シヴァレリア王国宰相記

  • 1アイアン・ロータス21/09/22(水) 19:45:48

    その国には黒翼の犬がいる

    それは『番犬』であり『猟犬』であり

    『怪物』である

    それは『私』である

    ────シヴァレリア王国宰相記 端書き

  • 2アイアン・ロータス21/09/22(水) 19:48:26

    ・・・二十世紀中盤 ソビエト連邦及び社会共産主義が世界を飲み込もうとしていた頃・・・

  • 3アイアン・ロータス21/09/22(水) 19:50:44

    シヴァレリア王国 針葉樹林地帯
    首都 シヴァレリアヌス近郊

  • 4アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:03:45

    にっちもさっちもままならない吹雪である。それがここに来て大一番であった。

    (・・・真昼で本当に良かった。)

    ズリャーノビチは心からそう思った。左から叩きつけられる雪の嵐はますます強くなるが、まだ前の景色・・少なくとも前の兵士は見える。彼も自分と同じ様に、寒さと吹雪に耐えながら右肩に背負ったライフル銃を担いでただ歩き続けていた。

  • 5アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:11:02

    この数日間、ただ険しい山道と聳え立つ林の中を歩いてばかりであった。体は疲れるばかりであるが、頭は退屈でもある。ズリャーノビチは村の我が家と麦畑、老いた母親と可愛い妹を思い浮かべた。

    (これで何度目だろう?)

    いつもは軍に徴兵される前の団欒を懐かしんでいたが、何度も繰り返す内に味わいも無くなっていた。とするとやはり、帰りたいのだろう。彼の願望といえばそんな所だった。

  • 6アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:18:26

    彼は戦争が好きでは無い。かといって嫌いとも言えない。自分の祖国の戦勝がデカデカと載った号外は読んでて胸がすくし、その分暮らしも良くなった・・・・かは分からないが、そうなるだろうと思っている。根拠は無くともだ。しかしこうして自分が戦争に行くとは夢にも思わなかった。

    しかし全てが平等であるこの国では何もおかしくない。現に村の男達の中に徴兵されたヤツも居るじゃないか。そう思って不安を紛らわそうともしたが、気分は良くならなかった。

  • 7アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:19:50

    ・・・吹雪はまだ強くなる。

    ・・・・

    ・・・・・?

    ・・・・行進が止まった。

  • 8アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:28:57

    「───ッ!伝令───ッ!」

    前の方から声が聞こえる。その声は段々と近づいてくる。

    「指揮官から伝令────ッ!よく聴け我らがソ連軍兵士供ッ!これより先に敵国シヴァレリア王国首都、シヴァレリアヌスに入るッ!今夜突撃するのだッ!休息をとり、それまでに万全の体制をとれ!」

    軍馬に乗った伝令を務める兵士が真っ白な前から現れ、ズリャーノビチを通り過ぎて後ろに消えていった。

    「伝令──ッ!これより先に────」

    その少し後も伝令の声はよく響いていたが、やがて止むとまた吹雪の音が周りを支配した。

  • 9アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:33:10

    (────いよいよ・・・か。)

    ズリャーノビチは身震いした。途端に体に鳥肌が立った。

  • 10アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:34:50

    第1話 吸血鬼の国

  • 11アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:42:08

    (本日はここまでです!感想等があればどうぞ!)

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 20:43:30

    なんのコピペ?

  • 13アイアン・ロータス21/09/22(水) 20:44:19
  • 14二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 21:45:12

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん21/09/22(水) 21:51:36

    期待

  • 16二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 06:29:20

    保守

  • 17二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 15:21:55

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 22:42:43

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:36:41

    保守

  • 20二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 07:52:58

    保守

  • 21二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 15:21:15

    いいですね。情景が目に浮かぶようです。

  • 22二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 22:59:28

    シヴァレリア王国よりシヴァレリアヌスの方が古いんだろうか

  • 23アイアン・ロータス21/09/24(金) 23:06:10

    >>22

    (シヴァレリア王国が建国して、シヴァレリアヌスが首都としてできたという順で考えています。)

  • 24二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 10:57:58

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 17:35:25

    世界史の資料集で「シヴァレリア王国は独特の地形から他国から侵攻されにくかった」みたいな説明文があって、その裏には彼の活躍があった…と思うとワクワクしますね!!

