- 1二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:00:32
無いみたいなので書きますね
「急な話だというのに泊めさせてもらって悪いね、ミカ」
「別にいいよー。同室の人なんていないし」
寝巻に着替える、とか言っておきながらいつもと変わらない服装のセイアちゃんが、私のベッドに寝転がりながら言ってきた。
私は、ガスコンロにかけているやかん越しにセイアちゃんを見つめながら、ふと口を開く。
「にしても違和感凄いね、私の部屋にセイアちゃんだけがいるなんて」
「縁というのはどう動くかわからぬものだね。迷惑をかけてしまっているミカには悪いが、杖がどこへ転がるか分からぬというものは中々に楽しいものだ」
「そんな言い回しされても、前より前向き思考になったってことしか伝わらないよ? それよりお付きの子に謝りなよ」
「あれは予想ができた未来だったからね、それに関しては後で本当に謝罪するとも」
私の指摘にしゅん、と耳を垂れさせてしまったセイアちゃん。
何故セイアちゃんが、屋根裏の部屋という辺鄙にも程がある私の部屋にいるのかというと……どうやら、セイアちゃんの部屋にゴキちゃんが出てきてしまって、それを見てしまったお付きの子が半狂乱になって銃を乱射させてしまい、それで部屋が駄目にしてしまったらしい。
……正直、この話を聞いた時は心底その子に同情したよ。私だって見かけたら同じような反応する気しかしないもん。
「というかちゃんと掃除しなよセイアちゃん。私なんて隙間風いっぱい入ってくるこの部屋に住んでて、虫一匹も通してないんだからさ」
「いや、掃除はきちんとしてもらっているとも。ただ、気分転換のパンドラの箱の奥に潜んでいたようだ……ありていに言えば、キャンプ用品を詰めていたバッグの中にいつの間にか潜り込んでいたようだ。サイズも小柄だったからね」
「やめて想像させないで!!」
うぅ、寝る前に嫌な事聞いちゃった……セイアちゃんめぇ、常日頃からキャンプやらツーリングやらで外に遊びに出てるから虫にある程度耐性持っちゃってるせいでハードル馬鹿になっちゃってるんじゃない?
というか、キャンプ用品? もしかしてあのバッグの中身って……!!
「安心したまえ、きちんと中身を確認してから詰めたとも。私は学ぶ愚者だからね」
「いや賢者であってほしいんだけど!?」 - 2二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:02:02
私のツッコミを本当に楽しそうに笑いながら聞くセイアちゃん。あーもう、最高に楽しんでるねこの子は……!!
でも、前の斜に構えて何もかもを諦めていたセイアちゃんより、今のみんなを巻き込みながらも一寸先も見えない未来を楽しんでいるセイアちゃんの方が好きかもしれない。なんていうのは、どの口が言うんだって言われそうかな。
最初からこのセイアちゃんだったら、きっと……
なんて、やめよう。たらればの話なんてしたって、なーんにも良くならないし。たらればで良くなるのはハイランダーのヒヤリハットくらいだもんね。
「そういえば、どうして私の部屋に来ようと思ったの? お付きの子……はともかく、ナギちゃんとか、ハナコちゃんとか頼れる友達他にもいるでしょ?」
普段紅茶を飲むのに使っているカップを二つ、ベッド近くのテーブルに用意し、お湯を淹れながら気になった事を尋ねた。
私とセイアちゃんの仲は、お世辞にも良いものとは言えない。いや今は仲良しだけどね? でも、私とセイアちゃんの間柄は……殺そうとした者と、殺されそうとした者。どれだけ仲が改善されようが、そこは永久に変わらない事実だ。
最後に頼るのが私、というのなら勘定にも入っているだろうが、セイアちゃんがうちに尋ねて来たのは八時くらい。そのくらいの時間ならナギちゃんは当然ながらハナコちゃんも起きている。
「……ティーパーティーのホストとなってからのナギサの部屋を、見たことがあるかい?」
「えっ? ……いや、無いけど」
「……パソコンは常につきっぱなし、書類も山のように積まれていてね……手伝おうにも『セイアさんはまだ病み上がりですし、それにこれはホストである私に任された仕事ですから』とすげなく断られる……そんな環境でゆっくりできると思うかい?」
