【ポケモンSS?】一攫千金のクラブ漁、青二才の挑戦【ドキュメンタリー風?】

  • 1二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:08:28

    皆さんは蟹・・・もといクラブ料理はお好きですか?

    ──ここイッシュ地方の遥か北の海域に位置するべオリング海・・・ここは今やクラブ漁のシーズンです。

    この凍てついた北の海で行われるセイガイハシティのクラブ漁は、世界で最も危険で厳しい仕事の一つに数えられます。

    この海域はおよそ260万平方キロにも及ぶ世界でも有数の荒海であり、そこがクラブ漁の危険な主漁場と成ります。

  • 2二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:09:33

    漁師と共に働くポケモン達を襲う悪天候、不眠不休の過酷労働、高波、凶器と化す鉄のカゴ、荒ぶる海のポケモン、予期せぬ事故等々・・・これらの労苦の全ては一獲千金を狙うため・・・!!

    漁師と冒険家という2つの側面を持つユニークな男達は、一攫千金を求めて北の海に集まりますが、全員が戻ってくるという保証はどこにもありません・・・。

    シーズン中は週に一人、この凍てつく海域で命を落とします。

    それは今年も変わらないでしょう・・・。 何かしらの形でクラブ漁の犠牲者が出るはずです。


    これはそんなクラブ漁に文字通り命を懸ける、イッシュ地方の漁師に密着したドキュメンタリー番組となります。

  • 3二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:10:35

    10月のセイガイハシティで、クラブ漁はいよいよ始まります。

    ここはイッシュ地方最後のフロンティアとも言える、セイガイハシティのダッチハーバー。

    港に集まった男達の中には、一獲千金を狙ってやってきた臨時船員希望者がいます。

    毎月10月になると臨時甲板員の職を求める人達が、この港を訪れます。

  • 4二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:11:55

    さて、誰にでも新人の時期はありますが・・・新米漁師の多くはこれから始まる苦難を知りません。

    彼、ブラフォードはサンヨウシティに住む19歳の大学生──長年の相棒のガマゲロゲと共に命懸けの冒険を求めてこの地にやってきた彼は、これから危険な仕事に挑みます。


    「僕が一番下っ端だから、とにかく一生懸命やるしかない。」

    「危険な仕事だというのは分かってる──でもベストを尽くせば・・・無事に帰ってこられると思う。」

  • 5二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:13:02

    そんな彼が乗り込む「マリン・トゲキッス号」は、家族4世代にわたりクラブ漁を行ってきました。

    船長シグルド「この漁は俺たち家族の生き方そのものさ。」

    「曾祖父の時代から、クラブ漁に携わってきたから・・・俺も自然に漁師になった。」

    シグは12歳の時から相棒のズルッグと共に父親の船に乗り、22歳でノースイッシュ号の船長になり、やがて自分の船を持つようになりました。

    今も彼は家族で漁を行っており、弟のエドマーとノーマンは甲板員を務めています。

    船長シグルド「子供の頃から相棒と共に自然と漁の仕事を覚えた。」

    エドマー「この船では・・・俺達のやり方でやる。」

    これから船に乗るブラフォードは、この船上では完全な部外者です。

  • 6二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:14:07

    ブラフォード「よろしくお願いします、シグルドさん(握手を求める)」

    船長シグルド「握手は仕事見てからだ、小僧。」


    (苦笑いするブラフォード)


    早速の洗礼・・・。
    仕事ぶりを認めてもらえなければ、新人は船長と握手すらできません。

  • 7二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:15:07

    「新米は緊張しているぐらいがちょうどいい。」

    「この仕事を舐めてもらっては困るからな?」

    「それに丁寧に仕事を教えてる暇は無いし、使い物になるかどうかも分からない。」


    「・・・・・・・・・だが、新入りが船に入るのは、いい刺激になる。」

    「坊やが、メッソンのように泣かなきゃいいがな?(ニヤリと笑う)」

  • 8二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:16:32

    彼らクラブを専門に獲る漁師たちは、長い伝統の継承者です。

    べオリング海では昔からイッシュ地方の先住民の人々が、ラプラスに乗って漁を行っていたと伝えられています。

    それから時は流れ・・・現在の近代漁法は、文明の発達とともに広がりを見せました。


    セイガイハシティに存在する小さな港町ダッチハーバーは、海産物の漁獲量・加工量・輸出量でイッシュ一を誇り、クラブはここから世界中に出荷されます。

    ──しかし、港を見下ろす丘には、命を落とした漁師とその相棒たちが今も眠っており・・・ここでの漁の危険さを静かに物語っています。

  • 9二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:18:13

    そんな漁師とそのポケモン達は常にべオリング海の荒天に揉まれます。

    (無線音)

    "強風警報 風速20ノット以上"

    "大しけの模様"


    予期せぬ大しけで強風・荒波・氷・・・そして凶暴化した野生の水ポケモン達が漁師と船に容赦なく襲い掛かります。

    このように過酷な漁の成否は正に運に左右されるため・・・こうした漁師の多くは「縁起」を担ぎます。

  • 10二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:19:29

    ノーマン「縁起担ぎならたくさんあるさ。」

    「左の靴から履く、右足から船に乗る、食料の缶の底は開けない・・・ゴーストポケモンは不吉、船は雌ポケモンを含めて女人禁制、ニャースなどの猫ポケモンは船に載せない・・・・・・上げたらキリがない。」


