異世界尊鷹

  • 1キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:24:46

    プレ・ボ更新までの暇潰しに読んでほしいのん

    連投を超えた連投になるから注意しろ…鬼龍のように


    ちなみにこのスレ主と同一人物っス

    あ…あの時分今タフの二次創作書いてるんスよ|あにまん掲示板鷹兄が異世界転生する話なんスけど公開してもいいスかbbs.animanch.com
  • 2キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:25:30

    30分から投稿するのん

  • 3二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:27:12

    しゃあっ支援!
    最近創作マネモブが多いから嫌でも応援してやりますよククク…

  • 4二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:27:59

    こいつ自身が異世界の生物と思われるが・・・

  • 5キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:30:18

    それじゃ投稿するのん
    つまらなかったらごめんなあっ

  • 6キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:30:40

     古来より、山は人ならざるものの領域だと考えられてきた。
     人ならざるもの――神格や妖怪と呼ばれる存在は時に恵みをもたらし、時に災いを振り撒いた。そこで人々は彼らの住まう世界を“神域”と定義し、供物などを捧げて崇め奉り、安易な関わりを避けることによって平穏を得ようとした。
     神や妖の住む世界と人々が住む世界は厳しく区別され、神域との境界に注連縄を飾るなどして、古代の人々は彼方に入らないよう注意していた。そうとは知らず愚かにも神域に足を踏み込んだ者の末路は、“神隠し”や“天狗攫い”といった民間伝承として語り継がれている。
     そして科学技術が発達し、ロケットが火星に行く現代においても――人智を超えたもの共とその力は、今なお存在するのである。

  • 7キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:31:00

    >>6

    「むっ――」


     山の空気が一変したことを、宮沢尊鷹は瞬時に察した。

     数十年前に灘の里を飛び出して以降世界各地を放浪してきた尊鷹には、自然と一体化し動植物と調和する能力が備わっていた。また、そのような仙人染みた特殊能力を抜きにしても、武道家なら誰しもが持っている危機を察知する直感が激しく警鐘を鳴らしていた。

     清潔な水で満ちたコップの中に一滴の汚泥が混じったような。いや、コップの中身ではなく、コップと言う器そのものがまるごと入れ替わってしまったような――そんな不可思議な感覚。

  • 8キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:31:20

    >>7

    (何が起こった?)


     警戒態勢を維持しつつ、尊鷹は原因を探るために歩き出した。

     彼がこの山に入ったのはひとえに修行のためだった。既に老境に達し、衰えを実感する今日この頃だが、身内から受けた闘いの刺激が肉体を動かし続けていた。

     半年前、尊鷹の近辺で劇的な変化が起こった。彼の弟である宮沢静虎の息子・宮沢熹一が、二つの流派をまとめて新たな流派を立ち上げたのである。

     静虎やもう一人の弟である鬼龍、尊鷹が受け継いできた灘神影流と、熹一の実父である日下部覚吾が受け継いできた幽玄真影流。源流を同じとする二つの流派を、熹一は灘・真・神影流として統合し、その宗家となった。

     尊鷹からすると、宮沢の血を引いていない者が灘を継ぐことに思うところが無いわけではないのだが……幽玄真影流との一件で熹一に敗北した以上、彼に従うのが道理と言うものだろう。

  • 9キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:31:39

    >>8

     かくして、覚悟と彼の率いる幽玄死天王、そして宮沢三兄弟の支援のもと、灘・真・神影流の歴史は始まった。

     とは言え、熹一は彼らの支援をほとんど必要としなかった。彼自身既に成人しており、自分一人で事を為そうという意志が強かったのだろう。朧山の道場で最も強いのは熹一であり、流派を引っ張っている宗家も熹一だった。支援は必要最低限ということに決定し、基本的に灘・真・神影流は熹一独りで経営していくことになった。

     その結果、身も蓋もない言い方をすると尊鷹は暇になったのだ。再び仮面を被り姿形を変え、世界を回ることも考えたが……しばらくは日本に留まることにした。鷹も時には休息を必要とする。再び飛び立つのは、甥っ子の道場経営が軌道に乗ってからでも良いだろう。

