- 1◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 12:23:24
- 2二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 12:24:17
このレスは削除されています
- 3二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 12:28:43
フロストだったらルイスが増えてスマホやpcがヤバかった
- 4二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 12:32:58
スカイリムの馬って結構遅いよね
斜面の登り降りは凄まじいけど - 5◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 13:01:13
放課後、彼女――シャドウメアがグラウンドを走るというので様子を見に来た。
どうやら模擬レースではなく、外周を走るスタミナトレーニングのようだ。
「トレセーン!ファイっ!」
「「「「「オーっ!」」」」」
「ファイっ!」
「「「「「オーっ!」」」」」
……1周、2周、3周。少しずつ速度が落ちつつも、外周を回り続ける一団。
その前方に走り始めと全く速度が変わらないシャドウメアの姿があった。
4周、5周、6周。
慣れていない子たちがバテてグラウンドから外れる。シャドウメアの速度は変わらない。
7周、8周、9周。
ほとんどの子たちが残っていない。シャドウメアの速度は変わらない。
10周、11周……この時点で既に彼女以外は脱落している。シャドウメアの速度は変わらない。
「何あの子、顔色一つ変えてない……!」
「待って、走り始めと速度変わってなくない!?」
「途中からラップタイム測ってるんだけど……誤差がほとんどないよあの子」
12、13、14、15……止まらない。速度も落ちない。
周囲の子たちからどよめきが上がる。
「な、何アレ……なんであんなに走ってまだ速度を落とさないの!?」
「……ま、負けてられない!」
「私だってぇ!!」
脱落した子たちが徐々にグラウンドへと戻り、駆け出す。
それでもなお、彼女は顔色一つ変えず、延々と走り続けていた。
彼女が足を止めたのは、間もなく100周目に差し掛かる頃だった。 - 6◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 13:29:38
とんでもない新人がやってきた、などと噂になるのはあっという間である。
翌日の放課後には彼女に模擬レースを挑む子たちが続出していた。
当の彼女は、何やら困っているような表情を浮かべている。
「さ、早くレースを始めましょう!」
「ゲートの使い方がわからない?大丈夫よ、教えてあげるわ!」
「このゲートが開いたと同時に走るの、いい?」
「もしかしてレース形式で走ったことないの?」
「えっ、本当に!?」
ゲートイン間際だというのに彼女への質問の声は絶えない。相変わらずシャドウメアは困ったような表情を浮かべたままだ。
ようやく彼女を含んだ8人のウマ娘がゲートインを果たす。
芝コースの2400mを想定したコース。
ゲートが今、開く。 - 7二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 13:30:44
巨人とか弱めのドラゴンならタイマン張れるし死んでも生き返るやべーやつ
- 8二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 13:34:44
アルヴァクちゃんも召喚しよう
- 9◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 13:59:22
――遅い。
シャドウメアの走りを見た周囲の子たちも、それを遠目に見ていたトレーナーたちも、抱いた感想は同じであった。
とにかく遅いのだ。
スタートダッシュはそこまで遅くなかった。むしろ早かったとさえ言えよう。
しかしある一定の速度に到達したのが100m地点、そこから一切速度を変えずに彼女は走った。
スパートをかけることなく。
レース結果、彼女は8着。7着の子とは大差である。
それなのに、息一つ切らさず走り抜き、未だに困ったような顔のままだ。
「アレ、何?手加減?」
「余裕、って感じよね」
「何か言いたそうにしてるけど……」
取り巻いていたウマ娘たちが先程とは違う目を彼女に向ける。
マズい。
「今の彼女の走りを見たか?」
唐突に後ろから声をかけられる。驚いて振り向いた先には生徒会長……シンボリルドルフ会長がシャドウメアの方を見つめながらこちらに歩み寄ってくる姿が見えた。
慌てふためく自分をよそに、続けて口を開く。
「スタート後、100mほど走った時点で彼女の速度は上がらなかった。いや、あのフォームから見るに"上げる方法を知らなかった"のだろう」
確かに、あのフォームは昨日グラウンドを駆ける姿と大差がなかった。
もしかして彼女は――速い走り方を知らないのか? - 10二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 14:23:28
平地での速さ比べとかスカイリム産ウマ娘がもっとも苦手なものだと思うんですけど(名推理)
- 11◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 14:29:37
模擬レースから1時間ほど経った頃には、彼女の取り巻きは影も形もなくなっていた。夕焼けに染まりながら、彼女はグラウンドで一人走っている。そんな彼女から目を離せず、遠巻きから眺めているのは自分一人のようだ。
また99周目が終わりかけた頃、彼女はようやく足を止めた。息を切らせ、汗を流し、深く長い呼吸を繰り返す。
声をかけようか悩んでいると、こっちに気づいたらしい彼女が近づいてきた。
「……また会いましたね」
「そ、そうだね」
「どうかしましたか」
「い、いや。君の練習の様子を見ていたんだ。すごいスタミナだね」
「ありがとうございます」
深々と礼をする彼女。気付けば先程まで乱れていたはずの呼吸が整っている。
「……今日の模擬レースは残念だったね」
「はい」
顔を上げた彼女は、少し前ずっと浮かべていた困惑の表情をしていた。
「君は、どうしてここに?」
「走りたくて」
「し、シンプルだね」
「はい」
「よければ、今まではどこで何をしていたのか教えてもらえないかな?」
「北」
この子、短い言葉でばかり返事を返しているような……そういえば、発音が危ういというか初めて会った時からあまり長い言葉を聞いていないような気がする。
「走っていました」
「……北の方で、というと北海道とか?」
困った顔のまま首を横に振るシャドウメア。その後の返事はなく、暫くの間静寂が続いた。 - 12◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 14:52:46
時は少し前、レース終了直後まで遡る。
シンボリルドルフはシャドウメアを見つめながら、こちらに話を振ってきた。
「理事長から、彼女は少し特殊な境遇にあった子だと聞いている」
「特殊な境遇?」
「詳しい話までは聞いていない。理事長かたづなさんか……または彼女本人に聞いてみないことには、事の次第は分からないな」
「……」
「……よくない騒ぎ方をしているな。止めてこよう」
そういうと彼女はざわめき始めたグラウンドへと向かい、数分もしないうちに場を収めた。
そしてぱらりぱらりと人影が消えて……時は現在へと戻る。
「もっと、北」
「が、外国?」
まだ困ったような顔をしているが、シャドウメアはその言葉に納得したように頷く。
となると、彼女が短い言葉でばかり話すのは日本語がまだよくわかっていないからなのか?
「働いていました」
「え?」
「たくさん、荷物、運んでいました」
「住んでいた所で、ということかな?」
頷く。この尋常ではないスタミナはそこから来ているのだろうか。 - 13◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 15:10:09
「走るだけ」
「えっ?」
「走るだけ、しあわせ」
シャドウメアは少し微笑み、確かにそう言った。
……この子は一体何を抱えているんだろうか。
踏み込むべきか悩んでいると、ふと夕陽が沈み切るのが目に映った。
「しまった、随分と長居してしまったな……シャドウメア。君も今日はもう寮に帰りなさい。門限が近いはずだよ」
「はい」
素直に言った事を聞き、帰ろうとする彼女。
その途中で彼女は振り返り、こちらに向かって口を開いた。
「さようなら」
「はい、さようなら。また明日ね」
「はい」
……言語の壁はそこまで厚くないらしい。
自分も残った仕事を済ませて、早く帰らなければ。 - 14◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 16:08:32
翌日以降のシャドウメアもほとんど変わりなかった。
真面目に授業を受け、放課後には99周走る。
一通り終わると寮へと帰っていく。
そんな一日が彼女のルーティンとなっているようだ。
何か変わった点といえば、ほんの少しずつ1周の時間が短くなっていることくらいだろうか。
「あの子、編入当初はすごく持て囃されてたけど……」
「今となってはみんな眼中にないって感じね」
「毎日ずーっと外周走ってるのはすごいよね、しかもずっと同じ速度」
「でもそれだけでしょ?レースじゃ速く走れないウマ娘は評価されないわ」
食堂を通り過ぎようとするとそんな話が聞こえる。
あの日から、シャドウメアの評価はどんどんと下がっていく一方だ。
しかし、未だに彼女から目を離さない人達も居た。
例えばシンボリルドルフ会長。彼女はシャドウメアの圧倒的なスタミナに可能性を見出している。
例えばアグネスタキオン。彼女はシャドウメアのフィジカル面全体に目をつけたらしく、近頃よくグラウンドで目撃する。
例えばサクラバクシンオー……彼女はある意味いつも通り学級委員長らしくあろうとする上でシャドウメアを気にかけているだけなのかもしれない。
そして、自分。
あの日から、無尽蔵とも言える体力と不思議なまでに乱れない彼女に惹かれて、毎日のように見続けている。
……"もったいない"。シャドウメアを見るたび、あの模擬レースを思い返すたびにそう思ってしまう。 - 15二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 16:22:42
確かスタミナ無限なんだよね。
- 16二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 16:25:57
カドラン賞とか4000mなら行けそうなきがする...
- 17二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 16:30:44
元々海外か別世界設定のようだしモンゴルダービーに出走する方が誰にとっても良いのでは・・・?
- 18二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 16:31:31
ゲーム内ステータス
LV50、体力:887、スタミナ:198
片手武器:100、弓術:100、防御:100、隠密:100
つよい(確信)
これに加えてスタミナの回復量が異常に多いせいか全く息切れしないので距離が伸びるほど相対的に駿馬になる - 19◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 20:31:43
午後の仕事に手をつけようとした時、たづなさんに声をかけられた。なんでも、理事長が呼んでいるので一段落したら理事長室まで来るように、との事だ。一体どうしたのだろう。
そんなこんなで言われるがまま理事長室までやってきた。毎度思うがこういうのだけは何度やっても慣れない。理事長に怒られたりしたことがないからそういう意味では怖くないのだが……
コンコン「許可ッ!入ってくれ!」
相変わらずの豪胆な物言いに少し驚きながらも入室する。
大きな机の奥にあるこれまた大きくて立派な椅子には、すこし背丈の小さな少女が座っている。この学園の理事長である秋川やよいだ。その傍では理事長秘書である駿川たづなさんもこちらを見て微笑んでいる。
「失礼します。招集に応じ馳せ参じました」
「大丈夫ですよトレーナーさん、そんなに畏まらなくても」
「驚愕ッ!?私自らが言うならともかく何故たづながそれを言うのか!?」
「話が進まなくなっちゃいますので、手短に?」
「承知ッ!君はあの編入生"シャドウメア"のことをよく気に掛けているようだな」
「えっと、はい。色々気になってしまって」
「感心ッ!新たな仲間を気遣うその心意気、大切にな!」
「理事長ー?」
「脱線ッ!?えー、シャドウメアの事なのだが!」
「はい、シャドウメアがどうかしましたか?なんだか特殊な境遇だとシンボリルドルフから聞きましたが」
「注意ッ!これからの話は私もはっきりとした確証や情報を得ていない、心して聞いてほしい!」
口調こそいつも通りだが至って真面目な雰囲気だ。横にいるたづなさんも真剣そのものといった面持ちをしている。
「吐露ッ!彼女は出身・経歴・詳細に至るまで一切不明、謎のウマ娘だ!」 - 20二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 20:45:03
面白いからどんどん続けて?
