- 1二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:07:20
- 2二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:08:23
清夏さんは今非常に危うい状態にある。
アイドル活動を始めてファンも増え始めてきた。
夏のHIFは惜しくも敗れたが、清夏さんは冬に向けてのレッスンに励んでいた。
しかし、そんな中悲劇が起きた。
清夏さんの膝の容態が悪化した。
クラスのみんなの前やトレーナーの前では以前通り振る舞っているがやはり無理をしているらしい。
事務所に入った途端、清夏さんの雰囲気は少し暗くなる。 - 3二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:08:55
仄めかすだけで良いのか?🔪
- 4二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:09:26
「Pっち......」
清夏さんは俺よりも先に事務所に来ていたようだ。
扉を開けて事務所に入るといつものように俺の事を呼んだ。
腕を広げて待っている。
「大丈夫そうですか?」
「Pっちと抱き合ってたら大丈夫。気持ちが落ち着くんだ......」
「そうですか。なら、清夏さんの気の済むまで付き合いますよ」
清夏さんを優しく包み込む。
そうしないと、こぼれ落ちていってしまいそうな気がした。 - 5二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:10:52
でも、こんな事清夏さんがアイドルである以上辞めないといけない訳で。
でも、辞めてしまうと清夏さんが本当に壊れてしまいそうな気がして。
俺は、どうすれば.......
「ごめんね、いつもいつも」
「どうしたんですか?急に」
「迷惑だよね......」
「そんな事ありません。何があろうと俺は清夏さんを支えますよ」
「......そっか」
清夏さんの腕の力が少しだけ強くなるのが分かった。 - 6二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:12:14
「別に、あたしに拘らなくてもいいんだよ.....?こんなヤツ、パートナー契約切ってもいいんだから........」
震える声で、清夏さんが言ってきた。
「......次そんな事言ったら怒りますよ」
「ごめん......」
......どうやってこの状態の清夏さんを復活させるかが今の課題だ。
専門家の話を聞きにいったりもしてるが、清夏さんを同伴させないと効果は薄いだろう。
でも、清夏さんにそう言った話を持ち出すと暗い顔をされる。
時間が解決してくれるのか、どうなのか........
考え事をしてると、視界の隅にふとある物が入った。
あれは.....カッターナイフだ。 - 7二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:13:17
「清夏さん」
嫌な予感がして清夏さんの腕を掴む。
......良かった。
「ど、どうしたの......?」
「いえ、すみません。俺の勘違いでした」
いきなりの行動に清夏さんは驚いているようだった。
無理もない。
でも、清夏さんは俺の行動の意味を理解したらしく怪しく笑った。
「腕は怖くてできなかったんだ」
腕"は"
「なんてね」
「......あまり俺を揶揄わないでください」 - 8二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:15:51
安心して力が抜ける。
「揶揄ってないよ?ただ、心配してくれてるのか確認がしたかったんだ」
腕が自由になった清夏さんは再び俺に抱きついてきた。
「心配です。清夏さんの体はとても綺麗なんですから.....」
「ふふ、今のあたしの言う事......全部信じちゃうんだ」
「担当アイドルの言う事を疑うプロデューサーがどこにいるんですか」
「こんな状態でも.....?」
「......何が言いたいんですか?」
「見えないところにあるかもよ?跡が」 - 9二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:17:44
だから、何が言いたいんだ。
焦りが俺を支配する。
「確認しなくていいの?」
清夏さんが耳元で囁いた。
「どうやって......」
