ここだけダンジョンがある世界の掲示板 イベントスレ外伝

  • 1ノコギリ青年22/06/18(土) 12:49:22

    このスレは「ここだけダンジョンがある世界の掲示板」の番外編みたいなものです

    イベントとは名ばかりのSS投稿スレ

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    本スレ

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    あらすじ

    神機の暴走が間近であることを察したノコギリ、しかし偶然とは思えぬタイミングでとある依頼を発見する

    その依頼は「竜化現象」と呼ばれる災害現象の元凶である竜の討伐依頼だった

    しかもその竜は「神機」とも深く関係しているため、ノコギリは己の命を懸けてこの依頼へと挑む

    彼ら3人の最後の戦いが始まる

  • 2ノコギリ青年◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 12:55:44

    「なあ、先生」
    『なんだい?何か問題事でもあったのか?』
    「いや、ただもうすぐ俺たちが出会った日が近づいてるからさ、もしこの依頼から帰ってきたら」
    『ストップ、依頼後の話は全部終わってから話し合う、そういう約束だったろう?』
    「…うん、分かった」
    『…盛大に祝おう、私たちが初めてここに来た時のように』
    「!ああ、楽しみだ!そういやここに初めて来たときは……」
    【依頼地に行くまで三人で何回も交わした他愛ない会話、「あの時はこうだった」「あの依頼はどうだった」、だが今日だけはこの会話が重くのしかかる】
    【終わりが近いと誰もが理解しているから】

  • 3ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 12:57:47

    ここから登場人物が3人になります
    【】←情景描写等
    「」←青年
    『』←ノコギリ
    《》←精霊の台詞になります

  • 4ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 12:58:48

    【依頼地に向かう途中で】
    「神機侵喰竜とは、どんなモンスターなんだ?」
    『簡単に言えば「成れの果て」、竜化現象の宿主でありながら人にも竜にも、そして神にもなれなかった存在』
    『奴は神機による苦しみの中で増大した凶暴性と飢餓感に従い、村々を喰い滅ぼしている』
    『依頼では「最近現れた凶暴な竜がいくつもの村や町を襲っている」とのことだったが、依頼情報の詳細と師からの伝言で奴の存在が発覚した』
    《…でもとっくに死滅したとされている宿主がなぜ今になって現れたんでしょうか?》
    『神機(わたし)の存在だよ、奴は元々は神機とその使い手であることは説明したね?現在の奴は所謂「共喰い」を行うことによって自身の飢えを抑えると同時に、さらなる進化果たそうとしているんだ』
    「共喰い…そんなことさせるつもりはねぇよ、俺たちは絶対生きて帰る、全員で」
    『ああ、そうだね』

    『さて、今回の目的は大きく分けて二つある』
    『一つは竜化現象の根絶、これは神機侵喰竜の討伐によって完遂される』
    『もう一つは…神機の制御』
    『奴の体内にある神機の「核」を取り込み、制御コアを作成する』
    「事前打ち合わせと同じですね、ただ…」
    「コア作成時に神機が暴走する可能性が高い、そしてコアの作成自体に大きな負荷がかかって俺か先生のどっちかが命を落とすかもしれない」
    『コアは私の実体を使って作ろうと思う、神機は私の制御下を離れ、現在は完全に顕現している状態だ』
    『それに暴走の引き金は私であることを含めると、やはり命を懸けるのは私でいい』
    「何言ってんだよ!俺だって命を削るさ、元はと言えば全部この神機の問題だろ?それに、過剰適合の影響で俺の体は半分が神機みたいなもんだ、神機(じぶん)のことは自分でケリをつけるよ」
    《二人とも一人で抱えようとせずに協力しましょうよ、あと私にもできることがあるなら手伝わせてください、私たちは仲間なんですから》
    『…分かったよ、じゃあ制御は半々で担うことにしよう』
    『では、今回の作戦は……』
    【人、神機、精霊、種族は違えど彼らは強固な絆でつながっていた】
    【だからこそ、だからこそ自分以外の二人には「生きていてほしい」と思う】
    【そのために「自分の命」を使っても「後悔」なんてなかった】