あー、確かに……何かと抱え込みやすいナギちゃんだもんねぇ。ティーパーティーホストの重圧、セイアちゃんに負担を書けない為に頑張りすぎちゃう性格……友達が頑張っているのにそれを手伝わせてもくれない、という状況は……確かにゆっくりしづらいかも。むしろ仕事ある程度投げ渡してくれた方がリラックスできそう。 - 3二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:03:16
カップを袖越しに持って、ふーふーしているセイアちゃん。あまりに熱そうだから追加で入れた水を少し足してあげる。ついでに私のも……飲めなくはないけど、ちょっと熱かったかも。
「それじゃあハナコちゃんは?」
「ありがとう、ミカ。……ハナコは大切な友人だ。だが、彼女の望みを考えるとするなら……私はあまり、傍にいない方がいいのだと思う。あの子にとって今の環境は楽園で、私は望まぬ林檎のようなものだからね」
少し沈んだ顔でそう答えるセイアちゃん。うぅん、ちょっと昔のセイアちゃんに戻っちゃったような気がする。
どこか寂しそうで、どこか諦めたような顔。私が嫌いな、セイアちゃんの顔。
「セイアちゃん……本当に友達だと思うんなら、こういう時は頼った方がいいもんだよ」
「……だがミカ、私はティーパーティーで、ハナコはティーパーティーと関わりたくない、普通でありたい子で……」
「だーかーらー!!」
もう、ウジウジと!! ミレニアムEXPOの時の強情なセイアちゃんはどこにいったの!?
どうもこう、ハナコちゃんの事となると怯えるというか……!! 確かに学校辞めたがってたり、失望されようと変な事してたりしたけども!!
「普通の友達ならこういう時頼ってくれた方が嬉しいものなの!! あの子が憧れる普通の中には、絶対にセイアちゃんも入っているんだからね!!」
「……入って、いるのだろうか」
「入ってるよ絶対に。何なら今度遊びに誘ってみたら? あの子の事だから絶対に喜ぶよ? もちろんお付きは無しで」
「……ああ、そうだね。しばらくはプライベートで近付きそうもないし、この機会に誘ってみるとするよ」
「うぅん、あの子にすっごく悪い気がしてきた」
ごめんよセイアちゃんの荷物から出て来たゴキちゃん見ちゃったお付きの子……貴女の事だしにしちゃったよ。セイアちゃんの友情守るための犠牲になってね。 - 4二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:03:33
ミカセイだって!?
こんなの僕のデータにないぞ!? - 5二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:04:20
とまあセイアちゃんの今後の予定を無理やり決めたところで、もう時刻は1時を回ってしまった。いつもは美容の為に早く寝るようにしているんだけど、友達と一緒にいるとついつい話しこんじゃうなあ。普段が奉仕活動ばっかだから、その反動が来てるのかな?
空になったカップをテーブルに置いて、セイアちゃんに問いかける。まあ答えは分かり切ってるけど。
「どう、温まった? この部屋冷えるから、いつも寝る前はこうやってお湯を飲んでるんだ」
「なるほど、その為のお湯だったのか……確かに少々冷える部屋ではあったからね。ふむ……うん、生活の知恵というものか」
何の言葉を飲み込んだかはあえて触れないでおいてあげるね、セイアちゃん。
まあ何と言われようと、この時期はこうしないと流石に眠れないからねぇ。質の悪い8時間より質のいい6時間! これが一番の美容方法だもんね!!
「だが今はよくとも、寝ている間に体を冷やしてしまいそうだね。何せ体が……少々薄いものだから」
「ふっふっふっ、そこは抜かりないよ……今日は特別に温まれる手段があるから、それで寝よっか!」
「ほほう、まだあるのかい?」
期待半分、といった感じに私を見つめてくるセイアちゃん。
何をしようというのか、私の姿を目で追うセイアちゃん。だが遅い! シュタッ、とセイアちゃんの後ろに回り込み、ぬいぐるみみたいに抱きしめてそのままベッドイン!!
「お互い温め合えば、朝まで暖かく眠れるって寸法だよ!!」
「……なるほど。ふふっ、確かに効果的だ」
私の胸の中で、私の顔を見上げながらセイアちゃんが笑った。仕方なさそう、って呆れと面白さが半分ずつかな?
