- 1二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 18:47:17
薄暗い路地の中、一人の少女が寂しく蹲っているのを見たセイアは心配に思い、路地に入り込んでいた
セイア「…君、こんな所で何をしているのかな?」
寝ているとも、起きているとも見分けのつかない少女。暗いからよく見えないが、しっかりと息はしているようである。それを見て、少しばかりセイアは安心した
───のも束の間、すぐにセイアは少女の事情を察した
辛うじてゲヘナの物とわかる、ひどく汚れ傷ついた制服。ボロボロの靴。切り傷のような痕、擦り傷のような痕のついた足
───中でも特筆すべきなのは、その顔
頰は腫れ、唇は切れて血が滲み、片目はどうやら開くのも困難な様である
さらに、セイアを見た時の顔
怯え切った、いや、そんな生半可なものではない、どこか諦めのようなものすら感じる、目。そして、表情
相手はゲヘナ生であると承知しつつも、憎しみやその他負の感情は微塵も湧き上がってこない。感情を持つことすら拒まれているような感覚に陥る
セイア「…大、丈夫か?いや、大丈夫ではないだろうが…」
今にも意識を失いそうな少女を前に、セイアは考える。このまま放っておいたらどうなるか分かったものではない。今ゲヘナとの間に問題が生じようものならひとたまりもない
考えた末、セイアは言った
セイア「…君、一度私の所に来るんだ。このままでは…死んでしまう」
セイアは、ゲヘナの少女を助ける道を選んだ - 2二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 18:56:33
どのぐらい経っただろうか
数時間かけ、ゲヘナの少女を家まで連れてきたセイアは、まず彼女を風呂に入れる事にした。傷に染みるかもしれないが、傷口の消毒をするためにもまずは風呂だ。体もずいぶん汚れている
セイア「染みるかもしれないが、我慢してくれたまえ。こちらも努力する」
ゲヘナ生「あ…う…はい」
彼女はどうやら最低限の返事しかしてくれないようだった。表情も暗いままだ
───彼女にはゲヘナ生に多く見られる、角や羽、尻尾のような特長がなかった。制服を脱げば、自分たちとなんら変わらない
セイア「…痛いかい?」
ゲヘナ生「い…え」
…これだけ怪我をしていたら、染みてもおかしくないはずだ。彼女の痛覚は、もしかしたらもう麻痺してしまっているのかもしれない
そう思うと、自分の責任ではない…はずだが、申し訳ない気持ちにならずにはいられなかった - 3二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 19:03:50
セイア「…治療をする。まあ、簡単な応急処置程度だがね」
ゲヘナ生「………」
怪我をした部分を消毒。包帯を巻き、小さな傷には絆創膏を貼っていく。…こうして見ると、数が多い
中には、服を着た時に丁度隠れる部分や、体の陰になる部分にアザがついていることもあった
…気分が悪い
なぜこんなことを、この子はされているのだろう
もし仮にトリニティに来たのが最近だとしても、明らかに古い傷が多い。おそらくこの子は、ゲヘナでも…
ゲヘナ生「…なんでですか?」
セイア「うん?」
ゲヘナ生「…やっぱ、何でもないです」
どうやら少しは心を開いてくれているようで、表情は少しマシになっている。だが…
目だけは、常にどこか遠くを見ている様だった - 4二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 19:14:08
セイア「…うーん、まあ…とりあえず許容範囲としようか」
少女の体は思ったより小さく、セイアのサイズでは少し大きかったようだ
ゲヘナ生「あ…これ、って…」
セイア「…トリニティの制服は、お気に召さなかったかい?」
先述したように、彼女にゲヘナ生に多くみられる特徴はない。こうして見ると、トリニティ生のよう…というか、トリニティ生である
セイア「…一つ聞く、君の今後に関わる大きな問題だ」