  • 10キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:31:56

    >>9

    (植生が明らかに変わっている。たった数メートル移動しただけで、これ程までに変化することなどあり得ない。俄かには信じがたいが、本当に世界が変わった……あるいは私自身がどこかに移動した、というわけか)


     そうして山に籠り、修行で気を紛らわせていた矢先にこのような怪奇現象だ。

     不審に思う一方、どこか現状を楽しんでいる自分がいた。平穏からは程遠い非現実的なシチュエーションほど、己の中に住まう衝動を駆り立ててくれる。

     幽玄との因縁が決着した時、尊鷹はその現場にいた。そしてそこで死闘を見た。最高の戦いを最前列で目撃したのだ。新たな歴史が紡がれることに充足感を覚える一方で、武道家としての血がどうしようもなく騒いだ。こうして修行に励んでいるのも、心の奥底で燃え盛る闘志を少しでも発散するためだった。

     この際何でもいい。熊だろうと猪だろうと、戦うことができるなら。

     いっそのこと、空想の存在でも構わない。物の怪でもいい、天狗でもいい。己を昂らせ、満足させてくれるのなら――たとえ神だろうと、この拳脚を届かせてみせよう。

  • 11キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:32:17

    >>10

    『――――ッ!!』

    「なにっ」


     遠方から、人間が発したと思われる絶叫が木霊した。

     これも超常現象の一種か、と身構える尊鷹。しかし、しばらく経っても何も起きなかった。気を巡らせて周囲を警戒するものの、特に怪しい気配は感じない。

     空気が張り詰める中、風に揺られた落ち葉の掠れるような音だけが仄かに響く。


    「……」


     ひとまず、こちらに危険は迫っていないようだ。

     構えを解くのと同時に、尊鷹の周囲を漂っていた緊張感が霧散する。落ち着きを取り戻した彼は、先程の声の正体について考えていた。

  • 12キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:32:34

    >>11

    (恐怖心による幻聴……あるいは動物の声という可能性もある。しかし――)


     尊鷹の本能が告げていた。あれは人の声だと。

     状況を打破する手がかりは現状一つもない。このまま闇雲に山を彷徨ったところで、無駄に体力を消費するだけだ。ならば先程の声を頼りにするしかあるまい。もしあの叫び声が罠だとしても、その時はその時だ。

     方針は決まった。息を大きく吐き、尊鷹は声の方向へと駆けた。


     タン、シュ、タン。

     木の幹を蹴る度に小気味良い音が響き渡った。


     弾丸のような速度で野山を進む。瞬く間に景色が流れ、移り変わっていく。肉体は衰えの兆候を見せているとは言え、山道には慣れている。蔓や泥に嵌るという失態を犯すことなどなく、木から木へと空中を移動しながら縦横無尽に駆け回る。

     声の主がいるであろう場所に近付く度に、ピリピリと肌を焼き付けるような殺気が強くなった。

  • 13キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:32:57

    >>12

    (これは幻覚や幻聴などではない、紛れもない現実だ)


     現実の殺気を浴びて、既に尊鷹は臨戦態勢に入っていた。

     悲鳴を上げる時点で只事ではないことは察していたが、どうやら血が流れる展開は避けられないらしい。脚に籠る力が自然と増し、速度も更に上がった。

     そうしてしばらくの間山を駆けていると、彼我の距離が大分近付いてきたようだ。お陰で相手側の気配を察知することができた。

     気配は十と一つ。前者の気は淀んでいて、そのうちの一つが特に巨大で穢れている。気の性質自体は似通っているので、巨大なのは恐らく集団を率いるボスと言ったところか。

     後者は清廉さを感じるものの、大きさはそれ程でもない。個対多という状況からして、悲鳴を上げたのは間違いなく後者だろう。気の波が激しく揺れているあたり、怪我を負って出血しているかもしれない。


    (理由は不明だが、多人数で一人を囲むなど尋常ではない。ここは仲介に入るしかあるまい)