- 21二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 20:45:14
クエスト後の話だったら大事な家族(仲間)を失ってるんだよなそういや…
- 22二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 20:57:47
いいSS作者だ、ハチミツ酒を飲もう!
- 23◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 21:27:54
理事長によると。
シャドウメアは、少し前に三女神像の噴水の中で倒れている所をたづなさんが保護したウマ娘なんだそうだ。
曰く、発見時には衰弱しきっており、ほとんど骨と皮しか体にないような痛々しい姿だった。
なんとか救助して一命を取り留めたが、その後も暫くは気が抜けないだろうと医者に言われていたようだ。
しかしその予見は大いに外れ、二日も経たずに目を覚ました彼女はまるで暴風のような腹の虫を鳴かせ、たづなさんが土鍋で用意したお粥をものの数分でペロリと平らげた、とのこと。
そしてその後の事情聴取では殆どコミュニケーションが取れなかった、らしい。
たづなさんがあの手この手で意思疎通を図ったところ、原始的だが物に指を差すことで物の名前を伝え、なんとか"シャドウメア"という名前を聞き出せた……ということだ。
「……たづなさん、若干脱線してませんか?」
「ハッ……!すみません、あの時の大変さがフラッシュバックして……」
「同感ッ!私もたづなからシャドウメアについて調べて欲しいと言われた時には同じような気持ちだった!」
そこで先程の"出身・経歴・詳細その他一切不明"に繋がる、と理事長は続ける。
ありとあらゆる情報網を使って探しても見つからない名前。
あまりに見つからないので母国語で違う言葉を言われたのでは?と疑問にすら思ったらしい。
その間にシャドウメアはたづなさんとの会話を重ねていくうちに日本語を覚え始め、徐々に自分の事を明かしていった。
分からないことがあると困ったような表情を浮かべ、理解できたらニコリと微笑んだそうだ。
あの日出会ってからの意思疎通方法は、たづなさんと確立した物だったのか。 - 24二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 21:39:54
ドヴァーキンとの思い出話とかも書かれるんかな、楽しみ
- 25◆UlpelLUOzM22/06/07(火) 22:49:26
「……これが今まで彼女との出会いと会話で得られた情報です」
「えっ」
「困惑ッ!私も同じ気持ちだ!」
「理事長それさっきやりませんでした?」
「天丼ッ!しかし気持ちに偽りなし!」
「というのもですね……彼女の言う言葉のほとんどが分からないんです」
「分からない、というのは?」
「彼女の話す……仮に母国語とされる言葉ですが、英語に似ているような感じではあるものの、ところどころ違う上に全く当てはまらない言葉がたくさんあるんですよ」
「別の言語と照らし合わせても、ですか?」
「はい。例えばですけど、トレーナーさんは"ドヴァーキン"という単語を聞いたことがありますか?」
……全く聞いたことがない。その後も、"ソブンガルデ"、"イスミール"、"スカイリム"……それらの全く聞いたことのない単語が羅列された。この単語はシャドウメアが言った言葉で、特にはっきり聞き取れた言葉らしい。
「ドヴァーキンというのは彼女の家族のような人で、スカイリムというのは彼女の居た国……という事らしいのですが」
「不明ッ!これが詳細が分からないといった理由の際たるものだ!」
「……なんだか途方もない話ですね」
「嘆願ッ!そこで君に一つ頼みがある!」
「えっ」
「トレーナーさん。彼女の担当トレーナーになるつもりはありませんか?」
「……彼女の意思次第です。あくまで……担当としての役割は全て、お互いの合意の上で進むものですから」
「優秀ッ!君は本当に模範的なトレーナーだ、誇らしい!」
「それはもちろんです。ですが彼女がこの学園で心を許しそうなのは、今現在あなた以外に居ないんですよ」
学園内での彼女の評判は日に日に下がっている。先程の見識は未だに覆ることがない。そして今現在で彼女に最も距離が近いのは、確かに自分だろう。
もしも彼女が認めてくれるのなら……
「……もしも彼女が同意するのであれば、担当になりたいとは考えています」 - 26◆UlpelLUOzM22/06/08(水) 09:05:01
その言葉を聞いた理事長は満足そうに頷いた。
「歓喜ッ!君のその言葉が聞きたかった!」
「本当に助かります、トレーナーさん」
「いえいえ、こっちも本気で考えていますから」
「実際、私たちだけでは彼女をサポートし切れないと考えていたんです。彼女はどうやら"速く"より"長く"走ることを重要視しているようで、この学園で教えている走り方とは根本的に違いますし……」
「そういえば、何故トレセン学園に通うことになったんです?」
「明快ッ!別の場所へ彼女を送る事を、私が拒んだからだ!」
「えぇ……?」
「でも、身寄りのないウマ娘を他所へと移すのは不安でしたから」
言われてみればそうか。確かにシャドウメアにとっても言葉の通じない場所で相互理解を求め合える人と離れるのは怖いはずだ。
「トレーナーさん、これからの事は彼女次第でもあります。無茶を承知で引き受けてくださった事には感謝しますが、何よりまずは彼女と打ち解け、右も左も分からない彼女の支えになってあげてください」
いつもと変わらない優しい笑顔で、たづなさんはそう言った。
「提案ッ!まずは担当契約を結ぶ為、君から積極的に彼女にアプローチをしてはどうだろうか!」
いつもと変わらない豪快な笑みのまま、理事長はそう言った。
「……分かりました。やってみます」
そして自分もいつもと変わらない……いや、いつもよりも期待と不安に高揚した気分を乗せて、そう言った。 - 27二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 09:11:51
プレイしてたはずなのにシャドウメアのことが思い出せねえ
- 28二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 12:20:59
- 29◆UlpelLUOzM22/06/08(水) 15:29:57
そんなわけで、決意を言葉にした自分は理事長室を後にした。
午後の授業が終わるまではまだ間がある。
残った仕事を手早く終わらせてシャドウメアに会い、今後をどうするかを考えよう。
彼女自身に受け入れてもらえなかったら、それまでだが。
放課後。グラウンドには沢山のウマ娘が居る。
シャドウメアもすぐに出てきて外周を走るはず、なのだが……見当たらない。
「……調子でも悪いのかな」
少し本腰を入れて探してみる。が、やはり見当たらない。
「……おかしいな。どこに行ったんだろう」
「あのう、差し出がましい事かもしれませんが、もしかしてあの新たなウマ娘ちゃんをお探しで?」
ふと声をかけられる。声が聞こえた方を向くと大きなリボンの目立つピンク髪のウマ娘が立っていた。たしかこの子は……
「君は、アグネスデジタル……だったよね?」
「はい、アグネスデジタルです!っと、そうじゃなくてですね……あのウマ娘ちゃんならまだ来ないと思いますよ?」
「何か知っているのか?」
「いやぁ詳しくは……あくまで伝聞なんですけど、彼女が参加しているレッスンが長引いているみたいなんです」
失念していた。確かにウイニングライブに向けたレッスンの解散が少し遅れる場合も有り得る。
「成程!助かったよ、アグネスデジタル」
「いえいえいえ、礼を言われるほどではありませんからお気になさらず!ではあたしは日課に向かいますので、これで!」
ヘラリと笑った彼女はそそくさとその場を離れていった。
こちらもレッスン場に向かおう。 - 30三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/08(水) 16:01:48
突然失礼。どうも、筆者の三十路のおっさんです。
色々構想はしてるんだけど、今自分の中でお話というか登場人物について決めかねててはっきりしてないことがいくつかあるのでみんなに意見をちょっと聞こうかと。
・シャドウメアの見た目
原作通りの黒髪赤目までは決めているが、身長・体格・ヘアスタイル・アクセなどが細かく決まっていない。
・トレーナーの一人称
男性トレーナーを想定しているが「俺」で行くか「私」で行くか悩んでいる。正直書き手の自由な所だとは思うが、なんだか決めづらい。 - 31二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 18:46:21
バーベキューや焼肉に連れてったらふとした拍子に「あのこと」思い出しちゃいそうだね…この世界だとウマ娘だからアストリッドのこと見届けてそうだし…
- 32二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 20:04:23
一人称はあくまでシャドウメアがメインだから主張控えめに「私」でいいんじゃない?
- 33二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 06:15:58
このレスは削除されています
- 34二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 06:23:45
これは名作スレ
- 35◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 12:16:38
「もう一度、もう一度だ!」
レッスン場に近づくや否や、そんな声が響いた。
このハリのある声はもしや……そう思い覗き込むと、シャドウメアに対して片手を差し出すようなポージングを決めるテイエムオペラオーの姿があった。
他のウマ娘とレッスン指導のトレーナーは何故か一箇所に固まって座っている。
扉をノックし、入る。
「おお!観客がまた一人増えたようだ!!」
「……?」
「さあ!もう一度君の素晴らしい歌声をボクに聴かせておくれ!!」
何故ここにこの人がいるのか、と言わんばかりにキョトンとしているシャドウメア。そして全く気にする事なく自らの願望を投げつけるテイエムオペラオー。
……素晴らしい歌声?
「えっと、その――」
戸惑いつつも声をかけようとしたその時、スゥと短く息を吸う音が響いた。
――シャドウメアからだ。
♪〜
乾杯をしよう 若さと過去に 苦難の時は 今終わりを告げる
血と鋼の意志で 敵を追い払おう 奪われた故郷を 取り戻そう
この地に栄光を! 凍土の果てまでも タロスの祝福に 飲み歌おう
我らは戦う 命の限り やがてソブンガルデに 呼ばれるまで
それでもこの地は 我らのもの 今こそ取り戻せ 夢と希望を
〜♪
シャドウメアが歌い終わり、辺りが静まり返る。
途端、空間が割れるような拍手の音が、レッスン場に響き渡った。
……今の歌は一体? - 36二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 12:20:36
赤のラグナルじゃないのか......(落胆)
- 37二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 12:20:52
成し遂げられる人物ってわけね
気に入ったわ
「自分」って書けば男女両方対応可能だぞ - 38二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 14:48:13
俺でもええんでない?自分の好きな書き方で生み出せるのが創作の利点やし
見た目は個人的にはこんなイメージやけど、主さんがしたいようにすべきやで!
