- 1◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 21:59:15
『気合入れたら作り過ぎちゃって……口に合うかわかんないんだけど……食べてくれる……?』
「手作りのお弁当……」
自室で少女漫画を読みながら、独り言を零す。漫画ではヒロインの子が体育祭の時にお弁当をヒーローの男の子に作る妄想をしていた。……本番では上手く作れず結局おにぎりだけになっていたけれど。
最後のページまで読み終え、読んでいた漫画をぱたりと閉じる。
「アタシにも作れるかな……」
手元のスマホでお弁当の画像やレシピを検索してみる。
(漫画みたいに失敗したくないし、練習するべきだよね……)
流石に調理実習で経験はしたことがあるし、お菓子だってそこそこは作れる。だから全く慣れていない、という事はないけれど流石にぶっつけ本番で上手に作れる自信はない。それに……作るからには美味しい、って言ってもらいたい。
「よし……!」
トレーナーにお弁当を作って食べてもらう。目標を胸に、その日から料理を練習する日々が始まった。 - 2◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 21:59:31
トレーニングが終わって、夕食が終わった後の時間。寮の共同キッチンスペースで料理の練習をする。
作ったものは自分で食べなきゃいけないし、1日でたくさん練習出来る訳ではないけれど。
『トレーナーってお弁当に入ってたら嬉しいものとかある?』
『う~ん、唐揚げと卵焼きかなぁ。無難だけど。卵焼きってお弁当くらいしか案外食べる機会ないしね』
『ふ~ん……』
『?』
トレーナーから好みの食べ物を聞き出しながらメニューを絞っていき。毎日コツコツと作れるレシピを増やしていった。
……唐揚げ。
(お鍋で揚げてる印象があったけど、フライパンで出来て助かったかも……)
トレーナーが好物だと言ってたし、手作りで作りたかったのもあって手軽に出来るレシピがあって思わず安心する。これなら油の片付けの心配もない。
……卵焼き。
「うん、結構いい感じかも……」
はじめはちょっと焦がしちゃったり、形が整わなかったりしたけど練習するうちにだんだん綺麗に巻けるようになってきた。
(アタシは甘いのが好きだけどトレーナーはどうなんだろ……。流石に聞いちゃったら勘付かれちゃうかな……?) - 3◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 21:59:45
……にんじんのごまみそ炒め。
「……?ちょっと味噌入れすぎちゃったかな……それににんじんも太すぎるかも……」
(にんじんはやっぱり外せないよね……)
アタシがお弁当を作ってもらっていた時も野菜と言えばにんじんだったのでここは外せない。
……ほうれん草のナムル。
「あっ、簡単なのに美味しい……」
ブロッコリーとどっちにしようか迷って、どうせなら手料理にしたくて採用したけれど中々に美味しい。
(彩り目当てだったけど結構いいかも……)
……ウインナー。
(タコさんウインナーにするのは流石にちょっと可愛すぎかな……?)
赤色が欲しくてプチトマトを入れようと思ったけど、嫌いな人も多いと聞くからやめた。それに男の人だしきっとお肉が多い方が嬉しいはず。 - 4◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:00:00
そして、練習を始めてから半月ほど経った頃。休日を使ってお弁当に詰める所まで作ってみる。
「よし……!出来た……!」
漫画のように指を切って絆創膏をしたりやけどをしたり……などのベタなアクシデントはなく。レシピとにらめっこをしながらではあるけれど、試作品と呼べるべきものが完成した。
早速味を確かめてみる。
「……中々いいんじゃない?」
凄く美味しい、という訳ではないけれど普通に美味しいと言えるレベルにはなったと思う。
後はいつ渡すかだけれど……朝起きて全部作るのは大変だから前日にある程度作れるものは作っておきたい。
(となると日曜日に準備をして月曜日に……)
月曜日は朝練の予定もあるし、その時にトレーナーにも会えるのでお弁当を渡すには丁度いい。こうなれば後は勢いだ。
はじめにお弁当を食べてもらおうと思ってから少し時間が経ってしまったけれど。ようやく結実する時がやってきた。 - 5◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:00:13
月曜日の早朝。
「うん……味も大丈夫……」
ごま味噌炒めとナムルは前日に作っておき、唐揚げは揚げるだけの状態にしておいたおかげで余裕をもって作る事が出来た。本番で失敗をすることもなく、無事に作り終え、盛り付けも完了した。
「やっぱりタコさんウインナーと卵焼きをハートにするのはやり過ぎかな……」
ただ詰め込むだけじゃなんだかあまりにも殺風景な気がして、盛り付けも工夫してみたけど少し心配になる。
(こ、これくらいは普通だよね……?)
