- 1三十路のおっさん◆UlpelLUOzM22/07/01(金) 10:39:37
- 2二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 10:41:54
成し遂げられる>>1ってわけね。気に入ったわ
- 3二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 10:51:36
保守
- 4二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 10:52:03
続いてる!
- 5二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 10:54:15
衝撃の乱入者の正体や如何に…
- 6二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 10:54:26
めちゃめちゃ良い所で引くやん
- 7二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 10:57:00
保守
- 8二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 11:02:42
続きはどうなるか気になる
- 9二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 11:02:52
2スレ目だ!
- 10二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 11:03:02
保守
- 11◆UlpelLUOzM22/07/01(金) 11:12:04
「大丈夫か、シャドウメアッ!」
突然の轟音に驚くも、まずは彼女の身の安全を確保しなければならない。そう思いシャドウメアの前に立ち、ドアの方を見る。
そこには一人のウマ娘が――
「サイクロンスパイラルバーニングスクリュースパイラルエントリー!!」
誰かを確認する間もなくそう聞こえた瞬間に、ものすごい錐揉み回転状態のドロップキックが飛んでくる。
状況を判断し切れないまま、体も動かず、俺はそのドロップキックを――受けなかった。なんといつの間にか俺の前に身を乗り出していたシャドウメアが、そのドロップキックを受け止めたのだ。
「い、一体なんだ……!?」
「へへっ、やるじゃねーか。この迸る衝動を受け止め切るなんてな……!」
「――君は、ゴールドシップ!?」
「こんにちは。ゴールドシップさん」
「おーぅ!シャドウメア、今日も元気にシャウトしてっかー?」
「はい。昼にもしました」
「うむ、その調子で精進するのだぞ。フォフォフォ……あ、流石のアタシも受け止められたままの姿勢はキツいからそろそろ降ろしてくんない?」
目の前では蹴りをかましたゴールドシップとそれを受け止めたシャドウメアとで普通に会話が繰り広げられている。まさか、シャドウメアはこれに慣れているのか……!?
今飛びかかってきて、いそいそと地面に立った彼女はゴールドシップ。聞くところによるとトップクラスの"何考えてるか分からないウマ娘"らしいが……さっきの行動から既に納得できる要素しかない。
と、なぜ彼女がここに来たのかが分からない。シャドウメアに用事があるのだろうか。
「ゴールドシップ、シャドウメアに何か用事かい?」
「ふーん、アンタがコイツのトレーナー?……まあ、悪くないかな……」
「え、えぇ……?」
「ところでアンタ、随分楽しそうなことおっ始めたって聞いたぜ?なんでアタシにも声かけねーんだよそんな楽しそうなことよー!」
「な、何のことだ?」
「とぼけんじゃねー!シャドウメアが模擬レースやるんだろ!!」
当事者であるアグネスタキオンと、それを見ていたマンハッタンカフェしか例の模擬レースの話は知らないはず……なぜゴールドシップがそのことを知っているんだ? - 12二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 14:50:48
- 13◆UlpelLUOzM22/07/01(金) 18:34:08
「だってよ、ゴルシ様なんだぜ?」
「何がだ!?」
しかも今完全に思考を読んでなかったか?
「真面目に答えてやるとだな。シャドウメアが昼にシャウトしたろ?」
「シャウト……あぁ、スゥームのことか」
「何言ってんだ、あれはシャウトだろ!……ま、いいや。んでアタシも近くに居たんだよ。読書を嗜むパクパク姫を弄りに行こうと思ってさ。そしたらドッカーン!っつって超デカい声が聞こえるじゃん?発破かと思ったから見に行くじゃん?エキサイティングな話してんじゃん?じゃんじゃん?」
ゴールドシップのテンションが妙に高い……!
「ってワケでこのゴールドシップ様もその模擬レースに参加するってことを伝えに来たんだよ、いやー!走りたくてたまんねー!!」
「いいっ!?レ、レースに参加ぁ……!?」
「おう!シャドウメアの走りってやつを真近で感じたいのもあるけど何よりすっげえ面白そうじゃね?そういうことなんで夜露死苦ゥ!!」
そう言い放ったゴールドシップはそのまま小走りで部屋から出ていった。
一体何だったんだ……しかも随分大事になってしまっているような……
「あ、忘れてたぜ。アタシが他のメンツも見繕ってやるから感謝しなさいよね!んじゃ、バイビー」
ドアから顔をひょっこり出して、それだけ言うと舌を大きく出した変顔をかまして今度こそ去っていくゴールドシップ。
訂正、随分大事になってしまった。他にもウマ娘を呼んでレースをするとなれば、前までのような突発的なレースとは程違うものとなる。
つまりこうなっては一週間後、なんとしてもシャドウメアを形にしなければならない。
そうでなければ、学園中に彼女が走れないと知れ渡り、いつか克服したとしてもそのレッテルが剥がれる事は難しくなるだろう。
「……シャドウメア」
「はい」
「少し話が逸れたが……気を取り直して、君の走りを考えよう。まずは、改めて君の走りを見せてもらいたいな」
やる事は変わらない。彼女に彼女のポテンシャルに気付いてもらう……その為に、俺がやらなきゃいけない事をやるだけだ。 - 14二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 00:06:03
保守
- 15二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 00:45:11
- 16二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 02:09:55
最悪ダーネヴィールとオダハヴィーングも呼べかねないという
- 17二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 08:56:37
シャドウメアちゃんにLaas Yah Nirされたい人生だった
- 18二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 17:12:26
- 19二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 18:01:21
- 20二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 18:09:12
スゥームとシャウトの区別がついてるゴルシはなんなん……
- 21二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 18:38:58
そも Laas Yah Nir ってオーラ・ウィスパーの名の通り叫ぶのではなく、ささやくシャウトなんよな。幻惑perk「無音の唱え」を取ってないないなら至近距離にいる者には聞こえるもんなんで...
