また来たわね

  • 1二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:36:11

    この夢をあなたが見る意味、わかってるかしら?
    つまり睡眠の質が悪いということよ。
    それが何に起因していることか……もちろんわかっているわよね?
    そう、布団のふわふわ具合が足りていないからよ。
    そのために何が必要か、これは言うまでもないわよね。

    ……ええ、そのとおり。
    布団乾燥機よ。
    あれだけオススメした上、各社カタログをトレーナー室に置いておいてあげたのになんで買ってないのかしら。
    私の言うことが信用できないの?

    ……バカみたい。夢でも私に会えるのが嬉しいからだなんて。
    いつでも会えるでしょ。
    はぁ……仕方がないわね。明日、私の布団乾燥機を持ってあなたの家に行くから。
    今晩は我慢してこの夢の中で眠ったら?

    ……膝枕なんて、しないわよ。

  • 2二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:38:26

    夢でもし会えたら 素敵なことね
    あなたに会えるまで 眠り続けたい

  • 3二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:38:33

    ①布団の質が低下したことでトレーナーの無意識下に眠る本能がふわふわに関連するアヤベさんの形をとって警鐘を鳴らしている

    ②トレーナーの布団の質が低下したことを察知したアヤベさんがトレーナーの夢にチャネリングして警鐘を鳴らしている

  • 4二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:41:18

    ゼルダ姫みてぇな能力をふわふわ布教のために使うアヤベさんは何なんだ

  • 5二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:42:03

    >>いつでも会えるでしょ。

    ここ好き。語彙力なくなる

  • 6二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:42:32

    無意識でアヤベさんが出てくる時点でアヤトレの脳内は9割アヤベさんでいっぱいですね…

  • 7二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:44:22

    これアヤベさん事故か何かで亡くなってたりしないよね…?
    いつでも(墓前や仏壇で)会えるでしょという意味ではないよね…?

  • 8二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:46:31

    >>7

    亡霊が布団乾燥機持っては来れない筈なので生きとるやろ。



    なんで夢に干渉してんだよ。自分のトレーナーがふわふわ不足になってたら布団乾燥機勧めるやろ。そうだな。

  • 9二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:47:32

    >>8

    夢に干渉できる理由になってないんですけど?

  • 10二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:48:54

    >>9

    夢食いで有名なバクはウマと同じ奇蹄目

    理由はこれでいいか?

  • 11二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 21:52:29

    >>10

    思ってたのと違う方向から割とまともな根拠が来て笑う

  • 12二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 22:01:27

    まともか?

  • 13二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 22:40:21

    続きです

    「またこの夢か……」
    アヤベの膝の上で眠る……夢の中で眠るという変わった、落ち着かないような、でも妙に疲れが取れているような。
    どこかふわふわとした気持ちになる記憶の残滓を感じながら俺は目を覚ました。
    ちなみにこの夢を見るのはこれで3度目である。

    「やっぱりいい加減買ったほうが良いのか?」
    トレーナーとして学園に勤務し始めた時に買った安売りの布団からもそりと抜け出す。それは妙にごわついていて、綿が偏っていた。
    これを買った時はトレーナーとしてやっていけるのか不安で、まともな寝具を揃えるのは後にしようと思ったのだ。
    それがまさか、アドマイヤベガという優秀で強いウマ娘と契約できて。新人トレーナーとしては異例とも言えるほどの成績を残せるとは思っていなかった。

    「布団乾燥機、か」
    俺はベッドの横にあるテーブルを見た。そこにはいくつか薄い冊子が置いてある。
    最近流行りの睡眠の質を上げるという乳酸菌飲料の話をなんとなくアヤベにしたところ、「そんなものよりもいいものがあるわ」と言い張り。
    その翌日、トレーナー室に持ち込まれた布団乾燥機のカタログだった。

    「これを買うよりもまず布団を新調したほうが良い気がするな」
    そう考えた次の日から彼女が夢に現れるようになった。せっかく勧めてもらったアドバイスを聞かずに別の手段を取ろうとした罪悪感あのような形になったのかもしれない。

    「まあ、あの夢も悪くはないけれど」
    夢の中のアヤベの膝は思ったよりも硬い。日頃のトレーニングの賜物だろう。輝かしい頂点を得た、G1ウマ娘にふさわしい太ももだった。
    ……こんなことを彼女に告げればきっと無視されるレベルで怒るのだろうけれど。

    「布団と布団乾燥機。同時に2つ買うのだって悪くないよな」
    それくらいの貯金はある。もしかするとアヤベは布団乾燥機だけでなく布団に対しても一家言があるかもしれない。

