左手で文字を書くのにも随分慣れてきた

  • 1二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:15:37

    療養中から少しずつ練習してきたが、半年かけて何とか読める文字が書けるようになってきたと思う。
    そういうわけで今日から日記をつけることにした。
    もうすっかり秋になった。庭の木々が赤や黄色に色づいて綺麗だと思う。
    季節の変化をゆっくり感じたのはいつぶりだろうか。今から姉さんの好きだった春が待ち遠しい。

  • 222歳―晩秋25/11/01(土) 23:18:28

    今日は炭治郎のところに行ってきた。家族の墓にも手を合わせさせてもらった。
    あの時助けられなかった詫びを内心で長々としていたら禰豆子に心配されてしまった。

    沢山話をした。嘴平や我妻も元気でやっているようだ。明日は村田と洋食屋に行くのだと話したら皆嬉しそうに笑って楽しんできてくれと言ってくれた。
    温かい空間だった。炭治郎がああも心優しく育った理由がわかる気がする。

  • 3二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:18:38

    義勇さん右利きだったのかな
    だとしたら苦労しただろうな…

  • 422歳-冬25/11/01(土) 23:21:49

    今日は先生が様子を見に来てくださった。他愛ない話を沢山して、錆兎の思い出話も少しした。
    「もうすぐお前の産まれた日だが何か欲しいものはあるか?」と聞かれて少し面食らってしまった。誕辰のことなどすっかり忘れていた。そういえば二十二になったのは療養中のことだったな。
    先生にはとりあえず「考えておきます」と返事をしておいた。その前に新年の祝いが待っている。
    宇髄がお館様に相談してなにやら画策しているのは聞いているが、なにがあるのだろう。

    少しだけ楽しみだ。

  • 522歳-正月25/11/01(土) 23:25:27

    新年の祝いがまさか産屋敷邸で行われるとは思っていなかった。
    炭治郎達、村田、宇髄、その他の生き残った隊士や隠の皆が集まってかなり壮観だった。……旅に出ていた不死川も来ていたのには正直驚いた。随分雰囲気が柔らかくなったと言ったらお前もだろうが、と少し呆れられてしまった。
    不死川は暫く風屋敷で休息をとるらしい。遊びに行ってもいいかどうかを聞き損ねてしまったが、おはぎを土産に行ってみてもいいだろうか。

    宇髄には初詣に誘われている。多分また奥方たちも一緒だろう。邪魔にならないかと聞いたら黙って頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。気にするな、という意味だったのだろうか?
    断る理由もないので甘えることにしよう。

  • 623歳-冬25/11/01(土) 23:32:15

    昼に突然宇髄と不死川が押しかけてきたと思ったら俺の誕辰祝いだと言われてあれよあれよと支度を整えられてしまった。少しして炭治郎達もやってきて、正月と変わらない賑やかさだったと思う。
    いつの間にか23歳になってしまった。
    庭の梅が少し膨らんでいるのに、夜になって縁側で呑んでいる時に気がついた。いつ咲くだろうか。
    俺が幼い頃に亡くなった母は梅酒を作るのが上手だったなと、何故だか突然思い出した。

    何故だろうか。最近は昔のことをよく思い出す。

  • 723歳-春25/11/01(土) 23:36:39

    近所に散歩に行ったら桜が見事に咲いていた。
    数日後には禰豆子と我妻の、来月には炭治郎と胡蝶の妹の祝言がある。
    祝いに何を贈ろうかと不死川と宇髄と相談ばかり最近はしているがそれが楽しくて仕方がない。
    神崎と嘴平の祝言はまだなのか、と前に聞いたらそれはまだみたいですと炭治郎が笑っていた。
    ……あの二人の祝言が見られる日まで生きたいものだ。

  • 823歳-春25/11/01(土) 23:39:49

    少し間が空いてしまった。
    禰豆子や炭治郎の祝言が無事に終わって放心していたようだ。二組とも良い式だった。
    祝言とはあんなにも暖かくて幸せなものだったんだな。長い間忘れていたような気がする。