「Pっちになら.......あたしの全部、見せてあげる」 - 10二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:19:29
あの後、場所を変えてホテルに移動した。
清夏さんの体を確認するため......なんだろうか。
清夏さんの膝が悪化してからなんでも言う事を聞くようにしてきたツケが回ってきたのかもしれない。
「Pっちが言う事聞いてくれないなら......」なんて言われたら恐ろしくて従うしかなかった。
清夏さんがベッドに座ると、ワイシャツのボタンを外し始めた。
思わず目を逸らす。 - 11二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:21:04
「だめだよ、あたしの体を確認するんでしょ?」
「で、ですが.......」
清夏さんが俺の手を取った。
清夏さんの体をなぞるように、俺の手を動かしている。
「目、開けないでいいの?」
恐る恐る目を開ける。
そこには傷ひとつない、清夏さんの綺麗な体があった。
「傷なんてないじゃないですか......」 - 12二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:22:32
安心して肩の力が抜ける。
「そういえば下半身の方にはつけてたかも」
そのひと言で俺の方にまた緊張が走った。
「確認しなくていいの?」
清夏さんが俺の手をスカートの方まで持っていく。
「Pっちが脱がせて」
そんな事を言われると、嫌でも意識してしまう。
俺だって男だ。
変な気を起こすつもりで来た訳ではないが、体は反応してしまう。 - 13二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:24:03
「確認、しなくていいの?」
気付けばスカートのホックを外していた。
ファスナーを下ろして、脱がす所まできていた。
「......やっぱり、傷なんてないじゃないですか」
これ以上ここにいる理由はない。
「学園に戻りましょうか」
そう言って立ち上がろうとする。
だけど、清夏さんが服を引っ張ってきて動けない。 - 14二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:25:29
「......離してください」
「ねぇ、このままあたしを抱きしめて?」
「......事務所に戻ってからいくらでもしてあげます」
「Pっちも服なんて邪魔な物脱いでさ、肌の温もりを感じながらハグがしたいの」
清夏さんが続ける。
「Pっちが受け入れてくれないならあたし.......もう死んじゃおっかな」 - 15二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:27:14
......今の清夏さんの精神状態なら本当にしかねない。
「どうせなら綺麗なままがいいな。首吊りとかどうなのかな」
嘘だとしても、清夏さんの口からそういった事は聞きたくない。
「清夏さん......!」
清夏さんをベッドに押し倒していた。
「分かりました。しますから。その代わりもうそんな事言わないでください」
「ふふ、はぁい」 - 16二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:28:16
清夏さんの指示通り服を脱ぐ。
お互い下着姿のまま抱き合った。
「はぁ......Pっち........」
俺とこうしてる間の清夏さんは比較的大人しい。
だからこれからの事について考える余裕がある。
ここまできたら俺の力だけではどうする事もできないのかもしれない。 - 17二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:29:31
やっぱり、そういった病院に清夏さんと一緒に......
......でも、連れて行ったら自殺するなんて言われたらどうする?
他の誰かに清夏さんの事を話したらショックでリスカするなんて言われたらどうする?
「Pっち......」
「......なんですか?」
「キス.......」
「俺と清夏さんは.......」
「キスして」
清夏さんの目を見て悟った。
多分、次断れば俺が予想してるであろう言葉が出てくる。
軽く唇を触れ合わせる。 - 18二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:30:30
うああ!!!
清夏さんは、そんなことしないっていう怒りと
でもそれはそれとしてみたいという欲求がせめぎあって!
サウナみたいになってる!!!
