【♂トレ】3/4

  • 1◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 09:25:56

    08:05

    規則正しいロードノイズと自分の事を忘れるなと言う様にパッチワークの様に治した舗装が存在感を主張する。
    速度計の脇に付いているデジタル時計を見ると人工島と東京を結ぶ吊り橋を渡る時間。いつも通り、そういつも通り。何も変化は無い……そして、これも。
    吊り橋の側壁に自動車がぶつかった痕がある。飲酒運転か居眠り運転かは分からないが、中央分離帯に衝突した直後に反対側へ弾かれて、側壁に衝突、その後は20~30mほど道路を転がり続けて、止まった様である。
    若しかしたら…私も夫が、助手席に座っている状態で、同じ事をすれば……いや、夫は何も悪くないし、生きるのに辛いとも一言も言っていない。なのに私の独り善がりで、ワガママに巻き込む事は許されない。
    若干、右に傾けていたハンドルを元に戻し、アクセルを踏み込む。と、同時に前方を走っていたリムジンバスが急ブレーキをかける。
    私も慌ててブレーキを踏み込むが、間に合わない。スキール音が響く中、バスのテールランプがどんどん近づく。しかし、不思議なことに悲しいとか、怖いとか、嫌だとか、死にたくないとか、は全く思わなかった。寧ろ、夫婦二人でやっと楽になれると思った。そして、私は静かに目を閉じた。

  • 2◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 09:26:32
  • 3二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 09:27:19

    不穏な始まりだあ

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 09:33:49

    不穏すぎる

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 09:34:43

    でたな文豪

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 09:49:46

    あの人か……不穏!

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 10:10:18

    異次元の追跡者ってもう完結してたっけ?

  • 8◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 10:20:14

    いつの間にか落ちていたので、改めて、文書を見直してから再度、投稿することにしました。説明が無くてすいません。

  • 9◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 11:29:15

    06:25

    ゆっくり目を開き、周囲を確認する。私の身体は潰れたボディの中で折れた肋骨が肺に刺さって口から血が流れて………はおらず、温かい布団に包まれていた。

    「………………!?」

    私の隣りで寝ているハズの夫が居ない。慌てて身体を跳ね上げる。いつもの日課である、朝の体温測定をもせずに、寝間着を脱ぎ捨て私服に着替えようとした所で台所から、派手な音が響き渡る。

    「あなた!?大丈夫ですか!?」

    寝室からリビングに滑り込むとそこには、落ちて来た片手鍋やフライパンを拾っている夫がいた。

    「あぁ、おはよう。今日の朝食は、僕が作るよ。」

    夫は、私に気がつくとニコッと笑いながら、手にしていたフライパンと片手鍋を頭の上で、クロスさせる。

    「ありがとうございます…けど、私が作りますので、貴方は座って待っていて下さい。」

    夫の変なジェスチャーに不覚にもクスッと笑ってしまいながら、台所に入って夫と一緒に調理器具を拾う。

    「この台所にした時に、セールスマンがこれは片手でも降ろせます。って言ってたけど、コレは嘘みたいだね。僕には無理だった。」

    と夫は首を振りながら方を竦める。

    「仕方ありませんよ。今のあなたには、難しいんですから…こう言った力仕事は。」

    使わない鍋やフライパンを全て片付けた収納を片手で、軽く押し上げると静かに収納は、閉じて行った。

    「力仕事ねぇ……。僕も最初は、今の君みたいに出来ると思ったんだけどなぁ…やっぱりこの状態じゃ、如何ともし難いか。」

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 11:30:27

    何が起こっているんだ
    幻術か
    また幻術なのか

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 11:34:24

    事故後に夫に障がいが残った?
    それともタイムリープか

  • 12◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 11:38:28

    と言いながら、彼は台所から出て行く。どうやら1人で朝食を作るのは、諦めた様である。

    「貴方、そう言えば、何を作ろうとしていたんですか?」

    「何を……?あぁ、トンカツでも作ろうかと思ってさ」

    夫が、台所のドアからひょっこり顔を出して、シレッとそう答えた。

    「トンカツですか…!?なんで朝からそんな、重いものを…」

    「いや、今日夢で君にさ、最期に何が食べたいですか?って聞かれて、トンカツと答えてから無性にトンカツが、食べたくなって」

    「…………」

    「いや、やっぱり朝っぱらから、トンカツはムリだよね、時間にも胃袋にも…。いつも通りの朝食で良いよ。」

    「あっ…いえ、そう言う事では……いえ何でもありません、分かりました。
    それでは、いつも通りの朝食を作りますね。大体、20分くらいで用意出来るので、リビングで待ってて下さい。」

