【その二】てめえが雷門イレブンか?

  • 1>>125/11/10(月) 17:15:59

    入部したらあっ

    これまでのあらすじ

    中学生になるまで人の輪に混ざれず孤独だったシマキンだが、彼は円堂からの勧誘で雷門中学サッカー部に自分の居場所を見出した。

    時は流れ一年と二ヶ月後。雷門中学サッカー部のFW兼GKとなったシマキン。

    雷門イレブンの一員として四十年間無敗の帝国学園サッカー部との練習試合を乗り越えた。

    続いてその名の通りオカルト必殺技を使う尾刈斗中学サッカー部との練習試合を迎える。

    果たしてシマキンは仲間たちと試合に勝ち、全国中学生サッカー大会の"フットボールフロンティア"の参加費を学校から出資してもらうことができるのだろうか…!?


    最初のスレなのん

    https://bbs.animanch.com/board/5823293/?res=192

  • 2>>125/11/10(月) 17:49:40

    その光景を見て、パクの心に浮き上がってきたものは、尊敬だった。監督として、大人としての責任感から来る心配を上回る、テコンドーキックをその身一つで受け止めた事実に対しての感動。
    「と…止めたァアアァアー!!!雷門シマキン、尾刈斗の真の切り札、テコンドーキックをタフネスブロックで見事に止めたァ!!」
    興奮する角馬。一方でタフネスブロックを使ったシマキン。
    (あが…がが…が…)
    格闘技をサッカーに応用して生まれた技であるテコンドーキック。その圧倒的パワー、人間に当たればタダでは済まない。
    おそらくシュートのダメージでシマキンはもうタフネスブロックを使えないだろう。
    一世一代の大作戦。勝利を掴むための賭け。
    雷門の全員が作戦を思い返す。いざ、作戦実行の時!
    「うおおおおおおおおお!!!」
    タフネスブロックでボールをキャッチしたシマキンは、あろうことかそのまま腹にボールを埋め込ませたまま走り出した!
    そう。ボールが取れないなら、パスがカットされるなら、相手から"パス"してもらえばいい。シュートを受け止めてドリブルすればいい。
    シマキンの巨体から繰り出されるドリブルはチームの中でも一番のパワーとスピードがある。パスしなくてもいいのでボールをカットされる心配も無し。
    しかしこの作戦、GKがドリブルするので当然ゴールがガラ空きになってしまう。だが試合時間ものこり少ない。雷門、リスクを承知での背水の陣ッ
    「つまりはボールを獲っちまえばシュートを防げなくてゴールが決まる。尾刈斗(俺たち)の勝ちってわけだ!いけ三途!霊幻!」
    「「怨霊!!」」
    二人から同時に必殺技を打たれるシマキン。言わばダブル怨霊か。禍々しい千手がシマキンを襲う。だが、シマキンだって気持ちでも技でも負けてない。
    一年分続けたドリブルの集大成。酸素という燃料を全力で取り込み、心臓はその拍数を増していく。シマキンの第二の必殺技が発動した。
    「ダッシュアクセル!!」
    怨霊を弾き飛ばし、そのままゴールへ一直線で爆走していく。ここまでくればボールをカットしてくる黒上はいない。安心してパスすることができる。
    「染岡ァ!!!」
    痛む体を動かして染岡にパスする。

  • 3>>125/11/10(月) 17:52:12

    「受け取ったぜシマキン…オマエの思い!!」
    歯を食いしばり、限界まで足を振り上げ、渾身の必殺技を打つ。
    「ドラゴン!!!」
    天空へと昇っていく染岡のドラゴン。そこへ跳躍する豪炎寺。豪炎寺も染岡と同じ気持ちだ。決してシュートを取らせるつもりはない。その熱を燃料にして炎は燃え上がる。
    「トルネード!!!」
    青空のような群青色の龍が豪炎寺のファイアトルネードの紅蓮色に染まっていく。ドラゴンが吠えた。炎が一際大きく燃え上がる。
    全力のドラゴントルネード!
    「ダブルブレード!!」
    だが相手も必死。必殺技の構えに入った。鉈の必殺技であるキラーブレード。その禁断の二刀流。この技は鉈の両腕にかなりの負荷がかかる。この試合ではあと二回しか打てない技。二回以上打てば、しばらくケガの治療に専念するために二週間ほど試合には出られないだろう。そうなっても構わない。全てを絞り尽くしてでも雷門を潰す気迫の鉈。
    ドラゴンクラッシュとファイアトルネードが合体したドラゴントルネードと、キラーブレードとキラーブレードが合体したダブルブレード。合体必殺技同士の激突ッ
    瞬間、攻撃と防御の激突時のエネルギーがフィールドで爆発した。
    走る閃光。マネージャーも夏未も冬海も、観戦に来ていた帝国の選手にすらゴールが見えない。その末、勝ったのは、

  • 4>>125/11/10(月) 18:00:19

    「止めた!!尾刈斗GK鉈十三、ドラゴントルネードをダブルブレードで切り裂きましたアァーーーー!」
    一瞬だけ安心し、そしてシームレスに反撃へと移行する尾刈斗。敗北のリスクが無いという心理的アドバンテージが、ここにきて響いた。対しての雷門。
    「…と…止められた…?」
    顔面を蒼白させる風丸。いや風丸だけじゃない。雷門の全員が、青ざめていた。シマキンはタフネスブロックに加えてダッシュアクセルも使った。もうチカラを使い果たしてGKとしての役割は果たせそうに無い。
    「GKによるペナルティー・エリア内でのボールの破壊が起きたため、至急、新しく別のボールが支給されます!選手は動かず、その場で待機します!」
    もう直ぐ訪れる、敗北。廃部。終焉。
    絶望の中、尾刈斗がボールを蹴った。

  • 5>>125/11/10(月) 18:23:47

    鉈からのボールが、フィールド中を渡っていく。前半から戦い続け、ボロボロの雷門イレブン。それに対してドリブルする尾刈斗の選手は前半出ていなかった魔界。残り体力の差と必殺技の"呪い"が原因であっさりと抜かされていく。
    そのままボールは敵FWの円谷に渡った。彼もまた、テコンドーキックの習得者。もう体力を使い果たし技を打てない幽谷代わり。
    キャプテンのそれには威力が劣る。だが必殺技を使えない今のシマキンを葬るには十二分な威力。
    まあ、そもそも満身創痍のシマキンがゴールにたどり着くことができているかも怪しい。
    ゴールを見てみる。なるほど、なんとかGKにはなれそうかもしれない。
    「そこに立ってるってことは、きっと、覚悟はできてるんだろうな。」
    つまりは全力を出すことこそが礼儀。円谷のテコンドーキックが放たれた。弾丸のようなスピード。シマキン、諦めずタフネスブロックの構え。しかし、立つことすらままならない。
    ボールが、シマキンに直撃した。

  • 6>>125/11/10(月) 19:23:23

    シマキンはふと、背中に伝わる熱を感じた。
    なんだこれは。わからない。が、それが頼もしいものだとことだけはわかった。
    熱の正体。それは…
    「お前だけに…任せられるか…!」
    「ゴールを守るのは…オレたちも一緒でやんす!!」
    「あーあったまんないっスねえ…オレたち全員で相手のシュート一発止められるかどうかのギリギリなんスから…!」
    雷門のDF陣。風丸、栗松、壁山の三人が駆けつけ、シマキンを支えてくれていた。
    「今だ!行け!円堂!」
    風丸が叫んだ。それと同時に、
    「ゴッドハンド!!!」
    シマキンと後ろの三人の背中が、巨大な神の手に支えられていく。選手越しなら、ゴッドハンドで支えてもハンドにはならない。
    シマキンと風丸と栗松と壁山の4人で円堂が駆けつけゴッドハンドを発動する時間を稼ぎ、そのままゴッドハンドの"手袋"の役割を果たす。
    事前の作戦会議でもこんなことをする予定はなかった。土壇場で成功させられたのは、日々積み重ねてきたチーム・ワークの賜物だろう。
    そのうちシマキンの破れたグローブの中には、新品に代わったばかりのハズなのにボロボロのサッカー・ボールが収まっていた。

  • 7二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 19:48:06

    なんか頼りにされてるオカンみたいでリラックスできますね…
    シマキンスレ…神
    本編の噛ませっぷりが嘘みたいに活躍するんだスポ魂を体現するんだ絆が深まるんだ

  • 8二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 21:45:55

    ババタレイレブン…待ってたよ…

  • 9>>125/11/10(月) 21:46:22

    ああーっ続きを書き終わるまでスレを保守させてくれーっ

  • 10二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 21:48:16

    しゃあっ!保守・ソード!

  • 11>>125/11/10(月) 22:16:35

    「と…止めました…!雷門GKシマキン、立っているのがやっとの体でテコンドーキックからゴールを守り切りました!!タフって言葉は彼のためにある!!」
    湧き上がる観衆。その歓声がまるで稲妻のように響き渡った。
    現実、ここからの逆転はかなり難しい。
    肉のヨロイがでダメージを軽減して尚、テコンドーキックの威力は胃の中身が飛び出るかと思うほどのものだった。それを二回喰らってしまったシマキンに、タフネスブロックを使う体力は残されてはいない。
    だが、ダッシュアクセルなら使える。
    「行くで。円堂。」
    呟くシマキン。その視線は前線を見つめている。諦めるつもりはない。雷門は。
    残りの試合時間も少なくなってきた。延長戦になればまず勝ち目はない。残り五分で、決着を着けなければいけない。
    シマキンが必殺技を打てるのもこれが最後。

  • 12二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 22:18:55

    スターンダッ!スターンダッ!立ち上がリーヨ!(じーさん書き文字

  • 13>>125/11/10(月) 23:12:15

    汗が落ちる、音がした。
    「突撃や!!」
    猛烈なダッシュアクセル。その姿はまるでモンスター・トラックのようだ。避けざるを得ない尾刈斗の選手たち。
    残り四分。
    ゴール前まで到着すると、役目を終えたシマキンは倒れ込んだ。ボールは先ほどと同じ染岡の元へ。
    腕が折れようが今、ここで勝つ気でいるようだ。鉈は既に両腕にキラーブレードを発動させ、跳躍した。落下の勢いでシュートを切断する気らしい。
    残り三分。
    「ドラゴン!!!」
    呼び出したドラゴンは翼が生え、通常の倍近くの大きさになっている。染岡はボールが破裂するほどの威力で技を撃った。コントロールも完璧。龍は宇宙にまで飛び出す勢いで飛翔していく。
    残り二分。
    「トルネード!!!」
    豪炎寺も極上の炎でそれに応える。その回転数、一秒につき十回転。まさに暴風雨ならぬ暴風炎だった。炎はそのエネルギーを制御できず、豪炎寺の足から全身に回っている。火だるまのシュート。
    残り一分。
    もはや言葉は要らなかった。
    勝ちへの執念と渇望が生み出したこの世に存在するどんな名刀をも上回る程の切れ味と美しさを持つ刃と化した鉈のダブルブレード。
    全ての力を出し尽くし、二人の動きが100%息の合ったものとなった、限界を超えた全身全霊の染岡と豪炎寺のドラゴントルネード。
    勝利と大会出場へと掛ける思いが生み出したゾーン状態だからこそ放てる、全国にも通用する至高の技。
    更にそこに、一歩踏み出す男がいた。
    残り五十秒。
    体を限界まで捻り、ゴム動力のように全身を回転させて放つ必殺シュート。純粋に勝負を楽しむ心の爆発力と危なっかしさを具現化したような技。
    四十秒。
    事前練習などしたことがなかったというのに、彼は自然と技を使っていた。自然と頭にこの技の名前が流れ込んできていた。さあ、叫べ。技の名前を。
    三十秒。
    ドラゴントルネードの軌道は、足を振り上げる円堂へと向かっていた。
    「グレネードショット!!!」
    円堂の新たなるシュートが、炸裂した。
    二十秒

  • 14>>125/11/10(月) 23:13:40

    鉈を突き動かしていたのは、ここで潰すべきだと自分の内から囁いてくる使命感ではなく、ただ、今この瞬間勝ちたいと思うサッカー・プレイヤーとしての本能だった。二本のキラーブレードをクロスさせ、ボールに切り込む。
    十秒
    踏ん張る鉈。シュートのパワーでホッケーマスクは既に割れていた。それでも引かない。負けたくない。
    五秒
    ダブルブレードの火花が服に燃え移る。それでもシュートを斬ろうとする集中は切れない。
    ただ、勝ちたい。
    三秒
    勝ちたい!!!勝ちたいんだ!!!
    一秒
    GKごと、ボールはゴールに突き刺さった。

  • 15二次元好きの匿名さん25/11/10(月) 23:33:51

    未だかつてここまで尾刈斗中学とシマキンが輝いてるssは無かったと思うんだよね

  • 16>>125/11/11(火) 00:13:46

    ホイッスルが鳴り響く。それ以外何も聞こえない。ゆっくりと、汗だくの首を回し、スコアボードを確認した。そこに合った数字に向けて、目の焦点を合わせる。
    尾刈斗、三点に対して
    雷門、四点。
    「オオ オオ オ オオ オ オ」
    「………ぃやったぞォオオォ!!」
    集中が解けて、やっと周りの状況が分かるようになってきた。歓声と円堂の叫び声が雷門中に響き渡る。彼らは夢へと向かう道が開けたのだ。全国の一番を決める戦いへの切符を手に入れたのだ。
    全身の血が爆速で巡ってる。耳もいつもよりよく聞こえて、目もいつもよりギンギンに見えた。
    空を見上げた。雲は全てなくなり、綺麗な夏空が見える。太陽ってこんなにも美しかったのか。
    美しいはずのに、心にくしゃりとシワがついた気分で綺麗だと思えない。
    「豪炎寺、染岡、お前たちのドラゴントルネードが教えてくれたから勝てたんだ!一人じゃできないことも二人で力を合わせればできるようになる。二人でダメでも三人で力を合わせればできるようになるってな!」
    「エース・ストライカーの座は譲らねえぞ、豪炎寺。」
    「染岡チャンも素直やないのォ。」
    「染岡チャンだと!?」
    じゃれ合う雷門イレブンたち。
    「すまなかった。」
    地木流監督が、円堂たちに話しかけた。
    「君たちを弱小のサッカー部などと侮辱したことを、撤回したい。」
    尾刈斗の選手たちも、横一列に並んでいた。顔に付いたままのホッケーマスクの残骸の隙間から涙がこぼれ出てきていた。
    「いいですよ。」
    円堂が言葉を返す。
    「それで、尾刈斗中も地区予選に出るんですよね?スッゲー技でした!お互いめちゃくちゃサッカー強くなって、地区予選を勝ち残ったらまた」
    ホッケーマスク越しでも太陽より眩しく感じる光が見えた気がした。
    「サッカーやろうぜ!!」
    ホッケーマスクの残骸を顔から取る。涙を拭いて、笑って右手を差し出した。相手も右手を差し出してくる。握手した。
    「…ああ。またやろう。サッカー。」
    「…おい円堂!言葉遣いが乱れとったで!?」
    「え!?どこだった!?」
    「お前もキャプテンならもうちょっと国語の成績を上げろよな…」
    笑い合う全員。サッカーの真髄は、やはり楽しむことにあるのかもしれない。
    オレンジ色に輝く夕日が、綺麗だった。