あくまで女の子が作るお弁当では常識の範疇、と自身に言い聞かせ蓋を閉じ、浅葱色の包みに二段の黒色のお弁当箱とお箸を入れる。
(……そういえばお弁当ってどう渡せばいいの?お弁当作ったから食べて?いやいやいや、アタシには無理。キャラじゃないし)
作ったのはいいものの肝心の渡す理由を考えてなかった。漫画でお弁当を作って渡してあげてるヒロインの子達は大体既に付き合ってたりする。じゃあ、アタシは?……ウマ娘とその担当トレーナー。
少なくとも手作りのお弁当を渡すのはちょっと踏み込み過ぎだと思う。何かの行事があったりするわけでもないのにいきなりお弁当を渡すだなんて唐突過ぎる気がする。
……ここにきてお弁当を渡す時の知識が圧倒的に足りてない。
素直に渡す事が出来たらそれがいいのだけれど、それが出来るのならバレンタインの時だって最初っから手作りのものを渡してる。口実が作れる特別な日ですらそれなのに、何も理由がないのにお弁当を渡すだなんて改めて考えると物凄く難易度が高い気がしてきた。
(取り合えずトレーナーにお昼はどうしてるか聞いてそれから……)
何か理由を付けて渡せればそれが一番だけれど、朝練に向かうまでにその考えがまとまる事はなかった。 - 6◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:00:26
朝練も終わり、トレーナー室で簡単な報告を済ませる。……今日の本題はここから。
(大丈夫……不味くはないんだから。受け取って貰えるはず……)
高鳴る鼓動を落ち着かせ、何か適当な理由を付けて渡そうと質問を投げかける。
「トレーナーってお昼はどうしてるの?」
「え?普通に食堂使ってるよ?」
問いかけに対する答えはアタシの期待に反して、お弁当を渡す口実を潰すには十分過ぎるものだった。
……それはそうだ。
トレセン学園の食堂は生徒であるウマ娘だけでなく、指導するトレーナーや学園の教職員だって利用する。となると当然アタシのトレーナーだって利用してる。
アタシたち生徒がお昼を食べに行く、混む時間帯を避けて食べているのなら普段見かけないのも自然だし何もおかしい話じゃない。どうしてそんな簡単な事にも気づかなかったんだろう。
「?どうして急にそんなことを?」
「べ、別になんでもない!」
……アタシなんかの作ったお弁当よりも食堂の料理の方が美味しいに決まってる。なら、これを無理やりトレーナーに押し付けて食べてもらう必要なんて……。
前日まで渡すのがあんなに楽しみだったのに、急速に自信がなくなっていく。
(……このお弁当は……自分で食べよう)
「それじゃあ、アタシは教室に行くから」
「あ、ああ。また放課後」
気勢をそがれたアタシは、トレーナーにお弁当を渡す事なく教室へと向かう。
(なんであんなに頑張ってたんだろ……)
いつも使っているはずのカバンなのに。お弁当一つ入ってるだけでやけに重く感じた。 - 7◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:00:39
~Trainer's View~
昼食を食べ終え、トレーナー室へと戻る際。
「あら~?ドーベルのトレーナーさま~。ごきげんよう~」
「ああ、ブライトか。ごきげんよう」
昼食を食べに食堂へ向かうところだったのだろうか。同じメジロ家でもありドーベルの幼馴染でもあるメジロブライトに声を掛けられる。
「トレーナーさま~?ドーベルからお弁当は受け取られましたか~?」
「お弁当……?」
聞きなれない単語が出てきた。ドーベルからお弁当?いったい何の話だろうか。
「えっと、何の話かな?」
「あら~……?あの子ったら渡しませんでしたのね~……」
渡さなかった?お弁当を?つまりドーベルは今日お弁当を持ってきていて俺に渡そうとした、という事だろうか?