......ん?えっちか???
- 22二次元好きの匿名さん22/07/02(土) 23:44:30
保守
- 23二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 09:17:19
🤚🏿
お前を見ている - 24二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 17:56:55
保守!
- 25二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:35:48
だってよ……ゴルシだぜ?
- 26二次元好きの匿名さん22/07/04(月) 07:44:39
知らなかったそんなの……
- 27二次元好きの匿名さん22/07/04(月) 16:32:26
あげ
- 28二次元好きの匿名さん22/07/05(火) 00:43:14
保守
- 29二次元好きの匿名さん22/07/05(火) 06:43:22
平日は流石に無理か……
- 30◆UlpelLUOzM22/07/05(火) 13:40:15
シャドウメアを連れてダートコースにやってきた。
昼に彼女が天気を良くしてくれたおかげかあれだけ降っていた雨水もかなり捌け、重バ場程度におさまっている。
本当は良バ場で走らせたかったがこればかりは仕方ない。
目的地に到着した俺は、彼女の方へ徐に向き直る。シャドウメアはキョトンとした表情だが、気にせず口を開いた。
「さてシャドウメア。まずは走りについて少し考えてみよう」
「はい」
「基本的なことから始めよう。考えてみてくれ、走る……いや、歩くでもいい。それらをすると自分には何が起こる?」
「自分は、前に進みます」
「そうだ。詳細はあえて省くが、レースはスタート位置からコース上の決められた距離を進み、ゴールに到達するまでの時間を競うもの。つまり、どれだけ速く進めるかを競う戦いなんだ。ここまでがレースの基本だが、いいかい?」
「時間を……はい」
「よし。次に、現状の君は他のウマ娘よりずっと遅い。これは何故か分かるかい?」
「……分かりません」
「それじゃあ、模擬レースの時に他の子から教わったことを思い出してくれ」
「――全速力で走る。地面を思い切り踏む」
「そう。君にそれを教えた彼女たちが速いのは、その"速く走るやり方"を自分で考え、実践しているからだ。逆に言えば、君はまだその方法を知らないから遅い」
「知らないから――」
シャドウメアは納得したように頷く。
彼女は聡い。そして賢く、学ぶための努力ができる。それは普段の知識吸収力と驚異的な日本語習熟度が裏打ちしている確かな事実。
現にレースについても、分からないなりに他のウマ娘から学んだことを活かそうとしている。
この勤勉な姿勢は、彼女の持つ明確な強みだ。
「じゃあシャドウメア、模擬レースで使ったコースとこのコースの違いは分かるかい?」
「……草と土、ですか?」
「大体合っているね。前まで使っていたコースは芝、ここはダート――砂を使ったコースだ。今は雨で濡れているから砂らしくないけどね」
「ここで、何を?」
「ダートは地面の性質からして、芝よりも力が逃げやすい。つまりは強いパワーでも分散しやすいんだ。まずはここで速く走るためのきっかけを掴もう」
シャドウメアはたった一歩を踏み込んだだけであの常識破りのパワーを見せた。パワーとはエネルギー、エネルギーなら使い方を学び方向を示せば進む力になる――それをここで実証するんだ。 - 31二次元好きの匿名さん22/07/05(火) 23:59:03
保守
- 32◆UlpelLUOzM22/07/05(火) 23:59:27
「シャドウメア、早速走ってみよう。まずは普段走るようにこのコースを一周してみようか」
「はい」
指示をしてスタートの合図を出すと、見慣れた持久走の走り方でコースを走るシャドウメア。重バ場で足元が悪いことには変わりないはずなのに、彼女のペースは全く乱れていない。
そのまま脚を取られることもなく、一周を終えた。彼女の様子を見るが息も上がっていない。この程度ではウォーミングアップにすらならないのだろう。
「おつかれ、シャドウメア。今初めてダートを走ってみて、どう思った?」
「……?どう、ですか。分からないです」
「例えばターフ……芝と比べて走りやすいとか、逆に走りにくいとか」
「特に何も。走れる、幸せだけです」
軽く頭を振る彼女はまるで芝でも砂でも関係ないと言わんばかりの面持ちだ。走り慣れた時も同じ感想を抱いていれば凄いのだが。
「そうか――そうだ、君は走る時何かを考えているかい?」
「いいえ」
「じゃあシャドウメア、次は自分自身が"最も速く前に進む方法"を考えてみよう。理屈を伝えるのは簡単だが、走るのは君だから感覚をつかまないとな」
「どう走ればいいですか?」
「まずは、君の持つスタミナをフルで使おう。このコースは1周約1600mのコースだ。このコースのスタートからゴールまでにスタミナを全て使い切るイメージで走ってほしい。細かい話はそれからだ」
「分かりました」
再度スタート位置に立ち、合図を出す。
――瞬間、シャドウメアは凄まじい蹴りを放ち、進み始める。
地面が昨日ほどではないにしろ跳ね上がり、彼女はひと蹴りで数m……いや、10m以上進んでいる。とてつもない速度だ。
「――!」
しかしカーブに差し掛かっても彼女は減速しない。曲がり方を教えていないのもあるが……なんと彼女はカーブに沿わず、そのまま真っ直ぐ外側まで進み始めた。
次の瞬間、彼女の足元からコースの外に向け土が舞い上がり、直角に曲がってコースへと戻る。なんて無茶な走り方だ。
だが、カーブを越えて彼女の走りが良く見えるようになった途端にまた一つの問題点を見つけてしまった。
――彼女の脚が、空転している。 - 33二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 08:56:05
- 34二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 19:28:35
- 35二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 19:30:18
(凄いガニ股でジャンプを繰り返し淀の坂を登るウマ娘達)
- 36二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 20:49:57
WASD走行!?