    「分かった、ありがとう」

    と言いながら彼はスタスタとリビングに向う…と言っても、私の家のリビングと台所はカウンター方式で繋がっているので、直ぐに夫は視界に現れる。
    椅子に座って、テレビをつけると何かを思い出したかの様にバッと立ち上がり、玄関に向う。少し、ガチャンガチャンと金属音がした後に夫が、戻って来た。
    右手には新聞紙を握っていたので、ただ新聞を取りに行っただけの様だ。
    ホッと胸を撫で下ろした私の方を一瞥すらせず、夫は新聞を被った。

  • 13◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 12:16:52

    07:45

    朝食を済ませ、歯を磨き、夫の着替えを手伝い、夫を職場まで送る、いつもの日課。
    住んでいるマンションを出て、隣接していている立体駐車場から係員に番号を伝えて、車を出してもらう。
    出て来た自動車は、以前は夫が乗っていたスポーツカーでは無く…5ドアコンパクトカーだった。その車に乗り込み、駐車場のパレットから車を出す。

    「今日も運転よろしく。…何か朝から、機嫌が良くなさそうだけど、どうしたの?」

    彼が、乗ってくるなり、いきなりこんな事を聞いてきた。

    「……いえ、別に何でもありませんよ。いつも通り…大丈夫です。」

    「本当?そんな風には、全く見えないけど。」

    さっきまで外を見ていた夫が、私の方をジィっと見つめる。恐らく、なにを隠しているかは、もう分かっているんだろう。無理に隠すより、正直に言った方が良いだろう。

    「………夢を見たんです。貴方と私が、事故に遭う夢です。」

    「……僕と一緒か。僕も君と一緒に死ぬ夢を見た。1回、仲良く病院に行った方が良いかもね。」

  • 14◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 12:17:18

    と彼は私の方を見ながらハハッと笑う。私も彼に合わせて笑うが、笑顔が顔の下半分にへばりついている気がした。

    「所で、今日の日程は?」

    「今日は、何時もより早くて15時で上がって良いってさ。君は?」

    「今日は午前中に病院に行きます。以前から言っていた、生理不順の事で。」

    「分かった……。明日からは、タクシーで行った方が良いかな。」

    「どうしたんですか…唐突に。」

    「いや、悪夢を見る上に生理不順の妻を、アッチコッチに引きずり回す訳には、行かないと思ってさ。」

    「…駄目ですよ。今の貴方は、1人で外に出るとどうなるか…私と2人の時だって!!」

    思わず、声を荒らげてしまった。彼の目が少しだけ大きくなる。

    「……ごめんなさい。思わず声を荒らげてしまって…」

    「いや、良いよ。君は悪くない。分かった君がやりたい様にして良いよ。現に僕は、君が居ないと何も出来ないから」

    彼はそう言うとまた、外の景色に視線を移す。私が悪くない。私が悪くない?私が悪いと言ってくれれば、まだ楽になれるのに。

  • 15二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 12:20:04

    イザナミか?

  • 16二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 12:59:06

    つらいなぁ

  • 17◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 19:39:07

    08:30

    いつも通り、夫を職場で降ろし病院へと向かった。病院に到着すると病院の玄関には、行列が出来ていた。
    予約しているから、何の問題もなく診察を受けられるだろうが、流石にここまで並んでいると少し不安になってくる。
    適当な場所に車を停め、腕時計を見ると予約した時間までかなりの余裕があった。
    このまま、行列を横目に見ながら数十分待つのは、流石に辛いのでカーナビでニュースを見ることにした。確か、この時間帯ならこの局のニュース番組が……あった。

    『……昨夜、行方不明の状態から発見された女性アイドル拉致監禁暴行事件に関して犯行を行ったのは、アイドル防衛軍であるとの犯行声明文が、警察とマスコミに届きました。』

