【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」Part16

  • 1125/11/28(金) 20:51:59

    ミレニアムがなくなる話


    学園を統べるその瞳は、ただひたすらに『過去』だけを見続けた。

    進み続ける雛鳥たち。相対するは最弱の『鏡』。ミレニアムに覆われたヴェールがいま剥がされる。


    ※独自設定&独自解釈多数、オリキャラも出てくるため要注意。前回までのPartは>>2にて。

  • 2125/11/28(金) 20:53:02

    ■前回のあらすじ

     ミレニアム全校合同修学旅行が幕を開けた。


     会場は洋上を進む豪華客船『メリッサ号』。

     そこに隠された会長のリドルを摘まみながら船の探検を行う特異現象捜査部の面々。


     次なるセフィラ戦に備えて修学旅行を途中で切り上げることにもなっているため自由時間はあまりない。


     カジノの記念メダルに隠された『メリッサ号』の設計図。

     食料プラント地下に隠されたメカ豚のポリー。

     チヒロが実証するはドッペルゲンガー現象の発生実験。


     個々で活動するのも一旦休止。最後の自由時間である修学旅行三日目が始まる。


    ▼Part15

    【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」Part15|あにまん掲示板【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」Part15機械と人間と会長の話。オデュッセイア海洋高等学校が手配した豪華客船で過ごすしばしの休息。失われた『過去』からの絶叫。ミレニアムに残され…bbs.animanch.com

    ▼全話まとめ

    【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」まとめ | Writening■前日譚:White-rabbit from Wandering Ways  コユキが2年前のミレニアムサイエンススクールにタイムスリップする話 【SS】コユキ「にはは! 未来を変えちゃいますよー!」 https://bbs.animanch.com/board…writening.net

    ▼ミュート機能導入まとめ

    ミュート機能導入部屋リンク & スクリプト一覧リンク | Writening  【寄生荒らし愚痴部屋リンク】  https://c.kuku.lu/pmv4nen8  スクリプト製作者様や、導入解説部屋と愚痴部屋オーナーとこのwritingまとめの作者が居ます  寄生荒らし被害のお問い合わせ下書きなども固…writening.net
  • 3125/11/28(金) 21:22:52

    「……あれ? なんで出て来たんだっけ?」

     『メリッサ号』の通路の只中でふと、アスナは小首を傾げて「まぁいっか!」と再び歩き出す。
     先ほど露見したチヒロの自室での処刑のことなんて既に頭の中に無く、とりあえずふらふら賑やかそうな場所へと向かう。

     昨日までの二日間、船内を歩き回ってぼんやりと思い浮かぶのは「変!」の一言である。
     例えば家具。その全てが尋常ではないほどガチガチに固定されており、船がひっくり返ろうが真っ二つに折れようが散らばるなんてことは無いだろう。

     そして天井。通路の真ん中には幅広のラインが一本描かれているが、意匠というよりも『船がひっくり返った場合の避難経路』に見えるのだ。

     そもそも豪華客船なんて言葉を聞いたときだって「そうなんだー」と驚きに声を上げた。
     豪華客船なんて見た事も乗ったことも当然無いが故に、アスナの中での豪華客船とは『無重力状態でも戦える戦艦』を指すのだと更新されるほどである。

     だとしたらその仮想敵とは何なのか。すぐに思い至って手を叩く。

    「分かった! 怪獣だ! だから戦艦なんだねこれ」

     資源回収に優れているのもやけに耐衝撃に優れた内装なのも、全ては巨大怪獣と戦うために必要なものだと合点する。
     何なら変形してもおかしくはない。所々良い感じに変形しそうな『切り込み線』が入っているのもそれが理由なのだろう。

     そんな戦艦に今、ミレニアムに存在する全てのヘイロー持ちの生徒が乗り込んでいる。
     これはどう考えても世界を懸けて戦うためのものでしかなく、きっとビナーよりも大きな戦いに備えているに違いなかった。

     とはいえ、自分たちはあと数日でこの船を降りてしまう。
     一体いつ戦うのか分からないが、少なくともその場に自分たちが居合わせることは無いだろうとアスナは肩を落とした。

  • 4二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 21:34:44

    建て乙

  • 5二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 21:40:07

    このレスは削除されています

  • 6二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 21:40:28

    ミレニアムが…なくなる…!?