ゲヘナ生は表情を変えない。相変わらず暗いままだ
セイア「ゲヘナに、戻りたいか?」
戻りたくなかったら、どうするか
───考えなかった訳ではない。「このまま」でいくのも不可能では無いのだ
バレた時のリスクは尋常ではない。ティーパーティーを下ろされるぐらいならまだ軽い。ゲヘナの外交問題になりかねないぐらいだ
でも───
放っておくという選択肢は、少なくとも無かった - 5二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 19:55:33
しかし、すぐさまセイアは自分の質問が間違っていると気づくことになる
「ゲヘナに戻る」この言葉を聞いた瞬間、少女の様子は一変した
ゲヘナ生「…も、どる…?ゲヘナに…ッ!?」
先程まで興味深そうに制服を眺めていた目は焦点が合わなくなり、体が小刻みに震え始める
セイア「…!お、落ち着…」
セイアの声掛けはどうやら遅すぎたようである。彼女は言葉の重圧と、蘇る記憶に押しつぶされ…
嘔吐してしまった
ゲヘナ生「うぅ…っ、ゲホッ…」
セイア「…すまない、私の配慮が足りなかった」
ゲヘナ生「…はぁっ、ご、ごめんなさい…掃除します、だから、やめてください…殴らないで…!」
涙ながらに訴えるその声は、セイアの腹の底に重くのしかかった
セイア「…大丈夫、謝るのはこちらの方だよ。しばらく私の元に居ていい。トリニティで過ごせるように用意しておく。ただし、くれぐれも他の学生にはバレないように」
…二人だけの、されど強固な絆の誓い
言うなれば、「小さなエデン条約」が結ばれた瞬間であった - 6二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:32:16
ゲヘナ生「…で、でも、大丈夫なんですか?」
セイア「何がかな?」
二人がベッドに入り就寝しようとした時、不意に少女が声を掛けた。先程床で寝ようとしていた彼女はゲヘナ生である。セイアは彼女をトリニティ生にすると言ったが、それが大問題であることは保護されたばかりの少女も承知していた
セイア「なに、少しデータをいじるだけさ」
ゲヘナ生「い、いや、で、も」
セイア「バレないよう、うまくやるさ。確かに問題ではあるが…一人の少女を守るためなら許されるだろう」
セイアは何も問題は無い、とでも言うように笑みを浮かべる。その瞬間…
暗くてよく分からなかったが、初めて彼女の笑った顔を、見たような気がした - 7二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:45:44
翌日の朝…
セイア「さて…早速、写真を撮らせてはもらえないだろうか?」
ゲヘナ生「な…なんで、です?」
少女は驚き、恥ずかしがるように左下を向く。顔も怪我しており、絆創膏が貼ってあるというのに、なぜ今撮らなければならないのか
セイア「仕方がないんだよ…学生証を作るのに写真が必要なんだ。どうか協力してくれ」
ゲヘナ生「は、恥ずかしいです。セイアさんみたいに美人じゃないんですから…」
セイア「そんなことは関係ない。美人じゃなくても学生証は皆持っている」
あまり乗り気ではない少女に、セイアは半ば無理やり制服を着せ、白い壁の前に立たせる
ゲヘナ生「め、メイクぐらい…しても良くないですか…?」
セイア「早く撮らないといけないんだよ、でないと…」
少しトーンを下げ、セイアは真面目に話を続ける
セイア「…昨日したのはあくまで応急処置なんだ。早く、君にちゃんとした治療を受けさせてやりたい」
本心だった。ゲヘナとトリニティという違いはとうに忘れ、今はただ目の前の少女に、笑って欲しかった。暗い表情を、忘れて欲しかった
ゲヘナ生「…はいはい、早く済ませてください」
そんな気持ちを知ってか知らずか、彼女はセイアに大人しく従うことにした - 8二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:47:17
突然の安価!名前>>10!