  • 5ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:01:17

    【依頼地付近に到着した彼らが見たものは「喰い荒らされた」村の跡だった】
    【ほとんどの住居は焼け焦げていて、ところどころに異様な噛み痕が創られており、村人は全員が無惨なまでに殺害されていた】
    『……』
    「…喰うために殺したんじゃない、まるで遊び道具のように弄んでから殺してる、この中途半端な「食べ残し」が証拠だ」
    「ここに神機が無いと分かった上で…許せねぇ」
    《神機侵喰竜…私たちは貴方には絶対負けませんよ》
    【腕が欠けた玩具のように捨てられた遺体、バラバラにされた遺体、執拗に嬲られて死後も冒涜された遺体】
    【彼の竜が残していった「モノ」はあまりに凄惨だった】

  • 6ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:03:32

    【冒険者たちは村を見て回るが、やはり生存者はいなかった】
    【この惨状に青年は怒りに震えていた】
    「火葬しよう、不死鳥の炎は「聖なる火」とも言われているんだ」
    「これ以上誰かに傷つけられないように、せめてこの聖火で天へと逝けるよう祈ろう」
    『……ああ、どうか安らかに』
    【冒険者たちは一人一人を丁寧に火葬した、そして遺された遺灰は全て一か所に集めて埋葬した】
    【炎が揺らぐ中、青年の中の怒りはこれ以上ないほどに燃え盛っていた】
    【村人たちの前で彼は誓った「これ以上誰も殺させない」という覚悟を、「奴だけはこの手で必ず、殺してやる」という殺意を】

  • 7ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:04:27

    【とある師弟の回想】
    「依頼はどうだった、お前が考えていた「制御」に繋がったかい?」
    『師よ、あの現象は分かっていて調べていたのですか?』
    「…その通りと言ったら?」
    『貴方の仰っていることが、あの解析結果が嘘であると信じたい』
    「仮にも私は君の師だ、嘘はつかないさ」
    「その細胞はお前、いやお前を乗っ取っているものと同種だよ」
    『……!』

    「思えば極東でお前を見つけたときは驚いたよ、まさか一時期戦場を騒がせていた「荒神の武器」がもう一つあるとはね」
    『……話をはぐらかさないでくれ』
    『その武器の成れ果てがあの竜だと、神機の過剰侵喰があれだと!何故私たちに教えてくれなかったのか!教えてくれ『星見の魔術師』よ!』
    「……お前が意思を持っていたこと、そして彼があの竜と同じく「神の器」だったからだよ
    それに教えたところで君たちはどうせ「二人で生き残ろうとして」失敗する、私でさえ君たちのどちらかが死ぬ「運命」は変えられないよ」
    『……ハハハッ!』
    『ならば私は最初から彼に救われ続けていたということか、無理矢理に命にしがみついていたなんて何とも、惨めだ』

    「最後に師としてお前の覚悟を知りたい」
    「このまま戦い続けたら再びあの現象と似たような事案、いやそれ以上の災厄が再び訪れる」
    「お前は「生」を選ぶか、「死」を選ぶか教えてくれ」
    『─────私は』
    『私は「死」を選ぶ、彼らの未来を守るために、私自身の「生きた証」を守るために』
    「……そうか、なら私はお前の意思を尊重しよう」

  • 8ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:06:19

    【廃村を離れた冒険者は、喰い散らかされた痕を追い続ける】
    【そして、目的の地へと到達した】
    「───ようやく会えたな、神機侵喰竜」
    【彼らの面前に「災禍」が訪れる、人にも神にも竜にも成れなかった果ての残骸】
    【神機侵喰竜、その者は飢餓と殺戮に溺れた存在】
    【そして彼らの宿命の相手】
    「お前だけは誰にも譲らない、今ここで、必ず倒す!」
    【青年は神機に怒りを伝え、それに呼応して神機と精霊も構える】
    【黒き竜は紫焔を纏い、嘲嗤うかのように腕に創り出した火槍を冒険者たちに向ける】
    【最後の戦い、その決戦の火蓋が切られた】