    エドマー「個人的には木曜の午後11時59分や土曜の午前0時1分なら構わないが・・・金曜の出航だけはだめだ。」

    「・・・別に理由なんてない。何となくそうしたいから、そうしてるだけだ。」


    船長シグルド「──俺の船の名前が何故、マリン・トゲキッス号なのかって?」

    「・・・漁には"てんのめぐみ"が必須だろう? まぁ漁師の気概的には…"はりきり"も嫌いじゃないがね?」

  • 11二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:21:07

    マリン・トゲキッス号の船長シグルドは、特に迷信深いようです。

    彼はダッチ・ハーバーを半日早く出航し、縁起担ぎのために隣接するオクタンの港に寄港します。

    そして翌日、漁に出るのです。


    船長シグルド「危険な海だからな。」

    「オクタンの港からの出漁は・・・過去20年間続けている縁起担ぎだ。」

    「迷信深いというより、いつもの慣れたやり方を続けているだけさ。」


    船は午前1時過ぎ、無事にオクタンの港に到着。

    これからの四日間、まともに眠れるのは今夜が最後です。

  • 12二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:21:42

    テレビ前でクラブのサンドイッチ食べながら見入っちゃうドキュメンタリーだ

  • 13二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:22:56

    翌朝、ダッチ・ハーバーでは岸に並んだ漁船団が、出漁を90分後に控えていました。

    漁師A「準備万端だ、クリスマスの様にワクワクする。」

    捕獲用の鉄のカゴはしっかりと固定され・・・燃料タンク、食料、医薬品は満タンです。

    各船長は入念に機械を点検します。


    出港までに1時間余り・・・海の男達はスマホロトムを用いて、愛する人たちに連絡を入れます。

    出港後は漁が終わるまで陸地から完全に切り離され、連絡を一切取れません。

  • 14二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:24:12

    漁師B「・・・実は・・・・・・12時間前に子供が生まれたんだ。」

    「・・・・・・元気な女の子さ。」


    (スマホロトムを手に)
    「エミリー、愛しているよ。」


    「・・・・・・俺の代わりに抱きしめてやってくれ。」

    "ええ・・・!!"

