- 1二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:37:57
「あなたは…!スイープさんの何なんですか!?」
単身アグネスタキオンの研究室に乗り込み、啖呵を切るのはキタサンブラック。「お助けキタちゃん」で名の知れた人望の持ち主である。
今日この場の彼女の顔からは普段の快活さは消え去り、眼前の人物への敵愾心と嫉妬心に塗りつぶされていた。
「別に、仲のいい友人の1人さ」
「それとも、君には何か別の関係性が見えているのかい?」
向かい合う相手が激情に駆られ沸き立っているのとは対照的に、いたって冷静でゆったりとした発言。それはあまりにも挑発的に映る。
「よくもそんな事白々しく!!」
複雑に絡み合い沸き立つ感情に突き動かされ、キタサンはその右手でタキオンの襟首に掴みかかる。
「君の方こそあの子の何なんだい?」
「私とスイープくんの関係に首を突っ込む道理がどこにあると……」
タキオンの言葉は鈍い衝撃音で打ち切られた。
部屋の隅でマンハッタンカフェが目を丸くする。
拳を突き出した姿勢で息を荒くし、ただタキオンを怒りで充血した赤い目で睨み付けるキタサン。その顔が歪んでいるのは殴りつけた拳の痛みの所為か、それとも憤怒と悔しさによるものなのか。
右頬を殴られた勢いのまま左を向いたタキオンがゆっくりと正面に向き直る。殴られた右頬が赤みを帯びている。
「……殴って気は済んだかい、キタサンくん?」
「だが気は済んだとしても、君の問題は何も解決しないままだ!」
「!?」
目を見開くキタサン。何やら反駁しようと口をぱくぱくするも言葉は出てこない。 - 2二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:39:08
キタサンはそんなことしない
- 3二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:41:29
独占欲かぁ…悲しいね、バナージ
- 4二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:41:59
純愛だよ
- 5二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:45:25
メチャ重ドス黒キタちゃんはインパクト◎
- 6二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:55:23
「今の君はその場で地団駄を踏んで駄々をこねているだけだ!ひとつも前に進んではいない!」
タキオンの凄まじい気迫に圧され、キタサンは思わず後ずさりする。
「君はスイープくんをどう思っている!?スイープくんにどうして欲しい!?君はスイープくんに思いを伝えたのか!?」
「思いを伝えるなんて容易い事だろう!?他人(ひと)を殴れるほどの勇気があるのなら!」
先ほどまでの気迫はどこへやら、完全に気圧されてしまったキタサンは地面にへたり込み、目の前に立つタキオンを見上げるばかりであった。
向かい合う2人の間に、しばしの沈黙が流れる。
「……でも」
「でもこの思いをスイープさんに打ち明けて、軽蔑されたら…」
あまりにも後ろ向きな発言に思わずタキオンも顔をしかめる。
「君はスイープくんがそんな狭量だと思っているのか…!?」
「そんな事…!!」
「ウジウジウジウジと君らしくもない…」
はぁ、とため息をひとつついてしゃがみ、タキオンはキタサンと目線を合わせる。
「……ひとつ助け船を出してやろう」
「スイープくんはきっと君のことを憎からず思っているよ」
「ここに来てもずっと君の話をしていたぐらいだ…妬けてしまうぐらいにね」
「……!!」 - 7二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:58:23
ドッロドロだけど好転しそう
- 8二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:08:39
「きっと彼女は君の思いに応えてくれるはずさ」
「分かったらさっさと行きたまえ、いつまでここにいる気だい」
しっしっ、と手で追い払う仕草をして見せるタキオン。
「さっさと行け、あの子を待たせるな」と言っているように見えたのは気のせいだろうか。
キタサンの顔にはいつもの快活さが戻ったようであった。
これで元通りの「お助けキタちゃん」だ。
「タキオンさん…!その、ありがとうございました!」
「それから、殴ってごめんなさい…」
「気にしなくていい、誤解を受けるのはよくある事さ」
駆けていくキタサンの後ろ姿を、タキオンは何も言わずただ見つめていた。
「……意外ですね」
「貴女がこんな風に人助けなんて…」
「…別に、ただの気まぐれさ」
カフェがおもむろに右手に持っていたアイスコーヒーをタキオンの右頬に押し当てる。
グラスとぶつかりカラン、と音を立てる氷が涼しげだ。
「冷やさないと…痛むでしょう…?」
「おお、気がきくじゃないか」
「…しかし、冷やすにしてもアイスコーヒーはどうなんだい」
「氷嚢とかなかったのかい?」
「別に、冷やせるならなんでもいいじゃないですか」 - 9二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:10:50
これで失敗したらマジでいたたまれねぇ…
- 10二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:11:54
港のヨーコかと思った
- 11二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:35:34
あれから数日後の昼下がり、今日も今日とてタキオンは研究の合間のティータイムを楽しんでいた。
殴られた右頬はそこら辺にあった軟膏(研究の副産物)を塗って1晩でアザひとつない元通りに治っている。
少々暇を持て余してカフェに何か仕掛けてみようかと思案し始めたタキオンの耳にノックの音が2回転がり込んだ。
「入りたまえ」とドアの外に返せば、元気よく「お邪魔します」と入って来たのは少し前にタキオンを殴った張本人のキタサンであった。
「今日はその、タキオンさんにお礼を言いたくて…!」
そうかそうか、その感じとその口ぶりはきっと成功したんだな。よかったよかった。
口には出さないがタキオンは内心そう思った。
それにお礼を言われるのはやぶさかではない。
特に何をしたというわけでもなく、ただ悩める者の背中を押してやっただけに過ぎないが、まあやぶさかではない。
「タキオンさんが一喝してくれたおかげで、スイープさんに思いを伝えることができました!」
「ほう、すると返事は芳しいものだったんだね?」
問い掛ければ「はい!」と返事が返ってくる。
たまには人助けもいいものだ。ああ、紅茶がうまい。普段より2割増でうまい気がする。
「それにスイープさんも気持ち良さそうで…」
ん?気持ち良さそう? - 12二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:40:24
流れ変わったな
- 13二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:05:14
これはもしかするとアレなんじゃないか?
