけじゃね。」
瀬呂「流石骨抜柔軟…!」
常闇「残るはドラムだけだが…」
上鳴「あー…んじゃあ、鎌切くんやってみる?」
鎌切「…えっ、俺ェ!?」
上鳴「うん、なんかドラム似合いそうだし!運動神経良いから案外やってみたらいけっかもよ?」
轟「…ドラムってそういうものなのか?」
瀬呂「こいつの中のドラム観が歪んでるだけじゃねぇ?」
鎌切「…しゃーねェなァ!こうなったら俺がドラムを叩きコロしてやるゼェ!!」
上鳴「おー!それっぽい!!!ありがとね鎌切くん!」
瀬呂「ほら、絶対イメージが引っ張られてる。」
轟「なるほどな。」
ブラドキング「はしゃぎ……まぁ、時にはこういうのも大事か。」 - 69スレ主25/11/04(火) 00:26:37
X月NN日
ベースの骨抜の上達速度は流石と言うべきものだったが、弾き語りをしなくてはならないというのがすこしネックになっているようだった。
と、練習風景を見学していた角取が歌詞が英語であったのに興味を持ったのか、自分が歌うと言い出した。
結論から言えばこれが大ハマり。歌は角取が歌うことになった。
完成形が楽しみだ。
そういえば常闇が明日から夜の巡回を行うと言っていた。
何か情報を得られればいいが。
X月LL日
校舎に、誰か居るらしい。
常闇が昨晩見て来た話しによると、確かに校舎の一室に灯りが点いていたのだと。
あと、屋上には畑があって生活感を感じたとも言っていた。
もしかしたら、もしかするかもしれない。
追記:鎌切の件で、書いておく。ここのところ咳は収まらないどころか悪化している。ハーブティーも小森の浅田飴も効かなくなった。風邪をこじらせたのだろうか。リカバリーガールがこの場に居ないことを悔やんだ。 - 70スレ主25/11/04(火) 00:33:33
X月PP日
今日は待ちに待った文化祭(あの後上鳴らによってプレ文化祭と名付けられた。)の日だ。
結果は大盛況。ヒーロー科の先輩方と一緒に盛り上がって終わりを迎えた。
頑張ってよかったと、初めてそう思えた。
皆もそう思ってくれていたらいい。
そういえば文化祭の後、ちょっとした宴会をやった(こっちは後夜祭と名付けられた。)。
ただ、途中で鎌切が居なくなって、結局最後まで姿を現さなかった。
ここのところ体調が優れなかったようだから無理もない。
演奏中は活き活きとしていただけに、余計に心配だ。無理をさせてしまったのだろうか。
明日また朝一で様子を見に行こうと思う。 - 71スレ主25/11/04(火) 00:34:33
X月QQ日
(白紙)
X月RR日
(白紙)
X月SS日
(白紙) - 72二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 00:34:41
慈悲が欲しい
- 73スレ主25/11/04(火) 00:39:01
X月TT日
(ミミズの這ったような字)
かまきりが、 どうして
あいつはどこもけがなんてしてなかった
少し落ち着いてきた。
あいつの部屋に、一枚だけ書置きがあった。
『ほかのかんせんけいろ』と殴り書きで書かれていた。多分、直前になって書き残したのだろう。
最後の力を振り絞って。
もう少しだけ、夢を見ていたかった。 - 74二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 08:16:19
ほかの……
- 75二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 16:20:55
- 76スレ主25/11/04(火) 16:23:08
X月UU日
皆が、何かを遺そうとしている。
物間とミッドナイトが初めて示した道は一つの希望となっている。
自分が倒れても、大丈夫だと、皆が次に繋げてくれるのだと、そういう希望に。
ただ、鎌切には悪いが、あいつが託していったものは俺たちにとっては絶望以外の何物ではなかった。
ほかの、とあいつはぼかして書いていた。多分、確証が持てなかったのだろう。
今まで俺たちはアレの感染経路は奴らに攻撃されて怪我をすること、ただそれだけだと思っていた。
向き合わなくちゃいけない。あいつのためにも。
あれは、空気感染する。 - 77スレ主25/11/04(火) 16:24:57
- 78スレ主25/11/04(火) 16:32:58
あれは、空気感染する。
それを認めてしまった俺たちの混乱ぶりと言ったら。
多分目も当てられないくらい酷かったと思う。
やつらの攻撃さえ躱せばいいと思っていた、それが覆った。
接近するだけでもいけない。キャリアに近づいてもいけない。
誰もが、感染者になる可能性を秘めていることが判明したのだ。
俺たちでさえこうなのだ。避難民の生徒にこのことが知れたら、大変なことになる。
先生の提案でインフルエンザの蔓延防止という体で感染対策を行うことになった。
以後外出もより厳しく制限される。ロックダウンというやつだったか。
空気が重い。
ただ、B組のやつらは案外早く立ち直って、特に小森が何か進めているようだった。
A組も、うかうかしてられない。
ギターの音色と歌声が恋しい。 - 79スレ主25/11/04(火) 16:38:32
△月CC日
避難民の生徒達の不満が募っている。
理由は明白だった。
特に最近食糧事情が厳しくなっている。
今までは各寮にあった各々の食糧や非常食をみんなで分け合って過ごしていたがそれももう長くは保たない。