  • 7125/11/28(金) 21:41:26

    「良いなぁ……。私も一緒に戦いたかったなぁ……」
    「何が良いのだ?」
    「あれ?」

     道すがらに掛けられた声へと振り向くと、そこには白衣を纏ってゴーグルをつけた人物が壁に背中を預けて腕を組んでいた。彼女は確か、と記憶を探って少しして、ようやく思い出す。

    「新素材開発部の人!」
    「おい、随分思い出すのに時間が掛かったな」

     口を尖らせて声を発するのは新素材開発部の部長、山洞アンリ。
     そんな不満げな表情にも気付かずに、アスナは尋ねた。

    「部長さんだよね? ボッチなの?」
    「ボッチ言うな! 昨日まで部員たちとこの船を回っていたのだ。今日ぐらいはひとりでのんびりしようと思ってな」
    「じゃあ暇なんだー。戦う?」
    「戦うかっ! たまたま見かけたから声をかけただけだ! というか他の連中はどうしたのだ?」
    「うーん? えっと……」

     聞かれて思い出そうと人差し指をこめかみに当てながらふらふらと頭を揺らす。
     思い出すことはあまり得意ではない。というより、重要なこととそうでないことの差があまりに激しいだけで、チヒロの部屋での出来事は『そこまで重要ではない』に分類されていたがためにこちらも少しばかり時間が掛かって、それから言った。

    「えっと、チヒロがコタマを拷問してた!」
    「各務チヒロが? いったい音瀬コタマは何をしたんだ……?」
    「船の中ぜんぶの傍受?」
    「こわっ!? は!? 聞かれているのか今もなお!?」

     びくりと身体を震わせるアンリ部長。きょろきょろと視線を周囲へ向けるが不審なものは何もない。
     そこでアスナがアンリ部長の足元に寄って爪でかりかりと床を何度か引っ掻くと、ぺり、と音を立てて『床に張られた同色のシール』が捲れる。その裏に貼り付けられた超小型の機械。「ほら」と見せるとアンリ部長は悲鳴を上げた。

  • 8二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 22:22:35

    建て乙

  • 9二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 22:29:04

    10まで保守

  • 10二次元好きの匿名さん25/11/28(金) 22:32:03

    保守

  • 11二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 04:55:01

    16まで来たかあ

  • 12二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 08:21:39

    ペロロジラかそれともコクマーか

  • 13125/11/29(土) 11:17:28

    保守

  • 14二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 16:50:07

    コタマァ…

  • 15二次元好きの匿名さん25/11/29(土) 21:28:54

    夜保守

  • 16125/11/29(土) 23:46:02

    保守!続きは明日朝に……

  • 17二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 02:40:52

    了解

  • 18二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 07:24:30

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 12:07:14

    待機

  • 20二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 17:06:04

    待機中

  • 21125/11/30(日) 17:54:52

    「あっ、あいつは頭がおかしいのか!? え、ど、どこまで仕掛けられているんだ!? 船全部? どんだけ広いと思っているんだここ!!」
    「コタマはすごいんだよ! 誰もこんなこと出来ないんじゃないかな」
    「誰もしないわアホ!! 一生沈めておけそんな奴!!」
    「あとリオも拷問されてたよ?」
    「カメラか!? カメラでも仕掛けられているのか!?」
    「ううん。ヒマリの口座勝手に使ってたみたい」
    「あ、お、おぉ……普通の悪さでちょっと安心したが普通に悪事だな。はぁ……貴様らの倫理感はどうなっているのだ……」

     頬を引き攣らせるアンリ部長だが、そもそも部活動対抗戦で散々盤外戦術で叩きのめされていたことを思い出したのかすぐに首を振って「まぁ良い」と言い直す。

    「そういえば貴様らのところの白石ウタハ……セミナーの会長になるというのは本当なのか?」
    「そうなの?」
    「いや何故貴様が知らん――って、まぁ貴様はそうか。私も聞いただけなのだがな……?」