- 37二次元好きの匿名さん22/07/07(木) 07:47:07
- 38二次元好きの匿名さん22/07/07(木) 08:36:52
- 39二次元好きの匿名さん22/07/07(木) 09:20:55
ムアイクトレーナーはおかしな夢を見た
夢の中には見たことのない四足歩行の奇妙な生き物がいて
これまた奇妙なことにその生き物はウマだと言うんだ - 40二次元好きの匿名さん22/07/07(木) 15:51:43
- 41◆UlpelLUOzM22/07/07(木) 19:27:48
現状を見れば、シャドウメアの走り方は間違いなく"ストライド走法"だ。これは一歩の歩幅を大きく取る走り方で、強い体幹がなければできない走りと言われている。
しかも観測している限り一歩の歩幅が本当に大きく、土砂が舞うたびに10m以上進むのを1秒間に3度以上という凄まじい速さで繰り返している。彼女のパワーがなければ間違いなく出来ない走り方だろう。
しかし、彼女の脚がその一歩の間に2,3度ほど接地出来ずに空を切り――まさしく空転しているのだ。まるで蹴り出す回数を増やす"ピッチ走法"のように。
ストライド走法の歩幅のまま、ピッチ走法のようにたくさん踏み出そうとしている……この走り方は非常に危険だ。
理由はいくつかあるが、最も大きいのが速度の上がりすぎだろう。
現にたった一歩が凄まじい推進力となっている彼女は、意図的にかそうでないかはさておきカーブをコースに沿って曲がることができていない。
これが本番のレースだった場合、今後カーブを曲がることができようと、周囲のウマ娘を薙ぎ倒して進む暴走機関車のようになってしまうだろう。そもそも土砂をここまで巻き上げている時点で出走停止を食らいかねないが。
そして彼女がどれだけ頑丈なのかを確かめてはいないが、何度もこんな走り方をしては自分の体を壊してしまうことになる。
だが、気がついた時には彼女はこの走り方で第4コーナーを抜け、最終直線に差し掛かろうとしていた。
こんな無茶な走り方を教えてはいけない。しかし――
「シャドウメア!最終直線では君の全力を出せ!他のウマ娘たちもここで最後のスパートをかけて君に追い縋ってくるぞ!!」
――レースのセオリー。それが口をついて出ていた。
途端、先ほどとは比較にならない轟音が聞こえる。間違いなくこの音は足音だ。
シャドウメアの足元から先ほどの3倍以上の土砂がまるで鉄砲水の如く飛び散る。
そしてそれを放つ彼女はなんと一歩で30mは前進していた。
そしてそのフォームも異質極まりない。まるで地を這うように体を前傾に倒し切り、胸の下まで引き絞った脚を真下に踏み込んで、地面を掘り返すように蹴り出しているのだ。
更に驚くべきなのは、その状態でも未だに空転していること――そして、全くといっていいほど体幹がブレている様子がないことだ。 - 42◆UlpelLUOzM22/07/07(木) 19:54:43
そんな走りを見ているうちに、シャドウメアがゴールまで到達する。
第4コーナーを越えて声をかけてから、ゴールまでの時間が本当にあっという間だった。
今回は彼女なりの走り方を見たいだけだったためにストップウォッチでの正確な計測はないが、とんでもないタイムが刻まれたのは明確だろう。
ゴールまで到達した彼女はというと、先程までの姿勢で真下に踏み込み、体を真っ直ぐ起こしてほぼ直立の姿勢でブレーキをかけている。
……何もかもが無茶苦茶だ。きょうび漫画でもこんな現象は見られないだろう。それが俺の目の前にある。正気なのか俺は?