- 9二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:49:24
- 10二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:50:25
- 11二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:53:31
おお、なんかよさげなssの予感
- 12二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 20:56:24
唐突な良ss、俺でなきゃ見逃しちゃうね
- 13二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 21:06:13
ありがとうございます!名前は「柊ナギ」で行きたいと思います!なるべく毎日投稿できるよう頑張っていきたいと思います
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
セイア「『トリニティ総合学園 柊ナギ』…うん、完璧だ」
お昼時、ナギが留守番をしていた頃、一件の通知が来た
セイア『こんな物でいいだろう。すぐに病院に行く。準備をしてくれ』
送られたメッセージには画像が添付されており、そこには暗い目をした少女の写真が貼られた学生証が写っていた
ナギ『ありがとうございます、せいあさん。とてもかんしゃしています』
セイア『何故平仮名なんだい?』
ナギ『すいません!変換ミスです!忘れてください!ごめんなさい!』
セイアはため息をついた。他人と接する時に必要以上に怯えてしまう癖。まずはこれを治す所からか…
長い道のりにはなるだろうが、支援すると決めた以上投げ出す訳にはいかない。彼女の心の傷を私が癒してやらねばなるまい
セイア『あまり小さいミスに拘らなくて良い。怒らないよ、その程度で。馬鹿にすることもない』
ナギ『ありがとうございます!』
!マークが、多い
他人に元気に見せなければならなかったのかも知れないと、セイアは想像してしまった。やはり…助けてやらねば。あの暗い顔を、笑顔にしたい
強く、想った
- 14二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 21:57:23
良質なエデン条約の予感。
時系列がどのあたりかわからないけど、おそらくこの後セイア暗殺()事件が発生するんだよな・・・ - 15二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 22:42:29
「柊ナギさーん!」
セイア「ようやく順番が来たみたいだね」
ナギ「…病院」
ナギの表情はどこか暗いところがある。しかしセイアは事情を察することができた。大方、病院にいかせてもらえなかったという所だろう。それを裏付けるように、傷の殆どは応急処置かまともに治療していないかのどちらかだった
…不快だ
人は人を食べることはない。極限状態なら違うかも知れないが
多くの動物が自身と同じ種族の動物を殺す時、その理由は「飢え」や「生存本能」である
人間は違う。飢えていない、殺さなければ生きられないわけでもない
極論、人は人を殺す「欲」をもって殺すのだ
必要もないのに。自身の安寧と快楽のためだけに、他人の心を「殺す」のだ
ナギ「…セイアさん?何怖い顔してるんですか?も、もしかして、また、私、その」
セイア「大丈夫だ。行こう」
…そんなことが許されて良いはずがない。仮にこの子を、ナギに暴力を振るった人間に出会った時
平静を、保てる気がしない - 16二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 22:58:04
「…一つ言いたいことがあります」
ナギ「は、はい」
「…なんでこんなになるまでほっといたんですか!!」
診察結果は…酷いものだった
いくらキヴォトス人が丈夫とはいえ、これは…明らかにおかしい。セイアが素人目に見ても、わかるほどに
放置された傷…酷いものは骨折やヒビで、碌な治療をしなかったせいか繋ぎ目がおかしくなってしまっている
痕が残ると判断された傷も多く、傷口に菌が入り化膿してしまったものも多くあった。なにより酷かったのは───
「左目がかなり傷ついています。しばらく眼帯をつけて、絶対に刺激しないこと」
他の怪我に気を取られてよくわかっていなかったが、彼女の左目は、薄い白に近い色になっていた
実はこれが後天的なものだったと知ると、セイアはまた不快感を感じた
ナギ「視界がぼやけてるとは思いましたけど…そ、そんなにですか?」