     アンリ部長が言うには、既にミレニアム中では年度内でのセミナー会長交代という噂がほとんど事実であるものとして飛び交っているらしく、それについては比較的好感を持って受け止められている、ということであった。

     その理由として最も大きいのが、ビナー戦においてミレニアム生をまとめあげてハブを上空へ打ち上げたというあの実績である。

    「私は散々ハブに踏み潰されたからよくは知らんが、少なくとも私の部員たちは高く評価していたな。一年生から三年生まであのときの一件で白石ウタハという個人を明確に認知した。エンジニア部ではなく個人として、な」
    「おおー。そんなことになってたんだ」
    「ふん、新素材開発部からも会長の就任祝いの品を見繕ってやるから覚悟しておけ! ――と伝えておくんだな!」
    「いいよー。じゃあ行ってくるね!」
    「いや別に今すぐ伝えろという意味ではなく顔を合わせた時にでも適当にという意味――あ、おい!」

     制止の声すら届かずに、アスナはチヒロの自室に向かって走り出す。

     体力が有り余っていたから、というのも理由の一つであるが、それと同時に脳内にシミュレートするのはこの船を襲うとしての要衝の確認とルートの確認も兼ねている。別にアスナ本人に襲う意志があるわけではない。課題として出されているレポートのためだった。

  • 22125/11/30(日) 18:01:40

    「遮蔽も多いし侵入者撃退用のキルポイントもそこそこあるんだよね~」

     そしてアスナの見立てでは、千人単位の大海賊がこの船の設計図を入手した状態で高度な連携を取って来ても制圧は困難であるということだ。

     タレットがあったら嫌な場所には決まって何かを収納しているかのような四角い枠が目に映る。恐らく有事の際にはここが開いてタレットが出てくるのだろう。となれば最優先で押さえたい動力部も奥まった場所にあり、制圧したとてグレネードを投げ込まれれば逃げ場は無いと思われる。

     そしてそもそもの船内への侵入ルートだが、空から降りようとすれば確実に対空砲で迎撃される。船を船で囲もうにも過剰に多い砲台で蜂の巣。超長距離からこの戦艦の外壁をぶち抜けるほどの兵器があれば話は早いが、そんな兵器があるのならこんな豪華客船を襲うよりキヴォトスの港に一発撃ちこんで壊滅状態に追いやった方が良いだろう。

     やるなら船底。海底資源の回収装置から少数精鋭で船底より侵入。誰にも気付かれないように潜入して破壊工作を行い、一度に内部を攪乱。混乱に乗じてブリッジを下ろして一気に本隊を突入させる。

    「……うん。襲うんだったらこれぐらいしか無いかも」

     と、呟いて再び戻るはチヒロの自室。
     レポートの内容は船内の扉に認証装置がついていないことに対する懸念点を列挙していく形に決めた。

    「ただいま!」
    「あれ、アスナ。おかえり。どうしたの?」

     扉を開けると部屋着から着替えたチヒロたちとマルクトの姿があった。

    「悪いことをしてはいけません。悪いことをしてはいけません……」
    「うぅ……私がこれだけ仕込むのにどれだけ苦労したことか……。チヒロ、あなたには分からないでしょうね!!」
    「コタマ? 回収し忘れたら今度は漬け込むからね?」
    「何に!?」

     項垂れるコタマ。
     沈められていたもう片方のリオは部屋の隅で小さくなっており、こそこそとネルに耳打ちをしている。

  • 23125/11/30(日) 19:01:20

    「ネル。次からはチヒロに怒られそうなときは私と一緒に居てくれないかしら? 突然拉致されたのよ」
    「怒られるお前が悪いんだろ……。つーか嫌だぞあたしだって。事情があったってんならナシつけに行ってやることも考えてやるけどよぉ……」
    「今回も事情があったのよ。私にも正当性はあるわ」
    「おーいチヒロ。もうこいつ手足縛って船から叩き出そうぜ」
    「ネル……! ネル……!」