  • 17二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 00:15:25

    あーっやべー
    最新作プリロードしてるのにホントの本気で初代イナイレやりたくなってきた

  • 18>>125/11/11(火) 00:15:30

    あっ0時を過ぎてしまったから…
    ここで一旦終わらせるでやんす
    ご鑑賞よかった…ありがとうございました

  • 19二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 00:20:59

    仮面キャラの定石だ、美形がマスク割れで印象が加算されたりするっ

  • 20二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 07:04:55

    大健闘って言葉は鉈十三のためにある

  • 21二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 14:24:54

    このレスは削除されています

  • 22二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 22:15:46

    保守

  • 23>>125/11/11(火) 22:24:50

    宵闇の中、花火が爆ぜた。
    某所、某ビル。
    ライトで照らされたサッカーボールの形をした最上階の周りをヘリコプターが旋回していた。
    その最上階の中で、愛と浪漫、夢と欲望、戦と栄光の大会の開始が宣言されようとしていた。
    「ついに日本にこの季節がやってきましたァ!!!暑い夏より尚暑いッ!全国中学サッカーチームの日本一を決めるフットボールフロンティアの季節だあッ!」
    テレビの前で沸き立つ群衆の歓声。会場を満たす全国の強豪サッカーチーム監督の歓声。
    「全国の頂点に立つのはどのチームなのか!?しかし、その前には通らねばならない関門がある!」
    モニターに映し出された大会の対戦表。
    それは全ての対戦チームの欄が空白で満たされていた。
    「そう!予選を勝ち残らなければならないッ!そして予選を通過した十四校と推薦枠二校こそが真の意味での"王座"を狙えるのだッ!」
    フットボールフロンティアの予選の組み合わせを決める抽選マシーンのスイッチを二人のバニー・ガールが押した。
    マシーンから排出されたボールを手に取る二人のバニー・ガール。
    「栄えある予選第一回戦の組み合わせは…?」
    左のバニー・ガールの手の中のボールには、野生中サッカー部監督の他山の似顔絵が描かれていた。

  • 24二次元好きの匿名さん25/11/11(火) 22:34:07

    監督の似顔絵ガチャ!?
    サ、サッカー協会変なクスリでもやっとんのか…?ってなりますね…本気でね

  • 25>>125/11/11(火) 22:38:27

    他山の頭上からスポット・ライトが照らされる。しかし他山、これをスルー。
    本場のアフリカ、すなわちザ・野生の大陸を生き抜いてきた彼は滅多なことじゃ動じない。
    「おおっと!(予選第一回戦の対戦校は)強豪野生中だあっ!対するは…メキメキと頭角を伸ばしてきた雷門中!」
    華やかな夜は続く。激しく熱かりし激闘の予感。抽選マシーンは続いて予選第二回戦の対戦校を吐き出していった…

  • 26>>125/11/11(火) 22:56:38

    次の日の朝。円堂家、円堂守の自室。
    円堂が今眠っているベッドは、部屋の窓から離れた位置に配置されている。つまり体内時計の調整のために必要な日光を浴びることができず、規則的な起床は難しくなってしまうのだ。
    「コラーッ!!いつまで寝てるの!?遅れちゃうよ!?」
    だが、長年聞かされ続けた母の大声の前には関係ない。目を覚ます円堂。
    「フロンティアッ」
    わけのわからない声を出し、ベッドから文字通りに"跳び"起きた。
    視界の端にフットボールフロンティアのポスターと昨日の夜脱ぎっぱなしにした下着と靴下が見える。
    「フットボールフロンティアァー!!!」
    もし、この光景をサッカー部員の誰かが見れば、確実に円堂が大会進出に浮かれていたことが分かっただろう。

  • 27>>125/11/11(火) 23:05:05

    自宅から爆発するような勢いで飛び出した円堂は、ブロック・レンガの壁への激突を回避するために、急ブレーキをかけた。住宅街のコンクリートの地面に、円堂の靴底が擦られる音が響く。
    「フロンティアッ!!!」
    口に咥えたホット・ドッグがこぼれることも気にせず叫ぶ円堂。ここで幼馴染の木野と対面した。
    「おはよう!」
    会話するために急いで朝食を噛み砕き、飲み込む円堂。木野からは「みっともない」と言われたが、今の円堂には関係ない。
    「フットボールフロンティアだッ!」
    木野を通り過ぎて学校まで爆走していった。呆れるような笑みを浮かべて追いかける木野。

  • 28>>125/11/12(水) 00:00:44

    校舎へと続々入っていく雷門の中学生たち。
    「おはよう!朝ごはん何だった?」
    「なああのゲームどこまで進んだ?」
    「そろそろ学ランから夏服にファーム・チェンジかな。」
    うら若き少年少女が笑い合い、他愛もないことを話し合う。青春の二文字が浮かび上がってくる光景。
    「おはようーッス」
    「おはよーう。」
    「フットボールフロンティアァー!!」
    朝の挨拶をし合った壁山と少林を通り過ぎていった円堂。立ち去った後も土煙があたりに舞っていた。
    「キャプテン燃えてんなァ。」
    「フットボールフロンティアだからね。」
    前の試合に部活の存続がかかっていたとは思えない。自分たちが全国レベルの戦いに参加できると思うと、胸が躍った。と、そこにかかった一言。
    「チィーッす」
    長身の細身。灰色の髪。浅黒い肌。
    声をかけてきた彼に対する二人の第一印象は、「なんだかチャラチャラしてて胡散臭そうなヤツだなあ。」だった。
    「よ!オレ、土門。ヨロシク。」
    「よ…よろしく…?」
    慣れないテンションの人間だったため、壁山は困惑して会話できない。少林は(壁山と同じく多少困惑したが、しかし会話に支障が出るほどは緊張しなかった。)問題なく挨拶を返した。
    「で…校長室ってどっち?」
    過去にこっぴどく叱られたため、初対面の人間には敬語で話すことを心がけている少林。
    「もしかして…転校生ですか?」
    「そう!ピッカピカの転校生!」

  • 29>>125/11/12(水) 00:03:51

    あっちょうど0時をすぎたから…ここで次回に続くでやんす。
    ご鑑賞ありがとうチャーハハハ

  • 30二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 00:13:12

    そういえば土門って結構加入のタイミング早いの思い出して驚いてるのは俺なんだよね

  • 31二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 00:29:51

    円堂と秋は中学からの付き合いだから幼馴染みではないと思われるが…
    円堂の幼馴染みは風丸、冬っぺ、東で木野は一之瀬、土門、西垣なんだよね

  • 32>>125/11/12(水) 09:22:45

    >>31

    はうっ申し訳ありませんでした

    >>27では幼馴染の部分をマネージャーと頭の中で書き換えてほしいのん…

  • 33二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 18:25:07

    このレスは削除されています

  • 34二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 20:04:08

    >>30

    野生中と前のガッコ(帝国)で戦ったと言ってたからね


    キラースライド…糞

    ファール率が高くて土門を殆ど使ってないのがオレなんだよね

  • 35>>125/11/12(水) 22:46:33

    悪いねえ今日も投稿できそうにないんだよ
    また明日に投稿するのん
    ごめんなあっ

  • 36二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 23:39:14

    シマキンがGoに出る時はどうなってるんスかね

  • 37二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 06:15:12

    このレスは削除されています

  • 38>>125/11/13(木) 08:25:56

    >>36

    悪いねえGOはやらない予定なんだよ

  • 39>>125/11/13(木) 08:28:35

    授業時間はあっという間に過ぎ、放課後が始まった。校門に向かう帰宅部たちとは反対に、部室へと集まるサッカー部たち。
    「みんな!!わかってるな!!」
    「おおッ」
    「とうとうフットボールフロンティアが始まるンだッ!!」
    「おおッ」
    「ジィィーン…」
    いくら感動してるからってわざわざ「ジィィーン」なんて口に出さんでもええやろ円堂…と思うシマキン。
    「で?相手はどこなんだ?」
    風丸が円堂に訊いた。
    「相手は…知らないッ」
    「知らんのかいッ」
    照れ臭そうに人差し指で顔を掻く円堂。そこで冬海が部室に入ってきた。
    「野生中ですよ。野生中はたしか…」
    「昨年の地区予選の決勝で、帝国と試合ってます。」
    珍しく眼鏡を頭に乗せず掛けている音無が割り込んで解説する。
    もう対戦相手に詳しくなっているなんて、やはり彼女は優秀だ。…しかしサッカーバカの円堂も今知ったばかりの対戦相手の情報をなぜ即答できたのだろうか。もしや大会に参加する全チームのデーターを既に集めていたのか?
    恐るべし、新聞部の情報網。

  • 40二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 10:56:44

    夏未といい音無が何時加入したのか思い出せない…それが僕です まっゲーム的にもかなり世話になるんやけどなブハハ

  • 41>>125/11/13(木) 18:28:42

    「すッげーッそんなチームと闘えるのか?」
    「初戦大差で敗退なんてコトは勘弁してほしいですね。」
    「"所詮"ウチは新参チームやしのォ」
    暑い夏よりなお熱いフットボールフロンティアの熱も冷めてしまう、冬の海のように冷たい空気が場を流れる。
    「…ああ、それから」
    部室の扉近くからひょっこりと灰色の髪が出てきた。
    「チィーッすオレ土門飛鳥!一応ディフェンス希望ね!」
    「キミも物好きですね。こんな弱小クラブに入部したいなんて…」
    そう一言ストレートに不愉快なコトを言って部室を去った冬海。を、「うへえ」という台詞が付きそうな顔で指差す土門。

  • 42二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 18:29:34

    >>40

    この回で春奈は入部ですね🍞

  • 43>>125/11/13(木) 22:02:15

    土門くん!」
    しばらく土門を見つめた後、彼のことを思い出して席から立ち上がる木野。同時に土門も木野へと視線を向け、こちらは顔を見てすぐに思い出した。
    「あれっアキじゃない!お前雷門中だったの!」
    「なんだ、知り合い?」
    「うん。昔ね。」
    「とにかく歓迎するよ!フットボールフロンティアに向けて一緒に頑張ろう!!」
    土門の左手を取り、腕を回してはしゃぐ円堂。シンプルに部員が増えることが喜ばしいのだ。
    少し困惑したような顔で、心配する土門。
    「あ…相手野生中だろ?大丈夫かなあ。」
    「なんだよ新入りがエラそーに…」
    「前の中学で戦ったことがあるからねー。」
    円堂から解放され、腕を回しながら飄々とした顔で土門は話し始めた。
    「瞬発力、機動力とも、大会屈指だ。特に高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だ。」
    サッカーで高さ勝負に強いと言われてもピンとこない雷門イレブン。しかし臆病な壁山は恐怖していた。
    「ち…ちょっとトイレ…」
    「試合前にビビってどうする壁山!」
    染岡の怒鳴り声で動きが止まり、その後再び座り込む壁山。

  • 44>>125/11/13(木) 22:04:44

    「高さなら大丈夫だ!オレたちにはファイアトルネード、ドラゴンクラッシュ、そしてドラゴントルネードがあるんだぜ!」
    生え揃った歯を見せて笑い、得意げに話す円堂。
    「どうかなーァ。あいつらのジャンプ力とんでもないよ?ドラゴントルネードだって上から抑えられちゃうかも?」
    「ンなわけ…」
    「土門の言うとおりだ。」
    染岡の言葉を遮って意見する豪炎寺。
    「オレもあいつらと戦ったことがある。空中戦だけなら帝国をもしのぐ。ジャングルの中で鍛錬された爆発的ジャンプ力ッそれで上を取られたら…」
    「ドラゴントルネードが効かないかもしれないなんて…」
    どんよりとした不安に満ちた雰囲気に包まれる部室。壁山の恐怖が復活しようとしていた。
    「や、やっぱりトイレ…」
    「新!必殺技だァーっ!!」
    重い空気をぶっ飛ばす勢いで強く拳を振り上げる円堂。気合の入った声が部室に響く。
    「新しい必殺技を仕上げるンだよ!空を制するンだッ!!」

  • 45>>125/11/13(木) 22:05:51

    「いッくぞーッ!!」
    「おうッ」
    どこから借りてきたのか。消防車の梯子の上から円堂がサッカーボールを落としてきた。それを地上でジャンプした染岡が蹴ろうとして…
    「うわッわッ」
    いつも踏みしめている踏み締める地面が無い慣れない状況なのでキックに失敗。そりゃそうだ。素人が特訓の一回目から上手くやれたら誰だってサッカーの神様になれる。
    「あっと…もっと強く!」
    「よっしゃあッもいっちょ来いッ」
    「よーしッ」
    円堂たちの練習が始まった頃、土門は雷門ユニフォームへの着替えを終えていた。部室から出て木野に話しかける土門。
    「よっ!どう?似合うかなァ〜?」
    「似合ってるよ!」
    「…アキ…またサッカーに関わってるのか?」
    「みんな頑張って!」
    土門の質問には答えず、サッカー部を応援する木野。彼女を見つめる土門の目には、USAでの記憶がリバイバルされていた。
    空中キックの練習の順番が風丸に回った時、近づいてきた人がいた。
    「よう!精が出るなあ!」
    「古株さん!」
    雷門中の公務員三兄弟の古株さんだ。三つ子なので何番目の兄弟か分からない。
    「こないだの尾刈斗中との試合、見せてもらったぞう!まるで伝説のイナズマイレブンの再来だなあ!」
    「"イナズマイレブン"?」
    目を丸くして不思議そうな顔になる円堂。聞いたことがないという顔だ。