- 39◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 16:40:54
彼女の歌は本当に素晴らしかった。何のことはないアカペラだったが……なんというか、評価するための正しい言葉が見つからない。しかしオーケストラにも劣らないほどの、凄みや深みのようなものを確実に感じられたのだ。
「ハーッハッハッハ!やはり見込んだ通りの美しい歌声だ。君!ボクと新たなオペラを……!」
万雷とも言える拍手の中、高々と笑い詰め寄るテイエムオペラオー。片やシャドウメアはというと、また例の困惑の顔を見せている。
……そんな中、座っている一団の中で最も大きく何度も拍手をしているレッスントレーナーと自分の目がふと合った。
「――ハッ!?」
満面の笑みから一転、何かに気づいたかと思えば度肝を抜かれたような顔で息を呑み、設置してある時計を見る。どんどん顔が青くなり、汗が流れては少し震える。
「しまった!終業時間を当に過ぎている!?」
「いいじゃないか!さあ、もう一度!もう一度頼むよ君!!」
「〜〜〜〜〜〜よくありませんッッッ」
レッスントレーナー渾身の叫びが場内に響き、拍手がピタリと止む。何ならどよめきすら上がっていた。
「このレッスン場は放課後生徒がフリーで使う為の清掃が必要なのに……しまったなァ〜〜〜〜」
「……ごめんなさい。清掃、私、します」
レッスントレーナーの前に歩み寄り、深々と礼をしながらシャドウメアはそう言った。
「い、いやいやいやッッ」
「私、時間奪った。責任あります」
「困るよォ……ソレは私の監督責任で、無際限に歌わせてしまったのは私のせいだから、気にしなくていいんだよ。ネッ?」
「……駄目です?」
顔を上げたシャドウメアは雨に濡れた子犬のような表情だった。普通の人ならこの顔を向けられて何かをねだられたら断ることなんてできないだろう。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」 - 40二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 16:44:54
シャドウメアのケツを斬りまくって片手剣レベルを上げたのが申し訳なくなってくる
- 41二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 16:46:58
- 42◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 16:55:30
「あの、レッスントレーナー。いいですか?」
「!!」
声をかけた自分に向き、飛び上がりかねないほど驚くレッスントレーナー。構わず言葉を続ける。
「こうしている間にも時間は経ちますから、彼女の要求を受け入れて手伝ってもらうのはどうでしょう?自分も手伝いますから」
「そ……それもそっかァ〜〜〜〜……」
その間もシャドウメアの視線は切れない。
「分かりました……よろしくお願いしますッ」
そういうとレッスントレーナーは立ち上がり、解散の音頭を取る。促されたウマ娘は残念さ半分、解放感半分という感じで次々に去っていく。
「おっと、ドトウと約束した併走の時間が近いじゃないか!それじゃ、またその歌を聞かせておくれよ君!!」
若干不機嫌そうな顔をしていたテイエムオペラオーも予定を思い出したようで、そんなことを声高々に言い放って足速に去っていった。
なんというか、すごく自由な子なんだなあの子は。
「あの」
唐突に声をかけられた。その方向を見るとシャドウメアがこちらに向いている。
「ありがとう」
「いや、気にしないで。俺が勝手にやったことだし、君の考えを尊重したかっただけだからさ」
そう返すと、彼女は柔らかな微笑みを見せて深く礼をしてくれた。 - 43三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 16:57:18
というわけでトレーナーの一人称は「場合によって変わるけど基本的には俺」ということにしました。
……何でか知らないけど、このトレーナーが大神隊長に思えてきた。 - 44二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:10:39
天職はなんやろうな
山岳救助とか? - 45二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:20:29
スカイリム×馬娘はいいぞォ…
スカイリムの馬があまり速くないってのは、基本的にレース用の瞬発力高めの近代馬とは違って、長距離を想定した古代馬だからね、瞬発力のステ最低でもおかしくない - 46二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:24:34
シロディール時代のシャドウメアちゃんだったらまだ速かったんじゃないかな…馬体もシュッとしてた気がするし
- 47二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:24:37
適性でいえばシャドウメアはジョジョ7部の横断レースみたいなのが一番得意そう。
- 48二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:29:10
- 49二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:32:51
- 50二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:34:23
Wuld - Nah - Kest !
- 51二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:34:29
アルヴァクちゃんレース終わる度に断末魔上げて消え去ってそう
- 52二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:38:10
侵略の時代、ドラゴンボーンが来る、舌の歌もいいぞ…
- 53二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:40:48
- 54二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:43:14
ばんえいでも結果出せそう?
- 55二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:51:26
- 56二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:54:01
神々の祝福がありますように、スレ主
- 57二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:57:18
これは良スレ
キナレスの風に乗って、甘い香りだけが届くように - 58二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:03:46
- 59二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:06:12
- 60二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:11:01
Hoshu Ro Dah
- 61二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:12:02
ショールの髭にかけてこのスレを保守し続ける
- 62二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:13:13
- 63二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:15:17
- 64二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:16:21
(保守はしばらく)もういいだろう!
- 65二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:17:19
固有スキルかもしれん
- 66二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:38:26
ゆるして…ゆるして…
- 67二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:40:58
闇の一党出身のウマだし、やっぱりシシス関連のスキルとか?
- 68二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:49:32
クエスト後はきっと聖域で暮らしてただろうし、ナジルおじさんからもらった旅の服とか大事にしてそう(NPCにナジルというキャラクターがいるがその人は軽装備の達人)
- 69三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 19:22:34
清掃時のシャドウメアはとんでもなく手際が良かった。普段の清掃時間の半分もないというのに、体感1.8倍綺麗になったとはレッスントレーナーの談だ。
今はその後、シャドウメアと共にグラウンドへ向かっている最中である。
「……あの」
「ん?どうかしたかい、シャドウメア」
「何故、あの場所、来ました?」
「……君を探していたんだ」
「私?」
「うん。理事長とたづなさんから君の事を聞いてね」
その言葉を聞いたシャドウメアは足を止めた。
「本当ですか?」
「あぁ。といっても編入当初から君を気にかけていたからっていう、偶然みたいな理由なんだけど」
「そうですか」
「話を聞いただけではあるけど、大変だったみたいだね」
「……いえ」
「俺は君の支えになりたい……君の事が、知りたいな」
何だか口説き文句みたいになってしまったが、本心である事には変わりない。
真っ直ぐにシャドウメアの目を見て、そう言った……のだが、シャドウメアから返答がない。何かまずい事を言ってしまったんだろうか。
「す、すまない。気に障ったかな――」
しどろもどろになりながら謝罪しようとすると、シャドウメアがこちらに向かってきた。表情を変えない彼女になにやら底知れないプレッシャーのようなものを感じてしまい、ジリジリと後ずさって背を壁に預けてしまう。
一体なぜこんなに下がってしまったんだ?これこそ彼女に失礼じゃないか?などと思考を巡らせていると、彼女がこちらの胸元へとゆっくり右手を開いたまま突き出し……そのままピタリとつけた。彼女が向けた真っ赤で深い瞳に、自分の姿が映る。
「お前を見ている」
口を開いた彼女はそう告げ、そのままに微笑んだ。 - 70三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 19:26:05
- 71二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:26:23
- 72二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:27:12
- 73二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:28:07
バーさんの財布みたいに腹をかっさばいてやる!
- 74二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:29:17
「ここに来るべきじゃなかったな」とか言われなくて良かったねトレーナー
- 75二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:37:07
あんたに祝福あれだ、あんたが歩く先々で地面が揺れりゃあいい
- 76二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:37:29
トレーナー、メッセージが来た以上お外で不用意に寝れないな
- 77◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 19:52:39
――今まで見てきたシャドウメアは、人と関わる時以外ほとんど表情を変えなかった。
しかし今の彼女はとても上機嫌なのが明確にわかる。
この言葉は、深淵を覗き込む時深淵もまた……という意味の言葉なのか。
それとも、彼女の中で意味以上に大切な意図のある言葉なんだろうか。
「……トレーナーさん」
少し緩んだ口を開き、シャドウメアが話しかけてくる。
「言葉、少し間違えましたか?」
「……突然"お前"と言われたのは驚いたが、日本語としてそこまでおかしくはないよ」
「気をつけます……フフッ」
ニコリと微笑み、彼女は手を離してグラウンドへと歩を進め始めた。
少しの間呆気に取られるが、持ち直すように首を振る。
自分は彼女の支えになりたいと伝えた。彼女を知りたいと伝えた。その答えがこれなら、情けない姿ばかり見せるわけにはいかない。
……ふと、彼女の突いた胸元を見ると、真っ黒い彼女の手形が付いていた――ように見えた。
目を疑い何度か瞬きをしてもう一度見た時には消えていたので、気のせいだったのだろう。
動揺した心を持ち直し、彼女の方へ向かう。
まだ、担当トレーナーになりたいとは伝えていない。きちんと彼女に言葉で伝えなければ。 - 78二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 20:12:34
- 79二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 20:20:16
悪質勧誘手形来たわね
- 80◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 20:48:35
担当になってくれないかと伝えるべく、彼女を呼び止めようとした。
しかし彼女は上機嫌のまま歩き続け、止まらない。
そのままグラウンドに出てからは、もはやルーティンと化した外周ランニングを始め……つまりは、いつも通りの流れを見るだけだった。また99周走った彼女は汗を垂らしながらこちらに近づいてくる。今がチャンスだ。
「シャドウメア!話が――」
と、彼女に声をかける。しかしシャドウメアはそのまま側をすり抜けてしまった。
どこかへ行ってしまうんじゃないかと、言いかけた言葉を止めて振り向くと、シャドウメアが人差し指で俺の唇を押した。
「ッ!?」
「また明日、です。トレーナーさん」
そう言ってまた微笑み、彼女は足早に去っていく。
……もしかして、こちらに歩み寄るために時間を取りたいという彼女なりのアピールなのだろうか。
一度そんな考えが出てしまったら、彼女が夕闇の中寮の方角に消えていくのを、黙って見ていることしかできなかった。
……自室に帰って明日の支度を済ませ、眠りにつこうとする。
ふと明日、シャドウメアとどんな話をするのか、考えた。
たづなさんから聞いたスカイリムやドヴァーキンという言葉のこと。レッスン場で聴いたあの歌のこと。彼女自身の過去……それらをみんな、シャドウメアから、彼女の言葉で聞いてみたい。
そんな事を考えていたら、ゆっくりと微睡が襲いかかってくる。
明日も早い、今日はもう、休もう。
俺は心地よい温もりと安らぎに包まれて……ふわりと、意識を手放した――
夢を見た。仄暗い部屋で、二人の見知らぬ男女がこちらを見ている。そして、見知らぬ女性は、俺の視線の外へと指差した。
指の先を見る。そこには、シャドウメアがいた。
そして彼女は徐に口を開き、言葉を紡ぐ。"人生の調べとは何か"、と。
その時、女性は視界に入り込み、男性に向かって言った。"合言葉よ、聞こえし者"、と。
男性の方を見ると、男性はこちらを見ながら声を発した。"沈黙せよ、我が同胞"、と。
……そんな夢を見た、気がしたんだ。 - 81二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 20:54:32
大丈夫…?その女性干からびたミイラみたいな姿してない…?
