- 11/322/05/16(月) 21:40:13
お兄さまは女性の手が好きなのではないか?
ライスシャワーが自らのトレーナーに対してそんな疑問を持ったのは突然のことではなかった。小さな違和感が1つずつ降り積もっていった末にそう思ったのだ。
例えば、頼み事を何でも聞いてくれる──大抵はノータイムで快諾してくれるお兄さまが、「手を繋いでほしい」と頼んだときだけは迷うような素振りを見せたこと。
もしかして自分と手を繋ぐのは嫌だったのかもしれないと悩みもした。正直に言えば3週間ほど引きずった。
しかしその時のお兄さまの反応が"何か"を隠そうとする緊張であるとすると合点が行く。その"何か"とは、女性の手に対して抱く特別な感情なのではないか。
他にも、トレーニング中、彼が綺麗なネイルを施しているウマ娘に視線を向けていたこともあった。
練習の最中の彼は常にライスへ集中してくれる。他の誰かに話しかけられても一瞬反応が遅れてしまうほどに。その彼が他の誰かを見つめる姿は非常に珍しかったため、ライスはその時の様子をよく覚えていたのである。
極めつけは……つい先日、彼の鞄の中に見えてしまった一冊の雑誌。
それは若い女性向けのファッション誌であり、表紙には「流行の最先端を行くネイルケア特集」といった文字が躍っていた。
ライスは数日ほど注視して見てみたものの、彼の手先に変化は見られなかった。手のケアにまつわる話がライスに振られることもなく、彼が雑誌を所持していた意図は分からないまま時が過ぎてしまった。 - 22/322/05/16(月) 21:40:27
そもそも、異性の手のみを極端に好きになることなどあるのだろうか?
前提の部分にも疑問を抱いたライスは、結果として「手フェチ」という概念に触れてしまった。あまり一般的ではない少数派の嗜好だが、どうやらその感覚は実在する物らしかった。
解説にはやや過激な内容も含まれており、少し読み進める事に休憩せざるを得なかったが、ライスはお兄さまを思って読破した。そしてその直後、恐ろしい情報に直面してしまう。
その性癖をこじらせた者の中には、なんと女性から手首だけを切り取って愛でる凶行に及ぶ者までいるというのだ。……それがただのマンガの登場人物、つまり創作物であると後に気づくことはできたが、ライスが受けた衝撃は大きかった。
お兄さまに限ってそのようなおぞましい行為に手を染めるはずがない。天地がひっくり返っても絶対にない。
しかし、彼がそういった欲求をほんの一片たりとも持っていないと言い切れるだろうか。何から何まで完璧に見える彼は、その笑顔の内で人に理解されない欲をどうにかして抑え込んでいるのではないか。
……気づき、理解し、受け入れてあげられるのは、彼の最も近くにいる自分だけ。ライスはその時、彼の内心に触れる決意を固めた。 - 33/322/05/16(月) 21:41:06
「お、お兄さまは……女の人の、手、が……好きだったり、する……?」
流行のファッションの話、スキンケアの話、ネイルデコの話、それから手そのものの話。不自然になってしまわないよう、ライスはちょっとした雑談から順に話を繋げていった末、問いかけた。
隠していた内面を無理に暴くようで後ろめたく、彼女は膝の上に乗せた自分の両手をじっと見つめていた。……お兄さまからの視線もそこへ被さっていることを、ひしひしと感じながら。
「…………」
ソファーで隣に座るお兄さまは、穏やかに続けてきた会話のキャッチボールをここで止めた。ライスの視界の外でほんの少しだけ目を見開き、焦点をせわしなく動かして。ライスが言葉を続けてくれるのを待っていたのかもしれない。
彼が再び口を開いて答えるまで、実に15秒ほどの時間がかかった。
「……うん。好きなんだ。綺麗な手が」
ライスが始めて聞く、か細い声。思わず顔を上げると、そこにあったのは親に叱られる子供のように身を縮こまらせたトレーナーの姿だった。
完全に見抜かれてしまっている事を、彼は見抜いてしまった。だから言い訳も、話を逸らしもしなかった。ただ弱々しく、軽蔑されてしまっても仕方がない、とでも言いたげに怯えていた。
「軽蔑するわけがない」。「真摯に、正直に話してくれたのに」。「ちょっと珍しいと思っただけ」。「何も気にしてない」。
自らの性癖に追いつめられる彼に対し、溢れ出そうとした言葉の数は多すぎた。どれから言うべきか迷い、声を詰まらせ、1度大きな深呼吸を挟んでから、ライスは言う。
「ら……ライスの手で、よければ……。えっと……良い、よ……?」
曖昧な言葉だった。どんな風に解釈してもらっても良いと考えていたから、彼女はあえてそうした。
責めるつもりなどないと一目で分からせる表情。竦んだ心を溶かすような優しい声色。すぐ隣から差し出された、ほっそりとして色白な手。汚い感情を抱くまいと勤めてきた、トレーナーにとってはあまりにも魅力的なそれ。
光に吸い寄せられる虫のように、理性ではなく本能で指先が動く。意志に反してその手に自らの手を重ねようとしてしまう。
そして、お兄さまは── - 4二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:41:31
耐えたか耐えられなかったかはご想像にお任せします
お兄さまみたいなパーフェクトな人が少数派の性癖抱えてたらいいなって - 5二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:42:09
これで今夜も…くつろいで熟睡できるな
