【SS】最高速の休息

  • 1二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:46:38

    「トレーナー、この『温泉旅行』とやらも、最高速の追求に繋がるのでしょうか?」

    山奥の高級温泉旅館に到着するなり、カルストンライトオはクールな表情を崩さず、むしろ真面目な顔で尋ねてきた。彼女の隣で大きなボストンバッグを抱えるトレーナーは、汗を拭いながら苦笑いを浮かべる。

  • 2二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:48:20

    「は、はは……。もちろんだ、ライトオ! 最高のパフォーマンスには最高のリカバリーが必要! これは『最高速で疲れを取るトレーニング』の一環だ!」

    「なるほど! 承知しました。トレーナーの言葉、最高速で信じます!」

  • 3二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:49:54

    その言葉通り、旅館のチェックインを済ませるや否や、ライトオは気がついた時には浴衣に着替えており、温泉へと最高速で駆け出した。トレーナーが「待て待て、作戦会議だ!」と呼び止める間もなく、彼女の背中は露天風呂の方向へ消えていった。

  • 4二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:54:29

    トレーナーがゆっくりと大浴場に足を踏み入れると、すでに露天風呂では異様な光景が広がっていた。

    ライトオは、なぜか風呂のへりにタオルを敷き、助走をつけて湯船に飛び込もうとしていた。

    「ライトオ! 何をしているんだ!? 危ない!」

    「トレーナー! 温泉の効能を最高速で全身に行き渡らせるには、最高の衝撃が必要です! カワセミよりも、カッショクペリカンよりも速い入水で、極限まで疲労を吹き飛ばします!」

    「風呂はプールじゃない! 入水競技でもない! 普通の速度で、静かに入ってくれ!」

  • 5二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:56:31

    「……トレーナー。この露天風呂の直線、約15メートル。最速で泳いだ場合、何秒で到達できるでしょうか?」

    「泳がないで! 湯治だから! 湯治に速さは関係ないから! リラックスして!」

  • 6二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 02:59:04

    夕食後、トレーナーは旅館の迷路のような廊下で道に迷った。方向音痴の彼にとって、広大な老舗旅館はさながら『中・長距離レースの最終直線』のように果てしなく感じられた。

    「くそっ、部屋はどっちだ! 仲居さんに聞いた曲がり角は、確か『鹿の剥製が飾ってある場所』だったはずだが、この旅館なぜか鹿の剥製が3つもあるぞ!」

  • 7二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 03:01:02

    その時、角からライトオが姿を現した。

    「トレーナー。一体何を低速でモタモタしているのですか?」

    「ライトオ! 助かった! 部屋が分からなくなったんだ! どこだか分かる?」

    ライトオはトレーナーの顔をじっと見つめ、静かに答えた。

  • 8二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 03:09:55

    「安心してくださいトレーナー。私もバッチリ迷子です。ところで、私たちが到着してから約30秒で温泉に到達した私を、貴方は約90秒後に追いついてきました。その時の移動速度と、現在の廊下の構造を分析した結果……」

    ライトオは突然、その場で走り出した!

    「目的地を最高速で見つけます! 現在地から最短距離! 目標、トレーナー室(仮)!」

    「おい! 待ってくれ! 部屋はトレーナー室じゃないぞ!あと廊下は走らないで!」

  • 9二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 03:12:59

    ライトオは廊下を最高速で駆け抜け、行き止まりの襖を開けた。そこはなんと、宿の備品倉庫だった。

    「なんですかここは。…ふむ、目標の座標がズレたようです。再計算!」

  • 10二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 03:14:54

    ようやく部屋に戻り、布団が敷かれる。疲労困憊のトレーナーはすぐにでも横になりたかった。

    「ふう……やっと休める。ライトオ、明日に備えて早く寝るぞ。」

    「トレーナー。これは最高の直線です。」

    「え?」

  • 11二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 03:20:24

    ライトオは敷かれたばかりの真新しい布団の端に立つと、極限まで低く構えた。

    「ライトオ……何を?」

    「この布団の直線距離、約2メートル。私はここでダッシュを敢行し、その勢いを『最速で眠りにつくエネルギー』に変換します。」

    「待って! 誰が自分の布団で全速力ダッシュするんだ! 破れる! 旅館から布団の弁償代を最速で請求されるから!」

    トレーナーがライトオを羽交い締めにしようとした瞬間、時すでに遅し彼女はスタートを切った後だった。

    ブォンッ!

  • 12二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 03:42:18

    2メートルの布団の直線を、ライトオは目を閉じながら滑走! そして、そのまま勢いよく枕に頭を突っ込み、わずか0.5秒で、イビキ一つかかずに眠りに落ちた!

    トレーナーは、間一髪のスライディングでライトオを抱き留めながら衝撃を和らげたことにより、何とか布団を破かせないことだけには成功していた。

    「……この旅行、最高速で疲れたのは、俺だけじゃないか……。」

    しかし、ライトオの頭が自分のアゴにクリティカルヒットした衝撃で、薄れゆく意識の中で力なくそう呟くと、そのまま、静かに最速で夢の世界に落ちていった。

  • 13二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 07:45:33


    添い寝してるのに大して羨ましくなくて笑う

  • 14二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 08:07:34

    なんなら風呂も一緒だぞ

  • 15二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 08:50:57

    この頭直線がよ…

  • 16二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 14:34:37

    この二人にとってはこれがイチャイチャなんですね分かります

  • 17二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 15:24:56

    これがダイナミック就寝ですか

  • 18二次元好きの匿名さん25/11/16(日) 17:46:43

    なんじゃあこの…何じゃあ
    これが『最速』か…

オススメ

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