しかしそんな素振りを見せた覚えは……
『トレーナーってお昼はどうしてるの?』
……まさかあの時、だろうか。
「ねえ、ブライト。もしかしてドーベルって今日お弁当作って持ってきてたりする?」
「話が早くて助かりますわ~」
どうやら推察は当たっていたようだ。 - 8◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:01:12
「ここ半月ほどでしょうか~?毎日お料理の練習を──」
(ドーベル、流石にそれじゃ気づけないよ……)
ブライトの話によると半月くらいの間ずっと料理の練習をしていたらしい。そこまで気合いを入れて作ってくれたお弁当ならば、受け取らないのはまずいだろう。
……食堂で食べるのなら渡さなくてもいい、と思ってしまったのだろうか。お弁当を作ってくれていたのならそう言ってくれれば良かったのに。
……しかしどうしたものか。折角お弁当を作ってくれたのなら食べてあげたいのだがどう受け取れば……。
こちらから受け取りに行くのは話が拗れてしまいそうなので出来ない。なのでドーベルから渡しに来てくれるのが一番いいのだが……。
思案していると、ひとつ方法を思いつく。
「……ねぇ、ちょっと頼みごとを引き受けてくれるかな?─────」
「ふふふっ、トレーナー様ったら食いしん坊さんですのね~」
(後はドーベル次第、かな……)
─・─・─・─
~Dober's View~
お昼休み。
トレーナーに渡せなかったお弁当を食べようと、人目につかず食べられそうな場所を探す。……誰かの為に作った男物のお弁当箱で食事をする姿はなんだか惨めに思えて、誰かに見られたくない。いい場所はないかな……と探し歩いていると後ろから声を掛けられる。
「あら、ドーベル~。お昼、ご一緒しませんこと?」
「あ、ブライト……。ごめん、アタシ今日お弁当持ってきてるから」
折角の食事のお誘いには悪いがとてもじゃないが食堂で皆の前でこのお弁当を食べる勇気なんてない。そんな勇気がないならトレーナーに渡しておけばよかった、と言われればそれまでだけど。
「?トレーナー様に渡すものではなかったのですか~?」
「な!?」 - 9◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:02:19
なんで知られているの!?と思ったけれど連日キッチンスペースに通い詰めてお弁当を作る練習をしていれば流石に気づかれるのも仕方ない。渡す相手までバレているのは恥ずかしいけれどブライト相手に今更隠し通すのも無理だろう。
「トレーナーさ、お昼は食堂で食べるんだって。だから、アタシのお弁当はなくてもいいの」
「?トレーナー様に直接聞かれたのですか~?」
「いや、聞いてないけど……」
確かにその通りで別にトレーナーがアタシのお弁当より食堂で食べたい、と言った訳じゃない。むしろお弁当を作って来た事を言えば喜んで受け取ってくれたとは思う。
だけど……どうしても食堂の料理と自分のお弁当を比べてしまって。これを渡しても喜んで貰えないかもしれないという、在りもしない未来を想像して怖気づいてしまった。
「なら渡されてはいかがでしょう~?」
「いや、でももうお昼食べ終わってるでしょ……今更渡しに行っても」
そして今はお昼時。トレーナーはとっくに昼食を終えてしまっていると思う。お腹も膨れてる状態で、アタシのお弁当を無理に食べてもらう必要はなおさらない。なら、やっぱり責任を持ってアタシがこのお弁当を食べるべき。
「ドーベルのトレーナー様なら先ほどお会いして少しお話したのですがどうやらお財布を家にお忘れになったみたいで、お昼を食べそこなったみたいですわ~」
はずだったのだけれど。
(本当に?本当にまだお昼食べてないの?)