彼女のポテンシャルを信じる心と、自分の目を疑う心がせめぎ合う中、シャドウメアは息を切らせることなくこちらに歩いてきた。
「……どうですか?」
「シャドウメア、君――これでもまだ疲れていないのかい!?」
「はい」
……あまりに規格外過ぎるスタミナだ。本当に彼女の体力は尽きることがないのかもしれない。
俺は彼女がどんな風に走っていたかを伝え、良い点と悪い点を挙げ連ねていった。
良い点は"自分で考えた速く走る方法を実践した"ことが最も大きいだろう。確かに無茶な走り方ではあったが、彼女なりに考えた上で本当に速い走りを見せてくれた。これは紛れもない事実だ。
次に"強い体幹と柔軟性"を挙げる。こんな走りはウマ娘でもそうそうできるものではない。それを実現させているのは間違いなく彼女が持つ強靭な肉体だ。
しかし、悪い点――今後の課題点は山のようにある。やはりまずは"自他共に危険になってしまう走り方である"ことだ。
特にたった一度走っただけでコースを使い物にならなくするこのパワーは、元来彼女の強みでありながらもデメリットとなってしまっている。
これが本当にレースなら、場合によっては何人ものウマ娘の選手人生を終焉へと導きかねない。
そして"脚の空転"だ。疲れることがほとんどないとはいえ、これは完全に無駄な行動になってしまっている。
バランスを崩すこともあまり無かったが、この走り方では踏み出しが失敗して転倒することも考えられてしまうのだ。
あの速度で転倒なんてしてしまえば、本当に最悪の事態すら招きかねない。ここはしっかりと教えなければ。 - 43◆UlpelLUOzM22/07/07(木) 20:09:32
「――と、これらが君の良い点と悪い点だ。良い点はどんどん伸ばして、悪い点は課題として良いものに少しずつ変えていこう」
「……危険?」
「どうした、シャドウメア。何か気になったのか?」
「戦いは危険。当たり前です」
「あー……確かに戦いだとは言ったが、直接相手を邪魔したりするのはルールに反するんだ。あくまで競技だからね、誰かに怪我をさせてしまうような状況は防がなければいけないんだ」
「……ルール。なるほど」
シャドウメアはまた、納得したように頷いた。
……もしかして本当に戦いだと思っていたのか?
「血の流れない戦い――幸せです」
「……そ、それってどういう……?」
「言葉通り、です。痛み、苦しみ、死――全て幸せから遠いです」
「まぁ、確かにそうだけど……」
「レースは戦い。しかし、危険はダメ。幸せです」
――俺はまだ、彼女の"幸せ"について理解できていないらしい。
もう少し彼女のことを知らないとな。
「にしても、早くこのコースを直さなきゃいけないな……今はたまたま誰も居なかったからよかったものの、これじゃ走れ――」
「――すごーいっ!あちこち穴だらけだー!?」
と、声をした方を見ると、穴だらけのコースを見て驚いているウマ娘が一人。
「あっ、メアちゃん!おーいっ!」
「こんにちは、ハルウララさん」
シャドウメアに近づいてきて、屈託のない笑顔を浮かべる彼女はハルウララ。いつも天真爛漫で、レースの結果が振るわなくても心底楽しそうに走るウマ娘だ。
にしてもまずい、彼女もこのコースを走るつもりだったのだろうか。整備しやすいダートコースとはいえ、このままこちらの都合で待たせてしまうのは忍びない。早く直さなければ…… - 44二次元好きの匿名さん22/07/07(木) 20:45:25
- 45二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 06:41:26
- 46二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 06:49:03
九大神に続く十人目の神
- 47二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 10:00:18
トレーナーとしては疲れないスタミナを持ってると納得するよりも、痛覚の異常で痛みを感じない現象の疲労版のような身体・神経系の障害を疑ったほうが良いのでは……?
- 48二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 10:21:03
息上がってないならそっちの発想にはいかないんじゃい?
- 49二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 22:07:06
保守
- 50二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 07:08:42
- 51二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 11:03:10
トラクションコントロールが効いていない?
- 52二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 21:48:43
- 53二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 21:50:47
接地していない時でも移動速度は変わらない、ムアイクはそう教わった
- 54二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 07:31:08
- 55二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 14:33:54
保守
- 56二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 00:15:45
保守
- 57二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 07:30:54
お兄ちゃんとかたわけとかの愛称ってメアトレの場合ドヴァキンになるのかな
- 58二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 15:10:01
しかも天候操作できる
- 59二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 21:45:24
保守
- 60二次元好きの匿名さん22/07/12(火) 08:51:11
保守ー
- 61二次元好きの匿名さん22/07/12(火) 13:34:12
シャドウメアの固有演出撮影はカオスなことになってそう
- 62二次元好きの匿名さん22/07/12(火) 18:28:33
保守
- 63二次元好きの匿名さん22/07/12(火) 22:25:51
流石にストームコールは使えない…と思いたい。あれやったら大惨事だし
- 64二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 01:34:39
カイネの安らぎがある以上魅惑のささやきは確定か……
- 65二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 07:09:48
- 66二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 07:48:09
このレスは削除されています
- 67二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 08:16:09
このレスは削除されています
- 68二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 13:08:49
保健室でのバステ回復とか、夢の中でなら普段使えないスゥームも使えそうだよね
- 69二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 22:20:14
保守
- 70二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 22:40:26
このレスは削除されています
- 71◆UlpelLUOzM22/07/14(木) 02:26:59
「すまないハルウララ。こんな状態じゃトレーニング出来ないよな、これから片付けるよ」
「えっ、なんで?穴だらけでも走れるよ?」
「いや、それはまずいよ。足を引っ掛けて転びでもしたら大変だ。すまないが、片付けるまで待って欲しい」
「片付け、私がします。トレーナーさんも待っていてください」
「そういうわけにはいかない。君の走りを見たいと言い出したのは俺だしね」
「それじゃあわたしも手伝うよ!みんなでやったほうがはやくできるもんね!」
「うーん……ただでさえこちらの勝手で使えなくしてしまったのに手伝ってもらうだなんて申し訳ないよ」
そう悩んでいるとシャドウメアがふらりとこの場を離れ、そっぽを向く。
まさかあまりに優柔不断過ぎて、愛想を尽かされてしまったのだろうか。
「≪Tiid≫≪Klo≫≪Ul≫」
と、シャドウメアが何かまたスゥームを発動したらしい。そんな声が聞こえた途端、シャドウメアが尋常じゃないスピードで動きはじめ、みるみる間にコースを修復していく。
しかし、なんだこの違和感は。まるで早送りをしているような……
「わぁー……!メアちゃんすごーい!よーしっ!わたしもがんばるぞーっ!!」
わっせわっせと掛け声を出して整備を始めるハルウララ。
こんな風に悩んで手を付けないのはトレーナーとしてあるまじき姿だと考え、俺は二人に倣ってコースの整備を始めた。 - 72二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 06:28:47
来たっ!