中には雄英の校舎の方に行こうと言い出す生徒もいた。
確かにあっちにならもっと豊富に資材が眠っていることだろう。
緊急避難マニュアル。初日に皆で確認した。雄英には、何か大きな秘密がある。
そろそろ潮時なのかもしれない。 - 80スレ主25/11/04(火) 16:46:50
△月EE日
やられた。
クソったれ。(黒く塗りつぶされている。)
不満を爆発させた生徒がA組の寮に襲撃してきやがった。
隠し持ってんだろ、とかお前たちだけなんでとかなんとか叫んでいた。
俺と轟でバリケードを作って中に入れないようにした。無駄だった。
個性を使ってまで突破されて、それでも相手を傷つけるわけにはいかない俺たちには何もできなかった。
結ちゃんが見つかった。AB合同でこっそり当番を回して世話をしていた兎だ。口田が飼っていた。
やつら開口一番に食糧を見つけたと叫びやがった。(黒く塗りつぶされている。)
寮が、皆の部屋が荒らされた。
どうして俺の個性はテープなんだ。ハサミとか、もっとそういう見た目に分かりやすく威圧できる個性だったら何か変わっていただろうか。鎌切が羨ましい。
結ちゃんは結局外に逃げ出して、見つからなかった。
それを追った生徒も、どこかに消えた。明日から捜索活動を進めなくてはいけない。
つかれた。休みたい。 - 81スレ主25/11/04(火) 16:52:52
△月HH日
(白紙)
△月II日
悪いことは続くものだとつくづく思う。
この地獄を作り出した元凶が居るなら殺してやりたい。
ヒーローって、一体なんなんだ。何を俺たちは守っているんだ。
何のために守り続けなくちゃいけない。
捜索活動に出ていた上鳴が帰ってこない。
一緒に組んでいた小森は帰ってきたが熱を出して倒れた。
行方不明だった避難民の生徒の内の一人が帰って来た。
(黒く塗りつぶされている。) - 82スレ主25/11/04(火) 17:04:14
△月JJ日
角取と葉隠が言うには小森の腕に爪痕が残されていたらしい。
真上から爪を立てたような傷痕で、相当深くまで怪我が及んでいたようだ。
小森はまだ目を覚まさない。
葉隠が何か言いたそうにしている。
なんか、何もかもがどうでも良くなってきた。
△月MM日
常闇が上鳴のスマホを持って共有スペースに現れた。
どうやら部屋に置いていっていたらしい。
パスワードを知らないかと聞いてきたので単純なあいつのことだから誕生日にでもしてるんじゃないかと答えたら、違うと言われた。629も0629も入れてみたが弾かれたと。
0801で開いた。
葉隠がどんな気持ちでこのパスワードを毎回入れてたんだろうと、そう言った。
俺もそう思う。
あいつは諦めてなかったのだろうか。この地獄みたいな状況で。
それでもまだ文化祭をやれると、そう信じてたのだろうか。
上鳴のスマホに残っていた画像や動画を見た。
プレ文化祭の時の映像が出て来た。
もう一度、あの光景が見られるのなら。
避難民を守ることの他に、何かやれることはないだろうか。 - 83スレ主25/11/04(火) 17:13:28
△月OO日
大きな出来事が二つあった。
小森が、息を引き取った。
結局最期まで彼女が目を覚ますことは無かった。
熱にうかされて苦しそうに手足をばたつかせるその様は見ていて苦しかった。
これで解放されたのだろうか。楽になったのなら、いい。
自室に小森の考察ノートが置いてあった。
どうやら病原体について考察をしていたらしい。あとで別のノートに転記しておく。
人の死に慣れてきてしまった気がする。涙が出てこない。最低だ。
小森を埋葬していたら大きな爆発音が響いた。
思い当たる人物が居たが、あいつの爆発とは少し違った。
葉隠と骨抜が偵察に向かった。ヘリが墜落していたらしい。
それと、校舎が燃えた。移住計画は一旦白紙になった。
葉隠から見知った二人の名前が出て来た。
希望を抱いてもいいのだろうか。
近々、校舎に向かう。 - 84スレ主25/11/04(火) 17:26:58
追記
葉隠から話があった。校舎に行く前にどうしても話しておきたいことがあると。吐き出しておきたいのだと。
上鳴についてだった。やっぱり葉隠は一部始終を目撃してしまっていたらしい。
あと一歩及ばなかったと泣きながら話してくれた。
詳細については、ここには書かない。重要じゃないと判断したからだ。
あいつが何故姿を消したのかが分かった。
それを尊重するためにも、これは俺たちの中に仕舞っておく。
ヒーローというのは、どんなに相手が救いようのない人間だろうと救ってしまうものだ。
勝手に、体が動いてしまう。そういう人間をヒーローと言うのだろう。
何を成すべきかが分かってきた気がする。上鳴と、小森のお陰だ。
外に出よう。校舎を探索したら、そう皆に提案するつもりだ。
緊急避難マニュアルの最後のページに書かれていた。
俺たちはきっと、そこへ行かなくてはいけない。
仲間が欲しい。校舎に居た奴らは無事だといいが。きっと頼もしい仲間になってくれるはずだ。
文化祭をまたやりたい。目標が出来た。
番外編2 後編「誰が為に」 終わり - 85スレ主25/11/04(火) 17:33:07
すみません、非常に駆け足になりましたが番外編2、これにて終わりです。
(重大な出来事だけを抜き出したが為です。本来はもうちょっと間が空いているハズ。
加筆修正verでもうちょっと足し加えることになるかも…?)