  • 46>>125/11/13(木) 23:50:59

    「イナズマイレブンってのはなあ…四十年前に雷門中学にあった伝説のサッカーチームだ!」
    過去を語る古株の目は、まるでヒーローに憧れる子供のようだった。
    「フットボールフロンティア優勝目前だったのに…あんなことがあって…いや、何でもない。」
    年長者で落ち着いた雰囲気の古株が、今は上ずった声話している。それだけ観ている人間を熱狂させたチームだったということだ。
    「とにかくすごい連中だッた!!あいつらなら世界を相手にしたって戦えたハズだ!」
    「くぅ〜ッ!かッこいい!チョ〜ゼッてェかッこいッ!!イナズマイレブンかァ!」
    その古株の昔話から熱狂が円堂に伝染したらしい。古株にとってのヒーローは、今や円堂にとってのヒーローでもあるようだ。
    「そォうさ!オマエさんは伝説のチームの血を受け継いでるんだ!」
    「えっジイちゃんの?」
    「円堂大介はイナズマイレブンの監督だ!まさにサッカーそのもののような男だったよ!」
    円堂のサッカーバカは祖父譲りのものらしい。所謂、隔世遺伝というヤツだろうか?
    自分の祖父への憧れが強まった円堂。立ち上がって拳を強く握り、エネルギー満タンだ。
    「よーし!オレゼッタイ、イナズマイレブンになってやる!ジイちゃんみたいに!」
    「一人でなる気かよ?」
    円堂は周りを見渡す。
    豪炎寺、シマキン、を始めに、この前まで練習もまともにしていなかった部員も、これどころか試合中に逃げ出した目金まで、"伝説のイナズマイレブン"を目標にした、燃える目つきになっている。今着いたその炎に、円堂も応えた。
    「もちろんみんなでさ!」
    「「「「「「「「「「「「「「おうッ」」」」」」」」」」」」」」
    「オレたちはイナズマイレブンみたいになってみせるッ!!!」

  • 47>>125/11/13(木) 23:56:56

    燃え上がる雷門イレブンたちの裏で、ひそひそと隠れて通話をする男がいた。
    携帯電話を耳に近づけ、手は口元を隠し、できるだけ小声で話しているようだ。
    「…はい。…ええ。おそらく野生中に破れることは間違いないでしょう…はい。分かってます。」
    電話の相手は、黒幕。丸いサングラスと鷲鼻、そして長い手足が目立つ男。
    その名を、影山零治といった…

  • 48>>125/11/13(木) 23:58:46

    あっそろそろ日を跨ぐから…今日はここまでにするでやんす
    ご鑑賞ありがとう熹一…

  • 49>>125/11/14(金) 08:32:49

    後日、河川敷にて。
    「フンッ」
    ジャンプした栗松が空中でヘディングしたボール。それを
    「はッ」
    同じくジャンプした少林が空中ボレー・シュートでゴールに向かって叩き込む技。
    「「新必殺技!ジャンピングサンダー!」」
    が…駄目…
    「あッ」
    空中での姿勢制御に失敗した少林。脚を大きく開いたボレー・シュートの体制のまま地面へと落下し、男の大事なモノを自分の体重で押し潰した。「グシャッ!」という音がなる。
    「うぎゃあああああッ」
    絶叫する少林。
    「シャドウヘアー!」
    不自然に大きく髪の毛が盛り上がった宍戸。すこし歩くとそこからボールがこぼれてきた。こぼさずボールを髪の中にしまい続けられたら練習はお終いだ。
    「必殺!壁山スピーン!」
    回転する壁山。この巨体で回られながらぶつかったら相手はただじゃ済まないだろう。
    「あ〜れ〜!?」
    しかし、まだ回転しながらの動きが制御できてないようだ。そのまま回り続けどこかへ行ってしまった。
    練習はまだ始まったばかり。一日二日で必殺技が使えるんだったら誰だって苦労しないだろう。それぞれの必殺技がが完成するのはまだまだ先になりそうだ。少なくとも、野生中戦までには無理。
    しかし、四人は一度失敗したくらいで諦めるタマじゃない。再び必殺技の練習に取り掛かり始めるのだった。

  • 50>>125/11/14(金) 18:29:21

    その日の練習が終わり、部室で荷物をまとめる円堂たち。仲間たちの談笑を聞きながら、円堂はふと、気づいた。
    「あれ…豪炎寺は?」
    「そういえば豪炎寺のやつ、水曜はいつもオレたちより早く帰ってる気がするな…」
    風丸がまとめ終わった荷物を肩にかけ、天井に目を向けながらそうやって疑問を口に出す。
    「サッカー好きやし河川敷とか鉄塔で個人練習しとるんやないか?…そのわりにはワシも見ィひんけどのォ」
    「あっ、キャプテン、今日はちょっと頼みたいことが…」
    そう言いかけた壁山の視線の先には、誰もいなかった。
    既に部室を去っていた円堂。豪炎寺ほどとは言わずとも、彼もまあまあ帰るのは早い方だ。
    「…円堂のヤツ、もう行っちゃったぞ。壁山、円堂に会いたいなら一緒に行くか?多分アイツ、ラーメン屋か鉄塔にいるぞ。」
    「は…はい!」
    「ほいだらワシも付き合うでェ。FWになったばっかなんや!練習でシュートは打てるだけ打っといて損はないんじゃあッ」
    ランニングがてら、部室から走って円堂を探しに出た二人。風のように駆ける風丸の疾い足音と、それを追いかける壁山とシマキンの二人の大きな足音が聞こえた。

  • 51二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 01:08:40

    支援してるのん

  • 52二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 01:17:00

    ムフッ保守しようね
    (スレ主が今日は保守してくれーっと言ってないから迷ったけど念の為にしておくのん…迷惑だったらごめんなあっ )
    それと感想良いっスか…(コキ) 語録が馴染んでる感と風のように駆ける風丸の疾い足音と~とか
    その場の空気感が伝わって来て素敵なのん…!

  • 53二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 01:20:15

    (52っス)
    はうっ他の人が支援してたっ レスがあって直ぐに保守したみたいでごめんなのん
    (書くのが遅い&リロードしなかったのん…ごめんなあっ!)

  • 54>>125/11/15(土) 01:46:26

    「…居たぞ!」
    風丸と壁山とシマキンの雷門サッカー部三人衆。円堂を探しにまずはラーメン屋へと向かっていたところ、その道中で円堂を発見。そのまま追跡しているところだ。
    「円堂のヤツ、ラーメン屋にも鉄塔にも行かずになんでこんなところに居たんだ…?」
    「豪炎寺さんもいるッス…」
    「なんや円堂のヤツが豪炎寺に付いてってるみたいな状況やのう…」
    ビルの陰からひょっこりと顔を出して円堂を見つめる風丸たち。事情は分からないしかし気になる。豪炎寺の行く先、目的。
    豪炎寺を尾ける円堂。そしてその円堂を尾ける風丸たち。
    豪炎寺を尾ける風丸一行は、巡り巡って雷門中の隣の稲妻総合病院にたどり着いた。

  • 55>>125/11/15(土) 01:48:11

    「なあ…今更かもしれないけど、オレたちコソコソ尾行なんかしないで素直に『よう円堂。壁山のやつがオマエに用があるらしくってさ…ついでにオレたちと一緒に自主練しないか?』とか言えばいいんじゃ…」
    「流れで病院の中まで尾行し続ける前に言えればよかったんやがのォ」
    「もう言い訳がきく段階じゃなさそうっスね。忌憚のない意見ってやつっス。」
    それにしても円堂もよくここまで尾行に気づかないものだ。シマキンと壁山の巨漢二人のドスンドスンという耳立つ足音が聞こえないくらい、豪炎寺を尾けるのに夢中だったんだろうか。
    しかし、円堂はその豪炎寺を見失ったらしい。キョロキョロと辺りを見回し、豪炎寺を探す円堂。
    「えっ」
    「あ…」
    だが、ここで円堂の近くの病室から豪炎寺が出てきた。咄嗟のことで慌てる円堂。必死に言葉を捻り出そうとしている。
    「いやー…その…ん?」
    ふと、病室のベッドで眠る少女が目に入る。彼女をかばうように病室のドアを閉める豪炎寺。
    「…この際、話しておいた方がいいのかもしれないな…。」
    何かを決意し、口を開いた豪炎寺。
    「さっきベッドで寝てたのは…オレの妹だ…。」
    ドアを開け、円堂に入室許可を下す豪炎寺。おそるおそる入る円堂。
    目の前には、先ほど見たベッドで眠る少女がいた。しかしじっくり見つめてみると、おそらく幾つもの機械から伸びた配線が刺さっており、チューブで点滴と繋げられている。
    「夕香っていうんだ。ずっと眠り続けてる。1年前のフットボールフロンティアの決勝の日から、ずっと"こう"だ。」
    妹を見つめる豪炎寺の瞳は、後悔と罪悪感に苛まれていた。

  • 56>>125/11/15(土) 01:49:56

    その日の朝は雨がザーザーと降り注ぎ、これで試合ができるのかと不安にも思ったが、しかし朝のうちに雨は降りきり、家を出る頃には雲ひとつない快晴になっていた。
    あの日、雨が晴れなければよかった。豪炎寺は回想の中、そんなことを考える。
    「お兄ちゃん勝ってね!ゼッタイ勝ってね!かっこいいシュートうたなきゃダメだよ!」
    「ああ。約束するよ!」
    「お兄ちゃんちょっと待ってて!」と、そう言うと夕香はなにかを取り出した。
    「これは?」
    「お守り!お兄ちゃんがゼッタイ勝ちますようにって作ったペンダント!」
    咲き誇る紫陽花の前、夕香はメガホン片手に笑っていた。
    「夕香…」
    「夕香、お兄ちゃんがサッカーしてるとこ大好きっ!今日もかっこいいシュートいっぱい打ってね!」
    どんな花よりも綺麗な笑顔で、妹は自分にエールを送ってくれた。
    「いってらっしゃいお兄ちゃん!夕香も、後で応援に行くからねっ…」
    一年前、当時は木戸川清州という中学でサッカー部に所属していた豪炎寺。
    妹はそんな彼を誇りに思っていたし、豪炎寺だって熱心に応援に来てくれる妹を大切に想っていた。
    不幸な事故だった。
    全国大会の決勝戦の日。妹はいつも通りに、豪炎寺の応援に駆けつけるために試合会場を目指していた。
    その道中でトラックに轢かれ、それから今日までベッドの中、眠り続けている。

  • 57>>125/11/15(土) 01:51:35

    「夕香がここまで苦しんでいる時、オレだけのうのうとサッカーをする資格は無いと思ったんだ。」
    まあ、夏未からの説得でまたやり始めたんだがな…と苦笑する豪炎寺。
    「…オレは結局、逃げてただけだったのかもしれないな。サッカーからも、夕香からも、なにもかも全部から、逃げていただけなのかもしれない。」
    妹の前、手の中のペンダントを握りしめて、豪炎寺はあの日と同じく誓った。
    「今は勝ち上がらなきゃいけないんだ。オレのサッカーを押し通さなきゃいけないんだ。いつか夕香が目覚めた時。オレのサッカーを好きだと言ってくれたこいつの為に。オレのサッカーを見せる為に。」

  • 58>>125/11/15(土) 01:52:39

    静かな病室が、より一層静まり返る。円堂は掛ける言葉も思いつかず、ただ豪炎寺の覚悟に黙っていた。
    ふと、啜り泣く声が聞こえてきた。幽霊か?と身構える円堂。誰だッと振り返る豪炎寺。
    視線の先では、大の男が二人、滝のような涙を流していた。
    泣きすぎでまともに喋れもしない壁山とシマキンに代わって、風丸が一言話す。
    「お前の覚悟、オレたちにも背負わせてくれよ。」
    「風丸…」
    円堂も、同じ覚悟のようだ。豪炎寺に向かって誓う。
    「豪炎寺、お前のサッカーは、オレたちのサッカーでもあるんだぜ。それを突き通すんなら、オレたちだって一心同体さ。一緒に戦おう。」
    仲間たちの心が、豪炎寺にも伝わったようだ。ニヤリと笑い、たった一度、呟く。
    「ありがとう。」

  • 59>>125/11/15(土) 01:54:01

    あっそろそろ二時になるから…ここいらで終わりでやんす
    ご鑑賞ありがとうございました

  • 60二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 11:03:09

    このレスは削除されています

  • 61二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 12:26:35

    ババタレ壁の正体見たり!
    最初からのタフムーブはシマキンの影響だったのかぁ!

  • 62二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 12:59:30

    シマキンが覚えそうなシュート技ってま、まさかグレートマックスなオレ・・・?