そうか、激しき力じゃなくて時間減速か……!その手があったか - 73二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 15:06:47
そういえばドヴァキンじゃなくてドヴァキンの馬だよな……?ウララがウララブームの概念みたいなもんだしシャドウメアはスカイリムそのものの概念なのかもしれんな
- 74二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 23:34:28
保守
- 75二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 23:44:29
このレスは削除されています
- 76二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 23:47:27
いつかスカイリム的登山もやるんだろうか
- 77◆UlpelLUOzM22/07/15(金) 02:25:01
30分後。あれだけ乱れていたコースは元の通りに戻った。
俺とハルウララはおそらく全体の二割くらいしか片付けられず、結果としてスゥームという特別な力で速くなった彼女に任せきりになってしまった。
「すごいすごーい!メアちゃん、かたづけ上手だね!」
「慣れています。ハルウララさん、走れますか?」
「うんっ!メアちゃんががんばってくれたから元気いっぱいだよ!」
「それでは、この場をどうぞ」
「ありがとーっ!よーし、トレーニングだーっ!!」
元気に走り始めるハルウララ。相変わらず速さはあまり感じられないが、それでもとても楽しそうだ。
「……トレーナーさん」
「んん?どうかしたかい?」
「スゥームは私だけの力です」
「……そうだろうね。今まで聞いたことはないし、君と出会って初めて知ったものだ」
「ですがスゥームはドヴァーキンと共にあって、知らない間に使えるようになった力です。だからレースでは使いません」
シャドウメアは視線をハルウララに向けながらそう言った。
そうか、やろうと思えばあの速く動けるスゥームを使うこともできる。こちらの知り得ないスゥームもあるのかもしれない。
しかし、何故それを自分から"あえて使わない"と宣言するんだ?
「トレーナーさん、言っていました。正々堂々戦うと」
「……あの模擬レースの約束を取り付けた時か」
「他の人が使えない力を使う。それは正々堂々とは違います。正々堂々は、卑怯ではない。合っていますか?」
「大体合っているかな。でも、その力で他人を貶めたりするわけじゃないんだろう?それでも使わないのか」
「破ったのなら誇れなくなります。自分だけが努力せずに得た力、使って勝つのはズルです」
「それは……」
「皆は努力しています。自分で走り、輝くため。なのでレースでは使いません……イスミールにかけて」
そう言い、彼女は強い意志を持つ眼差しをこちらに向ける。彼女の言う"イスミールにかけて"とは、おそらく"天に誓って"のように、自分自身に誓いを立てることなのだろう。 - 78二次元好きの匿名さん22/07/15(金) 05:03:38
- 79二次元好きの匿名さん22/07/15(金) 06:39:41
旋風の疾走使うのは見たかったな
- 80二次元好きの匿名さん22/07/15(金) 06:42:49
練習メニュー・スランプ解消・保健室……使い所はいくらでも
- 81二次元好きの匿名さん22/07/15(金) 13:06:55
それはもはや虫嫌いとかの次元じゃないんよ
- 82二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 00:49:56
保守
- 83二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 07:00:10
- 84二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 14:58:36
- 85二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 22:07:47
保守
- 86二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 22:18:06
このレスは削除されています
- 87二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 09:23:24
保守
- 88二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 09:53:39
ゴルシ杯が開催されたら障害競走でスゥーム係になるとかありそう
- 89二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 09:57:13
- 90◆UlpelLUOzM22/07/17(日) 12:32:13
これが彼女の本心で誇りだというのなら、俺はそれを無碍に扱うわけにはいかない。
「分かった。なら、尚更みんなの様に走れるようにしないとな」
「はい、戦います。みんなと同じ様に、輝きたいから」
そう言いながらシャドウメアはハルウララへと視線を移し、その姿を見続けていた。
楽しそうに走るハルウララの姿を見る彼女は、美しい風景を目にした時みたいに安らいでいるようだった。
それから走り続けるハルウララの姿を見ながら、走り方の理屈やフォームの重要性を語っているうちに時間は過ぎ、陽が落ちかける。
「おっと、もうこんな時間か。明日もあることだしここまでにしよう」
「はい」
「ハルウララー!君も早めに寮に戻るんだぞー!」
「ハァ……ハァ……はぁーい……」
かなりヘトヘトになっている様だが、戻れるのかアレ。
その後、シャドウメアを寮まで送りながら、明日の放課後もトレーナー室で集合する約束を取り付けて解散となった。
――翌日の昼休み。
いつものように学園内を歩いてみようと席を立つ。
するとトレーナー室のドアが開かれた。
「昼休みの最中に失礼ッ!シャドウメアのトレーナーは居るか!?」
「あれ、理事長?」
「わーっはっはっはっ!僥倖ッ!やはりここに居たか!」
そこに居たのは秋川やよい理事長だ。いつもの豪快な笑い声を上げながらこちらに近づいてくる。
「おや、席を立っているということはもしや出かけるところだったか?」
「ええ、昼はいつも食事を済ませたら学園内を見回っているので……どうかしましたか?」
「うむ、君にシャドウメアの様子を聞きに来たのだが……であれば同行ッ!わたしも共に行こうではないか!」 - 91二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 23:15:11
ほしゅ
- 92二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 10:02:26
保守
- 93二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 22:03:32
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- 94二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 22:11:12
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- 95二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 06:54:01
ウララは癒しだなぁ
- 96二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 08:05:10
保守
- 97二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 19:27:07
ほい
- 98二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 19:40:17
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- 99二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 19:40:30
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- 100二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 04:45:13
保守
- 101二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 07:02:33
このレスは削除されています
- 102二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 17:04:20
- 103二次元好きの匿名さん22/07/21(木) 02:04:58
保守
- 104二次元好きの匿名さん22/07/21(木) 12:54:55
保守
- 105二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 00:09:31
保守
- 106二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 07:08:14
学園内を見回ってふと思いつくんでしょう!アプリトレみたいに!アプリトレみたいに!
