- 1二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:19:24
繋靭帯炎。それは、ウマ娘にとって不治の病のひとつ。
治療には1年前後の期間を要し、なおかつ再発の可能性も非常に高く、復帰を断念して引退を余儀なくされたウマ娘は数知れない。
"史上最強"とも謳われるチーム・シリウスのエース、メジロマックイーンは今日、左足にその繋靭帯炎を患った。
天皇賞・秋に向けてのトレーニングに励んでいる最中の出来事であった。
「では……引退、ということになりますわね」
「ああ……」
ここはチーム・シリウスの部活。
昼間はメンバーが集まり賑やかな様相を見せるこの部屋も、すっかり日が落ちた今はマックイーンとトレーナーのふたりきりになった。
「本当にすまない。俺がもっと早く気づいていればこんなことには……」
「何度も言わせないでくださいまし、トレーナーさんのせいではありませんわ。私自身……まったく身体に異常は感じていませんでした。むしろ、調子が良すぎたくらいですもの」
病院から戻った後、机に向かい合って話し合うこと数時間。
ふたりが出した結論は、引退だった。 - 2二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:19:56
シニア級も3年目に入ってなおマックイーンは健在であったものの、治療に1年以上を費やすにはあまりにもキャリアが長くなりすぎた。もし戻ってこられたとしても通用する可能性はあまりにも低い。
それに、生き地獄とも言われる再発の苦しみを彼女に味わわせるという決断は、トレーナーにはどうしても下せなかった。
「おばあ様へのご報告は明日にするとして……会見の日取りも決めないとなりませんわね。トレーナーさんはいつがよろしいとお考えで───」
「マックイーン!」
早くもこれからのことを考え出したマックイーンの言葉を、トレーナーの震えた叫びが遮った。
道半ばで引退という苦渋の決断を下したというのに、彼女はまるで気にした風もなく毅然としている。
彼にはそれが解せなかった。
「……どうされました?」
「君は無念じゃないのか?今年こそ秋の天皇賞の雪辱を果たすって約束しただろ!?それが……こんな形で終わるなんて、悔しくないのかよ!」
拳を振り下ろされた机がドン、と揺れるとともに、トレーナーの頬を熱い涙が伝う。
今でも昨日のことのように思い出す。
栄光からどん底に叩き落された2年前のあの日、世間を揺るがす大騒動とともにマックイーンとトレーナーの関係は変化を迎えた。
翌年は骨折でリベンジの機会が失われた。だから今年こそは絶対に周りの期待に応えてみせる───ふたりでそう決心したのに。 - 3二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:20:27
「悔しい、とは思います。天皇賞の盾は春秋揃ってこそのものですし、それに挑むことすらできないというのは無念ですわ。……ですが、自分でも意外なほどに、さほど落胆していないのです」
「どうして?」
そう尋ねると、マックイーンはそっと胸に手を当てた。大事な話をする前に決まって行う、彼女の癖だ。
「私はひとりの競走者である前に、シリウスの───このチームのエースですわ。その走りと生き方をもって周りに夢を見せ、道を示すことが私に課せられた役目。そして、その役目は十分に果たしたと自負しております」
「……っ」
今年の春のことだ。菊花賞のトラウマから走ることを諦めようとしたライスシャワーに、それでも走り続ける意味を示したのはマックイーンだった。
その結果悲願の三連覇を逃し、影では涙を流したとしても、彼女は誇らしげだった。
そうだ、彼女とは───メジロマックイーンとは、そういうウマ娘なのだ。
「あの秋の敗北から───いつこんな日が来てもいいよう、常に悔いのない走りをし続けたつもりですわ。きっと私の志は、他の誰かが継いでくださる。そう思えば……悔やむことなど何もないではありませんか」
「……大人になったな、マックイーンは」
「トレーナーさんのおかげですわ。あなたは本当によく私を助けてくださいました。本当に、感謝してもしきれないほどで……」
あの日、オグリキャップの引退レースを見て共に目を輝かせた少女はもういない。
今目の前にいるのは、苦難という脚本と栄光という舞台衣装に彩られた"名優"そのもので。 - 4二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:20:54
「そんなことはない。俺は本当に、いつも君に背負わせてばかりで……」
そんな彼女を、一心同体のパートナーとして自分は支えきることができただろうか。
何よりも彼女らしく振舞わせることができただろうか。
「あ、あ、ああ……」
そんなことを考えるうちに、涙が溢れて言葉らしい言葉も出せなくなってしまった。
「いけませんわトレーナーさん。あなたはこれからも多くのウマ娘を、チーム・シリウスを導いていくのでしょう?でしたら、立ち止まっている暇なんてありませんわ。泣くのは今日までにしてくださいまし!」
そんなトレーナーにマックイーンが投げかけたのは恨み節でも嘆きでもなく、力強い励ましの言葉。