  • 26二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 21:01:12

    このレスは削除されています

  • 27二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:27:40

    アイアン・ロータスがどう戦うのか気になる

  • 28アイアン・ロータス21/09/26(日) 07:30:02

    (このスレは小説スレで安価は今の時点では無いので、時間帯とか関係なく不定期更新にするつもりです。)

  • 29二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 10:19:32

    文の感じが好み。

  • 30アイアン・ロータス21/09/26(日) 15:49:18

    王城 深夜0時 日没まであと約3時間

  • 31二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 18:47:29

    これは相当緯度が高い地域何だろうか

  • 32アイアン・ロータス21/09/26(日) 18:54:57

    中央に棺。黒い木棺ではなく白い石棺。
    部屋の広さは半径3mの円形。
    高さは8m。
    壁や床は石畳。
    窓は6m程上に1つだけ、ブロック程の大きさ。

    ・・・信じられないであろうが、これは独房や幽閉部屋でもなく、『寝室』である。

  • 33アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:18:30

    部屋には2人がいた。1人は石棺で『起きている』モノ。もう1人は部屋の端で座る老人であった。

    老人は白いボサボサの髪に白い髭、両手で杖ではなく火かき棒を握り、顎を乗せながら曲がり腰で座っていた。黒い汚れで古びた服は、老人が長い間この部屋で、この『仕事』を続けていた事を表していた。

  • 34アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:30:31

    ・・・沈黙が続く。部屋の光源は老人の側に置かれている、蝋燭のランタンだけ。しかしこの雰囲気の原因は寒さでも、暗さでも、寂しさでも無かった。

    「・・・・・ビルギッソン。」

    「何じゃい?」

    「・・・何度もすまないが、見張り塔の『パイプ』を開けてくれないか?」

    「・・・やはり・・・敵の様子かの?」

    「ああ・・・気になってね・・・本当にすまないが・・」
    「うんにゃ、お易い御用よ。この老体でも国のお役に立てるなら、これぐらい・・・」

    棺の中からの声と老人はこんな風に話し、古びた木の椅子からノッソと老人・・『ビルギッソン』は立ち上がった。

  • 35二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 19:42:03

    良い

  • 36アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:47:01

    部屋には「パイプ」が確かにあった。しかし驚くべきはその数だ。部屋の壁中に埋め込まれた無数のそれが絡み、曲がりくねり、そこから部屋の中央に向かって壁から飛び出した口があちこちに覆っていた。

    (作者でーす。分かりますかねー?この部屋の形とか見た目とか。分かりにくいですかねッー?)

  • 37アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:47:41

    >>31

    (ポーランド辺りですね。この国の位置は。)

  • 38アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:47:52

    >>35

    (ありがとうございます!)

  • 39アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:50:24

    ・・・その光景はまるで石棺に向かって、壁から現れた無数の蛇が口を開いて向かっている様であった。

  • 40アイアン・ロータス21/09/26(日) 19:50:52

    >>36

    (覆っていた→広がっていた)

  • 41アイアン・ロータス21/09/26(日) 20:03:52

    ビルギッソンは数歩歩き、無数のパイプに迷う様子も無く、直上のあるパイプを見る。そして両手の火かき棒を挙げて口の「ひっかけ」にパイプのフックをかけると、少しスライドさせてパイプの口を開けた。

    ・・・ヒュゥゥゥ・・・ォォォォ

    開けたパイプからは風の音が聞こえる。どうもこのパイプの先は外に繋がっているらしい。

  • 42アイアン・ロータス21/09/26(日) 20:14:51

    「・・・・どうだ?」
    棺の声が喋った。開いたパイプで繋がった向こうに話す。

    〘依然として動きはありません。ロータス様。攻めてくる様子は全く・・・ただ・・・〙
    パイプから若い男の声がした。

    「ただ?」

    〘煙と明かり・・・火の明かりが一瞬見えました。この吹雪ですのでそれ以降は・・・。あ。まだ吹雪は続いています。〙

  • 43アイアン・ロータス21/09/26(日) 20:47:53

    「・・・恐らく、それは昼飯だ。缶詰のスープか何かを煮詰めてるのだろう。」

    〘アッ!ではその隙に攻めれば!〙

    「イヤ、敵もその考えには用心しているだろう。伏兵を隠してるかもしれん。早まってはダメだ。」

    〘そうですか・・・それでは見張りを続けます。〙

    「ありがとう・・・。」

    「ビルギッソン。閉じてくれ。」

    ビルギッソンはまた火かき棒を持つと、そのパイプを閉じた。静寂が戻る・・・

  • 44二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 20:48:50

    このレスは削除されています

  • 45二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 20:57:15

    このレスは削除されています

  • 46アイアン・ロータス21/09/26(日) 21:16:58

    「ビルギッソン。」
    「今度は何処を?」
    「王と話したい。」
    「!・・・・分かったわい。」

    ビルギッソンは今度は火かき棒を椅子に置き、手に届く高さにある最も大きなパイプを開けた。

    〘・・・ロータス。何だ?〙

    「王よ。敵が・・ソ連軍がこの首都まで迫りました。」

    〘・・・・・〙

    〘迎え撃つのだな。今すぐにでも我が兵達は出撃できるぞ。〙
    「いえ、私もそう思っていたのです。到着したらすぐ攻めてくるものだと・・・しかし、どうも違うようです。」
    〘何?〙
    「・・・恐らく敵は『日没に』攻めてきます。」