- 107二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 07:31:52
あげ
- 108二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 08:20:26
保守
- 109二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 17:09:39
- 110二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 00:59:11
保守
- 111二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 03:30:39
スカイリム知らんのやけどこのスゥームって使いすぎるとデメリットあったりはしないの?
- 112二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 08:26:59
- 113二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 09:05:40
あげ
- 114二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 11:47:14
🤚🏿
お前を見ている - 115二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 15:34:33
加えると威力が強すぎて下手に使うと味方や無辜の民を巻き添えにする
- 116二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 21:16:45
原作のシャドウメアはブクブク言って煙が出てる池の中からドドーンというSE付きで登場するし、ウマ娘でも何かしらの演出でそういうのありそうだよね
- 117二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 21:34:25
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- 118二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 21:35:55
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- 119◆UlpelLUOzM22/07/24(日) 00:45:39
理事長と共にトレーナー室を出て、いつものようにカフェテリアに向かう。
この時間帯のカフェテリアはとてもウマ娘たちが多く、様々な話を耳にできる。学園内でのウマ娘たちの動向を把握するのにこれほど向いたタイミングはない。
「今日の午後って調理実習あるんだよね」
「あぁ~あるある。今日のメニューってなんだっけ~?」
「確か、ある程度の材料から自分で作るんじゃなかったっけ。班ごとに自主性を見るとか何とかで」
「あぁ~そうだったそうだった。うちらも決まってないよねぇ~」
「何作ろうかな……ビーフストロガノフとかにしようかな」
「ちゃんとデミグラスあるといいねぇ~」
そんな話を聞きながら何処となく歩み続けていると、理事長が不思議そうにこちらを見ている。
「……?どうかしましたか、理事長?」
「いや、思っていたよりもゆっくりと巡回していると思ってな……普段からこうなのか?」
「そうですね。特別な用がない限りはこうやって学園内の声を聞いて回っています。それに……」
「――それに?」
「何もない間じっとしているよりも、こうやって様子を見ることで気づけることもありますから」
「――称賛ッ!本当に君は良くできたトレーナーだッ!!わーっはっはっはっ!!」
突然大声で笑い始める理事長に周囲からの視線が集まる。別に悪いことではないが、こういう注目のされ方は慣れていない。
そういえば、理事長は元々シャドウメアの様子を聞きたいと訪ねて来ていた。であれば、とりあえず理事長の聞きたいことに答えるために少しだけ人気が少ない場所に移動することにしよう。
「理事長。ところでシャドウメアについて何が聞きたいんですか?自分も彼女の全てを知っているわけではありませんが……」
「おお、そうだった。彼女が模擬レースをするそうだな!」
「いいっ!?」
「その模擬レースに備えてトレーニングを重ねているそうだな、天晴ッ!」
「そ、そうですね。シャドウメアのトレーニングを……あははは……」
……何故理事長にまで話が伝わっているんだ。
もしや、ゴールドシップが言いふらしているんだろうか。本当に大事になってしまっているな…… - 120二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 07:53:24
- 121二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 14:32:45
保守
- 122二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 01:54:36
保守
- 123二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 12:50:41
保守
- 124二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 21:50:07
- 125二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 01:22:52
保守
- 126二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 02:00:06
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- 127◆UlpelLUOzM22/07/26(火) 02:05:12
「――なるほどなるほど、良好ッ!その調子で研鑽に励むように!期待しているぞ!!……さて、本題ッ!」
あれから彼女の練習についてしばらく質疑応答が続いたが、どうやらレースのことが本題ではなかったらしい。となると……
「彼女のスゥームという能力についてだ!君はもう知っているな?」
「はい、彼女のこの力の話はたづなさんの耳にも?」