悲しみに打ちひしがれている彼女がそれを押し殺して気丈に振舞っているのに、自分が落ち込んでなどいられるものか。
「ああ……!」
トレーナーは目元を拭い、顔を上げて───そして、気づいた。
「そう、明日からは新しい日々を……ね?」
目の前の彼女の表情が、己の功績を誇らしげに語る名優から、ほんのりと熱を帯び、次なる戦いを見据えた"女"のそれに変わっていることに。 - 5二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:22:32
ヘンテコなスレタイから唐突に良SSをお出しするな
陰茎が苛立つ - 6二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:23:19
スレタイは何なんだよ
- 7二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:23:50
クソスレタイは極刑だぞ、刑を回避したければもっと書くがいいや
- 8二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:25:40
こんなかっこよくメジロの威厳を示してるマックイーンがメジロじゃなかっただなんて……
- 9二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:25:43
スレタイからこの内容は何だ!
- 10二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:26:55
マックイーンは巨乳ではない
ということはメジロではない
つまりメジロの名を捨ててでもトレーナーと「一心同体」になろうという女の決意を高らかに表明したスレタイなのだ - 11二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:31:23
「トレーナーさん」
机越しにマックイーンの整った顔がずい、と近づいて、思わずトレーナーはたじろいだ。
「な、なんでしょう」
「今日という転機を受けまして、ひとつお伝えしたいことがあるのです。……聞いていただけますわね?」
有無を言わさぬ迫力。
泣き腫らした顔を繕うのもそこそこに、トレーナーはただ頷くしかなかった。
「恥ずかしながら私は、これまで異性と触れ合うという経験がほとんどありませんでした。幼い頃からメジロ家を背負って立つ者になるため、研鑽に努めてまいりましたから……話したことのある相手すら、家の使用人かじいやくらいのものでしたわ」
「そんな中であなたは現れました。年上とはいえそこまで大きく年が離れているわけではなく、兄と呼んでも差し支えないほどで……初めはどう付き合ったらいいものかと悩んでいたのです」
「マックイーン、それは」
今する話じゃないじゃないか。
掠れた声はそこまで発することができなかった。
「でも、それは杞憂でしたわ。いつだって私のことを考えて動いてくださるあなたを前に、繕うことなど何もなかったのです。ただ、自然体でいればいい。それほど心安らぐ時間が他にあるでしょうか?」
「それは、俺がシリウスの……君のトレーナーだからで」
「トレーナーさんからすればそうでしょう。でも、私は───自分の気持ちに気づいてしまった」
咳払いがひとつ。
それ以上はいけない。そう分かっているはずなのに、トレーナーは何も言えなかった。 - 12二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:40:44
「トレーナーさん。私は、ずっとあなたをお慕いしておりました。チームのウマ娘としてではなく───ひとりの女として」
ふと、トレーナー室の明かりが消えた。
計画停電だかで、今月は規定の時刻になると一部を除いて消灯する決まりになっている。
月明りだけが差し込む部屋の中で、衝撃的な告白を果たしたマックイーンの顔が、やけにはっきりとトレーナーの目に焼き付く。
どれだけ沈黙が続いただろうか。
やっと絞り出すように話し出したのは、トレーナーの方だった。
「……気持ちは、嬉しい。世間的な是非はどうあれ、そこまで慕ってもらえるのは人として喜ばしいことだから」
「でしたら」
「ただ、今はこっちの気持ちの整理がついていないんだ。それまで、答えは預からせてもらえないか?」
お手本のような先延ばしの回答。
トレーナーだって好きでそうしたわけではない。ただ、今の───さんざん感情が揺さぶられた脳内では、満足のいく答えが用意できなかったのだ。
大丈夫、マックイーンは分別のある子だから、きっと分かってくれるだろう。
そんな期待は、あっさりと打ち砕かれることになる。
「なりません。待つのは構いませんけれど、この夜が明けるまでには答えていただきますわ」
「え……どうしてそんなに急ぐんだ」
「待てない理由があるからです」
いつもの彼女らしからぬ、ずばりとした物言い。
様子が変だというにはあまりにも遅かった。 - 13二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:48:16
思ってたのとなんか違う!