    「無事を祈ってくれ、じゃあな、愛してる・・・・・・!!」



    ──いよいよ、出港の時間です──

  • 15二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:25:41

    緊張と不安の中・・・
    1200人以上の漁師と手持ちを乗せた、251隻の船が港から出航しました。

    漁船団は伝統的な祈りを受けて、危険な海に出ます。

    ───
    「神父である私が皆さんに祈りを捧げます。」

    「創造神アルセウスの魂が深い海に広がり・・・全ての生命が誕生しました。」


    「やがて、"神の子"が宣教を始めた時・・・最初に選んだ弟子は漁師のシモンでした。」

    「アンデレ、ヤコブ、ヨハネも同じく漁師です。」


    「皆さんの中には同じ名前の方もいるでしょう。」

    「深い海にアルセウスの存在を感じる人も・・・。」

    「皆さんがアルセウスに守られ、無事に帰ってくることを祈っています。」
    ───

    これはイッシュ地方の伝統的な、海の男達の生還を願う祈りです。

  • 16二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:27:49

    船は12時間以内に漁場に到着し、明日の16時に漁を開始します。

    船の中にはいい漁場を探して、650キロ航海する船もあります。


    船長は時間を決して無駄にできません。

    そして、この時期に参加した新米達も不安な思いを抱えています。


    彼らにとって、これが最初で最後の漁になるかもしれないからです。

    ──何故なら世界で一番危険と言われる仕事なのですから・・・。

  • 17二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:29:22

    ──クラブ漁が始まるまであと数時間。

    この地に集まった251隻の船は、我先にと漁場へと急いでいます。

    1つのミスも許されず、如何に彼らが経験豊富言えども、確たる成功への道標などありません。


    腕と経験・・・そして幸運が揃わなければ・・・大漁で一攫千金を得るどころか、生還することも不可能です。


    イッシュ地方の連邦政府が定めた、今年の漁獲割当量は6350トン。

    今から25年前は4万5400トンでしたが、売値は1キロ当たり約1703円・・・上手く行けば約108億円を手にできる、またとないチャンスです。

  • 18二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:30:37

    ──ですが、昨年べオリング海で犠牲となった船は45隻。

    北極海の海で働くのは人間であれポケモンであれ過酷ですが・・・特にクラブ漁船の甲板は特に危険です。


    漁師C「甲板の上は何処でも危険だ。」

    漁師D「カゴをクレーン上げる時が特に危険なんだ。」

    エドマー「・・・クレーンに関するルールは"2つ"」

    「1つは下に行かないこと。」

    「2つ目も下に行かないこと、OK?」

  • 19二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:31:39

    漁師E「俺はロープで足を引っ張られるのが一番怖い──相棒のゴーリキーがいなければ、俺は今頃ブルンゲルの餌さ。」

    船長A「船で一番危険なのは火事だ。暖を獲ったり料理をするのに炎タイプのポケモンが欠かせないが・・・ウッカリやらかす船もいる。」


    漁師F「(専用の機械を指さしつつ)この機械は冷凍された魚や手足だろうと容赦なく巻き込む。」

    漁師G「カゴの山の上は危ない。足場とバランスが不安定な挙句、上から冷たい海に叩きつけられれば・・・数分で死ぬ。」

    漁師H「俺は手すり付近が一番危険だと思うね。場合によっては12メートルの津波に攫われかねないし・・・運が悪けりゃ、一緒に海から飛び込んできた野生ポケモンとぶつかって脳震盪を起こす。」


    ですが、そんな漁師たちが"口にすらしない危険"があります──沈没です。

    先程の様に縁起担ぎを気にする彼らは・・・その言葉を口にする事をタブーとしています。

    凍てつくべオリング海での沈没は、即ち「死」を意味するからです。

  • 20二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:33:25

    医師「冷たい海に落ちると人間は、心臓発作を起こすことがあります。」

    「体温が急激に低下すると生体防御反応で、手足への血流が止まり・・・泳ぐことすらできなくなります。」

    「そして体温が30度まで下がると全身は冷蔵庫の様になり、そしてまもなく生命兆候が無くなるのです。」

  • 21二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:34:25

    船長シグルド「船員が海に落ちたら、それは一刻を争う事態だ。」

    「急に仲間の姿が見えなくなったら・・・直ぐに探さなければならない。」

    「凍てつく冬の海はマイナス20を平気で超える。・・・更に運が悪けりゃそこでサメハダーやドラミドロといった、"クソッたれ共"と出くわす可能すらあるんだ。」

    「"クソッたれ共"の始末をしている間に・・・荒波に呑まれて見失うなんてこともザラさ。」

  • 22二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:35:27

    さて、間もなく漁の開始です。

    甲板員とその手持ちのポケモン達は、テキパキとカゴを降ろす準備をします。

    一方、新米達は餌の準備を進めており、各船長は戦略の選定中です。

    マリン・トゲキッス号のライバルの一人である大型船「ブルー・アイアント号」でも、腕利きの船長トニーが戦略を詰めています。

    彼は戦いに勝つために、賭けに出ました。


    船長トニー「この4年でクラブの群れは西に移動した。・・・目指すは西だ。」

    「今までより・・・遥か西のエリアにクラブがいるような気がする。」

  • 23二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:36:28

    船に伴走してくれてるジュゴンや水ポケの練度不足で助からなかった漁師もいるのかもしれない

  • 24二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:36:34

    一方、ブルー・アイアント号から80キロ東・・・船長シグルド率いるマリン・トゲキッス号は、他の船から離れた場所にいました。

    船員たちは餌の準備をし、漁の開始を待っています。


    船長シグルド「(時計を見つつ)・・・あと1時間半で・・・漁が始まる・・・!!」


    シグはまずカゴを2個、漁場の東に仕掛けるつもりです。

  • 25二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:37:46

    「まずは何個かで様子を見る。」


    「(カメラクルーを見つつ)・・・何も知らない陸の素人連中は、経験豊富な水タイプの相棒を用いて、なみのりやダイビングで漁場を探ればいいとほざくらしいな?」

    「・・・確かにバッジを7~8個ほど持ち、かつダイビングの技能を持つ手練れのトレーナーなら、本人と手持ちが直々に海に潜って探れるだろう。」

    「──が、この海はそんな甘いもんじゃない。 チャンピオンクラスのトレーナーが然るべき技能と資格を複数持ち、かつ連邦政府の許可が下りなきゃ、この海域でのダイビングは単なる自殺行為だ。」


    「それに沢山仕掛けても・・・肝心のクラブがいなけりゃ、移動も大変だしな。」


    「だから、ここぞという場所に仕掛けるのさ。」

    「読みが当たるといいんだが・・・(煙草に火を付ける)」

  • 26二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:39:15

    船長が戦略を立てている間、新米のブラフォードは餌の準備に勤めていました。

    彼は既に8時間も餌と汗にまみれています。


    「僕まで生臭くなったせいか・・・相棒のガマゲロゲが少し嫌がるんだよね(苦笑い)」

    「・・・凄く強烈な臭いだ(冷凍された餌を解体しつつ)。・・・想像以上に生臭くて、何回か吐きそうになったよ。」


    ──漁の開始まであと数分・・・

    一獲千金を狙う男達の戦いが始まります。

  • 27二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:40:31

    新米A「そこそこ稼いで無事に戻れればいい。」


    船1隻分のクラブは、最低でも1億5000万円以上に相当し、配置についた船員たちは、午後4時の開始の合図を待ちます。

    厄介な事にカゴを降ろすのが1秒早くても規則違反となり、かなりのペナルティと罰金が政府から科せられてしまうのです。


    船長B「俺は午後4時5分まで待つよ。他の船にチャンスをやる。」


    間もなく彼らは、最低でも96時間にまで及ぶ地獄を味わいます・・・。

    それは睡眠不足と疲労と闘い、当然、命の保証もありません。

    ──それでも彼らは「夢」を追います。

  • 28二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:42:04

    漁師B「皆、やる気満々だよ──不安はあるけどね?」

    "10" "9" "8" "7" "6" "5" "4"・・・

    "3"


