【閲覧注意】──夢を見た

  • 1125/11/22(土) 11:17:38

    「ふふ…やっと目が覚めたかい」
    じわり、と熱を持たせるような暑さを感じる。鼻をくすぐる、植物と土のにおい、わずかながら潮の匂いも感じる。うつら、うつらとした目をようやく開けば、そこにはダンテが分厚い本を手に、ページをめくっていた。手にしていた本のタイトルは…。
    「君が船をこいでしまったから、手持ち無沙汰になったんだ…お腹は空かないかい?」
    そう、言われればお腹が食う、とわずかに鳴いたように聞こえる。ダンテは柔らかく微笑み、テーブルを色鮮やかに飾る料理の中から、ひとつの果物を手に取る。

    艶やかな赤色のでっぷりとした果物。リンゴとは違うが…。
    「あぁ、知らないのかい?…待ってね」
    ぼんやりとした思考の中、ダンテは手際よくその果物を切っていく。バックリ問われた中身は白い綿の中に、黒い粒がびっしりと詰め込まれている。
    ダンテは一つ、その粒を摘まみ…こちらへと、向ける。

    「はい、あーん」

    そう言われ、ゆっくりと口を開き…ダンテの指が、口の中へと送り込まれた。

  • 2二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 11:20:00

    その果物ってもしかして柘榴じゃないんですか?(アイデア成功)

  • 3二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 11:24:32

    ダンテの指食わされたかと思ったけど柘榴なら強ち間違いでも無かったわ

  • 4二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 11:25:54

    黄泉竈食?

  • 5125/11/22(土) 11:31:55

    ガリ、ガリ、と口の中で種が砕けていく。苦いが、慣れればスナック感覚で行けるな。
    「本当はジュースとか、呑みやすく食べやすいほうがいいけど。そのままの方が栄養価は高いんだ」
    もう一粒、もう一粒…とダンテの指から粒が、口の中へと放り込まれる。
    そろそろ、水分…いや、別の食べ物が欲しい。視線を別の料理へと向ければ、ダンテはこちらの視線に気づき料理を手にし、見せてくれる。
    「これかい?」
    こくり、と頷けばダンテは嬉しそうに笑ってくれる。
    「まってね…よしょっと。はい、あーん」
    銀色のフォークでまかれた真っ赤なパスタ、トマトのすっぱいにおいと香草の匂いが、食欲をそそる。ぱた、ぱた、とパスタに絡んだスープがおちていく。
    口を開かせ、ばく、とフォークごと口に含めばトマトの風味が一気に広がった。
    「おいしい?好かった」
    もっと、食べたい。と口を開けば、ダンテはくすくす、と笑って再び口に、パスタを入れてくれた。

  • 6125/11/22(土) 11:40:20

    「おいしい?」
    再び聞かれる。ダンテはうっそり、と目を細めて笑みを浮かべていた。

    ──おいしいよ

    「あぁっ。よかった、悦んでくれて!」
    随分と嬉しそうにしてくれる。淡い金色の目が、輝いている。ふわり、と緩やかな黒髪のくせっ毛が、揺れる。これらは、ダンテが用意してくれたのだろうか。
    穏やかな夏のような気候も、まるで楽園のような海沿いのところも、テーブルに納まる色艶やかな料理もまるで…夢のようだ。

