トレーナー。アメリカだ【長文・独自設定注意】

  • 122/06/29(水) 17:00:36

    「というわけで、アメリカだ。」
    クラシック登録の関係で私はダービーなどに出られないらしい。そこで他のウマ娘にはできないことをやってみようと私は思った。
    ルドルフやトレーナーの全面的な協力もあり、アメリカのトレセンに留学生として滞在することができたのだ。ルドルフには英語も教えてもらった。感謝してもしきれない。
    「オグリ、ちょっと待って!そっち方向違うから!」
    「む、そっちだったか?」
    慣れない土地だが頑張ろうと思う。

  • 222/06/29(水) 17:01:00

    「Hello!Oguri Cap! 出迎えが遅れてしまってごめんね!私は事務員よ!これからよろしく‼」
    (何だろうこの感じ)
    トレセンの入り口で出迎えてくれたのはとても大きな女性だった。青と白のコントラストが素敵な帽子をかぶり大きく手を振っている。
    「オグリキャップだ。よろしく頼む。…事務員さん…?でいいのか?」
    「Okey‼じゃあさっそく施設の案内にいこう!トレーナーさんも長旅お疲れ様です。あちらの職員に荷物を預けたら一緒に見て回りましょう。」

  • 322/06/29(水) 17:01:14

    「これで一通り施設の案内は終わりよ。一回じゃ覚えられないだろうから、迷子になったら近くの子に訪ねてね。勿論私のところに来てもいいわよ。」
    「ああ、ありがとう。」
    事務員さんはそういうと疲れたようにあくびをして帰っていった。忙しい仕事の合間を縫って案内をしてくれたのだろうか。
    「オグリは午後から普通の授業に参加するんだったよな。教室の場所はわかるか?」
    「心配性だな、トレーナーは。ここをまっすぐ行って右だろう?」
    「いや、そっちは管理棟だよ。」

  • 422/06/29(水) 17:01:34

    「では留学生を紹介します。オグリキャップさん!」
    教室に入ると皆がどよめきとともに視線を向ける。やはり葦毛はアメリカでも珍しいらしい。
    「日本から来たオグリキャップだ。皆よろしく頼む」
    皆からの反応は特にない。というよりも私の方を向いている者の方が少ない。英語がうまく伝わらなかったのだろうか。そんな心配をしていると風人のウマ娘たちが物珍しそうな顔をしながら話しかけに来てくれた。
    「こちらこそよろしくな。私はウイニングカラーズだぜ」
    気の強そうなきりっとした顔の葦毛のウマ娘だ。差し伸べてくれた手を取り、しっかりと握手をする。
    「次は私ね。私はグッバイヘイローよ。よろしくお願いするわ」
    「君がグッバイヘイローか。直接会えてうれしいな」
    グッバイヘイローという名は日本でアメリカでのレースを調べているときによく聞いた。すでに二つのGⅠを取り、その勝ち方も圧倒的だ。
    その後、たくさんのクラスメイトに囲まれて質問攻めにあった。自由な校風なのだろう、授業に来たはずの先生もそれを止めない。結局午後の授業はつぶれ、私との交流会となってしまった。

  • 522/06/29(水) 17:01:48

    「ふぅ、さすがに疲れたな。私の寮はあっちだったか」
    放課後、さすがに疲れてしまった私は寮に早めに帰ろうと校内を歩いていた。しかし、いつまでたってもたどり着けない。さすがアメリカ、同じような大きな建物がたくさんあるようだ。
    「ん、あれは…」
    そんな時、ふと練習場の方に目を向けると大きな栗毛のウマ娘が気持ちよさそうに走っていた。着ているジャージのきれいさから察するに新入生だろうか。
    「ん?」
    ぼー、とその光景を見ること数分。相手もこちらに気づいたらしく、走るのをやめて駆け寄ってくる。
    「はぁはぁ…こんにちは!あなたがもしかして日本から来た葦毛のウマ娘さんですか?」
    (近くで見るとさらに大きく見えるな)

  • 622/06/29(水) 17:01:58

    「ああ、私はオグリキャップだ。良ければ君の名前も教えてくれないだろうか」
    さわやかな笑顔で汗を拭く栗毛のウマ娘に今度はこちらから手を差し伸べる。彼女は自分の名を尋ねられたことに驚いたようだったが、私の手を取って快く答えてくれた。
    「私はイージーゴアといいます。よろしくお願いしますね、オグリキャップさん」