    "2"


    "1"



    船長シグルド「ゲーム開始だ!!」


    ──10月15日 午後4時──

    正式に漁の開始が告げられました。


    "10月クラブ漁の解禁です"

  • 29二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:43:11

    ──ですが、シーズンがどれだけ続くかは分かりません。

    クラブ漁が終了するのは、漁獲割当量に達した時・・・しかも、船ごとの割当量は一切決まっていないのです。

    各船から急いでカゴが、冷たい海へと下ろされると同時に、船長のシグルドは船員に発破をかけます。


    "もたもたするな!! 漁はとっくに始まってんだ!!"

    "ナマケロの様にチンタラ働いてやがったら、すり身にしてサメハダーの餌にするぞ!?" 


    言うまでも無く船長の責任は重大です。

    そして、その船は大漁を期待されており、船長としての力量が試されます。

  • 30二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:44:41

    船長シグルド「・・・ジムバッジのように、明確な証があればいいんだがな・・・?」

    「まぁ、もっともこの海じゃあ・・・そんなもんはクソの役にも立たないがね?」


    シグの船は全180個の専用の鉄カゴを、一度に積んでいます。

    これは一長一短です。

    他の船よりも早く全てのカゴを下ろせますが・・・船員とその手持ちたちは、不眠不休で働かなければなりません。

    全てのカゴを降ろすまで24時間、食事や休憩など一切なく働き通しです。

  • 31二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:45:43

    当然、船の上では船長が支配者です。

    労働・食事・睡眠の時間は全て船長が決めます。

    漁の成功と船員、そして同行した手持ちのポケモン達の安全は、全て船長に掛かっているのです。

  • 32二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:47:05

    ──クラブ漁の開始から1時間──

    新米ブラフォードは、ベテラン船員に囲まれて苦戦しています。


    「・・・まるで熟練のベテラントレーナーと、ポケモンを捕まえたばかりの新米トレーナーの様な・・・深刻な腕の差を痛感してるよ。」

    「最初からペースが早過ぎて・・・全然ついて行けない・・・・・・!!」

    「・・・・・・テッカニンの"かそくバトン"を受けて翻弄されてるみたいだ・・・。」


    彼の役目は餌をカゴに入れて固定するのが仕事です。

    迅速にこなさなければ・・・餌と一緒に中に閉じ込められ、そのまま海へ落されます。

  • 33二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:48:15

    「・・・クラブ漁専用の鉄カゴに入るのが・・・結構難しいんだ。」

    「素早く中に入り・・・網に餌を固定したら、急いで出る。」

    「ただそれだけで肘、膝とあちこちに痣ができるんだ。」


    「・・・? この仕事を例えてくれって…?」

    「・・・・・・・・・。」

    「何といったらいいか、よく分からないけど・・・・・・ホエルオーに呑み込まれて、その胃の中で7日間過ごすとかそんな感じ?」


    ──既に9時間が経過しましたが、朝まで休憩はありません。

  • 34二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:50:35

    一方その頃、ライバル船長のトニーは進路の変更を検討していました。

    船長トニー「(機器を指しつつ)この電子海図で自分の船の位置が分かる。」

    「必要なデータは全て記録できる。」


    トニーは広範囲に点在する協力船と、漁況について無線で情報交換を行います。

    「6隻の仲間が、3000平方キロの海域に分散しているんだ。」

    "このまま北西に進み、様子を見る"

  • 35二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:51:46

    ──しかし、こうした無線連絡の声は、漁船団の他の船でも傍受できます。

    そのため、トニーは手持ちのバルビートを用いた暗号シグナルを用いて、極秘情報の交換を行っているのです。

    トニーを筆頭に船長はこうした独自の戦略を持ち、当然それを秘密にしています。

  • 36二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:55:13

    ──漁開始からおよそ10時間──

    それぞれの戦略が見えてきました。


    ラッキーラッキー号は岸に近い小さな区域で、カゴを30個ほど下ろしました。

    マリン・トゲキッス号は他の船から離れた場所で、夜通し12時間をかけてカゴを下ろします──結果はどうなるのでしょうか?