    丁度、2週間前 東京都は江東区で、女性アイドルが拉致された。その後、2週間かけても足取りどころか手掛かりすら掴めずにいた所、昨夜 自宅前の路上で倒れている所を発見され、保護された。
    彼女の身体は、身体的には勿論だが、精神的衰弱が、かなり酷い…が昨夜の警察発表であった。

    『……また、防衛軍は今年の1月に行われた、トレーナー轢き逃げ事件の犯人である " 仙崎 優太 " 容疑者ほか数名の構成員を釈放する様に、要求しているとの事です。その要求を飲まない場合には、より過激な粛正活動を行うとの事です。』

  • 18◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 19:39:34

    彼らの目的は、アイドルらしからぬ行動をしているアイドル…例えば、アイドルであるにも関わらず、交際をしていたり、結婚していたり、子供をつくっている女性アイドルを再教育させ、更生させるのが目的の集団。
    構成員は、六割男性の4割女性と現代の社会情勢にリンクした理想的な集団で、更にそのうち1割が、ウマ娘と言われているが詳しい情報は不明との事。
    そして、その歯牙はアイドルやウマドルだけに留まらず、役者や俳優、果てには私たちウマ娘もその粛正の対象であった。
    人間の場合は、今回の様に拉致や通り魔、放火などで、粛正をする。
    それでは、私たちウマ娘の場合はどうするのか?無論、人間はウマ娘にフィジカルでは到底、敵わない。その場合は、人間であるトレーナーや家族友人をターゲットに粛正を行う。つまり、見せしめと言う訳である。
    学園関係者でも、今年の4月に第1子が産まれたフジキセキ先輩は昨年、パパラッチと男性アイドルに金を握らせ、アイドルとの浮気をデッチ上げ離婚させようとしていた事や会見中に強塩酸の入った容器を投げつけられた、カレンチャンのトレーナー。
    その為、彼らが活動を始めてからは、ウィニングライブは現在でもオンラインのみで、感謝祭も身分証明書と入園時に金属探知機やX線検査などで安全が、確認できた者しか入れないのが、現状なのである。
    そして、私の夫は今いって言った轢き逃げ犯のせいで左腕を肩から切断する事になってしまった。
    テレビの進行が、元警官の解説に移りコメンテーターが、熱心に解説を聞いている。

  • 19◆NTQ8W5vxqE21/09/21(火) 19:40:04

    『なんで、お前がエイシンフラッシュさんと結婚してんだよ!?』

    『エイシンフラッシュさんは、皆んなの物なんだぞ!?なのに何で、お前だけが独占して!!』

    『それになァ、エイシンフラッシュさんにお似合いなのは、ダイワスカーレットさんなんだよ!!お前の出る幕なんて無いのに、なに勝手に盗ってさァ!!!!』

    「………………ハハッ」

    8ヶ月前の事が頭の中で再演される。雪に舞った彼の鮮血。目は見開いたまま、口から血を流しコッチを見ている。
    まるで、私のせいだと責め立てる様に。その夫を足蹴にする犯人。
    私の夫は、私たちの幸せな結婚生活は、こんな碌でもない、大人なのか子供なのか分からないヤツに取り上げられたのだ。しかも、まだ犯人が潔く罪を認めれば良いものの、塀の中で未だに御託を並べている。
    何故、その時に彼を守らなかった?何故…?何もかもが嫌になり、俯いた視線を持ち上げると丁度予約の時間になる所だった。

  • 20二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 20:35:47

    まさかのフラダス派…

  • 21二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 20:40:38

    クソアイドル防衛軍どもが…国会議事堂にクソみてぇな旗立てやがって…

  • 22二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 20:41:54

    フジキセキの話と繋がってるだと…
    この世界ちょっと世紀末入ってない?

  • 23二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 20:44:29

    過激派カプ厨どころか危害加えるとかデジたんやばいくらいキレてそう

  • 24二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 21:00:10

    これ1枚岩の組織じゃないだろ

  • 25二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 21:08:57

    強塩酸投げられてるカレンチャントレーナー………
    子供大人の集団がここまでやってるとか、これ絶対裏に何か絡んでるやろ……

  • 26二次元好きの匿名さん21/09/21(火) 21:54:31

    これは心身ともにちゃんと充実させてから読まないとダメなやつだ
    呑まれてしまう

  • 27二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 06:10:33

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 09:42:23

    ああタイトルは四肢の一つが足りないという?