日記の日付は全部適当なのでアルファベット順がそのまま日数に対応しているという訳ではないです。
番外編3、上鳴くんと小森さんに何があったのか、は本編第5.5章を終わらせた後に進めます。
それでは5.5章、始めていきましょう。
第5.5章 始まり - 86二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 19:07:12
スゲェなぁ…
原作あんま覚えてなかったけど空気感染って言葉で記憶蘇ったわ……
うわぁあ……瀬呂くん… - 87スレ主25/11/04(火) 19:56:43
(ちょっと裏話。生殺与奪ダイスの生還確率ですが、当初はもうちょっと上げる予定でした。ただ、例のダイスで結ちゃんが選ばれてしまったので、これは寮の方大変なことになっているのでは…!?となってしまい2分の1に。ただ、先の展開がスレ主の中で朧げながら出来上がってしまった都合上ここからダイスを振る頻度が落ちます。実はミッナイ先生の個性が効くかどうかも本来ならダイスで決める予定だったんですよ。)
- 88スレ主25/11/04(火) 19:58:19
- 89スレ主25/11/04(火) 20:03:24
-外-
峰田「…寮の方、どうなってるんだろうな。」
彼らにとって徒歩5分の道のりは果てしなく長いものに見えていた。
『あの日』から数か月。季節は冬に突入している。
痛みを感じるのは何も冷たい風だけのせいではないだろう。
久方ぶりのハイツアライアンス1-Aを見上げる。
どことなく荒れているように見えるそれはきっと気のせいではないのだろう。
八百万「…行きましょう。」
5人が寮の扉の前まで来た時だった。
きいきいと煩い音を立てて、重く大きな扉が開く。
轟「…お。」
八百万「…えっ。」
5人と、4人の邂逅であった。 - 90スレ主25/11/04(火) 20:13:59
-ハイツアライアンス 1-A 共有スペース-
葉隠「色々言いたいことはあるけど…とにかく、また会えてよかった…!」
麗日「うんっ、皆生きてて本当によかった…!」
瀬呂「…」
峰田「…そーいやお前らなんでマスクしてんだ?風邪でも流行ってんのか?」
寮の扉を開けた先に居たのは轟と、そして瀬呂、常闇、葉隠の4人であった。
そして峰田が指摘した通り、4人は全員マスクで口と鼻をしっかり覆っている状態で5人の前に現れた。
轟「…いや……そうか、お前たちは知らないのか。」
八百万「知らない…とは、何を…?」
轟「……俺たちの事を話す前にお前たちの話を聞かせてくれないか。校舎の方で生活していたのは八百万達なんだろ?」
八百万「ええ。把握してらしたのですね。」
轟「常闇が夜に巡回してたんだ。接触も図ろうという話になってはいたんだが…色々あってな。」
そう言った轟はどこか遠くを見るような目をしていた。
明確に語られずとも彼らの身に何かあったのであろうことは容易に想像がついた。
瀬呂や常闇までも暗く沈んだ目をしていたからだ。
葉隠はその表情までは窺えないが、大げさな身振り手振りが無くなってしまい動きから元気を感じられなくなっている。 - 91二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 20:24:40
- 92スレ主25/11/04(火) 20:25:18
八百万「そうでしたか…しかし、一体どこから話せばよいものか…」
麗日「本当に色々あったもんね…」
青山「…ねぇ、積る話は君たちに任せるから、僕は一足先に部屋に行っててもいいかい?」
麗日「あっ、そうだね!いいよ、私たちに任せて先行ってて!」
青山「メルスィ☆」
階段を駆け上がっていく青山の背を見て、瀬呂がつぶやく。
瀬呂「あいつ、なんかあったのか?」
この状況下で不自然なまでに元気な様子を振りまく青山。
瀬呂が異変を感じるのも、無理は無かった。
八百万「…そうですわね、先にそのことから話しておきましょうか。」
麗日「…そうだね。私達学園生活部の発足のきっかけと、青山くんのことについて…」
話し始めてしまえば後は簡単なもので、学園生活部の4人は代わる代わる今まであったことを掻い摘んで話していった。プレゼント・マイクのこと、結ちゃんのこと、ショッピングモールであったこと。そして…
麗日が一度は感染した、ということも。
轟「…感染した?…治った、のか?」
麗日「うん。薬が効いたみたいで、今はもうすっかり。」
