- 1二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:13:23
- 2二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:15:52
- 3二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:17:12
- 4二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:22:30
- 5二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:22:43
…幻滅したわけではなかった。
ただ悔しかった。自分がファンだと自称していながら、彼女の側面を知らなかったことが。
そんな自分が声をかけていいのだろうか…
そう思っていると、細江さんの方からこちらに歩み寄ってきた。
「どうかしましたか?先ほどからこちらを見てますけど…」
「あっ…えっと」
頭が真っ白になりかけた。
けれど、そこで思い直す。
…話しかけられたからには腹を括るしかない。
「あのっ、ファンです!これからもいい解説をお願いします!」
「…ありがとうございます」
自分はそのまま逃げるようにその場を立ち去った。
「…ふふ」
細江純子は、ささやかな幸せを感じていた。
正面から誉められたわけではなくても、静かに見守ってくれているファンがいる。
そのことは確かに少し心の支えになったのだった。
- 6二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:25:03
- 7二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:25:39
- 8222/06/28(火) 03:26:35
- 9二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:27:53
アドマイヤベガは、1人布団で思い悩んでいた。
「…」
呆然と天井を見上げる。
その脳裏には、先ほど見た景色が焼き付いていた。
『…好きです、付き合ってください!』
『…!喜んで…!』
…意中の人に告白するトレーナー。
わかっている。最初から自分はそういう関係ではなかった。
教え子である以上、そういう関係になるはずがなかった。
…わかってはいたが、夢を見ていた。
「…トレーナー」
もっとトレーナーとしたいことがあった。
これからもできないわけではない。だが自分はどんな顔をしてこれから一緒にいればいいのだろう。
「…あ」
涙が溢れた。
そうか、今やっと気がついた。
自分は…
「トレーナー…大好き…だった…」
今更誰にもいえない気持ちは、夜に溶けていった。
- 10二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:28:09
満足してくれたならよかった
- 11二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:29:35
- 12二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:30:24
しょっぱな細江純子は笑った
- 13二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:30:33
- 14二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:31:17
- 15二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:31:29
- 16二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:31:50
- 17二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:40:09
- 18二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:40:25
- 19二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:48:29
その日はシリウスシンボリにとって、特に特別でもなんでもない日だった。
ただ木の上で1人こっそりと昼寝をする。
…あたたかな日差し。道を歩くウマ娘たちの声。
そんな中で、隠れるだけのはずだったシリウスはいつの間にか寝てしまっていた。
「…いたっ!?」
「ひやぁっ!?なんか落ちてきましたわ!?」
起こされたのは少し後のこと。
木を思いっきり揺らしたウマ娘…カワカミプリンセスに地面に落とされた時だった。
「す、すみませんわ…カブトムシを捕まえたくて…」
「…こんなところにカブトムシはいないぞ」
起きてしまったものは仕方ないので、どこにいくでもなく歩き回る。
そのうちに取り巻きが集まってくるが、特に特別なこともせず一緒にただ歩く。
「…なんもねえなぁ」
そう、これはなんでもない1日。
きっと貴重で、でも実際はほんのすこしつまらない、なんでもない1日の話。
これから幸せな日も、不幸な日もあるかもしれない。
けどそんな刺激的な日もあれば、こういう日もある、のだが…
「…」
体験する身としては、暇なのだった。
- 20二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:49:34
- 21二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:49:58
こういう瞬発力というかさっと形に出来る力のあるひと尊敬するわ
- 22二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:50:27
- 23二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:51:18
- 24二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:52:14
- 25二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:55:12
- 26二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 03:59:39
「…おい、貴様!まだ支度が終わらないのか!」
そう言って、元トレーナーのところに駆け込むエアグルーヴ。
「もうすぐ入場の時間だろう!こんな時まで、全く…!」
『ご、ごめん』
「謝ってほしいわけでは…もういい、手伝うから早く来い!」
元トレーナーの着替えなどに時間がかかりつつも、最終的に入場の時間には間に合ったのだった。
「…それでは指輪の交換です…」
『は、はい…あっ』
うっかり指輪を取り落とす元トレーナー。しかしエアグルーヴが落ちる前にキャッチした。
「…まったく」
改めて指輪を交換し、近いの口づけをする。
甘い時間の中、彼女は考えていた。
こんなミスの多いトレーナーだが、自分はパートナーに選んだ。