- 82二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 21:30:24
- 83二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 21:35:28
- 84◆UlpelLUOzM22/06/09(木) 21:49:19
目を覚ましたが、夢のことが忘れられない。
夢の中でまで彼女を見たのは、シャドウメアの事を考えすぎたのだろうか。
赤みがかった……革鎧?を着た女性と、その女性に聞こえし者と呼ばれていた、巻き角のような装飾がついた兜を被った男性。あの二人は誰なのだろうか。
そして……"人生の調べとは何か"という問いに対する"沈黙せよ、我が同胞"という答え。その一連の合言葉の真意は何なのだろうか。
……考えていても仕方がない。もう出なければ仕事に間に合わなくなってしまう。急ごう。
「ねぇ聞いた?あの子、すっごく歌がうまいらしいよ!」
「本当?彼女の声、あんまり聞いた事ないのよねー」
「なんでもオペラオー様が絶賛するほどの美声なんだとか!」
「言葉はまだわかってないのに歌は上手だ、って……やっぱり歌は世界をつなぐのねぇ」
「あたしも聞いてみたいけど……授業やレッスンでしか聴けないだろうから、彼女が埋もれるのが残念だわ」
「本当にね。あの遅ささえなければトップクラスのウマ娘になれたかも知れないのにねー」
午後。食堂を通り過ぎようとした時に、昨日のレッスン場での出来事が既に噂となっているのを耳にした。
色々な子たちがシャドウメアの歌に興味を示している。だが中には彼女の遅さが原因でデビューすら出来ないだろうと残念がっている生徒たちもいた。
……シャドウメアのあの遅さをなんとかする術は、本当に無いのだろうか。
「あ、見つけた!おーい!!」
噂話は止まらない。あまり聞いていてもこれ以上は時間が足りないから立ち去ろう……そんな事を考え足を進めようと思った矢先に、進行方向から元気な声が聞こえた。
あの小柄で元気な印象を持つウマ娘は、確か生徒会のトウカイテイオーだ。
彼女は駆け寄ってきて目の前で止まる。どうやら自分を探していたらしい。
「ちょっとー、ボクの声聞こえてないのー?」
「……もしかして、俺のことを探していたのかい?」
「そうそう!キミの事、カイチョーが呼んでてさ!」
「シンボリルドルフが、俺を?」
「うん!だから昼休みが終わる前に探してきてほしいって言われて、超特急で見つけたってワケ!!」
そういうとトウカイテイオーは生徒会室へと案内してくれる。場所は知っているが、好意に甘えて共に向かう事にした……はてさて、生徒会長が俺を呼び出す理由とは一体なんだろうか。 - 85二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 21:49:21
🤡キコエシモノー!!
- 86◆UlpelLUOzM22/06/10(金) 06:23:58
バァン!\カイチョーツレテキタヨー!!/
……実に元気いっぱいだな、トウカイテイオーは。その声を聞いたシンボリルドルフは執務の手を止め、トウカイテイオーの方を向いて口角を上げた。
「あぁ、ありがとうテイオー」
「俺を探していたんだって?一体どうしたんだ、生徒が担当でもないトレーナーを名指しだなんて珍しいじゃないか」
「突然呼び出してすまない。だが少し聞きたいことがあってな」
「聞かれるような事に心当たりはないが、なんだい?」
「シャドウメアについてだ」
「彼女の事か……」
確かにシャドウメアに関連することなら、自分が一番聞きやすいだろう。
「答えられることなら答えるよ」
「助かる。実はごく一部で彼女に関する不思議な噂が流れていてな」
「不思議な噂というと……歌がうまいらしい、なんていう可愛いものじゃなさそうだな」
「その噂は私も聞いたよ。微笑ましいトピックだが……私の元に来たその噂は、なにやらオカルトじみていてね」
オカルトじみた噂話……少なくとも聞いた覚えはないが、その言葉で今日見た夢のことをまた思い出した。
「なんでも今朝、雨が降りそうなほど重苦しかった空に向かって何かを叫び、雲を全て晴らしたらしいんだ。予報では今頃の降水確率は100%で、その話をし始めたウマ娘は重馬場になると気が滅入っていたらしい」
「……え?」
そういえばぼんやりしていたが、確かに今日は雨が降りそうなほどどんよりとした空模様だった。しかし学園に向かうにつれ晴れ間が差し、到着する頃には晴天となっていたからすっかり気にすることも無くなっていた。
……それを、シャドウメアが?
「彼女に直接聞くのもなんだし、まずは君が何か知らないかと思って呼び出したという経緯なんだが……どうやら知らなさそうだな。わざわざ呼び出してすまなかった」
そう言った生徒会長はまた執務に戻った。その姿を尻目に気にするなとだけ伝え、俺は生徒会室を後にする。
……火の無い所に煙は立たぬ。この噂について、少し彼女に聞いてみるか。 - 87二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 06:46:31
みんなが海に合宿に行く中、世界のノドでトレーナーと一緒にスゥームを教わったり瞑想するシャドウメアちゃん…を想像した。(パーサーナックスとの友情ボーナスを添えて)
- 88二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 06:50:39
声に道を
- 89二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 06:59:19
ドヴァキントレーナーはいらっしゃらないのですか
- 90二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 10:12:54
やっぱりスゥーム使えるのか......
- 91二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 10:18:09
Lok Vah Koor!!
- 92◆UlpelLUOzM22/06/10(金) 14:06:34
立ち去ったままにシャドウメアのところへ向かおうと思ったが、冷静になるとまだ授業の時間だしこっちもこっちで仕事が残っている。
彼女を気にかけるあまり自分を疎かにしては、学園の生徒に示しがつかない。
仕事を片付け、きちんと放課後に彼女のところへ向かおう。
午後の仕事を終わらせ、授業状況を確認してからグラウンドに向かう。
昨日のようにレッスンが最後の授業となっているクラスはなさそうだ。これなら彼女もいつも通りグラウンドに出てくるだろう。
そう思っていつもの場所で彼女を待つ……が、シャドウメアは予想していなかったところに現れた。
他のウマ娘に連れられ、その姿をコースに見せたのだ。
「レース?」
「そう、レース!あなた素材は絶対いいんだから、毎日スタミナトレーニングばかりじゃなくて走り方も覚えないと!!」
「私たちも協力するからさ、一緒に走ろうよ!」
「一緒……」
「と言っても、レースが始まったらずっと見てなんていられないけれどね」
「アタシたちも走るわけだから当たり前よねぇ……ま、それでもアンタのことをみんなが見てくれるわけだから、課題はどこかで見つかるでしょ」
こうしてシャドウメアと4人のウマ娘はゲートに入る。
コースは前回と同じく、芝2400m想定のコースだ。
確かにいい機会かも知れない。彼女のレースでの走りを、もう一度よく観察しよう。
……結論から言えば、大まかな流れは前回と同じだった。
各ウマ娘がほぼ一斉にスタート、シャドウメアはその中でも素早い立ち上がりを見せる。
しかしそのスピードをキープしたまま、彼女は最後まで同じ速度で走った。追い抜かれようと気にも止めずに。
そして……あの時とほとんど似た感想だが、もはやこの意見は確信に変わっていた。
彼女は"持久走"の走り方で最後まで走り抜いたのだ。 - 93二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:09:16
晴天の空のスゥームかな
- 94◆UlpelLUOzM22/06/10(金) 18:54:08
「うーん、やっぱり遅いよね」
「でもこの間よりタイムは縮んでるみたいだよ?」
「といっても、やっぱり……うん。走り方からして違うもんね」
「ねえシャドウメアちゃん、全速力で走るって出来る?」
「全速力」
「そう、全力でこの瞬間速く走ることだけを考える……そんな走り方なんだけど」
ウマ娘の一人がコースを軽く駆け出し、ラストスパートの如き凄まじい加速を見せた。
その様子をシャドウメアはじっと見つめている。
「ぜえッ、はあッ……レース走り切るよりマシとは言え全力疾走しんどっ……!!」
「どう?出来そう?」
「分からない」
と、いつもの困惑顔を見せるシャドウメア。
それでも試しに、と別の一人がシャドウメアをコースに立たせ、やってみるように促す。
……出来るだろうか。
「じゃあ……テンポよく"よーいドン・ドン"っていうから、最初のドンのところで走り始めて、次のドンのところで脚に力を込めて、地面を思いっきり踏んで全力ダッシュしてみて」
「……」
「よーい、ドン!」
いつもの走り方で駆け出すシャドウメア。
「ドン!!」
次の瞬間――隕石落下のクレーターと見紛う程大きくコースが抉れた……否、一部分が丸ごとひっくり返って飛び散った。
炸薬でも使ったのかという程の土煙が上がっている。しかし、跡を見るにおそらく彼女はたった一回踏み込んだだけだ。
だが、整備されたコースは普通"こう"はならない。どんなにウマ娘が人を大きく超えるフィジカルでも、だ。
そんな現実を目の当たりにして呆然と立ち竦むウマ娘たちの方を見て、シャドウメアは困惑の表情を浮かべるばかりだった。 - 95二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:59:32
シロディールの平原を駆け巡り、スカイリムの山々を登り切った馬だ、馬力が違う
- 96二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 10:27:44
ちょっとした盗賊団まとめて壊滅させるどころか下位のドラゴンなら飛ばれなければ蹴り殺せる脚力なのでこうなるわな
MOD全盛期ならウマ娘化&コンパニオンMOD出てたかも - 97二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 10:38:51
ターフがバキの体力測定みたいになってるのか
- 98◆UlpelLUOzM22/06/11(土) 19:41:51
一時間もしないうちに、コースは整備のため立ち入り禁止となった。
呆気に取られていたウマ娘たちはいつの間にか解散し、この場にはシャドウメアと自分しかいない。
それにしてもあのパワー……並大抵のものではない。あの無尽蔵のスタミナも合わせて見れば、もはや規格外とさえ言えよう。
そしてスピードに関しても、ほんの少し希望の光が見えた気がする。
後は付きっ切りでこの大いなる原石を磨き上げれば、トゥインクル・シリーズで優勝することでさえも夢ではない。
……彼女がそれを望んでくれればの話だが。
「凄いなァーっ。ここだけブルドーザーでひっくり返したってのかァ?」
「そうですね……それくらいの威力を持っているんでしょうね、あの子」
「全く、バッチリ見ててもらわなきゃあこっちにシワ寄せが来るってのによォ」
