ジャスティンパレス「どうすりゃいいんだ・・・」

1二次元好きの匿名さん25/11/03(月) 09:49:46

敵地、東京競馬場で迎えた天皇賞・秋
先頭田原がまさかのスロー逃げ、直線で勢いを見せたが完敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「次走は買いだな」の声
無言で帰り始める人馬達の中、2年前の天皇賞馬ジャスティンパレスは独りパドックで泣いていた
天皇賞・春で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるルメール・・・それを今の栗東で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」パレスは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、パレスははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいハミの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って調教をしなくちゃな」パレス苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、内川はふと気付いた

「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」
ゲートから飛び出したパレスが目にしたのは、スタンドを埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに新聞が振られ、地鳴りのようにG1のファンファーレが響いていた
どういうことか分からずに呆然とするパレスの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「返シ馬ダ、早ク行キマスヨ」声の方に振り返ったパレスは目を疑った「ル・・・ルメールさん？」　
「なんだ若造、居眠りでもしてたのか？」「ゆ・・・誘導馬さん？」　
「なんだパレス、勝手にボンドさんを引退させやがって」「タイホさん・・・」　
パレスは半分パニックになりながらターフビジョンを見上げた

1番：ジャスティンパレス　2番：ディープモンスター　3番：タイトルホルダー　4番：小さな身体で頑張るメロディーレーン　5番：アイアンバローズ　6番：内川　7番：ディープボンド　8番：トーセンカンビーナ　9番：ヒュミドール

暫時、唖然としていたパレスだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ！」
杉山からゼッケンを受け取り、ターフへ全力疾走するパレス、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った