「独白 独り言 自己満足」

  • 1二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:24:11

    昔、間桐慎二という少年がいた。

    ─────私のクラスメイトの話だ。


    私は中学1年生の時から冬木に住んでいて…中学2年生の時と、高校2年生の時私は彼と同じクラスに所属していた。

    クラスメイトだからといって隣の席だったり、よく話したりしたわけじゃない。

    ただそれなりに整った顔立ちと、たまにイライラしているのを除けばまたまたそれなりに良い外面と勉強も運動も出来るという事もあってよく女子にも男子にも囲まれている彼を、私が遠巻きに見ていただけという話なのだ。

    彼は普通なら勉強も運動も出来て、友人も選び放題なとても満たされている環境にいるはずなのにたまに見せる…とても遠くを見ているような、どこまでも虚無を探してるような目をするのが印象深くて私は彼に対して恋愛感情があるわけではなかったが…いつの間にか彼を少しだけ目で追うようになっていた。

  • 2二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:24:39

    中学の時の間桐はよく同じクラスの衛宮という少年と仲良くしていて、確か体育祭やら学校行事とかも彼と過ごしていたように思える。中学の時の思い出の中での彼はこの衛宮と過ごす時の間桐はいつもより生き生きしてるような気がした。

    3年に入ってからは別のクラスに入り、結局部活やら高校受験なんかもあって間桐を見かける事はなくなった。

    別にそれ自体に思う所はなかった、なんだかんだ彼は一生変わらないままの人間だと、彼の瞳はきっとたまに虚無になるタイプの人間だと私はきっと心の底でわかっていた。…それとも、
    そう思いたかったのかもしれない。

    高校の入学式で青味がかった髪の彼を斜め前の席に彼が座っているのを見つけた時は流石にちょっとびっくりしたけど。

    同じ高校に入ったからと言って奇跡的に絡み初めるようになるわけではない。

    元々間桐は暇な私の純粋な観察対象でしかなく、下心のない(…)私と、本質的には周りに興味のないであろう彼の線が交わるはずもなく。私は2年生に進級した。

    同じクラスになった彼は相変わらず女子やら男子やらにモテていて、…でもかつて仲が良かった衛宮とはあまり関わらないようにしていた風に見えた。同じクラスの女子が言うには部活関係でなにか揉め事があったらしい。

    そんな事はどうでもいい、10月。夏が終わって秋も少し過ぎた時に私は間桐と初めて彼とやっとのファーストコンタクトを果たした。

  • 3二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:25:27

    放課後、教師に図書室に運んでもらいたい本があると頼まれた私は流石に内申点の為にも「嫌です!」と断るワケにもいかないのでさっさと済ませていた。

    映画や小説や漫画ならここで間桐が現れて「大丈夫?僕も手伝おうか?」なんてキラッキラのエフェクトをばら撒きながら現れる所だろうけどそんな事は起きずに私はさっさと先生の用事を済ませた。

    なんとなくだけどすぐ帰るのも寄り道するのもしっくり来なくてそのまま私は図書室に残り、世界の英雄全集なんてよくわからない机の上に残った本をパラパラと捲る。

    そこに間桐が現れた。

    彼は自分以外の人間が図書室にいるとは思っていなかったようで少しだけ目を丸くしたあと

    「…それ、僕が借りるつもりのヤツだったんだけど」

    なんて普通に話しかけてきた。

    「間桐くん、歴史とか神話とか好きなんだ。」

    「いやベツに、ただその本がちょっと目を引いただけ。やっぱいいよそれ、お前が読めば?」

    「…そう、どうも。」
    「じゃあな。」「うん。」

    あまりにもあっさりとした邂逅。今まで頑なに話しかけなかった私が馬鹿みたいだ。

    まあそれで何かが変わったわけでもない。その後は普通に私の日々は続き冬休みが終わったころ、クラスで見つけた間桐はかなりピリついていた。

  • 4二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:25:54

    いや、もともとかなりカリカリしていたがそれはもういつもの取り巻きがいないレベルで。
    なんか忘れたお弁当を届けに来た妹の子にすごい叫んでたし(こういう所は本当に直したらいいのに…と当時からずっと思ってた)

    高校2年生の冬、とても大事な時期だ。両親と話した私は大学受験の為に塾に通う事になった。

    夜遅くまで肌寒い空気の中を歩きながら帰るのが何よりも苦痛だった、が…
    たまに食べるあんまんの美味しさと私の未来を案じてくれていた家族にも免じていい思い出にしている。

    いや、その話じゃない……間桐が死んだ事故の話だ。
    彼が死んだと聞いたのはその頃だった。

    当時冬木ではガス爆発かガス漏れかなんやらで、多くの人が死んだ災害があった…なんなら穂群原でもなんかみんな倒れるようなガス漏れがあったらしい。私はインフルで休んでたから詳細は知らないけど。(従兄弟のタツ兄は黒魔術の生贄だとかなんとか喚いてたな)

