ヒシアマゾン「ん?ブライアンどっか行くのかい?」【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:12:29

    アタシが話しかけてもブライアンはさみしそうに微笑むだけだった。
    不思議に思いながらもアタシは彼女についていった。
    かなり日も傾いていて、周囲は茜色に染まっている。
    しばらく二人でロードワークをこなす。
    沈黙に耐え切れなくなり、アタシのほうから話題を振る。
    今夜の夕食の献立。
    最近ブライアンの好き嫌いがなくなってきたこと。
    寮対抗で鍋対決をやること。
    あの中山での勝負も話した。
    ブライアンは相変わらず無言だったが、どことなく楽しそうだった。

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:12:48

    街中に入り、建物が増えてきた。
    しかし普段とは違い人影がまったくなかった。
    今日は不思議なことばかりだ。
    そう思っているとブライアンが急に走り出した。
    驚いたが、ブライアンと久々のタイマンだと思うと血が騒いだ。
    ぐっと脚に力を入れ追いかける。
    開いた差が少しづつ縮まっていく。
    ブライアンが曲がり角に消えた。
    後を追って曲がり角に飛び込むとそこには───
    誰もいなかった。
    ただただまっすぐな道だけが伸びていた。
    ブライアンの名前を呼ぼうと喉を震わせる。
    声にはならず情けない吐息だけが漏れた。
    日はさらに落ちていた。
    周囲は真っ赤に染まっている。
    まるで世界ごと彼女が血に飲まれてしまったようで。
    身体中にまとわりつく寒気を振り払うように駆けだす。
    脚が重い。
    前に進まない。
    それでも懸命に動かす。
    一瞬、影が見えた気がした。
    焼ききれそうな肺に息を入れ、叫ぶ。

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:13:12

    「ブライアン!」
    アタシは自室のベッドで飛び起きた。
    夢、か。
    不快な汗でびしょびしょのパジャマを着替えながら時計を見る。
    日が昇るかどうかという時間だ。
    朝練というには早すぎる気もするが、目も冴えてしまったので軽く走ることにした。
    ジャージに着替え外に出る。
    そこにはブライアンがいた。
    「……おはよう、アマさん」
    たった一言。
    それだけなのに。
    アタシの目から涙が零れ落ちた。
    「ど、どうしたアマさん!?なにかあったのか!?」
    心配そうに駆け寄ってくるブライアン。
    大丈夫、とはとても言えなかった。
    慌てているブライアンに語り掛ける。
    「……ブライアン、アンタは急にいなくなったりしないよな?」
    アタシから出た声は悪夢を見た少女そのもので、我ながら女傑とは程遠かった。
    そんなアタシを見て、ブライアンは即答した。
    「当たり前だ。ずっとそばにいる」
    ああ、なんて傲慢な。
    でも。
    とても、安心する響きだった。
    ぽすんとブライアンの肩に頭をのせる。
    アタシと同じくらいの身長なのに、どうしてかブライアンの身体が大きく感じた。
    昇り始めた朝陽が二人を照らす。
    二人分の影が一つに重なっていた。

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:14:27

    「競馬にもしもはない」なんて言いますけど、ナリタブライアンが早世してなかったらヒシアマゾンとの産駒もいたのかなあ、なんて競馬ニワカながら思ってしまいますね
    お目汚し失礼しました

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:17:52

    8才だからなぁ…ウマ娘でいえば育成シリーズ終わってわりともうちょい後くらいにはいったわけで、惜しい

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:26:18

    ヒシアマゾンと実際に交配したんだろうかなあ
    まあするか

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:36:53

    この二人のこういうネタ、ずんと心に染み渡る。

    大好きです。


    >>1こういうのも好きそう


  • 8二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 00:39:46

    >>7

    ああ、いい作品ですねえ…

    個人的にはせめてウマ娘という作品の中のさらに狭い”自分の創作物”という世界の中では末永く幸せになってほしいなあってタイプなのでこれからもハッピーエンド多めだと思います

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