- 6二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:43:30
お兄さまはそんな事しないだろうけどさごめん。
吉良吉影のテーマ流れた - 7二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:44:07
ライスが事故で両腕を失った後もお兄さまが頑張ってライスを愛そうとする話しじゃないのか…
- 8二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:44:18
🚑️≡
- 9二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:46:33
指先とか優しく触られてくすぐったいような感覚にモジョモジョしちゃえばいいと思う
- 10二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:46:36
いいや!限界だ!押すね!(手のツボ
- 11二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:47:30
このお兄さまモナリザを直視できなさそう
- 12122/05/16(月) 21:47:52
わかる……吉良吉影みが抜けきれない……足指フェチお兄さま概念にしとけばよかったかな……
なんにせよちょっぴり特殊なお兄さまが好きって事なんですよ - 13二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:51:43
最初は普通に触れたり頬ずりしたりする位だったのにどんどんやりたい事がエスカレートしていくお兄さまはいいぞ
ライスはどこまで引かずについてきてくれるかな…… - 14二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 21:52:27
- 15IF22/05/16(月) 23:17:58
お兄さまは──
ぎゅっと、ライスの手を握った。
「ふぇ..?」
思わず困惑した声が漏れる。
「...ありがとう、ライス。」
「どうしたの、お兄さま?」
僕の手をよく見てほしい。そう言われて、初めて彼の手を間近で見た。よくみると、彼の手は細かい古傷だらけだった。
「僕は、昔はやんちゃ坊主でね。喧嘩に明け暮れてた。だから、自分みたいなボロボロの手じゃなくて、綺麗な人の手は素敵だって、ずっと思ってたんだ。」
「じゃあ、『手を繋いでほしい』と頼んだときにだけ、迷うような素振りを見せたのは...」
「『薄汚い手で、綺麗な君の手を握ってもいいものか』って悩んでたんだ。」
「...お兄さま」
彼の手をぎゅっと、優しく握り締める。
「どうしたのさ、ライス。」
「ライスはお兄さまの手、好きだよ?撫でてくれたりするとき、優しさが伝わってくるもん。」
「....ありがとう、ライス。」
「ふふっ、どういたしまして!他に、何かしてほしいことはありますか?」
笑いながらそう言うと、お兄さまは少し思案したあと、口を開いた。
「ねぇ、ライス。ちょっと、左手を出してくれない?」
──翌日。左手を見て微笑む彼女の薬指には、銀色に輝く指輪があったと言う。
FIN.
お目汚し失礼いたしました こんな展開もいいかなって - 16122/05/16(月) 23:38:36
- 17IF22/05/16(月) 23:40:10
ありがとうございます!そう言っていただけるだけで嬉しいです
- 18二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 10:49:46
ええやん!
- 19二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 10:55:09
でもライスに自分の頬を撫でて欲しいと控えめにせがむお兄様は使えるかもしれない
このお兄様はライスに水仕事だけはやらせなさそう - 20二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 10:56:00
テッテッテッテッテッテ(例のテーマ曲
- 21二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 17:02:45
脚を重視するはずのトレーナーが手を好きになるってなんか趣があるな
- 22二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 17:09:03
うまだっち…しちゃいましてね…
- 23二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 17:33:19
第三の爆弾バイツァダスト(目覚まし時計)
- 24二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 17:36:29
今まで秘密にしてたのに
寒い冬の日に手を擦り合わせてたら
「えへへ…こうしたらもっと暖かいよ、お兄さま」って両手で両手をぎゅっとされて…
発症するかどうかはお前の物語だ - 25二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 19:01:19
史実ライスシャワー号の最期を考えると謎にクる物がある…