瀬呂「っ、その薬、今はどこに…!」
飯田「もちろん予備は持ってきているとも。…もしかして、急患が?」
瀬呂「……だったらまだ良かったよ。」
峰田「…は、?…も、もしかして…」
瀬呂は大きく息を吸って、そして吐く。
拳を強く握る。辛く、苦しい日々を思い出しながら。
瀬呂「落ち着いて、聞いてくれ。」 - 93スレ主25/11/04(火) 20:33:28
瀬呂「…まず、こっちは死者が出た。…薄々、勘づいてはいるだろうけど。」
八百万「…えぇ。」
いざ言葉にして言われると急激に実感として胸の上にそれがのしかかる。
息が、苦しくなる。
瀬呂「……どっから、話したもんかね…。本当に、いろんなことがあった。本当に…」
常闇「…やはり、『あの日』の出来事から話すべきではないだろうか。」
瀬呂「そーだな……二人とも、大丈夫か?」
轟「…あぁ。」
葉隠「…う、ん。」
『あの日』。彼らが実行した作戦のこと。それが途中までは上手く行っていたということ。
最後の最後で、大失敗をしてしまったということ。
何度も言葉に詰まりながらも、瀬呂は語った。
学園生活部は息を飲んだ。喉の奥が、詰まってしまったかのような閉塞感。
夢を見ているかのような、眩暈。
ミッドナイトが散ったというその事実を聞いたこともあるが、それよりも。
峰田「…な、なぁ……なんでその話に、上鳴が出てくんだよ…?」
今この場に居ないクラスメイトの名前が出て来たことが、その事実が、彼らの胸を刺した。 - 94スレ主25/11/04(火) 20:47:06
瀬呂「……先に言っておくと、まだ確認した訳じゃない。…ただ、希望的な見方はしない方がいい。」
峰田「…嫌だ、いやだっ…!オイラ聞きたくねぇっ!そんなバカな話があるかよ!だって、だって…!」
葉隠「そんなのっ、私が一番信じたくないよっ!!」
峰田「は、葉隠…?」
耳を塞いで叫んだ峰田の声量を上回るように、葉隠は声を荒らげる。
葉隠「私だって、無事で居て欲しいよっ、でもあんなの見ちゃったら……あの時、手が届いてたら、よかったのに…」
轟「…葉隠。…気持ちは分かる。俺だって、あの日もう少し気を付けていたら、もっと良い作戦が練れていたら、先生が亡くなることは無かったんじゃねぇか、って…今でも夢に見る。…でも、それをこいつらにぶつけんのは違うだろ。」
葉隠「…う……ごめ、ん…」
峰田「……いや、オイラも悪かった。…こんな状況になった時点で、覚悟はしておくべきだったんだ…」
常闇「…そちらも先生を一人失っているのだろう。互いに喪うことの痛みは知っているはずだ。そうだろう?」
麗日「うん。……先生、だけじゃない、けど…」
常闇「…失念していた。…物間、だな。」
八百万「あぁっ……見間違いじゃ…なかったのですね…」
瀬呂「……B組の方の話もしようかと思ったんだけど、もう少し時間置くか?」
学園生活部は首を横に振った。
…どうせなら、一度に全てを受け止めたかった。
瀬呂「りょーかい。…B組は、物間含めて3人が死んだ。…最初に鎌切で、次に小森だ。…特に鎌切の方は今俺たちがマスクをしている理由に直結する。…あいつのためにも、ちゃんと聞いてくれ。」 - 95スレ主25/11/04(火) 20:59:22
瀬呂「…鎌切に、外傷は無かった。」
八百万「…え。…と、いう事は…まさか…」
瀬呂「流石、察しが早いことで。…俺たちは、これが空気感染する可能性にたどり着いた。」
飯田「空気感染…!?だからマスクを…いや、それが本当だとしたら…とんでもないことになるぞ!?」
瀬呂「あぁ、実際このことに気が付いた時はとんでもないことになった。幸いヒーロー科の外には漏れてないけど、バレたらパニックは必至だろうよ。」
麗日「そ、そんな……」
瀬呂「小森の方は外傷があった。…数日間高熱に苦しんだ末に……ただ、小森は考察ノートを書き残してくれていた。」
八百万「ノート…?」
瀬呂「原本はB組が持ってる。転写したものは俺が持ってるから、後で渡す。」
峰田「……それで、他に誰か残ってんのか…?」
瀬呂「今B組寮に居るのが庄田と角取と骨抜、そしてブラドキング先生だ。発症者は居ない。」
飯田「…そうか、B組もそれだけしか確認が取れていないのか…」
常闇「話を聞く限りどうやら大人数で外に買い出しに出ていたそうだ。文化祭の装飾に使う予定の材料を…な。」
麗日「文化祭…」
瀬呂「そう、文化祭。…なぁ、お前らこれからどうすんの?校舎はあんなんだからこっちに来たんでしょ?」