    そんな他愛も無い話を彼女に持ちかけることを楽しみにしながら、俺は寝室のドアを開けた。

  • 14二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 23:31:13

    続きです

    「なあ、アヤベ」
    トレーニングが終わり、その後のミーティングも終わって。
    私が部屋を出ようとしたところでトレーナーが声を掛けてくる。

    「なにかしら?」
    なにか予感というか、期待があったなんてことはない。そんなことを言えば嘘になるだろう。その時確かに私はなにかの予感を感じ取っていたのだ。
    まるで流星が落ちるその瞬間を、前もって気づけるように。

    「アヤベが勧めてくれた布団乾燥機を買おうと思うんだけれど。ついでに布団も新しくしようと思うんだ。アヤベは布団に詳しくないか?」
    思わず尻尾が動く。ウマ耳が立つ。
    布団乾燥機だけでは片手落ちなことくらいはよくわかっていた。寝具の質が良くなければ、どれだけ布団乾燥機が優れていたって効果は限られる。

    「アヤベ?」
    顎に手を当てて考え込んでしまったのを不思議に思われたのか、トレーナーが話しかけてくる。
    「ちょっと待って。考えを整理する必要があるから」
    「わ、わかった」
    布団というのは単に値段の高いものを選べばいいというものじゃない。
    体格や体質によってマッチするものは違う。私はふわふわな布団が好きだけれど、ただふわふわを求めているわけじゃない。そこには適切な重さや硬さだって存在している。

    悩んだ末に気づいた。私はトレーナーの体についてそれほど詳しいわけじゃない。
    なら、ベストよりもベターを。最善よりも改善を求めるのが正しいアプローチだろう。きっと。

    「……ねえ、この後。あなたの家に行ってもいいかしら。今の布団を見せてほしいのだけれど」
    「え? ……ま、まあ、いいけど」
    「そう。一度寮に帰ってシャワーを浴びてから行くわね」
    「わかった、準備しておくよ」

    ……自分がずいぶんと大胆な提案をしたと気づいたのは、寮で汗を流している最中のことだった。

  • 15二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 23:37:45

    続きです

    服は少し迷った末、制服を選んだ。
    下着も飾り気の無いものにした。そういう意図があるわけじゃないのだから。
    仮に彼がそういう軽蔑的な行為を働いてきたとしても、私の力に叶うはずがない。

    一つ息を吸い込んでから、私はチャイムを押した。
    「はい。アヤベか?」
    すぐドアが開いてトレーナーが顔を見せる。私が身だしなみを整えた一方で彼は2時間ほど前に出会ったときのままの格好だった。

    「すまん、ちょっと部屋を片付けているから、リビングで待っててくれ」
    そしてリビングに案内してすぐ彼は隣の部屋に引っ込んだ。どうやら掃除をしているらしい。
    見られたらまずいものでもあるのだろうか。興味がないといえば嘘になる。でもあえて暴こうという気にもならなかった。

    「……あまり良くないわね」
    リビングのソファに腰掛けて、隣においてあるクッションを手にして私はつぶやく。どちらも硬すぎる。わたしの好みではない。
    これがトレーナーの好みなのだろうか。そうなると少し考えを修正する必要がある。

    「そうか、布団だけそっちに持っていけばいいのか」
    そんな声が寝室の方から聞こえた。
    「いえ、寝具全体で確認する必要があるから。準備ができたら言って」
    彼の言葉に対して即座に答えを返す。何でそんなことを言ったのか、自分でもわからないままに。
    布団だけ確認できたら十分だというのに。

    「まあ、こんなもんか。OKだよ」
    その声を聞いて私は硬いソファから立ち上がり。自分でもよくわからないけれど、気合を入れるように尻尾を一振りして。
    彼の寝室へ乗り込んでいった。

  • 16二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 23:50:21

    !掛かり

  • 17二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 23:53:21

    続きです

    寝室にアヤベを招き入れた途端、彼女はフリーズしたように動かなくなった。
    もしかして年頃の少女に見せたらまずいものが置いてあったか?と慌てて周囲を見回すが、パッと見そんな物は見当たらない。

    「……っ」
    なぜか呼吸が荒く、わずかに頬を紅潮させ。目をうるませている彼女に目を奪われる。
    素直に美しいと思った。引き込まれる。その誘惑に抵抗するように俺は恐る恐る、声をかける。

    「……アヤベ?」
    「なんでもないわ。なんでも」
    アヤベは首を振って深呼吸をしようとして、なぜか途中でそれを止めて。妙に忙しない動きを見せる。

    「大丈夫か?」
    「……問題ないわ。何も」
    明らかに問題がありそうだったが、俺は何も言わなかった。最近は昔に比べて信頼されるようになった実感がある。
    もう彼女は契約してすぐの頃のような無茶をしない。
    なら彼女の言動を信頼するのもトレーナーとしての役割だと思っていた。

    「これがその布団ね」
    アヤベはズカズカと俺のベッドに近寄り、布団を持ち上げる。それを顔の前に掲げて、しばし硬直した後。
    「最低ね」
    そう吐き捨てた。

    ……なぜか顔を、その布団に顔をうずめながら。

  • 18二次元好きの匿名さん22/06/26(日) 23:58:17

    ヒューッ!なんか始まってるぜー!

