エアスピネル「どうすりゃいいんだ・・・」

1二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 19:35:13

東京競馬場で迎えたフェブラリーステークス
昨年の雪辱を果たす勝利を狙うが、結果は9着と惨敗だった
競馬場に響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年で引退だな」の声
無言で帰り始める出走馬達の中、かつてのクラシック有力馬エアスピネルは独りターフで泣いていた。
重賞で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる陣営・・・
それを今の年齢で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」エアスピネルは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、エアスピネルははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい馬具の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って調教をしなくちゃな」エアスピネルは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、エアスピネルはふと気付いた

「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」
地下馬道から飛び出したエアスピネルが目にしたのは、東京競馬場外まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにG1のファンファーレが響いていた
どういうことか分からずに呆然とするエアスピネルの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「スピネル、レースだ、早く行くぞ」声の方に振り返ったエアスピネルは目を疑った
「で・・・ディーマジェスティ？」「なんだスピネル、居眠りでもしてたのか？」
「ま・・・マカヒキ？」「なんだスピネル、かってにマカヒキを引退させやがって」
「サトノダイヤモンド・・・」　エアスピネルは半分パニックになりながら掲示板を見上げた
1番：ディーマジェスティ　2番：マイネルハニー　3番：マカヒキ　4番：レインボーライン　5番：エアスピネル　6番：アグネスフォルテ　7番：ロードクエスト　8番：サトノダイヤモンド　9番：マウントロブソン　10番：スマートディオン　11番：アジュールローズ　12番：リオンディーズ　13番：レッドエルディスト　14番：ヴァンキッシュラン　15番：イモータル　16番：ブレイブスマッシュ　17番：プロフェット　18番：プロディガルサ
暫時、唖然としていたエアスピネルだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ！」
鞍上から鞭の激励を受けて、ゴール板へ全力疾走するエアスピネル、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・