- 1二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 21:53:42
トレーナー室を訪れたフクキタル。
目に入ったのは新聞紙を敷くトレーナー。
フクキタルに気づいたトレーナーが口を開く。
「フクキタル とりあえずコレだけ敷いといたんだけど……」
「ありがとうございます! 垂れると大変ですからね」
それに返事をしながら、フクキタルも準備を手伝い始める。
今日、フクキタルはトレーナーのために書画を書く。
先日トレーナーが何も無い壁をどうしようか考えていたからだ。
フクキタルが書道の段位を持っていると知った時、トレーナーは驚いていた。
なんとなくあまり人には言っていなかったので、学園内でそれを知っているのはフクキタルとトレーナーだけである。
大切な人と秘密を共有している感覚、それがフクキタルには嬉しかった。
本人も気付いていないが、フクキタルの尻尾はその時からずっと微妙に揺れ続けている。
「コレで良いの?」
「ハイ、大丈夫です」
下敷きの上に半紙と文鎮、たっぷりと墨を馴染ませた筆。
準備が終わり、トレーナー室には墨特有の匂いが漂っていた。
「でわでわ……」
早速フクキタルは筆を取り、文字を書き始めた。
背中に感じるトレーナーの視線に若干緊張しつつも、フクキタルは半紙の上へ慎重に筆を滑らせる。
フクキタルは真剣な目つきを崩さずに書き続けた。
部屋に静寂が満ち、どんどん作品が完成していく。
「出来ました!」
そんな快活な声とともにフクキタルが筆を置いた。
「凄い……」
トレーナーが呟く。
その姿を満足気に見ながら、フクキタルは立ち上がり両手を広げた。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 21:54:06
「トレーナーさん!」
「…………?」
あまりにも唐突な催促に、トレーナーは不思議そうな顔をした。
実は当初から計画していたのだが、フクキタルは白々しく、さも当然かのように話し続ける。
「んも〜ハグですよ、ハグ タイキさんに教わったんです、書いてあげたんだからお願いします!」
軽い感じとタイキシャトルからの影響を装ってはいるが、フクキタルの内心はバックバクだった。
「……しょうがないなあ」
少しの思考の後、ゆっくりとトレーナーが近づいてくる。
お互いの顔が見えなくなるまで近づいた頃、トレーナーはフクキタルを抱きしめた。
「‼︎‼︎」
瞬間、フクキタルの尻尾が真っ直ぐに伸びる。
フクキタルの背中に回されたトレーナーの腕。
フクキタルも同じように腕を回し、そして力を込めた。
暖かく、温かい。
フクキタルはこの時間が永遠に続くことを願った。
しかし、そうはいかないのだ。
2人両方、この後も予定がある。
1分後、フクキタルは惜しみつつもトレーナーの背に回した腕を離した。
腕が自分の元へと戻ってくる。
その時、フクキタルはあることに気がついた。
自分の手に墨汁の跡がついていたのだ。
「…………」
悪い予感。トレーナーに気づかれないように彼の背中を覗く。
そこにはクッキリと黒い手跡が付いていた。
「………………アッ」
フクキタルはこの時間が永遠に続くことを願った。
しかし、そうはいかなかった。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 22:03:31
- 4二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 22:31:27
ナイス、フクキタルSS!
- 5二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 22:38:12
この後トレーナーからチョップが飛んできそう
- 6二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 22:39:55
ええやん
- 7二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 23:20:44
フクキタルはギャグオチよ
- 8二次元好きの匿名さん21/09/29(水) 23:45:32
ちなみに墨汁は歯磨き粉を使うと落ちやすいぞ