お昼を食べそこなってお腹を空かしているのなら。アタシなんかの作ったお弁当でも役に立つんじゃ……。
「……その話、本当?」
「ええ、きっと今頃お腹を空かせてひもじい思いをしているに違いありませんわ~」 - 10◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:02:54
それなら。
「ブライト、お昼一緒にするのはいいんだけど食堂でちょっと待っててくれる?用事が出来ちゃって」
「はい~。のんびりお待ちしておりますわ~」
もしかしたら今からでもお弁当を受け取ってもらえるかもしれないと。そう思うと居ても立っても居られなくて、自然とトレーナー室へと向かう足は速くなっていた。
─・─・─・─
トレーナー室へ辿り着くとノックをすることもなく勢いよく扉を開ける。
「ねえ、トレーナー!」
「うわっ!びっくりした!」
案の定トレーナーを驚かせてしまう。普段こんなに勢いよく扉は開けないし、仕事で集中してたみたいだからちょっと悪い事をしてしまった気がする。
「ドーベル、どうしたの?この時間に来るのは珍しいね」
「ブライトから今日お財布忘れた、って聞いたんだけど本当?」
今度こそ。お願いだからまだ昼食は食べていないで、と祈りつつトレーナーに尋ねる。
「えっ!?……ああ~、まあ本当だよ。お昼抜くか宿舎に取りに行くか迷ってたんだけど。取り合えずひと区切りついたらどうしようか決めようと思っててね」
どうやらブライトの言ってた通り本当にお財布を忘れて昼食を食べられていなかったらしい。トレーナーにとっては災難かもしれないけれど、アタシにとっては幸運だ。
「あのさ……今日アタシ、お昼お弁当にするつもりだったんだけど、アタシので良ければ食べる?」
「それだとドーベルはお昼どうするんだ?」 - 11◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:03:28
当然の疑問だと思う。けど流石にその返しは予想してた。
「アタシはほら、食堂使えばいいし。それにわざわざ宿舎までお財布取りに戻るのも大変でしょ」
「……いいのか?」
「たまたま!たまたま今日はお弁当だっただけだから!だから……はいこれ」
そう言って押し付けるようにしてお弁当の入った包みをトレーナーに手渡す。
やっと。
やっと渡せた。
「ありがとう!助かるよ!」
「そ、それじゃ!アタシブライト待たせてるから!」
「いや、どうせならお昼一緒!に……」
トレーナーが何か言っていたような気がしたけれど、今はとにかく気恥ずかしさを誤魔化すように脱兎の如く逃げる。
心臓の拍動が早まってるのは、走ってるせいなだけじゃない気がする。
─・─・─・─
~Trainer's View~
「は、速い……」
どうせならお昼を一緒に食べようと思ったのだが逃げられてしまった。ただブライトと一緒に食べるみたいだし邪魔するのも悪いからそれで良かったのかもしれない。
(ブライトには今度お礼しなきゃな……) - 12◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:03:54
『……ねぇ、ちょっと頼みごとを引き受けてくれるかな?ドーベルに俺が財布を忘れて昼食をまだ食べてない、って伝えてもらえないか?きっとそうしたら俺のところに弁当を渡しに来てくれると思うから』
ブライトにはドーベルに俺が財布を忘れて昼食を食べてない、という事を伝えてもらうよう頼んだのだがしっかり頼みを果たしてくれたようだ。
勿論財布は忘れてないし、とっくに昼食だって食べ終えてる。
ただ……愛すべき担当ウマ娘が自分の為に作ってくれたお弁当を無駄にするのは心苦しくて。多少無茶をしてでも食べたいと。そう思った。
早速ドーベルから受け取った浅葱色の包みを解くと黒色の、二段の弁当箱が入っていた。
(これで自分のお弁当は無理があるよ、ドーベル)
女の子のお弁当箱と言うにはあまりにも似つかわしくない、シンプルな弁当箱。それに彼女は自分には似合わないと遠ざける事もあるが、可愛いもの自体は好きだ。このデザインの弁当箱を好んで使ってる、とは到底思えない。
渡される時に『たまたま今日はお弁当だっただけ!』と言っていたが……。その言い訳はこのお弁当箱の前では無理が過ぎるだろう。
蓋を開けてみるとタコさんウインナーやハートの形に盛り付けられた卵焼きなど、弁当箱の見た目に反して可愛らしい盛り付けがされていた。
(……ドーベルらしいな)
このお弁当自体が突き放したような言い方をする時もあるが内には優しさを秘めたドーベル自身の姿となんだか重なってしまい、思わず笑みが零れる。
「……いただきます!」 - 13◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:04:15
好物である唐揚げをひとつ口に入れる。
「ん!……手作りか?これ」
お弁当のから揚げと言えば前日の夕飯のおかずが唐揚げでもない限り冷凍食品な事が多い。なのにわざわざ手作りで作ってくれるとは……嬉しさが込み上げてくる。
しかし唐揚げまでも手作りとなるとこのお弁当に冷凍食品らしきものは見当たらない。全て手作りした……という事だろうか。
「凄いな……」
朝練もあって決して時間に余裕があったとは言えないのに。
「うん……美味しい……」
綺麗に巻かれた卵焼きも食べてみる。
「久しぶりに食べたな……卵焼き……」
甘じょっぱい卵焼きは好みにも合っていて。