  • 19二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:05:40

    これは良SSの予感!
    明日に備えて寝ている場合じゃねぇ!(SS略)

  • 20二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:11:49

    続きです

    危なかった。危なかった。危なかった。
    そんな言葉を頭の中で繰り返しながら、私は布団を手放して。無造作にベッドに放り投げた。

    なんで危ない。じゃなくて危なかった。なのか。
    後になって思ったけれど、あれはきっと過去形にすることでなんとか乗り切ろうとする自分の意志の現れだったのだと思う。
    ……何を言っているのか自分でもよくわからないけれど。

    ついでに枕も手にする。こっちのほうが明らかに「濃い」。それは本当に危険物だったからすぐ手放した。
    頭がくらくらする。ここは私にとっては最低の場所だ。
    そもそもこの布団の存在が最低過ぎて目も当てられない。硬すぎる。綿の質も悪い。その上汚い、と思う。
    見た目はそんなに汚れていないけれど、きっとずっと洗っていないに違いない。
    だからこんなに濃い。
    私を惑わせるほど、最低なくらいに。

    「もう、いいわ」
    私はなんとか足を動かして。足音を鳴らしながらトレーナーさんを置き去りに部屋を出た。
    その後をトレーナーさんが戸惑いながら追ってくるのがわかった。



    リビングで彼にコーヒーを入れてもらって、ようやく落ち着くことができたた。
    「どうだった、アヤベ?」
    彼が妙に不安そうな瞳で私を見つめてくる。
    なんなのかしら、その視線は。自分の奥底に眠っていた嗜虐心をくすぐられている気がした。
    「全然ダメね。あの布団は最低レベル。基礎がなってないわ。布団乾燥機を使うに値しないわね」
    「基礎……」
    布団に基礎なんてあるのか。呆然とした様子でトレーナーさんがつぶやいた。

  • 21二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:37:15

    続きです

    「今週末。暇な時間はあるかしら?」
    布団に対して今まで聞いたことのないような非難をたっぷりと言い放った後で、アヤベが控えめに聞いてくる。
    「あ、ああ。あるけど。土曜の午後とか」
    「そう。じゃあ一緒に布団を選びにいきましょう」
    彼女の提案に驚いた。今まで俺からアヤベに声をかけることがあっても、アヤベの方から俺に声をかけることはほぼなかったのだ。

    「私のトレーナーがあの布団で寝ていることは許せないわ。冒涜に近い。できるだけ早く捨ててほしい」
    「そこまでか……」
    なぜか拳を握るアヤベに呆気にとられる。
    自分の大げさな態度に気づいたのか、彼女は慌ててその拳を解いた。

    「じゃあ、土曜の午後。細かい時間とか集合場所はまた後で」
    コーヒーを飲みきったことを確認したアヤベは言葉少なに俺の家を出ていった。



    そして来る週末。俺たちは結局4店舗も家具屋を回ることになった。
    アヤベがなかなか納得してくれなかったのだ。
    展示のベッドの上でおすすめされる布団に交互入るたびに、なぜか彼女の顔が赤くなっていくのに見とれてしまったことは、胸にしまっておくことにする。

    暗い空の下、前のものよりも幾分か軽い布団の入った大きなナイロンケースを交互で持ちながら、学園に帰る。
    残念なことにアヤベの好きな星はあまり見えない。

    「そういえば、布団乾燥機ってまだいるかな?」
    星は見えないけれど。その代わりに。

    「いるに決まってるでしょ」
    彼女は瞬く星のような、かすかな笑みを見せてくれた。

  • 22二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:39:15

    おしまいです。

    最後まで読んでくださりありがとうございました。
    もともと1レスのみの予定だったのですが、思ったより反応が良かったのと続きを思いついたので即興でSS化しました。

  • 23二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:42:45

    あー、枕展開とか、夢のことを語り合う展開、実は妹説とかを入れるの忘れてた。
    でもまあ即興なので、自分にとってはここらへんが限界……。

  • 24二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:43:36

    アプリトレの出力がうますぎる
    やはり天才か・・・

  • 25二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 00:50:32

    良いもん見れたし寝るか

  • 26二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 01:02:25

    このSS読んですぐ単発でガチャ引いたらアヤベさんが来た
    ありがとうございました

  • 27二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 12:42:50

    めっちゃ良かったわ

  • 28二次元好きの匿名さん22/06/27(月) 23:11:12

    お疲れ様でした

  • 29二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 00:41:35

    この短時間でこれほどのSSを…スレ主…やはり天才か…

  • 30二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 11:55:11

    とてもいい

  • 31二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 23:01:21

    不条理ギャグ系かと思ったら良質なSSが続いていてびっくりした

オススメ

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