  • 14キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:33:21

    >>13

     残り五十、四十、三十――五メートル。そこまで近付いて、尊鷹は高く跳躍した。

     木々の小枝を突っ切り、集団の中心に降り立つ。着地の勢いで枯れ葉と砂塵が舞った。轟音と山嵐で周囲がどよめく中、彼は声の主とそれを囲む者共を確認する。


    「なにっ」


     そして、思わず驚愕の声を上げてしまった。

  • 15キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:33:42

    >>14

    「△……、△△……!」

    『■■■■■■■■ッ』


     そこにいたのは地べたに這いつくばって脚から血を流す女と、彼女を取り囲む十一匹の醜い怪物だった。

     女の容姿は大変美麗で、まるで絵画の中から出てきたかのような美しさだった。金色に輝く髪も、動揺に揺れる碧眼も、尽くが人をかけ離れた美を携えていた。地面に横たわり脚部から出血する様も、まるで宗教画のような神秘性があった。

     そして何よりも注目すべきなのは、彼女の耳は巨大で先端が尖っていた。その大きさも鋭利さも、常人のそれではない。尊敬の数倍は大きく、鋭角に伸びていた。しかしそれでも顔のバランスは取れており、一種の調和すら感じてしまう。

     エルフ――西洋の御伽噺で語られる存在の名が脳裡をよぎる。伝承曰く、エルフは絶世の美しさを誇り、人間よりも巨大で鋭い耳を持っているという。目の前にいる女はまさにその特徴を満たしているではないか。

  • 16キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:34:05

    >>15

     しかし、尊鷹の気を引いたのはエルフではなく、怪物たちの方だった。


    (なんだ、あの緑色の怪物は)


     エルフよりも小さい代わりにより凶悪に尖った両耳。背丈は小さく、尊敬の半分以下といったところか。目は鋭く釣り上がっており、口元が大きく裂けていた。口の端からは粘液性の高い涎がだらりと垂れており、溝のような悪臭を放っていた。

     野蛮な腰布、明らかに手作りの石槍。人の言葉ではない奇怪な言語に、人間の生理的恐怖を引き立てる醜悪な見た目――女がエルフなら、こちらはゴブリンと言ったところか。


    (まさか本当に空想の存在と対峙するとは……面白い)


     このような体験、一生に一度得られるかどうかだ。思わず笑みが零れてしまう。

     その笑みは捕食者が浮かべるような、獰猛で凶悪なものだった。

  • 17キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:34:28

    >>16

     対立していたであろう彼らは、現在揃って乱入者である尊鷹を見つめていた。両者の瞳には動揺の色が宿っている。

     ここは己の立場を明確にしておいた方が良さそうだ。


    「大丈夫ですか?」


     目で魔物たちを牽制しつつ、尊鷹は庇うようにエルフの前に立った。

     怪我をしている脚部を押さえつつ、苦しそうに声を発する。


    「△△△……! △△△△△、△△△△△っ」

    「…………」


     困ったことに、言葉が分からなかった。

     世界各地を渡り歩き、様々な言語に触れてきた尊鷹ですら、このような言葉を耳にするのは初めてだった。恐らく人間の言語とは根本から異なる体系なのだろう。

     ジェスチャーなどを駆使すれば何とか意思疎通はできそうだが、ひとまずこの場では諦めた。目の前の障害を排除する方を優先しよう。

  • 18キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:34:48

    >>17

    「△△△△――」


     未だに事態が飲み込めないのか、声を荒げるエルフ。

     それに対し、冷静さを取り戻すのはゴブリンたちの方が早かった。


    『■■■■■■!』

    『■■■ッ!!』


     ひときわ体躯が大きく、邪気の強いボス格らしき一匹が低く唸った。

     その声に合わせて、八匹の下っ端が槍を構えて尊鷹を取り囲む。その行動は統制が取れており、非常に素早いものだった。


    (成程……やはりアイツが群れを統制しているのか)