  • 29二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 13:39:35

    トレーナーに振られたウマ娘が色々と拗らせて参加してそう

  • 30二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 14:05:35

    >>25

    ウマ娘の存在で日陰になった興業か……?

  • 31二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 14:13:27

    彼らにとってアイドルとは

    ニンゲンではなく
    自分の放つ言葉だけを全て受け入れ
    自分の望む言葉だけを返してくれる
    自分の押し付けた理想の殻を張り付けた

    肉のカタマリなんだろう。

  • 32二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 14:30:13

    『アイドルはトイレ行かない信仰』の成れの果てか……。

  • 33◆NTQ8W5vxqE21/09/22(水) 17:21:33

    10:30

    「調子どうだ?」

    「ん?あぁ…ボチボチだよ。」

    同輩が僕の頬にコーラを当てる。

    「一事はどうなるかと思って心配したけど、大丈夫そうだな。」

    彼は僕の左肩に視線をやる。

    「最初はね…それこそ、妻や周囲の人たちのお陰で何とかなってる様なモンだよ。実際、今朝も朝食を自分で作ろうとしたら、フライパンすら用意出来なくてさ。」

    「まぁ、しょうが無いよ。寧ろ、たった8ヶ月前でここまで回復できた事が、すごいと思うけども。」

    「回復って言っても、腕は治らないけどね。」

    「うーん…そうだけどねぇ……」

    「上手く折り合い付けるしか、無いと思うけどね。こう言う話しは」

    「そうだよな。そうとしか言いようが無いよな。所で、今夜飲み会があるんだけど、どうだ?参加しないか?」

    「そうだねぇ……ちょっと妻に相談してみる」

  • 34◆NTQ8W5vxqE21/09/22(水) 17:21:45

    予定通り、診察が終わり家へと向う。外で買い物をしようかと思ったが、昨日のアレを思うと到底できる訳が無いと思い直す。
    診察中の医師の声が、フラッシュバックする。

    『おめでとうございます。ご懐妊です。』

    この状態で?

    『妊娠2ヶ月ですね。普通の人は、気がつき始める人が多いですが、ウマ娘の方だと元来 身体が丈夫な為、気が付いても病院に来ない方が多いですが貴女は、違うみたいですね。中々、真面目な方のようで』

    私が真面目?

    『これからは、毎日手帳にその日の体調を記録して、安静に過ごして下さい。毎月、病院に来て下さい。…来月からドイツに戻るんですか…そうですね……それなら、ドイツの病院でまた検診を受けて下さい。』

    ……………。

    「はぁ…………」

    信号が赤に変わり、ブレーキを踏み視線を下腹部に移す、この中に私と彼の子供が居て、今も成長を続けている。

    「嬉しい事の筈なのに…」

    でも、今の状況で妊娠を告白し無い方が良いだろう。夫にこれ以上、辛い思いさせる冪では無いのでは?
    しかし、後 8ヶ月も経てば、私の腹から彼との子供が産まれるのだ。どんなに誤魔化そうとも、言わないで居ようとも。

    「言わないと…ダメですよね。」

    当然である。これから、生活が変わると言うのに更に状況が変わるなんて…私たちは、大丈夫なのだろうか?
    突然、後ろからクラクションが鳴る。信号を見るといつの間にか青に変わっていた。