    明日はお館様の屋敷に呼ばれている。今日は早めに休むとしよう。

  • 923歳-春25/11/01(土) 23:42:19

    まさかお館様に縁談を勧められるとは思ってもいなかった。
    藤の花の家の、俺よりひとつ下の娘様だそうだ。昔俺に助けられたと言っていた。
    名前や家の位置には確かに覚えがあるけれど、その方は俺でいいのだろうか。

    片腕の、先もきっと長くない男などで。

  • 10二次元好きの匿名さん25/11/01(土) 23:42:53

    凄い優しいスレなのにヒタヒタと忍び寄る不穏

  • 1123歳-夏25/11/01(土) 23:45:56

    婚約をすることになった。

    お相手はかねてからお館様に打診されていた藤の花の家の娘様だ。話が出た春の日から何度かお会いしたが、綺麗なひとだった。
    「あなたと幸せになりたいのです」と、真っ直ぐな目で言ってくれた。
    痣のことも、腕のことも、なにもかも承知の上だと。強い方だと思う。
    宇髄には泣いて喜ばれたし、炭治郎や不死川からも祝いの手紙が届いた。
    幸せになってもいいのだと言われた気がして少し泣いた。

  • 1223歳-秋25/11/01(土) 23:49:46

    祝言を挙げた。
    お館様が何もかも手配してくださって、思っていたよりずっと盛大な式になった。
    白無垢姿の彼女はこの世の何よりも美しかったと思う。姉さんもきっと、あの人にとってはこれくらい美しく見えたことだろうと思ったらほんの少し泣けてきたがどうにか堪えた。めでたい日に悲しみの涙なんて流しては叱られてしまうだろうから。

    聞けば不死川もいずれ祝言を挙げるらしい。それもお館様が勧めてのことだと聞いた。
    不死川にも幸せになって欲しいと切に願う。

  • 1324歳-晩夏25/11/01(土) 23:55:11

    子が産まれた。俺の子だ。
    元気によく泣く男の子だった。産声を聞いた時には恥ずかしながら力が抜けてしまって、宇髄が支えてくれなければ多分倒れて動けなくなっていたと思う。

    小さな身体だというのに火傷しそうなくらいに温かくて、重たくて、自然と涙が溢れていた。な何ヶ月も悩んだ名前を妻が「良き名です」と言ってくれたのが嬉しかった。
    いつまで共にいられるかわからないが、この子が生きる道が美しいものであるように願う。

    生まれてきてくれてありがとう。

  • 14二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 00:15:58

    25歳まで残り半年しかないの辛いわ
    赤ちゃん生まれたばっかなのに

  • 15二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 04:56:03

    >>14

    わからんぞ

    たまにあにまんの冨岡義勇は寿命を克服したり歳を忘れたりするから

  • 1624歳-秋25/11/02(日) 08:29:31

    子の成長は早いということを実感し通しだ。毎日違う顔を見せるから、見ていて飽きるということがない。指を手のひらに置くと力いっぱい握り返してくるのが愛おしい。
    この子はどんな大人になるのだろう。目鼻立ちは俺にそっくりだが、妻のような優しく強い子に育って欲しいと思う。俺はそれを見ることはきっと出来ないのだろうが。
    少し寂しいから、この子が歳を重ねるごとに一通ずつ読んでくれるよう手紙を書こうと思う。日記と並行して書くのは少し大変だろうが、この子にしてやれることは金銭面以外にはそれくらいだ。
    不甲斐ない父親ですまない。

  • 1724歳-秋25/11/02(日) 08:33:05

    寛三郎が死んだ。
    最近はもう歩くことも難しくなって縁側に置いた座布団の上で微睡んでいることが多かったが、今日は珍しく俺の膝に乗ってきて喋っていたと思ったら夕方には冷たくなっていた。
    最期の最期まで、俺の名を呼んでいい子だと言ってくれた。
    十年以上、よく俺の傍にいてくれたと思う。不甲斐ない主だっただろうに、いつも優しく羽で頭を撫でてくれた。有事の折の、お前の力強い羽音が俺はとても好きだったよ。