「また食べさせてもらえないかな……」
思わず、また、を願ってしまうのだった。 - 14◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:04:37
~Dober's View~
放課後。
お昼の時は逃げ出してしまったけれどトレーニングもあるのだから当然放課後には顔を合わす。あの後ずっとトレーナーが美味しいと思ってくれたのかどうか気になって気が気じゃなかった。期待半分、不安半分な気持ちを抱えてトレーナーに聞いてみる。
「ねえ、トレーナー」
「ドーベル、昼はありがとな!お弁当美味しかったよ!」
「え、あ、うん。それなら良かった」
聞くまでもなくトレーナーの方から答えてくれた。
本当は舞い上がるほど嬉しいけれど、あくまで自分のお弁当を渡した体。あまり喜びすぎるのは反応としておかしいと思うから冷静に務める。
それでも嬉しい気持ちは抑えられなくて、つい尻尾の振りが強くなってしまっている気がする。
「……どれが美味しかった?」
「え?あ~、唐揚げと後卵焼きが特に!好きだからかもしれないけど」
「……ふ~ん、そうなんだ」
トレーナーが好き、と言っていたので特に頑張ったつもりだったけれどちゃんと美味しいと思ってもらえたみたいで少し頬が緩んでしまう。 - 15◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:04:48
「弁当箱は洗って返すよ」
「え、いや!そこまでしてもらわなくてもいいから!」
「……そういうと思って買ってきておいて正解だったかな。はいこれ」
そう言って洋菓子店のクッキーを2包み手渡される。お弁当を食べた後買いに行ったのだと思うけれど今日トレーナーはお財布を忘れていたはず……。お財布を取りに行って洋菓子店まで行く余裕があったのかな?と少し疑問に思う。
お弁当ひとつでそこまで気を使わせてしまったのは少し申し訳ない気がする。
「ここまでしてくれなくても良かったのに……」
「あ~、ちょっと腹ごなしも兼ねてね。ブライトにも1つ渡しておいてくれるかな。危うくお昼食べ損ねるとこだったし」
(そこまで多い量だった訳じゃないと思うけれど……)
正直トレーナーに小食なイメージはないので違和感が拭えない。たまたま今日はそういう気分だっただけ、と言われればそれまでだけれど。
まあ、今更気にしていても仕方ない。それに美味しいとは言ってくれたのだし、そこは素直に受け取っておくべきだと思う。
「改めてありがとな!また食べてみたいくらい美味しかったよ!」
「アンタがそう言うなら……考えとく」
流石にそこまで褒められるのはこそばゆいけれど。そこまで言ってくれるのなら今度こそ。
トレーナーの為に作ったから食べて欲しいと、直接伝えたい。 - 16◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:05:01
みたいな話が読みたいので誰か書いてください
- 17二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:06:52
ちょうどいま出版されましたね
- 18二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:07:24
- 19二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:07:44
疲れた脳味噌が回復していく…
- 20二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:08:22
- 21二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:08:28
毎度ブライトのアシストぢからがハンパないな
- 22二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:09:47
ああ~乙女ジロ~~!!!
ベルちゃんにはベッタベタなシチュが似合う - 23◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:10:43
という訳でドーベルのお昼ボイスネタです。
バレンタインの育成イベント的にお菓子作りは問題なく出来てる訳だし普通にレシピ見ればちゃんと作れる子だよね?という解釈で書いてます。
ただ渡すことに関しては本当にどう考えても自分から渡せそうにないのでブライトにアシストしてもらうしかありませんでした……。バレンタインイベントの意味を知る。
「栄冠のパティスリー」でどっかに生徒が自由に使えるキッチンスペースがあるのは分かるんだけどあれどこ……?という事を一生悩み続けて書きました。あれどこ……?
取り合えず寮内に共同のキッチンスペースがある、という前提で書いてみてます。
ついでに食堂もウマ娘は学費に入ってるだろうから無料だろうけどトレーナーたちは食券買ったりしてるのかな……?という謎も一生解決しなかったので社員食堂的なノリでお金は払ってる、という事で話を進めています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。 - 24二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:11:13
好きです!!!!!
