- 1二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 04:07:09
≪ジュニア編≫
私の彼への第一印象は熱情的な人だった。
『君に人目惚れした。』
14年間生きてきてそんな風に女性を口説く男性は見たことが無かったから、そんなやりとりはテレビドラマの中にだけ存在するものなのだと思っていた。それを現実で聞くなんて───それも自分が言われなんてことは予想していなかった。
私の人生計画にも、あんな言葉を言われる予定やあんな殺し文句を言う殿方と親密になる予定は、含まれてはいなかった。
だから、あの日からずっと私の予定は彼によって狂わされてしまったのだろう。
勿論、あの言葉が私の走りについてだという事は理解している。
まだ20歳とはいえ仮にも教職者が14歳の小娘に異性として一目惚れしたなんて、そんな事がある筈が無い。だから期待なんて少しもしていない。本当に1グラム足りともしていない。
それでも、彼が口にした『一目惚れ』という言葉が内包する熱に私は狂わされてしまったのだ。
契約後、彼はスケジュールに対する私の提案を快く受け入れ、私の能力や素質を日頃から高く評価してくれた。
もちろん意見が別れることもあった。納豆が大嫌いな彼が『そんなもの食べるくらいなら中身より箱を食べた方がマシだね』と言ったときなどは激しい口論になった。
そんな日が続く中で私も少しずつ自分は出来るのでは無いかと自分自身に期待していくようになった。
そして迎えたデビュー戦、結果は6着に敗れた。トレーナーは特に気にした様子もなくすぐに切り替えるように言ってくれたが、掲示板にすら入れずに敗れたという事実は私が抱いていた自信を砕いてしまった。
二戦目の未勝利戦では、無事に初勝利を納めることができた。
その後、三戦目の萩ステークスでは3着。エリカ賞では2着となり、ジュニアシーズンは4戦1勝の成績で終了となった。 - 2クラシック編1章21/09/22(水) 04:07:55
クラシックに入ってから初戦となる京成杯では自身初の1番人気、そして自身初の重賞勝利を達成。
しかし体調管理は徹底していたのにも関わらず体調不良により皐月賞のトライアルレースは全て回避となった。
それでも休み明けにぶっつけ本番となった皐月賞では11番人気ながら3着となり掲示板入りを果たすことができた。
そして自身の目標の一つである日本ダービーを迎えることとなった。
トレーナーさんは相変わらず私の勝利を信じ期待してくれていたけれど、デビューしてから皐月賞までの6戦を踏まえた私に対する関係者の評価は【閃光のようなキレだが閃光のように一瞬で途絶えてしまう末脚頼りの不安定なウマ娘】というもの。
実際、皐月賞では3着だったにも関わらず日本ダービーでは7番人気だったため、不安定で信頼に欠けるという評価が多数派だったのは間違いないだろう。
それに加えて、一つ上の世代でクラシック路線には参加しなかった女帝と言われるウマ娘が傑出して猛威を振るっていた影響もあってか、
ルドルフ会長以来となる無敗三冠を成し遂げた英雄や64年ぶりにティアラ路線からダービーを取った女王のような、新たなスターがクラシック路線から誕生することを強く望まれていた。
そんな空気が蔓延していた中で、末脚頼りの不安定なウマ娘のダービー戴冠を望んでいた人も、その勝利を心から望んでいた人も、きっとトレーナーさんやファルコンさん達のような一部の変わり者だけだろう。
─────充分だ。あの二人が私を信じてくれるのであれば、私は自分を信じて走ることが出来る。例え一瞬しか持たなくても、この末脚を存分に発揮することが出来る。
そうして私は、ダービーを征した─────否、征してしまったのだ。それも史上最高メンバーと期待されていたダービーを。 - 3クラシック編2章21/09/22(水) 04:08:30
クラシックの一つを冠したあの日から、周囲からの私の評価は【不安定だが一発のあるウマ娘】から【世代の顔となるウマ娘】へと変化した。
近年はティアラ路線のウマ娘が台頭するよう日なってきたが、基本的にはその世代の代表となるウマ娘はクラシック、特にダービーを征したウマ娘とイコールになることが多い。
だからファンや関係者が私に世代を引っ張っていく事を期待するのは当然の流れだった。
─────しかし、私は期待に応えられなかった。
ダービー後、一時登録していた凱旋門賞への参戦はトレーナーとの相談の結果断念。
菊花賞トライアルの神戸新聞杯では2着に敗れ、
肝心の菊花賞も筋肉痛によって回避、出走することすらなくファンのクラシック二冠への期待を砕いてしまった。