    「夢にするものか」

    低い声だ。
    視線がダンテを捉える。細くなった目の中、金色がじっと捉えてきている。

    「ここは、君のための場所。そして、私の為の場所」
    じわり、と奥底でナニカがうごめく。

    「汝、この門を潜る者、一切の希望を捨てよ。そう言っただろう?」
    言った。
    自分はその言葉を覚えている。

  • 7125/11/22(土) 11:50:35

    「私の【ベアトリーチェ】。我が【ベアトリーチェ】」
    相変わらず、その名を口にしかしないのか。

    「あぁ…、ひどいな。君は私の【ベアトリーチェ】だろうに」
    ベアトリーチェになったことはない。ただ、確かにダンテにとっては自分は【ベアトリーチェ】に価するのだろう。
    ダンテはゆっくりと、立ち上がりこちらに近づく。
    端正な顔立ちだ。濡羽色の黒髪、その毛先は燃えるような赤…まるで炎を宿らせているよう。
    物書きだと言うのに、ずいぶんと厚ぼったく細い指の感触が頬に伝わる。親指の腹が、口元をぬぐう。その親指にダンテは口を付け、舌先で舐めとった。
    「トマトが効いてていておいしいね」
    くつり、と再び笑った。
    「お腹が空かないかい?」
    ダンテは再び聞き返す。
    いや、もう食べたよ。と返せば、そうか…と短い返事が返ってくる。

    「じゃあ、そろそろ船を出そうか…」
    船を出す?

    「もう、起きる時間だよ」
    先ほどの低い声から一変、穏やかな声音。
    上から一気に引きずり込まれるように、ずるずると…意識が浮上していく。一瞬だけ、写ったダンテの姿は…いつもの、いつもの。

    ダンテがそこに居た。

  • 8125/11/22(土) 11:56:50

    『カルデア出版より新作、【夢火を息で吹き消したのなら】が発売』

    数ある人気サーヴァントの中から、選ばれたダンテ・アリギエーリを題材とした短編。夢か現か、それとも…
    既刊からルーラークラスのジェームズ・モリアーティのほうも増版発表

    お求めはお近くの書店にて

  • 9125/11/22(土) 12:00:22

    はい

    カルデアレーベルなるものがあるなら、出版もあってもいいんではと思いまして。レーベルの方はこういった書籍扱っているのかな、まぁええか
    モデルはヨモツヘグイです。分かりやすいですね

    ここからはお好きなように、荒らしやいじり、それに過度なヘイトなどはご遠慮ください。閲覧注意なネタも、ワンクッションを入れてから投下してください

    よき日々を

  • 10125/11/22(土) 12:03:11
  • 11125/11/22(土) 12:32:29

    「冬になってますね」
    残念そうな声が隣から聞こえる。目の前の光景はすでに紅葉が終わり、寂しげになった細枝たちが張り巡らされ、太い幹は存在感を放つ。
    隣の紅葉、原田はまだまだ色あせぬ。むしろ生き生きと輝いている。

    ──こっちはまだ紅葉が色鮮やかだな

    「俺、見えないんですけど。ずるいっす」
    なら、あの霊衣に変えて髪を伸ばせばいい。そう続ければ、ぶすり、と不貞腐れた。
    「俺は大将と一緒に見たいんです。それじゃあ意味ないんですよ」
    すぐそう言ってのける。まっすぐに、視線がこちらを捉えていた。

  • 12125/11/22(土) 13:34:49

    「あ、大将。だったらイチョウ見に行きましょう」
    イチョウ、確かにあの木ならもうしばらくは楽しめたはずだ。近くには…。
    「ここなら、俺に任せてください。穴場は知ってますから」
    嬉しそうに原田は手を取り、足を踏み出す。手に伝わる原田の手の大きさ、硬さ、それに熱もそうだ。
    いそいそと忙しないくせして、歩幅はこちらに合わせてくれる。歩くたびにひんやりと冷たい風が当たり、寒さを覚える。
    だが、温かい。

    「大将」

    隣の紅葉は随分と元気なままだ。

  • 13二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 14:56:10

    >>9

    1の文が名文過ぎてお好きなようにと言われましても……

    地獄から天国へと旅をする『神曲』にギリシャ神話の冥界神ハデスとペルセポネーの伝説をリンクさせたうえで『神曲』の作家と主人公が重なったプリテンダーのダンテゆえの幻想性が際立つ夢か現かというテーマで書かれているのが大変素敵な物語です続きが気になりますとしか……

    原田との話もこのスレの1なのかなどちらにせよ原田のどっしりとしつつどこか儚げな立ち姿とその髪色を紅葉に喩えるの天才過ぎませんかとしか……

  • 14二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 15:03:34

    ロボットカテゴリの某シャア夢の人といい野生のあにまん作家はどこのカテゴリにでも生まれるんだなー
    同じ人だったらおもろいが
    まあカテゴリ違いだからここまでにしとくか