文化祭。その言葉に反応するように、瀬呂はこれからの話を持ち掛ける。 - 96スレ主25/11/04(火) 21:07:12
八百万「外に、出ようかと思っていますの。…『緊急避難マニュアル』、存在は…?」
瀬呂「知っているし、見た。…最後のページでしょ。」
八百万「ええ。…わたくし達はこれから、『堀須磨大学』に向かおうと思いますの。」
事前に話し合っていたことであった。雄英高校と同じ、学校という括りの建物。
『2つ目の目的地』に向かうための準備、足掛かりとして選択したのだ。
葉隠「…あれ、堀須磨、って…」
八百万「…えぇ。昨年度までわたくしが通っていたのがその大学の付属中学ですわ。」
堀須磨大付属中学校。八百万の母校の名前だ。
緊急避難マニュアルの最終ページにその大学の名前が入っているのを見つけ、彼女は決意を固めたのだ。
瀬呂「…そっか。もう決めてんだ。…なぁ、一つ提案があんだけど…」
八百万「提案…なんでしょう…?」
瀬呂「…俺も、連れてってくんね?」 - 97スレ主25/11/04(火) 21:26:24
葉隠「…えっ、瀬呂くん…それ、本当なの…!?」
瀬呂「ホント。…ちょっと前から考えてたんだよ、俺このままでいいのか、って。ここに居ると、自分が何のために生きてるのか分かんなくなる。……今まで死んでいった奴らのこと考えるとさ、俺たちはここの外に何かを繋いでいくべきなんじゃないか、って、そう思ったんだ。」
常闇「…外部に活路を見出そうとしているのか。」
瀬呂「黙ってて、悪かった。」
葉隠「…ううん。責めないよ。気持ちは、分かるから…」
飯田「…仲間に加わるというのなら、もちろん歓迎するが…そちらの事情はいいのか?」
峰田「そうそう。一人労働力が減る訳だろ?いい顔はされねーんじゃ…」
轟「…一人じゃねぇ。」
それまで静かに事の運びを見守っていた轟が、声を上げた。
轟「俺も行く。あいつらに俺の個性は有効打になる。…もう誰も、死なせたくねぇんだ。」
瀬呂「…もとより提案はするつもりだった。俺たち4人と校舎にいる奴らで遠征に行かないか、ってな。俺は反対しない。」
常闇と葉隠は互いに顔を合わせ、そして頷く。
常闇「決意は固いのだな。……ならば、役割分担だ。俺たちはここに残ろう。」
葉隠「後ろは任せて!人類の未来は託したよ、ヒーロー!」
八百万「A組側の意思確認は出来ました。後は…」
そう言った八百万の、僅か数センチ後ろ。
骨抜「聞いちゃった、俺。」
誰にも気がつかれることなく、彼は忍び込んでいた。 - 98スレ主25/11/04(火) 21:39:24
八百万「きゃあっ!?」
骨抜「A組がいつまで経っても集合場所に来ないものだから迎えにきたら、これだよ。…校舎に誰かいるとは聞いていたけど、君たちとはね。」
轟「あ。すまん、忘れてた。」
骨抜「まぁいいけどね。無事ならそれで。で、話は聞いたよ。二人が抜けて外に出るんだって?」
大きく肩を跳ねさせた八百万が、息を落ち着かせる。
八百万「え、ええ…我々学園生活部に加わって、外部の大学に…」
骨抜「そう。ま、いいんじゃない?」
瀬呂「…え、あっさりOK?」
拍子抜けした瀬呂に、骨抜はからりと笑う。
骨抜「鎌切はともかく小森の考察は正直ここじゃ生かしきれない。亡き級友の遺志を継いでくれるってんなら止めないよ。B組の方には俺から言っておく。先輩方にもね。」
轟「…わりぃ、負担増やしちまうが…」
骨抜「…それは短期的に見ればの話でしょ。この事態が終息するかもしれない可能性に比べりゃなんてことはない。…じゃ、後は頼んだよ。……また、ここで。」
ひらりと手を振って骨抜はまた音もなく扉をくぐり抜けていった。
…再会の約束と共に。
瀬呂「…えーっと、そういう訳で…よろしく?」
…こうして、学園生活部は7人の大所帯へと成長した。 - 99スレ主25/11/04(火) 21:53:02
-ハイツアライアンス 1-A 玄関前-
各自の自室から持ち出した荷物を背負って。
7人となった学園生活部は新たな一歩を踏み出した。
葉隠「良いお土産を待ってるから!…だから、絶対に帰ってきてね!」
常闇「無事を祈っている。…息災を。」
黒影「ゲンキデナー!」
庄田「B組を見かけたら、どうかよろしく頼んだよ。」
角取「ドウカ…小森さんの無念を、晴らしてくだサイ。お元気デ…!」
骨抜「こっちは良いようにやっとくから、心配は要らない。ただ、無事に帰って来ることだけ考えてくれりゃいいから。」