     涙目でネルの袖を掴むリオ。チヒロが「ふーん?」とリオに視線を向けると、怯えたリオがネルのスカジャンの内側へと頭を突っ込んでがたがたと震え始める。それを見てヒマリが愉快そうに笑った。

    「ふふ、悪は倒されたようですね」
    「ヒマリにバックブリーカーされるのとチヒロに水責めされるのって、どっちの方が苦しいんだろうね?」
    「バックブリーカーではありませんか? 腰いわしますし」
    「でも精神的には水責めの方がきつそうだよね。……全自動水責め機とか作ってみようかな」
    「いえいえ、でしたら手首や首元につけて電撃を発するアクセサリーを作りましょう。いつでも何処でも手軽に気絶させられるように」
    「うん、ミレニアムに戻ったらやってみよう」

     ヒマリとウタハが次世代型拷問装置について話し合っており、こちらはこちらで中々に物騒である。

     そんな皆を見て、アスナは「本当に退屈しない」と思う。
     思考を止めると再稼働に時間が掛かってしまう妙な体質は、退屈を本能的に厭うのだ。

     ひとつ所に留まることの出来ない欠落。忘却は新たな刺激で補い続けて来て、アスナにとってはそれがネルだけだった。
     だが今は違う。集団との関わり方は特異現象捜査部で覚えていく。忘れてしまっても、きっと大丈夫。

    「アスナ?」

     応答が無いことに違和感を覚えたのか、チヒロが再びアスナの名を呼ぶ。
     その一言で目を覚ましたように目をぱちくりと瞬いて、呼ばれる直前まで自分が何を考えていたのかすらも忘却の果て。

  • 24125/11/30(日) 19:03:44

     思い出したのは新素材開発部のアンリ部長からの言伝だった。

    「チヒロ、新素材開発部の部長さんがね。ウタハにお祝いの品を送ってくれるって!」
    「お祝い……? ――あっ」

     すると急に何かを思い出したようにチヒロは大きく目を見開いた。
     そこを見逃さないのがチヒロの幼馴染のウタハ。少しばかり意地悪そうな笑みを浮かべてチヒロへと近付く。

    「何か思い出したのかい? そういえば私、『お祝い』を貰っていないような気がするね」
    「ちっ、違うのウタハ! って、っていうかウタハだって毎年だいたい忘れてるじゃん自分の誕生日!」
    「お、なんだなんだ? ウタハお前、誕生日だったのか?」
    「そうなんだネル。『幼馴染の』チヒロだったら今年も私が覚えていなくたって誕生日プレゼントを用意してくれているかななんて期待していたのだけれど、どうにも忘れられてしまっていたようでね。よよよ……」
    「あーあチヒロ。ウタハのやつ泣いちまったぞ?」
    「どう見ても嘘泣きじゃん! いや、その、ビナーとか色々あり過ぎてすっかり忘れていたというか……」

     わたわたと動揺するチヒロに全力で悪ノリするネル。そこに追撃するのはその他全員。

    「見損ないましたよ……。盗聴のひとつやふたつよりも大事なことを忘れてしまうだなんて」
    「あってはいけないことね。幼馴染の誕生日を忘れているだなんて」
    「禊が必要なのかも知れませんね。マルクト、あなたはどう思いますか?」
    「え、わ、私ですか……? い、いえ、あの、チヒロ……?」

     悪ノリというものがまだ未学習のマルクトが、助けを求めるようにチヒロへ視線を向ける。
     それが逆にチヒロを追い詰めた。「押すなよ!?」のノリを解説なんて絶対したくないと場を仕切り直すように叫んだ。

    「もう! 分かった! 分かったから! というかウタハ! あんたのことだから何か寄越せって話じゃなくて私に何かさせたいんでしょ!? 今日一日はウタハに従います! もう!」
    「じゃあ今日一日は私たちに話しかける時は語尾に『にゃん』って付けるにしようか。人前ではやらなくていいけどさ」
    「うぐっ……」

  • 25125/11/30(日) 19:55:40

     ギリギリ呑み込めるラインを突いてくるウタハにチヒロが表情を強張らせる。
     そしてウタハの手にはいつの間にかネコミミのカチューシャがあった。これを付けることは確定事項らしく、チヒロは恨みがましい目をウタハへ向ける。

