【SS】バレンタインか

  • 1季節外れとは言わないで21/09/28(火) 21:50:40

    今日は2月14日か。ふと、そう思った。お昼にカフェテリアで限定メニューを食べたからか、あるいはカレンさんが浮かれてたのを思い出したからか。私は、今日が世間一般では特別な日であることを唐突に思い出した
    とりあえず、おやつとしてチョコを買うのはやめておこう。バレンタインの日はチョコが若干高いしね

    「あ、あの! アドマイヤベガさんですか!?」

    そんなくだらないことを考えていると、一人のウマ娘に声をかけられる。関わった事はない……いや、選抜レースで一緒に走った事はあるか。名前は確か、ジャラジャラさんだったかな

    「ええ、私はアドマイヤベガですが……どうかしましたか?」

    「あ、あの、えーと、その」

    どうしたのだろう。しどろもどろだが、もしかして私の顔に何かが付いてるのだろうか。そういえばお昼ごはんを食べたあと、ちゃんと口を拭いてなかった気もする

    「これ、手作りのチョコレートです! 受け取ってください」

    意を決したかのように見えたジャラジャラさんは、可愛らしく梱包された箱を手渡してくる。え、どういうこと

  • 2毎日アヤベさん21/09/28(火) 21:51:22

    「あの、これは……?」

    「アドマイヤベガさん、選抜レースで一緒に走った時から憧れていました! 気持ちばかりですが、受け取ってください!」

    なるほど。バレンタインのいわゆる友チョコと呼ばれるものだろうか。まさかほとんど関わってない人から貰えるとは思ってなかったけど、その気持ちがとても嬉しい。思わず顔が緩んでしまいそうだ

    「ありがとう。すごく嬉しいわ、ジャラジャラさん」

    「……! 私の名前、覚えててくれたんですか?」

    「顔を見てから思い出しただけよ。でも、あなたの気持ち受け取ったわ。きちんとお返しするわね」

    「ひゃ、ひゃ、も、もう十分に受け取りましたああぁ!!」

    そのまま踵を返して、凄い勢いで離れていくジャラジャラさん。凄い切れ味だ、選抜レースの時よりも遥かに強くなっている。私も負けてはいられない

  • 3毎日アヤベさん21/09/28(火) 21:52:02

    「あ、あの! アドマイヤベガさん!」

    ん、また声をかけられた。この娘は……今度こそ知らない娘だ。ただ忘れてるだけの可能性もあるから、対応には気をつけないと。手元にはラッピングされた箱を持っている。そんな娘が私を呼び掛けたのだから、真意に気付かないほど私は鈍感ではない

    「これ、私からの気持ちです! 受け取ってください!」

    「ありがとう。ごめんなさい、私は貴女を覚えてないけど、気持ちは伝わったわ」

    「はうっ、笑顔がカッコかわいい……」

    えっ何か呟いたと思ったら倒れた。まずい、頭を打ったかもしれない。急いで保健室に運び込まないと

    「はーっはっはっはっは! キミも人気者だね、アヤベさん」

    このやかましいのは……やっぱりテイエムオペラオーか。手には無数のジュラルミンケースを抱えている。まさかこれ全部もらったチョコなのだろうか?

  • 4毎日アヤベさん21/09/28(火) 21:52:45

    「しかしいけないねアヤベさん。お返しの品は常に用意しておかなければ。キミはこのトレセン学園でも屈指の美しさと儚さ、そして何よりも孤高な気高さを持っているのだからね。もちろんボク程ではないけどね、はーっはっはっはっは!」

    何を言われてるのかよく分からないが、この娘いわく私はトレセン学園でそこそこ人気がある、らしい。なんでだろう、私はこの娘みたいにファンサービスとかやった記憶はないのに

    「お困りのようだね、孤高なポニーちゃん」

    後ろから声を掛けてきたのは、栗東寮の寮長、フジキセキさんだ。その背中のカゴには無数のチョコが入っている
    ……オペラオーはジュラルミンケースを抱え込んでいるし、倒れちゃった娘はこの人に手伝ってもらって運んでもらおう

    「あの、この娘を保健室に運ぶのを手伝って貰ってもいいですか」

    「勿論いいよ。ただ、なるべく駆け足で向かおう。私はもちろん、今のキミもかなりの人気者だ。一つの場所に長居をすると大変なことが起きる」

    えっなにそれ。ていうか私が人気者? なんで?

  • 5毎日アヤベさん21/09/28(火) 21:53:10

    「なんで私が、という顔をしているね。それはそうさ、ダービーを制し、怪我をしても不屈の精神を持ってストイックにトレーニングする姿は、一部のポニーちゃんにとってはとても輝かしいものなのだからね。それに、キミは他の娘が持たない気高さのようなものも持っているし、酔ってしまう娘も居るだろう」

    ……知らなかった。というか考えたことなかった。褒められて悪い気はしないけど、面倒事に繋がるのは嫌だな

    「さて、急いで運ぶよ! せーの!」

    フジキセキさんが頭を、私が脚を持って勢い良く駆け出していく。流石というべきか、搬送をする際の動きにも無駄はなく、また移動速度もそこらのウマ娘の併走より遥かに速い。私でなければ、この娘を落としてしまっただろう
    そうこうしてるうちに保健室へとたどりついた

    「ここからは私に任せて。キミもトレーニングの時間があるだろう?」

    「……え。でも、いいんですか?」

    「もちろんさ。君のことを迎えに来てる娘もいるしね」

    さあさあ行ってらっしゃい、と保健室から押し出される。というか、私を待ってる人? 誰とも約束した覚えないんだけど

    「待ってたよアヤベさん! これからトレーニングするのなら、ボクと共に併走をしようじゃないか! 麗しきボクと気高きアヤベさんが共に汗を流せば、誰もが見惚れて卒倒してしまうだろう。ああしかし、祝い事がある日でも共に高め合うことで、ボクとアヤベさんはより高め合い、最後にはボクが覇王となって君臨するのだから!」

    「悪いけどまた保健室に人を運びたくないからパス。それと、もう貴女に負けるつもりもないから。覇王となるつもりなら、私が真正面から差し切り、闇を払ってあげるわ」

    自信過剰なのは結構だけど、私に勝つ前提で話を進められるのは癪に障る

    「ふむ、たしかに卒倒した者達を放ってはおけないからね。仕方ない、今日は引くとしよう。だが、次こそは併走に、そしてボクのオペラに付き合ってもらうよ!」

    ……やっぱ白けてきた。なにを本気になってるんだろ私
    絡んでくるのはいつもの事だし、今日が終われば学園を包む浮かれた雰囲気も落ち着くだろう。事実、この娘ほどの実力者と併走トレーニングを行えばより高めあえるのは間違いない。オペラには付き合わないけど

  • 6毎日アヤベさん21/09/28(火) 21:53:18

    「じゃあね。また今度」

    そう声を掛けたが、彼女はもう窓を見つめながら自分の世界に浸っている。私の声が聞こえてるのか聞こえてないのかさえも分からない
    そのままトレーニングルームに向かおうとして、ふと気付いた

    「あ、フジキセキさんにバレンタインのお返しについて聞いておけばよかった」

  • 7毎日アヤベさん21/09/28(火) 21:54:33
  • 8二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 21:55:54

    NTR「とてもいいと思う」

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 21:56:49

    アヤベさんの気怠さは万病に効くからな…

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 23:34:44

    あぁ…いい…。ありがとうございます。

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