  • 63二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 20:30:37

    クオリティ高くて驚いたのが俺なんだよね

  • 64>>125/11/16(日) 02:43:02

    結局、尾行したことを豪炎寺に問い詰められた風丸と壁山とシマキンの三人は、お詫びということで二人にラーメンを奢ることとなり、雷雷軒ののれんを潜っていた。
    「オヤジ!ラーメン二つやッ」
    店の中には自分たち以外誰もいなかった。
    カウンター席に座る五人。ラーメンが届くのを待っている間、風丸は浮かない顔をしていた。
    彼を気に掛けた豪炎寺が風丸に声をかけた。
    「…結構痛い出費だったか?」
    「ああ、いや、それもあるんだが。」
    ちゃっかり自分も頼んでいたラーメンを啜る。豚骨の味が喉に染み付く。美味い。
    「フットボールフロンティアの一回戦まであともうすぐだってのに、新必殺技の"ひ"の字も見つからないのは、かなり危ない状況だと思って…」
    「風丸ゥ必殺技は見つけるもんじゃなくて作り出すモンやでェ。モチロン例外はあるかもしれンがのォ」
    「シマキンさん、風丸さんはアンタに揚げ足を取るようなマネをして欲しいわけじゃないと思うっスよ。」
    「先輩に向かって"アンタ"とはなんやッ」
    注文したラーメンが器から溢れる勢いで立ち上がり、壁山に言い寄るシマキン。その顔には青筋が浮かんでいた。それを引き止める風丸。
    「お前らこんなとこでもケンカするなよ…」
    「しかし、野生中相手に戦うには、やはり新しい必殺技は要る。」
    思い詰めた顔の豪炎寺。
    「たとえ新必殺技がなくたって、なんとかなるさ。思い出せよ!オレたち、イナズマイレブンになるんだぜ!」
    それを励ます円堂。しかし場の雰囲気は暗く沈んだままだ。
    「イナズマイレブンか…」
    目を細め、苦悩するように呟く豪炎寺。
    「ジイちゃんたち…どんな必殺技持ってたんだろ…知りたいな…」
    「イナズマイレブンの秘伝書がある。」
    「へーえそンなもんがあるんかいな。」
    「何が書いてあるんだろ?」
    「………。」

  • 65>>125/11/16(日) 02:44:19

    「「「「「なにっ」」」」」
    秘伝書の話題を切り出したのは雷雷軒のオヤジだった。意外な人物から飛び出した言葉に、驚愕する五人。
    「ひ…秘伝書!?ノートじゃないの!?スゴ技特訓ノートなら家にあるよ!?」
    思考する間もなく、円堂は頭に湧いた疑問をそのまま吐き出した。ラーメン屋のオヤジはぶっきらぼうに背を向けたまま答える。
    「ノートは秘伝書の一部に過ぎん…」
    ふと、彼は後ろを振り返った。サン・グラス越しに目に映ったのは、イナズマイレブンの必殺技にワクワクして、口を開けて笑う円堂の顔。
    四十年前に見たものと同じ光。真性のサッカーバカにしか宿らない熱。
    先ほどの円堂と同じく、ラーメン屋のオヤジは心に浮かんだ疑問を口から溢す。
    「お前…円堂大介の孫か…!?」
    「うん!」
    自然と自らを笑わせる、円堂の中のバチバチと漲るサッカー魂が、彼に即答を促した。
    「そォーうかァ!大介さんの孫かァ!ハッハッハ!大介さんの孫かァ!」
    ボサボサの白髭に隠されたオヤジの口は、円堂と同じように無邪気に笑っていた。
    席の円堂に調理器具のオタマを突きつけるオヤジ。
    椅子から転げ落ちそうになった円堂を、シマキンが支えた。
    「秘伝書はお前に災いをもたらすかもしれんぞ…それでも見たいか?」
    「ああ!」
    一瞬のためらいもない円堂の返答を聞いたオヤジは、改めて笑った。しかし、先ほどの円堂のような無邪気な笑いではない。
    試練を受ける若人を歓迎する達人のような、悪戯を仕掛ける悪ガキのような、少し邪気を孕んだ、犬歯を見せつけた笑顔だった。

  • 66>>125/11/16(日) 02:45:43

    次の日。学校の辺境ににポツンと建てられたサッカー部の部室の中で、十三人が集まり円堂からの話を聞いていた。
    「秘伝書!?」
    サッカー部員たちが驚いた声を出す。
    「シーッ!ジイちゃんが書いた秘伝書が学校にあるッて。」
    「…しッかし、なんでンなこと雷雷軒のオヤジが知っとったんやろ…」
    シマキンの呟きは、誰の耳にも入らなかった。そのまま話を続ける円堂。
    「で、秘伝書があるのが…」

  • 67>>125/11/16(日) 02:47:59

    「理事長室の金庫か。」
    雷門イレブン勢揃い。
    全員で理事長室の開いたドアの前に立っていた。
    サッと一瞬で侵入し、ヌッと一瞬で抜け出す作戦。
    いざ、理事長室に。
    どすん!という大きな音が鳴る。
    このオチを予測した土門を除いた雷門イレブンの十二人が一斉に動いたものだから、それぞれがぶつかり合い、絡み合い、引っかかり合い、大きくこけたのだ。
    …忍び込むんだったら、マックスあたりを単独で行かせて、何もわざわざ十三人全員で来なくてもよかったんじゃなかろうか…反省する雷門イレブンたち。しかし、今引き返すわけにはいかない。
    そのまま金庫にたどり着いた円堂たち。部屋の入り口から金庫の前までは、映画のようなレーザー・トラップが仕掛けられているなんてことは無く、トラブルのない道中。
    問題は円堂が金庫のダイヤルに手を付けたところで起こった。
    音無が調べてくれた番号にキリ…キリ…とダイヤルを回していくうち、カチリという音がした。
    「しゃあっ」
    円堂が笑みを浮かべる。さあ、そのまま金庫の扉を開ければ秘伝書ゲットだ!
    開けられるなら。
    「あれ…うーん…うぅぅううーん!」
    金庫扉はビクともせず。円堂がいくら引っ張ろうとも、足をかけて引っ張っても無理。
    円堂の力不足なのかもしれない。金庫を開ける為にシマキンが前に出た時、
    「他人の部屋に忍び込むなんて感心しないわね。」
    金庫のダイヤルみたいに首を後ろに回す一行。部屋の入り口に立っている、笑顔の夏未が居た。
    「こ…これは…その…」
    「練習だよ!」
    言い淀む円堂を笑顔でフォローする風丸。
    「そう!敵に見つからないようにする、練習なんだ!」
    呆れる夏未。ため息を一つ吐くと、体の後ろにしまっていた、辛うじて文字とわかるものが表紙に書かれたノートを取り出した。
    「アンタたちの探してるのってコレでしょ?」
    「ジイちゃんの秘伝書!」
    夏未に駆け寄り、彼女からひったくるようにノートを取る円堂。
    サッカーのこととなると周りの見えなくなる円堂を、困ったような、呆れるような笑顔で眺める夏未。
    「でも意味ないわよ?読めないもの。」
    「えっ!?」

  • 68>>125/11/16(日) 02:52:14

    部室に戻り、秘伝書のノートを読む円堂たち。中には…中には…中には…?
    「暗号で描かれてるのか…」
    「外国の文字スかね…?」
    「いや、おっっっそろしく!汚い字なんだ!」
    挿絵付きで解説されているものの、その挿絵もかなり見づらい。
    読み手になんの情報も伝えられずして、何のための秘伝書なのか。どんなすごい技の解説が書かれていたとしても、読めないんなら役立てようがない。
    「キャプテンのおじいさんはこの飼育用の箱に適当にばら撒かれたハリガネムシみたいな字で何かを伝えられる気だったんスか?」
    壁山が冷笑モードに入る。
    代筆くらい誰かに頼んで欲しかった…もうダメだ。という雰囲気になる一同。
    「すッげー!ゴッドハンドの極意だってさ!」
    「読めるのかよ!」
    しかし、円堂だけはノートの内容を読めたようだ。落差で大声を出す他の部員と対照的に、円堂はニヤリと笑っていた。
    ノートを読み進める円堂。そのうち、野生中に勝つための技が見つかったようだ。
    「うん!相手の高さに勝つにはコレだ!"イナズマ落とし"!」
    「かっこいいっス!」
    「読むぞ!いいか!『一人がビョーンって跳ぶ。もう一人がその上でバーンとなってクルッとなってズバーン!これが、イナズマ落としの極意!』…えっ?」
    ずっこける一同。理事長室に忍び込んでまで秘伝書を手に入れ、大介の汚文字を解読してやっと読めた必殺技の解説が擬音だらけのバカみたいな文章なんだから笑えない。
    「円堂…オマエのじいさん、国語の成績良かったのか…?」
    「さあ…サッカーひと筋の人だったらしいから…」
    「でもさ!」と一言おいてから、円堂は再び話し始めた。
    「ジイちゃんは嘘は吐かないよ!ここにはホントにイナズマ落としの極意が書かれてるんだ!後は特訓さえすればいいんだよ!」

  • 69>>125/11/16(日) 02:53:54

    練習の時間になるまで、運動部らしく、学校外をランニングする土門。基礎体力を作るトレーニングの王道。それがランニングだ。サッカーは足を使うスポーツだから、特に大事。
    「フゥーッ…少し休憩。」
    電柱に倒れ掛かり、タオルで顔と口元を隠す土門。その瞬間。
    「円堂大介の秘伝書があります。ですが円堂以外誰も読めませんし、手に入れたところで意味はないでしょう。」
    普段の明るいファンタジスタとしての顔は仮面だったのか。冷たい機械のように誰かに報告する土門。
    「休憩終わりッ!」
    「土門さーん!練習始まってますよ!」
    「あーっ悪ィ悪ィ!」
    宍戸が校庭から土門に声をかけた次の瞬間には、また彼は明るい性格の仮面を被っていた。
    先ほどの電柱の影では、ゴーグルをつけたナゾの男が立ちずさんでいる。
    土門飛鳥。
    彼の本性、本質は一体…?

  • 70>>125/11/16(日) 02:54:55

    金曜日はグラウンドを別の部に使われている。練習場所を鉄塔広場に移す他ない。
    円堂がいつも特訓に使っている木。それと捻ったロープで繋がれ、巻かれた布団が詰まったタイヤを両腕で抱え、他の全員より上の位置に立っている染岡。
    「本日のメイン・イベントはコレ!敵のスゴ技を受ける特訓だ!」
    勘の鈍い宍戸を除いた十一人が、特訓の内容を察して宍戸の位置から離れた。
    「え?」
    「いくぞォッ」
    タイヤから手を離した染岡。捻れたロープがもとに戻っていき、回転しながら宍戸に向かっていく。
    「待って!いきなりムリ…」
    吹っ飛ばされた宍戸。続いて栗松が特訓の餌食になったようだ。犠牲者の悲鳴がよく響く。
    彼らを安全な遠くから眺める円堂。
    「いいねェー…特訓だねぇ…」
    「円堂、ちょっと良いか?」
    そこに豪炎寺が話しかけた。
    「さっきの秘伝書のことなんだけど、あれッてこういうことじゃないかな。」
    小枝を手に持ち、それをペン代わりにして地面に図を描く豪炎寺。
    「まず、一人が飛ぶ。もう一人がそいつを踏み台にして、さらに高さを稼ぐ。十分な高さに達したところで、オーバー・ヘッド・キック」
    「豪炎寺…」
    横の円堂を見ると、彼の目は星のようにキラキラと輝いていた。
    「そうだよ…!多分その通りだよ!スゴいなオマエ!」
    特訓マシーンで吹っ飛ばされる少林の声がエコーした。
    「そんな不安定な足場からオーバー・ヘッド・キックを出せるのは、豪炎寺。オマエしかいない!そして…」
    円堂は、特訓マシーンに果敢に立ち向かっていく壁山
    ではなく、シマキンを見た。
    「オマエの踏み台になれるやつは、シマキンだ!」

  • 71>>125/11/16(日) 02:56:44

    あっもう夜も更けたから…ここいらでおやすみでやんす
    ご鑑賞あざーすガシッ

  • 72二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 11:38:34

    見事やな…(ニコッ

  • 73二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 15:36:19

    >>1

    ひょっとして今回シマキン用の必殺技を発掘するんじゃないスか?


    シマキン!シュート技を覚えろ 無印はポジションとステータスが適当だ…例えポジション違いを覚えても問題は無い筈だ

  • 74二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 23:14:09

    円堂のシマキンに対する信頼が厚くてリラックスできますね
    ま、(最初の仲間だし)なるわな…

  • 75>>125/11/16(日) 23:25:58

    ごめんなあっ
    今日も投稿できそうにないんだァ
    また明日投稿させて欲しいですね…ガチでね

  • 76二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 00:56:25

    お見事です1ボー やはり私がにらんだ通りあなたは強い作家だ
    毎日寝る前に読むのが日課になっているんだ 頑張って欲しいですね…ガチでね

  • 77二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 06:08:05

    このレスは削除されています

  • 78>>125/11/17(月) 08:40:13

    続きを書き終わるまで保守させてもらうのん

  • 79二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 09:13:41

    まっ(態々DFを運ぶよりは上がれる面子に)なるわな

  • 80二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:21:02

    今後に備えて保守をする…それが僕です

  • 81二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:22:04

    壁山どないする?
    まあDFとして今後も活躍するしええやろ

  • 82>>125/11/17(月) 19:12:53

    「…で、ワシが踏み台になるわけかい。よっしゃ!やったるで!」
    ジャンプの特訓を始めようとするシマキン。
    雷門御用達の特訓のお供、タイヤを長腕に装備した(彼の胴回りにあったサイズのタイヤは無かったので、胴体にはタイヤを付けていない)状態。
    タイヤの重りをつけた状態でジャンプすることで、特訓でつくジャンプ力が倍増するのである。
    「ああ、始めよう。」
    一方、豪炎寺のジャンプ力は十分。
    ジャンプ力をつける特訓はしなくていい。
    不安定な足場からオーバー・ヘッド・キックする練習をするのだ。
    ひたすらジャンプするシマキンと、ひたすらジャンプし空中でオーバー・ヘッド・キックを続ける豪炎寺。
    「にしても円堂、おどれも一緒に飛ぶことはないと思うんやがのう…」
    「お前だけに辛い思いはさせられないぜ!それに、キーパーにだってジャンプ力は必要だしなッ!」
    ジャンプしながら会話する二人。会話で声を出しながら運動することで、肺活量も鍛えられるというわけだ。
    豪炎寺は反対に何も話さず黙々と特訓している。頭に浮かんでいる言葉は、たった一つ。
    (夕香…!)
    妹を想う、心。
    その、豪炎寺のサッカーにかける熱い心が、豪炎寺の特訓を手伝う風丸の染岡や、遠くの半田たちにも燃え移る炎のように伝わっていた。
    たっぷりガソリンを注ぎ、ありったけ油を差した機械のように、特訓にさらに力が入る雷門イレブンたち。
    その内の二人、浮かない顔の少年がいた。

  • 83二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 20:45:10

    どこかの壁と違って高いところが怖いとか踏み台がダサいとかゴネたりせず二つ返事で了承する姿にリラックスできますね…やはり一年数カ月の信頼には勝てぬか

  • 84二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 21:20:44

    >彼の胴回りにあったサイズのタイヤは無かった

  • 85二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 22:43:01

    >>84

    待てよ特殊作業車ならワンちゃんあるんだぜ まっそんなの中々手に入らんから釣り合いは取れてるんだけどね

  • 86二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 00:57:23

    なんやかんやで壁山になりそうスねイナズマ落とし

  • 87>>125/11/18(火) 01:21:10

    日が暮れようとお構いなし。激しく練習を続ける雷門イレブン。しかしやる気は減らずとも、体力は有限。特訓を始めた時よりも、シマキンと円堂の跳躍高度は低くなっていた。
    息が上がり、地面に手をつきそうになるシマキン。それを支えようとして、一緒に転ぶ円堂。結局そのまま二人とも転んでしまった。
    咳き込み、顔についた土を手で払おうとして、手にも土が付いていたことを思い出した二人。立ち上がり、そのまま水飲み場に行って顔と手を洗った。
    その時、がくんとシマキンが膝をついた。また立ちあがろうとするも、足ががくがくと震え、無理。
    だが、円堂だって同じ状態だ。両者立ち上がれず。仲間たちも自分の特訓で精一杯。シマキンたちが立ち上がれないことに気づいてはいない。
    肺が空気をうまく取り込めず、心臓のリズムも乱れている。視界も霞んでくる。