でも実際に効果はテキメン。いつもと違って布団の中がすっごいぬくぬくだもん。それにセイアちゃんの獣耳に顔を埋めながら眠れるってのも……。
眠れる……。
ねむ……
「クチュン」
「……ミカ、寒いのかい?」
「……セイアちゃん」
「なにかな?」
「……私が下の方になっていい?」
セイアちゃんの耳の毛が、鼻に……妙にこそばったくてくすぐったくて寝れない……!!
セイアちゃんは呆れたようにため息をつきながらも頷いてくれたので、私は遠慮なくセイアちゃんに抱きしめられるように眠った。
……その後寝すぎて二人で寝坊しそうになったのは、また別のお話。 - 6二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:04:22
セルフサービスいう時間すらなくて草
このスレ主強いぜ…… - 7二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:08:04
終わりです
ハナコとセイアちゃんが仲良く遊ぶ話は誰か頼んだ - 8二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 01:11:12
需要あるか分からないけど過去作です
【🎲ダイスSS】奉仕活動の一環としてアビドス砂漠の開発を命じられてしまった…|あにまん掲示板形式上はアビドス側がゲヘナにシェマタを譲渡したという形で何やら処理されたらしいが…億という金の代わりにどういう話があったのか、私にアビドス砂漠のオアシスを掘り当てさせるとかいう意味の分からん話となった…bbs.animanch.comゲヘナの風紀委員長?こんな夜更けにどうしてトリニティに…?【抜け修正版】 | Writening 深夜の時間帯に食べると太りやすい、という話がある。 寝る前に食べるとエネルギーが消費されていない状態で休眠状態に入るので、そのせいで太るのだとか。羽川ハスミ自身もどういう理屈かは知らないが、…writening.netこいつはハルナ|あにまん掲示板美食界隈では幻とされたトリニティの桐藤ナギサ手作りのロールケーキがオークションに出品されるとの噂でやってきたら、桐藤ナギサが手掛けたロールケーキの絵画が出品されていた女そんでお腹空かせてやってきたから…bbs.animanch.comすみませんここに来ればカヨコがハルカに甘える概念を見られると聞いたのですが|あにまん掲示板bbs.animanch.com曇らせ
先生の代わりに生徒の問題を解決しようとした結果|あにまん掲示板bbs.animanch.com - 9二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 07:26:41
- 10二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 07:46:04
かわいい(かわいい)
- 11二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 15:26:27
- 12二次元好きの匿名さん25/11/12(水) 22:48:39
- 13二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 06:17:38
ナギサはそうやってすーぐ抱え込むんだから……
と言うか後日談が欲しくなりますな - 14二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 14:40:13
すごく良かった
かわいいね - 15二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 19:27:57
ティーパーティー専用のテラス、セイアちゃんが、暇な時の私みたいにずっとスマホとにらめっこしてああでもない、こうでもないと唸っている。
普段のセイアちゃんはスマホなんて連絡するときに触るくらいだっていうのに珍しいものだから、ナギちゃんと私で目線が合う。
「……ミカさん、昨日は一緒にお泊りしたとのことですが……セイアさんに何かしたんですか?」
「えっ? いや、こう……抱きしめられながら寝たくらいしかしてないよ?」
「ミカさんが抱きしめられる側なんですか!?」
「私がセイアちゃん抱きしめるとその、耳がね……鼻にね……」
私の言葉に少し驚いた様子のナギちゃん。まあ、この体格差だもんね。普通私がセイアちゃんを抱きしめる側だと思うよね。まあ何故そうなったのかは……私とセイアちゃんの二人だけの秘密ということにしておいて……。
セイアちゃんが何故こうなったのか心当たりはある。あるけど……まさかここまで悩むとは思いもよらなんだ。
「セイアちゃーん、何悩んでるのー?」
「……言葉という相手への贈り物の選択肢が豊富にある、というのは選択に困るということだと実感しているところだよ。まさかこの私が、選択の多様性に苦しめられる」
「デートに誘う訳じゃないのに悩みすぎじゃない?」
頑張って考えて書いたであろう文章を消しながら、セイアちゃんが顔を見上げて私に言った。この様子だとずっとこの調子で考えて書いては消してを繰り返してるね。
友達とのモモトークなんてバッと書いてバッと送って、でいいと思うんだけど……ふと目に入った文章を見て納得。長い。ただ遊びに誘うってだけでこの文量……!?