    ブルー・アイアント号は協力船と情報交換をしながら、北西3000キロ平方を航行中です。

    シースターミー号は119個のカゴを、べオリング海北西160キロに渡り仕掛けました。


    260万平方キロに及ぶ漁場で大漁を得るというのは・・・例えるならば高額宝くじの一等に当選するようなものです。

  • 37二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:57:05

    ──クラブ漁の開始から2時間が経過しました。

    現在、130キロ東を進むマリン・トゲキッス号にて、19歳の新米ブラフォードは必死に健闘しています。


    エドマー「アイツはよく頑張っているよ。 口答えもしない。」

    ノーマン「実に働き者だ。」

  • 38二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 14:58:40

    奮闘中のブラフォードにエドマーは、新たなチャレンジを与えました。

    「この一匹のヨワシを喰いちぎれ──縁起担ぎだ。」


    (少し戸惑いながらも、豪快に喰いちぎるブラフォード)


    「「「「「HAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!(拍手と歓声)」」」」」」」


    船員A「よくやった、小僧!!」

    船員B「今年は大漁間違いなしだ!!」


    少しづつですが、ブラフォードもこの船に馴染みつつあるようです。

  • 39二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:01:13

    船員は1日で4000~5000キロカロリーを消費します。

    暖かい船内での食事は、数少ない楽しみの時間です。


    ノーマン「漁船での食事は質より量だ。」


    切り方や加える調味料を一切気にしない豪快な料理に、ありあわせのスナックや菓子類。

  • 40二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:02:16

    船員C「見ろよ、かえんほうしゃが直撃したみたいなその黒焦げ。・・・ジャーマンポテトらしいぜ?」


    体力を保つカギは、とにかく沢山の量を食べる事──見た目は二の次です。

    大事なのはカロリーです。

  • 41二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:03:55

    船員D「俺も相棒も・・・毎日カビゴンのようにたくさん食っても、体重が減る。」

    船員E「(自身の腹を摘まみながら)まるでオーロットみたいな体系だろ?」


    不眠不休で酷使した体には、とにかくカロリーが必要です。


    船員F「まずはエネルギーの補給──睡眠なんぞ不要さ。」


    誰も彼も一心不乱に食べまくります。

    ──ですが、常に仕事が優先です。

    幸い海は"まだ"穏やかで、僅かな食事時間の後にカゴを仕掛ける作業が続きます。

  • 42二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:05:56

    しかし、陽が沈み始めると・・・寒くて危険な長い夜が彼等を待ち受けます。

    カゴ一杯に満たされたクラブの群れは、確かに大金をもたらしますが・・・

    疲労や怪我、不運・・・そして死が待ち受けているかもしれません・・・。

  • 43二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:11:40

    夜になってもマリン・トゲキッス号では、まだカゴを仕掛けています。

    一度に全部仕掛ける作戦です。

    8時間で160個を投下し、残りは20個です。

    こうして投下したカゴは、最低でも24時間放置します。

    ──
    「・・・時間はかかるさ。」

    「クラブがカゴに入るまではな?」

  • 44二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:14:49

    カゴの大きさは縦横4メートル、高さ85センチ

    入り口は”じょうご”のような形で、入ったクラブを逃しません。


    言うまでも無く夜──しかも悪天候の中でカゴを仕掛けるのは危険です。

    新米のブラフォードは新たな餌を準備中です。

  • 45二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:16:52

    前日の昼から1トン近くの餌を作り続けても、まだ終わりません。

    「・・・とにかくバテないように頑張るよ。」

    「そして祈ってる──死なないようにね?」

  • 46二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:19:48

    ブラフォード君はがんばってほしい

  • 47二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:22:50

    ──マリン・トゲキッス号がカゴに餌を詰める作業を行ってから、15時間が経過しました。

    ブラフォードが最後の餌をカゴに取り付け・・・夜の海へ落とされます。

    「・・・やっと終わって感激だよ。」

    船員とポケモンたちに安堵の顔と笑顔が久しぶりに浮かび上がります。

  • 48二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:27:05

    ──しかし、船長の次の行動に船員たちは驚愕します。

    カゴの保管場所へと向かったのです。


    船長シグルド「・・・50個。」

    「最初に投下した50個を回収して、それから別の漁場へ仕掛けに行く。・・・仮眠はそれからだ。」

    「回収した50個を放り込みに行く──とっておきの場所へだ。」

  • 49二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:29:44

    ──全く予期せぬ漁場変更の命令──

    しかし、ブラフォードを筆頭とした船員達は気にしません。

    エドマー「・・・カゴを船に積んだら・・・さっきと同様に餌を付けてくれ、50個だ。」

    (無言で頷くブラフォード)

  • 50二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:32:16

    ──船内にて

    ノーマン「・・・一体どういうつもりだ、クソ兄貴!?」

    エドマー「場所によるが、ここから更に2~3時間かかるだろう。・・・何を考えてやがる?」

    「普通の船なら暴動が起きるぞ?」


    船長シグルド「・・・・・・トドゼルガだ。」

    「「・・・・・・はぁ?」」

  • 51二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:36:16

    船長シグルド「・・・・・・ヤミカラスに空を見回らせてたら・・・こっから30キロ離れた海域にトドゼルガとトドグラーの大群がいた。」

    「アイツらの好物はクラブ・・・・・・つまりその海域周辺にクラブがいる可能性が高い。」

    「そこで何個かカゴを上げて、クラブが入っていたら・・・カゴ50個分得する算段だ。」


    ──シグルド兄弟が船内で喧嘩と議論をしている間、新米のブラフォードには餌づくりの仕事があります。

    休憩時間など存在しません。

  • 52二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:40:40

    1つのカゴに8キロ分、砕いた冷凍コイキングやぶつ切りにしたヒンバスやバスラオを混ぜたものです。


    「・・・あと40個作るんだ。」


    するとその様子を見かねた一部の先輩達が休憩時間を切り上げ、ブラフォードの手伝いを始めました。

    船員B「俺達のやり方をよく見ておきな、坊や?」

    そして、残りの船員達は保管場所に近付くと、空カゴの引き揚げ準備と作業に取り掛かります。

  • 53二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:43:07

    船員C「・・・おい見ろ」

    引き上げた空カゴの上に一匹の新鮮なクラブがいました。

    船員D「こいつァ、驚いた。餌無しでかかるとは幸先がいいぜ。」


    マリン・トゲキッス号の無謀ともいえるこの判断は…果たして吉と出るのか…それとも…?