支援 - 19二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:30:33
「......もっと」
次第に過激な物になっていき、清夏さんの舌が俺の口内に侵入してきた。
「ねぇ、このままあたしを抱いて?」
「それは.......」
「断るならあたし.......」
キスで清夏さんの口を塞ぐ。
「もう言わない、という約束では?」
「Pっちが悪いんじゃん」 - 20二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:31:48
清夏さんが俺の股間に手を伸ばしてきた。
「Pっちもその気ならいいじゃん。Pっちと一緒にいる時だけなんだ。あたしの不安が薄れるのは」
結局、その後もずるずると俺たちの関係は続いていった。
俺は清夏さんの言う事に逆らえなくなってしまった。
今日も放課後、清夏さんとホテルに行く事になっている。
.......俺たち、どうなるんだろうな。 - 21二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:33:20
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- 22二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:34:26
季節が冬に近づくにつれ、外の気温は下がっていくのに俺たちの周りだけは腐ったような熱が籠もっていた。
「Pっち。今日のリハビリ、サボっちゃった」
放課後の薄暗い事務所。 ソファに寝転がった清夏さんが悪戯が見つかった子供のような顔で笑う。 - 23二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:36:06
「.......清夏さん、それはまずいです。医者からも言われているでしょう?今が正念場だって」
「だって、痛いんだもん。それに治っちゃったら.......」
清夏さんは言葉を切り、俺のネクタイを指で弄ぶ。
「治っちゃったら、Pっちはもうこんな風に優しくしてくれないでしょ?」
心臓が冷たい手で鷲掴みにされたような感覚に陥る。 清夏さんの膝は、もう限界に近い。 本来なら活動休止を発表して手術に踏み切るべき段階だ。だが、清夏さんはそれを頑なに拒否している。 - 24二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:37:56
『活動休止したら、みんなあたしのこと忘れるよ』
『Pっちも、他の元気な子のところに行っちゃうんでしょ?』
そう言って泣き叫びながら包丁を喉元に突きつけたあの日から、俺は専門的な治療の話を一切できなくなっていた。
「.......そんなことありません。俺はずっと清夏さんのプロデューサーです」
「口だけ。男の人はみんなそう。元気で、踊れて、キラキラしてる女の子が好きなの」
清夏さんが体を起こして俺の膝の上に跨る。 - 25二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:39:36
「痛くないんですか.......?」
「痛いよ。すごく痛い」
清夏さんは脂汗を滲ませながら、それでも恍惚とした表情で俺の頬を撫でる。
「でもね、この痛みがあるから、Pっちはあたしを見てくれる。心配してくれる。.......ねぇ、そうでしょ?」
清夏さんの論理は完全に破綻している。 しかし、それを否定することは許されない。 否定すれば清夏さんは本当に壊れてしまう。最悪の場合俺の目の前で命を絶つパフォーマンスを見せつけるだろう。 - 26二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:39:51
清夏ちゃんはこんなこと言わ…………
うーん…… - 27二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:43:22
俺は......清夏さんのアイドルとしての死を先延ばしにするために、清夏さんの人間としての生をすり減らしている。
「......トレーナーには、俺から言っておきます。今日は体調不良だったと」
「ふふ、ありがとう。やっぱりPっちはあたしの味方だね」
俺は嘘をついた。 これで何度目だろうか。
最初は罪悪感で吐き気がした。でも今はもう、事務的な作業のひとつになり果てている。事務所への報告書も改竄している。清夏さんの膝の状態は『順調に回復中』。 すべては、この閉じた時間を守るため。 - 28二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:45:10
「ご褒美あげる」
清夏さんが俺の唇を塞ぐ。 甘い味などしない。鉄の味と、絶望の味がするキス。
事務所のドア一枚隔てた向こう側では、他の生徒たちが次のライブに向けて必死に動いている。 俺たちだけが、その流れから外れ暗い底へと沈んでいく。
「ねぇPっち」
唇を離した清夏さんが、とろんとした瞳で囁く。
「次のライブ......あたし、ステージの上で倒れちゃおうかな」 - 29二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:47:26
「な、何を言って......?」
「そしたら、悲劇のヒロインになれるよね。みんな同情してくれるよね。一生......あたしのこと忘れられないよね」
彼女の瞳孔が開いている。 冗談ではない。本気だ。
清夏さんは自分の身体を、キャリアを、そしてファンの期待さえも、俺を繋ぎ止めるための『鎖』にするつもりだ。
「......そうしたらPっちは、一生......責任感じてくれる?」
「清夏さん、それは......」 - 30二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:49:38