- 14二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:48:43
「トレーナーさんはとても強い方ですわ。そう遠からず、きっと私とのことを忘れるのではなく、傷を乗り越えて次へと進んでゆける。私はあなたのそんな強さを誇らしく思う一方で───とても憎らしく思ってもいるのです」
「……」
「ライスさん、ブライアンさん、スズカさん……シリウスには、わたくしに勝るとも劣らない才覚を持つウマ娘が何人もいます。そして、彼女たち全員があなたのおかげで今日の強さを得ることができた」
「そんな中で、ターフを去った私がこの先もトレーナーさんの隣に居続けられるでしょうか?この怪我の罪を清算して立ち直ったあなたのお傍に、役目を終えたウマ娘がいつまでも未練たらしくいる意味は?───あるはずがありませんわ。往生際の悪い小姑と、そう陰口を叩かれるのがオチです」
「そんなことはない!もしチームに残りたいのなら、サブトレーナーとか……マックイーンの居場所はいくらでも用意する!」
今までふたりで歩んだ日々を輝かしいものだと思っているのなら、わざわざそれを汚すような真似はしなくてもいいじゃないか。
でも、目の前の彼女はそれでもなお、トレーナーを追い込もうとしていた。
「それも魅力的な案ですわね。ですが、私が欲しい居場所はたったひとつ。ですからそのご提案は逃げにしかなりませんわ」
「マックイーン、ちょっと待って───」
「待てません!」
今日ここにきて初めてマックイーンが声を荒げた。
「傷心につけ込む形になったことは謝ります。……ですが、今すぐ答えをくださいまし。私は恥を忍んであなたに思いの丈を包み隠さず打ち明けました。今度は、トレーナーさんがその答えを形で示す番ですわ」
「さあ、答えて」
月の光に照らされるマックイーンの潤んだ瞳。
初めて手にした春の盾。
もう彼女がターフに立てないことを示す机の上のレントゲン。
チーム・シリウスの皆で撮った何枚もの写真。
答えを求めて彷徨わせた視線の先の悉くに、目の前の彼女の姿があって。
朦朧とすらしていた意識が、急速に冷え固まっていくのを感じた。
トレーナーは椅子から降りると、そっとマックイーンの前に跪いた。
そして彼女の左足をそっと手に取り、ギプスの上から顔を寄せて───── - 15二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:48:53
どうしてそのスレタイにした!言え!
- 16二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 22:50:43
強いですわ!これは人を退屈にさせる名優ですわ!!