先輩達と初の対戦となるジャパンCと有馬記念はそれぞれ8着と7着、掲示板に載ることすら出来ずに私のクラシックシーズンは終了した。 - 4シニア一年目編1章21/09/22(水) 04:09:05
新年を迎えトレーナーさんと初詣に赴くために外に出ると、
『ローズキングダムとヴィクトワールピサは菊花賞からの連戦でも女帝やその世代からシニアG1をもぎ取って見せた。
一方でダービーを取ったエイシンフラッシュは菊花賞を回避した上に二戦連続で掲示板外とは情けない。』
『エイシンフラッシュはダービーで燃え尽きてしまった。シニアでは活躍できないだろう。』
そんな言葉が嫌でも耳に入ってきた。
「気にする必要はない」「彼女たちが見事だっただけ」とトレーナーさんは慰めてくれたが私は焦燥を拭うことが出来なかった。
心に靄を抱えたまま参戦した春シニア三冠、
初戦の大阪杯では3番人気で3着。
続く天皇賞(春)は同じく3番人気で2着。
最後の宝塚記念ではまたも3番人気で3着。
……1着こそ取ることは出来なかったもののシニアに入ってから三戦連続で3着以内。掲示板に入ることすら出来なかった昨年末に比べて前進している事を確認できたため、心の靄は薄れ、気持ちも少し前向きに戻すことが出来た。これなら秋シニア三冠では1着を目指せるのだと。 - 5シニア一年目編2章21/09/22(水) 04:09:38
そうして迎えた秋シニア三冠───結果は私の自信を砕くには余りあるものとなった。
天皇賞(秋)では6着と昨年の有馬記念以来の掲示板外、続くジャパンCでも8着と更なる順位の低下。
シーズンを締めくくる有馬記念ではなんとか2着に入ることが出来たけれど……この第56回有馬記念を征したウマ娘こそが私の自尊心を砕いてみせた。
"英雄"ディープインパクトに続くクラシック三冠ウマ娘
"女帝"ブエナビスタが衰えたトゥインクルシリーズに新たに君臨し次代の覇者となるであろう金色の暴君
そのウマ娘の名は オ ル フ ェ ー ヴ ル 。
フランス語で金細工師を意味する彼女の強さは、『ブエナビスタが衰えた隙に二つ目のGⅠレース獲得』などという私の甘えた希望を容易く打ち砕いてみせた。 - 6シニア一年目編3章21/09/22(水) 04:10:09
定説ではウマ娘は本格化してから十数ヵ月ほど急成長を遂げ、その後は更に十数ヵ月ほど全盛期を保った後に緩やかに劣化していく事が多いらしい。
この説を信じるのであれば、これからシニア二年目を迎える私はもう全盛期を終了して以降は劣化していくだけの可能性が高いということだ。
他方で件の暴君は下手をすればまだ成長中の可能性すらある。
現時点であちらの方が上なのに、今後は差が開いていくだけなんだから勝ち目なんて有る筈がない。
もし可能性があるとすればオルフェーヴルさんが【コースを大きく逸走する】【ゲートで立ち上がる等して出遅れる】というありえないミスをやらかした上で私が他のウマ娘に先着するという奇跡が起きた場合となるけれど────動物ならともかく人類がそんなミスをする筈がない。
なので現実的に考えれば体調不良や故障、もしくは海外遠征などを理由に出走しないレースに全力を尽くすという方法────これも無意味な話だ。
こういう事は世紀末覇王以外には常勝してみせたメイショウドトウさんのような存在のみに許された理論だ。
今までにブエナビスタさんやオルフェーヴルさんに続く圧倒的二番手だった期間なんて存在しない私には無縁の理論だ。
そもそも絶対強者が不在のレースなんて私以外の人も全力で狙いに行くに決まってる。
そう理解している筈なのにそんな考えから抜け出せないのだから私はもうレース開始前から精神的に敗北してしまってるのだろう。 - 7シニア二年目編1章21/09/22(水) 04:11:12
シニア二年目は海外──ドバイWCから始まった。
トレーナーさんの『気分転換に海外旅行でも行こうか』なんて提案に乗せられてしまったけど、確かに日本のウマ娘が居ない(正確にはファルコンさんも違うレースのために同行してた)環境で伸び伸びと走ることでリラックスすることが出来た。ただ結果は6着だった。
昨年度の秋から冬にかけては負けが続いていたせいで落ち込み過ぎてしまっていた。『このまま衰えて彼の一目惚れした末脚が発揮できなくなったらどうしよう』なんて考えまで過っていたのだから我ながらどうかしていたんだと思う。
けれど、長い休息期間と海外遠征のお陰で精神的にリセットすることが出来た。この調子なら次の目標である宝塚記念の勝利をトレーナーさんと共に目指していける筈だ。
そうして6月に行われた第53回宝塚記念。
1着は上がり最速を見せたオルフェーヴル──────────────────────────────そんなことはもうどうでもいい。
