アタシは二人の孫なんだ

  • 1二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:50:39

    ──深夜、三女神像前。
    メジロマックイーンとそのトレーナーは、ゴールドシップと向かい合っていた。
    「何を言っているのです」
    両手をわなわなと震わせながら、メジロマックイーンはわずかな声を絞り出す。目の前に、信じられない光景が広がっていたからだ──ゴールドシップの体が、きらきらと夜の闇の中で輝きながら、徐々に薄れていっている。
    「だからさあ」いつもの態度でゴールドシップは答えた。「アタシは未来からやって来て、これから帰るとこなんだ。ばあちゃんに会いたかったんだ。……マックイーン、オマエのことだよ」
    「い、意味がわかりませんわ!」メジロマックイーンは声を荒らげた。「そんな荒唐無稽なこと、いくら貴方だからって──」
    「でも、こうして消えかかってる」ゴールドシップは肩をすくめた。
    しん、と静まり返った学園内は、昼間の喧騒の方が夢であるかのように、沈黙に包まれる。
    「もっかい言うぜ」ゴールドシップは不敵に笑った。「アタシは写真でしか見たことないばあちゃんに会いたかった。未来のトレセンに通ってても、その気持ちは変わらなかった。いや、むしろ強くなったな。だってさ、みんなマックイーンのこと知ってるんだぜ? すごいすごい、って。優しくって、品があって、誰よりも強い──そんなウマ娘だったって、みんな言うんだ。だから会いたかったんだ。いったいどんだけ真面目で面白くねーヤツなのか、確かめたくてしょうがなかった。……ま、アタシの想像は外れてたけど」

  • 2二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:50:52

    こつん、とゴールドシップは三女神像を叩く。
    「コイツらがアタシをこの時代に跳ばした。理屈はわかんねーけど、世の中不思議なことなんていくらでもあるからな。始まりは未来のここだった。だから、終わりも過去のここなんだろう」
    今にも飛びかかりそうなメジロマックイーンを、トレーナーが制する。
    「さっすがトレピッピ、よくわかってんじゃん。ほら、もう像にも触れないんだぜ。ゴルシちゃん、なんだか幽霊になった気分」
    「ふざけないでください!」
    「……ごめんって。悪かったよ、ばあちゃん。だから最後は笑顔を見せてくれ。それでお別れにしようぜ」
    「こんなっ」メジロマックイーンの頬を、大粒の涙が伝った。「こんな、こんなことって……」
    「ありがとう」ゴールドシップは微笑んだ。「でも、本当ならアタシらは会えなかったんだ。感謝はしても、恨むのは筋違いってもんだぜ」
    光が、いっそう強くなる。
    ゴールドシップの体は、もはやその背中の向こうが透けて見えるほどに、薄く微かに形を保っているのみだった。
    「そろそろ時間切れだな。しっかし、トレーナーがアタシを担当するって言った時は焦ったぜ。だったらマックイーンと結ばれねぇじゃん、ってな。ゴルシちゃん、消滅の危機。まあ、うまく収まりそうでよかったよ。……ばあちゃんもじいちゃんも、仲良くしろよ。じゃなきゃアタシが産まれないからな!」
    トレーナーは、このウマ娘の奇妙な言動の数々を、今になって理解した。すべては、自分とメジロマックイーンを引き合わせることが目的だったのだ。
    「じゃ、アタシはこれで帰る。オマエらの人生、ちょっとは面白くなったろ?」
    「待っ──」
    メジロマックイーンが、手を伸ばす。
    月明かりに照らされた白い指先が、むなしく宙を掻いた。まばゆいばかりの光は、もはやどこにもない。ゴールドシップというウマ娘など、はじめからいなかったかのように、そこにはただ夜の闇が広がるばかりだった。
    崩れ落ちそうになる彼女の体を、トレーナーは支える。小さな肩、細い腕。これから共に歩み、困難を乗り越えていかなければならない一人の女性を、人生を懸けて守り抜くのだと心に誓った。

    二人の孫だと語ったゴールドシップというウマ娘は──次の日、普通に練習に参加した。

  • 3二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:51:08

    おやすみなさい

  • 4二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:52:22

    文豪だ……

  • 5二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:52:55

    うん😢

    うん?🤔

  • 6二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:52:55

    「行って帰ってが出来るなら、また来れるって寸法よ」

  • 7二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:53:18

    なお、明日の練習には間に合う模様

  • 8二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:54:03

    >二人の孫だと語ったゴールドシップというウマ娘は──次の日、普通に練習に参加した。

    ???????????

  • 9二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:54:14

    ゴルシのバカはどこですの!?!?!?

  • 10二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:55:41

    パズドラリズム「おい」

  • 11二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:56:02

    そういう運命だったんでしょ(思考放棄)

  • 12二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 23:56:52

    マックイーンの孫になるにはマックイーンに生やすしかないんだよなあ

  • 13二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:00:30

    最後で笑った
    感動を返せや(感涙)

  • 14二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:01:48

    最後以外は好き

  • 15二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:02:44

    ええ話やなぁ🤔🤔🤔🤔🤔

  • 16二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:03:47

    帰るとは言ったけどもう戻れないとは言ってない…?