  • 88>>125/11/18(火) 01:22:50

    しかし、それがどうした。
    「…豪炎寺は、妹のためにサッカーで戦っているんや…家族のために闘っているんや…今だって…」
    この程度の疲労、今の豪炎寺とその妹の苦しみに比べれば、どうということはない。
    歯を食いしばり、全身に血管が浮き出させるシマキン。見開かれた目には、稲妻のようなエネルギーが滾っていた。
    「豪炎寺だけ…一人にさせてたまるかッ!仲間が戦う時は自分も一緒に戦う!それがワシの!雷門の!サッカー魂なんじゃあっ!」
    大きく叫び、無理やり肺から空気を取り込んだ。ショックで心臓のリズムも元に戻る。
    限界を超え、シマキン、飛んだ。跳躍ではなく、飛翔。そう呼ぶほかない動き。それほどの高度。
    着地と同時に地面が大きく揺れた。雷門イレブンの全員が立ち続けられなくなり、大きくこける。
    大きく飛んだ巨体の選手が地面へと落石のように落下し、大地を揺らす、帝国のDFも使っていた技。渾名、アースクェイク。

  • 89>>125/11/18(火) 01:25:18

    「な…なんや…今の揺れは…」
    シマキンの必殺技に一番驚いていたのは、これまた驚くべきことにシマキン自身だった。
    「シマキンさんだ!今のはシマキンさんが着地した揺れ!」
    混乱するシマキンもお構いなしにざわめくサッカー部員たち。その中でも一際目を輝かせていたのは、一番近くでシマキンの必殺技をモロに喰らった円堂だった。
    「す…ッゲーぞシマキン!すげえ必殺技だった!思ってたのと違うところで特訓の成果が出たな!」
    ダイレクトに技を喰らい、一番に技の威力を知っている円堂。シマキンをベタ褒めし、未だボケーッとしている彼と肩を組んでガシガシと揺れた。
    「…シマキン…」
    はしゃぐ雷門イレブン。その中に混じり、じっとした目でシマキンを見るものもいた。

  • 90>>125/11/18(火) 01:27:54

    他の全員が帰っても、まだ二人、残り鍛え続ける者たちがいた。
    並べられた三角コーンの隙間を縫うようにドリブルの特訓をする半田。疲れが出てボールをこぼしそうになるが、意地でもドリブルを維持する。
    その半田に対してディフェンスする壁山。汗ばんでいながら、しかしその顔つきは燃え尽きてはいなかった。
    言葉を掛け合わずとも、何も語り合わずとも、二人の間をリンクする心。
    それ、すなわち。

  • 91>>125/11/18(火) 01:29:40

    「…豪炎寺さんも、円堂さんも、シマキンさんも…みんなこの大会に、サッカーに新寧で、まっすぐだ。」
    ひたすら特訓を続ける壁山。無表情。もはや無心の境地に見えるが、しかしその内心では思いが昂っていた。
    先輩たちの、自分にはない思い。サッカーに対しての強い心意気。熱血魂。羨ましいものだった。
    壁山塀吾郎の十二年間の人生を囲む、冷え切った思想。壁山塀吾郎の中にない、愚直に没頭するほどのガッツ。
    死を恐れないほどのエネルギー。
    精神を動かすパワーの源。
    自分の限界をブチ壊せる理由。
    それが欲しい。それ以外要らないと思えるようになりたい。
    疾風のように走って生きていたい。
    森林のように逞しく生きていたい。
    烈火のように燃えて生きていたい。
    山脈のように大きく生きていたい。
    「オレは…"サッカーバカ"になりたいんス…!」

  • 92>>125/11/18(火) 01:30:42

    「…あいつは、半端にサッカーをやってきたオレとは違う…」
    半田新一は、入部してからの一年間を、部室の中で染岡と浪費していた。
    堕落していた。怠惰だった。勝負しようとすらしていなかった。敗北者にすらなれなかった。それが自分。
    その、一年間まともに練習していなかった自分とは違う。豪炎寺は半田がドブに捨ててきた一年をサッカーに捧げていた。
    帝国との、尾刈斗との練習試合で、自分と豪炎寺の、今後永遠に埋まらない一年分の差を思い知らされた。
    だというのに、むしろ染岡はその差を埋めようと必死になって足掻いている。
    シマキンと円堂は、サッカー部が作られてかた最初の時からずっとサッカーをし続けていたのだ。
    二年の仲間たちの中で、未だ燻っているのは、自分だけ。
    たった一人。自分だけが弱い。
    「あきらめきれッかよ…畜生…」

  • 93>>125/11/18(火) 01:32:36

    二人の心に共通していたのは、エンジンを起動させていたのは、その感情。
    壁山はともかく、元々持久力のある方の半田。しかし他のメンバーが帰宅し、時間が深夜帯に回っても練習を続けられたのは、この思い。悔しさと焦りのお陰なのかもしれなかった。
    だが、是が人間の限界だ。力が尽きて、倒れる半田。
    もう、今が人間の限界だ。体力が切れ、倒れる壁山。
    半田が倒れた先には、ボロボロの破けたグローブをつけたGKの腕があった。
    壁山が倒れた先には、頼りがいのある大きくて太いタフなFWの腕があった。
    上を向くと、見慣れたオレンジ色のバンダナが見えた。
    上を向くと、見慣れたロゴのついたバンダナが見えた。
    「…もう寝る時間じゃないのか、円堂。」
    「それはお前もだろ。半田。」
    疲れて会話が続かない二人。円堂は背負っていたリュックからおにぎりとクッキー・フレーバー、そしてミネラルウォーターを取り出した。
    「食え。飲め。練習と同じくらい飲み食いは大事だってこと、わかってねえと強くなれねえぞ。」
    円堂がいい終わる前に、半田は夜食に手をつけていた。ガツガツと威勢のいい咀嚼音が聞こえる。ペロリと平らげると、「おかわり!」なんてことをほざいた。
    「もう…朝ごはん入らなくなっても知らないからね?」
    木野も来てくれたみたいだ。両手いっぱいのおにぎりがカゴに積まれていた。
    「オレにもくださいっス!」
    「食べ過ぎで腹壊すなや壁山!…まあおどれのストマックなら大丈夫やろ。」
    朝になるまで、彼らは笑い続けた。

  • 94>>125/11/18(火) 01:40:37

    あっ今回はここまででやんす…
    ご鑑賞あざーすガシッ

  • 95二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 01:45:15

    お疲れさまなのん…! それと感謝します!(ガシッ)

  • 96二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 08:08:20

    半田が活躍しそうっスね

  • 97二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 13:29:04

    このSSを見てヴィクロで鉈を育てようと思ったのは俺なんだよね

  • 98二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 16:26:42

    >>97

    ウム…このSSほど濃いジェイソンを知らないんだぁ

    はっきり言って敵側KPは薄いを超えた薄い 無印に至っては素で世宇子と秋葉と帝国くらいしか印象強いの居ないから盛らないと話になんねーよ

  • 99二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 18:56:22

    >>97

    最初に倒された敵だからシマキンのライバルに最適なのかも知れないね

  • 100二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 19:00:32

    お見事です>>1ボー

    ライバルだけでなく仲間の描写を増やすとは…やはり貴方は私が睨んだ通り素晴らしいスポ魂作家だ

  • 101二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 21:18:23

    >>97

    確かにアバターシステムがあるからシマキンも出せてリラックスできますね

  • 102二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 23:48:36

    前スレの画像…リンク切れになってるんスけど
    いいんスかこれ

  • 103>>125/11/18(火) 23:54:14

    ごめんなあっ
    最近忙しくて今日も投稿できそうにないんだァ
    また明日投稿させてもらおうかァ

  • 104二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 03:01:22

    1…書くのは自分の生活が落ち着いてからでも良いはずだ! こっちはタダで見せてもらってるしなっ(ヌッ)
    本当に忙しい場合は落ち着いてから再度スレ建てても良いのん…
    いや本当に大変なら無理しないで欲しいだけでねっ 面白いSS見れて感謝してるんだァ…

  • 105二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 03:08:24

    >>102

    cloudflareが落ちて一部の画像が見れなくなったと思われるが…

    こればかりは仕方がないを超えた仕方がない……直ると良いんスけどね

  • 106二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 11:44:56

    >>98

    ゲーム版の試合前で仲間とちょっとした手柄があるストーリーでの優遇、全国大会まで無失点という華々しき実績、何よりエイリア編でも究極奥義として通用する初代最強のキーパー技と言える無限の壁を持ってるのにやっぱりちょっと薄い気がする千羽山の綾野勇一くんに悲しき現在…

  • 107二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 15:33:09

    保守のん

  • 108二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 17:27:37

    ごめんなぁっ!娯楽断ちでinできなくなるからごめんなぁっ!戻れた時数パート溜まったのを読みたいですね…本気でね

  • 109二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 23:07:37

    このレスは削除されています

  • 110二次元好きの匿名さん25/11/20(木) 06:57:31

    >>96

    半田なのは原作まで…


    2次創作では全田になるの

  • 111>>125/11/20(木) 08:24:33

    約束通りに昨日投稿できず申し訳ありませんでした
    今日は投稿するからか…勘弁してもらえませんか…?

  • 112>>125/11/20(木) 08:26:38

    「これから半田はオレと。壁山はシマキンと特訓するんだ!」
    「いや、普通に壁山とオレで練習すればいいから、お前の力を借りる必要は無い…」
    少し後ろめたそうな態度の半田。しかし、円堂は一切退かない。
    「仲間が頑張ってる時には、オレたちも頑張らないといけないんだ!」
    「それに円堂かてGKや。ゴールをドリブルで突破されて得点されることはありえんとは言えへんからのォ。」
    知っての通り、ワシはFWやからDFを突破する練習もせんといかんのや。と続けたシマキン。彼らは持参してきたボールを既に足元に落としていた。
    顔を見合わせる半田と壁山。二人同時にコクリと頷くと、互いにむけていた視線を円堂たちに向けた。
    言葉で言われなくとも分かる。二人の返事はたった一つ。
    「やる!」
    「やろう!」

  • 113>>125/11/20(木) 08:27:45

    ドリブルの特訓で、半田が円堂の前を左右に交互に動き、DF役をする円堂をドリブルで突破しようとしてくる。
    「甘いぞ!」
    しかし、円堂にタックルでボールを取られてしまった。
    「ぐあッ」
    ボールを取られ、倒れる半田。それでも立ち上がり、何度でも繰り返し円堂に向かってゆく。
    「抜かせないっス!」
    壁山も特訓だ。シマキンの前に立ち塞がり、必死にボールを取ろうとしている。
    「甘いわッ」
    だが、いくら立ち塞がっても、壁山を余裕で越す巨大なシマキンのドリブルを防ぐことはできなかった。
    「うわッ」
    弾き飛ばされる壁山。しかし立ち上がり、いくらでもシマキンに立ち向かってゆく。
    「大丈夫か二人とも!?そろそろ練習を終わりに…」
    「続ける!」
    「続けたいっス!」
    倒れ、転げ、それでも二人は自分を超えるために戦い続ける。二人の頑張りの中、時はひたすら過ぎてゆく。
    「円堂は、こんなことを毎日ひたすら繰り返してきてたんだ…遅れっぱなしは、もうやめだ!」
    「オレも、シマキンさんみたいなサッカーバカに…
    前だけ向くサッカーバカになッてみせるっス!」
    筋肉は倍に縮み、伸びてゆく。
    肺は更に空気を取り込み、吐いていく。
    心臓はより動き、血を巡らせる。
    二人の情熱が、時を忘れさせる。没頭させる、サッカーに一途にさせる。特訓は遥、続いてゆく。

  • 114>>125/11/20(木) 08:28:49

    日が登る。真夏の暖かい空気が、自分たちの体を暖めてくれていた。
    目を閉じればそのまま倒れ、眠ってしまいそうな全身の疲労感。
    汗でぐっちゃりと濡れたシャツが気にならないほど集中し、研ぎ澄まされた半田と壁山の二人の精神と神経が、十数時間の練習を終えてなお、彼らの身体を動かしていた。
    一晩中の間、半田は円堂を相手にドリブルし続け、壁山はシマキンを相手にディフェンスし続けた。
    機は熟した。その成果が、花開く時。

    円堂が構える。
    駆け出す半田。左右にジグザグと動く。バチバチという音が半田の体から鳴る。
    ジグザグという動きで生み出された生体電気が体内で蓄積され、イナズマ落としと同じ蒼い稲妻が相手を貫く。
    半田の全身を巡った蒼色の電撃が、彼の体から放出されていった。ジグザグと縫うような軌道で円堂に向かってゆく。
    「ジグザグスパーク!」
    蒼電撃に打たれた円堂は、雷に打たれたように崩れ落ちた。
    半田は、その横を過ぎ去っていく。
    「…しゃあッ!」

    走り出したシマキン。
    壁山の筋肉が膨れ上がった。両手両足から胴体の筋肉がバキバキと浮かびあがり、顔面は鬼の表情で歯を食いしばっている。
    壁山の体にある熱エネルギーが、地面へと送られ、眠る大地を刺激する。
    火山が噴火するように、勢いよく高い壁を盛り上がらせる技。
    "山"を象徴するような、相手に向かわずして守るディフェンス技。
    「ザ・ウォール!」
    壁が盛り上がった時の地面の揺れで、ボールを取り落とすシマキン。
    壁山が、そのボールを取った。
    「やッたっスー!!」