  • 15二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 15:15:55

    夢十夜か

  • 16125/11/22(土) 15:22:48

    >>14

    一時期居たけど知らねぇんですわ…でもあそこは緑のおっさんに狂ってさらには、赤のおっさんに狂う人で賑わっていたよ

  • 17125/11/22(土) 18:36:58

    コツ、コツと靴底が鳴りやまず、後ろからはゴロゴロと車輪が地面を転がる音。どこを見ても人に溢れ、どこからも忙しなく声が聞こえる。
    空の方を見上げれば、わずかに雲がかかり快晴ではない。
    人の生気があふれている、充満している。

    ──コレでいい、コレを無くすのは…いささか惜しい。

    その時だ。
    「待ってくださいぃ〜」
    ガラガラとスーツケースを引っ張り、腕にはガサガサと鳴りやまない紙袋の擦れる音。時々、紙袋の中身が暴れていたりする。急ぎ足のせいで三つ編みに編まれたもみあげはぶらん、と揺れている。
    声の主、旅の道連れのコルデーが情けなく声を上げていた。だから買いすぎだ、と言ったというのに…。
    「だって私がいた時代じゃこんな贅沢品、買えるわけないじゃないですか!ありもしません!」
    ──帰りで買えるだろう。
    ボヤけば彼女はぷんすこ、と可愛い音を立て怒る。
    「もう!買い物だって旅の醍醐味です!」
    確かに、そうだが…限度があるよ。
    「むぅ!」
    可愛い顔してむくれてるが、こちらの腕も満員である。そう思い、わざと両腕の紙袋を鳴らせば目を泳がせる。
    旅は始まったばかりだ。この街─パリは逃げないよ。

    「えへへ。それもそうですね!」

  • 18二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 21:46:19

    『カルデア出版より新刊、【英霊旅行記─パリにて昼食をいただきましょう─】が発売』

    人気シリーズ、英霊旅行記からシャルロット・コルデーと共にパリを散策するテーマとして発表
    既刊から原田左之助とエリザベート・バートリーの増版が決定

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  • 19二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 22:54:51

    エリちゃんは大丈夫なのか

  • 20二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 08:47:51

    >>17

    なんでもかってあげたい

    マカロンかってホテルで食べようね

  • 21二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 13:37:37

    >>18

    原田お前大陸で何食べてたんだ

  • 22125/11/23(日) 15:34:54

    「大将、イギリスつったらフィッシュアンドチップスですよね」
    まぁ、うん…そうだな。少しばかり戸惑いながらも目の前の料理を見ながら、言葉を返す。目の前には黄色の山が見えている。魚のフライに、フライドポテトがこんもり、と盛られている。
    油取り紙かは分からないが、神は灰色ににじみ油の量が嫌でも分かる。

    「嫌というほどこのギトギト感。カルデアでは許されないッスね」

    原田はもくもくとフライとポテトを口に放り込んでいる。
    さながら、掃除機のようだ。
    「大将も食べたほうがいいッスよ。でないと無くなりますから」
    ──じゃあ、いただこう。
    ひとつまみ、フライを口に含めば脂が広がり、魚のパサパサ感が味わい深くなる。ほんのり、魚特有の苦みもある。
    「これくらいが、丁度いいかもしれませんね」
    変わらず原田は口に放り込む。
    空は曇りで、陽が見えないが…隣のほんのりと暖かい陽はわんぱくである。
    おもむろに原田が手を止め始める、心なしか目は細く気持ちが沈んでいる様子。

    「飽きてきました…」

    ──台無しだよ…。

  • 23125/11/23(日) 15:43:03

    『カルデア出版より新刊、【英霊旅行記─アヴァロンのサイダーの行方─】が発売』

    人気シリーズ、英霊旅行記から原田左之助と共にイングランドを散策するテーマとして発表
    既刊からバーサーカーとランサークラスのヴラド三世の増版が決定

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