  • 47アイアン・ロータス21/09/26(日) 21:17:17

    >>43

    (昼飯→夜食)

  • 48二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 21:34:24

    決戦前夜って感じでワクワクする

  • 49アイアン・ロータス21/09/26(日) 21:41:37

    〘どういう訳だ?〙
    「王よ。この国の殆どが険しい山岳に囲まれ、故に『天然の要塞』の役目を果たしている事は知っていますね?」
    〘ウム。だからこそ、この王国は今日まで他国に侵略されなかったのであろう。〙
    「それでも敵はそんな中を進まなければなりません。途中には村々や畑も無いので、略奪による食料確保や休憩も出来ません。」
    〘ここまで来たのは王国の開闢以来初めてではないか?ロータス。〙
    「ええ。第三帝国を目指したドイツ軍、ナポレオン率いるフランス軍もとうとう根を上げて撤退しました。しかし・・ソビエトは我がシヴァレリア王国と同じ、雪国です。寒さには強い・・」

  • 50アイアン・ロータス21/09/26(日) 21:42:04

    >>48

    (ですよねーー!こういうの好きなんですよ私ィー!)

  • 51アイアン・ロータス21/09/26(日) 21:53:52

    「ですのでここまで来る事も、迎え撃って私が戦える夜まで持ちこたえる持久戦になると予想しました。兵達にもそう告げました・・・」
    〘・・・敵は今何を?〙
    「晩飯を食べている様です。」
    〘何!?敵地で飯を!?〙
    「こちらに高射砲やミサイルなど、高度な兵器が無いのを知っての行動です。生意気とは思いますが、私が敵だったらそうします。『姑息』は『合理的』です。」
    〘ウウム・・・待てよ。となると、敵はいつ攻めるのだ?〙
    「日没です。暗闇に紛れて・・・こちらの油断を誘って今夜!仕掛けてきます。」

  • 52アイアン・ロータス21/09/26(日) 21:59:09

    「食事と少しの仮眠をとって・・・一気に攻め滅ぼす魂胆です。」
    〘・・・・・〙
    「ですが、この行動は向こうにとっても予定されていた作戦ではないでしょう。」
    〘元々の作戦は?〙
    「それは─────」

    場所は変わって、シヴァレリアヌス付近のソ連軍歩兵団

  • 53アイアン・ロータス21/09/26(日) 22:09:52

    歩兵達が険しい道のりを超えてやっとまともな食事が出来たのは、もう5日ぶりだった。煮詰められた大きな釜に向かった行列の中にズリャーノビチはいた。ここまでに飢え死にして死んだ同胞が、邪魔になるからと崖下に投げ捨てられた光景を何度も見てきた。いつか自分もああなるのではと恐怖し、飢えと寒さに耐えてきたのだった。

    やっと彼の番が周り、持ってたアルミの飯盒にスープが入れられ、渡された。すぐさま木陰に座り込んでフーフーと息で熱さを冷ましながら、スープを飲み込む。

    ・・・酷い味だった。

  • 54二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 22:11:07

    このレスは削除されています

  • 55アイアン・ロータス21/09/27(月) 06:10:01

    そのスープの具材といえば、見えるものだとブヨブヨ浮いた豚の脂と・・僅かにある紫色のビーツのカス。味は嫌に塩辛く、味や旨みとかを押し殺している。しかしこれで「まとも」なのだ。酷かった時はカチカチに凍った小さなパンを唾液で溶かしながら、ネズミみたいに食っていた。

  • 56アイアン・ロータス21/09/27(月) 06:16:07

    不味い味に耐えながら、少しでも胃に何かを詰めておこうと飲んでいく。
    (・・・これが最強と言われているソ連軍?どこかだ!まともな飯も食えやしないのに!)
    味や不満も押し殺し、ただひたすら食う。あと数時間後には、自分たちは銃を持って突撃する運命なのだから・・

  • 57アイアン・ロータス21/09/27(月) 10:32:22

    >>49

    (寒さには強い→寒さには強く、山道にも得意です。)

  • 58二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 14:20:23

    寒い土地じゃロクなもの取れないし仕方ない

  • 59アイアン・ロータス21/09/27(月) 20:15:57

    (もうこのスレッドを保守する必要は無いぞ!詳しくは下のスレを見てくれ!)

  • 60アイアン・ロータス21/09/27(月) 20:16:07

オススメ

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