「それ――精一杯やってるウマ娘に見せる態度じゃあないですよね」
「っと、そうだったな。悪ィ悪ィ――」
現場監督員らしい作業員はぼやきながらも整備作業を進める。
彼女たちウマ娘の聴力でその言葉が聞き取れないわけがない。
そして、新たな言語を努力を重ねて習得しようとしている彼女にはこの言葉の意味が分かってしまう。
「――シャドウメア、少しいいかな?」
「……なんですか?」
「こっちへ。ちょっと話があるんだ」
そう言って彼女の手を引き、この場を離れる。抵抗する素振りを見せないあたり、ついてきてくれるようだ。
今のタイミングで彼女に伝えるべきかは悩むが、申し訳なさそうな顔を浮かべ続ける彼女を放ってはおけない。
この時間帯なら――予備の会議室が確実に空いているはずだ。
会議室の内の一室は、予想通りフリー状態だった。部屋に入り、鍵をかけないまま彼女を座らせる。
彼女は少し落ち着いたように見えるが、それでも申し訳なさそうな表情は崩さなかった。
さて……連れて来たはいいが、どう切り出そうか。
日常のこと、レースのこと、担当のこと、交友のこと、シャドウメア自身のこと――しまった。一体何から話し始めればいいんだ……? - 99二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 19:44:55
いい書き仲間だ、蜂蜜酒を飲もう
- 100◆UlpelLUOzM22/06/11(土) 20:50:38
「トレーナーさん」
悩んでいるところに、シャドウメアが話しかけてきた。
先程まで下がっていた眉も元に戻っており、いつもの無表情に変わっている。
しかし普段とは違い、真っ赤なその瞳が少し潤んでいるような気がした。
「どうしたんだい、シャドウメア?」
「話、なんですか?」
「あ、あぁ。話――」
「……」
「いやその――あははは……俺から言い出したのに済まない。実は話したいことがたくさんあって、まとまらないんだ」
「……トレーナーさん」
「今日君に出会うまでに、色々考えたつもりだったんだけど……いざとなると優先順位が上手くいかなくて」
「トレーナーさん」
シャドウメアがじっとこちらの目を見つめる。
まるでその視線が急所を一突きにしたかの如くに真っ直ぐで、たじろいでしまった。
「っ。なんだい、シャドウメア――」
「――お前を見ている」
また、この言葉だ。やはり彼女にとって、この言葉はとても特別なものなんだろう。
「……俺も、君を見ているよ」
「っ……」
そう返すと、少しだけ彼女は視線を緩ませ、うっすらとにやついた。いや、未だにこちらを凝視していることには変わりないのだが……
こうしている間にも頭の中で話の順序を組み上げる。まずは、やはり単刀直入に行こう。
俺は改めて、シャドウメアの担当トレーナーになりたいという思いを伝える決意を固めた。 - 101二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 02:32:02
保守
- 102二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 11:02:13
面白くなってきた
- 103二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 17:36:22
当ててやろうか?誰かにスイートロールをパクパクされたんだろ?
- 104◆UlpelLUOzM22/06/12(日) 22:26:50
「シャドウメア。聞いてくれ、そして考えてほしい。俺は君の――」
「トレーナーさん」
その決意が鈍らないうちに言葉を発しようとすると、彼女はこちらに声をかけてそれを遮ってきた。
よくよく考えてみると、彼女に近づこうとする時には必ずと言っていいほど主導権を握られている気がする。
いつも通りに「なんだい」と聞こうとするが、彼女はそのまま言葉を続ける。
「人生の調べとは何か」
――つぅ、と。汗が一筋流れるのを感じた。
この言葉は、夢で見た……夢の中の彼女が言った、あの言葉だ。
全身が強張って口や喉すら動かない。
彼女は少しも視線を逸らすことがなく、こちらを見ている。
昨日、手を突き出してきた時よりもずっと重苦しいプレッシャーを感じる。
それでも、ここで退くな。退いては覚悟は見せられない。
初めは好奇心で、次は成り行き。しかし自分の抱いた想いに嘘は一つたりともありはしない。
この言葉に正しく応える事こそが、彼女の望む事ならば――
「沈黙せよ、我が同胞」
答えた。本当に正しいかわからない答えを、彼女に返した。
……反応は、どうだ。
「……っ、ぅ」
シャドウメアはその目を潤ませ、なみなみと雫を湛える。
まさか――間違えたのか?
次の瞬間彼女は弾けるようにこちらに駆け出し、目の前……で止まらず、俺にタックルを決めるが如き勢いで抱きついてきた。
「あなたを、待っていた……!」 - 105二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 03:08:13
ドヴァキン!ドヴァキン!ドヴァキンナッサッシ!
- 106二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 06:53:15
全く別の世界で、同胞がいたと知ったら、そりゃ嬉しいに決まっている
- 107二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 08:46:04
続き楽しみ
- 108二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 08:51:50
😇待ち望んでいたトレーナーと出会えたウマ娘ちゃん尊い
- 109二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 09:13:29
この世界(スレ)が好きだ。滅びてほしくない
- 110◆UlpelLUOzM22/06/13(月) 12:19:29
なんとか彼女を抱きとめた瞬間にそんなことを言われ、その後声をかける間もなくシャドウメアは泣き始めてしまった。
泣き声を響かせながら、彼女は俺の腹部へと顔を擦り付けてくる。
……しまった、このまま押し込まれたらバランスが保てない!
彼女を怪我させるわけにはいかないので、なるべくゆっくりと後ろへ倒れることにした。
幸いドアからも離れており、背後にはそれなりの空間があった。
やむを得ず倒れようとするも、シャドウメアは気に留めることなく抱きついたままだ。よりバランスが悪くなる。
そしてドスン、と倒れ込んだその時。大きな音を立てて会議室のドアが開く。
その向こう側に立っていた人物は大慌てのたづなさんだった。特徴的な緑衣が見える。
その……とんでもないローアングルで。
「なっ、何事ですか?!」
「いいっ!?」
驚いて声を上げた途端、たづなさんが床で仰向けに倒れている俺を見る。
シャドウメアに押し倒される形とはいえ、腹部に顔を埋めている彼女をなすがままにしているこの姿を。
絹を裂くような声が響き、混乱するたづなさんは俺の顔面に踏みつけるような蹴りを――
この後の記憶はない。
今自分がどうなっているかというと、保健室のベッドで寝かされている。
ベッドのそばにはシャドウメアとたづなさん、そして何故か理事長がいることが確認できた。
目を覚ましたと確認するや否や抱きついてくるシャドウメア。そして平謝りを始めるたづなさん。少し引いた顔でこちらを見てくる理事長。
……うん、成程。まだ渦中だな、コレは。 - 111二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 20:32:07
保守
- 112二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:43:16
面白い!保守
- 113二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 22:49:53
さぁ同胞トレーナーの明日はどっちだ
- 114二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 22:55:34
帰りがけにドラゴンに襲われるも何故か体の奥底でこのドラゴンの倒し方を知っているのを感じて、その感覚に身を任せてドラゴンを討伐することに成功する。そしてそのドラゴンから謎の何かが集まっていく光景を見られて、
「貴方は...ドラゴンボーン...!!」
って言われるトレーナーは見たいかと言われれば見たい - 115二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 23:14:44
ウマ娘が実馬との繋がりがあるようにこのトレーナーもソブンガルデを経てウマ娘たちのいる世界に生まれ落ちた可能性が微レ存...?
- 116◆UlpelLUOzM22/06/13(月) 23:24:54
何もかもが一瞬面倒になり、また眠ってしまおうかとすら考えたが、順番に情報整理をしようと思い至り、まずはシャドウメアを座らせた。
最初からという事でコースで起こったことを説明しようとすると、理事長もたづなさんも事の次第は分かっているようだった。
整備班まで出張るような状況だ、分からない方がおかしいかも知れない。
次に、彼女を落ち着け、話をする為に会議室を借りた話をする。
なんでも別の会議室で先程コースで起こった騒動に関する打ち合わせがあったらしく、その時にウマ娘の大泣きする声が聞こえてきた為に悲劇……もとい、トラブルが発生したようだ。
「本当に申し訳ありませんトレーナーさん、まさかこんな状況になっているなんて思いませんでしたから……」
「いや、事情の説明をする間がなかったとはいえ、コレは自分の落ち度ですよ。気にしないでください」
「……見てませんよね?」
「見てませんッ!」
……決して見ていない。たづなさんの……いや、見ていない。
冤罪を被りたくないが為に意識してしっかりたづなさんの顔を見ようとしたんだから、見ていないはずだ。うん、見ていない!
自分に言い聞かせるが如く思考を巡らせる。その間口をつぐんだ俺を3人は不思議そうに見ていた。
そしてそうしているうちに思い出した事が一つ。
シャドウメアの言葉に応えたものの、俺は未だ自らの口で彼女に"担当になりたい"と伝えられていないのだ。
あの"合言葉"の意味も分かってはいないし、彼女に聞きたいことはたくさんある。
だが……理事長もたづなさんもいる前で根掘り葉掘り聞くのは気が引けてしまう。
彼女のことはなんでも知っておきたいが、決して彼女が秘密にしていることや意図的に隠していることを全て暴こうとしているわけではない。
「あの……シャドウメアと話したいことがまだあるんです。申し訳ないんですが――」
「察知ッ!邪魔者はおいとまするとしようかたづな!」
「そうですね。二人で話したいことがあるみたいですし」
「な、邪魔者だなんて思ってはないですよ!?」
「承知ッ!君は本当に優しいやつだな!」
「大丈夫です、分かってますよトレーナーさん。それでは、また今度詳細を教えてくださいね」
彼女らは非常に察しが良く、今この保健室には俺とシャドウメアの二人きりだ。
……きちんと話をしなければ。 - 117二次元好きの匿名さん22/06/14(火) 00:49:54
よくできてるなぁ…贅沢な悩みかも知れないけど完結したらpixiv等でまとまった形で読みたいなぁ…
- 118二次元好きの匿名さん22/06/14(火) 12:01:21
面白いな...