  • 115二次元好きの匿名さん25/11/20(木) 15:05:14

    見事やな…

  • 116二次元好きの匿名さん25/11/20(木) 21:29:25

    やばっ 必殺技習得イベントが熱すぎて初めて初代プレイした時の思い出が見える…

  • 117二次元好きの匿名さん25/11/21(金) 01:08:23

    このレスは削除されています

  • 118>>125/11/21(金) 01:12:22

    とうとう、ついにだ。二人はそれぞれの特訓を終わらせ、二人それぞれの必殺技を編み出せたのだ。
    喜ぶ声を出すと同時に倒れる二人。いくら中学生とはいえ徹夜の特訓はかなり体に負荷がかかっていたらしい。
    「半田!壁山!」
    「大丈夫か!?」
    駆け寄る円堂とシマキンの心配は杞憂だったらしい。二人は気絶したのではなく、寝息もかかずに泥のように眠ってしまっただけだったのだ。
    「…寝とるで…」
    「あははッ…そりゃ一晩中練習してた…から…な…!?」
    ふらりと視界が傾いたことに驚く円堂。傾いたのは世界の方では無い。傾き、倒れかけているのは、円堂の方だ。
    「…う〜ん…」
    半田と壁山と同じように、受け身も取れずにバッタリと倒れる円堂。そのまま睡魔に身を委ね、しばらく眠ることになる。
    「ワシ…も…おやすみ…や…」
    シマキンも『ズシーン…』と辺りを揺らしながら倒れると、円堂たちの後を追った。
    木野は一晩の特訓の途中、ベンチで横になり既に眠っている。
    静かになった鉄塔広場。五人はそれぞれ、昼を過ぎ、夕方になるまで夢を見る間も無く体を休めていった。

  • 119>>125/11/21(金) 01:34:18

    その日の午後の練習には参加できなかった円堂たち五人。
    多方面から大目玉を喰らい、反省する五人。もう二度とこんなマネはしないと誓約書も書いた。
    しかし、五人はその次の日の練習には何とか参加できたようだった。
    日曜日の朝、鉄塔広場にて。
    準備運動を終わらせた雷門イレブンは、基礎練習の前に、イナズマ落としの試し撃ちをしようということになっていた。
    必殺技の構えを取るシマキンと豪炎寺。
    一日経ったので、シマキンには無茶な特訓の後遺症はもう残っていない。問題なく踏み台の役割をこなせる。
    豪炎寺も、これといった怪我はしておらず、パフォーマンスを鈍らせるような状態異常は持ってはいなかった。
    つまり、二人共ベスト・コンディション。
    最高の必殺技を放てる。
    「じゃ、いくぞ。シマキン。」
    「了解や!やったるで豪炎寺ィ!」
    ドリブルしながら駆ける豪炎寺。シマキンも同時に豪炎寺と正面からぶつかり合うような位置から駆け出した。
    二人が同じタイミングで跳躍した。豪炎寺がシマキンを踏み台にして更に高く飛ぶ。ボールも一緒に飛んでいく。
    見事な姿勢制御で空中だろうと構わずオーバー・ヘッド・キックする豪炎寺。
    そう。タフなボディーを持つ選手と、スーパーなジャンプ力を持つ選手の二人が協力して放つ。
    作られてから四十年経っても錆びないメイド・イン・イナズマイレブンの必殺技。
    弾けるイナズマがボールを纏い、天から大地に突き刺さる稲妻のようにゴールに向かってゆく必殺技。
    「「イナズマ落とし!」」
    努力の成果は、当然の如く実り、少年たちの前に顕現した。

  • 120>>125/11/21(金) 01:37:05

    あっ夜も深まってきたから…今回はここまでで終わらせるでやんす
    ご鑑賞マジで感謝しますガシッ

  • 121二次元好きの匿名さん25/11/21(金) 01:48:22

    SS感謝します!(ガシッ)

  • 122二次元好きの匿名さん25/11/21(金) 04:37:27

    熱いを超えた熱い

  • 123>>125/11/21(金) 08:42:09

    スレが落ちるのを阻止するために自分で保守する
    「スレ主」のメンバーとだけ言っておこう

  • 124二次元好きの匿名さん25/11/21(金) 17:16:48

    美しい原作愛に感動しております

  • 125二次元好きの匿名さん25/11/21(金) 21:43:24

    保守

  • 126>>125/11/22(土) 00:17:46

    悪いねえ鯖落ちで書き込めなかったけど続きは今日の朝に投稿することにしたんだよ
    マネモブオヤスミーッ

  • 127二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 07:14:20

    保守

  • 128>>125/11/22(土) 08:30:00

    「よしッ!成功!」
    ガッツ・ポーズを取る豪炎寺。他の部員たちも歯を見せて笑っている。
    だが、大声で「やったー!」と喜んだりはしていない。
    どちらかというと、歓喜というより「ああ、問題なく必殺技が完成したみたいでよかった。」という安心の感情が強いようだ。
    「努力の成果だ!」
    しかし円堂、通常運転。
    二人に駆け寄り、必殺技を完成させた当事者である豪炎寺とシマキンよりも喜んでいる。
    「…バカね。」
    遠くから彼らを眺める夏未。
    彼女の呆れながらも優しげな瞳は、どこまでもサッカーに対して熱血な円堂たちに惹かれているように見えた。
    「これで必殺技は完成だ!みんな!後は練習を積み重ねて勝つだけだぞ!」
    という円堂の発破で散らばり、雷門イレブンは練習を始めた。

  • 129二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 18:14:15

    保守

  • 130>>125/11/23(日) 01:04:46

    雷雷軒のガラス戸から、は、夕陽が差し込んでいた。中華料理店らしい炒める音が聞こえる。
    「いよいよ明日からフットボールフロンティアの地区予選が始まるそうだ…」
    コートを羽織った髭面の男が、カウンター席からラーメン屋のオヤジに話しかけた。
    その手に持つ新聞には、『全国中学生サッカー大会フットボールフロンティアスタート!我らが稲妻町からも出場校が!』という見出しが、販売所で客の目につきやすいように、派手な色で大きく書かれて載っていた。
    「そうですか。」
    ラーメン屋のオヤジは、特に喜ぶわけでも無く、ただ、無感情に返事を返して、作った餃子をテーブルに置いた。
    客の割り箸が皿に近づく。

  • 131>>125/11/23(日) 01:06:31

    四角のタイルでできた床の上を歩く豪炎寺。目的の病室にたどり着くと、ベッドの近くの椅子に座る。夕香の顔が近づいた。
    目を閉じる夕香に語りかける。
    「辞めると決めたサッカーを…俺の勝手でもう一度始める事にしたからには、負けない。お前が目覚めるまで、勝ち続ける。」
    妹に手を伸ばし、そのまま髪を優しく撫でる。夕日の光を吸って、彼女の髪の茶髪は温かみを帯びていた。
    「それが夕香。お前に誓った新たな約束だ。」
    そう呟いてからしばらく、豪炎寺は静かに妹を見つめていた。
    やがて立ち上がり、惜しむように夕香を見つめ、病室を出ていったのだった。

  • 132>>125/11/23(日) 01:10:05

    あっもう一時だから…今回はここまでにするでやんす
    今回も投稿量が少なくってごめんなあっ
    次回は試合部分を投稿するのんな

  • 133>>125/11/23(日) 01:43:16

    マネモブご鑑賞感謝するよ

  • 134二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 08:18:47

    >努力の成果だ!

    懐かしす

  • 135二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 15:14:10

    良スレを保守する…

    ロンギヌスのメンバーとだけ言っておこう

  • 136>>125/11/23(日) 23:41:07

    「ムフフ…とうとうオレも必殺技が使えるようになったっス…!」
    壁山は、自分の部屋でその大きな顔をニコニコと笑わせていた。一晩の特訓の末に編み出した壁山の必殺技、ザ・ウォール。
    必殺技を習得したことで、冷め切っていた自分の人格に火がついたような気さえする。
    「オレが雷門を優勝に導いてみせるっス!」
    「にいちゃん何してんの?」
    「あッ、サク!」
    ドアを開け、部屋に入ってくる壁山の弟。
    壁山が笑っていたのは、壁山塀吾郎の部屋であり、弟の壁山サクの部屋でもある、二人で共用している部屋だったのだ。
    「楽しいことしてるんならオレも混ぜてよ!」
    「ちょっと一人で笑ってただけだよ!ゲームとかで遊んでたわけじゃない!」
    いつも『っス』口調の壁山も、自分の部屋の中で、家族である弟のサクの前では年相応の振る舞いを見せる。
    「で、なんか用か?」
    「明日フットボールフロンティアの予選だよねえ?」
    「ああ。」
    「帝国に勝ったんだから今回も楽勝だよね!」
    「あっはっは!ラクショーラクショー!にいちゃんに任せとけよ!」
    豪快に笑う壁山。開かれた大口は、いつもの頼りないそれではなく、弟が憧れるような兄だった。
    「期待してるよー!頑張ってねー!」
    そういうと部屋から出ていったサク。弟が去っても、壁山は笑い続けていた。
    自分にはザ・ウォールがあるのだ。もう帝国と戦った頃の自分とは違う。大きな自信がついた壁山は、普段より一回りほど大きく見えた。
    「あ、それと夕ご飯できたって。」
    部屋に戻ってきたサク。壁山は部屋を出て、弟と一緒にダイニングまで駆け抜けていったのだった。

  • 137>>125/11/23(日) 23:49:51

    フットボールフロンティアの一回戦当日。試合会場は対戦相手の野生中学校の校舎だ。
    会場に到着するまでバスの中で作戦会議しており、窓から外を眺めていなかった円堂たちは、会場に到着し、バスから出ると、初めて目の前の景色に驚愕した。
    「ここが野生中か!?」
    東に森。西に森。南に森。北に森。
    見渡す限りの大森林。四方八方からは虫や鳥の鳴き声が聞こえる。
    吊り橋の向こう、遠くに見える校舎は、屋根が藁で作られた、サバイバル映画なんかで見るようなツリー・ハウスならぬツリー・スクール・ビルディング。
    まさに野生の野生による野生のための中学校…それが野生中学校。
    高級車に乗って円堂たちに着いてきていた夏未。慣れない田舎の雰囲気に、ストレスを感じ、汗をかく。
    「コケッ!コケッ!」
    「ホギャアアア」
    ふと、来た道から動物の鳴き声が聞こえた。振り返る夏未。そこにいたのは…

  • 138>>125/11/24(月) 00:43:38

    「これが車コケ!?初めて見たコケ!」
    「タイヤが四つも付いてるチータ!」
    「フシュルルル…」
    夏未の目に入ったのは、人間という名の獣の群れッ
    野生中サッカー部!
    それは弱肉強食にして実力主義の過酷な野生世界を生き延びる力を持った生命力溢れる野生動物の集団ッ
    灼熱の自然のなか、過酷な環境でさえも、彼らにとっては慣れたもの。当然の世界ッ
    円堂たちの住む町がかつてジャングルだった頃から変わらない、五万年の歴史のなか一切不変の、人間のうちに潜む本能を引き出された超危険生物たちッ
    「すっげー!中は機械でいっぱいだゴリ!」
    『コケ』だの『ゴリ』だののわざとらしいキャラ付けの語尾で油断してしまいそうになるが、彼らは強豪。気の抜けない相手だ。
    「こンなのに負けられるか…」

  • 139二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 00:54:00

    野生中だ ゴリラが目の前にいる

  • 140>>125/11/24(月) 01:25:15

    「さあッさあッさあッ!我らが雷門中サッカー部が只今より開始させる、フットボールフロンティアの記念すべき第一回戦ッ!相手は爆発力をその身に秘める野生児を束ねたダイナマイト・チームである野生中学サッカー部!そのジャンプ力は帝国をも超えると言われています!雷門イレブン!野生中という高い壁を飛び越えろ!実況は私、将棋部の角馬圭太がお送りします。」
    沸き立つ観客たち。しかし彼らの殆どが野生中の生徒だ。
    試合会場は野生中側のグラウンド。当然相手の中学の生徒は校舎からすぐに駆けつけられる。
    対して雷門の生徒は応援に来づらい。
    先述の通り、野生中の校舎は都心からかなり離れた地域にある。道路も整備されておらず、ナチュラル・ウォール(自然の壁)で覆われた状態。交通手段は限られ、距離が遠いので交通費もしっかりかかるため、そもそも応援に来れない人間が圧倒的多数派なのだ。
    「とうとうフットボールフロンティアが始まるんだな!燃えてきたぜ!」
    「しかし、ここまで応援の人数に差があると、気が滅入るっていうかな…」
    「まだまだオレたちは弱小ッてわけだ。」
    「…き…緊張してきたっス…」
    雷門中から応援に来てくれた人間は、たった一人すらいなかった。
    圧倒的アウェーのこの状況に、直前までやる気のあった壁山の心が冷や水をかけられたように萎んでゆく。また、いつもの弱気な彼に戻ってしまうのだろうか…
    「お…オレ、トイ…」
    だが、応援に駆けつけてくるのは雷門中から来る人間だけじゃないのだ。
    「「「雷門中ー!がんばれー!」」」
    壁山の弟のサクが、友達二人を連れ、メガホン片手に応援に来てくれていた。
    「サク!」
    「にいちゃーん!応援に来たよー!」
    「あの帝国に勝ッた!」
    「お前のにいちゃんスゴいンだな!」
    「うん!にいちゃんがんばれー!」
    純粋な雷門イレブンへの声援が、彼らを突き動かすエネルギーとなる。体にエンジンがかかる十四人。実の弟からの言葉というわけなので、特に壁山はやる気十二分。
    「見てろよサク…にいちゃんがやッてやるからなッ!」
    緑一色の大地から、緑一色のフィールドに、壁山塀吾郎はその大きな足で立った。

  • 141>>125/11/24(月) 01:47:43

    観客の歓声を聞きながら、円堂は頭の中で亡くなった祖父に話しかけていた。
    『じいちゃん…いよいよフットボールフロンティアの地区予選が始まるんだ。』
    目を閉じる円堂。瞼の裏では、これから自分が進もうとしている広大なスタジアムが見えていた。
    『オレ、絶対に勝ち抜いて全国大会に行ってみせるからな。じいちゃんは天国から応援しててくれ!』
    目を開けた。ゴール前からのフィールドの景色。今まで見てきた、雷門中や河川敷のグラウンドじゃない、見慣れないグラウンド。
    その見慣れなさが、サッカーを通じた円堂の世界が広がった証だった。
    腰を落とし、両手を構え、試合開始のホイッスルを待つ。彼の丸目に、夏の太陽光が反射していた。

