- 1二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:18:36
「モルモット君、紅茶を用意してくれるかい」
「……はいはい。アールグレイ?」
「それで構わない」
「了解」
席を立ちキッチンへ向かう。戸棚から茶葉を取り出してお湯を沸かす。その間にティーカップとソーサーを用意しておこう。お茶請けのお菓子も用意しておかないと後がうるさいな……
「はい、どうぞ」
「ああ、どうも」
自分が用意したティーセットでソファーで優雅に紅茶を飲むウマ娘、アグネスタキオン。自分も若干の距離を開けながらも隣に座る。
「……君」
「ん?」
「砂糖の量が足りないようだが?」
「あのなタキオン、毎回毎回飽和量まで突っ込んでたら体壊すよ」
「仕方ないねぇ……」
「普通はそんな入れないからね……?」
俺は用意した角砂糖を一つピンセットで摘み上げタキオンの紅茶に入れる。
「これで我慢して。良いね?」
「うーむ……まあ、妥協しようか」
渋々と言った様子だが納得してくれたらしい。
「……なんだい、じろじろ見て」
「一応監視」
目を離すと角砂糖を10個くらい突っ込みかねないのが彼女の恐ろしい所だ。……見てる理由は、それだけではないが。
「君は相変わらず心配性だねぇ。私は子供じゃないんだ、駄目だといわれてやるようなそんな事はしないさ」
「そう言ってこの間カフェテリアで紅茶に大量の砂糖入れようとしてたよね?忘れてないよ?」
「……あれは味覚の調整の為に必要だったんだよ。せっかくなら美味しく飲みたいだろう?」
「あれを飲み物というんなら角砂糖に紅茶染み込ませて食うのと変わらない」
「えーっ!全く……最初の頃は言えばなんでも聞く、それこそ可愛らしいモルモットのようだったのに最近は私への当たりが強くなってないかい?」
「さぁね」
「酷いなぁ……。こんなにも君には心を開いていると言うのに」
「はいはい……」
自分の言葉に、彼女は頬杖を突きながらニヤリと笑った。 - 2二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:18:49
「……そういえば、一つ気になることがあるんだよねぇ。……君のその目だよ」
「目?」
「ああ、そうだとも。君は私の事を見る時いつも何か言いたげ、いや、何か秘めたような顔をしているじゃないか」
「…………」
……図星だ。
「……昔は単純に私と同じく狂った瞳をしていたけど、今となってはその瞳に映る感情は違う物になっているように見えるねぇ……私が君にとって、どんな風に映っているのか聞かせてくれないか?」
タキオンの瞳が真っ直ぐこちらを見据えてくる。
いつもと変わらない狂った瞳。しかしあの時、今も確かに美しく映っている綺麗な目で。
「……私のざっとした推察では、私の走りに惹かれて、可能性に惹かれて追いかけようとした君のその好奇心は、やがて気付かぬうちに恋慕になった。違うかい?」
……参った。全部見透かされていたのか。自分の想いも、悟られまいと隠し続けてきた努力も。
だけど、きっと。
「……もし仮に自分がそうだとしても」
「ふぅン……?」
「……君は、多分それを望まないだろう」
「…………!!」
自分の言葉を聞いた途端にタキオンの目が大きく見開く。
眉は下がり、信じられないものをみるような目をして、身体をわなわなと震わせている。
「なんだ、それ。………ふざ…る…な」
「えっ?」
「ふざけるなこのバカモット!!」 - 3二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:20:56
「ぐぇ!?」
突如胸ぐらを掴まれた。突然過ぎて息が詰まりむせる。
「ゲホッ!ちょ、いきなり何を……」
「黙りたまえ!君みたいな鈍い奴には私の気持ちが分かるわけないだろうね!」
「きもちぃ!?」
「そうだよ!今までずっと共に歩いて!カラオケとかにも一緒に行って!出掛けるときも常に君も連れていって!弁当とか面倒を請け負ってくれて!トレーナー室に毎日のように通いつめて!今もこうして顔を合わせてお茶をしている!!なのにどうして私が君のことを拒むと思う!!?」
「だって…」
「だってじゃない!!いいか、一度しか言わないからよく聞きたまえ!!」
「う、うん……」
勢いに気圧された自分は、そのまま黙って聞いていることにした。
「私は、君のそばにいられるのならそばにいたいし、離れたくない!今の私が君と離れようものならいつか死にそうだ!出来ることならこうしてずっと日常を過ごしていたい!!この意味が分からないほどバカではないだろう!!?…………それとも何だい、君はやっぱり私のことが嫌いなのか?薬も好き放題服用させているし……」
不安からか彼女の手が震えていた。声も涙ぐんでいて、今にも泣き出してしまいそうな、そんな表情をしていた。
自分は彼女に何も言えなかった。
……いや、言えるはずがない。