    「そういえば、オグリさんはどうしてアメリカに来ようと思ったのですか?」
    練習の後、私とイージーゴアは校内にあるカフェテリアで軽く食事をしていた。運ばれてくる日本のものより一回り大きい食べ物に目を輝かせていると、ゴアの方から話しかけてきてくれる。
    「私は急な移籍でクラシック登録ができなかったんだ。そこでせっかくなら誰にもできない経験をしようとアメリカに遠征に来たんだ」
    「それは、それは。チャレンジャーですねオグリさんは。その挑戦が成功するよう私も応援します。まあ、できることは少ないですが…」

  • 722/06/29(水) 17:02:10

    そんな他愛もない話をしていると、外はもう薄暗くなっていた。楽しい時間は進むのが早いのは日本もアメリカも同じらしい。
    「今日は付き合ってくれてありがとう。今度私にも恩返しをさせてくれ」
    「ははは、期待しておきます。それでは」
    カフェテリアの外に出て少し肌寒さを感じながら私たちは分かれる。と、その時、どこからともなくやってきた真っ黒な影が私にぶつかった。
    「いってぇな…ん?お前見ない顔だな?」

  • 822/06/29(水) 17:02:22

    どこからともなく表れた黒い影の正体は青鹿毛のウマ娘だった。いたるところに傷があり、着崩した服は全体的に薄汚れている。
    「サンデー!」
    「げッ、お前いたのかよ」
    反応に困っていると、先ほど分かれたイージーゴアが私たちの間に割って入った。
    「どこに行っていたのですか。皆心配をしてましたよ」
    「誰も俺の心配なんざしてねぇだろ…。それよりも」

  • 922/06/29(水) 17:02:44

    「しけた面してんなぁ。お前アメリカのウマ娘じゃねぇだろ」
    「失礼でしょ!」
    改めて物珍しそうに私を見る真っ黒のウマ娘。ゴアがやめさせようとしているが、その大きな体の隙間をすり抜けるように逃げ回っている。
    「私はオグリキャップだ。日本から来た」
    「へぇ、日本からねぇ…」
    それを聞いた瞬間、真っ黒なウマ娘はにやにやと笑う。ゴアは捕まえるのをあきらめたのか、息を切らしながら私の横に立った。
    「彼女はサンデーサイレンスです。見ての通りの性格なので私も困っているんですよ」
    そう言うゴアの表情からは疲れとともに呆れたようなものが見て取れる。サンデーと付き合いが長いのだろうか。
    「なあオグリさんよぉ。俺とレースしねぇか?どうせ暇だろ」
    「ちょっと!?待ちなさい!」
    「何ならお前も走るか、ゴア?」

  • 1022/06/29(水) 17:03:03

    「私は構わないが…今は練習場も使われていただろう?」
    「あー、それは大丈夫だぜ。ほら」
    結局ゴアも引き連れて練習場に来たサンデーはグラウンドを見下ろす。そこには数組のウマ娘とトレーナーがいたが、こちらを見つけるとそそくさと荷物をまとめてしまう。
    「俺は嫌われ者なんでな、こういう時は楽なんだよ」
    ウマ娘とトレーナーたちはサンデーを指さし、何かささやきながら帰っていく。それを見て自虐的に笑うサンデーを見つめるゴアの視線はどこか寂しそうだった。

  • 1122/06/29(水) 17:03:16

    「そんじゃ、始めますか。俺が投げるコインが地面に落ちたらスタートな。距離は6ハロン…日本風に言うと1200メートルくらいか?」
    スタート位置に三人が並んだのを見てサンデーはさっそくコインを高く投げる。
    「あと、言い忘れてたが負けたやつは買ったやつに100ドル払えよ!」
    「「は?」」
    サンデーの発言に気を取られた私とゴアは案の定出遅れてしまった。短距離のレースでの出遅れは致命的だ。それに…
    (早い!)
    最初のカーブに入った時、私は確信する。このサンデーというウマ娘はコーナリングがうますぎる。最初の直線で若干縮まったと思われた差は、コーナーでぐんぐんと開いていく。逆にゴアはその大きな体が災いしてコーナーは苦手のようだ。サンデーに並びかけていたがコーナーに入ってからは二バ身程離されてしまった。
    (私も負けられない!)