セイア「…ナギ、触ろうとするな」
ナギ「…あ、ご、ごめんなさい」
「…はぁ、とりあえず、3日に一回はここに来なさい。完治はしないでしょうが、痛みはマシになります」
ナギ「そ、んなに、ですか」
「絶対に来なさい」
医師の口調は強く、本当に怒っていることが感じられた
そしてそれは───セイアも同じであった - 17二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 23:17:15
よさそうなSSを発見
- 18二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 23:17:49
セイア「…ナギ」
ナギ「は、はい」
病院で治療を受け、家に帰ってきたナギは重苦しい空気の中、セイアからの「お話」を受けていた
セイア「…いいかい、今から私の言うことを、これからの学校生活で絶対に守ってくれ。一つ、絶対に無理をしないこと。これ以上怪我を増やすな。一つ、もし一人で解決できない問題があったら、絶対に誰かに相談すること。一つ、毎日何があったかを、きちんと報告してくれ。一つ…私のところに、帰ってくること」
ナギ「り、了解、です…」
セイア「君を縛りたくはない。基本は自由に生活してもらっても構わない。しかし私は君が心配だ。辛くなったら言う事、いいね?」
ナギ「はい」
セイアは、もうこれ以上彼女に辛い思いをしてほしくないと思った
かつて居た学園の名前を聞いただけで嘔吐してしまうような、弱い心の持ち主であるナギを、守ること
それが使命のように思えた。でも、彼女の自由を制限したくないのも事実だった。そこで、最後にこう付け加えた
セイア「友達はいくら作っても良い。何人居ても足りないぐらいだ。君は優しいんだよ、ナギ。少々他人のことを気にしすぎたり怯えてしまったりすることはあるが、他人のことを思いやれるいい子だ。部活も好きに選ぶと良い」
ナギ「本当に、で、できますか、友達」
セイア「できるさ…できなくても、私がいる。正直、ティーパーティーはおすすめしかねるが」
セイアは笑って言った。それにつられて、ナギも少し笑ってくれたようだ。───目は、相変わらずほの暗さを宿しているが
そして───
翌日が、ナギの初登校日となる - 19二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 23:20:09
今日はこのへんでおやすみなさい
早起きしたら明日朝から書きます、お名前ありがとうございました - 20二次元好きの匿名さん25/11/23(日) 23:24:48
お疲れ様でした!
そういえば、現段階ではナギの学年は何年生なんだろう?高1かな? - 21二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 08:22:10
一旦保守
- 22二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 11:05:58
- 23二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 11:06:42
ちょっと長時間の鯖落ちが怖いから保守
- 24二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 11:30:07
セイア「…行ってらっしゃい」
ナギ「い、行ってきます!」
暖かな朝日が二人の少女を照らす。一人は穏やかな表情を浮かべる。対して一人は、どうやら酷く緊張しているようで下を向いたままである
セイア(…すまない、ナギ。本当は私も一緒に行ってやりたいのだが)
ナギ(怖い…転校なんて、初めて…)
全身が、いつかの恐怖を呼び覚ます。嘲笑、暴力、蔑み、憐れむ感情など何一つ感じない氷の目
ナギ「…うぅっ」
セイアの家を出てしばらくしたころ、少女は蹲ってしまった。無論、恐怖心とトラウマからである
そんな時だった
???「だ、大丈夫っすか?」
一人の少女が、声を掛けた - 25二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 14:22:43
なんとなく口調で察しが…()
- 26二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 14:56:33
イチカ「突然どうしたんすか?別にそんな無理して学校行かなくても…」
ナギ「あ…いえ…大丈夫、です、本当に」
イチカ「そ、そうっすか?」
