【百合SS】吸血鬼ライスちゃん

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:03:57

    【R-15・流血注意】


    「お姉さま……お姉さま……」


    トマトにフォークを突き立てるように、首にぷつりと犬歯が刺さる。

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:04:42

    見上げた三日月の空は薄暗く、施錠されたトレーナー室はさらに暗い。賑やかな生活音は遥か遠く、お互いの吐息が静かな部屋に響く。窓際に押し付けられてへたり込んだ私の脚の間に割りこみ、小さな手で頸を抱え込んで生き血を吸う。ライスは吸血鬼だ。

    「お姉さま……もう少しだけ……」

    いったん口を離すと、心臓の鼓動に合わせて2つの傷穴から血液が滲み出る。そこへ柔らかな唇を当て、丁寧に吸い出す。私は少し引きつった声をあげてしまう。けれどそんなものなど聞こえなかったかの様にぺろりと口周りを舐め上げると、今度は傷穴をこじ開けるように舌先を動かす。

    痛い。痛い。自分の血の匂いと痛みで呻き、顔を歪める。
    つぅ…と傷と舌先で赤い糸を作って伸ばし、切れる。血液混じりの唾液は鎖骨へ垂れて、ライスはそれを愛おしそうに啜る。じゅるじゅると音を立てながら。

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:05:24

    「お姉さま………見て」

    暖かい吐息がかかるほど近づき、恍惚とした笑顔のまま眼前で口を開ける。ライスの口内粘膜は私の血で染まっていた。血溜まりを舌で転がして喉を鳴らして飲み込む。それを見せつけてどうしようというのだろう。いや……もう答えは知っている。

    「お姉さま……お口開けて……」

    口内を蹂躙されていく。血の味。私の血の味。鈍く動く私の舌。私より熱いライスの舌。さっきよりも赤色が薄くなった唾液がぽたぼたと下へ落ちた。背中に回した腕で肺が潰れそうな程きつく抱きしめ、頭に回した手は乱暴に髪の毛をぐしゃぐしゃにする。抵抗ができない。呼吸ができない。舌と唾液が絡まる水音しか聞こえない。苦しくてだんだんと意識がかすんでいく。

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:06:05

    なにもわからなくなったまま壁伝いにずり落ちて、床の冷たさを頬で感じていると、ライスは消毒液を染み込ませた布で私の口と首の血液を拭っていた。傷口に滲みて痛い。そもそも窓際に身体を無理矢理押し付けられてから今までずっと痛くなかったところが無い。まだ血の味がする唇を噛んで耐える。一通り消毒が終わるとすっと立ち上がり、無言のままトレーナー室を出て行った。

    身体がだるい。それでも這いずりながら椅子に手をかけてゆっくりと身体を起こす。どれほどの血液を失っても、寮に帰り、明日またここへ戻って来なければならない。

    ──なぜなら

    「またライス吸っちゃった……うっ……ぐすっ……うわぁぁああん!ごめんなさい……ごめんなさい……!」

    「大丈夫だよライス。貴女が思うより私はずっと丈夫だもの。だから泣かないで」

    ──彼女には昨日の夜の記憶が無いからだ

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:06:41

    午後の柔らかな日差しが降り注ぐトレーナー室。私は最近しょっちゅう血を吸われている。新しい首の絆創膏に気がついた彼女の慟哭にも慣れてしまった。ああなるのは決まって夜だけで、彼女は覚えていない様子だ。記憶に無いなら責める事は無いし、謝らなくてもいいとずっと言い続けているのだけど。

    「ふぇ……だってライス、もう吸わないって約束してたのに。またお姉さまを痛くさせて……不幸にして。ライス……やっぱり悪い子だ……」

    「そうだね。ライスは悪い子だね」

    「うう……」

    「でもこんな言葉があるんだ。"いい女の子は天国へ行ける。悪い女の子はどこへでも行ける"」

    「どこへでも……?」

    「そう。そしてここに、ライスを泣かせるトレセン1の悪女がいる」

    「ふぇえ?」

    「だから2人ならどこへでもいけるってこと。ねえ、どこに行きたい?海?山?あの遊園地?ううん、このまま吸血されたら貴女に羽が生えて……一緒に夜空を飛べるかも!」

    「ひぇ……お空?!」

    「楽しそうでしょ!つまりさ、悪い子になってもいいってポジティブに考えちゃおうよ。貴女がどうなったって私が絶対に受け止めてあげるから!」

    「……うん」

    「は〜い、しょんぼりタイムはここまで!午後のトレーニング始めようか!」

    「うん!ありがとうお姉さま。ライス頑張るね!」

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:07:22

    その日は何事もなく終わり、寮に帰って床に就く。
    首の傷跡をさすりながら、私は考える。なぜライスがああなったのかを。

    ウマ娘は謎が多い。ウマソウルがどうこうはトレーナー養成時代に習った。けれどウマ娘が吸血鬼化するなんて聞いた事もないし、論文だって見当たらない。彼女自身何故こうなったかは知らない。つまり今はなにもわからない。

    もしかしたら、ライスは私に劣情を抱いているのではないか。それがこじれた形で吸血鬼ライスとして顕現したのではないか。そうでなくてはキスをする意味が無い。おそらく図書館で借りられる本の中で知り得た未熟な性知識を持って、衝動を私にぶつけているのではないだろうか?

    ……なんて、それならまだ良い。

    もし本当にライスが吸血鬼になってしまってたいたら?このまま血液の摂取量が増えていったら?陽のあたる場所には2度と行けず、夜の住民になるのだろうか。そうなればもうレースには出られない。トレセンにも居られない。迫害されて、世界のどこにも居場所が無くなってしまうかもしれない。そのとき2人の関係はどうなってしまうのだろう。

    「でも、受け止めるって言ったしな……」

    瞼が重くなる。ポジティブに考えろと彼女に言った。だから良い。世界を敵に回した先の無い逃避行だって、2人ならどこへでも行けるはずだ。

    (おわり)

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:07:42
  • 8二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:09:19

    すこ

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:12:00

    ありがとう…ありがとう…!

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 21:25:28

    いい…

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 23:03:00

    最の高ですわ!支援上げですわ!

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/30(木) 23:21:06

    ありがとう…ありがとう…

  • 13二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 06:34:30

    ほしゅですわ

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