- 1二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:01:05
桜の舞う季節、あたしはトレーナーさんと2人で山菜採りに出かけ、いつものごとく遭難し4日目になってしまった…遭難自体はいつもの事だから気にしてないけれど、最悪なことが起きてしまった。
【ヒシ、アケ…げほっげほっ】
「無理して喋らないで、大丈夫だよ…」
ペットボトルをトレーナーさんの口元に近づけ、何とか解熱剤を飲ませる。
「少し待っててね、お粥を作ってくるから」
手持ちの食料でも、お粥なら問題なく作れる。あたしはすぐさま準備に取り掛かった。
お米を煮込みながら思い返す。日没前に急な雨に降られ、何とかテントは設営できたけど、トレーナーさんは疲れと寒さで、風邪を引いて倒れてしまった。何日も遭難するのもいつもの事だからって、トレーナーさん、疲れてたはずのに大丈夫、大丈夫って言ってくれたから、あたし、甘えてしまってた。
「ごめんねぇ〜、トレーナーさん…」
「ううん…しょげてる場合じゃない、今トレーナーさんを助けてあげられるのは、あたししかいないんだから!」
またトレーナーさんが元気であたしのご飯を食べる姿が見られるように、つきっきりで看病してあげなきゃ。 日が昇れば下山できるはず、それまで頑張って、トレーナーさん…!
ざあざあとテントをうつ雨音は激しさを増してきた。また雨雲が勢いを増してきたみたい。
あの後、目を覚ましたトレーナーさんは何とかお粥を食べてくれたけど、またすぐ目を閉じてしまった。熱はまだ高いままで、お薬の効き目はまだ見えない。
【はぁ…はぁ…】
「トレーナーさん…寝苦しそう」
こまめに濡れタオルを交換してはいるが、一向に良くなる気配はない。明けない夜、何度も何度も時計を見るけど、針は一向に進まない。 - 2二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:01:40
「トレーナーさん…もし、このまま…」
このまま、ずっと夜のままで、明日なんて来ないんじゃないか。トレーナーさんの具合はどんどん悪くなって、それでーーー
嫌な妄想に囚われそうになって、首をぶんぶん振る。
【うっ…ぐぅ…】
寝心地が悪そうにもぞもぞと何度も寝返りをうつトレーナーさん。
「だんだん寒くなってきちゃった、どうしよう…」
春先はまだ昼夜の寒暖差が激しい時期、雨と標高の高い山中という条件も相まって、どんどん冷えてきてしまう。
トレーナーさんが寝苦しいのも、きっとそのせい。放っておいたら、具合がもっと悪化しちゃう。
「なんとか暖めてあげなきゃ…」
ぐるぐる思考が巡る、毛布はこの1枚だけ、着替えは雨で使い物にならない、あと使えるものは…
ひとつだけ、思い当たるものがあった。
「トレーナーさんは今、体が辛いだけじゃなくて、心も寂しいんだよね…あたしも、寂しいんだ」
「でもこうすれば…あったくて、寂しくないよ」
あたしは、ジャージのチャックに手をかけた。 - 3二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:02:37
熱と寒気と吐き気に襲われ、眠れているようで眠れない。朧気に思うのは、自分の担当の事だけ。心配をかけてしまったに違いない、すまない、すまない…そんな言葉ばかりが僅かな意識を支配していた…のだが、ふと、
(あれ、きゅうに、あたたかく、なった?)
毛布とは違う、しっとりと柔らかい感触が、俺の全身を包み込んだ。甘やな香りと、不可思議な安心感に包まれる。これは一体なんだろうか。久しぶりに心に余裕が出来て、その正体を確かめる前に、俺の意識はようやく眠りに落ちるのだった…。
「ーーさん、トレーナーさん?! 具合はどう?」
【う、うぅん…?】
ヒシアケボノの声で目を覚ます。その背後から差し込む朝日に、雨雲は去ったのだと安堵した。気分の方は…好調とは言えないが、昨夜よりはだいぶんマシだ。
【何とか持ち直したみたいだ、心配をかけて済まなかった】
「ううん、元気なのがイチバンだから…!熱も下がったみたいだね、お薬が効いて良かったあ〜! でも何かあったらいけないし、もう出発の準備するね、トレーナーさんは休んでて!」
矢継ぎ早にそう告げ、ヒシアケボノは凄まじいスピードで荷物をまとめあげていく。その背中を見つめていると、ふと疑問が浮かんできた。
【そういえば昨日、ずっと寒くて苦しかったのが、急に暖かくなって…すごく気持ちよくて、楽になったんだ、そのおかげでよく眠れたんだが…】
勢いづいていたヒシアケボノの手が、ぴたっと止まった。背中越しで、その表情は伺えない。
【毛布とは違ったような…一体何を掛けてくれたんだ?】
しばしの静寂の後、彼女は振り向いて告げた。
「えへへ〜…内緒、だよ♪」
いつもの見なれた、茶目っ気溢れる笑顔。そこに少し赤みが差していたように見えたのは、朝日のせいだろうかーー - 4二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:02:53
みたいなのが読みたいので誰か書いてくださいお願いします
- 5二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:03:55
本編が完璧すぎてな…
引退後のヒシアケボノのSSとか読みたいぞ|´-`)チラッ - 6二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:04:12
クリックさせろ
- 7二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:04:15
またお前か
- 8二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:08:12
これは、お前の物語だ!