    「う、うぅ……あんた会長から悪い影響受けてない……?」
    「どうだろうね? 少なくともこのカチューシャ自体はセミナーで貰ったものなんだけど」
    「なんでそんなものがあんの!?」
    「会長の趣味だってさ。セミナーの罰ゲームはこれだって言われてから何個か貰って来たんだ」
    「ぐっ……会長あいつ余計なことを……」

     そんな言葉を吐くも諸悪の根源たる会長は遥か遠くのミレニアム。もし船に乗っていたらとりあえず銃弾を叩き込むような瞳でしぶしぶカチューシャを受け取るのを見て、アスナがそこに口を挟む。

    「私のことは『アスにゃん』って呼んでいいよー」
    「呼ぶか――っにゃん」
    「わぁ! 偉いね~。よしよし」
    「くっ……殺せ……っ!」
    「いや可愛いじゃねーかよ。あたしにも貸せよ」
    「もちろん。はいどうぞ」
    「おおぉ……」
    「なんで乗り気なの!?」

     恥辱に満ちたような表情を浮かべる猫チヒロと、ネコミミを付けた自分の姿を姿見に映して何故か感心したような猫ネル。
     それに続くのは美少女天才ハッカーのヒマリと、よく分からないままに付き合わされるマルクトの姿。ネコミミを付けたヒマリがふと呟いた。

    「なるほど、今の私は『美少女』ではなく『愛くるしい美少女』と付けた方が良いのかも知れませんね」
    「何故獣人族を模したアクセサリーがあるのでしょうか……?」
    「獣人に天使や悪魔のような際立った特徴を持つ隣人がいると時折羨ましくなるからですよ」
    「ヒマリも耳が尖っているではありませんか」
    「目立たない特徴は特徴とは言い難いですからね。それに付け羽や付け角には一定の需要もありますし」
    「そうなのですか?」
    「ゲヘナとトリニティの仲が険悪だからという理由に繋がりますのでこれ以上は自力で調べてくださいね」

  • 26125/11/30(日) 20:02:15

     なんて、ヒマリとマルクトが話している中でアスナもウタハからネコミミを受け取ると即座に頭へ付けて、それからネルに向かって突撃した。

    「にゃんにゃんにゃんにゃんにゃーん!」
    「ぐほぉっ!? お、おま、え……」

     腹部に強烈な頭突きを受けたネルが片膝を突く。
     そんな狂乱の中、場を仕切るようにウタハが手を叩いた。

    「それじゃあ、今日一日は遊ぼうか。ゲームセンターに行って、買い物して、今日ぐらいはのんびり休もう。ね、チヒロ?」
    「にゃ、にゃん……」



     それから、特異現象捜査部の面々はゲームセンターへと向かった。
     新旧問わず置いてある筐体はゲームセンターに行った経験がほとんどない一行にとっては新鮮なもので、遊ぶもの全てが新鮮だったと言えよう。

    「くっそなんだよ格ゲーって! コマンドとかしゃらくせぇ!」
    「また私の勝ちですね。ぶい」
    「マルクトぉ! もう一回だ!」

     私財を投げうって連コインするネル。しかし人間に化けて機能の全てを制限されているはずのマルクトには手も足も出ずに完敗。リアルの戦闘と筐体の中の戦闘ではまるで勝手が違うのか、途中からネルが台パンしかけて振り上げた拳を下ろすことなく震わせながら叫んだ。

    「あたしだったらもっと早く攻撃できるっての!! くぅぅううう!! なんだよ入力がどうたらってぇえええ!!」
    「ネル。私の勝ちです」
    「ぐぐぐぅ……!!」

     反応は出来てもゲームキャラが受け付けてくれないという事態にて特異現象捜査部格闘ゲーム大会ではネルの敗退が確定。
     そこに腕まくりして参戦するのがヒマリ。これにはマルクトも機械に戻って対戦の運びとなる。