    ありがとう、寛三郎。おやすみ。

  • 1824歳-秋25/11/02(日) 08:36:08

    最近、少し体が重い。決まった時間に起きられなくなったような気がする。
    そろそろ寒くなる季節だからか筆の進みも遅くなった。療養中も冬は体の動きが鈍くなったから多分それなのだろう。或いは風邪を引いたのかもしれない。
    明後日は定期検診の日だから、神崎と栗花落に相談してみようと思う。今日は葛湯を飲んで早めに休むことにする。

  • 19二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 08:37:51

    わァ…ァ…

  • 2024歳-秋25/11/02(日) 10:45:34

    神崎と栗花落のところに行ってきた。検査の結果特に変わったところはないらしい。
    やはり季節の変わり目で風邪をひきかけているのでは、とのことだった。少しだけ安心した。
    嘴平と神崎も春になったら祝言を挙げるらしい。
    祝いの品を手配しておかなくてはならない。また忙しくなるな。
    帰り道に見事な紅葉を見た。家主に頼んでひと枝貰って帰り、押し葉にしたが上手くできるだろうか。
    栞にでもして長く使えたらいいと思う。

  • 2124歳-初冬25/11/02(日) 11:00:39

    近頃はずっと熱っぽくて臥せってばかりだ。子の様子も中々見てやれないのが心苦しい。
    宇髄の奥方が時々様子を見に来てくれているが、あちらも一人懐妊したばかりと聞いているしあまり余裕もないだろう。知り合いの伝手を辿って乳母を一人雇うことにした。
    柱時代の給金が残っているのが有難い。物欲のなかった昔の自分に感謝する。
    筆を持つにも最近は難儀する。この日記を書けるのもあとどれくらいだろうか。

  • 2224歳-冬25/11/02(日) 11:09:01

    ここ数日はやけに体が軽い。立って動くことも不思議と苦ではない。
    だが、あまり悠長なことも言っていられなくなったらしい。今朝鏡を見たら頬に痣が出ていた。いつになっても消えないから、多分熱が相当に高いのだと思う。とはいえ体の調子は頗る良いし妻にも痣の発現条件のことは話していないから、適度に家事などをこなして過ごすことにする。

    日記を書いていたら初雪が降ってきた。幼い頃は姉さんとよく雪兎を作って遊んだことをふと思い出した。
    叶うなら息子に作り方を教えてやりたいと思う。

  • 2324歳-冬25/11/02(日) 11:22:54

    年末年始を布団の上で過ごすことになるとは思っていなかった。もう起き上がるのも辛くなってきたが、この日記だけは最後まで書き続けたいと思う。
    昨日は炭治郎達が、今日は宇髄と不死川が見舞いに来てくれた。不死川も少し具合が悪そうにしていたが、娘が生まれたことを嬉しそうに話してくれた。宇髄のところも順調に腹の中で育っているらしい。
    炭治郎達とは本当に他愛もない話をしていたのに、突然炭治郎が泣き出すから驚いた。連鎖するように我妻や禰豆子や嘴平まで泣き出して参ってしまったな。
    咳が止まらなくて苦しい。最近は唾に血が混じることも多くなってきた。咳のしすぎで喉が切れてしまったんだろうか。
    鏡を見たらまた痣が出ていた。消えないからと言って支障はないが、少しだけ恐ろしく思える。

  • 24二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 11:39:05

    ここから入れる保険は

  • 2524歳-冬25/11/02(日) 11:53:18

    如月に入った。今日は本当に久しぶりに息子をこの腕に抱いた。本当に、一気に大きくなった気がする。ばたばたと手足を動かしている力が思いのほか強くて驚いてしまった。
    いつかこの子と手を繋いで散歩をしてやりたかったが、たぶんもう難しいのだと思う。
    夜になると咳が止まらなくて指一本動かすのも億劫になってしまうから、日記は夕方に書くことにした。
    ああ、また紙が血で汚れてしまった。一度落ちると拭いても染みになるのが厄介だ。
    とはいえ書き直す気力もないのでこのままにするしかない。すっかり左手での筆記にも慣れてきたのに読みにくくなってしまうことが勿体ないと思う。

