いつか夢見たこの瞬間

  • 1二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:36:37

    夕暮れのトレーナー室にはふたりきり。
    向かい合って見つめ合い、心音さえ聞こえてきそうなくらい、静かに時間が流れていく。

    「……冗談じゃ、ないんだよな」

    トレーナーは改めてアタシの意思を確認してくる。
    秘密のノートを見られた挙げ句、憧れのシチュエーションまで口走って。
    気が動転したまま、それを再現しろなんて捲し立ててしまった。

    「嫌いだったら、そんなお願いしないし……」
    「……ドーベル」

    ファーストキスは、トレーナーがいいな、って。
    もし、恋人とか将来を誓い合う仲になる相手が居るのなら、彼以外はありえないとさえも、心のどこかで思っていた。

    そんなことまでは口にできないけれど、トレーナーのことだから汲み取ってしまうのだろう。
    目を白黒させたり、頬を掻いて照れてみたり、動作のところどころが忙しない。
    けれど、それもすぐに落ち着いて、なんでもお見通しな目がアタシを捉える。
    そうしたら、もう逃げも隠れもできなくて。

  • 2二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:37:24

    がし、と手首を掴まれる。
    普段から見ていた手だったけれど、実際に触れたからこそわかる掌の広さや彼の体温。
    それだけで茹で上がってしまいそうなくらいに、大きな刺激だった。

    「アンタだから、してほしいの……っ」

    最後の一歩を踏み出せば、もう後戻りはできない。
    ――後戻りする気なんて、なかったのかもしれない。
    それは彼も同じで、瞳を潤ませた上目遣いで迫られたのだから、きっと耐えられなかったのだろう。

    ぐい、と力強く抱き寄せられて、ふたりの距離はなくなって。
    それだけで息が詰まるほどだった。
    頬に指を添えられて、どくん、と胸が締め付けられて。
    あごを持ち上げられれば、アタシを射抜くまなざしに釘付けになる。

    「――ベル」

    いつか夢見たこの瞬間。
    迫り来る彼から逃れられない。
    気づけば、ひとりでに目は閉じていて。

    そうして、アタシは。
    彼の唇に吸い込まれていった。

  • 3二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:41:39

    どうしよう
    俺が持ち合わせる語彙ではこの作品の素晴らしさを表現できない

  • 4二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:42:18

    いいSSだ 作者様に感謝を

  • 5二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:43:39

    寝る前に良いものを見れた
    ありがとう…

  • 6二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 01:08:43
  • 7二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 01:10:27

    こういう時のベルトレはベル呼びという共通認識

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