人のことなんて今は気にする必要はない。問題は私だ。
上位5人にすら入らない上がり36.4秒というタイム。
最終順位は6着、それも5着の選手とは大きく差をつけられている。
……思えばかつてのレジェンドウマ娘達も、シニア二年目の夏からは衰えを隠せなくなっていた。
ならば、彼女たちよりはるかに格下の私がこれ以上GⅠ級の実力を維持できる筈がない。
おそらく私に残されたチャンスは天皇賞(秋)から始まる今年の秋シニア三冠が最後となるだろう。
つまり、もうブエナビスタやオルフェーヴルのような強豪が不在になるタイミングを狙うなんて悠長な事を宣う余裕は無い。
現実を認識すると、かえって頭が冷静になった。
もう猶予はない。ならば私の名前の通りに、一瞬、けれど閃光のように駆け抜けるのみ。
そう覚悟を決めた私はダービー直後の神戸新聞杯以来となるGⅡ参戦となった毎日王冠への出場を決めた。
狙いは天皇賞(秋)、
そうして迎えたレースの結果は────────────────────────────────────────────────9着。自己最低順位を記録した。 - 8シニア二年目編2章21/09/22(水) 04:11:50
「───────────これはどういうつもりだフラッシュ」
「質問に質問を返して申し訳ありませんが……私にはトレーナーさんの質問の意図がわかりません」
「ふざけないでくれ!今のタイミングで引退届けを提出するなんて何を考えてるんだ!?」
トレーナーさんの怒声が飛ぶ。思えばこの人の怒鳴る姿を見るのは初めてかもしれない。
ただ……彼の困惑は当然だろう。夏から共に天皇賞(秋)を目指していた担当がレースの半月前に引退を表明したのだから。
「……すまない、感情的になってしまった……でも理由を教えてくれ」
「昨日の毎日王冠で自分の限界を感じたからです」
「それが理由か……」
目を瞑る。彼が真剣に考え事をするときの癖だ。おそらく今は私を説得する方法を考えているのだろう。
「これが理由では納得できませんか?」
「……昨日のレースは確かに残念な結果に終わってしまったのは事実だ…でも即引退を決めるほどではないだろう」
確かに彼の言うことには一理有るかもしれない……でも
「勝ち目の無いレースに参加するのは無意味では無いでしょうか」
「……なに?」
「トレーナーさんは以前、私がブエナビスタさん達を避けてGⅡレースに参加しようとしたときに私を諭してくれました」
「……続けて」
「あのときはトレーナーさんの言葉に納得してGⅠに参戦しました…でも今はあの時とは状況が違います」
「具体的には……?」
……本当は言いたくない。でも言わなければならない。認めなければいけない。
「……………………私にはもうGⅠ級の実力はありません」
「──────」
自分の言葉が刃のように心臓に刺さる。
「今の私にGⅠを戦う資格はありません」
「────────」
見えない血が流れ全身が酷く痛む。
「何より……衰えてしまった私には、貴方を縛り付ける、価値がありません、だって」
「─────────」
視界が歪む。声が震える。それでも私には、この言葉を言い切る義務がある。
「貴方が一目惚れしてくれたエイシンフラッシュの末脚はもう死んでしm「言いたいことはそれだけかな?」った…………え?」 - 9シニア二年目編3章21/09/22(水) 04:12:54
私の一世一代の弱音(こくはく)を妨害される。
「君の言いたいことはよく理解した。その上で反論させてもらうけど構わないね?」
「……それは……構いませんが……」
「まず一つ目───君にはまだGⅠを勝つ力は残っている」
「なっ……!?私の話を聞いてなk「黙って聞きなさい」………………はい」
唇に指を当てられ有無を言わさず黙らされる。まるで先生にお説教をされる子供みたいな気分になってしまう。
「二つ目に君の末脚が衰えたという点───これはまあ事実と言えば事実だ」
「っ……!」
心臓が痛みを覚える。自分で言っておきながら心の底では彼にだけは否定してほしかった自虐を肯定されたことに傷付いてしまう自分に嫌気がする。
「でもこれは些細な問題だ。フラッシュが衰えたのは末脚のキレではなく持続時間だからね」
「……え?「ああ、あと末脚を使う頭もか」
「なっ……!?」
グミで喜ぶような大人に突然『お前は脚じゃなくて頭が劣化したんだ』だと罵倒され冷静さが吹き飛んでしまった。
「そして最後の訂正なんだが」
「なんですか!」
トレーナーさんが何か言っているが今はそれよりバカだと言われたことを撤回させなければ
「俺が一目惚れしたのは脚だけではなく君という人間そのものだよ」
「……………………………………………………はい?」
???????????????