ナギに声をかけた少女の名は、仲正イチカ。トリニティ総合学園の生徒である
イチカ「あんま見ない顔っすね…あれ?もしかして」
ナギ「えっ、えっ…?」
イチカ「転校生っすか?うちのクラスに来るって言う」
ナギ「あ、は、はい、多分そう、です」
奇しくも彼女は、ナギと同じクラスの生徒であった
同じクラスであることを知り、遠すぎず、近すぎずの距離感に安心して、ナギはある程度の警戒を解いた
ナギ「そ、その…よ、よければ、案内を…」
イチカ「もちろん良いっすよ!あんまり緊張しないでください!皆んな結構楽しみにしてたんすよ」
…ナギが拾われたのは一昨日。どれだけ早くても伝わったのは昨日のはずだが、これはイチカなりの配慮なのだろう
ナギ「たの、しみ?そういう、ものなんですか?」
イチカ「…?そう言うもんじゃないですか?誰でも期待すると思うっす。あ、名前は?」
ナギ「柊ナギ、です」
イチカ「私は仲正イチカ、よろしくっす!」
二人は並んで校舎へと歩き始めた - 27二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 14:59:00
- 28二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 15:00:55
あっ(察し
- 29二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 16:31:15
一方その頃、セイアはというと…
セイア(ナギ…大丈夫だろうか…パニックにならないといいが…)
ミカ「セイアちゃん、なんだか今日は元気無いね!いつもかも知れないけど!」
セイア「君が元気すぎるんだ、ミカ。少しは落ち着いたらどうなんだい?」
ナギを心配していた。当たり前かもしれないが、片時も頭から彼女の存在が離れない
ナギサ「少し休んではどうですか、セイアさん?昨日はとても忙しかったようですし…」
セイア「問題ないよ、本当だ。…でも、今日は早めに帰らせてもらえるかい?」
ミカ「…え?本当に体調悪かったの?大丈夫?紅茶飲む?」
セイア「いちいち反応が過剰だな、君は。早く帰りたい日なんて君にもあるだろう」
図星だった。朝から頭痛がする。彼女の境遇を考えれば当然だろうが、不安がどうしても拭いきれない
ナギサ「明日はしっかりと、お願いしますよ」
セイア「もちろんだ」
セイアは仕事に戻る。深呼吸を一つし、仕事に取り掛かる
───これは、彼女の問題だ。クラスに馴染めるかどうかは重要だが、今はそれどころではない
セイアは、柊ナギの過去のデータを補う仕事に戻った - 30二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 19:13:57
イチカ「それじゃ、お先に〜っす」
トリニティ総合学園、一年生教室前。今まさに、ナギが教室に入ろうとしていた
少女は必死に心を平静に保とうとし、その度に黒い記憶に塗りつぶされそうになった
まるで無邪気な子供のように人を虐める様を思い出す。人間ではない扱いをされた日々を思い出す
あの日の痛みを、頭から被った熱湯を、顔を沈めた冷たい水を思い出す
その度に彼女は不快感に襲われ、立っていられなくなりそうになる
しかし────
同時に思い出す
あの人の、透き通るような体の底から温めてくれる声を
治療をしてくれた手の温かさを
穏やかで、まったく嘘のない笑顔を
思い出すたび、不思議とナギはなんでも出来るような気がした
ナギ「い、いこう…!」
教室のドアを、静かに開いた - 31二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 21:33:44
ナギ「…こ、こんにちは!転校生の、柊ナギ…です!」
セイアさんがアドバイスしてくれたように、大きな声で、語尾を濁さないはっきりと喋る
ナギ「えと…よ、よろしくお願いします!」
不意に視界の端で、イチカが目に入る
彼女は笑顔を浮かべ、自己紹介をするとすぐに拍手をしてくれた
モブA「そんなに緊張しなくてもいいですわ!これから仲良くしてくださいまし!」
モブB「どうして眼帯をしていらっしゃるの?」
モブC「転校生って言ったよね!どこから来たの?」
ナギ「え…いや…ちょっ、まって」
ナギは興味を持った同級生から、質問責めにあった
それをみて、イチカが
イチカ「ほらみんな、ナギちゃんが困ってるっすよ、後でゆっくり聞けばいいじゃないっすか」
と助け舟を出した
そんなこんなで、ナギは一つ目の試練を越えた - 32二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 21:38:37