    運良く私の周りではそういった被害者は出なかったが、あの、憎たらしいような…でもある意味共感していた間桐が死んだのが存外ショックだった。

    だって…彼だよ?わりと小物っぽくてさ、お世辞にも良いやつとは言えそうにないけど………なんだかんだ死んだと聞いて…現実味がなかった。

    まあそうはいっても世界は続く、受験勉強に追われる私はいつのまにかいつもの生活に戻る。泣くような関係じゃなかったし、なんなら一回話しただけの他人でしかない。

    時間というのは先にしか進まない。

  • 5二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:26:20

    そんな彼を私がまた大きく考えるようになったのは大学2年生の春だ。
    東京にある大学に通うことになった私は上京し、ぶっちゃけ高校生活とは比べ物にならないような充実した生活を送っていた。

    趣味の合う友人、やり甲斐のあるバイト、興味のある分野の勉強。

    間桐なんて少年は私の脳みそには存在しなくなり…まるで別人になったような気分であった。

    とある連休に冬木にある実家に帰省した、両親には某東京名物をお土産に渡し…少しだけ(まだ2年ちょっとだというのに)昔に想いを馳せながら散歩をする。

    ちょっと歩くと穂群原学園があって……(あぁ…うん!懐かしいな)なんて思って、

    少しだけ外観を校門越しに見ていると私の事を覚えていてくれた優しい警備員のおじさんが「少しだけだよ?」と言いながら中に入れてくれた。

  • 6二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:26:47

    今思うと、もう既にこの時点で私の鼓動はドクン、ドクンと動いていた気がする。

    ゆっくり歩く足はドンドン早くなって、私は図書室へと向かっていた。

    特別な思い入れがあったわけじゃない、

    でも「今行かないと何かを逃す」という気持ちがあった。

    夕焼けが染めた壁紙とカーペット、木の匂いと古びた紙の匂いを吸い込みながら学校の図書室はこんなんだったなあ…とノスタルジーでいっぱいになる。

    そこで見つけたのはあの時読んでいた世界の英雄なんちゃらという本……ではなく


    「インタビュー 未推敲 掲載予定なし」と書かれた一つのディスクだ。

    当時ポータブルCDプレイヤーを都合よく持っていた私は聞くことにした

    これが正しかったのか…間違っていたのかは……………


    ………………………

  • 7二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:27:02

    詳細は”彼”の為にも伏せよう
    心の底のどこかで私はこれをなんかのイタズラだと思っているんだろうな

    夢や魔法はは御伽話の中にしか存在しないと…心の底でそう思いたいのかもしれない。

    ただ、聞き終わった瞬間
    部外者ぶっていたのに結局は心の底で間桐をこっそり理解していたと思っていた高校生の私が私から離れたんだ

    そのあと私はどうしたのかって?

    ……冬木という町の端にはそれなりに大きい墓地がある、近所の人に聞いた「マキリ」と掘られた墓石にコンビニで買ったみかんとお饅頭を備えた。帰り道はよく覚えていない。

    家に帰ってからは二度と誰も聞けないようにあのディスクを叩き割って終わりにした。

    聞き終わった瞬間、確かに思ったのだ

    私の「クラスメイトの間桐」は私しか知らないから、うん…ここで終わりにする事にしよう、と。

    もう二度と彼の埋められている墓に来る事もない、ただ思い出すだけだ。

    私には間桐慎二という少年のクラスメイトがいたんだと。

  • 8二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:28:33

    長い!

  • 9二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:30:04

    良かった。普段文章書いている方?
    物語に介入してない誰かの目線好きだから、良かったら他のも読みたい…

  • 10二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:30:31

    >>9

    初めて書きました

  • 11二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:32:51

    確かにモブと関わる慎二は衛宮とか遠坂とか桜と絡んでる時はかなり印象違いそうだよね

  • 12二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:33:39

    雰囲気というかなんというか、とにかく良かった
    ただ、最後の方がイマイチ理解し切れてないかも

  • 13二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:36:48

    >「インタビュー 未推敲 掲載予定なし」


    あぁ〜!HF2円盤のドラマCDかぁ!

    これ聞いてないとわかんないの滅茶苦茶不親切な設計で笑う


    俺は嫌いじゃないよ

  • 14二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:38:10
  • 15二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:40:00

    スレ主さては慎二の事めっちゃ好きだな?

  • 16二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:44:49

    めっちゃ、こう、”熱”を感じる・・・!

  • 17二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:49:45

    スレタイもドラマCDのタイトルから影響受けてるっぽい感じだな…

  • 18二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 14:52:30

    >>11

    邪魔する劣等感もプライドもなくて基本フラットな慎二が見れそうだよね

  • 19二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 21:01:50

    面白い
    やるね

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