- 1二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 22:41:42
- 2二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 22:42:21
ほう
続けてくれ - 3二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 22:51:27
戦場はすでに地獄を超えていた
キヴォトスの空は「色彩」とは異なる、さらに根源的な絶望の色――虚無の黒に染まっていた
目の前に聳え立つ敵は、これまで私たちが相手にしてきた「予言者」や「聖徒」といった概念すら生温く感じるほどの…純粋な破壊の権化
モブ「うあああああっ!!」
ネル「チッ、硬すぎるだろコイツ……!」
悲鳴と怒号が交錯する
ミレニアムの美甘ネルが、その小柄な体躯からは信じられないほどの火力で突撃するが…敵の防壁に弾き返される
トリニティの剣先ツルギが狂乱のままに暴れるも…再生能力が彼女の攻撃速度を上回っていた
あのアビドスの小鳥遊ホシノですら、盾を構えながら後退を余儀なくされている
聖園ミカの拳も…アリスの光の剣も…決定打には至らない
ヒナ「はぁ、はぁ……私も、もう弾切れか……」
私の愛銃『終幕:デストロイヤー』の銃身が焼き付き、悲鳴を上げている - 4二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 22:53:30
もうすでに限界だった…全員が、死を覚悟したその瞬間――
敵の腕が、理不尽な速度で伸びた
その矛先は、前線で傷ついたムツキを庇おうとした…1人の生徒に向けられていた
ムツキ「――アルちゃん!!」
ムツキの叫びが響く
便利屋68の社長、陸八魔アル…彼女は決して最強の武力を持つわけではない
だが、彼女は逃げなかった
社員を守るために、その身を晒したのだ
ズリュッ。
嫌な音が、戦場の喧騒を切り裂いて鼓膜に届いた
キヴォトスの生徒が持つ「神秘」による肉体保護、それすらも貫通する「概念的な死」を纏った一撃
それが、アルの左胸――心臓を、正確に貫いていた - 5二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 22:58:00
カヨコ「え……?」
アルの口から、大量の鮮血が溢れ出す
彼女のトレードマークである不敵な笑みを作る暇もなく、その身体は糸が切れた人形のように崩れ落ちた
ハルカ「アル様……? 嘘、ですよね……?」
ムツキ「アルちゃん! ねえ、冗談でしょ!? 起きてよ!」
ハルカが半狂乱で駆け寄り、カヨコが蒼白な顔で止血を試み、ムツキが必死に揺さぶる
だが、私には見えてしまった
陸八魔アルの頭上に浮かぶ、あの特徴的な茨のようなヘイローが…ノイズ混じりの音を立てて明滅し――
そして、砕け散るように消滅したのを
ヒナ「そんな……」
私の口から、絶望が漏れた
キヴォトスの生徒にとって、ヘイローの破壊は「死」を意味する
先生が呆然とアルを見つめ…膝から崩れ落ちるのが見えた
あの先生が…希望を失った顔をしている
終わった、何もかもが… - 6二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:02:14
絶望的な静寂
敵は動かなくなったアルにはもう興味がないと言わんばかりに
次の標的――泣き崩れるハルカたち便利屋メンバーへと矛先を変える
ハルカ「あ、あぁ……アル様、アル様……!」
カヨコ「逃げて! ハルカ、ムツキ!」
カヨコが叫ぶが、彼女の手も震えて銃を握れていない
私が「大人のカード」を取り出そうとするが…指先が冷たく、力が入らない
生徒を死なせてしまった…その事実は、私の心を完全に折っていた
敵の巨大な腕が振り上げられる
万事休す…誰もが目を背けた、その時だった
――ダァァァン!! - 7二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:04:04
乾いた、しかし重厚な銃声が響き渡った
どこからだ? 救援か?
いや、違う…その弾丸は振り下ろされようとしていた敵の腕を正確に撃ち抜き…その軌道を逸らした - 8二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:06:39
全員の視線が、銃声のした方角へ釘付けになる
そこには…血の海に沈んでいるはずの――陸八魔アルの右手があった
死してなお…その手は愛銃『ワインレッド・アドマイアー』を固く握りしめ、銃口は正確に敵を捉えていた
「嘘……だろ……」
誰かが呟く
死んだはずだ
ヘイローは消えたはずだ
心臓は貫かれたはずだ…と - 9二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:11:05
だが、次の瞬間 世界が反転する…
キィィィィン……ドクンッ!!