とりあえずなんとかなったか…
- 33二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 22:18:04
モブC「ねぇねぇナギちゃん!」
ナギ「うひっ!?」
淡々と授業を終え、ナギが片付けをしていた頃
一人の生徒が、ナギに話しかけてきた
モブC「今日さ、放課後ちょっと残ってくれないかな!やりたいことがあるんだ〜♪」
ナギ「や、やりたい、こと…?」
モブA「無理にとは言いませんわ!すぐに終わらせる予定ですから、どうか付き合ってくださいまし!」
モブB「大丈夫です。取って食ったりはしないよ…ですわ」
三人の生徒に囲まれ、ナギはあることを思い出していた
???「ねぇ、放課後付き合ってよ」
???「あ、拒否権ないから。大人しく従ってね」
???「来なかったら…わかるよね?」
嫌だ。行きたくない
行ったら、またなにか変なものを食べさせられる。熱湯を被せられる。殴られ、蹴られ、最後には…
イチカ「…ギちゃん、ナギちゃん!」
ナギ「…へ?」
イチカ「落ち着いて、深呼吸するっす。…一体、どうしたんすか?」
気づくと目の前には、心配そうな顔をした四人の少女が居た
…またもナギは、イチカに助けられたのだ
モブC「…で、どうする!?もし気分が悪いんだったら無理しなくていいけど、たくさんお菓子も買ってきたんだ〜♪」
モブA「Cさん、少し静かにしましょう?ナギさんの回復が最優先ですわ」
モブB「大丈夫?…ですの?辛かったら、無理しなくていいよ」
ナギ「え、えっと、何の話でしたっけ?」
イチカ「いやぁ、せっかくなんで皆でナギちゃんの歓迎会でもしようってことになったんすよ」
モブC「今日は私達4人だけだけどね〜」
歓迎、会。歓迎はあまりされたことがないけど…
きっと、この四人なら大丈夫───
転校初日。ナギは人生二回目の、自分を受け入れてくれる人との出会いを果たした
しかし忘れてはならない
ここはトリニティなのだ。彼女はゲヘナ出身。この事実は後に、彼女に重くのしかかることとなる - 34二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 23:00:17
ナギ「た、ただいま帰りました」
セイア「あぁ、ナギ…おかえり」
ナギ「き、聞いて下さいセイアさん、き、今日ですね…!」
帰ってきたナギは、セイアに対し今日あったことを報告する
自分を歓迎会に誘ってくれた明るい少女のこと。しっかりとしたお嬢様言葉で話し、自分に対して気を遣ってくれた少女のこと。あまりお嬢様言葉の使い慣れていない、冷静な少女のこと。そして───
今日一番助けてくれた、正義実現委員会の少女のこと
ナギ「い、イチカさんって、言うん、ですけど、すっごく優しいんです。わ、私今日、何度も体調を悪くしちゃったんですけど、助けてくれて…!」
彼女の話を、セイアは笑顔で聞き続けた。きっと子供の話を聞く親はこんな気持なのだろう。暖かくて、聞いているだけでも思わず笑みがこぼれてしまう
最初に見たときよりも随分表情が良く、目にも若干光が宿っているように見えた
セイア「良かった。どうやら馴染めそうだね、安心したよ。とても」
ナギ「ぜ、全部セイアさんのおかげです、本当に…本当にありがとうございます」
見違えた、とセイアは感じた
この世界に絶望したような目をした少女が、こうも変われるものなのか
やはり、この少女は元からそういう性質を持っていたのだ。外的要因に捻じ曲げられ、あんな目をするまでになってしまった
セイア「…ナギ」
ナギ「…はい?」
セイア「…なんでもない」
…セイアは、聞くべきではない。と自分に言い聞かせる
少なくとも、彼女は今幸せだ。心の治療に逆効果になるようなことを聞いてはいけない
それに、大体察しが付く
ゲヘナで何があったのか?───その答えは、いつか必要になる時まで知る必要はない。また、そんな時は来てほしくない
多分彼女も、忘れたいのだ。それに、もう忘れてしまっていることだってあるはずだ
セイアは、それを呼び覚ましたくはなかった - 35二次元好きの匿名さん25/11/24(月) 23:02:52
今日はこの辺で…
もう明日から土日祝以外は忙しいので基本朝昼書き込めません…
夜には毎日書きたいと思ってます…よろしければ保守お願いします
では失礼 - 36二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 00:00:24
とりあえず1日目は何とか平和に終わったか……
上手くエデン決まるといいなあ() - 37二次元好きの匿名さん25/11/25(火) 07:26:19
鯖わからんので一旦保守