彼女がここまでの想いを抱いてくれていたことに驚きを隠せなかった。正直こう、自分はタキオンにとって道具というか実験動物に過ぎないのではと思っていたからだ。しかし同時に自分の軽率さに嫌気が差す。彼女は俺のことを好いてくれていて、自分はそれに気づけなかった。
しかも、自分はトレーナーだからと自分の好意にも蓋をして。
「……ごめん、自分も、同じ気持ちだ」
俺はただ一言、そう言った。
「……ッ!!!」
「っ!?」
次の瞬間、自分の視界は真っ暗になっていた。……いや、正確には、彼女の胸に抱きしめられていた。
「本当に…君って人は……!!」
「ちょ、ちょっと待った。ここ学園だぞ?誰かに見られたらどうす」
「……君は少し黙っていたまえ」
タキオンに力づくで抱き寄せられる。
彼女の体温と匂いが、否応なく伝わってきた。
「全く……君という奴は……。私のことを散々弄んでおいて、いざこっちが本気にしたらこれかい?酷い男だねぇ」
「……それは」
「言い訳は結構だよ。…今は、私のことだけを考えて欲しい」
「……分かった」 - 4二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:22:02
少しだけ密着するのをやめると、彼女の顔が間近にあった。
目と目があう。
呼吸が伝わる。
心臓の音すら聞こえてきそうだった。
「……」
「……」
お互いに無言のまま、時間が過ぎる。
すると、タキオンの右手が伸びてきて、そっと俺の頬に触れた。
「トレーナー君」
「……タキオン」
愛の確認のように互いを呼ぶ。
もう言葉なんて要らなかった。
二人は、自然と互いに顔を近づけていった。 - 5二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:25:45
…そして、唇が触れ合う。
「……ん」
互いの吐息だけが聞こえる空間で、ただ二人の熱を感じる時間が続く。
永遠とも思えるような時間の後、ようやくお互いの顔が離れた。
気付けば二人ソファーに倒れている。まるで夢のような出来事だったが、間違いなく現実に起きた事だと証明するように、タキオンと自分の口元には銀に煌めく橋が出来ていた。
「……ふぅン?」
「ど、どうしたの」
タキオンが自分に被さりながらこちらを見つめてくる。タキオンの肌が触れる。息がかかる。匂いが伝わる。誘惑が色々と凄まじいが、タキオンの将来を考えると酷く冷静になれた。
「私達は恋人同士になったわけだが……どうする?この先もするかい?……ほら」
制服のリボンを解こうとしだしたところで眉間あたりにデコピンをした。
「い、痛い……!」
「駄目だ。在学中は健全な関係でいるんだ、君のためにも。あと今度からそういうことはしないで欲しい。……無防備が過ぎるんだよ、ホントに自分が襲ったらどうするつもりだったんだ」
「むっ……」
タキオンは自らの眉間あたりを撫でながら不満げな顔を見せた。
「君以外にこんなこと許すわけないだろう?……まったく、君という男は本当に鈍感だね。まさかここまでとは思わなかったよ」
「あのなぁ……もう今日は帰るからな」
そういって纏めた荷物を持ち、トレーナー室を出ようとする。しかし、その手を掴まれた。
「……あの、離してくれないか」
「嫌だ」
「えぇ……」
タキオンに腕を握られ、逃げられないようにされてしまう。
「……帰らないでくれ」
普段の尊大な態度からは考えられないような弱々しい声音で懇願される。
「……家、来るか?」
「……もちろん!!!」
この後、二人幸せに暮らし、子宝にも恵まれるのは遠いようで近い未来の話。 - 6二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:28:07
好意には気付いてないけどお互いラブラブじゃねーか!!
- 7二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:35:07
クソスレタイからの落差(?)が酷すぎるんだが?
- 8二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 21:50:42
え?ギャグは?
- 9二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 22:25:01
ギャグというかラブコメというか
- 10二次元好きの匿名さん22/06/13(月) 22:31:06
クソボケられタキオンでやんしたか
- 11二次元好きの匿名さん22/06/14(火) 10:05:46
とても助かる
- 12二次元好きの匿名さん22/06/14(火) 21:43:43
タキオンは多分クソボケかまされたら軽めにぶちギレるよなぁ……って
一緒に感情も研究してきた身だろタキトレェ!! - 13二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 09:23:22
またイチャイチャしてんな
- 14二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 14:39:16
脳が回復するぅ!