「うむ、わたしに知らせに来たのはたづなだから、共有はできている!と言っても実際に見聞きしたわけではないが……しかしその実態は実に明瞭ッ!人智を超えた異能力ッ!!」
いつもの豪快な声であることに変わりはないが、その表情は真剣そのもの。理事長は彼女の力についてかなり重く捉えているらしい。
「特異な能力があること自体は問題ではない。ウマ娘も千差万別ッ!よって個人が持つ能力についてはあくまで個人の管轄ッ!本来我々が口を出すべきことではない!」
「は、はぁ……」
「だが!彼女自身の出自が不明かつ我々の常識が通用しない以上、今後の動向は非常に重要ッ!場合によっては学園の――否ッ!世界の危機ッ!!」
……彼女、シャドウメアの能力は凄まじい。身体能力はさることながら、何よりもスゥームという特殊な能力は昨日目にしたもので全てとも言えないし、こちらでコントロールできるものではない。普段比較的軽快な雰囲気の理事長がここまで懸念するのも仕方のないことだろう。だが……
「――確かにそのことは自分も懸念している点"でした"。ただ、彼女は誇り高き人格を持つ聡い子です。自分の手の届く範囲では危険な事は起こさせません……とはいえまだ指導途中ですから、恥ずかしながら絶対とは言い切れませんが」
彼女はレースでスゥームを使わないとわざわざ宣言してきた。それは彼女自身の誓いであると共に、こちらに誠意を見せたと同義である。
彼女自身も、あの力が彼女にしかないと自覚している。つまりシャドウメアも、この学園や環境ときちんと向き合おうとしているはず。
あの言葉に嘘や誤魔化しは微塵も感じられなかった。
それなら、トレーナーの俺にできる事は信じる事だけだ。
「……そうか。ならば君なら――うむ、であれば信任ッ!君に彼女の事はほとんど全て任せるッ!彼女との密なコミュニケーションにて、彼女にとっての拠り所となってやってくれ!」
「はい!粉骨砕身の覚悟で頑張ります!」 - 128◆UlpelLUOzM22/07/26(火) 02:54:53
決意を言葉にして理事長に伝えたところで、遠くから何やら声が聞こえてきた。この声は……たづなさんか?
「理事長ー!何処ですかー!?」
「む、たづな?わたしはここに居るぞ!」
理事長が声を掛けるとたづなさんはそれに気付いたらしく、珍しく息を切らしてこちらに近づいて来る。
「理事長!それにトレーナーさんも!」
「どうした、随分と慌てているようだが……」
「大変です!シャドウメアさんが――とにかくこちらに着いてきてください!」
一体どうしたというんだろう。もしかして、何かの拍子にスゥームを発動して騒ぎになっているのか?もしくはあのパワーによるトラブルだろうか?
はやる気持ちを抑え、たづなさんに着いていった先は――家庭科室だった。
「ここは、家庭科室?そういえばさっき、調理実習があるって――」
たづなさんが扉を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
なんと、ほとんどのウマ娘が机に突っ伏して倒れているのだ。授業を担当していた教員ですら顔を伏せている。
どうやら倒れていないのはその光景を見つめているシャドウメアと、その周囲にいる数人のウマ娘だけのようだ。
倒れている人々の共通点は、皆スプーンを持ち、スープのようなものが入った皿がある事。
「トレーナーさん」
状況を分析しているとシャドウメアがこちらに気付いたらしく視線を向けてくる。
「一体どうしたんだこれは――シャドウメア、何か知っているかい?」
「私がやりました」
――なんだって?
彼女が、やった? - 129◆UlpelLUOzM22/07/26(火) 04:12:03
「アニメみたいな展開になりそうだねこの流れ……」
「語弊が凄いって、メア……」
「違いますわ皆さん、これは――」
「私がやりました」
「言ってる事全然わかってない!?待って待ってやめてとめてシャドウメアちゃん!?」
「……?」
よく見ると彼女は昼休みに調理実習について話していたウマ娘だ。どうやらシャドウメアと同じ班だったらしい。同じ班らしき他のウマ娘たちも、全員状況は理解しているようだ。
と、そこに理事長が一歩踏み出して扇子を広げる。
「……一先ずッ!順を追って説明をしてほしい!」
「は、はいっ!と言ってもあんまり難しい話じゃなくてですね。今回の調理実習はそれぞれの班で――」
「うむ、それぞれの自主性を重視し、本日の料理を各々が決めると言っていたな!君の班はビーフストロガノフを作るのではなかったか?」
「最初はそのつもりで……って、あれ?どうして理事長さんがそれを?」
「実はカフェテリアですれ違いざまに、俺と理事長は君の話を少し耳にしていたんだ。それで、どうしたんだい?」
「えっと、最初はそのつもりだったんですけど、デミグラスを他の班が使うことになったから私たちは別の料理を作ろうと考えたんです」
「でも何を作るか思い浮かばないって話になって、そしたらシャドウメアちゃんが得意な料理があるからそれを作ろうという話になりまして……」
シャドウメアの得意料理……?
そもそもシャドウメアが料理できるという事自体今初めて知ったが、それがどうしてこんなことに?
「シャドウメアちゃんが教えてくれた通りに作った……えーっと……なんだったっけこの料理?」
「"ポタージュ・ル・マグニフィーク"だよ、作りながら何度も聞いたでしょ?」
「そうそれ!それで、このポタージュ……なんとかを、別の班と先生に食べてもらうってことになったんです」
「それぞれが作った料理を振る舞うっていうのは最初から決まってた流れだからね」
「なるほど、今回の趣旨にはあっていますね……それがどうしてこんなことに?」
「それが――あー、いやー……」
「どうしたんだい、急に言い淀んで……」
「こんなこと言ったら完璧変な子だと思われそうで……あぁー、私呪われてるかも……」
「杞憂ッ!状況が状況ゆえにそんな心配は無用ッ!さぁ話してくれ!」 - 130◆UlpelLUOzM22/07/26(火) 04:37:47
「じゃあ話します、実は――」
「トレーナーさん」
と、説明しようとしているウマ娘を差し置いて、突然シャドウメアがこちらに近づいてきた。その手にはポタージュ・ル・マグニフィークとやらがよそわれた味見皿がある。
「どうぞ」
「これを……俺に?」
「はい、食べて欲しいです」
そういって、俺の手に味見皿を持たせるシャドウメア。表情はとても柔らかな微笑みだった。
……担当に差し出されたものを、無碍に取り扱うわけにはいかない。
どんな味がするのか見当もつかないし、周りを見るに安全かどうかすら怪しいが――彼女を残念がらせるわけにはいかない。ままよっ!