  • 1222/06/29(水) 17:03:27

    これ以上サンデーから離されたら最終直線で追いつけない。足に負担をかけるのはあまりよくないが、ギアを上げる必要がある。コーナーを抜ける少し前から私は姿勢を低くし、少し硬い土をつかむように足に力を入れる。アメリカのダートは日本の砂のようなものとは違って土だ。パワーと同時にスピードも要求される。パワーはわからないがスピードであれば私に分がある…ように思う。
    そんなことを考えていると最終直線に入った。私が前に行こうとスピードを上げていく横で、すごい音を立てながら待ってましたとばかりにゴアも加速していく。
    「おっと、やるなぁ」
    ラスト約300メートルついに私とゴアはサンデーに追いついた。しかし、レースはここからが本番である。早速サンデーが内をつく私に腕がぶつかるほどの体を寄せてきた。

  • 1322/06/29(水) 17:03:38

    アメリカに行く前、トレーナーから聞いていた。アメリカのレースではポジション争いや最終直線でたたき合いになると体が接触するほどの距離まで近づき、場合によってはタックルのような形になることもあると。初めて体験したが、確かにこれはきつい。だが、私も負けてはいられないと、押し返すようにサンデーに体を近づける。
    サンデーは私が体を寄せるとは思っていなかったのか、驚いたような表情をして若干ふらついた。私はそのすきをついてサンデーの横に並ぶ。そこからは単純なスピード勝負となり、三人ほとんど横に並ぶような形でゴールまで駆け抜けた。

  • 1422/06/29(水) 17:03:59

    「はぁ…はぁ…!」
    思った以上に疲労がある。慣れていないバ場ということもあるが、純粋に二人が早かった。年下だとなめてかかっていたらつき離されてしまっていただろう。
    「結構やるじゃねぇか葦毛のウマ娘さんよ」
    息を整えて前を見ると、先ほどとは全く違う、さわやかな笑顔を浮かべたサンデーがいた。そんな彼女に手を引かれ近くのベンチに座ると、どこから取り出したのか三人分の水筒をゴアは持っていた。
    「まったく、結果は私の勝ちですね」
    水筒を私とサンデーに渡しながらゴアはつぶやく。大外を回っていたため距離的な振りがあったものの、最終直線で余計な消耗をしなかった彼女が半バ身程であるが前にいたらしい。

  • 1522/06/29(水) 17:04:19

    「お金はもちろん取りません。その代わり、サンデーは少なくとも今週は学校に来なさい」
    「ハイハイ、分かったよ。来ればいいんだろ」
    空になった水筒をゴアに投げて渡しながら、サンデーは気の抜けた返事をする。
    「オグリさんはお疲れでしょう。今日は寮に帰ってゆっくりしてください」
    それから私たちは分かれた。サンデーはゴアに対してまだぶつぶつと言っていたようだったが、無理やり抱えられながら去っていった。
    「ふむ、いい時間だったな。それじゃあ帰るか」

  • 1622/06/29(水) 17:04:32

    「またこの景色か。ん?もしかすると私は同じところを回っているのではないか?」
    オグリは一時間ほどの放浪の末気づいてしまった。自分は今迷子なのではないかと。
    「とりあえず、腹が減ったな。カフェテリアまでの道は覚えたからとりあえずそこで誰かに尋ねよう」
    カフェテリアに入ると、まず目に入ったのは山積みされた大量の皿であった。どうやら誰かが食事をしているらしい。
    「私と同じくらい食べている…日本ではいなかったが、やはりアメリカだと私くらいの食事量は普通なのだろう」
    私は誰がこの皿の山を築いたのか気になった。いい友人になれるかもしれない。そう思い何とかその山の中心部にまで踏み入れるとそこには見覚えのある青と白の帽子が見えた。
    「事務員さん?」
    「ゴホッ‼ンッ!?」