空間がきしむような音と共に、消滅したはずのアルのヘイローが…虚空から再構成される
最初は頼りなく点滅していたそれは…瞬く間に強烈な真紅の輝きを放ち、安定していく
いや、以前よりも禍々しく、それでいて神々しい輝きを帯びている
周囲に漂う「色彩」や「神秘」の残滓が…渦を巻いてアルの身体へと吸い込まれていく
まるで時間が巻き戻るかのように…大地に流れた大量の血液が浮き上がり、貫かれた胸の穴へと戻っていく
引き裂かれたコートも、皮膚も、細胞の1つ1つも、見えざる意志によって縫い合わされていく
そして、彼女は立ち上がった
ゆらりと
そう…まるで、地獄の底から舞い戻ってきたかのように - 10二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:14:39
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- 11二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:15:41
ミカ「な、なんなのよアレ……!?」
私は目の前の光景に思考が追いつかなかった
復活したアルちゃんの背中から、何かが噴き出す
それは影のように黒く…革のような質感を持った巨大な翼
バサァッ!
ヒナ「あれはまさか……ゲヘナに伝わる『悪魔化』!?」
ゲヘナの風紀委員長、ヒナちゃんが驚愕の声を上げる
たしか前に古い文献で読んだことがある
ゲヘナの生徒が極限状態で、自身の「悪魔」を受け入れ…根源的な混沌へと回帰する現象
その翼は、見る者を畏怖させる絶対的な「悪魔」の象徴 - 12二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:16:07
これ誰の視点?
- 13二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:17:02
デビルメイクライのデビルトリガー?
- 14二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:18:53
でも、それだけじゃなかった
黒い翼が粒子となって霧散したかと思うと、今度は――
ファサァ……ッ!
目が眩むような純白
アルちゃんの背中から、光り輝く白い羽を持つ…美しい翼が生え変わった
ミカ「あれは……『天使化』? でもなんで、ゲヘナ生のあの子が!?」
私は思わず叫んでいた
あれは私たちトリニティの生徒が、崇高な精神に達した時にのみ現れるとされる伝承上の奇跡…ゲヘナの『悪魔化』とは相反するもの
なぜ、無法者の彼女に? - 15二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:21:44
ヒナちゃんが震える声で解説する
ヒナ「相反する二つの性質……ゲヘナの『自由と混沌』とトリニティの『秩序と慈愛』…本来決して交わらないはずの二つの神秘が、彼女の中で衝突し…融合しているとでもいうの……?」
そして…奇跡は完成する
白と黒の光が交錯し、彼女の背には…右に禍々しい悪魔の翼、左に神々しい天使の翼が同時に出現した
その姿は、混沌でありながら秩序、悪でありながら善
キヴォトスの理を超越した、新たな存在の誕生だった - 16二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:24:44
side ムツキ
「あはっ……! なにそれ、アルちゃん……!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で、私は笑っちゃった
だって、すごすぎるよ…あんなにカッコつけて
ドジ踏んで、でも誰よりも優しい私たちの社長が…今、神様みたいになってるんだもん
アルちゃんは、コートの裾をバサリと翻す
その瞳は、いつもの慌てふためく様子なんて微塵もない
冷徹で、それでいて熱い…ハードボイルドな光を宿している
アルちゃんから放たれる「圧」――カリスマと呼ぶにはあまりに強大な波動にさっきまで私たちを殺そうとしていた最強の敵が、恐怖で足を震わせて後ずさりしている - 17二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:30:17
アルちゃんは愛銃をカチャリと構え直して…静かに、しかし戦場全体に響き渡る声で言った
アル『――私の大事な社員を、傷つけるじゃないわよ』
その一言が放たれた瞬間…アルちゃんの背後の空間が歪む
天使と悪魔の翼がはばたき、赤と青のオーラが混ざり合って紫電となる
アビドスの委員長も…ヒナ委員長も…トリニティのお嬢様も…別世界のシロコちゃんも…
みんな、口を開けて見上げている
いまそこにいるのは…ただのゲヘナの生徒じゃない
キヴォトスで一番、自由で…一番、仲間想いな――「無法者(アウトロー)」だ - 18二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:32:47
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- 19二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:34:32
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- 20二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:35:56
どんだけ能力盛っても本体が陸八魔アルってだけでポカやらかすポンコツ確定してそう
- 21二次元好きの匿名さん25/12/04(木) 23:36:05
ヒナ委員長が呆れたように…でもどこか嬉しそうに呟くのが聞こえた
ヒナ「……常識も、神秘の法則も無視して、ただ『理想』だけで世界をねじ伏せる……、陸八魔アルが名付けるなら……そうね、あれは『アウトロー・モード』とでも言うべきものかしら」
ムツキ「アウトロー・モード……くふふ、いいじゃんそれ」
私は涙を拭って自分の銃を構え直した
さあ、反撃開始だよ! 私たちの…最強の社長が戻ってきたんだから! - 22二次元好きの匿名さん25/12/05(金) 06:20:58
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