  • 27125/11/30(日) 20:03:49

    「なるほど、本気で戦う、ということですねマルクト」
    「はいヒマリ。今の私にはビナーから得た機能がありますので」
    「では私も、イェソドによる再構築から得た身体を十全に使って良い、と?」
    「そのつもりです。私のアルタイルに勝てますか?」
    「ふふ、A.K.Aの神髄をお見せしましょう。初めて遊ぶゲームですが」

     全員が全員格闘ゲーム未経験。その中でもマルクトとヒマリの対戦はキャラコンよりも読み合いに重きを置かれた。

     互いにコンボの知識はなく、分かっているのは上段、中段、下段の攻撃があるということとそれからガード。情報も技術も無い状態で戦うのであれば、そこに残ったのは先読みと純粋な反射神経。爛々と輝くマルクトの金色の瞳に対抗するは常軌を逸した反射神経を獲得した人外ヒマリ。入力すべきコマンドは互いに熟練プレイヤーほどに脳内に刻み付けられている。キャラ相性といった情報が欠けているために自分の有利を押し付けることしかできないが、プロには勝てずともこの場ではそれでいい。

    「マルクト。私の勝ちで――なっ!」
    「誤りましたねヒマリ。ダメージ量の計算は既に完了しておりますので」

     体力をミリ単位で残したマルクトからの逆転劇。拙いコンボの連戦によって磨き上げられ、そして遂にはヒマリの操作するキャラを限界まで追い詰める。

    「そんな――っ」

     反射的にしゃがみガード。それこそが致命的で、飛び上がったマルクトのキャラが放つ攻撃はニュートラルガードでなければ防げないものであった。

    「終わりです!」
    「――――っ!」

     筐体に現れる『YOU Win』の文字。それを見てマルクトが立ちあがる。

    「格闘ゲームでは、どうやら私が最強ということのようですね」
    「覚えて置けよマルクトぉ!! おいヒマリ、お前からもなんか言ってやれ!」
    「ふふ、私を倒したとしてもこれが終わりではありません。第二第三の強者が現れるでしょう」
    「どのポジションで話してんだよお前!」

  • 28125/11/30(日) 20:06:49

     まるで第一シーズンのラスボスのようなセリフを吐いて負けを認めるヒマリ。
     ゆっくりと席を立ちあがるその姿に、マルクトが呟いた。

    「これは終わりではなく始まり……そういうことなのですね」
    「なんのぉ!?」

     ネルが突っ込んで続くは次なるゲーム。クレーンゲームにおいてはコタマが無双していた。

    「アームの設定が悪いですね。こちらにした方が良いかと」
    「うん! わかった!」

     駆動音からアームの強弱を聞き取ったコタマがクレーンゲームコーナーの筐体ひとつひとつに診断を下していく。
     それに従うはアスナ。乱数を収束されるかのように狙った獲物は確実に取る。これには厳正なるくじ引きによって割り当てられたリオチームも表情を強張らせた。

    「も、問題無いわ。当たりのクレーンと外れのクレーンには一定の間隔があると思うもの。だとすれば当たりの設定をされているのは……これよ」
    「っ――全然違うじゃねぇか!! 触れた瞬間開いたぞアームがよぉ!!」
    「さ、詐欺よこれは! 私たちは何か大きな陰謀に巻き込まれているに違いないわ」
    「単純に見間違いじゃないかなリオ……」

     ウタハの溜め息と共にクレーンゲーム対決はコタマとアスナを擁するチヒロチームの勝利。
     意外と呼べる結果になったのはエアホッケー対決。最終戦に伸し上がったのはチヒロとネルの二人であった。

    「反射神経であたしに勝てると思うなよチヒロぉ!」
    「あ、それはブロックにゃん」
    「はぁ!?」

     にゃん刑に処されているチヒロは真顔で飛んできたパックをガードする。
     相手がどれだけ反射神経に優れていても、守るべきポイントが決まっているならチヒロはまさしく鉄壁を誇った。

  • 29二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 23:17:00

    アオハルだぁ…(この先から目を逸らしながら)

  • 30二次元好きの匿名さん25/11/30(日) 23:53:18

    ほしゅ

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