ブラドキング「…同行してやれなくて、すまない。…どうか、無事で。」
「「「行ってきます!!」」」
辛いことは、たくさんあった。悲しいことも、たくさんあった。
…この旅は、それらが全て無駄ではなかったと証明する旅だ。
だから、今は上を向く。
全てが終わったら、その時に思い切り泣けばいい。その時に思い切り…弔ってやればいい。
だから、だからその時が来るまで、止まらずに動き続ける。悲しみを忘れるように、ただただ、ずっと。
……… - 100スレ主25/11/04(火) 21:56:31
厚い見送りを一身に受け、外への道を歩み始めた一団。
しかしすぐに、麗日の動きが止まる。
麗日「……ぁ。」
突然。なんの前触れもなく。彼女は思い出した。
どうして、今まで忘れていたのだろう。
『教員寮で面倒を見ることになった。』
麗日「…救けに、行かなくちゃ。」
教員寮の方向へと。
彼女は周囲の静止を振り切って、走り出した。 - 101スレ主25/11/04(火) 22:02:59
-教員寮-
八百万「麗日さん!?」
飯田「突然どうしたのだ、麗日くん!」
麗日「救けないと…今も、中に…!」
何かに取り憑かれたかのように、彼女はただひたすらに教員寮の中を駆け巡っていた。
その後ろを八百万と飯田が付いて回る。ただ事ではない様子にただただ二人は戸惑っていた。
麗日「デクくんが…命がけで、救け出した子……」
その一室の扉を開けた麗日は、ほっとしたように笑った。
麗日「居た…!よかったぁ…!!」
麗日「『エリちゃん』!救けに来たよ!」
部屋の前まで来た八百万達は、自分の目を疑った。
麗日「怖かったね。もう大丈夫やからね。」
麗日は、それはそれは大事そうに抱え上げて撫でていた。
ただの、熊のぬいぐるみの頭を。
第5.5章 終わり - 102スレ主25/11/04(火) 22:07:25
はい。開始前に振ったダイスは最後の麗日さんのシーンを決めるものでした。
・名前を聞いて、緑谷くんの存在を思い出していた
・『あの日』は文化祭準備期間に起こった
・麗日さんはインターンでエリちゃんと深い関わりがあった
…等々の理由でこのような展開になりました。 - 103スレ主25/11/04(火) 22:38:58
番外編3 始まり
上鳴「…ここにも居ないかー…小森ちゃん、そっちはどーよ?」
小森「こっちも居ないノコ……」
上鳴「…そっかぁ。」
A組寮襲撃事件から数日。
ヒーロー科の面々は行方を眩ませた生徒数名の捜索活動に当たっていた。
単に気まずいのか、それとももう戻ってこれるような状態ではないのか。
無意味とも思われる行動に時間と労力を割かされていることに不満を感じている者は少なくなかった。
上鳴もまた、その一人だった。
寮を隅々まで荒らし、結ちゃんを追い回し脱走させて命の危険にさらしたやつらをなぜ、と。
理解できないながらも、しかし見捨てることはできずに、今に至る。 - 104スレ主25/11/04(火) 22:53:38
上鳴は目標、目的の存在に大きく左右される人間であった。
何をするにもぼんやりとした目標では本腰が入らない。
「誰かを守る」よりも、「大切な人を守る」方が彼にとってずっとやり易いことであるのだ。
それは、この地獄のような状況においてもそうだった。
漠然と今日を生き延びるだけではない。なにか、確固たる目標を彼は欲していた。
それが、文化祭だった。
上鳴「…あ」
小森「どうしたノコ!?」
上鳴「スマホ…忘れてきちゃった…」
小森「…ス、スマホ…」
上鳴「時計代わりにしてたのに…」
がっくりと項垂れる上鳴。
…時計としてだけではない。
あの中には彼が大事にしているものの全てが今詰まっている。
大切な友人達の顔、声、思い出。
それを常に手に持っておくことでひそかに勇気を貰っていたのだ。
ふとした時に襲い来る漠然とした恐怖に、立ち向かうための。 - 105スレ主25/11/04(火) 22:57:20
小森「時計なら私のを見ればいいノコ。無くしたんじゃないならそれでいいでしょ?」
上鳴「まぁそうだけどさぁ…」
口を尖らせた上鳴。
その時だった。
二人の居る雑木林の合間を駆け抜けるように悲鳴が響き渡る。
一も二も無く、二人は駆け出していた。 - 106スレ主25/11/04(火) 23:08:25
「う、うわぁぁぁ!」
悲鳴の元はすぐに見つけ出すことができた。
かれらに囲まれて、腰が抜けてしまったのが地面に座り込んだまま動かない。