- 119二次元好きの匿名さん22/06/14(火) 20:09:12
保守
- 120◆UlpelLUOzM22/06/14(火) 21:25:17
「シャドウメア。俺の話を聞いてくれ」
彼女の真っ赤な目を見ながらそういうと、シャドウメアもいつもの無表情でこちらをじっと見つめる。
「色々と聞きたいことや言いたいことはある。だけど最初にコレを言わなきゃいけなかったんだ」
真剣な顔のまま、彼女に伝える。対する彼女は全く表情を変えない。
「シャドウメア――俺に君を担当させてもらえないか」
やっと言えた。
だが、問題はここからだ。この言葉を彼女がどう受け取り、どう考えるか――
「はい、トレーナーさん。私、あなたと。共に」
……そんなに悩む必要はなかったのかもしれない。
と、次の話を始めようとした途端、彼女は再びこちらに近づき抱きついてきた。立場上あまりよろしくないのだが……この子は抱きつき癖があるのか?
「し、シャドウメア。あんまり引っ付かれると困るんだけど……」
「?」
先日レッスン場で見せた雨に濡れた子犬のような弱々しく潤んだ瞳をこちらに向けるシャドウメア。
この顔を向けられて、否定することが出来ようか。否、出来るわけがない。
「あー……うん。そのままでいいから話をしよう、シャドウメア」
「はい……フフッ」
「幾つも聞きたいことがあるんだけど、答えてくれるかい?」
「はい、答えます。答えられるなら」
とても前向きな言葉をもらった。では何から聞いていこう……? - 121◆UlpelLUOzM22/06/14(火) 21:42:21
少しだけ考えた後、まずは言葉の意味から聞いてみることにする。
「シャドウメア。"お前を見ている"という言葉と、あの"合言葉"ってどんな意味があるんだい?」
「お前を見ている。言葉通り、です。興味、関心、期待、注意……それで見ている」
「つまりは"気になっている"ってことか」
「はい。信じる、出来るかどうか」
「……なるほど。それで、合言葉の方は――」
「――どこで知った、ですか?」
抱きつかれながらも、刺すような視線でこちらを見られる。
知っているわけが無いのに、と言わんばかりの雰囲気さえ感じるが……正直に答えた方が良さそうだ。
「あの言葉は……変な話だけど、夢で見たんだ。君が問うて、知らない男の人が答えていた。もう一人女性の人が、その男の人を"聞こえし者"って言ってたっけな」
「夢――」
「あ、ごめんよ。変なこと言って」
「いえ。ドヴァーキンです」
「……何?」
「男、ドヴァーキン。女、アストリッド。二人、親友、家族……でした」
「えっと……もしかしなくても、知っている人なのか?」
シャドウメアは深く頷く。
確か"ドヴァーキン"という言葉はたづなさんから聞いていた。だが……過去形なのは何故だ?
「居ません、ここに。居ます、スカイリム……ソブンガルデに」
「スカイリム……ソブンガルデ?」
「……難しい。北」
「あぁ、別の国……いや、正しくは多分"君の居たところ"か」
「スカイリム、そうです」
「……ソブンガルデは?」
「――言葉。日本語、変える。難しい、です」 - 122◆UlpelLUOzM22/06/14(火) 22:06:01
ソブンガルデという言葉は、まだ彼女の中でしっくりくる日本語がないらしい。
「そうだ。シャドウメア、君日に日に日本語が上手になっているよね。誰かに教わっているのかい?」
「たづなさん、やよいさん、話します。授業、学びます。覚え、変える……試しています」
「おお、日々の学習の成果か。立派だな、シャドウメア」
「覚える、大切。言葉、理解、もっと」
どうやらコミュニケーションを取る事自体には積極的なようだ。あまり感情を表に出さない彼女がそんな考えを持っているとは少し予想外だったが、とても良い傾向と言えるだろう。
「合言葉、家族、知らせます。親子、違う、家族」
「えっと……血の繋がりのない家族……という意味かな?」
「……きっと」
「難しい表現だったかな……でも、なんとなく言いたいことはわかったよ。ありがとう」
あの言葉は、好意的に解釈するなら"家族のように信じられる人に教える言葉"なんだろう。短い間に信用してもらえたようで何よりだ。
きっと理事長やたづなさんもこの合言葉は知っているんだろうな、最初に出会った二人だし。
「次の質問、いいかい?」
「はい」
「お昼頃、君に関する噂を聞いたんだ――空に向かって叫んで、空を晴らしたっていう噂なんだけど、知ってるかい?」
「"スゥーム"」
「え?」
「しました。晴れ、呼ぶ、スゥーム」
"スゥーム"。また聞き馴染みのない言葉が出てきた。しかしそんなことよりも……
「君が、本当にやったのか?」
「はい。ドヴァーキン、スゥーム、使いました。何度も。私、聞こえる。覚える、しました――使える、何故?」
どうやら、ドヴァーキンという人がスゥームというものを何度も使い、シャドウメアがそれを聞いて覚えたが何故使えるかわからない……ということのようだが――いや、こっちに聞かれても。 - 123二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 00:24:15
ソブンガルデ…まぁ合う言葉を見つけるとしたら天国…?
- 124◆UlpelLUOzM22/06/15(水) 00:30:16
「えっと、話に聞いただけだから俺はよくわかってないんだが……そういうことが出来る、ということか?」
自分で何を言っているか、あまりわからず尋ねていた。
そんなことできるわけが無い……などという常識的な思考は既に外れているらしい。
彼女の人並外れた能力に魅せられた俺は、彼女の持つ全てを知りたいようだ。まるで他人事だが――
「はい。出来ます」
こちらをじっと見つめる彼女の言葉に、嘘を感じることは出来なかった。
なら、それで良いと思ったのだ。
「……とても高い身体能力や聞いたことない言語、それにスゥーム……だっけ?」
「……」
「君の事は、まだまだ知らない事だらけだな」
「私も。です」
「……そうか。じゃあ、お互いもっと知っていこう。これから」
「はい」
……それからどれだけ時間が経っただろう。
彼女に聞きたい事はまだまだあったが、何故か言葉が出てこなかった。
日も落ち、夜の匂いと風の音が聞こえる。
彼女の温もりを、布団一枚を隔てて感じる。
――どうやら眠っていたらしい。
「――しまった!シャドウメア?!」
シャドウメアの方へ目を向けると、彼女も眠っている。とても安らかな表情だ。
……普段、感情を表に出さない彼女が、こんな表情で眠っている。
その現実に安堵した俺は、たづなさんにメッセージを送った。
"気付いたら眠ってしまっていたのでシャドウメアを迎えに来てください"、と。 - 125二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 09:56:46
揺るぎ無き力はぜひ使って欲しい
- 126二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 12:52:58
完結まで描ける人物ってわけね、気に入ったわ
- 127二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 17:58:57
シャドウメアのヒミツ
得意料理のポタージュは「死ぬほど」美味しいらしい。 - 128二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 18:15:22
- 129二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 01:12:48
あげ
- 130二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 01:20:12
乾杯をしよう 若さと過去に
- 131二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 01:53:49
こういうクロスは大好物
ウマ娘はこういう乗騎が注目されるからいいよね - 132三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/16(木) 12:22:11
こんにちは。筆者の三十路のおっさんです。
こんな感じで出逢い担当することになったわけですなぁ。
唐突ですがシャドウメアの初期ステータス及びスキルを決めようと思いまーす。フレーバーでーす。
今のところ決めているのは「スピード:40」「スタミナ:118」「パワー:100」「覚醒2:道悪○」「覚醒3:百万バリキ」くらい。
他はみんなの意見を聞きつつしっくりくるのがあれば決める感じで。
あ、☆3イメージでーす。☆1から始めるのもアリだけどコラボみたいなもんだしな! - 133三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/16(木) 12:23:59
書き忘れてた。ボーナスはスタミナ+20%、パワー+10%のイメージ。
- 134二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 20:26:40
- 135二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 22:36:20
星3時の初期ステの合計値は450っぽいから雑に割り振って 根性102、賢さ90
かなと思ったけど、>>134を概念を考えるなら
賢さ30減らしてその分だけスタパワ根性に10ずつ振り分けて
40 128 110 112 60
とかも良さそう。
それはそうと勝負服イベントの一つがクラシック12月後半かシニア1月前半にあってほしいなと個人的に思う。シャドウメアの提案でトレーナーと年の終わり(または新年の始まり)を迎えるために除夜の鐘(または初日の出)を見に行くんだけど、その時の選択肢として
「これからもよろしくね、シャドウメア」
「年越しだー!」
の二つがあって、上は普通にイチャコラする。スタミナ+10,パワー+10
下はトレーナーの子供心か突然叫んだかと思えば、前方に衝撃波が飛んでいくのを見て、二人して唖然することになるけども、二人共がそんな夢を見ていたというオチで二人だけの笑い話になる。体力-10,賢さ+20,根性+10,スキルpt+15とかあってほしい()
- 136二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 22:54:28
いいスレだ。
- 137二次元好きの匿名さん22/06/17(金) 00:42:24
覚醒に金回復はあってほしいなーと個人的に思ったり
- 138三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/06/17(金) 08:57:42
- 139二次元好きの匿名さん22/06/17(金) 18:26:46
- 140◆UlpelLUOzM22/06/17(金) 23:01:45
翌日。
たづなさんから"もう少ししゃんとしてください"とそれとなく叱られ、何となく気の重い朝。
とはいえ昨日はあの後何事もなく部屋に戻り、そのまま眠ったものの"あの夢"のような不思議な夢を見ることもなくスッキリ目を覚ませた。
今日からシャドウメアのトレーナーとして忙しくなる……身支度をしながらもそんなことを考え、気合を入れて外に出ようとする。
雨だ。しかも超がつくほどの土砂降り。台風か?
帰って即座に寝たのが悪かったかもしれない。天気予報のチェックすらしていなかった。
昨日はある生徒が重バ場を気にしていたというが、ここまでひどい雨だとそれどころじゃないな。最悪出勤すらも危うい。
しかし携帯には何の通知もない。距離が近いんだから来いと言わんばかりの圧を電波の向こう側から感じる。言ってみただけだが。
気が進まないが仕方がない――俺は合羽を身に纏い、学園へと向かった。
「うわー……雨ヤバー……」
「これ室内練習いっぱいいっぱいだよね」
「だろうねー……そういえばビワハヤヒデ先輩の髪ヤバかったね」
「わかる。普段からヤバそうなのに本当大変そうだよね」
……遠くから"誰の頭が"と聞こえた気がするが気のせいだろう。
しかし、この天気……本当に気が滅入る。
別に気圧差での片頭痛が出るタイプではないが、滝の如く窓に叩きつけられる雨を目にすれば嫌にもなるだろう。
とはいえ天気だから何ともできないし――と思考したあたりでふと思い出す。
シャドウメアは、昨日晴れを呼んだらしい、という事を。
ダメで元々だ。昼休み中彼女がどこにいるか知らないが、誰かに聞いてシャドウメアに会ってみよう。 - 141二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 00:44:05
姉貴....