「セイアさんが遊びに誘うのにそうまで悩むということは、?」
私もナギちゃんも、ティーパーティーという肩書がどう作用するかというのは自覚している。それだけに、政治事と関係のない誘いをしてもそういう意味だと勘ぐられる可能性はあるんだよねぇ……昨日の夜はああいったとはいえ。遊びに誘われたらハナコちゃんは確実に喜ぶとはいえ。
「ナギちゃんは友達を誘う時どう……あっ、ごめん」
「なんで謝るんですか? ミカ? 私にもお二人の友人の一人や二人くらいいますからね? ちょっと業務が忙しすぎて遊びに誘う余裕が無いだけですからね?」
ナギちゃん近い近い近い! 必死過ぎるよ!? そうまで必死に言われると怪しくなっちゃうよ!? - 16二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 19:29:20
とりあえずナギちゃんを座らせて、「ごめんね~」って言いながら頭撫でて、ナギちゃんの口の中にクッキーを口の中に放り込んで……よし静かになった。この手に限る。
そして私達がそういった軽い言い合いをしている間も、ずーっとスマホを見て遊びに誘う文章を考えていたセイアちゃん……もどかしいというか、なんというか……。
「セイアちゃん、動く時は真っ直ぐ行くアグレッシブフォックスだと思ってたんだけどなー」
「んくっ。……そういえば、セイアさんが担当した回のトリニティ学園新聞は人気が低かったですね。なんでも冗長すぎたとか……セイアさんが話す分は特にそういった意見が来ることは、ミカさん以外の方からは無かったのですが」
「いや私以外も内心思ってたと……あっ、そういうことか……!!」
このもどかしい状態を打破する方法、閃いちゃった。
セイアちゃんの背後に回り、画面がハナコちゃんとのモモトークであることを確認する。私が背後に回っても気付かないくらい集中しているみたい。相変わらず長ったらしい文章を書いては消して、書いては消してを繰り返している。
その後ろから……えいっと通話ボタンを押す。
「ミカ!?」
「何度もやり直せちゃうから駄目なんだよ、きっと。だからこれで直接誘えばOKOK」
文章の方なら読み飛ばし見なかったことにできるけど、口頭で話すとなったら全部聞かざるを得ないからね。
覚悟を決めずいつまでも悩むセイアちゃんが悪いんだよ。
「いっ、いやしかしだね、まだ心の準備が」
『はい、もしもし。珍しいですね、セイアちゃんからかけてくださるなんて♡』
「あわっ、えっと……はっ、ハナコ……その、だね」
慌てて電話を取るセイアちゃん。いつもの聡明で小難しい話し方をしている姿からは想像もできない慌てた様子に、思わず出そうになった笑いをこらえる。
ちょっとギャップがあって面白過ぎるよ……!!
セイアちゃんにグーサインを出して、いけるから大丈夫って念を送ってウィンクしておく。なにかなその恨めしい目は。背中推してあげたんだよ私は。何かなナギちゃんその呆れた目は!?
「……ハナコ。その、今度……一緒に、どこかへ遊びに行かないか?」 - 17後日談終わり25/11/13(木) 19:30:46
その言葉に、ハナコちゃんがどう答えたかは態々言う必要もないよね。
ただ、セイアちゃんが花が咲いたような笑顔を浮かべた、とだけ言っておくよ。
「……私も、たまにはどこかへ遊びに……」
「……今度三人で山に紅葉見に行こっか、ナギちゃん」 - 18二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 21:47:49
可愛いなぁ!このフォックス!!!
……というかセイア様、何回も書いては消してるってことは、描くのかなり速いのかな - 19二次元好きの匿名さん25/11/13(木) 21:53:26
ずいぶんとセイア様の解像度高えな……
- 20二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 06:14:56
乙でした!過去作とは違いますが良いSSでした!
- 21二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 14:11:20
かわいい
乙です - 22二次元好きの匿名さん25/11/14(金) 22:44:41
カスミの後日談とかも期待できたり……?流石に無理か
この人のスタイルって短く早くまとめ上げるから
読みやすくていいけど、人が集まりにくく盛り上がりに欠けるんだよな - 23二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 02:34:16
- 24二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 08:01:19
- 25二次元好きの匿名さん25/11/15(土) 16:44:59
いつもありがとう