  • 1722/06/29(水) 17:04:44

    「お、お見苦しいところを見せてしまいましたね…。ちょっと食べすぎですよね!」
    私を寮まで案内しながら、事務員さんは少し赤くなった顔を隠すように速足で歩く。
    「いや、私もあれくらい食べるぞ。アメリカだとあの量が普通だと思っていたが違うのか?」
    「…ええ、まあ私はウマ娘の中でもかなり大食いの方なので普通ではないですね」
    「え?事務員さんはウマ娘なのか?」

    事務員さんは頭を抱えてうずくまってしまった。何か悪いことを言っただろうか。
    「あ゛ー、知られてしまいましたか…。隠すことでもないので別に構わないのですが…」
    どうやら自分がウマ娘であることを普段は隠そうとしているようだ。理由は特にないらしい。

  • 1822/06/29(水) 17:05:04

    そんなこんなで寮に着いた私は、シャワーを浴びてご飯を食べ、トレーナーからのメールを読みながらなかなか眠れない夜を過ごすのだった。

    というSSをだれか書いてください。

  • 19二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 17:26:08

    ここにあるやん!

  • 20二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 17:37:25

    そこになければ無いですね

  • 21二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 17:39:23

    その事務員さん勝ち時計が全部コースレコードだったりしません?

  • 22二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 17:50:09

    オグリのお爺さんが化け物みたいな戦績してるから適正はあるのかもしれない

  • 23二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:26:35

    キングのお母さんとオグリ同世代なのか、知らんかった

  • 24二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 19:32:33

    これ事務員セクレタリアトかな?

  • 25二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 20:22:47

    セクレタリアトのんびり屋とか言われてたけどたづなさんポジできるのか?

  • 26二次元好きの匿名さん22/06/30(木) 00:44:08

    すげぇ良かった

  • 2722/06/30(木) 00:46:23

    誰か…続きを…

    少し時間がたち私もこちらの環境に慣れてきたころ、ついにレースへの出走が決まった。
    「思ったよりもかなり仕上がりがいいな。この調子ならラセンティネラSにも出生できそうだ」
    ラセンティネラS、重賞に準ずる格を持つレースだ。今年はウイニングカラーズも出生するということで注目を集めている。
    「分かった。それじゃあ、さっそく走ってくる」

    グラウンドに出ると、そこではウイニングカラーズが走っていた。いつ見ても力強い走りだ。私も準備運動をしてから併走でも申し込もうとしていると、彼女がこちらに気づきペースを落として近づいてきた。
    「オグリ!一緒に走るか?今日の私は調子がいいぞ!」
    実際、最近の彼女は敵はいないのではないかと思えるほど調子がいい。本気の走りに並べるのはグッバイヘイローくらいだろう。昔、一緒に走った時彼女に全く追いつけなくて悔しい思いをしたことは今でも思い出に残っている。

  • 2822/06/30(木) 00:46:35

    「ウインは元気だな。今日は何時から走っていたんだ?」
    「えーっと何時だったけな…まあ、気にしててもしょうがないぜ」
    彼女はとにかく走りたがりなことでも有名だ。トレーナーが止めに来るまで、毎日のようにグラウンドを走っている。
    「そういえばオグリ、お前もラセンティネラ出るんだろ?」
    「ああ、さっきトレーナーからも許可が出た。ついに私も走れるんだ!」
    「おおそれはよかったなッ」
    それだけ言うと彼女は急にスピードを上げた。かつての私であればこの加速に対応できず離されていただろう。しかし、今はこのバ場での走り方もかなり分かってきたし、パワーも付いた。それに彼女が得意なのは逃げ、急な加速であれば私の方が得意だ。

  • 2922/06/30(木) 00:46:47

    「へへ、速くなったな!」
    併走を終え、お互いにクールダウンを済ませるとウインが話しかけてくる。私は持っていたタオルを彼女に渡し、近くのベンチに腰掛けた。
    「俺な、ちょっとした夢があるんだよ」
    彼女は遠くを走るウマ娘たちを眺めながら話し出す。
    「ケンタッキーダービーってのは知ってるだろ。この国のクラシック三冠と呼ばれるレースのうちの一つだ」
    クラシック三冠。アメリカではケンタッキーダービーから始まりプリークネスS、ベルモントSと短期間で開催される最高クラスに格式高いレースだ。
    「エイコーン、CCA、アラバマのティアラ路線にはいかないのか?」
    彼女の周囲、かくいう私も彼女はティアラ路線に行くものだと思っていた。同年代のライバル、グッバイもティアラ路線を予定しているらしいし、彼女もそちらに行くだろうと皆予想していたのだ。