  • 35二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 18:30:56

    >>34

    ヤダなぁ……閃光のハサウェイ見たばっかだからドイツ行きの飛行機に紛れ込んできそうだよこの防衛軍……

  • 36二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 19:06:36

    不穏な空気しかねぇ!
    防衛軍が更に何かやらかしそうで怖い………

  • 37二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 22:02:06

    ヤバい感じしかしないけど好き

  • 38二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 23:20:46

    ハッピーエンドになるように頑張る、という言葉を信じよう

  • 39◆NTQ8W5vxqE21/09/22(水) 23:44:28

    14:30

    「失礼します、理事長代理。ご要件は何でしょうか?」

    「トレーナーさん。話しは、椅子に座ってから…コーヒーを淹れますので、少し待って下さい。」

    理事長室の横にある広い応接室に案内される。

    「いえ、お構いなく…。」

    僕は、わざわざ部下にそこまでする必要は?と思いながら、柔らかいソファーへ座り込む。

    「そうですか。それでは、本題に入りましょうか。トレーナーさん、怪我の経過はどうでしょうか?」

    代理も椅子に座ると間髪入れずに本題に入った。

    「コレですか。経過は恙無く…妻や皆さんのお陰ですよ。」

    中身の無いシャツの袖を右手でピラピラと揺らす。

    「それは、何よりです。しかし、この事態を招いたのは、私たちの認識不足が原因です。大変、申し訳ございませんでした。」

    代理は、立ち上がり深々と頭を下げた。

    「良いですよ代理、僕ァ別に代理や妻の所為とかそんな事を言うつもりなんて、微塵もありませんから…」

    「所で、僕からも聞きたい事が」

    「何でしょうか?」

  • 40◆NTQ8W5vxqE21/09/22(水) 23:45:47

    「最近、大変じゃ無いですか?ここや競バ場の警備……」

    「そうですね、警察の機動隊や警備部の方々に24時間体制で警備して貰ってますが、それ自体は問題ではありません。
    問題は、学園周囲での24時間体制の検問や入場時の厳重な警備体制により、ウマ娘とファの間に大きな溝が、生じている事です。それが何よりの問題です。」

    事実、現在のトレセン学園の正門前は、バリケードと装甲車、フル装備の機動隊員が、守りを固め正門前の通りは日常的に検問が行われ、その安全を確保している。
    また、以前までは競馬バ場までは、各々がそれぞれの交通手段で移動していたが、現在では警察の護衛と学園が用意した大型バスで移動する様になっている。

    「確かに……このままだと、正規のファンと我々との距離は、大きくなる一方ですね。どうです?思い切って、我々トレーナーがテレビに出てみると言うのは。
    そうすれば、トレーナーも幽霊の様に実態感の無い人間では無く、自分たちと同じような血の通った人間だと分かり、もしかしたらトレーナーのファンも増えるかも知れませんよ。」

    「…それは、面白そうですね。今度の会議で、提案してみます。…そうでした、そんな事を話すために貴方を呼んだのでは無かった……」

    「それでは、一体どの様な要件で?」

  • 41◆NTQ8W5vxqE21/09/22(水) 23:46:28

    「貴方にこれを差し上げます。栄転祝いと思って下さい。」

    と言うと代理は、内ポケットから封筒を取り出し僕に手渡した。パッと見の印象では、かなり質の高い封筒でありそうだが……

    「ヒンデンブルクのチケットです。このチケットでドイツに行くと良いでしょう。」

    「ヒンデンブルク……ですか!?何処からその様な物を………」

    帝国航空が運航している、豪華旅客機 " ヒンデンブルク " この便で運航される機材は、全てファーストクラスの大型旅客機のみ。
    1度でもその機体に乗れば、他のファーストクラスが霞むくらいのサービスを誇り、羽田空港を中心に世界中の空港にその路線を張り巡らせている。
    空港でも、発着ロビー所かチェックインすらも他の一般客とは異なった場所で行うため、大臣や役人、大企業の取締役や芸能人などが、お忍びで海外旅行に行く時に使われている。

  • 42◆NTQ8W5vxqE21/09/22(水) 23:46:52

    「正規ルートで予約した物ですよ。来月の上旬、羽田発フランクフルト行きの便です。ヒンデンブルクに乗るには、信頼ある者から紹介 若しくは社会的地位のある者しか乗ることは出来ないので、ハイジャックやテロに遭うとは考えにくいです。ですから、ヒンデンブルクなら安心して、乗ることが出来るでしょう。」

    「そうですね、ありがとうございます。何から何まですいません…ドイツでのトレーナーとしての仕事も斡旋して貰って…」

    「いえ、良いんです。私に出来ることと言えば、この程度ですから……」

    その時、僕の電話に着信が入った。

    「……すいません、妻からです。」

    「そう言えば、貴方の奥様は時間に厳しい方でしたね。私の要件はもう済みましたので、行ってあげて下さい。」

    「分かりました、失礼します。…ありがとうございます」

  • 43二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 00:13:10

    イヤ~~~~ーっ!?!?
    リアルカプコン製ヘリーーーっ?!