  • 2624歳-冬25/11/02(日) 12:02:40

    支えてもらいながらでないともう文字もまともにかけなくなった。情けない。
    明日は如月の七日。俺は明日で二十五になる。また、だれかがくる予定だときいているがだれがくるのだったか。
    いきが苦しい。
    まだもう少し生きていたいのに、もうだめだというのが何となくわかる。
    死後のことは文机の中の箱にすべて書いて入れてある。間際にやりのこしたことはないけれど、おもいのこすことは沢山ある。
    まだ死にたくはない。
    けれど、不幸だけの人生だったとは思わない。
    大切なものを最後に守って繋げたのだから、少しは誇っていいだろうか。
    ……向こうに行ったら、姉さんと錆兎に聞いてみたいと思う。

  • 27二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 12:13:35

    >>24

    大正時代に保険なんかなかろ

  • 28二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 12:21:34

    >>27

    明治生命はもうできてる

  • 297歳-晩夏25/11/02(日) 12:23:03

    七つの誕辰に、祝いの品の他に母上から少し古い日記帳をいただきました。
    僕が幼い頃、まだ一つにもならない頃に亡くなられた父上の日記帳だそうです。最初の方はところどころ文字が乱れていて、どうしてと母上に聞いたら「お父様は沢山の人の命を守って戦ったから、右腕を先に神様のところに差し上げたのですよ」と言って鬼のことを話してくださいました。

    僕が学んでいる神楽も、元は父上が使っていた鬼を倒すための剣技だそうです。僕はまだ上手く舞えないけれど、父上はどんな風に舞ったのでしょう。どんな風に刀を振るったのでしょう。
    写真を見せてもらいましたが、僕にそっくりで、でも優しそうな顔をしていました。よく遊びに来て下さる宇髄のおじ様が僕を見る度にそっくりだと笑っていた理由がわかった気がします。
    誕辰の度に一通ずつ貰う手紙の文章はとても優しい言葉で溢れていたから、父上はとてもお優しい人だったのだと思います。
    声を聞いてみたかったな。
    僕がこれからずっとお母様を支えて、素敵なお嫁さんを貰って、立派に長生きしたら褒めてもらえるでしょうか?
    今からその日が楽しみです。

    明日は宇髄のおじ様がきて下さるそうです。宇髄のおじ様に父上のことを聞いていいか、母上に後で尋ねてみようかな。

  • 3025/11/02(日) 12:27:37

    『冨岡義勇の日記帳』~完~

  • 31二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 12:29:13

    どの時期も内容の作り込みが良かったです
    スレ主お疲れ様でした

  • 32二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 13:06:28

    >>30

    読み物としての完成度が素晴らしかったです

    ありがとうございました

  • 33二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 13:19:01

    以前炭治郎の日記を書かれてた方でしょうか?
    耐えてたのに最後で涙腺崩壊してしまった…
    ありがとうございました

  • 34二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 13:27:13

    辛…
    一人だけ残された宇髄さんかわいそ

  • 35二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 14:04:57

    >>34

    嫁達と頑張って乗り越えてくよ……

    良き良きものでした

  • 3625/11/02(日) 15:32:00

    >>33

    日記風のSSスレは何度か立ててますが炭治郎でやったことはないので違う方ですね…!

    でもありがとうございます、嬉しいです!

  • 37二次元好きの匿名さん25/11/02(日) 23:43:18

    泣いた...

  • 38二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 08:37:49

    義勇さんは息子で不死川さんは娘か

  • 39二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 16:33:12

    悲しい...けど良い文章だった

  • 40二次元好きの匿名さん25/11/04(火) 01:26:14

    何もかもが美しい文章でした…。

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