    「でもよぉ、その予想、裏切ってみたくねぇか?」
    「それは…」
    彼女の顔には迷いのようなものはない。確かに現役最強の名はケンタッキーダービーに勝利すれば確実だろう。しかし、路線変更というのはそれだけ調整も難しい。アメリカの長いレースの歴史の中でも路線変更からの成功者は2人だけだ。
    「壁は高けりゃ高いほど面白いもんだ」
    「ウインが決めたのなら、私から何か言うこともないな。勿論私もケンタッキーダービーを目指している。もし当たった時は負けないぞ」

  • 3022/06/30(木) 00:47:13

    「さあ、有力馬も出ているラセンティネラS!まずは一番人気ウイニングカラーズだ!さらにリトルパスワードも調子がよさそうだぞ!そしてこの子!日本からやってきた葦毛のウマ娘!その実力はいかほどか!オグリキャップ!」
    出走ウマ娘は合計7人。あまり混戦にはならずに済みそうだ。
    「今スタートです‼」
    ゲートから出た瞬間、ウインがすっと前に出る。相変わらずすごい逃げだ。距離からしてもこれ以上離されるわけにはいかないと私はウインの二バ身ほど後ろに位置を取る。彼女の恐ろしいところは最終コーナーのあたりからさらに加速できるというところだ。

  • 3122/06/30(木) 00:47:34

    (だから…仕掛けどころはいまだ!)
    第三コーナーに入る前、私は体を低くしスパートの姿勢をとる。ウインとの差もだんだんと縮み、第四コーナーを出て直線に入ることにはほとんど差がない状態にまで持ってくることができた。だがウインも負けてはいない。私のスパートに合わせわずかにスピードを上げていたウインは第四コーナーからさらに加速。なかなか横に並ばせてはくれない。
    「最後はこの二人の競り合いだぁ!さあどっちだ!?」
    実況、観客ともに盛り上がりは最高潮を迎える。葦毛のウマ娘の競り合い。彼らはそれぞれかつての大人気ウマ娘の影を見ていたのかもしれない。
    「今ゴール!対決を制したのはウイニングカラーズ‼」

  • 3222/06/30(木) 00:47:49

    「負けてしまった…」
    「気に病むことはないよオグリ。現役最強にも名をあげられるウイニングカラーズとあれだけ戦えただけでもすごいことだ。次は一着だな!」
    トレーナーは興奮気味に次のレースの予定を語る。だが私は若干上の空であまり内容が頭に入ってこなかった。その帰り道、上の空のまま歩いていると、いつの間にかグラウンドの方に来ていた。
    「あれは…」
    そこにいたのはあの真っ黒のウマ娘、サンデーサイレンスだ。いつも一緒にいるイージーゴアは、今はいないようだ。
    「久しぶりだな。サンデー」
    私は何となく彼女と話してみたくなりグラウンドの端の方で座っている彼女に近づく。
    「あー、オグリか。…今日はあいつはいねぇよな」
    サンデーはきょろきょろとあたりを見渡し、ゴアの影が見えないことを確認すると再び私の方を見た。
    「んで、今日はどんなご用事で?」
    「いや、特に用事はないのだが…」
    私はそこでサンデーの異変に気付いた。いつも服が汚れている彼女だが、今日の汚れ方は一段とひどい。まるで誰かに汚されたかのような姿だ。
    「なぁ、サンデー。その服は…」
    「ん?ああ、転んだんだよ。用がないなら向こうに行きな」
    「いや、たった今用ができた」

  • 3322/06/30(木) 00:48:05

    私は彼女を連れて歩き出す。暴れる彼女を抑えるのは難しかったが、いつもゴアがしているのをまねしてなんとか目的地である私の寮に着いた。驚く同室の子を横目にタンスをあさり、そこにあった適当な服をサンデーに渡す。

    「着替えだ。その服は私が洗っておこう。外で待ってる」
    何か叫んでいる彼女を無視して私は部屋の外に出る。数分後、観念したのか部屋から声は聞こえなくなり、代わりに私の服を着たサンデーが部屋から出てきた。
    「似合わねぇ…まったくもって似合わねぇ」
    「食事に行こう。ついてきてくれ」