  • 44二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 00:41:20

    マフティの波動を感じる

  • 45二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 00:49:18

    どんなハッピーエンドになるか楽しみだよ、俺は

  • 46二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 05:49:33

    マフティみたいなのが入り込んでたらいよいよ裏側にいるのがデカイ奴なの確定しちゃうけど、流石にないよね……

  • 47二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 15:05:41

    保守

  • 48◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:09:42

    15:25

    「遅いですよ……なんでそんなに遅れたんですか?」

    妻が、コッチを見ずにアクセルを踏み込んでいる。声のトーンも低いので、かなりお怒りのご様子……

    「いやぁ……ごめん。同僚と仕事の話しで盛り上がってさ……」

    でも、後輩女性と話し込んでいたなんて本当の事を伝えたら、十中八九バラバラにされるので、ここは本当の事は言わない方が良いだろう。

    「嘘ですね。良くもバレバレな嘘をつきますね。正直に言わないと、これからお風呂で背中を流してあげませんからね。」

    直ぐにバレた。

    「えぇっとねぇ…………これ言った方が良いのかなぁ……でもなぁ……」

    「ハッキリして下さい。本当に流しませんよ。」

    「分かった…正直に言うよ。後輩の女性トレーナーから、育成のコツを聞かれて色々 答えていたら時間が経っちゃって…」

    「ふぅん、そうですか。」

    「ごめん、この通り……家の近くにあるショッピングモールで、最近 流行りのクレープを奢るから……ね?駄目?」

    「………分かりました、今回はお咎めなしにしておきます。でも、次は無いですからね。」

    「分かった。次は無いようにするよ」

  • 49◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:10:35

    自業自得である物の、若干 荒い運転の妻の横に乗りながら、20分ほどで目的地に到着すると思っていたら途中で高速が渋滞していた。

    「一体、どうしたんでしょうか?夕方の渋滞には、まだ早い時間だと思いますが……」

    現在時刻は16:05。確かに渋滞するには、まだ1、2時間ほど早い。携帯で調べてみると交通事故により渋滞とあるが。

    「それにしても、不安だなぁ…若しかしたら防衛軍のテロとかじゃ無い?これ」

    「テロですか?まさか…ドイツじゃ無いんですよ。日本でテロなんて、起きないと思いますが。」

    「確かに現在でこそ、テロが起きないけど昔は沢山あったみたいだよ。色々と」

    " 日本 テロ " で検索結果を妻に見せる。読んでいる妻の顔は終始 無表情であったが、眉だけは動いていた。

    「それに、今の渋滞だって橋の真ん中で大型トラックが違法駐車しているって話しだから、若しかしたら荷台に爆弾を詰め込んでいて、橋を落とすとかするのかも。」

    「まさか……でも、貴方の見せてくれた記事を読む限り、嘘とも言い切れない気がしますね」

    神妙な顔つきの妻の横顔を反対車線を爆走するパトカーの赤色灯が照らして行った。
    その妻の顔からは、表情が読み取れない。怒っているのか、悲しんでいるのか、何なのか。でも、何か諦念の様な物は感じられるような気がした。

  • 50二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 17:19:32

    ここまで不穏だと逆に何も起きなさそうな気がしてきた

  • 51◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:21:55

    18:30

    結果だけ言えば、トラックの荷台は空であった。が、何も載っていないトラックが道端に乗り捨てられている不審極まりないとしか言いようが無いものの、とりあえず命が助かっただけ儲けものであろう。
    それよりも、妻にあそこまで自信たっぷりに、テロだ何だと言っていたのが、恥ずかしくなってくる。
    何も会話のない、微妙な空気が流れる中、予定より倍以上の時間が掛かったが、ショッピングモールに到着した。
    ショッピングモールは、平日の夕方にも関わらずかなり混んでいて、件のクレープ屋も若者の行列が出来ていた。
    周囲の人は、殆どがアベックで仲睦まじい様子だが、僕ら夫婦も2人で立って待っていたが、殆ど会話が無かった。
    まぁ、かれこれ5年近い仲だから、会話なんて必要ないと言えるかも知れない。実際、お互い視線は合わせあっているのだから……。
    因みに、周囲の会話に耳を傾けると話している内容が、概ね僕のこと。ただ単に自意識過剰なだけかも知れないが、" 左手が無い〜 "とかの話しを普通のアベックが話す訳がない。それを証明するかの様に、終始 視線を感じた。ジッと見てくる人は誰もいないが、チラッチラッとこっちを見てくる人は、何人も居た。
    若しかしたら、妻はこの状況に苛立って何も話さなかったのかも知れない。実際、妻からしてみれば、夫が見世物にされているのは耐えられないだろう。
    しかし、結局は最後まで並んで2人で食べたのだが…。
    そして、帰る時に車に乗り込みアクセルを踏んだのと同時に、モール中から突然、人が溢れ出てくる。
    これは後から知ったのだが、今度はショッピングモールに爆弾が仕掛けたとの予告が入ったとの事である。

