- 1二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:42:40
- 2二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:44:18
…綺麗だったなあの人
LAN直結により網膜投影されたレースを流し見ながら、ウマ娘スペシャルウィークは配膳されたバイオ人参ハンバーグを口に運んでいた。
(私も速く“カチクラ”を稼いで、いつかGIに出てみたい)
ウマ娘にとって最高の栄誉とされるGIレースは、ただ走るだけでも莫大な賞金が出る上にスポンサーが付く事が多い。勝てば大金持ちになれるのだ。
(勝てばまたオーガニック人参ハンバーグが食べられるかも……うへへぇ)
スペシャルウィークの脳裏には、先日のレースに勝利したご褒美として配給された天然素材100%使用のオーガニック人参ハンバーグの味が蘇っていた。
それは甘くて蕩けるような極上の味わいで、口の中に広がっていく上品な香りと絶妙な食感が何とも言えず美味しかった。
(今日も練習頑張ったら、またもらえるかなぁ?)
ウマ娘にとって勝利とは生きる糧であり、同時に最大の楽しみでもある。
故に、勝者であるウマ娘の生活水準は非常に高い。
特にGIレースに勝った者は例外なくセレブリティだ。 - 3二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:44:59
「邪魔だ!この田舎者!!」
「キャッ!?」
練習場に敷かれたバイオ芝の上で柔軟体操をしていたスペシャルウィークは、背後から突き飛ばされた。
「あ痛た……」
尻餅を付いた彼女は、何が起きたのか分からず呆然とする。
「ふんっ、鈍臭い奴め」
彼女を突き飛ばした張本人であろう女生徒が鼻で笑う。
「なんだよお前ら?また喧嘩か?」
「こいつがトロいのが悪いんだろ」
「そうだぜ、これくらい避けられなくてどうすんよ」
「つーかマジウケるんですけどw」
女生徒達の取り巻きだろうか?上位企業がスポンサーと成り得る彼女らは、その言動からも分かる通り世間的には勝ち組ウマ娘に分類された。
だが一方で、そんな勝ち組の余裕から来る傲慢さは他者を見下すことでしか保てない虚栄心となり、それが時に衝突を引き起こす。
今回もその一例であった。
「何だその目は?文句があるなら“カチクラ”でも賭けて勝負でもするか?」
彼女の発言により、空中に浮かんでいたドローンが音もなく降りてきた。
それを見た他のウマ娘たちも集まってくる。
これは単なる言い争いではない。
もしここで勝負して負けた場合、自身の“カチクラ”を支払う必要が出てくるからだ。
しかし、負ければどんな目に遭うか分からないという恐怖が、彼女たちを増長させていく。
「いいですよ、やってあげます!」
「勝負は芝2400mだ、逃げるんじゃねーぞ」
「望むところです!」
かくして、二人は並んでスタートラインに立つ。 - 4二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:45:39
「ドーモ。スペシャルウィークサン。レガシーハンターです」
「ドーモ。レガシーハンターサン。スペシャルウィークです」
レース前に行われる“アイサツ”は互いの所属企業やクランをアピールし合い、己の優位性を示す場でもあった。
二人がアイサツを交わしている間にも、周囲には続々と人が集まってきていた。
そして、ついにその時が訪れる。
ゲートインが完了し、レースが始まる。
既にドローンによって彼女達の野良レースは高速配信され、大勢の観客が視聴され賭けの対象となっていた。
「行けー!そこだー!」
「そのままぶっちぎれー!!」
「頑張れスペちゃん!!」
レース場にファンファーレが鳴り響き、スタートの合図を待つ二人を緊張が包む。
そして……。
ドンッ!! 一斉に駆け出した二人の背中を、一陣の風となったドローンが追いかけていった。
酸性雨でも育つバイオ芝は水捌けが良く、適度なクッション性を持つため非常に走りやすい。
それはつまり、全力を出しても故障しにくいということでもある。ゆえに、このレースにおけるウマ娘の脚質は逃げ・先行が多く、差し・追込は少ない。
理由は単純明快で、スタミナの消耗を抑えつつ最後の直線で加速できる前者の方が有利だからだ。
(今日も勝つ!勝ってまたオーガニック人参ハンバーグを食べるんだ)
前を走る相手の背を追いかけながら、スペシャルウィークは気合を入れ直した。
今はまだ差があるが、いずれ追いついて抜き去る。 - 5二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:46:08
「イヤーッ!!」
勝ち組ウマ娘であるレガシーハンターが勝利の雄叫びを上げた。
最終コーナーに差し掛かった所で一気にスパートをかけ、後続を引き離す。
それを見て、視聴している視聴者達も歓声を上げ始めた。
〘イケッー!カテー!! ジッサイコレデ勝テナイト思ッテルノカ!? ナニヲシテイルンダアノ娘ハ……
ソレヨリ俺タチノ金返セヤ……
ワカルゾ……コレハマズイッテ……
ドウシヨウ……オレモウ賭ケチャッタ……
マタオ小遣イカラ引キ抜カレチャウ……〙
悲鳴のようなコメントが流れていく中、レガシーハンターはゴール板を駆け抜けた。
(まだ……まだだ……もっと……もっと……速くっ!!)