上鳴「見っけた!」
小森「もう大丈夫のこ!」
と、要救助者を庇うようにして立ちふさがった二人だったが、それに対しその人物はキツく目を剥いた。
「ヒーロー科!?っ、何しに来たんだよ、俺は救けなんか要らない!」
上鳴「っはぁ!?何言ってんすか、腰抜けてるくせに!」
「うるさいうるさい!ヒーロー科に守ってもらわなくても、俺たちは自分で自分の身を守れるんだ!自由を勝ち取るんだ!!」
小森「っ、それで逃げ出したってことノコ…!?」
上鳴「大人しく下がっててくださいって…!」
「俺の個性は強いんだ…俺だけでも勝てるんだ!そこをどけ!」
あまりの剣幕。
抑圧された生活はこうも人を変えてしまうのかと、二人は戦慄を覚えた。
「ヒーロー科の力なんて要らない…それを証明してみせる…!」
産まれたての小鹿のような足の震えで。しかし彼はその場で立ち上がってみせた。
上鳴「ちょっ、あんた何して…」
二人の静止をも振り切って、その人物はかれらに向かって特攻を決めたのだ。 - 107スレ主25/11/04(火) 23:13:05
偶々。偶然。小森の方がその人物に近いところに居た。
彼女は走り出して、そのすぐ後を上鳴が追う。
「俺だって俺だって…っひぃ!?」
彼は個性を使おうと、かれらに接近した。
が、かれらも黙ってやられるわけがなかったのだ。
緩慢に振り上げられた腕に、その人物は再び恐怖を思い出さざるを得なかった。
…と、恐怖のあまりその時彼は咄嗟に信じられない行動に出てしまった。
小森「……のこっ!?」
近くに居た小森の服をむんずと掴むと、
…そのままかれらの前に、差し出した。 - 108スレ主25/11/04(火) 23:17:04
「死にたくない!!」
小森「っちょ、離してっ…!!」
小森を盾に、彼は身を縮こませる。
動こうにも強い力で押さえつけられてしまい、小森は動くことができなかった。
小森「っぁ…」
手が、爪が、迫る。
目を、閉じた。
目尻に、水滴が光る。
上鳴「女の子泣かせてんじゃねぇよ!!!!」 - 109スレ主25/11/04(火) 23:25:22
小森は自身の体が強い力で押されたことに気がついた。
彼女の体を掴んでいた人物の体もまた、跳ね飛ばされる。
上鳴「…人間…スタンガン…!」
かれらに接触し電流を流し込めば、焦げ臭い匂いを発してかれらは地に伏せていった。
上鳴「…強個性ってだけで戦えんなら、ヒーロー科は要らないんだよ…!」
「ぁ……お、俺は知らねぇ!何も、っひいい!!」
足を縺れさせながら、その人物は一目散にその場から逃げていった。
その方向が寮の立ち並ぶ辺りであることに気がついた上鳴は、ため息をつく。
上鳴「…小森ちゃん、大丈夫?」
尻もちをついた小森に手を伸ばす上鳴。
しかし、小森は目を見開いたまま動かない。
小森「…上鳴……腕、が…」
上鳴の二の腕から前腕部にかけて。腕の大部分に大きな裂傷が生じていた。
二人に体当りをして庇った時に、代わりに負った傷だった。
上鳴「…はは、ごめん……ミスっちゃった。」 - 110スレ主25/11/04(火) 23:32:15
上鳴は小森の腕を掴み、ぐいと引き上げる。
小森「っ…!」
上鳴「っとと…ごめん、強く引っ張りすぎた?」
小森「い、や…大丈夫のこ。」
顔を歪ませたたらを踏んだ彼女に、上鳴は心配の声をかけた。
小森「それよりっ、それより早く治療しないと…!」
上鳴「…したところでどうにもならないっしょ、これは…」
小森「でもっ…!」
上鳴「…なぁ、さっきの俺、ちょっとかっこよくなかった?ミッナイ先生みたいでさぁ。」
上鳴は、笑った。
上鳴「へへ、俺ってば今一番ヒーローしてるかも。」
…そして。
上鳴「ね、小森ちゃん。頼みたいことがあんだけど、いい?」 - 111スレ主25/11/04(火) 23:44:07
小森「っ、そんな、これで最後みたいなこと…」
上鳴「いいからいいから。そんな難しいことじゃないからさ。……このことを誰にも言わないで欲しいっていう、ただそれだけのことだから。」
小森「っ、え…?」
上鳴「…ここんとこさぁ、俺たちすっげぇピリピリしてたじゃん?で…避難してる奴らが俺たちのこと信用できなくなってるみたいにさ、俺たちの方も避難民のことを疑い始めてる。」
どちらにしても、人間としては至極当然の道理であった。
…ただ。