- 142二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 02:43:12
一応ゲーム中でソブンガルデに行ってるのはウルフリック、ガルマル、リッケ特使、コドラク、フロキとモブ兵士
グレイヘブンだっけ。オンラインでヴォイドの中らしい場所にも土地がある事が判明したから、ヴォイド行き特急列車である悲痛の短剣で牛でも送ってあげれば案外のんびり畜産生活出来るかもよ
- 143二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 08:36:29
先ず、スカイリムの死後の世界を話す前に、TESシリーズの闇の一党の話になる
長くなるぞ
闇の一党は、シシスの崇拝の元に活動するカルト暗殺団なんだ。
そのシシスってのは、虚無説とパドメイ説ってのがある。
ここら辺は、TES特有の神に対する曖昧な存在の描写なので、自分自身で調べてほしい。
それで、死後の世界ってのは基本的に、何も信仰していなかったら、
そのまま、エイドラの神々がいるとされているエセリウスへ
デイドラ崇拝者やデイドラに魂を奪われたものはオブビリオンへ
ここで重要になって来るのが、シシス崇拝者は、シシスの元に送られるのが基本になるんだ。
そのシシスの元は、どの世界なのかは言及されてない、下手するとエセリウス外かもしれない…ってことだね
- 144二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 12:58:48
ドヴァキンがソブンガルデってことはドヴァキン死んだのかな?戦いの中で死ぬことが出来たならノルドとしては本望だったろうな
- 145二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 22:40:34
冬ウマ娘のスキルはデフォでついてそう
- 146二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 00:46:57
ドヴみたいにスゥームなら全部使えるのか、あるいはウルフリックみたいに1つだけをなんとか覚えたのか
- 147二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 01:21:27
姉貴……頭が!!!
- 148二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 09:28:49
- 149二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 12:44:14
- 150二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 13:02:35
激しき力を脚にかければ滅茶苦茶速く走れるかもしれない
- 151二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 17:51:41
- 152二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 19:20:04
- 153二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 19:24:31
- 154二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 21:03:10
- 155二次元好きの匿名さん22/06/20(月) 00:56:28
- 156二次元好きの匿名さん22/06/20(月) 11:00:45
ホシュ...ロダー!!
- 157二次元好きの匿名さん22/06/20(月) 11:47:18
564 賞金額追加:トレセン学園
スタップ!
お前は、トレセン学園とその民に対して罪を犯した。何か釈明はあるか? - 158二次元好きの匿名さん22/06/20(月) 22:01:50
ほーしゅ!
- 159二次元好きの匿名さん22/06/21(火) 01:56:59
保守
- 160二次元好きの匿名さん22/06/21(火) 08:15:38
ホシュッ!!!
- 161二次元好きの匿名さん22/06/21(火) 16:58:43
モラグ・バル(保守)
- 162二次元好きの匿名さん22/06/21(火) 18:10:47
定命の者…新しい投稿をするのです…
- 163◆UlpelLUOzM22/06/21(火) 19:13:17
――探すとはいっても、本当に彼女の動向を何も知らないからどう探したものか。
担当になったとはいえ、まさか初日から彼女のクラスに呼び出しをかけるわけにもいかないし……
そんなことを考えていたところ、廊下の曲がり角に身を隠す、見覚えのあるピンク髪のウマ娘が目に映った。
彼女はアグネスデジタル。どうやらウマ娘達が好きで時々に応じてその姿を隠れて見ているらしい――丁度、今のように。
「あっちも、こっちも!どっちもどっちも!!はぁぁぁ~~~……しゅきぃ~~~……尊みが深い……」
「……あ、あの。アグネスデジタル?ちょっといいかな」
「ひゅいっ!?……あ、あぁ~。この間のトレーナーさんでしたか。どうされました?あたしに何か御用で?」
「シャドウメアを知らないかい?実は彼女の担当トレーナーになってね。少し彼女に聞きたいことがあったから探していたんだが、恥ずかしながらまだ彼女についてほとんど知れていなくてさ」
「なんと、あの子の担当になったんですか!これはめでたい……ハッ!そうじゃなくて居場所でしたよね。確か、いつも昼休みには図書室かタキオンさんの研究室前に居るはずですよ」
「タキオン?……というと、もしかしなくてもアグネスタキオンか?」
「はい、そうです。なんでも、あの子の身体能力のデータを取りたいみたいです。といっても、あの子を呼び止めるたびにカフェさんから止められてるみたいですけど……」
「カフェ……あぁ、マンハッタンカフェか。確かアグネスタキオンのお目付け役になっていると聞いたが……アグネスタキオンはいつもシャドウメアを呼び止めているのかい?」
「いえ、研究に没頭しているときはそんなことありませんよ?といっても、まだ数日しか経っていないので確実な情報とは言えないんですけど」
自称不確実とはいえ、こちらからすれば相当に信頼できるところからの情報だ。
幸い図書室もアグネスタキオンの研究室も方向は同じ。どちらに居ても昼休み中に探せるだろう。 - 164二次元好きの匿名さん22/06/22(水) 02:37:14
昔はお前みたいなトゥインクルウマ娘だったが、膝に矢を受けてしまって...
- 165◆UlpelLUOzM22/06/22(水) 08:23:37
「なるほど……ありがとう、助かったよアグネスデジタル。また頼ることがあるかもしれないけど、その時もよろしく」
「はい、あたしが力になれるならご協力しますよ!……あっ、話しかけられても気づかない場合も多々ありますが……」
「あははは……次から君が趣味に没頭している時にはなるべく声をかけないようにするよ、邪魔になると悪いしね。それじゃ、また!」
アグネスデジタルに別れを告げ、狙いの方向へと向かい歩き始める。
さて、彼女はどちらに居るだろうか……と歩を進めながらも考えたのもつかの間、進む先から何やら揉めているような声が聞こえてきた。
この声、確かアグネスタキオンとマンハッタンカフェの声じゃなかったか?
もしかして、情報通りにシャドウメアを呼び止めて、その上で何か揉めているんじゃないだろうか――状況が気になった俺は急ぎ現場へと駆け寄った。
「君に頼んでいるわけじゃないだろーカフェー。いいじゃないかー」
「良くありませんが……」
「私はこのシャドウメアに用があってだな」
「データだけで本当に満足できるとは……到底思えませんので、ダメです……」
「いーいーだーろー、カーフェー……」
辿り着いたのはやはりアグネスタキオンの研究室と呼ばれる空き教室の前。
そこでは鬱陶しい雰囲気を醸し出しながらひたすらに絡むアグネスタキオンと、それとなく絡みを避けつつも抑制するマンハッタンカフェ。
そしてそれらを困惑の表情で迎えるシャドウメアの姿があった。 - 166二次元好きの匿名さん22/06/22(水) 19:28:45
あげ
- 167二次元好きの匿名さん22/06/23(木) 01:41:44
あげ〜
- 168二次元好きの匿名さん22/06/23(木) 10:26:13
ああ、お前のことは知っている… シシス万歳!
- 169二次元好きの匿名さん22/06/23(木) 12:04:23
あんたの歩く先々で地面が揺れりゃあいい
- 170二次元好きの匿名さん22/06/23(木) 22:42:37
保守
- 171二次元好きの匿名さん22/06/24(金) 02:34:23
- 172◆UlpelLUOzM22/06/24(金) 12:47:27
「シャドウメア!よかった、探してたんだ」
「あ……トレーナーさん」
「おやぁ?君が彼女のトレーナーかい?」
マンハッタンカフェに絡んでいたアグネスタキオンが、こちらに興味を示したように話しかけてきた。なにやらこちらをジロジロと見られている……観察されるとはこういうことなのだろうか。
「そ、そうだよ。つい昨日なったばかりだけどね」
「そうかそうか、君が……いやぁ、丁度よかった!実は彼女の身体能力にとても興味があってね。なんならウマ娘の限界を超えてさえいるやも知れないこの体に、あろうことか興奮さえ覚えているんだ!というわけで、彼女を一日預からせてもらうよ」
「いいっ!?な、何を――」
「さあ事前に報告は済ませたよ。これで良いだろうカフェ?」
「……何も……良くないです……」
何やらとんでもないことを言ってきたアグネスタキオンをマンハッタンカフェが止めてくれた。
「えーっ!?何故だい、礼儀とやらに則って関係者に話をしたじゃないか!!」
「……許可もないですし……そもそも、何度も言っていますが……シャドウメアさんの意思も、ほとんど無視しています……何度言っても、ダメなものはダメです……」
「カフェ、君が一体何をそんなに警戒しているかは分からないが、今回は実験じゃないから投薬をするつもりはないんだよ?そんなに邪魔をしてくれなくてもいいじゃないか」
「……そう言って……研究室内で、薬品を使用できるように準備しているのは……何故ですか……」
「……アーッハッハッハッハッ!」
「……笑って誤魔化したりは……出来ませんよ……」
確かにシャドウメアの身体能力には目を見張るものがあるが、ウマ娘一人に目をつけては実験だの投薬だのとは――なんとなく察していたが、アグネスタキオンはかなり独特な子かもしれない。
マンハッタンカフェと言い合っている間に、ここを離れてしまおう。そう考え、シャドウメアに声をかけることにする。
「シャドウメア、今ちょっと良いかい?少し聞きたいことがあって――」
「はい」
「――ちょっと待ちたまえよ君、話だけならさっさと済ませて私に彼女を調べさせたって良いだろう?」
この場を離れて落ち着いて話そうと思ったが、どうやらアグネスタキオンは相当シャドウメアに興味があるらしい。離れることは出来なさそうだ…… - 173二次元好きの匿名さん22/06/24(金) 14:40:07
大丈夫?シャドウメアに変なことしようとしたら書類と薬品ごと
Yol(炎) Toor(業火) ShuL(太陽)
されたりしない? - 174二次元好きの匿名さん22/06/25(土) 00:40:53
あげ
- 175二次元好きの匿名さん22/06/25(土) 09:45:39
高低差200mの坂を登りきるウマかぁ
ブルボンを超えたごっついトモになってそう - 176二次元好きの匿名さん22/06/25(土) 09:47:47
- 177二次元好きの匿名さん22/06/25(土) 11:32:54
- 178二次元好きの匿名さん22/06/25(土) 21:49:19
age
- 179二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 09:11:59
ほしゅ
- 180二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 09:35:38
つまりウインディ族ってことか 興奮してきたな
- 181二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 20:01:16
あんたらみたいにご立派な人生じゃ、あまり喜びなど感じられないだろうな
- 182二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 07:13:28
スカイリムの珍訳ばりに日本語がたどたどしいシャドウメアとそれをわからないなりに誠実に読み取ろうとするメアトレは気ぶれると思います
- 183二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 11:04:48
新たな手が灯に触れる
- 184二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 21:06:31
あげ
- 185二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 05:46:50
お前と甘い言葉の事を聞いた…
- 186二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 13:14:08
あげ
- 187二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 23:03:37
このレスは削除されています
- 188二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 00:48:50
- 189二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 07:49:39
私も昔は出場バだったが、屈腱に八方にらみを受けてしまってな……
- 190◆UlpelLUOzM22/06/29(水) 08:54:54
アグネスタキオンの視線を受けながら、シャドウメアに本来の用件を伝えることにする。あまりこの話をアグネスタキオンという好奇心の塊に聞かせたくないが、逃れられない以上仕方ない。
「シャドウメア。昨日の、空を晴らしたってやつ……"スゥーム"だっけ?それって今出来るかい?」
「はい」
「なんだいその話は。まるで彼女が天候を操作できるとでも言いたげじゃないか」
ニヤつくアグネスタキオンをよそに、シャドウメアは近くの窓まで歩いていく。幸い今は風が少ないようで、あまり雨粒が叩きつけられてはいなかった。
「……あの……何を……」
「俺も知らないんだ。彼女が出来ると言ったからやってみてもらいたい、と思ってね。彼女を知るために」
「……正気ですか……?」
マンハッタンカフェが"常識的な人だと思っていたのに"と言わんばかりの視線で突き刺してくる。そんな目で見られても……と、シャドウメアが窓を開き、空を見上げる。そして軽く呼吸を整えた後、一息吸い込んだ。
「《Lok》《Vah》《Koor》」
刹那、空気が裂かれるような"音"が彼女から発せられる。あまりの響きに思わず耳を塞いでしまうほどだ――しまった!人の身でこの音、近くにいたウマ娘の二人は大丈夫か!?