     手負いの女より、突如乱入してきた尊鷹の対処を優先したらしい。賢明な判断だ。

     尊鷹がそのようなことを考えている間に、じりじりと包囲網が狭まっていく。一歩、二歩とゴブリンたちが近付いてくる。そうしてあっという間に間合いが詰まって――。

  • 19キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:35:14

    >>18

    『■■■■っ』


     四方八方から凶器が尊鷹に迫る。


    「△△――!」


     最悪の未来を思い浮かべて、悲鳴を上げるエルフ。

     出来の悪い石槍が尊鷹の腹を貫く――ことはなく、空を切った。穂先同士がぶつかり合い、ガチンという鈍い音が響く。


    『■■■!?』


     何処だ――獲物を見失ったゴブリンたちが周囲を見回す。

     あんな一瞬で遠くに逃げられるはずがない。即座に逃げられるような場所と言ったら……。

  • 20キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:35:35

    >>19

    「ここだ」


     上空から聞こえる声に釣られて、ゴブリンたちは一斉に天を見上げた。

     そこには直立のまま宙を舞う尊鷹がいた。

     ゴブリンたちが槍を上空に向けるより、尊鷹の方が速かった。次の瞬間、彼の姿がブれ、死の一撃が炸裂した。


    「しゃあっ」


     灘神影流“鷹鎌脚”。

     跳躍し、空中で脚を振り回すことで全方向に蹴りを放つ技。尊鷹が最も得意とする技の一つであり、集団を制圧するのにも有効な技だ。

     尊鷹の脚は特別製だった。風を切りながら空を自由に飛ぶ隼の如き軽やかさと疾さを兼ね備える伝説の脚、鳳腿(ファルコン・フット)。そこから放たれる蹴り技はまるで金属の刃が如き切れ味を誇り、醜悪な魔物の頭部をいとも簡単に両断した。


    『■――』


     断末魔を上げる暇さえなく、八匹の魔物が息絶えた。残り二匹。

  • 21キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:35:52

    >>20

    「……」

    『■■■■■――!!』


     同胞を殺され激高したのか、ボスの側近と思しき奴が突貫してきた。

     その動きは直線的で、あまりにも愚直。冷静さの欠片も見られない。怒りで我を忘れるあたり、下っ端の知能レベルはかなり低いようだ。魔物の生態を分析しつつ、尊鷹は迎撃に出た。

     ゴブリンが突き出した石槍を左手でいなし、右手で顎を打ち抜く。アッパーによって矮小な体躯が宙に浮いたところを、後方転回しながら蹴りを打ち込んだ。初撃の時点で絶命していたようだが、念には念を入れておく。真っ向斬りを受けたかのように縦に割れた死体は、重力に従って落ちて大地にぶちまけられた。


    「△△△っ!?」


     地面に跳ね返った血液を浴びてしまったエルフが驚きの声を上げる。

     それをあえて無視しつつ、尊鷹はボスゴブリンと対峙した。

  • 22キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:36:14

    >>21

    『■■■……』


     群れのボスを担当するだけあって、他の連中よりも知能は優れているらしい。仲間を葬った尊鷹を警戒しつつ、無暗に突っ込んでくるような真似はしてこない。

     ならば、と尊鷹は間合いを詰めた。お互いの制空権が重なり合う。それでもなお、ボスゴブリンは冷や汗を垂らすだけで、向かってくることはしてこなかった。


    「どうした? 来ないのか」


     言葉は通じずとも、挑発の意図は何となく伝わったらしい。

     ボスゴブリンの顔に血筋が走る。自分よりも小さく細い人間に煽られて、脳が沸騰しかける。その一方で、冷静な理性が「こいつに勝てるわけがない」と告げていた。

     しかし逃げられない。既に彼の拳が届く範囲にいるのだ。逃げる素振りを見せれば、その隙に殺られてしまう。そして何より、小物に舐められたまま背中を向けるのはプライドが許さなかった。