  • 3422/06/30(木) 00:48:29

    カフェテリアではまた小さな皿の山が出来上がっていた。勿論その真ん中にいるのは事務員さんだ。
    「あれ、オグリさんと…サンデーサイレンスさん。珍しい組み合わせですねぇ」
    「おいおい、事務員さんかよ今日も仕事さぼってここに来てたのか?」
    「サボってないです。私は仕事速いので。」
    サンデーと事務員さんは仲がいいらしい。二人が話している間に私はサンデーの食事を用意し、ついでに自分用の食事も厨房の人に頼む。私や事務員さんなどは食事の用意に時間がかかるためその場で渡してはくれないのだ。
    「それで、今日は何か相談でしょうか?何でも聞きますよ!」
    「おい、俺のことは言うなよ」
    どうやらサンデーは本気でいら立っているらしい。フォークをガシガシと咬んで今にもこの場を立ち去ってしまいそうだ。彼女が誰かに嫌がらせを受けているらしいということは早めに相談したかったのだが、彼女がそれを嫌がるのならば今は話さない方がいいだろう。

  • 3522/06/30(木) 00:48:40

    「ほう、レースで負けてしまったと」
    そこで私はいつか聞こうと思っていた走り方の相談をした。トレーナーや学園の先生たちも色々教えてくれるとはいえ、やはり限界はある。視野は広ければ広いほどいい。
    「サンデーさんはどう思います?」
    「いや、俺に聞くんかよ。…お前、体柔らかいだろ。もっと滑らかに、細かくストライドも調整できるはずだ。それができればコーナーは大きな武器になる。…これで満足か?」
    なるほど、確かにサンデーの走り方はとても器用だ。滑らかなコーナリングは時にゴアが直線で追いつけないほどの差をつける。
    「んで、事務員さん?あんたはどうなんだ?」
    サンデーはにやにやしながら事務員さんの方を見る。
    「そうですねぇ、私からはあまり言えることないんですよね。オグリさんは私とは体の大きさもかなり違いますし。気持ちよく走ればいいですよ」
    「なんだ、あんたもうばれてたのか。それにしても参考にならねぇアドバイスだな」
    サンデーは私が事務員さんの正体を知らないと思っていたらしい。アドバイスの内容に関してはノーコメントだ。うん、楽しく走ることは大事、これだけは覚えておこう。

  • 3622/06/30(木) 00:49:04

    食事も終え、サンデーと寮に向かっている途中。静かに歩いているとサンデーがその沈黙を破った。
    「あんたもお人よしだよな。俺みたいなやつと関わってたら不幸になっちゃうぜ」
    サンデーはそう言うと何か意味ありげに立ち止まり、星を見上げた。少し前、ゴアと話したときにサンデーの過去については少し聞いていた。小さいころ様々な罵倒を浴びせられていたこと、大きな病にかかり医者からも見放されてしまったこと、かつて一緒に遊んでいた友人を事故で無くしてしまったこと。どれもこれも悲しい話だ。だがそんな中でも彼女を見捨てなかった人もいる。彼女はその人たちをとても大切に思っているらしい。
    「はぁ柄にもなくしんみりしちゃったな…。じゃあなオグリ俺はここでお別れだ」
    サンデーはそういうと夜の闇に消え入るように建物の間に入っていった。
    「サンデー、少なくとも私は君と一緒にいることを不幸だなんて思わないぞ。最初のレース、君が誘ってくれたから自分の走りに自信がついた。ゴアとも仲良くなれた。事務員さんともあの夜会えなかったらここまで仲良くなかったかもしれない」
    返事はない。
    「行ってしまったか…私も帰ろう」
    私は再び寮に向かって歩き出す。
    (そういえば服を返す約束忘れていたな。次会った時でいいだろうか)

  • 37二次元好きの匿名さん22/06/30(木) 01:02:02

    続きありがたい
    イッチはサンデー好きなのか?

  • 3822/06/30(木) 01:18:36

    >>37

    アメリカ競馬に詳しくはないですがサンデーは大好きです

    誤字多くて申し訳ない

オススメ

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