  • 17二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:04:53

    ふたりでてっきりカフェのお友達👻かと

  • 18二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:08:01

    良いオチだ
    おやすみ

  • 19二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:08:51

    一旦消滅したのは謎だけど人体の発行に付いては心当たりがあるな…

  • 20二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 06:46:50

    おはようございます
    読んでくださってありがとうございました
    ゴルシタイムトラベラー説×史実のゴルシとマックイーンは会ってない×バックトゥザフューチャーでした

    今日も面白おかしく一日を過ごせるといいですね

  • 21二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 06:47:53

    カッスレかな?

  • 22二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 07:09:43

    でも本当はゴルシとマックイーンはなんの血縁もないんだよね......史実の父はいい先輩にしかならない

  • 23二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 07:10:43

    面白かった。
    ゴルシとBTTFの親和性はなんなんだろうね。

  • 24二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 07:11:22

    >>10

    仕方ないとはいえこういうネタでほぼ存在ガン無視されるパストラリズムばあちゃんに哀しき現在

  • 25二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 07:12:35

    「逆算してみたんだけど〇〇年の×月にウチのかーちゃん仕込んだらしいからよろしくな!!」

    とプレッシャー掛けてくるゴルシ

  • 26二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 07:14:44

    >>25

    (つまり、その日にはトレーナーさんと・・・!)

    って感じで今からかかってしまうマックちゃんは私性合

  • 27二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 10:29:48

    >>24

    トレーナーの母親がウマ娘ってことにしてねじ込む脳内補完で何とかなんないだろうか

    何だったらトレーナーの名前が「蓮虎律動」みたいな感じだったりするとか……は流石にキツいか……

  • 28二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 10:35:25

    >>25

    それ言い出すとウマトレ全部無理だし、全員女の子のウマ娘の存在事態が……

  • 29涙返せゴルシ22/05/30(月) 10:39:14

    ゴルシならこのオチだと思ったよ

  • 30二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 10:48:43

    ふふふ、お話は大変面白かったのですが、ゴールドシップさんが私の孫……と言うのが流石に無理な設定ですわね?全然似ていませんもの。

  • 31二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 10:50:59

    まあゴールドシップだし、こんなのを真に受ける我々が悪い

  • 32二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 10:56:50

    ゴルシ未来人概念すこ

  • 33二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 10:59:25

    しかし。
    マックイーンはおおよそ全てを把握していた。ゴールドシップにとって自分は祖母であり、そこにたどり着くために様々な苦難を超えてきたということを知っていた。
    だからこそ、マックイーンはそれを放っておいた。彼女の努力を無駄なものとすることは、先人としての慈悲が許さなかったのである。
    ゴールドシップが眠りについた彼女の部屋に音もなく忍び込んだマックイーンは、いそいそと隠しもののありそうな場所を探す。自分に似た精神性を持つゴールドシップのやりそうなことは、およそ予想が可能である。
    「──あった」
    そこには、1冊のメモ帳があった。
    「芦毛」「ばあちゃん」「マックイーン」などといった言葉が並べられたそのメモ帳が何を意味しているのか、マックイーンには簡単に理解できた。
    「ごめんなさいゴールドシップ。あなたのためにもこれ、お借りします」
    彼女はひとつ大きな間違いをしている。おそらくは彼女の記憶、そして言い伝えからメジロマックイーンが自分の祖母であると断定しこの過去に来たのだろう。だが、正答は■■■■■■■である。メジロマックイーンは、少なくともこの世界において彼女との血縁関係にはないのだから。
    メモ帳を懐にしまい、再び音もなく歩き出す。ゴールドシップが正しい解を導けるよう、恩を売らぬようにメジロマックイーンは走り続ける。

  • 34二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 11:04:56

    それにしても、とマックイーンは思う。
    何月何日頃に仕込まれる、それを今から計算するとなかなか困難な道を極めている。未だにマックイーンは■■■■■■■どころか■■■■■■■■とすら出会っていない。未来人説を真に受けるのなら彼女たちは今頃マックイーンと近い場所に存在してもおかしくないと言うのに。
    「......たとえ彼女たちが存在しても、私が接触して『因子』を与えないと意味が無い......!」
    特定のウマ娘の作成に必要なのは「因子」だ。ただウマ娘と男がくっつくだけでは新しいウマ娘しか生まれない。メジロマックイーンの因子を直接であって得た彼女たちだけが、誰かとの間に金の船や金細工師を産み落とすことが出来るのだ。

    時間が無い。ゴールドシップを成立させるためなら、マックイーンはより一層の努力をしなければならない。
    「だるいですわね......」
    涼し気な夜、芦毛の少女はため息を着いた。

  • 35二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 11:10:19
  • 36二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 11:14:31

    >>28

    これアンカ間違えてた


    >>24だったね

  • 37二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 11:26:02

    未来で待ってるしたのに明日だって未来には違いねぇだろ?された感

  • 38二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 11:31:51

    >>30

    わぁ、G1で立ち上がったりスタミナですり潰したり超そっくり

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