- 17二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:17:03
もう夜明けも近い頃、トレーナー室を出たマックイーンは松葉杖を突きながら寮への帰途についていた。
門限を破ったのはこれが初めてだが、どこか彼女の顔は満足げで。
「マックイーン」
「っ!」
声の主に覚えがあると即座に気が付かなければ、叫び声のひとつでも挙げていたかもしれない。
暴れる鼓動を普段の奇行に走る姿で押さえつけて、マックイーンはゆっくりと後ろを振り返る。
「……ゴールドシップさん、今何時だと思っていますの?」
「オマエも門限破りじゃねえか。ゴルシちゃんにだけ説教できると思うなよな」
暗闇の中で浮かぶのは、自分と少し似た芦毛の髪。
彼女の行動なんていつだって意味不明だが───ゴールドシップがここにいるのは些か不自然な感覚だった。
「甘んじて処罰は受け入れますわ。無論、あなたも同罪ですけれど」
「わーってるって。反省文はよ、タガログ語で書くとフジが喜ぶんだよ!マックイーンにも書き方教えてやろうか?」
「結構です。用件はそれだけですの?では私は失礼いたしますわ。少しでも身体を休めたいので」
「よかったのかよ」 - 18二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:17:42
再び歩き出そうとした背にかけられたのは、想像よりもずっと真剣な声だった。
マックイーンがまた振り返ると、立ち止まったままのゴールドシップの姿は今にも闇に溶けそうなほどおぼろげになっていて。
「……何がです?」
「卒業まで待つって言ってたじゃねえか。引退するにしてもよ、ちと早かったんじゃねえか?」
きっと、彼女が今この場に現れたのは偶然ではない。
帰りが遅いから、気を利かせて迎えにでも来たのだろう。そして───一部始終を見られていた。
はあ、とマックイーンはため息をついた。不幸中の幸いというべきか、その相手がゴールドシップでよかった。
「予定というのはいつだって変わるものですわ。少なくとも、あの機会を逃すほど私は悠長ではなかったということ」
「マックイーン……」
「くれぐれも今日のことはご内密にお願いいたしますわ。チームの士気に関わりますもの。……ね?」
そう言って、マックイーンは今度こそ歩き始めた。
きっと彼女は、ゴールドシップはその通りにするだろう。
奇人を演じているくせに、本質は生真面目で繊細な子だから。
そこまで考えたところで───なんだか親になったみたいだ、と思った。
今日は忙しい一日になる。
門限破りの処分を受けて、おばあ様に引退の報告をして、それからマスコミへの対応も。
煩わしくって仕方がないが、それもまた必要なことだ。
真の意味で一心同体になったパートナーと共に歩むためには。
「ね、トレーナーさん」
誰より愛しい相手の顔を浮かべながら、マックイーンは熱っぽい目で己の左足───罪の証を見つめた。 - 19二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:19:05
というお話を読みたいなと思いました。
全部貼るの面倒になってきたんで直近の過去作
うおっすっげえ湿度……蒼き地球かな?|あにまん掲示板昼食を済ませて、少し身体を休めたらトレーニングを始めようかという昼下がり。ベンチに並んで座って他愛もない話をしていると、ふとパーマーが大きなあくびをした。「どうした、寝不足か?」「なーんか変な夢見ちゃ…bbs.animanch.com【SS】勝利の鼓動|あにまん掲示板まだ薄暗い明朝。私は朝食もそこそこに学園を抜け出して、彼のいる部屋のドアをそっと開けた。「おはよう、トレーナー。まだ眠いだろうに、朝早くに来てしまってすまない。でも、どうしても顔を見ておきたかったんだ…bbs.animanch.com - 20二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:22:55
最近はつよつよマックがトレンドか
- 21二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:28:08
マックちゃんがガチるのはかわいすぎるから禁じ手
- 22二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:37:39
しっとりマックイーンは強すぎるので普段はぱくぱくでナーフしてるんだ。解き放たれればこの火力よ
- 23二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:38:22
名優だからな
勝つためならどんな役だって演じられるだろうさ - 24二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:39:02
うーんこれは名優
退屈なまでに強い恋愛 - 25二次元好きの匿名さん22/06/15(水) 23:42:49
強い
- 26二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 00:00:14
なんやかんや見かけないシリウストレ×マックイーンのSS
- 27二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 07:44:04
マックイーンに誘惑されてえなぁ
- 28二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 07:49:07
そこはかとなく退廃感…
- 29二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 07:54:24
マックちゃんに胸ぐら掴まれて迫られたいよ…
- 30二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 16:58:08
このスレタイだと一瞬SSだと気づかんかったわ!!
でもクソスレタイからの良質SSはほんと助かる - 31二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 20:05:10
傷の舐め合いの共依存はいいぞケンシロウ
- 32二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 22:13:38
ジメジメジロ概念すき
- 33二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 22:19:14
ギプスでナニしたんですか!?
- 34二次元好きの匿名さん22/06/16(木) 22:22:48
このレスは削除されています
- 35二次元好きの匿名さん22/06/17(金) 10:20:42
めっちゃ良かった
- 36二次元好きの匿名さん22/06/17(金) 21:10:58
つよつよマックイーンすげぇ助かる
- 37二次元好きの匿名さん22/06/17(金) 21:12:01
何っ!?俺が今読もうとした巨乳マックイーンSSは!?
- 38二次元好きの匿名さん22/06/17(金) 21:14:07
そんなものはない(画像略)