- 1二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 21:30:39
小さい頃から、寝たふりが好きだった。
リビングで寝たふりをすると、少し笑って夫婦だけの会話を楽しむ父と母の会話を聞くのが好きだった。
膝に頭を乗せて優しく撫でてくれる母の柔らかい手が大好きだった。
布団まで運んでくれる父のゴツゴツした手が好きだった。
自分だけがいなくなった世界で他の人が送る生活の音が好きだった。
それは大人になっても変わらない。
ここは音で溢れている。
靴が地面を叩く音、服が擦れる音、笑い声、話し声、怒声、ホイッスルの音、チャイムの音……
ソファーにもたれかかって目を閉じると音が自分を満たしてくれる。
しばらくすると、布をかけられた感触と誰かに頭を撫でられた感触がする。担当だろうか?たづなさんだろうか?それとも桐生院さんだろうか?
そういえば誰かに頭を撫でられるのはすごく久しぶりだった気がする。
後少しだけ目を閉じていよう。もう少しだけ寝たふりをしていよう。
だから、ぎゅっと目をつぶった。 - 2二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 21:43:49
担当はおマチさんかな?
- 3二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 21:59:48
続きはないのですか?
- 4二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 22:24:03
授業の終わりを告げるチャイムが響く。
ガヤガヤと口内を生徒の声が満たす。今日のトレーニングの時間の始まりだ。
寝たふりをやめて、身だしなみを整える。
昔は…と言っても学生の頃なのだが、その頃は身だしなみというものに点で頓着がなかった。
服は着れればなんでもよかったし、髪も邪魔じゃなければなんでもよかった。
トレーナーになるということで、人様に恥ずかしいところは見せられないと母に怒られようやくオシャレというものをやってみてはいるが、やっぱり上下ジャージに短く切り揃えた髪が一番しっくりくる。
眠気覚ましにほおを叩いていると、コンコンと扉を叩く乾いた音が響く。
大きなカバンを持った担当がやって来た。忘れていたが今日は夏休み前最後の授業日で荷物を持ち帰らなければならないらしい。やはり、いつの時代でも学生は休み前の最後の日に大荷物を抱えて帰るというのは変わらないようで、妙な安心感すら覚える。
とりあえず、トレーナー室の隅に荷物をまとめて置かせて、談笑でもしながらトレーニング場へ向かい、いつも通りにことをこなす。
だいぶ手慣れたもんだと自分でも思う。
すっかり日も暮れた頃、今日の日程を終えてトレーナー室に戻っていた時、担当からこんなことを聞かれた
「お昼寝好きなんですか?」
担当の目には寝たふりが昼寝に見えるらしい。
はて、なんと答えたものか…… - 5二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 23:29:50
いいですねえ
- 6二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 23:37:03
妙に人間らしくて好き
- 7二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 01:01:38
雰囲気好き……
- 8二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 01:04:06
なんかいいなぁ
保守 - 9二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 01:11:54
この感じ好き(語彙)
- 10二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 07:08:46
トレーナーのSSもいいですね
- 11二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 14:44:22
いいですね...