  • 23キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:36:35

    >>22

    『■■……ッ!!」


     この人間をグチャグチャに叩き潰したい、しかし出来ない。

     この人間から一刻も早く逃げ出したい、しかし出来ない。

     本能と理性の板挟みに耐え切れず、ボスゴブリンは狂ったように叫びながら岩のような石斧を振り下ろした。


    『■■■■■ッ!!」


     発達した人外の膂力によって、数百キロを優に超える石の塊が振り回される。

     確かにその質量は厄介だ。まともに当たれば尊鷹の身体はいとも簡単に潰れてしまうことだろう。

     しかし、動きがあまりにも単調だった。目を瞑っていても躱せるほどに、直情的で分かりやすい軌道。灘神影流を、武道を窮めた尊鷹にとって、この攻撃を躱すことなど赤子の手を捻るよりも容易だった。

     時には紙一重で、時には大きく後退して。エルフに戦闘の影響が及ばないよう気を遣いつつ、尊鷹は軽やかな身のこなしでボスゴブリンの攻撃を避け続けた。

  • 24キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:36:52

    >>23

    『■■■……!』


     自慢の一撃が当たらない苛立ちによって、更に斧の軌道が直線的になっていく。

     どんなに一撃性を高めても、当たらなければ意味がない。だからこそ、小回りが利いて取り回しやすいジャブなどが重要視されるのである。

     それをこの魔物は理解していない。「知能は優れている」と表現したが、所詮はこの程度。数と体格の優位性が無ければ、人間一人仕留めることさえ出来やしない。

     そう言えば、ゴブリンは日本語だと小鬼と言うらしい。尊鷹の知る鬼と比べれば、確かにこの巨漢も「小鬼」に過ぎなかった。

     戯れはここで終わり。相手が鬼というならば、こちらも鬼で返そう。

  • 25キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:37:10

    >>24

    「ふっ――!」


     ドン、と尊鷹が大地を踏み締める。鳳腿の脚力は大地を揺らし、そのエネルギーはそのまま推進力と化した。


    『■■ッ』


     相手からすれば、尊鷹の身体がまるで瞬間移動したように感じたことだろう。能の“運歩”に通じる、摺り足での移動法。尊鷹はそれを最高の次元で習得している。この動きを見切ることができるのは武芸を窮めた一部の者たちのみ。眼前の愚鈍では不可能だった。

     一瞬でボスゴブリンの懐まで入り込んだ尊鷹が放つは、彼最大の必殺技。

  • 26キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:37:40

    >>25

     灘神影流“塊蒐拳”。別名“鬼の五年殺し”。

     両方の拳を相手の胸部に突き立て、勢い良く捻る。その時に気の“鬼”を相手に打ち込む。この“鬼”を打ち込まれた者は、まるで生きたまま内臓を食われるような地獄の苦しみを味わうことになり、五年以内に死に絶えるという灘神影流の奥義だ。

     そのような副作用を抜きにしても、塊蒐拳の威力は絶大だった。熊のような体格を誇るボスゴブリンが吹き飛び、後方に生えていた木の幹に勢い良くぶつかった。凄まじい音を立てて幹が揺れ、それに応じて枝葉がざわめき立つ。