「俺が一目惚れしたのは君という人間そのものって事だよ」
トレーナーさんはなにを言ってるのでしょうか?
「……理解できません、そんなことあるはずがない」
「俺はフラッシュを愛してるよ」
「……………………そんなことあるはずがn「愛してる」
「…………………ありゅはずg「ich liebe dich」
「……ありゅh「Lass uns heiraten」
「…………………………………………」
「返事を聞かせてもらえるかな?」
「…………………………ja gerne……」
「ありがとう、快い返事を貰えて嬉しいよ」 - 10シニア二年目編4章21/09/22(水) 04:13:34
「さてレースの話に戻ろうか」
「え…………?」
「私とてはフラッシュが天皇賞(秋)に勝つ可能性は十分にあると考えているよ」
「あの………………?」
「フラッシュは東京レース場と相性が良いみたいだし」
「トレーナーさん…………?」
「何よりオルフェーヴルが出ないからね
まあルーラーシップやダークシャドウは出るし、クラシック世代のフェノーメノとかカレンブラックヒルも要注意なんだけど…………聞いてる?」
「…え………………トレーナーさん…さっきの話は?」
「なんか分からないことでもあった?」
「いや……あれで終わりなんですか?」
「うん」
………………この人はさっき自分が何を言った理解してないのだろうか?
「まあ、なんだ、俺を信じてもう一回だけ走ってくれないか?」
不安も絶望も全てこの人のせいで吹き飛んでしまった。今の私の心は不快ではない困惑と幸福感に満たされている。
「もう…………負けても勝っても責任を取って下さいね、トレーナーさん」
「もちろん取らせていただきますとも」
……あと一度、あと一度だけ、私が愛するこの人が愛してくれる私を信じてみよう - 11シニア二年目編5章21/09/22(水) 04:14:06
天皇賞(秋)当日、泣いても笑っても今日のレースで私のGⅠレースは終わる。
『お、エイシンフラッシュだ、パドック見てると勝ちそうなんだけどな』『どうせまた見た目だけだろ』『見た目だけは良いから五番人気になってるけど、あの子はもう終わった選手だよ』『まーめちーーん』
パドックに入ると観客の言葉が耳に入ってくる。気にしない、いつものこt……いや、一つ聞きなれない単語が混ざっていた気がする。
気になってパドックを見回してみると
「豆ちんって呼ぶなバカトレーナー!!!」
「ジャススススス…あそこの葦毛の子は綺麗ですなー眼福眼福……お、あっちにも葦毛が…ってなんだシップか……」
…………噂通り、今年のクラシック世代は中々個性的な面子が揃ってるらしい。観客席にも焼きそばを売ってるクラシック二冠ウマ娘が見えたけれどたぶん他人の空似だろう。
意識を切り替えるために観覧席に視界を向けると、尊い御方が着席なされているのが見える。色々な事情で今年は七年ぶりの天覧競馬になったのだとか。
『フラッシュの家は騎士の系譜なんだろう?────なら自分が住む国の皇帝の御前で情けないレースなんて見せられないな』
トレーナーにそう焚き付けられた事を思いだす。
思い返せば最近は勝ち負けを意識しすぎていた。だから酷いレースをしてしまった面はあるだろう。だから今日は勝ち負けを忘れて、騎士として、あの方々に捧げるために恥じないレースをしよう。 - 12シニア二年目編5章21/09/22(水) 04:14:48
『今日は2番が大きく逃げてそれを集団が追う展開になると思うけど……枠的にも外から差すのは難しいと思うんだよね』
『ではどうしますか?』
『難しいことを言うけど予定通りに走れるかい?』
『愚問ですね、もちろん実行して見せますとも』
「差を詰めてくるダイワファルコン、カレンブラックヒル、内を狙って……12番のエイシンフラッシュ!エイシンフラッシュ内ラチ沿いから追い込んでくる!残り200を通過した!更にはフェノーメノ!大外からはダークシャドウも追い込んでくるが!最内から12番のエイシンフラッシュ!!エイシンフラッシュ!!フェノーメノ二番手!エイシンフラッシュ!!ゴールイン!!!ダービーウマ娘エイシンフラッシュー!!再びこの府中で輝きました!!!!」