  • 9ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:08:39

    【紫焔の熱が身体を襲う、生きる実感を奪い去っていく】
    【だが青年は目の前の宿敵に正面から立ち向かう】
    【火槍を弾き、炎を払い、前へと斬り進む】

    「ウオオオオッ!!」
    【吼える、己の命を削り戦う意思を固めるために】

    「グゥオオオオオッ!!!」
    【叫ぶ、己の生を誇示するために】

    「ガアアアアアッ!!!!」
    【声を出す、この怒りを忘れないために】

    【ただひたすらに戦っていた、「決して退いてはいけない」という強迫観念にも近い生存本能が身体を支配していた】
    【戦況は2頭の竜の喰い争い、炎と炎がぶつかり、剣と斧が竜の火槍と斬り合う】
    【神機竜は襲い来るもう一つの「神」に畏れと苛立ちを覚えた】

    「怯んだな!このまま、断ち切る!」
    【だが、竜同士の決着は突然終焉を迎えた】

  • 10ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:10:42

    【宙に浮く右腕、落ちていく冒険者】
    【不死鳥の翼が失われ、左手の太刀も力を失う】

    『青年くん!』
    《青年さん!》

    (右手が、斬ら、れた)

    【隻腕の冒険者は地面に叩きつけられ、神機は放り出される】
    【青年を庇おうとした機鎧も火槍に貫かれ起動不能にされてしまった】

    「精霊…!先、生ッ……!」

    (動け、動け、動け!俺が、俺が立ち上がらなければ!俺が!■ガ!おれ■■■)

    【自身の血に塗れた青年はゆらりと立ち上がり、不敵な笑みを浮かべる】
    【残った左腕で神機を持つと、彼の武器に宿る怪物の如く、血に濡れた赤黒き右腕が創造される】

    【神機の暴走が始まった】

  • 11ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:12:29

    「■■■?■■■■■■■!」

    【言語という形を失った獣のような声で目の前の竜に話しかける】
    【獣声が逆鱗に触れたのか、神機侵喰竜はこれまでにない程の猛威を纏い、「それ」に向かって突進した……が】

    「■■■■■■」

    【一瞬で両断される、両断された神機侵喰竜を見て「それ」はからからと笑っていた】
    【目の前に獲物がやって来たかのように歓喜の表情を浮かべ、真っ二つになった残骸に喰らいつく】

    「■■■!■■■■■■!」

    【もはや、「青年だったもの」は人の形を留めていなかった】
    【この世界に神機に宿る怪物、否「荒ぶる神」が顕現したのである】

  • 12ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:16:41

    【「絶望に負けてはならない」、そうギルドの職員に忠告されたのを思い出す】
    【しかし、避けようとしてきた最悪の状況に小さき精霊は絶望せざるを得なかった】

    《ここまで来たのに!このままじゃ竜ごと神機のコアを食べられる!》

    『大丈夫だよ、私がいるから』
    《え……?》

    『精霊とは少し早い別れになってしまったね、これからは青年くんをよろしく頼むよ』

    《あっ待ってください!ノコギリさん!》
    【神機に宿っていたもう一つの命は「死」へ向かう覚悟を決めていた】
    【必ず、二人を守るという固い決意とともに】

  • 13ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:18:59

    【神機(せいねん)の精神世界】
    「あれ、ここは?俺は神機侵喰竜と戦ってたはずじゃ」
    『ここは神機の心の中みたいなものだね、君の精神世界でもある』
    「先生?でいいのか?なんだよその姿、俺にそっくりじゃないか」
    『ここではこういう姿になれるんだよ、さて現在の状況について教えるね』
    「ああそうだ!勝ったか!?俺たち」
    『神機侵喰竜の討伐には成功したよ、神機コアの摘出ももう少しだ』
    「そっか!じゃあ早く戻らなきゃ!制御コアを作らないと!」

    『……残念ながら神機は暴走してしまったんだ、君の怒りに浸け込んで自ら外に飛び出した』
    「そんな…ゴメン、先生」
    『いや、いいんだよ、寧ろこれで制御しやすくなった』

  • 14ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:23:23

    『では早速制御に入ろう、私はこれから実体を操作して神機コアを取り込み、それを制御コアに変換する』
    「了解!俺は何をすればいい?」
    『君はここで「荒ぶる神」の意思と戦うんだ、「荒ぶる神」は何度も君を飲み込もうとしてくるだろう、でも大丈夫、君の「生きる意思」なら絶対に負けないはずさ』
    「……おう!任せとけ!」
    『うん、じゃあ始めようか』