ありがとうございます!!!!!! - 25二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:12:52
このトレーナーURaRa読んでた?
- 26二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:15:37
甘酸っぺぇ!好き!
- 27◆y6O8WzjYAE22/05/27(金) 22:18:55
一応酉だけは設定してますけどなんでバレるんですかね……
- 28二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 00:15:59
毎回素晴らしい熱量だな……ありがとうございます
- 29二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 00:22:50
ドーベルssナイスやで!
- 30二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 00:31:46
前作?の少女漫画の話も最高だったが、今回もまた素晴らしい…
- 31二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 11:20:45
めっちゃ好きやわ...アルダンの人だよね...ss総合スレには置いた?
- 32二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 16:44:45
素晴らしいSSでした
ありがとう - 33◆y6O8WzjYAE22/05/28(土) 17:28:18
- 34二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 18:29:37
ベルちゃん可愛いssはなんぼあっても良いですからね
- 35◆y6O8WzjYAE22/05/28(土) 23:34:03……トレーナーって水族館好きなの?|あにまん掲示板中京レース場でレースがある為、遠征へ向かう道すがら。新幹線での移動中の暇を潰すべくアタシ、メジロドーベルはスマホで漫画を読んでいた。「水族館かぁ……」今読んでいる漫画が水族館回だった為、無意識に声が零…bbs.animanch.com
完全に忘れておりましたが一応前作です
繋がりとかは特に考えてないので読まなくても大丈夫ではあります
- 36二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 07:48:38
健康に気を遣って毎秒投稿しろ
- 37二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 17:44:30
すげぇ良かったです!
- 38二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 17:49:18
そこに無いなら無い…ありました
- 39後日談1/2◆y6O8WzjYAE22/05/30(月) 03:22:01
数週間後。
「はい。アンタ前にまた食べたい、って言ってたでしょ」
「え!?いいのか?」
朝練の後、お弁当の入った浅葱色の包みをトレーナーに手渡す。
「ごめんな、気を遣わせちゃったみたいで」
「別に。練習のついでだから」
あの時は素直に「トレーナーの為に作ったから食べて欲しい」と伝えたいと思っていたけれど。
(や、やっぱり無理!)
流石にそこまでの度胸はなく。それとなく理由を付けて渡すしか出来ない。でも、ちゃんと朝手渡せてるだけ一歩前進してると思う。
「そうだ!折角お弁当も貰っちゃったし昼は一緒に食べないか?」
「え!?それ持って食堂に来るの……?」
「そうだけど?何か不味いか?」
不味い……というか恥ずかしいというか……。傍から見れば誰が作ったお弁当かは分からないし問題ないとは思うのだけれども。万が一バレた場合の時を考えると頬が茹で上がりそう。 - 40後日談2/2◆y6O8WzjYAE22/05/30(月) 03:22:16
「だ、ダメ!だって他の子達だってお昼食べるのに、注文もしてないのに席を占有するだなんて迷惑でしょ」
別にそんなことを気にする必要はないくらいトレセン学園の食堂は広いのだけど。
「あ~……それもそうだな……じゃあ一人で食べる事にするよ」
分かりやすいくらいにトレーナーがしょげる。……トレーナーなりにアタシに歩み寄ってくれようとしてるのは伝わってくるのでちょっぴり罪悪感は感じる。
「そんなにお昼一緒に食べたいんなら今度からアタシの分も作ってくるから……」
「本当か!?じゃあ、また作ってくれる時があるなら頼むよ!」
「い、いつになるかは知らないから!」
(定期的にトレーナーにお弁当を作るだなんて……なんだかその……あ、愛妻弁当みたい……)
確実に余計な事を考えたと思う。別に毎日作るわけではないし、トレーナーがどう思ってるかは知らないけれど。
「あ、アタシもう教室行くから!」
「ああ、また放課後な」
でも、いつの日か。
本当に毎日お弁当を作る日が来るのかな……なんて。柄にもない事を考えてしまった朝だった。 - 41◆y6O8WzjYAE22/05/30(月) 03:23:05
ちょっとあざとすぎかなぁ……と内心思いつつ。
感想をいただいたお礼に置いておきます。
これ以上は膨らまないので落とすなりなんなりしてください。 - 42二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 13:24:24
めっちゃ良き