  • 52◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:23:59

    「フラッシュ…そんなにカリカリしなくても良いんだよ。僕は別に…」

    検問で長い渋滞の中、無言の車内で息が詰まりそうで、思わず僕は口を開いてしまった。

    「貴方が気にしなくても私は、気になるんです。」

    「それって、世間体とかそう言った意味合いで?」

    「…何を言っているんですか?誰が、そんな事を言いましたか?」

    「あっ…ごめん。それじゃあ一体どう言う意味なの?」

    「私は、世間体なんて別にどうでも良いんです。でも、」

    「でも?」

    「貴方は、もう腕が無くなった事を受け入れて、再び立ち上がって前に進んでいると言うのに、私だけは未だに自分の罪の意識に苦しめられている…」

    「そうだったんだ…いや、気づけなくてごめん。自分の妻なのに。でも、この前のコレだって君が悪い訳じゃないなのに…」

    「私が悪くない…?何でですか!?私が、あの日にデートに誘わなければ、貴方はこうなっていないんですよ!!特に用事も無いのに、前日に貴方が代理さんと仲良く話しているのに妬いて、仕返しとばかりに貴方を外に引っ張り出しさえしなければ!!」

    知らなかった。そんな言葉で片付けられるものでは無いけど、そうとしか言いようが無かった。

    「貴方が面食らうのも無理無いと思います。だって、自分の妻が腹の底ではそんな事を考えていたなんて、思いもよらないでしょうから…」

    「僕は……僕はそれでもいいと思う。人間 誰しも簡単に割り切れたら苦労しないから…。寧ろ、人間くさくていいよ」

  • 53◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:25:17

    「……本当ですか?」

    「あぁ、さっき嘘ついたヤツが言えたもんじゃないけどね」

    「そうですね…それなら、本当だと証明して欲しいですね。」

    「分かった。」

    「…!?」

    フラッシュの右手を取り、手の甲にキスをする。

    「これでどう?」

    「……まだ足りませんね。これだけじゃ、本当だと証明出来ません。」

    「それなら……」

    フラッシュのシートベルトを外し、上体を僕の方へ引き寄せる。そのまま手を後頭部に回し、唇を近づけた……が、

    「……すいません、お取り込み中 申し訳ないんですけど検問です……」

    外を見ると警官が苦笑いしながら立っていた。

  • 54◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:26:41

    19:45

    検問が、終わるや否や逃げる様にその場から立ち去り、家に帰り着く。やっとお互いの思いの丈をぶつけられたのにエレベーターの中は、また気まずい雰囲気になってしまった。

    「ごめん、前の車が何台か数えてなかった。」

    「私こそ、ごめんなさい。どの様な状況なのかをすっかり忘れてました。」

    「…………………」

    「…………………」

    「ハハッ」

    「どうしたんですか?貴方。」

    「いや、面白いなと思ってさ。警官が見る中、車の中でキスをする夫婦って」

    「ふふっ、確かにそうですね。文字に起こすと下らないとしか言いようがありませんね。これは……ふふっ。」

    エレベーターが12階で止まり、自分たちの家に帰り着く。

  • 55◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:27:34

    「あー、やっと帰って来れた……結局、いつも通りと何も変わらなかったなぁ……」

    部屋でカバンを置いて、着替えるのを手伝って貰う。

    「今から、夕飯を作るのでちょっと待って下さい。何かリクエストは有りますか?」

    「作りやすい物で良いよ。」

    自分のシャツのボタンを外してくれている上に、夕飯も作ってくれる妻に落第の回答をする。

    「分かりました、それじゃあ生姜焼きにします
    ね」

    しかし、その回答に対しても妻は、微笑んで返してくれる。

    「ありがとう、待ってるよ。」

    僕の着替えが終わった妻は、自分と僕の脱いだ服を持って行こうとする。

    「それくらいは、僕がやるよ。」

    「分かりました、お願いしますね。」

    洗面所に着替えを持って行き、籠に入れる。リビングに戻ってからテレビを付けて、ニュース番組にチャンネルを合わせる。

  • 56◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:29:07

    「そう言えば、私に相談があるって言ってましたけど、何だったんですか?」

    台所から、妻の声がする。恐らく、飲み会の事だろう。

    「いや、何でもない。所で、別の話しがあってさ……」

    「何でしょうか?」