    「あのさ、えっと」
    『?どうしたんだい、何かあるのか?』

    「……最後まで迷惑かけてごめん、あとこれまで俺の傍にいてくれてありがとう、先生(とうさん)」

    『……謝るな、親はいつだって子供を守るものさ』

    『さあ!湿っぽいのは一旦ここまで!「荒ぶる神」に派手にかましてやろうじゃないか!』
    「ああ!俺たちは、絶対に生きて帰る!お前になんて負けねぇよ!」

    【青年は駆け出していく、目の前に存在する暗黒の渦に】
    【だが決して闇に飲まれず、心が折れることもない、彼には「生きる意思」があるのだから】

  • 15ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:24:50

    【ついに神機侵喰竜のコアが暴かれる、「荒ぶる神」は再び歓喜の咆哮をあげる】
    【コアを右手で吸収しようとしたその時、神機より金色の光が放たれ「荒ぶる神」の前にコアを吸収する】
    【怒り狂った神はその光に手を伸ばそうとする】

    『もうお前の好きにはさせない、私の命に代えてもお前を永久に封じ込めよう』

    【金色の光は右腕全体に纏わりつき、その姿を変えていく】
    【「荒ぶる神」はその封印に抗おうと絶叫し、暴れるが決死の思いで飛びかかった精霊の機鎧にその動きを止められる】

    『終わりだ、私と共に消え去るがいい!』

    【青年の右腕にくすんだ金色の籠手が創造されると同時に暴走が収束する】

    【全ての「荒ぶる神」はここに討伐された】

  • 16ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:29:31

    「依頼完了!竜化現象も解決したし、神機の制御もできていいこと尽くしだな!」
    『討伐の瞬間までは誰も死ななかった、全員生存での依頼達成だね』
    《あとは早くギルドに戻りましょう、早くお祝いしないと!》

    『ああ、本当に君たちが死ななくてよかった』

    【青年の精神世界で存在していた「先生」は二人に語りかける、現実には存在しなくとも彼らにだけはその姿が見えていた】
    「けどやっぱりその姿は違和感があるなあ、ちょっと老けた感じもするし」
    『君も年齢とか気にするんだね…しょうがないじゃないか、実際凄く年上だったんだから』
    《若さで言えば私が一番です!生後半年くらいですよ!》
    「それもそうかぁ!ハハハハハ!」

    『籠手の調子はどうだい?本物の右腕と変わりないように創ったつもりだけど…』
    「ばっちりだよ!これからの冒険も問題ないと思う!」
    『それは良かった、じゃあこの先もどんどん活躍していってくれ』
    《個人的には壊さないかどうか心配ですよ…》

    『…もう時間みたいだ、さあ帰還しなさい、最後まで君たちの姿を見送れるように』


    「……やっぱり、さ、俺は…俺、先生と一緒に帰りたかったなぁ……!」
    『泣くな、私は死んだんじゃない、最後まで「生きた」んだ』
    『それに、私はいつまでもそこにいる』
    「…心臓?」

    『心さ、私が君から、君たちからもらった「命よりも大切なもの」だよ』
    『忘れないで、君と私はずっと心で繋がっている、だから泣くのは今日だけにするんだ』

    「……分かった、絶対に忘れない、忘れるわけがない」
    『良い子だ、では帰ろうか私たちの場所に』

  • 17ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:32:08

    【夜明けとともに「父の姿」は見えなくなった】
    【その日はいつも以上に太陽が眩しく、空も蒼く透き通っていた】





    「───生きるって苦しいな」
    《……はい》
    「覚悟はしてたけどさ、こんなにも苦しいなんて思ってなかったよ」
    「……でももう泣かないよ、弱音も吐かない、だけど」
    「だけど今日だけは、腹が空かないなぁ……」

    【「神機侵喰竜討伐依頼」完了、ギルドに依頼を受注した「3名」の冒険者が帰還した】

  • 18ノコギリ青年と竜鎧精霊◆uk6skpr2fM22/06/18(土) 13:41:23

    (※これにて青年くんたちの依頼は終了です!そしてノコギリ先生ありがとう……!一応補足として、彼の能力はすべて青年くんに受け継がれています)

    (※初めてSSを書きましたが、塩梅をどうすればいいか分からず削った部分もあったけど何とか書ききれてよかった!稚拙な文章かもしれませんが、皆さんがお楽しみいただけたら幸いです)

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