後方から迫るスペシャルウィークの存在を感じ取った彼女は振り返り、ニヤリと笑った。
(負けウマ娘は大人しく道を開けてろよ。この田舎者めっ!)
更に距離を離そうと速度を上げる。
しかし、それでも彼女はスペシャルウィークを突き放せなかった。
(くそっ!何でコイツは離れないんだ!?)
「イヤーッ!!!!」
コーナーを差し切り、最後の直線に入った時だった。
背後からスペシャルウィークの声が聞こえたと思った瞬間、レガシーハンターの視界からその姿が消えた。
いや、正確には吹き飛ばされたのだ。
まるで砲弾のように放たれたスペシャルウィークは、そのままレガシーハンターを追い抜くと、今度は彼女の真横に並んだ。
そこから先は、もはや勝負ではなかった。
必死に逃げるレガシーハンターと、それを追い詰めるスペシャルウィーク。
その差は瞬く間に縮まり、そして遂に彼女の横に並ぶ。
レガシーハンターの顔には恐怖が張り付いていた。 - 6二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:46:54
「イヤーッ!アバーッ!?イヤーーッ!!アバーーッ!!」
スペシャルウィークはレガシーハンターを追い抜き、そしてゴールラインを通過した。
同時に、彼女の全身に電流が流れたような衝撃が走る。
その正体は、ウマ娘としての本能だった。
勝者とは即ち、己より弱い存在を従えることを許された存在である。
それはレースにおいても同じこと。
故に、敗者は己が弱者であることを自覚せねばならない。
「勝者スペシャルウィークー!!!!」
スペシャルウィークは戸惑いながらもそう口にすると、周囲の空気が一変したことに気付いた。
「「「うおおおぉぉぉーーーー!!!」」」
レース場を揺るがすほどの大歓声が上がった。
それを聞いたスペシャルウィークは思わず耳を伏せて身を縮めたが、すぐに歓声の正体を理解して笑顔を浮かべると、右手を高々と掲げてみせたのであった。
「何でだよ……」
レガシーハンターは呆然と呟いた。
負けたショックもあったが、それ以上に彼女にとって想定外の出来事が起きたからだ。
賭けレースで負けた場合、“カチクラ”の譲渡とウマ娘達の所属企業やクラン、クランマスターに対して多額の掛け金の支払い義務が発生する。
これはウマ娘達が所属企業やクランに保護されているという前提があってこそ成立するシステムであり、野良レースにおいて負けた場合、ウマ娘は所属企業やクランに“ムラハチ”れてしまう可能性があった。
「どうしてお前なんかが勝てるんだよ!おかしいだろ!」
「シハライデスネー」
無慈悲な支払い請求書を突きつけられながら、レガシーハンターは叫んだ。
勝利者には栄光が与えられるが、敗北者には何も与えられない。それがレースの世界なのだ。
本日の勝利者スペシャルウィークの夕飯がオーガニック人参ハンバーグだったことは言うまでもない。 - 7二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 17:49:09
AIノベリストで遊んでたら生まれたサイバーパンクウマムスメssデス
- 8二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 18:26:42
おおゴウランガ!!
1のヤバイ級ワザマエである!! - 9二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 19:18:05
もしかしてレジェンドアメリカヤクザがサンデーサイレンスだったりする?
- 10二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 20:03:55
ウマムスメリアリティショック!
- 11二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 20:15:10
ショッギョ・ムッジョなアトモスフィアを感じるレガシーハンター=サンのケジメ案件!
- 12二次元好きの匿名さん22/06/18(土) 21:15:33
ニンジャのウマムスメ!