  • 54二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 15:57:28

    ──現在は朝の8時40分──

    ブラフォードは黙々と作業をこなしながら自分の人生について考えていました。

    「・・・・・・家にいたら…今頃何をしていただろうか・・・多分バイトか授業中かな?」

    「でも現実は・・・この冷たい海の上でクラブ漁をやっている。」


    「正直、死にそうだけど・・・生を実感しているよ。」


    カゴの準備も終わりに近づき、さしもの彼らにも休憩が必要です。

  • 55二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:02:32

    このインタビューシーンっぽさと地の文のナレーションぽさがたまらない

  • 56二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:04:18

    ──ブルー・アイアント号船内

    船長トニー「姉妹船の途中成績だ。」

    「フィニス・アリゲイツ号は・・・初日の合計が334杯」

    「シードラ号が300杯」

    「ラッキーラッキー号は700杯」

    「ウチは1627杯だから・・・漁船団中3位だ。」

    「・・・あとカゴが85個残っているが・・・平均40杯捕れれば上位2船を抜かせる。」

    「この調子で明日頑張ろう。

  • 57二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:07:52

    もうすでに4桁はえぐい

  • 58二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:07:56

    船員A「願掛けでもするか?」

    「「「「HAHAHAHAHAHAHAHA!!!」」」

    船員B「──だが、これからが長い。」

    船員C「大差をつけちまおうぜ。」

    船員D「そして勝って笑う──圧勝するんだ。」

    ──ブルー・アイアント号とその協力船は順調。

    ですが、肝心のマリン・トゲキッス号は・・・偶然カゴにいたクラブ1匹のみ・・・。

    このまま不漁で終わり、大赤字となるのでしょうか…?

  • 59二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:12:46

    そして、追い打ちをかける様にマリン・トゲキッス号を不運が襲います。

    ──無線を通じて連邦政府より、漁期の短縮が急に宣言されたのです──

    この想定外の宣告に各船長──特にシグルドは大いに怒り狂い、不眠不休で労働していた船内は一気に険悪なムードが増します。

    しかし、どれ程吠えても無駄な事──残された時間はあと24時間。

    いよいよ大詰めです。

  • 60二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:17:35

    険悪なムードのまま、マリン・トゲキッス号は目標の海域へと到達。

    しかしそこは・・・不気味なまでに静まり返っていました。

    船長が先程まで見かけたという、トドグラーとトドゼルガの群れなど何処にもおりません。


    船員達は一瞬、本能的に嫌な予感を感じ取りましたが・・・彼らは急いで投下したカゴを引き上げます。

  • 61二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:22:22

    船員D「見ろ!!大漁だ!!」

    船員F「すげぇ・・・例年の3倍だぞ!!」

    幸いにも水揚げされたカゴはクラブの群れで大漁であり、船員達は大いに歓喜します。

    クラブ漁は基本生け捕りでなければならぬため、船員は手持ちに命じて「でんじは」、「ねむりごな」を用いて無力化し、急いで補完します。


    ──しかし、船長のシグルドは全く喜びの表情を一切見せません。

    それどころか顔つきが険しくなり、警戒感が増しています。

  • 62二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:25:20

    船長シグルド「・・・・・・・・・。」

    (・・・・・・俺のヤミカラスが見かけたトドグラーやトドゼルガの群れと一匹も出くわさなかった)

    (見間違えた──いや、それは絶対に無い。生意気なコイツがそんなミスをするのは、あ り 得 な い)

    (まさか・・・・・・この海域は・・・・・・)

    シグの予感は的中しました──突然、大きな船を揺れが襲い始めたのです。

    そして・・・・・・

  • 63二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:30:06

    ──この海域の奥に潜んでいた、ヌシのキングラーが姿を現したのです。


    船長シグルド「・・・納得がいったよ。あれは全部お前さんの餌になったわけだ・・・・・・!!」


    ヌシキングラーの姿を目撃した瞬間、シグは素早くモンスターボールを投げ・・・長年の相棒の一体であるエレキブルは、すかさずヌシキングラーに「サンダーダイブ」を叩きこみます。

