ここだけ元射撃競技の選手だった先生

1二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 23:03:47

キヴォトスに教員として来る前は、射撃競技選手だった先生
人を撃つのは無理でも的を撃つことはできる先生
そんな概念です。

2二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 23:07:28

「そういえば先生、聞きたいことがあるのですが」

今日の当番だったユウカが、休憩中に控えめに声をかけてきた。

"もちろん。ユウカの質問ならなんでも答えるよ"

「あそこの鍵付きのロッカーって何が入っているんですか？　前から気になっていて……」

ユウカが指差したのは、事務室の端にある“キヴォトス外製”の無骨なロッカーだった。

"ちょうどいいし、見せちゃおうかな"

先生はポケットから古びた鍵を取り出し、ロッカーの前へ歩いていく。
カチャリ、と音を立てて鍵を回し、扉を開くと——中には独特な形の銃が収まっていた。

「せ、先生、それ……？」

"競技用の銃だよ。キヴォトスの外にいた頃、的撃ち競技に出ててね。当時使ってた道具なんだ"

「だから厳重に……？キヴォトスでは銃は普通ですが……」

"向こうではちゃんと管理しないと捕まるからね。今は使う予定もないし、念のためこのロッカーに入れてたんだ"

先生は懐かしそうに銃を手に取り、ゆっくり眺める。

"……懐かしいなぁ"

3二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 23:09:02

いつもより少し落ち着いた先生の表情に、ユウカは思わず胸がどきりと鳴った。

"ユウカ？どうかした？"

「い、いえっ！　なんでもないです！！」

あわてるユウカ。
先生は首をかしげながら銃を戻し、ロッカーの扉を閉める。

「そういえば先生、競技って……大会とかにも出てたんですか？」

"うん。出てたよ。
でもね——あまりいい成績じゃなかったんだ"

「えっ？　先生が、ですか？」

"普段の練習では普通に当たるんだけど……大会になると、毎回異様に運が悪くなるんだよ。
風が急に逆向きに変わったり、銃のパーツがずれたり、的が倒れたり、照明が落ちたり……"

「お、お祓いレベルじゃないですか!?」

"仲間には“大会の日だけ呪われる男”って呼ばれててね。
本番の日だけは何が起こるか分からなくて、競技前に神社に寄るのが恒例だったよ……"

先生はそう言いながら、苦笑して鍵を回し——ロッカーを閉めた。

4二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 23:10:08

ガチャッ。

"あれ……？　鍵が回らないぞ？"

「えっ!? どうしてですか!?」

先生が鍵を引くが、ガチッと固まり動かない。

"ちょ、ちょっと待って……このパターン……まさかまた“不運”の発動……？"

「ここ大会会場じゃないですよ!?」

"いや、でも'人に見せようとした時'にもよく起きたんだよね……"

「先生、それほぼ“本番扱い”じゃないですか！」

先生が必死に鍵を揺らす。

その直後——

バキッ！

"あ……"

鍵が折れた。

「…………」

「………………」

5二次元好きの匿名さん25/11/19(水) 23:11:14

"ゆ、ユウカ。これ、ロッカーの金属が古かっただけだよ。
決して僕の不運とか、呪いとかじゃなくて……"

「先生。
さっき“人に見せる時に起きやすい”って言いましたよね？」

"……うん……"

「じゃあ今、まさに“本番”だったんじゃないですか？」

'いやぁぁぁ……真実を突きつけないでぇ……！"

ガラララァァ……（資料雪崩）

さっき立てかけていた資料が、タイミングよく盛大に崩れ落ちた。

「……ほら。もう大会始まってるじゃないですか」

"ユ、ユウカ……その言い方はキツいよ……"

このあとロッカー修理と資料片付け、そしてリンちゃんへの報告——
全部“先生一人”の仕事になった。