タキオンは訝しんだ。
「待ってくれ、その…君はスイープくんに何と伝えたんだ?」
「えっと、その…白いスクール水着を着たスイープさんをローションマッサージしたいって…」
「………は?」
深呼吸して紅茶を啜り平静を取り戻す。いつもの脳に響く甘さ。よし。
「……スイープくんはその…OKしたのかい?それを?」
色々言いたいことはあったが、やっとのことでタキオンが絞り出した言葉はそれだけだった。
「はい!最初は嫌がってましたけど、それでも頼み込んだら「キタサンがそういうなら…」って言って…」
タキオンの脳内ではクエスチョンマークが縦横無尽に飛び回り、踊っている。
「君はその……スイープくんの事が好きなんだろう?好きだと伝えたんじゃないのかい…?」
「伝えましたよ?マッサージしてる途中に」
「マッサージしてる途中にかい!?」
「はい!あの時のスイープさん、可愛かったなぁ…それに……」
「よし大体わかった!…とにかくその、おめでとう」
これ以上ついていけないと判断してタキオンは話を打ち切った… - 14二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:06:35
ほんまこいつ…
- 15二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:07:47
- 16二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:07:52
急に男子中学生みたいな頭になりやがってこいつ
- 17二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:09:30
- 18二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:14:22
キタサンそういうとこだぞ
- 19二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:17:50
ドロドロか…?ん?タキオンが背中を押してくれるハッピーエンドやな…
おい!!! - 20二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:32:04
「それで、お礼ついでタキオンさんにお願いがあるんですけど……」
「……何だい、言ってみたまえ」
内心身構えつつタキオンは答えた。
さて、何を言い出すやら…
「マイクロビキニとかって…持ってませんか?」
聞くんじゃなかった。分かっていただろうに何故聞いたんだ。タキオンは自問自答した。
「……それは持ってないねぇ」
キタサンはタキオンをなんだと思っているのだろうか。
一介の学生であるタキオンがそんなもの持っていたら流石に怖いだろうに。
「そうですか…じゃあ何かムードが出るようなものとかないですかね…?」
「…じゃあこのアロマキャンドルをあげよう」
「ムスクの香りだ、きっと気に入るだろう」
これはタキオンにとっては正直使い所に困っていたアイテムであった。
このくらいの在庫処分ならバチは当たらないだろう。
この短時間で混乱を撒き散らすだけ撒き散らしたキタサンはこの後スイープと買い物があると言って帰って行った。
タキオンはちょっとげっそりしているように見えた。
少なくとも部屋の向こうのほうで一部始終を聞いていたカフェにはそう見えた。 - 21二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:33:24
キタサンが楽しそうでなにより
- 22二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:37:51
タキオンはどこか悟ったような眼で窓の外を見ていた。
視線の先にはおろし立ての体操着に身を包んだ初々しい新入生たち。
皆一様に輝かしい未来への希望で満ち溢れた眼をしている。
黄昏ている間にすっかり冷めてしまった紅茶を一気に飲み干して、ほう、と一息つく。
「最近の若い子というものは進んでるんだねぇ、カフェ…」
「あれは特殊な例だと思いますけど……」
今日はちょっと優しくしてあげよう。
なんだか哀愁溢れるタキオンの背中を見て、カフェは内心そう思った。
<おわり>
- 23二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 00:21:53
タキオンには本当に申し訳ないと思っている
- 24二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 00:27:42
殴られたことよりローションマイクロマッサージの方がタキオンのダメージデカそう
- 25二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 00:28:32
タキオンと一悶着やってる間にシャトルやカフェに取られそう
- 26二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 04:47:30
タキオンかわいそう(後半読みながら)
- 27二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 05:23:20
これタキオンの殴られ損では?
- 28二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 06:57:00
殴られるレベルの修羅場から白スクローションマッサージ……ロジカルじゃないねぇ
- 29二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 07:17:35
白スクは持ってたのか(困惑)
- 30二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 13:59:13
タキオンが冷静で世話焼きでハッパもかけられるものすごい良い先輩してる良SS。
なお。 - 31二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 14:03:02
ちょっと良作にノイズが入ってた気がするが気のせいだろう
- 32二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 14:06:32
本当か?本当にちょっとか?
- 33二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 21:56:37
上げ
- 34二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 09:11:28
このレスは削除されています
- 35二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 09:14:45
- 36二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 09:17:29
- 37二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 09:23:26
まあ…皆幸せそうだからいっか!
- 38二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 09:40:11
唯一可哀想なタキオン まぁタキオンだしへーきへーき
- 39二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 09:41:58
タキオンは泣いていい
なんなら殴り返していい - 40二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 20:44:03
あげ
- 41二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 20:45:55
ハッピーエンド!
- 42二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 21:13:38
キタスイにマイクロビキニローションが定着しとる…
- 43二次元好きの匿名さん22/06/12(日) 21:14:53
タキオンさん殴り返したら逆に跳ね返されそうだし…
- 44二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 08:58:54
ハッピーエンドだなぁ...
- 45二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 09:56:36
なんなの、最近のキタちゃんはスイープにMB着せたがる変態のイメージ付いちゃってるんだけど?