止めるべきだ。プロデューサーとして、大人として、人間として。
今すぐ清夏さんを担いででも病院へ連れて行き、全てを事務所に洗いざらい話すべきだ。
たとえ清夏さんに恨まれようとも。
だが。
「......Pっち?」
清夏さんの手が俺のベルトに伸びる。
冷たくて、どうしようもなく心地よい感触。 思考が溶けていく。
もし清夏さんを正気の世界に戻してしまえば、俺はこの歪んだ独占欲を満たしてくれる相手を失うことになる。 俺もまた、清夏さんに依存している。壊れかけた彼女を支えている自分に......酔っているんだ。 - 31二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:51:58
「......清夏さん」
俺は震える声で、悪魔の契約にサインをする。
「貴方の好きなようにしてください。最後まで、俺が面倒を見ますから」
清夏さんが、パァッと花が咲いたように笑った。 かつてステージの上で見せていたあの太陽のような笑顔で。
「あはっ! うれしい! 大好き、Pっち!」
清夏さんが俺に抱きつく。その拍子に清夏さんの膝がゴキリと鳴った気がした。清夏さんは痛みに顔を歪めながらも狂ったように笑い声をあげ続ける。
窓の外では冷たい雨が降り始めていた。 - 32二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 17:55:32
あー、思い浮かんだネタ消費できてすっきりした。
お付き合いいただきありがとうございました。 - 33二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 18:05:11
ライブシーンでの破滅も書こうと思えばかけるけどどうしましょうか。
サポカコミュの『今までもずっと、ヒーロー』(ここから始まるんだね!)の冒頭シーンくらい重い出来になっちゃいますけど。
これよりも重い破滅へのシナリオ。......まあ実際そんな身構えなくてもいいと思いますけどね。曇らせ読むときの覚悟はできればできる程いいでしょう。
読みたいという反応があって明日の昼ごろまで残ってたら1000字ちょっと書きに来ますね。
普通にしゅみたんは学マス最推しなのでそこだけは勘違いしないでください。 - 34二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 18:28:36
大丈夫。歪んだ感情を持つことは愛の一つの形。
- 35二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 18:33:06
この愛が新たな作品を産むんだ、歪みも大事にしていこう
- 36二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 20:59:54
しゅみたんがそうなるかもしれないという考えによる盲愛と依存、素晴らしい
- 37二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 21:32:53
スレ主なんですけどこれは続きの超弩級曇らせを書いて良いという事でよろしいか.....?
- 38二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 22:02:10
かかってこい覚悟はできてる
- 39二次元好きの匿名さん25/11/22(土) 22:02:15
拙者リーリヤ大好きなんですけど、痴情のもつれでリーリヤがしゅみたんをやっちゃう作品くださいな!
- 40二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 06:45:12
既に内容は決めてるんじゃないかな?
- 41二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 09:34:55
むしろ待ってる
- 42二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 09:43:37
面白そう
- 43二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:35:53
残ってたので書いていきます。
冬の冷気が嘘のように会場は熱気に包まれていた。 何万人ものファンが振るサイリウムの光。地響きのような歓声。 その中心で清夏さんは踊っていた。
舞台袖から見る清夏さんは今まで見たどの瞬間よりも神々しく、そして不気味だった。
本番前、清夏さんは俺の目の前で規定量の倍以上の鎮痛剤を水で流し込んだ。 - 44二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:41:15
『痛い顔なんてしてたら、悲劇のヒロインになれないでしょ?』
虚ろな目でそう笑いながら震える手を動かし膝をテーピングでガチガチに固めている。
あれは補強ではない。今にも砕け散りそうな硝子細工を無理やり粘着テープで繋ぎ止めているに過ぎない。
曲は後半戦。アップテンポなナンバーが続く。
清夏さんの動きはキレているように見える。 - 45二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:43:46
だが、俺には分かる。
ターンをするたび、着地をするたび、清夏さんの冷や汗が飛んでいるのが。
膝の軟骨が擦り減り、骨と骨が直接ぶつかり合う感触が、見ている俺の脳内にまで響いてきそうだった。
「Pっち......見ててね」
出番直前に清夏さんは俺の耳元でそう囁いた。
『あたしの......最後の輝きを』 - 46二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:46:21