  • 142>>125/11/24(月) 02:10:40

    「アァーアアァー!」
    試合開始。と、同時に他山が叫ぶ。あの監督も尾刈斗の地木流と同じ、奇声を発するタイプの監督ということだろうか。半裸で監督を務めているあたり、変態性は地木流よりも強いのかもしれない。
    キック・オフは雷門から始まった。
    「他山先生が、この試合に勝ったらオヤツ食べ放題だってさ!みんな!やるコケ!」
    相手キャプテンの鶏井がチームに発破をかける。野生イレブンのメンバーが、それに応えるようにして、各々個性豊かな奇声を上げた。
    「相手の縄張りであるこのグリーンなサッカーコート。雷門中は誘き出された獲物として、野生中に狩られてしまうのか…?」
    しかし雷門、意外にも敵にボールを取られず。風丸から染岡へとパスが繋がっていく。
    「野生中の実力…見せてもらおうか!」
    染岡がゴール前の空中にボールを蹴った。それがそのままパスとなり、豪炎寺がファイアトルネードを使おうとした時。
    視界の端に、黒い影。
    「ああっと野生中キャプテン、鶏井も跳躍んだ!否、飛翔んだ!」
    映ったそれの正体は、一年生にして野生中キャプテンを務める実力者、鶏井のトサカであった。
    「コケーッ」
    豪炎寺を大きく飛び越えた鶏井。そのまま空中キックでボールを奪い取った。
    「高さじゃ負けないコケ!」
    跳んだ豪炎寺に後から追いつく翔ぶチカラもだが、鶏井のポジションはMFのはず。そこそこ前にいたはずの彼が、ゴール手前まで一瞬できている。
    「こいつら、ジャンプ力だけじゃない…スピードもある…野生の名は伊達じゃないってことかよ…!」

  • 143>>125/11/24(月) 02:13:30

    あっもう二時だから…ここいらで中断でやんす
    ワシはマネモブに感謝してんのやっ
    鑑賞してくれるマネモブのおかげで心なしか文章力が上がってきたんやっ

  • 144二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 03:50:13

    しゃあっSS更新来てたのん! あざーす(ガシッ)
    それにしても野生中の人達全員個性あるの良いっスよね

  • 145二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 09:26:44

    鯖が不安定だから保守欠かせないっスね

  • 146二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 15:05:08

    おーっ お察しの通りゴリラがゴリラになっとるやん

  • 147二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 19:34:17

    世宇子相手に鬼龍のあの名台詞を言ってほしいですね…ガチでね

  • 148>>125/11/24(月) 23:37:11

    「ヘイッ」
    地面に着地した鶏井。
    豪炎寺から取ったボールを前線のFWに飛ばす。
    「今度は野生中の攻撃だあッ鶏井、水前寺へのロング・パス!」
    ボールを受け取った三年生のFWである水前寺。ボールを奪還しようと半田が水前寺に接近する。
    そのとき、水前寺の猫目の色が変わった。
    「な…なにっスピードが上がっただとッ」
    「出たーッ水前寺の高速ドリブル!まさに野生のチーターを連想わせる速さだーッ!」
    圧倒的スピードで雷門を翻弄。誰一人だって彼の速さに追いつけず、次々と抜かれていった。
    だが、ここに一人立ちはだかる男がいる。
    「ザ・ウォール!」
    壁山がマッスル・ポーズを取った。すると、そのポーズの迫力で大地が刺激され、地面から壁がそり立ってきた。
    「わあっ」
    壁が生える際の地面の揺れで倒れる水前寺。
    溢れたボールは壁山の元に。
    「壁山が水前寺のドリブルを止めたッいくら足が速かろうが踏み締める地面が不安定になってしまえば俊足は腐る!壁山、見事に水前寺の弱点を突いたッ」

  • 149二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 00:12:55

    さっそく壁山がDFの面目躍如した 俺も嬉しいぜ!

  • 150>>125/11/25(火) 00:44:08

    間髪入れずに壁山に向かって走り出した野生イレブンの選手たち。
    壁山はボールを奪うディフェンス能力が高いが、そこからボールを奪われずに前線にボールを運べるかはまた別の話。
    ここでボールを奪われてしまえば、先ほどのザ・ウォールはTPの無駄遣いになってしまう。
    しかし、ボールを奪う選手がそのままボールを運ばなくちゃあいけないなんてルールは無いのだ。
    「こっちだ壁山ッ」
    壁山のピンチに颯爽登場!雷門イレブン初期メンバーの頼れる先輩MF、半田真一だ!
    「半田さんッ」
    壁山から半田への友情のパス!
    ターゲットをボールが渡った先の半田に移行させた野生中選手が、半田に向かって突撃していく。
    だが、半田も抵抗せずにボールを取られるような選手じゃないのだ。
    ジグザグという動きでドリブルする半田。その身に纏われる。電撃が。
    「ジグザグスパーク!」
    蒼のスパーク(閃光)がディフェンスに来た野生中選手たちを襲った。彼らを痺れさせ、半田は彼らの間を素通っていく。

  • 151>>125/11/25(火) 00:46:37

    「いけーっ豪炎寺!」
    そのままボールを豪炎寺のいる空中に向かってパス。豪炎寺、返事はせず。シュートに集中しているのだ。
    「何度やっても同じコケ!」
    鶏井も飛んだ。先ほどと同じく豪炎寺からボールを奪い取る気のようだ。
    しかし、様子見していた先ほどとは違う。
    「豪炎寺ィ!『例の技』やッ」
    豪炎寺の下に、近くにいたシマキンが飛び出す。彼はそのまま跳び、豪炎寺の踏み台となった。
    大きく跳んだシマキンを踏み台にして、豪炎寺がファイアトルネードを使う時より高く跳び、クルッと振り向きオーバー・ヘッド・キックを放つ。
    「イナズマ落とし!」
    ジグザグスパークと同じ蒼い電撃。しかし、それはジグザグスパークより輝き、煌めき、火花を散らす。
    豪炎寺とシマキン。FWとDFの二人が協力して放つ友情の必殺技。
    「「イナズマ落とし!」」
    壁山、半田、豪炎寺と連鎖する稲妻のように繋がってゆき、そのままの勢いで蹴り飛ばされたボールは、GKのイノシシがゴールを守る時間をも与えず、ゴールに深く突き刺さった。

  • 152>>125/11/25(火) 01:02:55

    「ゴーーール!壁山、半田、シマキン、豪炎寺とボールが渡ってゆき、最後はゴールにボールが向かってゆく!野生の個人技に対して、雷門は持ち味のチーム・ワークで見事先取点をもぎ取ったァ!」
    未だパチパチと稲妻が走るサッカー・ボール。それに呼応するかのように、雷門イレブンの興奮も未だ収まらず。先取点をもたらしたヒーローである豪炎寺の元に集まって来た。
    十四人の中で一番ワクワクした顔で、円堂が豪炎寺たちに向かって大声で喋り出す。
    「すげえや!壁山、半田、シマキン、豪炎寺!今の一点はオマエたち四人の力で取った一点だった!オレたち、団結力なら相手にも負けてないぞ!」
    「半田!壁山!おどれらも特訓の成果が出て来とるで!あの夜は無駄やなかっんじゃあっ」
    強豪校の野生中に対して、先取点を取ったのだ。もう自分たちを弱小だなんて呼ばせない。ますます士気の上がった雷門イレブン。
    「よーし!この調子で点差を広げてくぞォ!」
    「「「「「「「「「「「「「「おうっ」」」」」」」」」」」」」」
    天に向かって拳を突き上げた。負ける気がしない。勝つことだけを考えていれば、勝てる。

  • 153>>125/11/25(火) 01:51:00

    野生イレブンの目が、一点の差を出されて逆にギラついていた。彼らの射殺すような視線の先はただ一つ、相手のゴールのみ。
    ふつふつと彼らの中でこみあげる怒り。だが、それを只ぶちまけるのでは駄目。
    これはハンティングだ。冷静さを欠けば、残るのは敗北という名の『死』だけ。
    一見獰猛に見えるライオンやクマ、オオカミだって、『冷静に獰猛』なのだ。
    静と動は使い分けるだけのものじゃない。『同時に使う』というやり方もある。内を『静』に。外を『動』に。
    野生中が強豪校たる理由にして由縁。
    日々、過酷な野生の中で鍛え上げてきたもの。
    練習時間は校舎近くの森林に放り出され、猛獣に追いかけ回され続けた。
    集中力やスタミナもあるが、野生中学サッカー部の本質。真骨頂は、また別のものにある。
    日常がサバイバルだったものたちが持つもの。
    磨き上げられた本能と、それに付随する理性だ。
    獣の逆襲が、始まる。

  • 154>>125/11/25(火) 01:52:21

    あっもう深夜だから…
    今回はこれでおしまいでやんす
    ご鑑賞ありがとう

  • 155二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 05:48:30

    夜遅くお疲れ様なのん… おやすみなさいっス
    それと…滅茶苦茶絵が上手いっスね! 鶏部分がガチで鶏なのん

  • 156二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 12:10:16

    壁山が最初から活躍してるのいいっスね

  • 157二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 13:06:13

    アニメだと円堂が完封&イナズマ落としの1点で終わりだったのになぁ
    ◇何が始まる…?

  • 158二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 21:54:40

    ムフッ 保守しようね

  • 159>>125/11/25(火) 22:06:47

    悪いねえ今日は休載させてもらうんだよ
    ごめんなあっ
    また明日投稿しますガシッ

  • 160二次元好きの匿名さん25/11/26(水) 02:27:33

    ムフフ…待ってるのん! 最近寒いから体冷やさない様にして休むんで欲しいっスね

  • 161>>125/11/26(水) 12:00:58

    「雷門に先取点を取られた野生!このまま雷門が逃げ切るのか、それとも野生が追いつくのか!?再びキック・オフですッ」
    試合が再開された。駆け出す雷門イレブンたち。
    『ホギャアアァアァァァアッッッ!!!』
    「う…うるさッ」
    野生イレブンの猛獣たちが吠える。
    彼らはその理性で外面の本能を覆わないことを決めたのだ。
    怯む雷門イレブン。その隙を危険生物は見逃さなかった。彼らの横を弾丸のようにすり抜けて奔っていく。
    「させるか!」
    しかし、風丸に追い付かれる。そのままタックルされかけるが。
    「コッコッコ…」
    ボールをドリブルしていた鶏井のスピードがみるみるうちに上がっていく。その速さはそのうち風丸を上回ってゆく。
    「あ…あの技は!」
    「ワシの!」
    「ダッシュアクセル!コケーッ」
    鶏井の放って来た必殺技で吹っ飛ばされる風丸。トラックの正面衝突に近い衝撃を受けてしまったため、あまりの痛みで悲鳴を上げることもできやしない。

  • 162二次元好きの匿名さん25/11/26(水) 18:10:31

    >>130

    不思議ですね…とても50代には見えない響正剛が10年経っても一番外見が変化ナシに見えるなんて

    ※響監督は40年前中学生(12〜15歳)のため現在50半ば伝タフ

  • 163二次元好きの匿名さん25/11/26(水) 23:19:53

    しゃあっ 保守!

  • 164>>125/11/27(木) 00:45:57

    「来るぞ、止めろ壁山!」
    「は…はいっス!」
    ダッシュアクセルで爆走する鶏井の前に立ちはだかる壁山。地面から壁を盛り上がらせようと再びマッスル・ポーズを取る。
    「ザ・ウォール!」
    結果、必殺技は発動した。が、
    「い…いないっス!」
    「チーターッ」
    鶏井から水前寺へのパス。
    そこから鶏井に続くように、水前寺が放った”ダッシュアクセル“禁断の二度撃ちで、壁山は自分の技が発動する前に抜かれていたのだ。
    「お…オレのザ・ウォールが…」

  • 165>>125/11/27(木) 02:13:00

    悪いねえ今回はここまでしか書けなかったんだよ
    じ…次回こそは進めますから……
    ご鑑賞ありがとう!アイアン木場よ永遠なれ!

  • 166二次元好きの匿名さん25/11/27(木) 05:02:29

    更新感謝します(ガシッ)
    のんびりで良いっスよ… こっちはタダで見させてもらってるんスから

  • 167二次元好きの匿名さん25/11/27(木) 15:00:36

    保守ッ

  • 168二次元好きの匿名さん25/11/27(木) 21:52:15

    このレスは削除されています

  • 169>>125/11/27(木) 23:58:38

    「次々と雷門のDF陣を突破していく野生の攻撃陣たち!前へ前へと猛スピードで突撃していく様はまるで群れを成した猛獣のようだァ!」
    あっという間にゴール前まで到達した野生の攻撃陣たち。
    前半の残り時間も少ないため、ボールを取られても反撃される前に前半が終わる。
    結果的に、防御面が薄くなろうがお構いなしの攻撃ができるのだ。攻撃に来た野生の選手の数は少なく無い。
    野生の攻撃陣のうちの一人が、水前寺からパスされたボールと一緒に跳躍した。
    「コンドルダイブ!」
    そのまま獲物を狙う鷹のような急降下でボールに向かってヘディングした。鋭い軌道のボールが円堂に向かう。
    「半田たちの頑張りを無駄にさせない!ここで止める!」
    ゴッドハンドを発動させようとする円堂。右手を掲げたところで、落下するボールにむかってさらにシュートが重ねられかけていることに気づいた。
    「タァーザンキック!」

  • 170>>125/11/28(金) 01:07:35

    「なにっ」
    シュート・チェインによってシュートのスピード上がり、更にシュート・コースも円堂の想定からズレた。
    これではボールに向けてのゴッドハンドの発動が間に合わない。
    しかし円堂、こんな時の為、習得していたのだ…新たなる必殺技。
    目をカッ開き、歯を食いしばる。
    尾刈斗との戦いの中、グレネードショットを習得したことがきっかけになって思いついた必殺技。
    これはグレネードショットの身体のばねを利用した動きを流用し、パンチの威力を上げるという技。
    技の出の遅さというゴッドハンドの弱点を、シマキンのタフネスブロックと同じように発生の早さで補うという必殺技。
    円堂のその拳に熱が灯る。
    「熱血パンチ!」

  • 171>>125/11/28(金) 01:34:00

    が…駄目っ…
    「あッ」
    二人が協力して放った野生側のシュートに対して、円堂のキーパー技は一人で発動させるもの。シンプルに人数で負けているのだ。
    技の格や熟練度で相手を上回らない限り、必殺技が重ねがけされたシュートは一人では止められない。
    シュートは熱血パンチを円堂の身体ごと吹き飛ばしていった。
    「ゴール!個人技が目立つ野生では珍しい大鷲と五利のコンビ・プレーで、点差はゼロとなりました!そしてここで前半終了!」
    「クソッ!」
    悪態をつく円堂。意外かもしれないが、筋金入りのサッカー・バカのくせして、いやサッカー・バカだからこそなのか。円堂は悔しい時は普通に感情を吐き出す。
    得点は1-1だが、前半は少々雷門にとってモヤついた結果で終わることとなる。
    この一点が野生の反撃の始まりに過ぎなかったことを、円堂たちは後に知ることとなる。
    チーム・メイトが円堂に駆け寄る。シマキンが円堂を心配する声が聞こえた。

  • 172>>125/11/28(金) 01:35:38

    あっもう深夜だから…今回はこれで一旦おしまいでやんす
    ご鑑賞マネモブさんありがとうございます

  • 173二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 04:03:14

    感謝します!(ガシッ) イナイレの技インフレ?って凄まじいっスね… 強すぎを超えた強すぎ

  • 174二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 08:55:09

    ふんっ保っ守
    ふんっ保っ守

  • 175二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 14:29:05

    このレスは削除されています

  • 176二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 18:17:41

    >>164

    ドリブル技の連発は良いが…TPの残量は大丈夫か?