そう思って周りを見ると、全力で耳を押さえている二人の姿を確認した。どうやら倒れたりはしていないようだ。
「〜〜〜〜〜〜ッ、な、何なんだい今の轟音は!?」
「……私も、驚きました……こんなに大きな声……」
窓を閉めたシャドウメアが振り返り、申し訳なさそうな顔を見せながらこちらに歩いてきた。
「声?今のが彼女の声だと?まさか、拡声器を最大にしたってあんな音量……雷が直近に落ちてきたのかと思ったんだぞ!?」
「……でも、雷が落ちた様子はありませんし……何より……彼女が発したのは……タキオンさんにも、わかっているはずです……」
「む、むむむ……」
唸るアグネスタキオン、目を丸くするマンハッタンカフェ。
そんな二人を差し置いて俺のところに来たシャドウメアは、また窓の方を向いて天を指差す――雨は止み、風は凪ぎ……そして、陽光が雲間から射した。 - 191二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 16:02:26
ついにここまで...
- 192二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 20:34:36
保守
- 193二次元好きの匿名さん22/06/30(木) 00:35:43
スカイリムはノルドのものだ!
- 194二次元好きの匿名さん22/06/30(木) 07:06:08
天候操作できるってことは特定の天候に強いウマ娘潰せるのか……誇りにかけてやらないだろうけど
- 195◆UlpelLUOzM22/06/30(木) 14:59:04
……唸っていたアグネスタキオンが、本当に信じられないものを目の当たりにしたように、あんぐりと口を開けている。
マンハッタンカフェは何度も瞬きをし、空を見上げていた。
その空はというと、目に映る雲がみるみる間に散り散りになっていく。まるで元々無かったかのように。
だが、"そう"なる事がさも当然のように、シャドウメアは意に介さなかった。
――自分も、目の前で起こった事だというのに、全てを信じ切れていない。
「トレーナーさん。晴れにしました」
「……ありがとう、シャドウメア。これは、君が意図して起こせる事でいいんだね?」
「はい。私の、スゥームです」
シャドウメアの話し方が昨日よりスムーズになっていることに今更ながら気がついた。図書館や自室でいつも日本語を勉強しているのだろう。
「あの大きな声も君が?」
「はい。スゥームは声、ドヴの言葉。ドヴァーキンが言っていました」
「ドヴァーキン……あの男の人か」
「はい」
いつもの無表情で、相槌を打つ彼女。
しかし、いつかレッスン場で聴いた歌も、この普段の会話での声も……どれをとっても先ほどの轟音が出せるとは思えない。時には消え入ってしまいそうにさえ感じる声だ。
そんな彼女があの大声を……しかし現実に出したのだ、認めなければ。
「――非現実的だが、実に興味深い!」
そんな事を考えていたら、いつしか唖然としていたアグネスタキオンが正気を取り戻したらしい。尻尾をブンブンと大きく振りながら、シャドウメアににじり寄っていく。
「俄然君に興味が湧いたよシャドウメア君、やはりじっkゲフンゲフン。君の体を検査させてくれ!さあ!今すぐ!!」
「実験って言いかけなかったか……!?」
「――トレーナーさん、どうしますか?」
……こんなところで君の事を選択させるのか、シャドウメア。 - 196◆UlpelLUOzM22/06/30(木) 17:22:44
――待てよ?これはある意味チャンスかもしれない。そう思いついた俺は、軽く息を吸い込んで言った。
「分かった、シャドウメアを預けるよ」
「……本気ですか……?」
「ただし、ひとつ条件をつけよう」
「ふぅン……条件か。いいだろう、言ってみたまえ」
「一週間後、彼女と模擬レースをしてくれ。その時に彼女に勝てたなら、翌日丸一日はシャドウメアを好きにしてくれて構わない」
「……いいんだね?」
俺の言葉を聞いたアグネスタキオンの発する雰囲気がガラリと変わる。重苦しく、こちらにまとわりついてくるような圧が放たれている。それもそのはずだ。この発言はウマ娘にとって"宣戦布告"と言い換えても良いほどの意味を持つ。
……とはいえ、アグネスタキオンはほとんど"丸一日好きに出来る"という約束に重きを置いているのだろうが。
「二言はない。シャドウメアもいいね?」
「はい。いいです」
「本当にいいんだね?よぉーし、そうと決まれば話は早い。一週間後を楽しみにしているよ、アーッハッハッハッハッ!」
重苦しい雰囲気から一転、上機嫌な様子を隠そうともせずに研究室へ戻るアグネスタキオン。その様子を見届けたマンハッタンカフェは、心配そうな雰囲気のままこちらに近づいて口を開いた。
「……本当に、やるんですか……?」
「あぁ、やる。シャドウメアはまだレースのことを何も分かっていない。だから、この一週間で彼女の走りを見つけて……正々堂々と戦ってもらうつもりだ」
「……例の、コースでの話も……聞いています……それでもやると……?」
「あぁ。さっきも言ったが二言はない。それに――」
言葉を止め、視線をシャドウメアに向ける。表情こそ変わりないが、先程のアグネスタキオンの雰囲気にあてられたのか、何やら闘志めいたものがひしひしと伝わってくる。シャドウメアの様子をマンハッタンカフェも感じとったようで、軽く頷くようにすると、こちらに改めて向き直った。
「……わかりました……本気で決めたのなら……止めません……」
それだけ言うとマンハッタンカフェは軽くお辞儀をして、アグネスタキオンの研究室へと入っていく。
――退けない状況は作った。後は自分と彼女の頑張り次第、特にシャドウメアにレースのことをしっかり教える事が大切になるだろう。
よし、粉骨砕身の覚悟で頑張るとするか。 - 197二次元好きの匿名さん22/06/30(木) 23:55:25
大神一郎トレーナー…
- 198二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 01:10:15
大神さんが転生してトレセンに来てるのか
大神さんの孫か曾孫がトレーナーになったのか - 199◆UlpelLUOzM22/07/01(金) 10:34:19
昼休みが終わり、授業も終わり、放課後――昼休みの終わり間際だった先程の時点で、予めシャドウメアには放課後にトレーナー室にくるよう伝えておいた。今目の前には、きちんとシャドウメアがいる。
これからトレーニングを始めよう。そう言おうとした折、先にシャドウメアが口を開いた。
「トレーナーさん」
「なんだい、シャドウメア?」
「レースは、戦いですか?」
率直に疑問を投げられる。無表情なのは変わりないが、確かな意味を持った言葉だ。
確かに、己に相手にと競い合う事は戦いと言えるだろう。
「――そうだ。レースとは、ウマ娘達が己の力の限りを尽くし、速さの髄を……その向こう側を求める戦いだよ」
「速さ……」
「あぁ。そして、残念だがそれは今の君には無いものだ」
厳しい現実をハッキリと告げる。しかし現状の把握は今後の対策のために必要なこと、ここで言葉を濁すのはトレーナーのするべきことでは無い。
「レースでは、周りのウマ娘はみんな競い合うライバルだ。普段の生活では仲良くしていても、いざゲートに入って同じコースを走る時にはみんなが一番、一着を目指す事になる。そして……一着という栄光はたった一人にしか与えられない」
「みんなは、一着を目指す。どうしてですか?」
「――理由はそれぞれだよ。あるウマ娘はスピードの向こう側を見たい。あるウマ娘は自分の可能性の果てを知りたい。あるウマ娘はライブで笑顔を届けたい……全て聞いた話だけど、本当にバラバラ。だけど、本気で走って、本気で輝いて。それは真実なんだ」
「真実……」
「シャドウメア。君は、走りたいかい?」
「はい。走るだけなのは、幸せです」
「君は君の幸せのために走る……そういうことかな」
「今は、そうです」
「なら、もう一つ。この学園にいる数多のウマ娘達――彼女達のように、勝つために走ることを知ってみたくはないか?」
「――知りたい。私は、みんなが輝く理由を知りたい」
「……わかった。なら、これから君が勝つための走り方を一緒に考えよう」
彼女に向けてそう話すと、彼女は微笑み返してきた。しかしその目はやる気に満ち溢れ、赤い瞳からは情熱が迸っている。
さて、何から教えようか――などと考えたその瞬間、突然ものすごい音を立ててドアが開かれた! - 200三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/07/01(金) 10:40:18