ステージ上の清夏さんと目が合う。
清夏さんはウィンクをした。
これから自分を破壊する人間とは到底思えない程無邪気で、残酷な笑顔。
サビに入った。 センターに立つ清夏さんにスポットライトが集中する。 振り付けは......曲中で最も激しいジャンプ。 - 47二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:47:29
俺は思わず目を背けそうになった。
だが、逸らせなかった。
最後まで面倒を見る、と約束したから。
清夏さんが壊れる瞬間を特等席で見届けることが俺に課せられた罰であり、役割だから。 - 48二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:48:38
清夏さんが高く跳ぶ。歓声が最高潮に達する。まるでスローモーションのように、清夏さんの体が空中で弧を描く。
美しい。本当に、美しい。
そして、着地の瞬間。
――バキッ。
マイクが音を拾ったのか、それとも俺の耳が幻聴を聞いたのか。
乾いた、硬いものがへし折れる音が会場の空気を切り裂いた。 - 49二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:50:43
「あ......」
清夏さんの右膝が、あり得ない方向に曲がっていた。
支えを失った体は糸の切れた人形のように無様に崩れ落ちる。
ドンッ、という鈍い音がして清夏さんはステージに伏した。
起き上がらない。 - 50二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:51:51
曲だけが、無機質に流れ続ける。
一瞬の静寂、事態を理解できない観客たちのざわめき。
それが悲鳴に変わるまで、数秒もかからなかった。
「清夏ちゃん!?」「え、嘘だろ!?」「音楽止めて! スタッフ!」 - 51二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:52:56
会場がパニックに陥る中、俺だけが冷静だった。
冷たい水の中に沈んでいるような感覚。
ああ、ついにやったんだ。
清夏さんは本当に、自分のキャリアと引き換えに......俺の人生を奪いに来たんだ。 - 52二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:54:13
このレスは削除されています
- 53二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:55:55
スタッフたちがステージへ駆け寄る。
俺も遅れて駆け出す。
プロデューサーとして、心配する演技をしなければならない。
「清夏さん! 清夏さん!」
清夏さんのもとへ駆け寄り抱き起こす。
近くで見るとその右足の状態は惨憺たるものだった。
腫れ上がり、赤黒く変色し始めている。
二度と......ステージには立てないだろう。
誰の目にも明らかだった。 - 54二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:58:17
激痛で意識が飛びそうなのか、清夏さんは脂汗を流し荒い息を吐いていた。
俺の腕の中で清夏さんは顔を上げた。
その瞳は......恍惚に濡れていた。
「......P、っち」
マイクのスイッチは切れている。
喧騒と悲鳴の中、俺たち二人だけの会話。
「......うまく、できた、かな」 - 55二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 12:59:44
痛みに顔を歪めながらも、清夏さんの唇の端が吊り上がる。
成功した......と。
これであたしはもう踊れない。
これであたしはもう、誰のアイドルでもない。
これからは一生、Pっちだけの「壊れたお荷物」になれる。
その笑顔は、どんなホラー映画よりも恐ろしく、そして愛おしかった。
「......ええ」 - 56二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 13:01:54
俺は清夏さんの汗ばんだ前髪を撫でながら震える声で答えた。
涙が溢れてきた。
悲しみからではない。
もう逃げられないという絶望と、安堵からだ。
「最高でしたよ。貴方は、世界一のアイドルです」
「......えへへ、よかっ......た......」
満足げに呟くと、清夏さんは俺の胸に顔を埋めそのまま意識を手放した。
まるで、安心して眠りにつく子供のようだった。 - 57二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 13:03:20
「救急車! 早く!」「道を開けろ!」
怒号が飛び交いフラッシュが焚かれる。
担架に乗せられていく清夏さん。
その手を、俺は決して離さなかった。
離せるはずがなかった。
清夏さんの目論見通り、この瞬間......俺たちの『共犯関係』は永遠のものとなった。 - 58二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 13:05:00
会場の出口に向かうストレッチャーの上で、気絶しているはずの清夏さんの手が俺の袖を微かに、けれど力強く握りしめた気がした。
――もう、どこにも行かせないから。
そんな声が聞こえた気がして、俺は暗い冬空の下、ただ頷くしかなかった。 - 59二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 13:06:15
これで終わりになります!
pixivとかであげたらなんか言われそうな内容だったのでこの場を使わせて貰いました。
ここまでお付き合いありがとうございます。