    そして、それを合図に他の船員とポケモン達も主キングラーに挑み、別の死闘が幕を開けます。

    ──捕るためではなく、生存のための戦いです──

  • 64二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:39:11

    このレスは削除されています

  • 65二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:40:11

    船長シグルド「船員に告げる!! コイツは今までの艱難辛苦を消し飛ばしてお釣りが来るほどの超大物だ!!」

    「ルアーボールで捕獲すれば、特例で売り捌けるぞ!!!」


    今までの疲労困憊も何処へやら。

    本来、海上で出くわすヌシポケモンは、海上死亡事故の原因の上位10位に入るほどの危険要因であり、並の船乗りは死を覚悟します。

    ──ですが、極限の精神状態と肉体労働追い込まれた、クラブ漁を生業とする海の男達にとっては「逆」です。

    動く金塊が態々出て来てくれたようなものなのでしょう。

  • 66二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:46:52

    ストリンダ―の様に常軌を逸したテンションと勢いで、シグルドら船員達は主キングラーと死闘を繰り広げます。

    そして・・・新米ブラフォードの今までの働きを認めたシグは、ヌシキングラーに「電磁波」を浴びせ終えると大声でこう叫びます。


    「ブラフォード!! お前が〆だ!! 最後にコイツで捕獲しろ!!」


    ブラフォードにルアーボールを投げ渡すと、彼は一瞬戸惑います。


    ノーマン「やれ、坊や!! お前さんにはその資格がある!!」

    エドマー「こいつはとっくに麻痺させた!! 格好よくキメちまいな!!」


    周りの船員達の励ましに押され、ブラフォードはルアーボールを決死の覚悟で投げます。

    そして・・・

  • 67二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:49:57

    そして!!

  • 68二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:50:38

    (船内に湧き上がる大歓声と拍手と口笛の嵐)

    ──新米ブラフォードは無事に捕獲に成功しました。

    船長シグルド「よくやったな坊や・・・いや、ブラフォード?」

    ノーマン「6万6000キロ相当・・・。 一気に大逆転だ。」


    こうして無事にクラブ漁は終わりを告げました──ですが、まだ新米は解放されません。

    最後の儀式があります。

  • 69二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:53:16

    ブラフォード!!
    いや、がんばった新人へのエール的な側面あるかもだけど

  • 70二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 16:55:52

    ──皆でブラフォードの取り分け分を決めるという最後の「儀式」です。

    通常、新米の報酬は1日約4万円ほどです。


    船長シグルド「・・・どうする皆!?」

    船員D「よーーーく働いたから、ボーナスは弾むべきだな?」

    エドマー「何なら・・・俺の稼ぎを分けてやってもいい。」

    船長シグルド「・・・・・・奇遇だな、エド?」

    「──丁度、おれもそう思っていた所だよ?」

    (皆、豪快に笑う)


    無事、揉め事も無く満場一致です。
    ブラフォードは320万の1%を、無事受け取る事になりました。

  • 71二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:00:38

    ブラフォード「こ・・・こんなにもらえませんよ!!」


    船員A「いいから黙って受け取りな、ブ ラ 坊?」


    船員B「逃げずによく働いたな?」


    しかし、彼にとっての最大の報酬は金よりも──


    船長シグルド(手を差し出す)