だって間違いなく、自分は彼を愛していた。彼も自分を愛していた。
ミスの多さは関係なかった。自分の夢を一緒に駆けてくれたそのトレーナーより、愛せる人などいるはずがなかった。
口づけが終わり、結婚式も終わろうという時。
披露宴へのお色直しをしているエアグルーヴのところに…旦那がノックをしてきた。
「…なんだ?また服のチャックが…」
「さっきはすまん!あんな大事な時に指輪を落として…!」
「…!ああ、いいんだ…」
こんなふうにしっかり謝るところ。
そこも自分が好きなトレーナーの一面だった。
- 27二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:03:48
- 28二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:11:34
キタちゃんで大丈夫です
- 29二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:14:55
「_先頭はキタサンブラック!さらに加速する!」
観客席で呆然と眺めていた。
「_一着でゴールイン!G1六勝目!!!」
「おめでとう、キタちゃん!」
「あ、ダイヤちゃん!見ててくれたんだね、ありがとう!」
…見ないわけがない。小さい頃から一緒の、ライバルだから。
…ライバル。そう、ライバルだ。
「これからも、頑張ってね!私も頑張るから!」
「うん!一緒に頑張ろうね!」
まだ、一緒に走れる。そう思いたかった。
「_キタサンブラック!G1七勝目ーっ!!!大記録です!!!」
…現実はそう上手くはいかない。
自分は全く勝てなくなってしまったのに、彼女はいくつもの輝かしい実績を積み上げている。
…自分の中にある小さな影に気づいた。けれどそれは見ないふりをする。
「キタちゃん、すごいよ!おめでとう!」
「ありがとう、ありがとう…!あたし、やったよ…!」
涙を流し喜ぶ彼女。
…嬉しさの涙なんて、自分はいつから流してないだろう。
「これからも”頑張って”ね!」
「うん、ありがとう!頑張るよ!」
”頑張ろう”なんて、もう言えない。
- 30二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:21:17
- 31二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:27:26
- 32二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:30:31
タマちゃんは引退する。
私は止めない、それは絶対そうする。
彼女の意思を無視して、何がトレーナーだ。
「コミちゃん、いままでありがとなぁ。助かったわ」
「ううん、こっちこそありがとう。一緒に夢を見れたよ」
「ははっ、夢じゃなくなったやろ?」
「…うん!」
彼女は去っていく。
私は止めない。私は彼女のトレーナーだから。
(…ああ)
嘘だ。
ここまでの気持ちは嘘でしかない。
もっとタマちゃんと夢を掴みたい。あの背中に声をかけたい。
でも彼女の幸せを心から願っている自分もいる。なら彼女の決定を邪魔する道理はない。
「…寂しいよ、タマちゃん」
その声はあまりに小さくて、トレーナー室のドアは閉まって。
きっと誰にも聞こえなかった。
- 33二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:30:53
(どうでもいいんだがこの40から60くらいが一番匙加減難しいな…)
- 34二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:33:16
- 35二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:39:21
トレーナーは自分の好意に気づいてくれない。
それは前からそうだし、今更気にすることではないと言われればそうかもしれない。
「…トレーナーさん!ねえねえ、水族館のチケット2枚もらったんだ!」
『そうか!誰といくんだ?やっぱり同室で仲のいいフラッシュか?』
「…そう!そうなの!」
言い出せない自分にも問題はあるかもしれないが。
「…はぁ」
少しだけ、夢を見たくなった。
結局1人で水族館に来た。
中の写真を撮り、ウマッターにこう投稿する。
”大事な人と水族館♡”
わかっていた。こんなことを投稿すればすぐに燃え広がるだろう。
だけど少しでも欲求を満たしたかった。
「…5分だけ!」
そう言ってウマートをする。
その5分で火は燃え広がっていく。
”大事な人って誰だよ”
”誰も写ってないけど手でも繋いでんのか?”
…この反応も予想していた。
しっかり5分カウントして、そのツイートに付け加える。
”大事な人っていうのは画面の前のキミのことだよ!安心して!”
少しだけ火は弱まった。放っておけば鎮火するだろうか。
…それより彼女の心に引っ掛かっていたのは、トレーナーのことだった。
こんなことじゃ満たされなかった。
「…あーもー!にぶトレーナー!!!」
その叫びは、当然ながらトレーナーには届かなかった。
- 36二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 04:46:51
「…またか」
手元にあったのは中央トレーナー試験の不合格通知。
もう何度目の失敗かわからない。
こうしている間にも、彼女は…オグリキャップは走っているというのに。
「…あー…!」
一人頭をかきむしっていると、電話がかかってきた。
「…ろっぺいさん?」
電話に出ると、出たのは六平ではなかった。
「…キタハラ!元気だったか!?」
その元気な、忘れもしない声。
「…オグリ!そっちこそ元気だったか?」
「ああ、元気だ!」
楽しそうな声だ。そんなに自分と話すのを嬉しがってくれてるのだろうか。
「なあキタハラ、トレーナー試験があったんだよな?結果はどうだった?」
不意にその話題を出される。
「あー…アー…お…落ち…た…」
「…そうか」
自分をこんなにも待っている彼女を待たせるのは、心が痛かった。
「…キタハラ!その、元気を出してくれ!」
次にもらった言葉は、励ましだった。
「その、ほら、また次があるだろ!?私は待つから、その、無理しない範囲でいつか取ってくれ!」
そのあんまり上手くない励まし方に、心をほぐされる。
「…ああ!次こそ取るぞ!…だから、もう少し待っていてくれ」
そうして電話を切る。
今回は無理でも次がある。現状は今は変わらなくても、次こそはと決意するのだった。
- 37二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 05:02:37
- 38二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 05:12:47
お疲れ様でした また見られるのを楽しみにしておりまする
- 39二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 13:18:01
お疲れ様でした!
- 40二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 14:10:42
このレスは削除されています