- 9二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:09:00
- 10二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:10:05
俺は文才のないボノトレ
お前のSSはすべて読んで♥️押してるぞ - 11二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:11:21
あれ?
もしかしてボーノって可愛い? - 12二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:13:50
- 13二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 18:14:50
ボノの人だ!
いつも読んでるぞ!!! - 14あくまでif√22/06/29(水) 18:25:38
急な雨だったね〜
あたしもトレーナーさんもびしょびしょだよ〜
ほらほら〜服脱いで〜♪
風邪引いちゃうからね〜、はい、タオルもどーぞ☆
え?当たり前だよ!このままだとあたしも風邪引いちゃうからね〜(ぬぎぬぎ)
ふたりしてこんな格好…恥ずかしくて、どきどきするね…♪
どうしたの?顔逸らして…お耳、真っ赤っかになってるよ?
ああ、離れないで離れないで!(グイッ)(ぎゅうっ!)
今ね…着替えも全部濡れちゃって使えないんだ〜
そういう時はどうするか知ってる?
こうやってね〜人肌で、暖めるんだよ♪
んっ…トレーナーさん、これじゃあまだ、暖まらないよお…
もっと近く…来て?
ヒシアケボノの『お誘い』にトレーナーは抗うことが出来るはずもなく彼は彼女の[続きを読むにはここをクリック!]
- 15622/06/29(水) 20:04:55
ありがとう
- 16二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 21:49:25
EX 雨に降られなかった√
【ご馳走様!】
「ごちそうさま〜☆ どうだった?山菜炊き込みご飯のお味は?」
【とってもボーノだった!】
「えへへ♪喜んで貰えて良かった〜!」
今日の収穫をふんだんに活かした夕飯は、あっという間にあたしとトレーナーさん、2人のお腹の中へ消えてしまった。
ささっと後片付けを済ませて…それが終わればやることはなくなっちゃった。明日のためにも夜更かしは避けたいけど、腕時計の時刻は8時。まだ眠気は襲ってこない。
「トレーナーさん、今日も夜空が綺麗だよ〜♪」
【一緒に見ようか】
テントからふたり顔を覗かせる。山で遭難生活を送る時、あたしとトレーナーさんはいつも、夜空を見ながら就寝までの時間を過ごすんだ。
どちらからともなく肩を寄り添わせ、ゆっくりと流れる時間を堪能する。
「綺麗だね〜…」
【だな…】
夜のカーテンが降り、星々がボタンとなって彩りを加える。星たちは気まぐれで、いつ見上げても、同じ色の景色は1日だってない。
2人並んで座るこの空間だけは、社会だとか、将来だとかのしがらみから切り離された、誰にも邪魔されない2人きりの尊い箱庭。 - 17二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 21:50:14
「あたし、最近思うんだ〜」
【ん、何を?】
「あたしとトレーナーさん、こうやってよく遭難するでしょ?」
【ははは、面目ない】
「もう〜!笑い事じゃない、はずなんだけど…」
視線は交わされない、ぽつぽつと言葉が紡がれていく。
「きっと、帰ろうと思えばすぐに帰れるんだよ〜。でもこーいう時間が、あたしとトレーナーさんの間に必要だから、こーしてる気がするんだよね〜」
【必要、かぁ】
「うん…変かなあ?」
【いいや…俺も、そんな気がしてきた】
「あたしがこれから走り抜けてく道はきっと…平坦じゃなくて、つまづいて…泣いちゃう時もあるはずなんだ」
【ああ…俺からも辛い選択を、強いることがあるだろうな】
「うん、でもねえ…こうして遭難して、一緒にご飯食べて、夜空を眺めて、寝て、朝が来て…どうあれ世界ってずっと、回っていくんだな〜って」
視線交わされないーーそれは、同じ場所にいて、同じ景色を見ているから。 - 18二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 21:51:34
「だから、なんて言えばいいんだろう…そう、大丈夫!なんだよ♪」
【大丈夫…】
「うん!トレーナーさんがそこにいて、あたしの料理をボーノ!って言って食べてくれるなら、大丈夫!それさえ叶うなら…どんな落ち込むことがあっても、寝て起きたらまた元気になれるんだ〜♪」
【なるほど、な…俺もそんな気がしてきたよ】
「トレーナーさん、わかってくれるんだ♪」
【ああ、美味しいご飯とーー】
「ーー大切な人、それだけでいいの」
日々のレースの結果だとか、やがて訪れる人生の選択肢だとか…それらに忙殺されて、忘れてしまいそうな、小さな幸福。つまりは、それだけあれば、十分なんだって。
ちょっと寒くなって、また少し、体をぎゅうっと近づけて、隣の熱を感じる。そこに『在る』ことを感じる。
ふたりの時間はまだまだ続く。明日こそ学園に帰れるのかなあ…それとも。
でも大丈夫だよね、どんな派手に転んだって、つまづいたって。
いちばん大好きな人の笑顔と一緒なら、いつだってやってくる明日はきっと、幸せな一日だから!
みたいなのが読みたいので誰か書いてくださいお願いします
あとボーノはこの曲が似合うウマ娘ステークス1番人気だと思います(筆者調べ)
島谷ひとみ / 「YUME日和」【OFFICIAL MV FULL SIZE】