    『■■■、■■■■■――!』


     塊蒐拳の苦痛に煩悶の声を上げるボスゴブリン。尊鷹の拳が突き刺さった胸部は大きく膨れ上がり、その痣はまるで鬼のような模様になっていた。

  • 27キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:38:03

    >>26

    『■■■■■……ッ!!』


     絶対に許さない。この人間は四肢を捥ぎ、自分と同じ苦しみを与えてから臓腑を貪り食ってやる。

     石斧を杖として立とうとする生命力に、尊鷹は思わず舌を巻いた。熹一のように“弾丸すべり”で回避したならいざ知らず、技の直撃を受けてなお立ち上がろうとしてくるとは。


    「なかなかタフなやつだ」


     とは言え、これで終わりだ。

     スッと軽やかに大地を蹴り、高く飛び上がった尊鷹が一閃を放つ。

  • 28キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:38:19

    >>27

    『■■■――』


     本日二度目の“鷹鎌脚”によって、ボスゴブリンは絶命した。

     胴体から離れた頭部が打ち上げ花火のように宙を舞い、ザクロあるいはスイカが潰れるような鈍い音を立てて砕けた。

     魔物たちが全滅し、場に静寂が訪れる。

     自らが殺した生命たちに内心で祈りを捧げた尊鷹は、改めてエルフと向き合った。


     エルフはその美貌に似合わない、呆気にとられたような表情を浮かべていた。

     茫然としたままゴブリンたちの死体を見渡し、ようやく状況が飲み込めたのか、震える声で言葉を発する。

  • 29キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:38:35

    >>28

    「△……△△△……?」


     相変わらず、彼女の言葉は一切理解できない。

     ただ、何となくそのニュアンスは理解することが出来た。


    『あなたは?』


     そのように尋ねられた気がして、尊鷹は自らの名を名乗るのだった。

  • 30キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:38:49

    >>29

    「我が名は尊鷹」

  • 31キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:39:44

    以上なのん
    連投でサーバーに負荷をかけてしまい

  • 32二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:40:20

    ハーメルンには投稿するのん?

  • 33二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:40:27

    見事やな…

  • 34二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:40:36

    なにっ 滅茶苦茶綺麗に纏まっているっ

  • 35二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:40:39

    しゃあ!
    とんでもない名作だと考えられる

  • 36二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:41:33

    ハーメルンに投稿しろ・・・鬼龍のように・・・

  • 37二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:43:23

    タフカテに投下されるssや小説は名作しかない傾向にあるんだぜ
    これもその一つだけどね

  • 38二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:43:42

    お見事です>>1ボー やはり私がにらんだ通りあなたは素晴らしいSS家だ

  • 39二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:47:21

    見事やな…

  • 40キャプテン・スレ主22/05/22(日) 22:50:59

    >>32

    >>36

    次話がある程度まとまったら投稿したいっスね

  • 41二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:56:48

    文章の巧みさはもちろん話の終わり方がうますぎるんだよね
    凄くない?

  • 42二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 23:20:33

    続きが楽しみなんだよね
    嬉しくない?

  • 43二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 23:29:41

    オチが綺麗についてて変な声が出たのは俺なんだよね
    君に勲章を与えたいよ

  • 44二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 00:16:01

    このレスは削除されています

  • 45キャプテン・スレ主22/05/23(月) 00:16:24

    思ったより反応が良くて驚いてるのは俺なんだよね
    感想をもらうから嬉しいんだ、モチベーションが高まるんだ

  • 46二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 00:19:08

    俺は小説やSSを書くのが上手いやつは無条件に尊敬する

  • 47二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 00:22:37

    ふうん マネモブの中にも文豪は潜んでいるということか

  • 48二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 02:30:53

    はーっ 滅茶苦茶面白かったのん

  • 49二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 08:05:16

    おもろいやん…

  • 50二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 14:43:32

    なにっ 続きが気になる

  • 51二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 16:42:15

    文章が上手くてスルッと脳内で映像化できたんだよね
    見事やな…
    オチも綺麗についていてめちゃくちゃ完成度が高いんだ

  • 52二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:16:20

    >>1に高評価を放てッ

  • 53二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:20:59

    これからもキメるシーンとかで鷹兄に名乗って欲しいですね…生でね(ニィ~

  • 54二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:25:32

    「誰だ、お前は!?」





    「我が名は尊鷹」

    とかが見たいですね…本気(マジ)でね(ニィ~

  • 55二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:29:30

    最後に「我が名は尊鷹」で終わるの綺麗すぎて一瞬暗転からのスタッフロールの幻覚が見えたのは俺なんだよね

    流石です>>1主 私が睨んだ通り貴方は完璧な1話を作った凄まじい物書きだ

  • 56二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 23:24:47

    凄く面白かったのん…

  • 57二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 23:28:37

    このレスは削除されています

  • 58キャプテン・スレ主22/05/23(月) 23:51:23

    あうっ、書いた本人なのに勘違いしてたのん…
    とにかく指摘上等っスよ

  • 59二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:30:29

    綺麗にまとまってるせいでなんか番外編感あるのん

オススメ

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