  • 177>>125/11/29(土) 00:17:49

    ハーフ・タイムで控え室に戻ってきた雷門イレブン。彼らの雰囲気は、正直なところそこまで良いとは言えない。
    「せっかくの先制点が一瞬で無と化したでやんすよ…」
    栗松が暗い顔で零す。
    「無駄やない。」
    チームの周りを漂う重い空気を破るように、円堂が口の中でおにぎりを噛みながら皆を励ます。
    「先制の一点が無かったら、相手に一点リードされて前半が終わっとんたんやからのォ。ワシらの一点は無駄なんかやなかったで。」
    控え室の椅子から立ち上がって、スポーツ・ドリンクをゴクリを飲むシマキン。
    「つーか円堂、口の中に物入れたまま喋らんといた方がええで…」
    ゴクン、とおにぎりを飲み込み、シマキンに向かって謝る円堂。
    「悪いなシマキン。風丸はベンチで休んでてくれ。みんな!後半もガンガン攻めてくぞ!」
    「「「「「「「「「「「「「「おおっ」」」」」」」」」」」」」」
    十四人が団結し、大きな声で自分たちで自分たちに発破をかける。
    「…オレには…なにが…」
    そのうちの一人、不安げな少年がいた。

  • 178>>125/11/29(土) 00:50:50

    「さあ試合再開です!前半は苦労して取った先取点を十分とかからずに取り返されてしまった雷門!
    バラバラの個性が売りの超危険生物たちがそれぞれの適材適所に就き群れを成した恐ろしさを雷門イレブンはこれから味わうのか!?
    後半のキック・オフは野生側がします!」
    後半試合が始まった。すぐさまボールは先ほどと同じ水前寺に回される。
    再びの高速ドリブル。しかしその後の展開は先ほどとは違う。
    「おーッと雷門は水前寺に対して複数人でのマークをかけたッ!これでは水前寺のドリブルが通らない!」
    水前寺の猫目がイラつきで歪む。が、荒れているのは外側だけ。冷静な彼の内面は、そのままボールを後ろのに回させた。
    ザ・ウォールを突破できる水前寺が攻撃に参加できないということは、
    「これなら守れるっス!」
    壁山の必殺技が決まるということだ。
    「オレだって…必殺技が使えるんス!チームの役に立てるんス!」
    壁山の筋肉が膨らんでゆく。マッスル・ポーズで地面が変形していく。壁山の努力の成果が実っていく。
    「ザ・ウォール!!」
    壁山の必殺技は、大鷲のジャンプであっけなく飛び超えられた。

  • 179>>125/11/29(土) 01:09:27

    「え…」
    目の前のあっけない現実に、壁山の表情が絶望に歪んでゆく。心が折れていく。
    「コンドルダイブ!」
    更にあっけないことに、大鷲のシュートは平然と円堂の横を過ぎ去っていった。
    一瞬静まり返り、口から空気を漏らす円堂。
    「…は。」
    そう。ザ・ウォールの弱点。野生のような空中戦の得意な相手に対しては、まったくもって無力。
    それどころか空中からシュートできる大鷲のような選手にとっては、わざわざ壁でGKの死角を増やしてくれる悪手だ。
    「あ、あ、ああ、」
    理解し、座り込む壁山。
    死角を増やしたのは、自分。
    足を引っ張ったのは、自分。
    シュートを決めさせたのは、自分。
    努力の成果は、実ったものは、無駄どころか余計なものだった。
    「にいちゃん…」
    「…さ…サク…」
    「…」
    弟の目。悲しみの目。
    無意識のうち、自分の心を守ってくれていた弟の笑顔という最後の砦が、崩れた。
    「あ  ああ  あ あ
     ああ あ  
    あ  あ  ああ」
    壁山は大滝の涙を目から流して絶叫し、崩れ落ちていった。

  • 180>>125/11/29(土) 01:46:46

    「壁山ッ!おいッ壁山ッ!」
    試合が再開されようが、壁山の心は折れたままだった。しかし、容赦なく獣の群れは攻めていく。冷静に弱みを突いていく。
    しかし、雷門もただではやられない。怪物たちに立ち向かう。
    「このムード…オレたちがぶっ壊してやるぜ!」
    「これが本家のダッシュアクセルやッ!」
    シマキンがダッシュアクセルで野生の選手たちを次々と吹き飛ばしていく。ゴール前までボールを運んだ。が、
    「豪炎寺がマークされとる!」
    「だったらオレのドラゴンクラッシュだ!サッカーは陸でやるもんだって教えてやるぜ!」
    やむなくボールを染岡に渡す。
    「ドラゴン…」
    しかしそこに、
    「ウガァーッ!」
    必殺技のスーパーアルマジロで、回転しながら突っ込んでくる野生のDF、獅子王。
    「ぐああッ」
    「獅子王がその野生味溢れるイエロー・カードが飛び出す勢いのラフ・プレーで、染岡ごとボールを吹き飛ばしたァー!!」
    「染岡ッ」
    「ぐッ…うう…」
    吹っ飛ばされた染岡。おそらくは痛みで利き足を押さえ、苦悶の表情で顔を歪めている。
    ボールが外に出た為、一度試合を中断。染岡に駆け寄る雷門の選手たち。
    「くッ…」
    どうやら染岡は足を捻ったらしい。これでは試合に出られない。すなわち、選手交代というわけだ。
    「影野…頼んだぞ…」
    染岡の想いを受け取り、グラウンドに立つ影野。しかし、今必要なのは守りじゃなくて攻めだ。
    ドラゴンクラッシュが撃てる染岡が動けず、豪炎寺がマークされ、イナズマ落としも撃てない状況。他にシュート技が撃てるのはGKの円堂のみ。
    全国大会に出場してくるチームなのだ。ノーマル・シュートでは先ず、その守りを打ち破れないと考えていいだろう。
    「一体、どうすれば…」
    頭を捻る一同。そのうち彼らは全員が再び臨戦体制に移っていった。
    無策というわけではないらしい。果たして、彼らの作戦とは。

  • 181>>125/11/29(土) 01:48:24

    あっもう二時近いから…今回はここでおしまいにするでやんす
    ご鑑賞ありがとう

  • 182二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 02:17:04

    更新感謝しますっ!(ガシッ)
    はうっ ラフ・プレー い や あ あ あ(イナイレではよく見る光景書き文字)

  • 183二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 12:07:11

    保守のん

  • 184二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 18:20:55

    密林のある関東ブロックってま、まさか…群馬?
    ふぅん野生中は未開の蛮族というわけか

  • 185>>125/11/30(日) 00:50:40

    悪いねえ投稿は今日の朝にさせてもらうことにしたんだよ

  • 186>>125/11/30(日) 08:41:03

    相談を終え、今一度キック・オフだ。
    明らかに選手にダメージを与えたディフェンスをしたせいで、獅子王はファウルを貰っている。ボールを蹴るのは雷門。作戦を実行しやすいのは雷門。
    駆け出す十一人。そう。『十一人』。
    「な…なんだあっ円堂がGKの役割を放棄し上がっていく!で…DFまで!た…たしかに試合も終盤。一点の差が致命傷だが…しかし背水の陣はその一点の差を覆すために払われるリスクに合っているのか…!?」
    角馬の実況を耳に入れながら、ついさっきまでしていた作戦会議のことを回想する十一人。
    半田が切り出す。
    「おそらく毎日欠かさず自然の中で鍛え続けてきた野生の連中と比べてみると、オレを含める一年・二年の『サボり組』は、ハッキリ言って積み重ねの差が段違いだ。」
    ドリブルやシュートの一つだってしていなかった一年を思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をする半田。
    「現状、渡り合えてはいるけど、持久戦に持ち込まれたら勝てない。この残り時間だと、DFのお前たちも攻めに回さなきゃならないぞ。」

  • 187二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 14:54:25

    彼を知り己を知るからこそ作戦を立てられる…雷門の底力を知れ!(オトン書き文字)

  • 188二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 20:12:15

    >>186

    見事やな…

  • 189>>125/11/30(日) 21:48:47

    「それじゃダメだね」
    全員が静かになっていた時、提案したのは意外にも土門だった。
    「DFを上げるだけじゃダメだ。点を入れられるどころか、ボールを奪られて仲間内で回されるだけでオレたちキツいんだぜ。守りは全部攻撃に回すんだよ。」
    つまり、と言って、仲間を指で指す土門。人差し指の先には、目を丸くしている円堂がいた。
    「半端にはやらない。円堂、お前も前に出てこい。」
    こくりと頷く一同。決意は固まった。背後を振り向かず全力の攻撃を仕掛ける。
    「ウーーガーー!」
    回想を終えた時、丁度獅子王が転がってディフェンスしにきた。スピードは染岡が吹っ飛ばされた時と変わっていない。イエロー・カードを貰おうが関係なし。こちらの選手を再び潰す気のようだ。

  • 190二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 22:35:44

    おーっええのお

  • 191二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 22:45:56

    影山や秋葉名戸の超次元(試合外)サッカーに対処できるのか不安…それが僕です 
    正面戦闘以外を疎かにしてこの先乗り切れるんとちゃう?待てよ そもそも選手が裏工作に対策打つ方がムズいんだぜ

  • 192二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 22:54:04

    >>191

    しかし…尾刈斗がそうだったように対処したとしてもイカサマを超えた本気を出してきそうなのです

  • 193>>125/11/30(日) 23:43:00

    「ガオッ!?」
    「それはもう弱点が分かってるンだよ!」
    獅子王のフォワード技にしてディフェンス技でもあるスーパーアルマジロには、一つ致命的な弱点があった。
    スピードはある…しかし膝を丸めてでんぐり返しの体制で転がっていくため、前が見えづらく、軌道は単純なのだ。一度使えば簡単に見切られ、後はディフェンス技として機能しなくなる。
    半田は獅子王の守りをあっさりと避けた。
    そのまま仲間へとボールを繋いでゆく。
    「いけーッ豪炎寺!」
    「コケー!(やらせないコケ!)!」
    やはりマークされていた豪炎寺。しかし今の言葉は罠だった。
    「コケ!?」
    「受け取ったぜ、半田!」
    そう。豪炎寺修也は有名人。野生の選手も試合中にその名前を聞けば反射で豪炎寺のマークにつくように訓練されている。しかし、それが仇となった。
    「やつら、名前を呼んでないヤツにパスした!」
    野生の監督がしくじって唇を噛む。
    長所と短所は表裏一体。雷門は見事に、相手の長所をそのまま弱点にして野生のガードを打ち破った。

  • 194>>125/12/01(月) 00:11:06

    ボールを受け取った円堂。相手のディフェンス陣は豪炎寺の元に集まっている。これならシュートが通る。かと思いきや。
    「フゴ…」
    敵キーパーの猪口が硬い爪をつけた大きな獣の手を開き、ゴール前で四つ足になり、待ち構えていた。
    右足を振り上げる円堂。爆発的な青い光が彼の足を纏ってゆく。火力で押し切る。
    技の威力は相手と同レベル。しかしFWをしているGKとGKをしているGKなのだ。当然、選手の技量では負けている。
    知ったことか。
    「グレネードショット!」
    知っている。
    最初の一点は逃した猪口。彼はスロー・スターター。悔しさをバネにして強くなる。
    今までの二年間を思い出す。二年連続で帝国に負けた過去を。二年分の辛酸の味が口の中に蘇ってきた。太い牙が目立つ歯からギリギリと音が鳴る。
    彼は、自分と仲間たちの勝利に懸ける思いを知っているのだ。
    仲間たちが今、全力で豪炎寺を抑えてくれていることを知っているのだ。
    自分たちに屈辱を、勝つためのエネルギーをくれた帝国は、きっと決勝まで勝ち上がってくるだろう。
    因縁の帝国と、戦えもしないで終わってたまるか。
    ここで止めずして何がGKか。
    「ワイルドクロー!!」
    助走を付けてシュート・コースへ疾走した。勢いでシュートを正面からぶっ飛ばす。
    ボールが鋭く回転しながら、猪口のもとへ向かってゆく。

  • 195>>125/12/01(月) 00:23:01

    向かっていっていたのは、途中までだった。
    「どりゃあぁああぁぁ!!!」
    円堂と同じく、いや、違う巻き方でバンダナを着けている大男が、シュート・コースに割り込んできた。
    ただ走って来たわけじゃない。シマキンは使い慣れた十八番の必殺技であるダッシュアクセルを使い、そのままの勢いで割り込んできたのだ。
    「そっちのモミアゲDFが教えてくれたんや…必殺技の使い方は一つだけやないッてことをのォ!これがワシのドリブル技をシュートに転用した必殺技!」
    ダッシュアクセルのスピードでグレネードショットに突撃したシマキン、そのままヘディングでシュート・コースを変えた。名前の通り、猪口は小回りが効かない選手。ボールを横目に止まれずに走ってゆく。
    「名前は!まだ無い!」
    後に、目金によって、ロケットヘッドと命名されることとなる。
    シュートはゴールの中を突き破っていった。

  • 196>>125/12/01(月) 00:24:27

    あっもう〇時過ぎだから…
    今日はもう終わりでやんす
    ご鑑賞あざーっス

  • 197二次元好きの匿名さん25/12/01(月) 03:37:59

    しゃあっ! 更新あざーす(ガシッ)

  • 198>>125/12/01(月) 08:18:27
  • 199二次元好きの匿名さん25/12/01(月) 11:44:18

    スレ立てアザースッ


    >>195

    おおっ 同系統の技として説得力を持たせとるんや!見事やな…

  • 200二次元好きの匿名さん25/12/01(月) 11:44:58

    文字ばっかりであまり面白くは無い

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