    ──

    >>6

    ──


    船長シグルド「改めて・・・握手をしよう。 ようこそ、ブラフォード。」


    「お前さんのお陰で・・・この船は”てんのめぐみ”があったようだな?」



    ──船長シグルドの握手かも知れませんね。

  • 72二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:03:47

    ──午前0時──

    こうして80時間にも及ぶ、過去最短レベルのクラブ漁が幕を閉じました。

    甲板員は漁具を片付け、それ以外の者は泥の様に眠りにつきます。


    気が付けばもう明け方であり・・・港に向かう漁船団を朝日が照らしています。

  • 73二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:08:51

    ですが、生け捕りにしたクラブの処理は先着順に行われます。

    どの船も港で順番を待ちたくはありません。

    ここでも最後の競争が始まるのです。

    ──

    船長トニー「この80時間の間、78時間は起きていた。」

    船長A「クラブ漁の仕事は面白いだけじゃない。 しんどくて、辞めたくなることもたくさんある。」

    船長B「・・・・・・ポケモンリーグのチャンピオン戦に挑んた気分だよ。」

    船長シグルド「・・・こうして大漁に恵まれた時の興奮は・・・一生忘れられない。」

    「例えるなら・・・殿堂入りを果たした気分かな?」

  • 74二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:35:06

    遥か北の漁場から25時間かけて最初に帰港したのは、マリン・トゲキッス号です。

    ──

    ノーマン「これからクラブを陸揚げする。 (指さしつつ)…あれが加工船だ。」

    魚倉の中で瀕死となってしまったクラブは、売ることができません。

    エドマー「ヌシ以外のクラブを大きな網カゴに入れて運ぶ。 容量は1000キロ以上だ。」

    「カゴを魚倉に下ろし、4人とその手持ちで作業をする。」

    ノーマン「そして、重量を量るんだ。」

  • 75二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:43:14

    船長シグルド「あのカゴに入っているクラブは、1200キロほどだ。」

    カメラマン「いくらになる?」

    船長シグルド「160万円以上だ。車が買えるな?」

    ブラフォード「僕なら・・・バイクを買います。」

    船長シグルド「ハハハ、若いっていいな。」


    談笑している間にエドマーたちは、正確な数字を求めます。

    命をかけて捕ったクラブは、1杯たりとも見逃せません。

    エドマー「裏返っているクラブは瀕死だ。売り物にならない。」

    ──計測した結果、合計3万5000キロ、政府の定めた特例として、例のヌシキングラーを含めれば10万1000キロ・・・。

    甲板員一人当たりの報酬は、約350万です。

  • 76二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:49:50

    絵にかいたような豊漁の一方、残酷な事に不漁の船も存在します。

    ──ウェスタン・ニャイキング号です。

    荒波と同時にぶつかった水ポケモンとの接触事故によるポンプの予期せぬ故障、魚倉の不備、船員の負傷、そして割に合わぬ成果・・・。

    完全にツキに見放されたこの船は、現在最低速度で進んでおり、後方にいたシースターミー号に抜かれてゆきます。

    船員の士気は正に最悪・・・。

    終漁時刻から64時間後に、最後の船として無事に帰港できました。

  • 77二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 17:54:41

    船員A「恐らく、一人当たりの取り分は・・・92万から100万円くらいだろう。」

    成果は通常の半分以下のうえに、事態は更に悪化します。

    船員B「・・・不味い状況だ。」

    船員C「12年ほど漁師をやっているが・・・こんなにクラブが瀕死なのは初めてだ。」


    魚倉から瀕死状態のクラブが次々と見つかり、責任のなすりつけ合いが始まりました。

  • 78二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:03:37

    船員C「・・・あの時に仕切り板を外したせいだと思う。」

    この船はクラブを激しい揺れから保護する仕切り板を、魚庫の不備により外して対応しました。

    船員C「それが無かったから・・・クラブ同士で激しくぶつかり合ったんだろう。」

    ──当然、異論もあります。

    船員B「ついでに捕獲したあのバスラオを見ろ──こっちに投げてくれ!!」

    「(死亡したバスラオを指さしながら)腐ってやがる!!」

    「この腐ったバスラオの周りで、折角捕ったクラブがこうなった!!」

    「こいつを放り込みやがったのは、ウィリーだ!!」

    「ウィリーの奴が手持ちのキリキザンで止めを刺して、魚倉に放り込んだ!! ・・・その結果がこれだ!!」

    船員C「・・・・・・次はもっと儲かるいい船に乗るよ。」

  • 79二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:07:35

    ウェスタン・ニャイキング号船長「・・・600杯のクラブが瀕死だった。」

    「400万円相当のクラブを・・・・・・失った事になる。」

    「ここまでツキに見放されていたら・・・・・・笑うしかないだろう?」


    ──正に天国と地獄──

    ですが、これが漁の厳しい現実です。

  • 80二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:12:21

    こうしてクラブ漁は無事に終わりを告げ・・・・・・19歳のブラフォードは言いようの無い達成感に包まれていました。

    若者はおろか並みの漁師でさえ躊躇する過酷な仕事を、彼は無事にやり遂げたのです。

    彼は一度船を離れ、故郷のサンヨウシティに戻ることを決めました。

    その見送りには、マリン・トゲキッス号の船員たち全員が駆けつけてくれました。

  • 81二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:15:06

    ブラフォードはどうするんだこれから…

  • 82二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:17:33

    エドマー「じゃあな、お前さんはよくやったよ、自信を持て。」

    ノーマン「俺が若い女だったら・・・抱かれてもいいくらいには仕事をしたぜ?」

    船長シグルド「・・・・・・有難う、ブラフォード(握手) もし、縁があったら・・・またこの海で会おう・・・!!」

    ブラフォード「・・・・・・・・・はい!!」

    船員C「おーーーい、ブラ坊!! 忘れもんだ!!(空になったルアーボールを投げ渡す)」

    船員D「・・・ったく最後まで手間取らせやがる。」

    (豪快に笑う)

  • 83二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:23:30

    このレスは削除されています

  • 84二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:25:16

    船長シグルド「お前さんはまだ若い・・・・・・クラブ漁を命懸けでやれたんだ・・・。もう一度・・・夢に向かって歩いてみな。」

    「俺達はこの海から、応援してやるよ──死ぬまでな?」


    (無言で深々と一礼するブラフォード)


    世界一危険な仕事を成し遂げ・・・彼は報酬と信頼・・・そしてかけがえのない仲間を手に入れました。

    クラブ漁師としてのブラフォードの旅はここで終わりましたが・・・ですが、彼の夢であるジムリーダーを目指す新たな「旅」は、今ここに新たな始まりを告げたのです。


    ──終──

  • 85二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 18:27:11

    うおおおお
    お疲れ様でした!!
    ブラフォードやめちゃうんかよ!!でもこの思い出を糧にして
    夢に向かって歩き始めると!
    水タイプかそれとも…

  • 86二次元好きの匿名さん25/11/17(月) 22:26:56

    ポケモン界の船乗りってかなり過酷で覚悟を決める仕事だろうなぁ

  • 87二次元好きの匿名さん25/11/18(火) 07:10:12

    現実の蟹漁もこんな感じなんだろうなぁ

スレッドは11/18 17:10頃に落ちます

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