「直線迷わず内を突いて!エイシンフラッシュ!2年前のダービーウマ娘が連敗ストップ!!この天皇賞の舞台で再び輝きを取り戻しました!!!立ち時計は1分57秒3!クラシック世代の4番フェノーメノもよく差を詰めて二番手まで上がりましたが!シニアの意地に押さえられましたっ!!そして6番ルーラーシップが追い込んでの3着!!ダービーを勝った後、低迷が続いていましたエイシンフラッシュ、中々勝利まで手が届きませんでしたが、その連敗は12まで伸びていました、しかしそれをストップ!ダービーを勝った!この府中の舞台で再び!今日は内を突きまして!ラチ沿いからグングン伸びて!先頭でゴールを駆け抜けました!!」
────閃光の勝利を称える実況が、全国に響き渡った。 - 13シニア二年目編6章21/09/22(水) 04:15:16
心臓が張り裂けそうな中で掲示板を見る、そこには確かに私の番号が写されている。
視界を僅かにずらすと両陛下がちらりと見えた。 疲労困憊で頭がろくに回らない中で、身体だけが無意識にその所作を示していた。
「片ひざを突きまして深々と御辞儀をしましたエイシンフラッシュです。」
────場内にはただ歓声と拍手だけが鳴り響いていた。 - 14おまけ後日談21/09/22(水) 04:16:05
目を覚ます。懐かしい夢を見ていたようだ。
「あれ?ごめん起こしちゃったかな?」
「……私にナニをしていたんですか?」
「や、耳を撫でていただけだよ?ホントダヨ」
ベッドの傍らに居る人にジトリと視線を向けると露骨に慌てている。耳を撫でる以上のことをしていたんだろう。
「それにしても夢を見てたのかい?そんなような寝顔だったけど」
「……そんなに楽しそうにしてましたか?」
「いや、君が涎垂らすなんて滅多にないことしてたから」
「!!?」
「それで録画してたら起きちゃったんだよね」
「そんな写真消してください!今すぐに!」
冗談じゃない。そんな写真を残してファルコンさんに見られでもしたらウイニングランを中断して最敬礼をして怒られた時のように一生ネタにされる。
「可愛かったんだけどね」
再び彼をジトリと睨み付ける。時計を見ればもう起床時間になっていた。ケーキ屋の朝は早い。
「時間です。今日も1日頑張りましょう mein liebster♥️」 - 15二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 04:17:15
乙
- 16121/09/22(水) 04:18:27
終わり
2時間で書いた文を読んでくれてありがとう
シニア二年目とか衰えとかオリ設定が多くてごめんよ
エイシンフラッシュ……中2で留学&デビュー
フラトレ……中卒後即トレーナー学校に入学、フラッシュの6歳上
というイメージです - 17121/09/22(水) 04:20:23
レース結果は全て史実準拠です
- 18121/09/22(水) 04:22:33
- 19二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 04:31:23
何文字だよこれ……
- 20二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 04:32:31
なぜ人が多い時間に投稿しなかったのか……
- 21二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 05:08:44
史実のエイシンフラッシュってダービー以降は秋天まで不遇なんだよな
1つ上はブエナで1つ下はオルフェ居るし秋天の頃からは2歳下のゴルシやドンナや豆ちんが台頭してくるし - 22二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 06:12:38
史実だと不遇だから三冠バにするね…
(でも育成的に菊花賞に出るメリットないんだよな…) - 23二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 06:41:48
これ好きだったので嬉しい
- 24二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 06:53:25
ずっと待ってた…ありがとう…
- 25二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 09:05:39
競走馬エイシンフラッシュの『見た目だけは勝てそう』度は日本一だと思う
ドバイの王族すら騙されたレベル - 26二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 10:17:41
和訳かけて気付いたけどここでプロポーズしてるの草