「あっ!」
――美味い。なんだこれは、あまりに美味すぎる。
こんな美味い料理は初めてだ。素材の旨味が説明がつかないほど引き出されている。
信じられない、世の中にこんな料理があるのか?
今まで食べたことのない、奇跡のような味。
素晴らしい、素晴らしすぎる――
「――……ナー、トレーナー!このままではいかぁーんッ!!気付だッ!急げたづなッ!!」
「――ハッ!?」
「おおッ!?目を覚ましたか!」
「ほっ、水をかける前で良かったです……!」
「彼女の料理が美味しくて味わってはいましたけど突然それがどうしてこんな話に……」
「驚嘆ッ!?気付いていないのかッ!?」
「トレーナーさん、あの一口を食べてから3分くらい直立不動で私達の呼びかけに応じなかったんですよ!?」
「いいっ!?そ、そんな――」
「――そう、そうなんです。シャドウメアちゃんのこの料理、あんまりにも美味しすぎるんですよ!例えるなら――死ぬほど!!」 - 131二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 07:35:03
美食家とその料理も闇の一党が絡んでたもんね…
まさかジャリンの根が入ってるのかと疑ってしまった私を許して… - 132二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 09:29:17
え!!隠し味にセプティム硬貨を!?
- 133二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:04:50
保守
- 134二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 15:44:08
まずはスイートロール…
次の食材は…吸血鬼の遺灰だ…
さあ、ここで…巨人のつま先を入れろ!
セプティム金貨も…加えねば… - 135◆UlpelLUOzM22/07/26(火) 20:39:55
言い過ぎだ、とは言えなかった。むしろ言い得て妙などと思ってしまった程だ。
天に昇る心地とはこのことなのかもしれない。そう考えられる程シャドウメアの作った料理は美味しかったのである。
「トレーナーさん、いかがでしたか」
「とても、とても美味しかったよ。言葉で言い表せないほど複雑で、でもハッキリとした味で……凄いなシャドウメア、君はこんな美味しい料理を作れるのか」
「ドヴァーキンのおかげです」
「ドヴァーキンの?」
「はい。沢山作って、よく食べさせてくれました。なので覚えています」
この料理は彼女にとって思い出の料理のようだ。やはり先程疑いを持たずに食べて良かった。
「実は私達も直前の味見で他のみんなみたいに気絶してたらしくて、ちょっと前に目が覚めたんです」
「ホント、あまりの美味しさに気絶するなんてアニメでも見ないわよ最近!」
「メアの料理、抜群に美味しかったなー」
「本当、自分へのご褒美に食べたいほどですわね」
「とにかく!今回の件はシャドウメアちゃんが凄腕だったっていうだけでへいき、へっちゃらです!ご心配おかけしました!」
「うぅむ……であればたづな、わたしも――」
「いえ念の為先に私が食べます理事長が気絶して万が一のことがあると本当に大変ですから!」
「卑怯ッ!?やり方が汚いぞたづなーッ!!」
「お二人も、どうぞ」
シャドウメアはいつもの無表情で理事長とたづなさんにもポタージュの入った味見皿を渡した。
受け取った二人はお互いに視線を交わし、唾を飲み込む音が聞こえる。
「う、うむ!それでは、実食ッ!!」
「いただきます!」
……それから二人がそのまま10分間フリーズ。
その間に目を覚ました実習中のウマ娘と教員がなおのこと大騒ぎしたのは言うまでもない。 - 136二次元好きの匿名さん22/07/27(水) 00:21:34
- 137二次元好きの匿名さん22/07/27(水) 00:23:00
皇帝が昇天するくらいの絶品グルメだよ
- 138◆UlpelLUOzM22/07/27(水) 12:08:59
シャドウメアのヒミツ①
実は、得意料理のポタージュは死ぬほど美味しい。 - 139二次元好きの匿名さん22/07/27(水) 12:59:21
ゲーム中イベントで皇帝(偽)に作ることになるスープ
基本レシピはあるがドヴァーキンの裁量でアイテムを「隠し味」として投入できる
何を入れても皇帝(偽)は喜ぶため硬貨だの遺灰だの指だのを入れるドヴァーキンがいるとか。
- 140二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 00:00:58
保守
- 141二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 06:50:03
皇帝を暗殺してほしいという依頼を主人公(ドヴァーキン)の所属組織が引き受けて、大陸で有名な謎の匿名美食家が皇帝の料理の担当として外部から招かれるというのでその身分を利用するべく主人公が暗殺して、その匿名美食家に成りすました際に作った料理が元ネタなんだ。
イベントで作るだけでゲーム中の主人公には食えないから効果は不明なんだ。
- 142二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 08:43:49
死ぬほど(直喩)
- 143二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 13:22:29
保守