    「代理から、ヒンデンブルクのチケットを貰ってさ、これでドイツに夫婦仲良く帰ると良いってさ」

    「ヒンデンブルク……あの富裕層専用機のチケットですか?」

    「そうそう、それなら安全だからそれで行くと良いってさ。」

    「そうですか…それなら安全ですね。代理さんには、お礼をしないといけませんね。
    実は、私からも貴方に話さないと行けない事が」

    「へぇ、どんな話し?」

    「私…妊娠してるみたいです。」

    " 本当!?やったぁ!!!! " とガッツポーズをしようとした時にテレビからこんなニュースが流れた。

    『速報です。先ほど日本時間 19時35分羽田空港発 パリ=シャルル・ド・ゴール空港 行きの東亜航空 485便がハイジャックされ、ダバオ国際空港に緊急着陸しました。まだ、犯人や犯人の目的などは不明です。あっ……ただ今、アイドル防衛軍からの犯行声明文が届きました…』

  • 57◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:29:17

    「連中…ハイジャックまでするのか……こりゃ、上手く逃げれるのかなぁ…」

    「大丈夫ですよ、私たち3人なら」

    「それを疑うつもりは、全く無いけど流石に不安になって来る。……若しかしたら、裏に何かデカい人達が居るんじゃない?若しかしたら」

    「デカい人達……ですか。」

    「ほら、世の中にはウマ娘が嫌いな人達が居るよね?" ウマ娘によって人間は滅ぼされる "とか言ってる人達。だから、その思想を持つ人達が金を出し合って、色々やってるのかも…」

    最後にニヤッと笑った彼の顔を私は忘れることが出来なかった。

  • 58◆NTQ8W5vxqE21/09/23(木) 17:33:20

    今回の話しはここまでですが、続きます。
    しかし、今回の話しは、ストーリー展開が分かりづらい上に展開も遅く、山も谷も特に無かったので、詰まらなかったかも知れません。大変、申し訳ありませんでした。
    次は、『異次元の追跡者』を書き直した後は、ネイチャとトレーナーがデートに行く話しにしようかと思っています。それでは、また

  • 59二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 17:34:27

    乙した!
    先行きが不審だねぇ・・・

  • 60二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 18:07:27

    お疲れ様です
    ハイジャックまでしでかすとか、本当にヤバいことになりそう……
    国家権力がんばって……

  • 61二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 18:11:51

    乙~
    ところでアイドル防衛軍は今までみたいにちょっとは関わってくるけど裏で鎮圧されていく感じ?
    正直個人的にはウマ娘SS読みに来てるからメインに出られると何かモニャる……

  • 62二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 18:25:56

    ケネス大佐助けて!

  • 63二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 18:27:23

    結末が気になるな、この大長編は

  • 64二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 18:34:15

    ダバオ……? ん?

  • 65二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 18:47:49

    ハサウェイみたいな事になりそうだな…

  • 66二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 20:58:18

    その内住所特定して家の中まで入ってきそうだな防衛軍

  • 67二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 21:00:31

    タイトルの3/4ってそういう・・・

  • 68二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 21:32:01

    おつでした!
    時間が書かれているのが妙に緊張感をあおってドキドキしながら読めました!
    こういうエピソード好きなのでよかった

  • 69二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 07:38:46

    この世界治安悪すぎて最終的に国同士で戦争しだしそうだな…

オススメ

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