上鳴「女の子盾にして自分だけは救かろうとする人間も救わなくちゃいけないのがヒーローだ、って俺もあいつらも多分分かってはいるんだけどさ。…そういう人間があの中に居るって知って、あいつらはヒーローやってけんのかな、って、ちょっと思って。」
小森「それ、は…」
上鳴「だからさ、…このことはナイショな。…頼むよ、シーメイジ。」
小森「!!!……それはズルいのこ…チャージズマぁ…!」
ヒーローとして頼まれてしまえば、もう彼女に断るという選択肢はなかった。
…その大きな瞳に大量の涙を浮かべて、彼女はその場を走り去った。
小森「っ、絶対…救けにくるから…!」
…諦めるという選択肢もまた、彼女の中には無かった。 - 112スレ主25/11/04(火) 23:56:30
…
空は青かった。
どこまでも、皮肉みたいに。空は、青かった。
上鳴「…こういうのってさぁ。普通雨とか降ってるもんじゃね?」
大きく、彼は独り言つ。…いや、彼にそのつもりは無かった。
上鳴「な、葉隠?」
葉隠「…いつ、から…」
上鳴「んー、体当りした直後くらい?」
葉隠もまた、悲鳴を聞いて相方の庄田を置いて駆けつけていたうちの一人であった。
しかし彼女は距離のせいで…寸でのところで、間に合わなかったのである。
葉隠「上鳴くん…嘘だよ、ね?嘘って言ってよ、ねぇ…」
上鳴「…そうだったら良かったんだけど。」
上鳴の心は不思議なくらいに凪いでいた。もうじき終わりを迎えると言うのにも関わらず。
上鳴「俺…やっぱり完全な形じゃなかったけど、文化祭っぽいことができてよかったと思う。やり残したことなんてまだまだあるけど、それだけは良かったな、って。」 - 113スレ主25/11/05(水) 00:02:54
彼は自身の体が急激に冷えていくのを感じていた。
というのにどこか熱を帯びているような感覚さえあった。
眠りにつくかのように、意識が遠ざかっていく。
葉隠「―!――!」
―あぁ。……女の子、泣かせちゃったなぁ。
罪悪感を感じるのと、裏腹に。…一人で迎える最期ではなかったことに、彼は安心しても居た。
白んでいく意識の中。…最期に思う。
―…がんばれよ イヤホン=ジャック!
どこかの、ありえた世界線で。彼女がそう願ったように、彼もまた。
番外編3 「大事なものを心に据えて」終わり - 114スレ主25/11/05(水) 00:06:41
- 115二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 00:10:37
緑谷引子
- 116二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 00:12:57
塚内さん
- 117二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 06:01:09
Mt.レディ
- 118二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 10:10:57
青山ママン
- 119二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 10:11:10
リカバリーガール
- 120スレ主25/11/05(水) 10:14:10
どうせなので5人の中からダイスで決めましょう。
しかし……うーむ……(スレ主が困り果てた時に発する声)
1.引子さん
2.塚内さん
3.Mt.レディ
4.リカバリーガール
5.青山ママン
dice1d5=4 (4)
- 121スレ主25/11/05(水) 10:19:57
ついでに追加でダイス。
ちょっと今までの展開をまとめの更新をしながらスレ主自身振り返りたいのと、原作2作品の確認もしたいしクールダウンもしたいのでこのダイスを振ったらしばらく本編の更新をお休みします。
dice3d7=3 1 2 (6)
dice5d14=1 5 14 3 1 (24)
- 122二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 11:02:59
- 123二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 11:15:19
楽しみに待ってます
でもご無理なさらず - 124二次元好きの匿名さん25/11/05(水) 12:57:38
デクもかっちゃんも出てこないのに面白いのすごいと思う
2人が出てくるの楽しみだ

